通 史 昭和51年(1976) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和51年(1976) 4月5日号

 医薬品の販売姿勢の適正化について 福岡県衛生部長通達

 福岡県衛生部の鴛淵部長は三月二六日付で、「医薬品の販売姿勢の適正化について」の文書を県薬剤師会並びに薬事協会へ通達。同通達文書は左記のとおり。

 医薬品の販売姿勢の適正化について

 最近本県内の薬局、医薬品販売業者で薬事法第四九条の規定に基づき指定された医薬品(いわゆる要指示医薬品)である卵胞ホルモン、黄体ホルモンの配合剤を法定の指示によらず販売し、また当該医薬品が効能効果として承認を受けた以外の目的のため販売したり、特に当該医薬品が薬事法第二九条に規定された指定医薬品えあるので新薬種商では販売が禁止されているにもかかわらず販売されていた等の事実が薬事監視員の立入検査により判明いたしましたが、今日特に医薬品の安全性、副作用、有効性の問題が国民の大きな関心事ともなっており、また医薬分業も医師との信頼関係においてはじめて推進できるものであるかがかかる違法な販売が行われていた事は誠に遺憾な事であります。

 今後再びこのような事がないよう医薬品の販売姿勢の適正化をはかるため、薬局等の開設者及び管理者は職務上の責任を十分自覚し医薬品の販売業の業務に関し、保健衛生上の危害を生ずることがないような必要な管理を十分行う事は当然でありますが、特に要指示医薬品の取扱いにあっては次の事項を厳守し法令違反がないよう貴会員に対し周知徹底をはかられるようお願いします。なお今後かかる違法行為を発見した場合は厳重な措置を講ずることがあるので念のため申し添えます。

 記

 一、要指示医薬品の販売は管理者又は薬剤師が自らこれに当り、医師・歯科医師・又は獣医師による処方せん又は指示の内容に従って、用法用量その他使用及び取扱い上の必要な注意を与えること。

 二、医師等の処方せん又は指示を受けていない者に対して販売してはならないことは当然であるが、これらの者に対しては、要指示医薬品に関する規制の趣旨を説明のうえ医師等の診断を受けるようすすめること。

 三、要指示医薬品に関し、その出納状況を明確にするため、仕入伝票、売り上げ伝票、処方せん等を他の品目のものと区別して保管すること。ただし一般消費者に対して販売を行なわない業者にあってはこの限りでないこと。

 四、薬事法第四九条第二項の規定に基づく帳簿は、処方せんによる販売の場合は記載の必要がないが指示による販売については記載すること。

 五、要指示医薬品は、他の物と区別して保管すること。

 六、要指示医薬品の仕入数量を業務日誌にその都度記載しておくこと。

 報酬の改訂 計量混合加算と内服用滴剤の調剤料を新設す

 このたび調剤報酬が左記のように改訂、新設され、四月一日より実施される。

 ▽調剤基本料(処方箋受付一回につき)
二〇〇円→二二〇円。

 ▽調剤料
(1)内服薬(一剤一日分につき)
四四円→四八円。
(2)内服用滴剤(一調剤につき)
新設、八〇円。
(3)頓服(一剤一回分につき)二〇円→二〇円(変更無し)。
(4)その他(一調剤につき)
五〇円→八〇円。

 ▽加算
(1)麻薬、毒薬加算
一一円→二〇円。
(2)時間外加算
変更なし。
(3)深夜加算
変更なし。
(4)休日加算
変更なし。
(5)自家製剤加算
@内容薬及び頓服薬
ア:錠、丸、カプセル、顆粒、浸煎、エキス剤
一〇〇円→二〇〇円。
イ:液剤
五〇円→一〇〇円。
A外用薬
ウ:錠、トローチ、軟・硬膏、パップ・リニメント・点眼炎鼻・炎耳・坐、浣腸剤
一〇〇円→二〇〇円。
エ:液剤
五〇円→一〇〇円。
(6)計量混合香酸
新設、八〇円。

 ◆新設項目の説明

 @内服用滴剤の調剤料
従来内服用滴剤(一回の服用量が極めて少なくスポイト、滴瓶により分割使用するもの)は、総量で処方され一日数滴の用法指示をされる場合が多く、用量の算定に不合理があったため算定法が規定され、その他調剤と同じく一調剤毎に調剤料を算定することになった。

 A計量混合加算
二種以上の薬剤を計量しかつ混合して内服薬(散剤又は顆粒剤に限る)を調剤した場合に一調剤につき八〇円を加算する。但し、この場合、自家製剤加算が適用される場合及び調剤した薬剤が薬価基準に収載されている場合には加算できない。調剤の必要上、賦形薬を加えた場合は、その必然性が認められる場合にのみ加算できる。

 薬界短信 福岡県学薬伝達講習会

 福岡県学校薬剤師会(友納英一会長)は昭和五〇年度学校薬剤師伝達講習会を三月一八日午後一時から福岡県薬会館会議室で開催。

 当日は柴田副会長の司会で開会し、まず友納会長は「五〇年度の学校薬剤師講習会は例年にない内容豊富なものであったが、本日は三講師の方により詳細な説明が行われる。今後とも学校保健向上のため皆様のご尽力を願いたい」と挨拶。次いで講習会に入ったが、演題と講師は左記のとおり

 @学校保健の動向、学校排水処理の実際=県教育庁学校保険課・山下泰弘。
 A学校環境衛生の基準、最近のプール管理=県学薬副会長・古賀哲弥。
 Bプラスチックと食品衛生学校近視について=福岡市学薬・山口博。
(資料)第22回学校薬剤師講習録(一九七五年、日本学校薬剤師会編)

 九大・磯田先生へ感謝状と記念品贈呈

 四月一日をもって九州大学病院の副薬剤部長磯田正春氏が定年退職されるにつき、同氏の在任県である福岡県を除く九州山口各県業員薬剤師は、長崎県病薬の清水龍夫会長が世話人代表となり、磯田氏の永年にわたる九州山口薬剤部長協議会及び日病薬九州山口ブロック会の委員として委員長を補佐し細心の配慮で世話をされ各県病院薬剤会は多大の恩恵を蒙ったとして、同氏に対し、このほど佐賀、長崎、熊本、鹿児島、沖縄、宮崎、大分、山口の各県薬連名にて感謝状と記念品を贈呈した。

 このことは、近隣友好県病薬として微意を集め謝意を表した−としているが、初めてのことであり、同氏の公的且つ私的に諸事行き届いた事務局長的立場での尽力に対する各県薬の心からの謝意の現われであるとみられている。感謝状・記念品を贈られた磯田氏は次のように感謝の意を述べている。

 磯田氏の謝辞

 このたびは九州山口県病院薬剤師会連名による前例のない感謝状及び記念品をいただき、身に余る光栄にたいし感謝にたえません。これも一重に堀岡日病薬九州山口ブロック会長ご指導のもとで、ブロック会議その他のお世話をさせていただいたお蔭だと厚くお礼を申し上げます。四月一日付で退職いたしますが、今後も福岡県病薬の会員として残り、日病薬九州山口ブロック発展のため微力を尽しこれに報いたいと思います。

 福岡市薬 理事・部会長・代議員合同会議 県代議員会時の委員等選考

 福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)は三月二三日(火)午後二時より第五〇回理事会、第二九回部会連絡協議会、県薬代議員会合同会議を福岡県薬剤師会会議室で開催した。

 当日は荒巻専務理事の司会で開会し、まず斉田会長はその挨拶の中で「三月二六日に県薬代議員会が開かれるにつき、今回は特に県薬役員改選が行われるので福岡地区の代議員会に対処する方向づけをしたい」と述べてのち、議事に入ったが、そのおもな内容は次のようである。

 ▽調剤業務に関する件

 @指導者協議会報告
厚生省主催で広島市において三月六日開催された指導者協議会には福岡ブロックとして荒巻専務理事が出席。研修会開催一二〇名まで補助金が厚生省より交付される(オーバーの場合は県薬負担)

 A調剤請求手数料
処方箋枚数一枚につき、二円を県薬へ納付。三月調剤、四月請求分より。

 B沖縄県国保
三月調剤分(四月提出)から国保連合会扱に変更(県内、外と同等の扱い)

 C歯科標準処方
改定分ができあがっている、希望者に無償配布。会員にゆきわたった時点で歯科医に配布する。

 D保険調剤状況
二月分=三万一千九百三十枚、五千四百十七万二千三百二十九円。三月分は、一千三百六十五枚、九百六十三万四千百四十二円。県全体では、八万三千八百三十九枚、一億二千二百五十八万九千九百二円。

 E調剤報酬改訂
三月二二日発表、四月一日より改訂される(別掲)

 ▽日薬ファマシスト配布について
従来会員へ直送のところ今後は班別(福岡市は部会別)に一括して日薬より送付されるので、会員個々へ配布方依頼。勤務者その他については日薬で研究中。

 ▽保険薬局の名称について
くすりの○○○、株式会社○○薬品等の名称で、薬局の名称を付してない保険薬局があり、医師会、関係当局より好ましくないとしてクレームがついた。県当局としては前向きに行政指導していく方針である。

 ▽県薬代議員会に関する件
三月二六日午前一〇時半より開催。@会議の運営をスムーズに運ぶため、調査資料を要する質問事項の場合、三月二四日迄に書面をもって申し出ること。県薬で準備をするため。A現県薬長野会長辞任につき、福岡市は公認会長として白木太四郎(現副会長)を全員異議なく推薦に決定。B代議員会当日の諸委員等次のとおり推薦することを決定す。日薬代議員=藤野義彦。日薬予備代議員=荒巻善之助、監事=馬場勘二、選考委員=勝目一郎、小松真佐雄、竹尾啓二、(予備=馬場正守)。

 ▽福岡市を区制変更する件
福岡市医師会では本年四月より区制の運営となったので分業推進等の関係もあり市薬としても区制を行なっては如何(藤田胖氏より詳細説明あり)との件については、医師会の線に副うべく目下検討中で、種々問題点があることより一か年位の猶予をもって研究する事と決定された。

 ▽新年度会費(案)
A開局一般販売業=四万円、B薬種商=二万八千円、C一万二千五百円。

 ▽商組よりの連絡事項
@チラシ、ビラ問題についての県当局の取締強化方針の説明報告。
A母子ミルク受給権の三月分までは四月一五日提出締切につき報告協力を要請。

 薬の安全点検に意味 医薬分業、着実な前進を

 去る三月一〇日、熊本日日新聞は社説で医薬分業問題をとりあげ、表題の見出しで、分業の着実な前進を要望したが、その全文は次のとおりである。

 投薬に偏りがちな現代の医療を改善した技術を高く評価する医療体系にしていこうと、厚生省では四十九年十月から、医薬分業体制を進めている。ところが厚生省の昨年八月の調べによると、医薬分業率は全国でまだ一・九%位しか進んでいない。「五年後には分業率を五〇%にする」という厚生省の方針からすると「牛の歩み」のようだが、医師側、薬局側ともにいろいろと困難な問題点をかかえながらの分業の展開であるから、一面では無用の混乱もなく、堅実に進んでいるとも言えそうだ。

 医薬分業には利点、問題点ともにあるだろうが、利点の最も大きなものは、処方箋が外部の薬局で調剤されることによって「薬の安全」を点検する関所が出来るということだろう。問題点としては、患者の不便さを第一として、薬局が保険調剤薬局にふさわしい多種類の薬を備える必要があり、調剤技術の向上などの問題や医師の減収の問題などがある。しかし分業は薬に偏った医療体系を改善していくことにつながっているのだから、着実に前進していくことが必要であると思われる。

 ◆分業阻んでいる利ザヤ

 日本では明治以来、医院の薬は医院で出すのが慣習となっている。患者には便利な制度ではあるが、これが開業医の収入を薬の売り上げに大きく依存させ、医療技術をあまり高く評価しないという医療費の体系をつくり上げることになり、一部に言われるような、いわゆる「薬づけ」の医療を生み出す背景にもなっている。

 従って厚生省としても、医薬分業を一つの突破口として改革を進めていきたいと考えているわけだが、実態調査でも@処方せんを出すと患者が不便がって来なくなる心配があるA日本では医院は患者が来れば薬を出すのが伝統になっているとして処方せんを出さない医師が多いことが明らかになっている。患者の便、不便の問題が表面に出てはいるが、診療報酬の薬価基準と実勢価格との利ザヤが分業の動向に大きく関係していることは事実だろう。

 たとえば、ある一流メーカーの抗生物質は一錠三十五円。品質管理の悪い三、四流品になるとわずか五、六円。びっくりするほどの添付(おまけ)つきで売り込まれるものもある。安値ではいったものを薬価基準で請求すれば逆ザヤで診療報酬があげられるわけである。

 ◆多少薄れた利ザヤの妙味

 ただ最近は、この妙味が薄れる現象が出ているのも事実だ。それは第一に薬価基準と実勢価格との間に開きがあるのは、薬品流通のうえでは問題があるとして毎年薬価基準を改めるさいに、厚生省が逆ザヤを縮めるようにしていることである。本年は医薬品の銘柄別に薬価基準を定めて、三、四流品はそれなりに安くしよう、という考えもあり、これなども分業の気運を醸成する素地になっているようだ。

 医薬分業問題をみていくさいに、最も大切なことは医療を受ける患者の立場がどうなるかということだろう。処方せんを病院からもらって外の薬局をさがし回るようなことになったり薬局が非常に遠くてかえって不便になったりする問題もある。こういう点の矛盾は、住民もまじえて医師、薬局の話し合いで解決していく必要があるだろう。この点はすでに熊本市内で活動している保険薬局が一つのよい例になるのではなかろうか。

 医薬分業の最も大きな利点は、薬の安全を点検する関所が出来ることである。処方せんに万一のミスがある場合、看護婦や素人の調剤では見逃しやすいが、薬剤師なら発見率も高いだろう。また服用上のこまごました注意は、忙しい医師にはムリでも薬局なら出来るだろう。もう一つ大事なのは、医薬分業は処方せんが公開されるため、閉鎖的になりがちな医療に日があてられるということである。病院内部では医師の処方せんは、絶対の権威をもっている。しかし処方せんが外部に出されると新しい第三者の目にさらされることになる。医師としても安易な処方は書けなくなるし、慎重にならざるを得ないだろう。

 ◆患者中心の医療が課題

 また医師自身も薬の在庫やマージンに気を遣う必要もなく、患者本位の処方が出来るし、ひいては診療に力を入れることが出来るというメリットもある。医薬分業はこのように医療の質の向上という根本的な問題とかかわっている。熊本県でも、こうした点の認識が医師、薬剤師ともに高まっているせいか、四十九年十月にくらべると、現在、処方せんは毎月その三倍の三万枚近くまで伸びている。県薬剤師会では、熊本市などに医薬品備蓄センターや調剤センターなども設置するに至っている。医薬分業は患者中心の医療をめざすことがねらいである着実な分業が進んでいくことを望みたい。

九州薬事新報 昭和51年(1976) 4月15日号

 福岡県薬剤師会 第33回通常代議員会・総会

 長野会長勇退、白木氏新会長に

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は、第33回通常代議員会並びに総会を三月二六日(金)一〇時三〇分より福岡県薬剤師会館会議室で開催した。会議は@代議員会A総会B薬剤師連盟懇談会C会員懇親会の日程で進められたが、その概要は次のとおり。

 ▼代議員会
神谷専務理事の司会により、白木副会長の開会の辞があって、議長席に国武一人議長と古賀哲弥副議長がついたあと、まず長野会長の演述(別掲)がありその中で、本日の改選に当り健康上の理由から会長引退の決意であることを述べた。

 来賓祝辞は県薬務課岩橋課長により行われたが、同課長は、医薬品の特殊性について再認識されたい。また販売姿勢についても十分考慮されたいと思う。薬局の管理態勢についての規範も事新しいことではないがその意を汲んで業務を行なって欲しい、と要望。次いで議事に入った。

 ▽報告事項

 報告第一号…昭和50年度会務並びに事業報告
(1)一般会務関係事項=神谷専務理事
@会員数(一六六九名)
A保険薬局、保険薬剤師数(九六〇、二二七七)
B会議
C叙勲・表彰
(関係団体事業概況報告・・・病薬=磯田氏、学薬=橋本氏、女子薬=田中氏、国保組合=工藤氏)
(2)恒常的事業組合=神谷専務理事
@共済事業
A薬と健康の週間
B講習会・研修会等
(3)重点事業報告=神谷専務理事
@総括報告
A渉外事項
B会内事項
Cその他

 報告第二号・・・日本薬剤師会第38回臨時および第39回通常代議員会報告=安部常務理事。

 報告第三号・・・昭和50年度歳入歳出中間報告=冨永常務理事。
いずれも承認可決。

 ▽議決事項

 議案第一号・・・昭和51年度事業計画決定の件=神谷専務理事
(1)地域医療における基盤づくり
@公衆の福祉衛生に寄与すべく、三師会協力の下にこれを推進する。
A薬剤師資質向上のため日薬の企画する卒後教育三年計画の普及につとめる。
B病院勤務薬剤師の調剤業務に対する評価を検討し、その実現を期す。
(2)医薬分業の推進
@分業の思考統一をはかり、組織活動を促進する
A地域三師会での協議を継続する。
B分業情報を逐一広報し各地区分業推進に資する
C調剤実務研修を行なう
D請求事務の指導を行なう。
E薬局の物的、人的整備の斡旋を行なう。
(3)医薬品の管理と流通につきその適正化を推進する。
(4)医薬品情報組織の整備と実用化をはかる。
(5)女子薬剤師の調剤実務への参加をあ軸に組織の拡大強化を推進する。
(6)薬剤師職能確立のため諸委員会の活動を推進する。
(7)その他関連事業を実施する。
(本議案については堀岡副会長より、調剤実務研修の件と医薬品情報組織について補足説明あり)

 議案第二号・・・昭和51年度会費決定の件=冨永常務理事
歳入歳出それぞれ四千九十万三千円。

 議案第四号・・・借入限度額決定の件=冨永常務理事
一千万円。いずれも熱心な質疑応答のあと、提案どうり議決決定された。

 ▽選挙
先行委員により候補者を選考することに決定。選考委員一〇名(福岡地区=小松・竹尾・勝目、北九州地区=久保・石松・梶原、筑後地区=小柳・鶴田、筑豊地区=松野・松村)により別室で選考し、その結果が議長から一同に諮られ、次のとおり決定した。
・会長=白木太四郎。
・副会長=堀岡正義、安部寿、中村里実。
・監事=馬場勘二、工藤益夫。
・日薬代議員=安部寿、藤野義彦、西元寿清継、古賀哲哉、黒田健、三宅清彦。
・日薬予備代議員=上田ヨシエ、末松博、橋本祐一、荒巻善之助、松村精一、梶原英昭。

 ▽白木新会長挨拶
このたび図らずも長野会長のあとに満場一致でご推挙頂きましたことについて心から感謝いたします。前会長の、識見・人格ともに秀れた先生の後をうけて、私の如き者がその任にあるか否か危惧するものでありますが、私も永年県薬剤師会に関係をもって参りましたので、最後の働き場として任務を全ういたしたい所存であります。処方箋応需の推進、会館建設、OTCの基盤安定を目指して進みたいと思いますので、何卒よろしくご支援の程お願いいたします。長野前会長にはその豊富なご経験を今後ともお借りいたしたく存じますので、次の理事会の議を経て顧問にお願いいたしたく存じます。

 ▽閉会
中村副会長挨拶あり、閉会す。

 ▼総会
斉田常務理事開会の挨拶ののち、長野会長演述。第33回代議員会決定事項報告があって、左記の五支部に対し表彰が行われた。 八幡、柳川、京都、福岡、若松。

 ▼薬剤師連名懇談会
政治力強化の必要性を中心に懇談。西元寺清継氏より、北九州市議選に立候補の芳野直行氏に対し積極的応援を行うべしとの動議があり、全員拍手のうちに芳野氏立候補挨拶が行われた。

 ▼会員懇親会
一般会員も多数出席があり、盛会を極めた。

 長野会長演述
本日ここに福岡県薬剤師会定款にもとずいて昭和五十一年度第三三回代議員会を招集し、明年度の事業計画並にそれにともなう予算案の審議をお願い致しまするに当り、会長として一言所信を表明したいと思うのであります。

 永年に渉って日本の医療システムの中に埋没し低迷を続けてきた薬剤師本来の職能を確立して、我々の習得した学問技術によって国民大衆の健康福祉に寄与する道を開く、即ち医薬分業を確立するために長い長い年月を経過しましたが、会員の固い結束と世の識者の認識、社会的風潮、健康保険点数改正など各種の事情とによって、医と薬との責任分担がようやくにして定着する時期となって来たのであります。

 当福岡県におきましては、この分業問題については県医師会並びに県歯科医師会の深き理解と温かき話し合い交流とによって原則的に意見の一致を見て、可能な地域から可能な方法で分業を推進することに決定し、昭和五十年度においては県下の各地で少しづつではあるが分業が支障なく実施せられ始め、最近における一ヶ月の保健請求金額は驚異的に増加しつつある現状であります。

 然しながら県下全般からこれを見ますと、その分布はかなり片寄りがあって、永年に渉る非分業の習慣一挙に変化せしむる事には諸般の事情から見て多くの困難さが感ぜられます。これに対しては更に息の長い努力と年月を要するかも知れません。

 然し、真実なる主張と誠実なる努力とは如何なる場合でも最良にして最も強い手段・方法あることを堅く信じて、薬剤師の結束を益々強固にしながら目的達成に努めなければなりません。分業完遂の前後に横たわる幾多の制度的な或いは、人為的な障害は我々の結束から生じるあらゆる政治的手段に訴える事によって、取り除くことの可能性を信ずるものでありますが、医師と国民大衆の信頼に応えるための学問的な研鑽は一日としてこれを欠かすことを許されないのであります。

 と共に、今日の一般世情は余りにも刹那主義的、自己本位的、営業利潤追求第一主義な傾向を益々深めていますが、然し、今日こそ薬剤師のモラルを又、薬剤師薬局としての法に触れ、或いは社会的信頼を失墜するが如き行為は絶対に許されないのであって、これ正に薬剤師唯一の悲願である分業完遂を自らの手によって遠ざける背信行為と云わざるを得ないのであります。

 目を転じて、日本の経済事情は石油ショック以来、その成長はストップして今日の物価高における大不況となり、非分業下のおける今日の薬局の経済活動の大部分を未だに占めている医薬品販売の面においては、この不況の影響を全身に受けつつありますし、また適配条例廃止後の薬局経営の将来に対し大きな不安を加えつつあります。

 然しながら「自らの道は自ら開く以外にその道はなし」と申しますが、幸いにして所属する我々の団体、薬剤師会の結束と力とが現存する限り、この困難を乗り越え得る自信と信頼とが得られるものと信ずるものであります。

 昭和五一年においては、我々の将来に更に地道なそして細心且つ大胆な努力を致すべく諸事業計画を立案しております。担当理事より事業計画及び予算案の説明をいたしますが、ただここで特に御理解願いたき事は不要不急のものは思いきりカットして支出の節減には極力意を用いて努力し、予算案を編成いたしましたが、最近の郵便料、旅費、交通費、その他諸物価の値上がりのための自然増の経費膨張の故に止むなく小幅ではありますが、A会員にて年額千円の負担増をお願いせざるを得ない状態であります。何卒諸般の事情御賢察のうえ御了承頂きたく存ずる次第であります。

 最後に本年は議案審議終了後、役員改選となっております。不肖長野、二年前満場一致で会長に選出されましたが、会員の皆様の御期待に十分そいえず誠に残念至極に存じますが、私自身は全智をしぼり、副会長。理事の方々の支援のもとに能う限りの努力を致したつもりであります。ただ私として誠に申しわけなき事は一年前より健康を害し、特に歩行困難・不自由な身体となり、療養しながら歯を喰いしばって今日まで努力して参りました。

 考えてみまするに、私の人生の大半は薬剤師職能の確立のためにあらゆる活動に身を投じて戦前より戦後を通じて長い年月、地方議会に議席を得て公的立場でも薬剤師のためにこの身を捧げて参りました。又、終戦後昭和二十二年改組後初めての県薬剤師会の役員に選出せられて以来今日まで、連続三十年一身を犠牲にしたつもりであります。

 その間、日薬代議員会議長、日本薬剤師連盟幹事長、日本薬剤師連盟副会長として中央における活動も致して参りましたが、然し最早、私の力の限界に到達したことを自ら覚り、又私の主治医からの強き勧告もあり、この改選期を最後として後進の方々にその道を譲り、業界より引退致したき所存であります。

 三十年と云う長い間、お役に立たなかった長野を今日まで御支持・御支援くださいました会員の皆様に対して心から、ほんとうに心から深く深くお詫びと御礼とを申し上げる次第であります。会員の皆々様には益々健康に留意せられて、薬剤師の未来のために御努力あらん事を切に希望して、会長の所信表明と致します。