通 史 昭和50年(1975) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和50年(1975) 12月5日号

 福岡市薬 薬局(薬剤師)の管理態勢に積極的な取組へ

 福岡市薬剤師回(斉田和夫会長)は一一月一三日(木)午後一時より第四七回理事会、三時から第二七回部会連絡協議会を福岡県薬剤師会会議室で開催した。

 当日は県薬務課の柚木監視係長の出席を得て、荒巻専務理事の司会で開会し、まず斉田会長の挨拶があってのち議事に入り、報告(@薬局委員会A県薬理事会B薬と健康の週間C旧会館と市薬土地D三師会協議会)と協議(@調剤手数料A調剤業務研修会B年末年始の休日急患センターC保険薬局業務など)が行われたがその主なものは次のようである。

 ▽薬局委員会報告=荒巻専務理事
日薬の「薬局等管理薬剤師規範」と、県衛生部よりの「適配廃止後の管理態勢について、@薬剤師定数問題A新規開業者の教育B調剤室と売場面積C分割販売-などの報告が行われた。

 なお、これらに関して、柚木監視係長は@名義貸しの廃除A販売体制の適正化B分割販売Cビスマス取扱い、などについて詳細な説明を行なった。薬務課としては積極的に業界の諸会合に出席し、説明会等も開いて指導を主体とした行政を推進したい。薬局は処方箋調剤をし、医薬品は対面販売を行わねば、薬剤師業の社会的信用向上はあり得ないと強調した。また、薬局の品位にかかわる行為(フンドシビラ等の掲示など)に対して特に注意があり、二回行政処分を受けた場合には、許可の取消もあり得る事を示唆した。

 ▽三師会協議会報告=斉田会長
大変有効な会合で、今後の分業推進にも繋がるもので有意義であった。

 ▽調剤手数料について
現在、請求総額の一%を徴集しているが、理事会でも現行の一%徴集を決定。県薬で処方箋一枚につき二円の支部賦課金はこの一%より支出する

 ▽調剤業務研修会について
医薬分業推進指導者講習会が50年2月7日(東京)3月7日(広島)で開かれ三名(県薬、県病薬、県薬務課より各一名)が広島会場へ出席するが、市会員よりも出席を要望。なお市薬研修会を11月21日(金)13時より県薬会館で実施する。

 ▽休日急患センターについて
年末、年始の12月31日18時〜1月4日9時までの勤務人員について発表。

 ▽保険薬局業務について
市歯科医師会と新しい標準処方を決めた。詳細については近く連絡する。生活保護法による調剤券請求事務に関し一二月調剤分(一月提出)より、保険薬局から請求書を発行することになった(詳細は市薬事務局に問合せのこと)。

 ▽商組よりの連絡について=福岡地区商組・山手専務理事
今後、組合員への会議等の報告などの連絡方法として回覧板式を採用することと決定した。部会長の協力と情報提供を願いたい。なお回覧方式で成文となるので個人名を発表する場合もあり得る。チラシ等は県へ連絡している。

 管理薬剤師として (女子薬部会講演要旨) 徳山調剤薬局 磯崎英子

 私は今年一月までベット数一五〇床の病院に勤務、温厚な薬局長のもと、薬剤師三名、助手二名、計五名のスタッフで日々薬局の業務に専念、忙しい忙しいといいながら結構楽しく、いつの間にか二〇年あまりをすごしてまいりました。しかしここ一、二年前から私自身の今後の方針を真剣に考え、このまま定年まで病院に勤務するか、小さくても自分の店舗を開設しようか…あれこれ考えておりましたところ昨年十月只今管理薬剤師として勤務している徳山調剤薬局のお話がありました。

 その当時の私は昨今の医薬分業の状勢とか、開局の方の処方箋受入れに対するご努力とか、殆んど無知に近い状態でした。あわてて常日頃からご指導頂いている諸先輩、その他のおすすめと二〇年余りの病院薬局勤務の経験が生かされるものなら…と思い切って転職することにしました。

 調剤専門薬局をどんなに立派に設備し、調剤経験のあるスタッフをそろえましても、処方箋を発行する医師と、その処方箋を持って来局する患者の理解がなければ到底なりたつものではありません。私共では開設者である社長がかねてより各医院にいわゆるマンツーマン方式でご相談しておりましたところ、ご理解ご協力頂ける先生方に恵まれました。なかでも近くの小児科の先生は医院の待合室に分業について患者さんにわかりやすいポスターを貼り二月一日、私共のオープンと同時に全面的に処方箋発行にふみ切って頂き、その他徐々に切りかえる先生もふえてまいりました。

 患者さんも従来の医院待合室での混雑と長い待時間が解消、明るい待合室で、あまり待たなくてすむと喜んで頂いているようです。なかには「医薬分業とはこうした形で、これが本当なのですよ」と滔々と分業論をのべて私共の方が面くらったこともありました。

 現在私共のスタッフは、薬剤師四名、事務員一名、全員女性で、店舗は調剤室18u、待合室24u、事務室、倉庫、備蓄薬品は約五百品目、九月現在までの処方箋発行は、小児科一、内科二、整形外科二、産婦人科三、眼科一、歯科六、病院一、以上合計十六施設から来ております。

 二月から七月までの処方箋枚数は一日平均約一八〇枚で、開局時間は午前八時半より午後六時まで、二名宛一時間の時間差をつけて出勤、退社し、夜間当直は現在のところ私が受持ち、保険請求事務も全員が分担して行っております。

 最近の調剤は、医薬品が錠剤化され、単純化されたと云われますが、目下のところ小児科の散薬、水薬が大体60〜70%を占めているため小児薬用量の問題とか味の面に至るまで投薬するについては正確な調剤とゆきとどいた神経が要求されます。加えて、ミルクをあまりのまない…とか、いわゆる育児に関する質問も多くあわてて育児の専門書を開き、スタッフ一同勉強しております。

 又待時間中にミルクをこしらえたり、子供さんのお話し相手をしたり、いろいろの面で忙しい毎日で、最近とかく問題になっている薬品の副作用などは、直接医師には聞きにくいためかそういった質問も多く、これに対しては慎重に、医師の医療目的に沿うようなキメの細い患者指導をするよう心がけております。なお、医師の指導のもとに「お薬の服み方」というパンフレットを作り、店頭に出し、若いお母さん方など多くの方に利用されております。

 又各医院には開局当時、「在庫リスト」を作り配布しましたが、最近追加薬品もふえたため、薬価基準表による分類と使用量等も書き加え配布するよう準備しております。薬品の使用量の問合せ、「在庫リスト」にない薬品の購入依頼等各医院からの連絡も常に密にし、こちらからも患者さんの連絡とか処方内容の不審な点等、当然のことながら常に各医師とのコミュニケーションを深めております。又開局の方々にも在庫の問合せ、保険事務の質問などと利用していただいております。

 私共の仕事内容が関係深いところから山口県病院薬剤師会会長のご配慮により薬剤師全員山口県病薬会員として入会、県病薬の講習会にも出席し、常にご指導頂き、心から感謝しております。まだオープン以来日も浅く、これといった内容ではありませんが恵まれたスタート、暖いご支援に応え、地域医療の一端を担当しているという自覚と責任をもって微力ながら一生けん命頑張りたいものと日々努力し今後起ってくるであろういろいろな問題に大いに悩みそしてのりこえてゆきたいものと思っております。
(10月17日第42回九州山口薬学大会女子薬部会における講演要旨)

九州薬事新報 昭和50年(1975) 12月15日号

 福岡県薬支部連絡協議会 調剤手数料の賦課完全諒解 

 薬剤師連盟など政治力強化へ

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は第二四三理事会と第一九五回支部連絡協議会を一二月一日(月)一一時より、県薬剤師会会議室で開催した。

 当日は国鉄スト中にも拘らず出席良好、支部連絡協議会は神谷専務理事の司会で開会し、まず長野会長挨拶ののち議事に入り@報告事項(薬と健康の週間、九州山口薬学大会、県三師会協議会等)A調剤報酬請求手数料の賦課B今年度調剤業務研修会C厚生省技官による保険薬局、保険薬剤師の指導D今後の薬務行政E薬剤師連盟関係-などについて報告・協議が行われたが、そのおもな内容は次のようである。

 ▽県三師会協議会=中村副会長
特に医療過誤の協同防衛に関しては、九大の堀岡先生が医薬品の副作用と安全性確保の点を強調したが、深い感銘を与えた。保険請求業務簡略化については、県として解決出来るものから情報交換を密にして改善を行うことで同意を得た。

 A日薬推せん議員について=神谷専務理事
近く予想される衆議院議員選で、日薬推薦は伊東(東京)、長野(鹿児島)、谷口(長崎)で、九州から二名である。資金カンパとして開局者一名につき二千円を集めるので、一二月中に協力願いたい。

 ▽調剤報酬請求手数料の賦課について=神谷専務理事
請求業務を通じて組織造りの活発化を大きな目的とするものである。県内一〇月度の調剤請求が一億の大台に乗り更に今後は増加の見通しより低目に押え、一枚一〇円としその二〇%(二円)を県薬へ、なお県薬としては上限はつけない−との方針を説明、各支部長との意見交換が行われた結果全員の諒承を得た。

 ▽今年度調剤業務研修会について=神谷専務理事
日薬主催の医薬分業推進指導者講習会が三月六日広島で開かれ、九大堀岡先生が講師として出席される。
従って本年度の研修会は来年度初頭の四月末か五月にかけて行われることとなる。

 ▽厚生省技官による保険薬局、保険薬剤師の指導について=中村副会長
一二月五日個人指導、六日団体指導が何れも当県薬会館で開かれる。六日の団体指導には各支部長並びに分業指導者の全員出席を要請。

 ▽今後の薬務行政について=藤野常務理事
薬務行政は今後、完全に分業指向型となる。県薬務課より「薬局の管理態勢」「管理薬剤師による薬局の管理要綱」が文章とし示された。要約すれば@薬局らしい薬局にするA管理薬剤師の権限強化(名儀借しの廃除など)である。現在薬局委員会として薬局経営基準に取り組んでいるが、これに対して諸先生方の意見を聞かしてもらいたい。なお薬局勤務薬剤師の名簿作成を急いでいるが、女子が多いのでその教育・研修会は積極的に委員会で開催していく。

 ▽薬剤師連盟関係協議
益田学氏(大分県薬副会長・大分県商組理事長)は@日薬の努力A政治力の重大性B森下泰参議の努力−などについて分業問題、ビスマスの要注意薬に止まった実例をあげて説明。次いで森下泰秘書の菅沼正治氏は「政治性と行政」について、中央情況と政治の結びつきを具体的且つ的確に論破。また薬剤師連盟の班制度(会員一〇名に一人の班長をおく)は分業にも選挙にも多目的に使われるものであることが強調され、我々薬業界に如何に政治力が必要であるかの感銘を深く与えた。

 卸のDIに携わって(1) 甲斐田 茂

 卸サイドで薬品情報室をつくり、DI業務を実行しているのは、まだ極めて少い。一昨年から準備をすすめ今年の始めに一応開設の運びに至り、去る八月末には受けた質疑も僅かではあるが二〇〇問に達した。卸のDI業務は実際にはどういう事をしているか又質問はどの様なものが来るかという関心を持って下さる方からのお尋ねも最近時々あるようになった。それらにお答えする意味でも、川口屋DI室の設立と準備情況、それにお受けした質疑を整理、分類してみたので、紙上を借りて報告してみたいと思う。

 ◎DI室設立経緯
ご承知のとおり昨今の急速な医薬品の多様化に伴いこれらの医薬品の情報に関する無形のサービスがユーザーの立場から要求されるようになり、業界でも医薬品の情報を収集・分類・整理し、ユーザーに正しい情報を提供しようという所謂DI活動が高まりつつありますが、このような情報化時代にあって、川口屋においても既に数年前から、これが実現化を企画し、九大病院堀岡薬剤部長の勧奨もあり、昭和47年の夏には独自でDI室を設置する事を決定したように聞いている。

 48年春から迎えられてその開設準備をするようになった。その間会社の幹部の意見を聞き、セールスマンにアンケートを求め、また九大病院薬品情報室、三星堂DIセンター、日本商事DIセンター(当時はまだ準備中)等を見学して構想をねった。会社のDIに関する希望は可能な範囲で実現に努めた。セールスマンにアンケートを求め、卸として日常の業務で、どういう経験を持っているか、またどういう事を痛感しているか調査した。(昭和48年5月)

 この調査は日本商事DIセンター顧問の福島先生の勧めで実施してみて非常に参考になった。調査結果を簡単に纏めてみると次の様になる。但し、約三年近くも前の事で、業界全体がまだDIに対する関心が現在程でもなかった事を考慮に入れて読んでほしいものである。

 ○アンケート結果
調査に対し解答があった人員は、川口屋一一二名、関連卸問屋一九七名、計三〇九名。全般に川口屋本社が同出張所よりも、また川口屋全体は関連卸問屋よりも何れも認識が高かった。繁雑をさけるため、関連問屋も含めた総数に対する数字のみを記する事にする。

 (1)DIに対する関心がある
一四七名(解答者三〇五名中)、四八・一%。

 (2)DI室がないので不便を感じた。
一二七名(解答者二九七名中)、四二・七%。

 (3)受けた質問に対してどう処理したか。
@メーカーに相談・・・二〇五名(三三・%)
A自分で調べて返事した・・・二〇〇名(三二・八%)
B上司に教えてもらった・・・一二九名(二一・一%)
C管理薬剤師にきいた・・・三七名(六・〇%)
Dわからないので断った・・・二七名(四・四%)
Eその他・・・一一名(一・八%)
延人員、計六〇九名。

 (4)受けた質問の内容
@同種・同効品・競合品・・・二〇九名(一一・九%)
A病名・薬効・症状から商品の問合・・・一七七名(一〇・一%)
B適応症・薬効・・・一七三名(九・九%)
C副作用・毒性について・・・一六八名(九・六%)
D成分・用法・用量・・・一六四名(九・四%)
E製造販売中止品の代替品・・・一六二名(九・二%)
F錠剤・カプセル剤の鑑別・・・一五七名(九・〇%)
G薬価基準・・・一二五名(七・一%)
H一般名・別名・略字・・・八一名(四・六%)
I試薬・診断薬・・・七一(四・〇%)
J血清・ワクチン類・・・二名(三・五%)
K要指示薬・・・麻薬・・・六〇名(三・四%)
L医療機器・・・五三名(三・〇%)
M動物薬・食品関係・・・三五名(二・〇%)
N医薬用語・・・二三名(一・三%)
O外国商品・・・一八名(一・〇%)
Pその他・・・六名(〇・三%)。
延人員、計一七四四名。以上のとおり非常に広範で多岐にわたっているが、何れも極めて実務的な質問である事が判った

 (5)DI室が出来た場合
@暇があれば利用する・・・一三五名(四五・〇%)
A大いに利用する・・・一五一名(五〇・三%)
解答があった三〇〇名中九五・三%の者が利用する意思がある事が判明した。その他、色んな意見やら希望が寄せられて大いに参考になった。これらの事に更に私自身の現在までの経験に基いた考えを加えDI室のビジョンをつくった。

 それは一口で云えば、しっかりと基本をつくり、その上に実務的な且つ日常の業務に直ぐ薬に立つDI業務を遂行出来る様にする事であった。
(叶口屋DI室長、元大阪鉄道病院薬局長 能薬昭和一〇年卒業)