通 史 昭和50年(1975) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和50年(1975) 10月5日号

 福薬連 木瀬氏副会長、吉村氏は顧問に

 薬と健康の週間で日刊紙に広報

 福岡県薬業団体連合会(長野義夫会長)は九月一六日(火)午後一時三〇分より、福岡県薬剤師会会議室で第四回理事会を開催した。

 当日は、同連合会構成の福岡県薬剤師会、福岡県薬事協会、福岡県医薬品小売商業組合、筑紫二十日会、福岡県医薬品卸業協会、福薬会、福岡県製薬工業協会、福乳会、福岡県試薬協会、福岡県医療品卸メーカー会、福岡県歯科用品商組合の一一団体の理事ならびに県薬務課より岩橋課長、内藤課長補佐、古賀技師と国松顧問が出席し、神谷専務理事の司会で開会した。

 長野会長欠席のため岡本副会長挨拶ののち@医薬品卸代表の副会長更迭A各界の情況報告B薬と健康の週間行事C薬事功労者の表彰D薬務課よりの連絡事項‐などについて報告・検討が行われたがその内容の大略は次のようである。

 ▽医薬品卸代表の副会長更迭について
福岡県医薬品卸業協会の会長がさきごろ吉村重喜氏より木瀬克巳氏に交迭となったので、同協会代表としての福薬連副会長を吉村氏より木瀬氏に変更すること並びに吉村前副会長は福薬連発起人の一人としてその設立に尽力され、なお日本医薬品卸連の副会長であることより顧問に推すことを諮った結果、全理事の賛同を得た。これにより木瀬克巳氏が副会長に、吉村重喜氏は顧問に就任。

 ▽各界の情況報告

 1、薬剤師会
昨年一〇月の医療費改訂が行われてより一一ヵ月を経過したが、本年八月の福岡県薬扱いの調剤請求は八千七百万円を超え、九大恵愛団分を入れると一億円に近い。全国的に見てもその進度は良好で、県内では福岡、八幡、若松、久留米が特に進度がよい。医薬分業の上で、卸に対しての希望であるが、医家向への添付が多いことがその進度に大きなマイナスを及ぼしているので善処を願いたい。医薬品はその有効性と安全性の追及にあると思うので医薬品の価値を自ら下げることのないようにメーカー共々業界あげて努力すべきものと思う。OTC薬その他については小売商組よりのちほど要望があることと思うが、メーカー、卸、小売の協力が是非必要である。

 2、薬事協会
公衆衛生センターの設立準備状況の報告あり。

 3、医薬品小売商組
適配廃止後、価格の乱れと再販品の無視が目立つ。チラシ等が大阪で行われると、すぐ北九州・福岡へ波及する現状で、薬価安定についてメーカー、卸の協力を願いたい。特に再販品の値下げに対しては特に善処してほしい。これはOTC薬の問題にも波及することを考えてもらいたい。

 4、製薬工業協会
九月一日付でGMPが来年四月実施と決定。これに関し協会としては具体的にGMPの規格の例をあげて説明会を開催した。

 5、福薬会
家庭薬協会で近く会合を開く。内容は家庭薬の使い方を主テーマとして。

 6、試薬協会
市場を騒がしている爆薬事件について種々研究対処している。更に県当局の指導と理解を願いたい。

 7、医薬品卸業協会
医薬品の価格、添付については九州全域の問題として取り上げ、九州医薬品卸連合会として「医家向市場安定への提言」を作成し、前向きに解決する努力をしている(本紙既報)。この提言は日本卸連を通じ、更に中央へはねあげ、厚生省当局へも要望したい考えで作業中である。医薬品の変則流通については各県薬務課へその取締り強化を願い出ている。なお、吉村顧問は中央状勢について左記の諸点を強調した。

 薬業界の景気が悪い、九州でも半年程遅れたがこれに当面している。興人の問題の九州地区での影響は意外に大きいものがある。メーカー決算も明年春は大きく減益が考えられ、卸の苦しさはもう一つ厳しくなる。薬業界はこれから本格的な試練の時期に入る。九州卸よりの「医家向市場安定への提言」については中央でも真剣に検討することとなった。

 8、歯科用品商組合
医薬品業界と同様に価格の乱れで市場が大変混乱している実状にある。

 ▽「薬と健康の週間」について

 同週間行事は県薬剤師会が窓口になって行っているが、これに関し薬剤師会側より一二日に開かれた県薬理事会での検討事項の報告(既報)があり、過去の実績より日刊紙広告が一番有効な広報手段であることが述べられた。なお、岩橋薬務課長よりは具体的な行事推進を講ぜられたいと要望あり。検討の結果、福薬連として八〇万円の予算で日刊広告を採択し、主催を福薬連参加団体名とし、正副会長で推進することを決定承認した。

 ▽薬事功労者について

 「薬と健康の週間」に行われる知事表彰者については、その候補者を各団体より早急に県薬務課へ提出のこと。

 ▽薬務課よりの連絡事項

 1、毒物及び劇物取締法施行令並びに同指定令の一部改正について(特に塩素酸ナトリウムの取扱いについて)
 2、ウレタン含有医薬品の取扱いについて
 3、薬事法の改正について
 4、要指示薬指定について

 福岡県 薬社保委員・指導者合同打合せ会

 請求手数料の県内統一を確認 支部請求業務のレベルアップを

 福岡県薬剤師会は九月二三日(火)一一時より社会保険委員会(藤田胖委員長)を、一三時半から同委員会と今回新たに委任した各支部の社会保険指導者との第一回打合せ会を県薬剤師会会議室で開催した。
当日は県薬より中村、安部の両社保担当理事と神谷専務理事が出席したが、両会のおもな内容は次のとおり。

 ▽社保委員会

 藤田委員長が議長となり@請求手数料A指導者の研修方法‐について検討が行われたが、まず安部理事は「先日、日薬臨時代議員会で、全国各ブロック代表質問の中で九州代表として芳野直行氏は医家向納入価の乱れが分業を阻害していることを質したが、これは日薬としてもむづかしい問題で厚生省、メーカーに呼びかけ善処するとの結論であった。本日の議題である請求手数料についてであるが、日薬見解は各県の試験センターが分業の基本となるのでその資金源として考えている−これが大体の中央情報であるので、これらを踏えて検討していただきたい」と挨拶。

 次いで、神谷専務理事は?前回の社保委員会で、各地区毎に二名の指導者の設置希望があったので各支部毎に指導者一名以上をおくこととした。分業進展にともない県薬として処理不可能となるので支部毎に実務をお願いしたい。調剤請求についてはその主軸となる社保指導者の方々で推進し、後進支部のレベルアップを図りながら少くとも来年度より足並みを揃えて実行したい。手数料は現在、県内各地でバラバラであるのでこれを統一し、その大部分は各支部に還付する。これにより、支部、末端活動を積極化したいのが目的である。?試験センターについては現在すでに東京、大阪、神奈川、熊本など一八県が日薬の補助を受けている。補助を受けるには実績の積み上げがなければならない。?分業の阻害となっている医家向納入価格の乱れについては、九月一六日開かれた福岡県薬業団体連合会で、なお北九州市と福岡市でのメーカー・卸の会合の席上でも県薬の意志を伝え改善要望を行っている‐と述べて、議事に入った。

 1、請求手数料について
各委員より種々質疑・意見が述べられたが、@支部毎の手数料は現在でこぼこであるので県薬はこれを統一する方向で作業し、これにより県と支部の新密度を高める、同時に支部活動を積極化するA手数料の二割を県、八割を支部へ(素案)B試験センターはDIセンターを含むC五年後に五〇%分業を設定すると県下で一、八〇〇軒の保険薬局が分業体制をとる必要があるD試験センターは個々の薬局で行うのでなく団体として行うべき(日薬)E受益者負担のことが認められるべき‐などを踏え、原則的には県薬の主旨を諒解。結論として県薬の具体的な案ができたら再度委員会に諮問することを確認した。

 2、指導者の研修方法について
@県薬での研修会日程は隔月開催とし、一五日〜二〇日頃を研修日とする。費用は県薬負担。
A各支部での研修会開催を積極的に行う。この費用は支部負担。指導者にできるだけマスターして戴き支部へ浸透するようにすること、必要に応じ要望があれば担当理事をさし向ける。
B県薬での指導者研修会の内容については県薬に一任。
C現時点において、指導者の格差がある点を考慮して実施すること。

 ▽社保指導者研修会

 中村担当理事が議長となり、保険事務の変動がはげしく過渡期と思うが複雑であるので十分な研修をお願いすると述べてのち、まず神谷専務理事は大略次のような挨拶を行った。

 ア、本年七月の請求額は昨年同月比三・五倍となった。この上昇比率は全国平均よりなお一・五倍で、請求額は東京、大阪、神奈川に次いでいて、今後益々上昇するものと思う。同様に請求業務は益々増大する。

 イ、我々業界について日本経済新聞(9月8日〜13日)に「これからの薬局経営」(長研代表取締役長谷川藤吉郎)が六回にわたり掲載されているが非常に良い内容のもので参考になる(表題内容別掲)。これの結論は、これからの薬局経営は処方調剤とOTCで十分成り立つと云うものであるがその繁栄の元に処方箋調剤の進展を示唆している。

 ウ、保険請求は現在県薬に毎月四日迄に届けられているが、今後は支部で纏め保険調剤調査表を付けて県薬へ届けられたい。そのため県統一の処方箋料を徴収し支部へ還付する。これにより下部組織の強化をはかる。

 エ、一〇月の請求(9月取扱い分)、一一月の請求(10月取扱い分)の変更事項については各々県薬より通知し、なお九州薬事新報にも掲載したが、次々と変化があるので留意されたい。

 オ、この研修会は隔月に実施する。請求業務内容の変化は予断を許さないのでその都度本会を通じて伝達する。

 次いで、藤田社保委員長は、大川支部より招かれての支部薬剤師会との分業懇談会と同地区医師会長等との対話の報告等を述べ、県医師会とか郡市医師会とそれぞれの薬剤師会との話し合いが理想的ではあるが、現段階では全般的に不可能に近い。日薬として打ち出しているマンツーマン、マンツーグループを推し進めるべきとの結論の通り、我々としては医師とのコミニュケーションを深めてゆき個人は個人として、県(地区)薬剤師会は県(地区)医師会と話し合いの場を持ちながら、両論相俟って進めていくことが必要であると強調した。なおこの研修会の機会をとらえて、請求業務の勉強だけでなく分業の進め方について意見を出し合い、県薬に具進することも考えられては如何と提言した。

 請求実務については、県薬松井事務長より@保険調剤調査表A請求明細表B社会保険法、国民健康保険法(何れも薬局関係抜萃)C調剤報酬請求書、請求明細書、編集順序−などについて詳細な説明が行われ、これに対して熱心な質疑があり、第一回研修・打合せ会は有意義に終了した。

 ▽社保指導者名簿

 柴田(伊)、三根、小須賀、榊、上田(福岡)、有吉(宗像)、守田(粕屋)、満生(筑紫)、土井良(糸島)、関屋(甘木)、倉田(久留米)、古賀、桑野(八女)、籠田(浮羽)、立石(三井)、横山(柳川)、花田、島(大川)、鶴、清水(大牟田)、柳沢(中間、遠賀)、井上、新美(若松)、上杉、渡辺(八幡)、石川(戸畑)、中原、小野(小倉)、谷口(門司)、泉(京都)、平田(築上)、仲野(飯塚)、安永(直方)、井手上(田川)、江上(八女)

 ▽「これからの薬局経営」

 @納得できる物売る、お客の体質など考えて。
 Aまず医師との協力、処方箋獲得は地道に。
 B保健剤熱は一過性、今後の急成長は疑問。
 C雑多な陳列を一掃、多角化も顧客の便宜から。
 D乱売からの脱却を、「薬効第一」も次第に浸透。
 E処方箋調剤に力を、医薬分業を繁栄の元に。

 薬務課長協議会 ポスト適配の指導に苦慮

 全国薬務主管部課長協議会は九月二〇日、神戸市で開催、厚生省から本橋審議官、新谷企画課長、代田安全課長らも出席し当面の問題について協議した。当日の主な内容は次のようである。

 @薬局等の構造設備は対面販売上十分なものが必要であるので、現行規則による面積では不十分であるとする意見が出されたが、厚生省側は現段階での改正は考えていないと答えた。
 A「大規模なスーパー等による薬局」の表現の中で、大規模の定義については「他小売店に影響を与える」意味であることを確認した。
 B適配条例廃止後の流通問題と対策(行政指導と自主規制)については各県とも方策を立てることに苦慮しているとの発言が多く、結論は出なかった。
 C第二薬局についての局長通知はより具体的な取扱方針を打ち出してほしいと要望された。

九州薬事新報 昭和50年(1975) 10月15日号

 日本学術大会

 「地域医療と薬剤師」を主テーマに分業、流通等のシンポジウムで盛会

 日本薬剤師会の第八回学術大会は九月二〇日、二一日の両日、地域医療と薬剤師をメインテーマに神戸市で開かれたが、全国より約二千五百人の会員が参集し盛会裡にその幕を閉じた。

 大会では医薬分業の進展気運を反映して、特に医薬品の安全性、保険薬局の将来展望をテーマにパネルデスカッションを展開した部会などに参加者の高い関心が集まり、なお従来の大会とくらべ各部会にわたっての研究・意見発表に学術的色彩がより強く打ち出されていたのも特色であった。

 学術大会に先立って、日本薬剤師会は一九日に兵庫県薬剤師会館で総会を開き五〇年度の日薬賞(七名)日薬功労賞(一三名)の授賞式を行ったが、九州山口管内では次の三氏が栄誉を受けた。

 ▽日薬賞=山中栄一(熊本)
▽日薬功労賞=坂井透(長崎)、島正之(佐賀)。
学術大会の各部会のうち主なものの内容概略は左記のようである。

 ▽製薬調査部会

 医薬分業下における製薬企業のあり方をテーマにシンポジウムが行われ、医薬分業に対する製薬企業の考え方が始めて公開されるとあって会場は満員となった。まず開局者側から納入価格の安定化と添付文書集の配布など情報伝達の励行、開業医側からメーカー独自の新製品開発とゾロゾロ品の整理、薬価の適正化などに強い要請があった。

 メーカー側からは「医薬分業は医薬品の流れが変るというだけでなく構造的な変革をもたらすものであり量より質の時代へ移行する薬価についても算定方式が変り価格も安定方向へ向うだろう。プロパー活動は薬局へも積極的に行わなければならず、教育研修活動の強化拡充が必要である」と述べられた。

 最後に厚生省薬務局の代田安全課長は、医薬品再評価のその後の展望と題して特別講演を行い「薬価収載品目の整理について単味剤千二百五〇品目中、作業に乗ってくるのは九百品目位で、約四分の一ぐらい脱落するだろう。販売意志のないものを含めて三〇%程度が整理されるのではないかと思う。配合剤の再評価は引続いて実施するが、配合理由のデータが要求されるほか、単味剤の判定結果も再評価の基準となり、これまで安易な形で認められている効能は削除されるだろう」と述べた

 ▽薬業卸部会

 医薬品卸業の機能とその社会的価値についてそれぞれの卸代表者が述べ、又その機能拡充への期待として病院薬局、メーカー、一般薬局、卸の医薬品管理者が将来あるべき姿を述べた。その中で、社会的価値づけでは座長の吉村重喜氏が@経営者の良心A文武両道B狂気じみた経営を説き、ユーザーとメーカーとの間でバランスオブパワーをとる卸の未来は輝しいと締めくくった。また卸機能拡充の期待としては品質管理、法規の順守などが叫ばれ、卸の環境整備を早急に確立する声が強かった。

 ▽社会保険・薬局・薬業経済合同部会

 きたるべき医療制度への道程をテーマにパネルディスカッションが行われ、それぞれの立場から意見が述べられたが提案にみられた共通点は購入価格と薬価基準との「逆ザヤ」の是正に最大のねらいがおかれた。各パネラーは「逆ザヤ」の存在が、医薬分業の促進にとって致命的な阻害要因となっていることを指摘した。

 その外、@薬局を維持する上にも技術料にプラスしたオンコスト制を将来確立する必要があるA卸が備蓄センターを運営する中で医療用医薬品に再販制度を導入するB薬価調査とそれに伴う算定方法の改革を主張し現在の予告調査を中止し実勢価格との格差を最小限にするようC調剤報酬の決め方を経済変動に合わせたスライド制導入の検討−などの意見提案が行われた。

 薬業経済部会の特別講演は、学習院大学経済部の田島義博教授により「医薬品の流通と価格」のテーマで行われたが、その中で流通システムの問題については「まず人の問題を解決しなければならない。受注の人海戦術は人件費を増大させ結果としてコストアップを招いている。一方、マージン操作、リペート操作、添付等のインセンティブは正規のマージン率を低下させながら行われているが、この点は機能に見合った収益が正規のマージンによって得られるように改善すべきであろう。また理念的な問題としては欧米流に「プロフェッショナルサービスで利潤をとり、売買差益で経営するのではないとの考えを取り入れる必要がある。この考え方は医薬分業にもつながる問題である」−と述べた。

 大手スーパーなど 薬品部開設に積極的 処方調剤応需も計画

 適配失効を契機として医薬品部門の開設に積極的な姿勢をみせる大手スーパー大型チェンストアの進出が目立ってきつつあるが、首都圏を中心に躍進を続けている西友ストア、全国的にチェンストアを展開している長崎屋の例をあげると次のようである。

 ▽西友ストア
現在医薬品部は二〇店舗に過ぎないが、今後は大幅な薬品部開設に踏み切る考えで、今後一年間に少くとも二〇店、最終的には全店舗の七〇%を目指している。また今後開設する医薬品部門は大部分が薬局の形態を取るとしており、処方箋受入れにも意欲を示している。

 ▽長崎屋
全店舗に医薬品部を設置する方針をきめ、各店舗ごとに積極的な準備を進めている。現在まで直営二店、テナントを入れても一〇店舗に過ぎなかったが、今後はスピード化される。原則として薬局を設置するが、環境が整うまでは調剤より販売店に重点をおくという。

 公取委、歯磨の公競規約を認定

 公正取引委員会は九月一二日付で日本歯磨工業会から出されていた公正競争規約について認定し告示した。同工業会は四八年二月に表示問題等で公取委から警告を受けたのを契機としてその指導のもとに規約の作成作業を続けていたもので今回の認定により、四〇番目の公正競争規約締結団体となった。

 過ぎし日々(5) 的場長紀

 間もなく初代李承晩が大統領として、日韓併合当時よりの長年の亡命生活から米国婦人同伴で帰国就任。対外的には特に日本への風当りが一番強く、一方的に所謂領海の「李承晩ライン」を宣言発表し、幾多の漁民は漁船の拿捕、銃撃等で三十年頃まで随分と切歯扼腕した。国内でもまだ安定していないし、然も一衣帯水にある韓国だけにトラブルの起るのも止むを得なかったかも知れない。一方年を追うて独裁政治に対する国内の批判も高まり、遂いに全学連の糾弾にあい再び故国を去り終焉の地ハワイへ亡命するまで我国には冷厳だった。

 家族の安否も更に咸興引揚げの日本人より聞き、済州島より苦労を共にした同僚も殆んど帰国し、市内の日本人もまばらになり追い立てられるよう気もして後髪引かれる思いで、晩秋の風邪も冷い十一月初旬、友人より恵んでもらった服でどうやら恰好つけて竜山駅を発った。終着駅釜山の中程の山峡の暗闇に急停車し容易に動こうとしない、交渉役らしい人が廻わって来て説明を聞き幾らかづつ金を出しあって二時間程して漸く動き出したが、もしかしたら集団強奪ではあるまいかと不安なひと時だった。

 米軍指令で引揚者は一人千円とリュックサック一つに簡単な手提という限度があり、余裕のある人はいろいろと工夫していたが、服の裏地に縫い込むのは普通のやり方で、靴の裏にはりつけ修理用の皮をくぎつけして通過したようだった。

 ソウルを後にして関釜連絡船でなじみ深い、興安丸に乗船、山口県仙崎港に上陸したのは一週間目の夜で思いもよらぬ地元の婦人会よりの梅干入りのにぎり飯二ヶをのみこんで、無蓋車に分乗し夜風に吹かれ郷里に急いだ。熊本駅に下車、見渡す市内は全くの焼の原。予想以上で戦前の市街地の思い出に感慨もまたあらたに、市外に余生を送っている老母は達者か。妹は。夜半でもあるし戸締りからなかなかあけそうにない、数分たってやっとあかりのもれる程度にあけてくれた。「幽霊かと」!八十二才の老母にとっては無理もなかったろう。

 私の生家は田舎ではあるが食糧は生産していた訳でなく、配給のさつま芋が主食で米麦粉等の闇買いでかろうじで捕食していたが、現金より大部分は衣類との交換で、百円札を屏風にくまなくはりめぐらし、自家製の濁酒でわが世の春に浮かれた農家もかなりあった。市内は勿論他県よりの買い出しは毎日のようにたえることはなかった。

 翌年三月下旬田圃の畦道の草花も漸く春めく頃、妻子四人元気な足どりで突然引揚姿で帰って来た。一人も欠かさず再会とは!ぐっとつまるものは、ご想像におまかせしたい。家族との生活がはじまると、親子ども相食む時代、ともすると反目する日もあり、あてもない日を送った。

 暫く熊本市の上野同仁堂薬局の製薬工場に勤め、主にアンプル注射薬製造を受持った。その頃工場の顧問として前和田、加来両教授も一役かっておられた。友人の斡旋もあり、食糧庁の外郭団体である県単位の未利用資源を開発する団体が発足したのを機会に、まんざら縁のない仕事でもないので粉食協会に勤務することにした。

 地方の小学校生徒の収集した団栗、桑葉、海藻類、葛根、それぞれ専門の業者に委嘱し、製品は食糧事務所の指示により代用食又は捕食として県内外に発送。そのうち団栗は脱渋操作に要する経費が重なり、麦粉と混合パンとして製造してみたがあまり歓迎されなかった。その他専門工場の巡回指導研究にあたったが、初めての食品加工で短期間ではあるし、技術的にも問題があったが、米国より飼料用の玉蜀黍の輸入もあり精粉加工し、食料として配給され、食糧事情もいくらか好転のきざしがみえ、一年余でこの協会も閉じることになった。

 転々としたサラリー生活に、このへんで見切りをつけて資金もないが開業でもと案じていた所、級友の熊薬教授の真崎辰次氏の推せんにより、飯塚市の麻生鉱業の飯塚病院に就職したのが筑豊入りの第一歩で、二十二年五月だった。ふり返ってみると、これが私の人生の転換期だったろう。当時はやはり日用食糧品衣類凡て配給制で、家族は足繁く配給所に通ったものであるが、石炭採掘もエネルギー産業として増産体制に入り、炭坑病院としても他の従業員と同様に特配もあり恵まれていた。

 支部別保険調剤調査表 昭和50年8月分 福岡県薬剤師会

hyou


 読みましたか?

 ▽"商工経営"欄
調剤薬局の営業条件
処方箋月千枚必要、健康相談にものる気で。
取材先…福岡県薬神谷専務理事、大阪町調剤薬局、福岡県医薬品小売商組白木理事長。
(朝日新聞9月30日)

 福岡市薬理事・部会長会

 本年度は請求審査従来通り 次年度は県薬の線に沿い検討

 福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)は九月二七日県薬会館で理事会並に支部連絡協議会を開き、さきに開かれた県薬支部連絡協議会連絡事項等について報告、協議を行った。その主な内容は次のようである。(本紙八九五号県薬記事参照)

 ▽調剤請求業務指導員の設置並に県薬の請求手数料賦課については、昨年の医療費改訂以来各地区調剤報酬請求の激増により県薬の請求業務がパンク寸前にあるため、県薬としては各支部の指導員により各支部毎に審査する方針であるが、本会としては既に八名の審査員により毎月四日審査業務を実施しているため本年度は従来通りとし、来年度までに県薬の方針に沿い手数料の賦課の変更その他について検討することとするが、本会より推せんの指導員は左記五名である。
柴田伊津郎、三根孫一、小須賀正義、榊チエ、上田ヨシエ。

 ▽適配廃止後の管理体制の適正化については、薬剤師職能の向上を指向、特に名儀貸しの廃除を骨子とした県薬務課方針が出された。なお、これに関連して最近、無資格者の保険調剤、漢方薬の取扱い違反の二件につきそれぞれ一週間の営業停止処分を受けた件が報告されたが、今後会員の注意を喚起するため、その都度違反内容を報告して欲しいとの要望があったので次回より薬務課の臨席を要望することとなった。

 ▽第42回九州山口薬学大会は一〇月一六、一七の両日長崎市において開催されるが、本会から藤野、荒巻、成沢三氏の研究発表が行われる。出席する一般会員には、一五〇〇円補助することを決定した。

 ▽一〇月一二日、一八日の一週間行われる「薬と健康の週間」行事については県薬事業のほか福薬連が主体となり一〇月一三日付西日本新聞に広報文を掲載する。本会としては市政だよりを利用して「薬の相談窓口設置」をPRする。窓口は市薬事務所、相談担当者は小須賀正義、柴田伊津郎、荒巻善之助の三氏に決定。

 ▽森下後援会に関する件については、福岡県副本部長兼福岡地区支部長は斉田会長と決定、開局会員一〇名に一名の班長選出については、本会としては各部会の部会長をこれに当て、会員数の多い部会は複数とする一会員毎に五世帯の後援会会員を確保し、名簿を提出後援会費千円の未提出部会は一〇月末日までに納入するよう要請があった。

 その他@調剤報酬と銀行融資についてA年末年始の救急センター調剤部門勤務についてB市薬分業プロジェクトチームと医師会同チームのドッキングについてC会の組織の強化等について報告並に意見交換が活発に行われた。

 福岡県病薬・病院協会共催 新採用薬剤師教育研修会 多大の成果をあげて終了

 福岡県病院薬剤師会(堀岡正義会長)は福岡県病院協会(井口潔会長)と共催し第三回新採用薬剤師教育研修会を九月六、七日の両日、九大病院および志賀島・しかのしま苑において一泊二日の左記日程で実施した。

 ▽九月六日(土)
@開講式(14時10分)
A医療と人間関係(15時〜16時)=牧病院院長牧武
B調剤をめぐる諸問題(19時30分〜21時)=九大病院薬剤部野仲範子。

 ▽九月七日(日)
@薬品管理と品質管理の実際(9時〜10時30分)=九大病院薬剤部唐沢博順
ADI活動の意義と実際(10時40分〜12時10分)=新日鉄・八幡製鉄所病院薬剤部高橋三男
B座談会(13時10分〜14時40分)
C閉講式(14時50分)

 開講にあたり堀岡会長は大要次のような挨拶を行った。「薬学の卒業生が薬剤師として立つ場合、基礎薬学の知識はあっても臨床面での知識は皆無であり、実務上の問題に対しての指導もなされてない。現在の調剤学、調剤技術は医学、薬学の進歩に適しているか考えるべき問題が多い。医療人が各々の有する医療技術を生かすことが医療行為であり、患者との人間的信頼関係があってこそ医療が成り立つ。薬剤師は薬についての知識はもっていても実務に役立つ医療人としての哲学、知識は学んでおらず、また技術は学んでも知的医療行為の教育はなされていないのが現状である。そのため薬剤師のプロ団体が卒後教育を行なう必要性に迫られている。本日の研修がそれに当る。」

 受講者は47施設、70名(男性14、女性56)で、宿泊施設の収容能力の関係で折角の申込を断わる人もいて第1回57名、第2回72名と同様に嬉しい悲鳴をあげた有様であり特に第2回から病院協会との共催にあいたことにより病薬の活動が関係各方面に深く認識されて関心を呼んだものと思われる。この熱気溢れる雰囲気は研修の場までにおよび、講師、受講者が一体となり終始真剣な姿が見られ、明日の病院薬局を担う新人の意気込みが強く感じられた。

 第一日目講義終了の午後九時から就床までの自由時間には受講者間あるいは講師を交えての意見交換の風景が随所に見られ、一泊二日ならではの無形の効果が挙がり、研修の成果を一層高めた。

 第二日目の午後、有終の美を飾っての座談会は、病院薬局が抱えている問題点を中心に特に時代を反映して薬品の品質管理についての発言が数多くあり、熱心な討論がなされた。

 つぎに、今後の研修計画の参考にするために研修会についてのアンケートを求めたが、その結果は次のようで隔意ない率直な回答内容が得られている。
1、研修の内容について
九〇%が有意義。
2、今回の研修項目以外の希望項目について
病態生理、クリニカルファーマシー、薬理、注射薬の混合など。
3、開催の期日および研修方法について
九月で土、日曜を利用しての二日間。
4、研修会に対しての感想、意見について
@理想と現実のギャップを痛感した。
A講義内容が全般的に広く浅くの傾向にあった、もっと深く掘り下げたものにしてほしい。
B一〇人位でのフリートーキング形式の場がほしかった。
C研修会の開催をふやしてほしい。
この二日間の研修は、毎日業務に追われ勉強の時間をもたない特に小施設の受講者にとって、病院薬局のあるべき姿を示したものとして深い感銘を与え明日への希望をもたせた実に意義ある研修会であった。

 日本卸連「標準価格」は薬局・病・診の業態差別的でなく全国画一で

 日本医薬品卸業連合会の渡辺徹太郎会長は近く、調剤薬局向け医療用医薬品の標準価格問題と薬事法および薬局等構造設備規則などの問題について、各都道府県卸協組理事長に対し通知する方針である。この通知は概略次のような内容のものである。

 ▽調剤薬局向け医療用医薬品の標準価格問題@標準価格の設定に当っては、全国画一的な設定を図るべきであり対薬局対病院・診療所という業態別差別的なものでなく同一的なものを指向する。もとより個々の取引条件に基づく価格差が存在するとしても、現状のような薬価混乱の中では標準価格は銘柄別、地域別にメーカーとの連繋により定められることが望ましい。更に、GMP、GSP等に関連する技術料等の算入も併わせて検討されるべきものである。

 A医薬分業検討委員会の今後の運営については、分業問題に関連して社会ニーズに対応するための卸機能の検討を行うこととする。また、標準価格設定方針に基づく具体的事項の検討及びDSI(ドラッグサプラインフォメーション)等については小委員会に付託する。

 ▽JGSP、薬事法及び薬局等構造設備規則問題
@ほとんどの卸協同組合から賛成する旨の表示があった。しかし各論についての意見もあり、それらを叩き台として最終的なものを煮つめていく。
AこのためJGSPプロジェクト委員会を一〇月二七日一一時から東洋経済ビルで開き、JGSP等の纏めを行う。
B一一月一四日一三時から東京薬業健保会館で各都道府県卸協組のJGSP等推進責任者の講習会を開催する。問題によっては、理事長を通じ了解を得て卸連JGSP、薬事法及び薬局等構造設備規則を対内から対外にアピールする。

 薬学教育協議会 改正案の意見書取纏め 年限延長は反対意見多い

 薬科大学(薬学部)のカリキュラム改正問題について、(財)大学基準協会の依頼で検討している薬学教育協議会・ワーキンググループは、先きに纏めたカリキュラム改正案を全国の薬科大学(薬学部)に提示していたが、このほどその意見書を纏めた。ワーキンググループは今後この意見を基に原案を作成し大学基準協会に提出する。

 ワーキンググループが提示した改正案は一般教養、基礎専門科目、専門共通科目(コアカリキュラム)、専門選択科目の四段階から成っていて、改正の基本方針は@基礎の重視A現行基準にとらわれず薬剤師教育の最低必須の共通科目と自由度を認めた専修コースの設置B先見的に年限延長を考えずカリキュラムを検討したCいずれのコースでも国家試験受験資格者としたDいずれの職域に進む場合でも医薬を取扱う者としての技術とモラルをもった活動ができる教育の考慮−などである。

 この基本方針に対し、大多数の大学が賛同しているが具体的な問題ではかなりの異論、提言がみられる。「薬学教育の使命といった根本問題の論議が先決」(千葉大、理大)、「大学基準については早急に結論を出すべきでない」(東北大)、「医学と薬学の融合という視点があいまい」(東邦大)などである。具体的な主なものの内容は次のようである。

 ▽五年制延長案について
現実的には反対が多く、将来の問題としての延長を訴える声がみられる。これは現場の教育者と第三者的薬学者との間のギャップを示すものとして注目される。反対意見は「単位の算出の仕方で延長は決められたい」(徳島大)、「機が熟していない」(名城大、日大など)、「卒研制度を振り向ければ四年制でも可能」(福岡大、理大)である。

 ▽専門選択科目について
各大学の独自性と薬学プロパーの多様性を盛るコース制をこの科目に期待するのはよいとしながらも、この過程に対する期待もまちまちである。

 ▽医療薬学について
薬学の進歩と医療の協力体制に備えて薬学教育、薬剤師育成をどうするかという今後の課題については、医学・薬学の融合という歴史的視点から検討せよとの声が多く「各大学で先駆的に試みている経験」(東薬の卒後教育、名城大の臨床薬学専攻科など)や「諸外国の実情を勘案して大局的な検討を希望する」(東大、東邦大、岡山大)など、薬学教育協議会に対する期待が強い。

 医薬全商連 再販締結の義務化断念

 医薬全商連(荒川慶治郎)は九月二二日、再販メーカー一二社の営業部長を招いて緊急理事会を開き、大詰めを迎えたダイエーその再販契約問題について協議した。このあと全商連の荒川理事長は同日夕記者会見し、その結果について「ダイエーとその再販契約の締結は、現時点であきらめざるを得ないとの結論に達した」と発表した。

 過ぎし日々(6) 的場長紀

 病院では医薬品衛生材料も勿論配給制で、不足分は他の方法で補給せねばならなかった。薬局の仕事は大部分外部の方に時間をさかれた。たまたま明治赤池病院の増田昇造氏は集談会で資材専門委員会について話し、薬品の配給を炭坑医療物質協議会で行うようになり、以後暫らくは外来患者、入院患者数に応じて割当てがあり、その枠内で薬品卸屋より購入したが、限られた数量で分補にならない程度で特定の血清、ワクチン類にはどうしようもなかったが、熊本大学の太田原教授を訪れ懇請して分譲してもらい、ジフテリヤ血清は有効期限一年となってはいるが、二年半は有効と説明され(私の在鮮当時戦争も逼迫した折、期限切れを了解のうえ渡し、幸い命拾いしたこともあり)、期限切れで返品されたものを卸屋より廻してもらって間に合わせた。

 サントニン、スルファミン系も福岡市の裏通りに闇商売をやっている知人を何回か尋ねたが、なかには真製品もあったが包装は輸入品として立派なものであるが、持ち帰って調べてみると二、三割は入っていたが使いものにならない。放出されてからブローカーの手に入った時はラベル通りの製品に違いないが第二次の手に渡ってからうまく加工していたように思われる。またストレプトマイシン一瓦一万円で取引され、当時の庶民には到底手の届くものではなかった。

 その頃は何処の病院でも一般製剤、注射薬製造の原料確保に奔走した。ロートエキス代用として機内の空き地に栽培したベラドンナ葉製剤を、麻生鉱業直属の研究科勤務の高崎吉彦(田川氏開局)、同じく岩橋政夫(八幡区開局)両氏の努力により当分の間補充してもらった。研究科責任者として将来を嘱望されていた久保川憲彦氏(福岡市開局)は、もともと農芸化学出身であったがもとの薬学にかえり主として漢方薬専門として広く注目されている。

 公立と、会社の福利施設としての病院のあり方は、戦後でもあって異なり、特に飯塚病院は一般住民に解放され、県内外に炭坑も七ケ所あり病院も設置されて現在直方市で開局盛業の舌間七之助氏、薬局長として勤務。赴任当時何かと引継ぎかたがた院内の雰囲気等話してもらった。飯塚市開局の吉田義隆氏、各職場で組合が出来、薬局より敏腕を振って活躍してもらった吉野直行氏(戸畑区開局)翌年現薬局長の三宅清彦氏の来任を得て大過なく終えたのは同僚の支えがあったからである。

 順序が前後したが、本稿で特筆しておきたいのは、なんといっても「筑豊薬学集談会」である。創立以来四十六年余、今日までの資料記録を整理するだけでも容易な事ではない。今回私の記憶をたどるための集録その他に対してなみなみならぬ手を煩わした事をまず三宅氏に感謝しておきたい。全国でも余り例をみない薬学集談会が今なお続いているのは、発足当時よりの徳島先生の努力は勿論、幹事会員の協力があったからである。それに職場での日常ありふれた事、小実験、文献の抄読、シンポジウム等平凡な集談が本会の命脈を維持してきたのだと思われる。然し演題のなかには九州薬学会に発表しても遜色ないものもあり「なんだこんなことぐらい」と発表された事が研究のきっかけにもなった。目下三宅編集委員は「筑豊薬学集談会誌」を編集中で、集談会の内容は本紙に掲載する事にして本稿では省く事にした。

 集談会の歴史をさかのぼると昭和四年十一月第一回が開催されてより、二十二年六月には第五十六回となっていた。この集談会は会長制でなく、世話役として幹事があり、初代は徳島保城先生、その後は私が引受けた。集談会内規に飯塚病院奉職者をあてるとなっていたからである。この内規に隔月一回第三日曜午後一時より集談会を開催することになっているが、戦時中又戦後の困難な事情からなかなか実行出来なかった。又本会は会費を徴収せず、開催に要する費用は飯塚病院側に於て負担するとなっている。但し飲食を伴うことは殆んどなく、特別に年末の忘年会とか他より講師を招き歓迎会を行うときなどはその都度宴会費をとっていたようである。

 二十三年当時の忘年会をかねた集談会では各人弁当箱に肴をつめ、持参のアルコールと炭坑病院従業員に特配のあった僅かな酒を提供しての宴会であった。当時は炭坑病院従業員には一般炭坑労務者と同じく酒、米、地下足袋などの特配があったのでその地下足袋が闇米に変ったりしたものである。

 切迫した経済状態では飯塚病院だけで集談会の費用を負担する能力もなく、発足当時のような余裕ある会計はできなかった。第一回よりの集談会の会計簿があるが経済専門の人がみたらびっくりするような形式的なもので、支出額の各々の会計が収入になり、大抵病院で支払っている。熊本薬専の藤田教授の講演謝礼五拾円となっているが、当時米一俵が五円程度であった。

 戦後復活第一回の九州薬学会が筑豊の地方小都市飯塚で開催されたのは二十二年四月である。毎日の食糧を確保するのが精一杯で、学問どころではないといった戦後の荒廃した状況の中で九州薬学会に復活の灯をともした快挙であったが、これは徳島先生を指導者として永い間培われた筑豊薬学集談会があったためであると思われる。

九州薬事新報 昭和50年(1975) 10月25日号

 日本卸連、市場混乱防止対策政策へ

 日本医薬品卸業連合会(渡辺徹太郎会長)は近く、医薬品市場の混乱防止対策をまとめ、製薬協など関係団体に協力を要請していく方針である。この対策の内容は次のような項目からなっているとされている。

 @医薬品の生産と供給。
 A販売姿勢、販売計画。
 B適正化価格。
 Cアウトサイダーの監視強化。
 D直販メーカー。
 E流通管理強化。

 医療値上げ11月実施絶望

 田中厚相は九月二九日、東京都内で中医協の円城寺会長と会い、中医協審議再開の打開策について協議したが、事態の早期打開は無理との見方で両者の意見が一致した。この結果、医療費値上げは当初厚生省の予定した一一月実施が絶望となった。

 同日の会談で田中厚相は武見医師会長が九月二〇日に高松市で行った「一一月値上げで合意」という発言および二六日の厚相と支払い側との会談で、支払い側から中医協再開への条件として出された医療費値上げの参考となる薬価調査の早期実施などについて円城寺会長に報告。

 次いで今後の中医協正常化のメドについて話し合ったが、支払い側の要求に対して診療側の反応が定かでない。武見会長が一〇月五日から一二日まで東京で開催される世界医師大会で会長を勤めるため多忙−などの点から、次回の中医協再開への動きがでてくるのは早くても一〇月中旬以降にならざるを得ないとの見方で両者が一致した。

 塩ビ殺虫剤処理漸くメドが立つ

 塩化ビニール入りのエアゾール型殺虫剤は昨年、製造中止、製品回収の措置がとられ、回収された製品千七百万本余が危険物倉庫等に保管されている。関係メーカーは同剤の処理方法について検討、協議を続けていたが、このほど漸くメドがつき、産業廃棄処理業者(小池化学=塩素化法、首都環境整備梶#R焼法)との契約を結ぶ運びとなった。契約手続完了してのち処理業者二社はプラントの建設にかかるが、これに約二か月を要するので実際に処理作業にとりかかるのは今年末頃となりそうである。全量の処理終了には二年はかかるとされており、なお処理費だけで約七億円が必要と推計されている。

 事前報告制で大衆薬価格落着く

 一般用医薬品の価格は四九年一二月を一〇〇とした場合、今年八月現在で全国平均〇・五%の値上りで横ばい状況となっていることが明らかとなった。この結果、一般用医薬品の価格は鎮静化したものとみられていて、これは一昨年から続けられている薬務局の「事前報告制」が大きな効果を発揮したものといえるようである。

 これからの季節商品となる総合感冒剤は、大部分が再販品ということもあり、公取委が「添付」や「値引」に神経をくばっており、ケースバイケースとしながらも、このような状況では値上げを認めるわけにはいかないと価格改訂に対し厳しい方針で臨んでいる。

 一方、スーパー薬品部の動きは当初予想された大幅な値引き競争も一部地区を除いて余り見られず、一般市場は価格面では平静裡に推移している。一昨年から一般薬の価格調査を続けている薬務局の森経済課長も「八月で約十数品目の値上げは了承したが、一般薬価格の大幅なアップはなく、事前報告側が効を奏して横ばい状態である」と述べている。

 医学薬学発祥の地長崎で 第42回九州山口薬学大会 集う会員千二百余名

 第42回九州山口薬学大会は、一〇月一六、一七の両日、眼鏡橋に近い長崎市民会館に約千二百余名の会員が参加し、本会議はもとより各部会とも満員の盛況で終始し、特に分業問題に関連の深い医薬分業部会、女子薬部会などは例年になく活気が溢れていた。

 大会は「社会の中の薬剤師像」を主テーマに、本会議の特別講演は「洋薬伝来と長崎」と題する地元国立長崎療養所医長中西啓氏(日本医史学会会員)のユニークな内容の講演であり、各部会では薬剤部長協議会の「日頃思うこと」=九州山口薬学会会頭林清五郎氏学薬部会の「学薬あれこれ」=日本学校薬剤師会副会長児玉治兵衛氏、薬学部会の「医薬品情報の評価」=徳島大学医学部附属病院薬剤部長高杉益充氏の特別講演のほか、七〇件余にのぼる一年間の研鑽の成果が終始熱心に発表された。

 大会の内容は本会議(一部、二部)、九州山口薬学会総会のほか、薬剤部長協議会並びに薬学、学薬、医薬分業、公衆衛生、薬務、薬局、薬業経済(卸・商組)女子薬の八部会が開かれ、特に薬学部会は二日目早朝より午後四時まで多数の研究発表が続けられた。

 第一日午後六時から市内玉屋デパート大ホールで開かれた大懇親会場では病をおして出席した隈大会委員長の常と変らぬあいさつに参加者一同安堵の色を見せる一幕もあり、また、大会前日一五日は午後二時から長崎港を望む四海楼において薬学会運営委員会、薬剤部長協議会運営委員会に引続き大会運営委員会が開催され運営の細部について打合せ並に今後の問題についても意見が開陳され、不況時における大会準備の労苦が感じられる委員会であったが、見事に整った大会であった。

 本会議

 本会議は、大会第一日一六日午後一時半から市民会館文化・大ホールで、第一部式典、第二部会議を地元牟田邦彦氏の司会、松尾副会長の力強い開会宣言によって開会、国歌斉唱についで戸田助人前熊本県薬会長ほか二七名の物故会員に黙祷が捧げられ、病をおして出席した隈大会委員長は「本年は不況の影が濃く、当地では造船界の不況の影響をもろにうけ皆さんに満足頂けるような華麗なものではないが、内容は充実したものとの確信があるので有意義な二日間を過して頂きたい」とあいさつ、長野九州山口薬剤師会長は「医薬分業のみが薬剤師の唯一の職能ではないが、分業の確立なくしては医薬品の管理者としての使命を完うすることはできない。今吾々がなさねばならぬことは分業受入れのための実質的、経済的な努力と吾々自身の再教育である。この大会を自らを磨くための機会として心に何ものかを期せられるよう切望する」と述べ、引続き林薬学会会頭は「長崎は約百年前、大先輩長井長義先生がアメリカに学ばれる前の勉学の地である。本大会を機に皆さんも何かの勉強を早速始められたい」と述べてあいさつとした。

 それより顕彰に移り、藤村万作(長崎)、長嶺三千夫(宮崎)両氏を名誉会員に推し、感謝状並びに表彰状は長野会長から記念品とともに左記諸氏にそれぞれ贈呈され、被表彰者を代表して白木氏(福岡)が謝辞を述べた。つづいて来賓の祝辞は薬務局長(代)県知事市長、日薬会長(代)のほか県歯科医師会長は三師会を代表して祝辞を述べ森下泰参議院議員のメッセージも朗読され国会議員等の祝電披露があって閉式。

 引続き第二部会議は武田副会長のあいさつで開会、前例により議長団に宮平(次期開催予定沖縄県薬会長)高祖(佐賀県薬副会長)の両氏を推し、前回(第41回)大会決定事項処理については、渋谷山口県薬会長から日薬の回答文書を朗読して報告に代え、それより大会提出議案の審議に移り、各県代表者よりそれぞれ別記一〇議案の提案説明があり、満場一致で採択と決定した。

 続いて左記宣言、決議が力強く朗読され、採択のあと次期第43回大会は明年、復帰して間もない沖縄県で開催することを決定、宮平沖縄県薬会長は「実は本年が沖縄の予定であったが海洋博のため宿泊、輸送等が困難と思われたため長崎と交代して頂いた、帰ったら早速準備を始める。メンソーレ沖縄」、とあいさつして閉会した。

 午後四時から同所において行われた中西啓氏の「洋薬伝来と長崎」と題する特別講演は、大航海時代と戦国時代から香料貿易、洋薬移植、江戸蘭学、薬局の創始、ヘールツの渡来など、当時の逸話などを交えての興味ある講演であった。

 ▼被顕彰者(敬称略)
▽名誉会員
藤村万作(長崎)、長嶺三千夫(宮崎)
▽感謝状贈呈者
筑紫二十日会、九州医薬品卸業連合会
▽表彰状贈呈者
白木太四郎、斉田和夫、福井正樹(福岡)奥平勢子(佐賀)武田吉之亮、宮本宏、岡村悦子(長崎)坂梨光男(熊本)杉原剛(大分)堤節雄(宮崎)東東良(鹿児島)五郎丸三(山口)

 宣言

 薬剤師および薬学関係者は、研究者あるいは実務家として社会に奉仕する責任と能力をもつ。開局薬剤師については、国民医療の主体に直接参加する機会を久しく閉ざされていたが、昨年一〇月、現実に医薬分業への道は大きく展かれた。この機運をさらに積極的に推進せねばならない。思うに、一〇〇年以上にわたる医療慣習の壁は厚く分業の展開には幾多の隘路と障害がある。医・歯二師会と協力し、ひろく国民の理解と支持を求めつつ、諸種の困難を克服していくことは、われわれの当面する重要な責務である。われら薬剤師・薬学関係者は、さらに結束を固め力を尽くして薬学の発展と薬剤師職能の前進を目ざす。同時に、国民医療の向上のために医薬の完全分業に向って一路邁進する。右宣言する。

 決議

 一、医薬品の有効性と安全性を追求することは、薬剤師および薬学関係者に課せられた最も重大な責務である。われらはこの社会的負託にこたえるため、すべてに優先して目的の完遂を期する。

 二、医薬分業の完全実現をめざすことは、われらに与えられた緊要な課題である。われらは医・歯・薬
三師の完全協調を図り自らの薬局を整備し、国民の理解と支持を求めつつ、この実現に向って全力を尽くす。

 三、医薬分業を進めるためには、いわゆる薬価差の問題が大きな障害になっている。われらは不当な薬価差の是正を図り、適正な流通機能が発揮されるよう、国の施策に要望する。

 四、医療の質を高めるには技術料の評価を改善することが急務である。われらは薬学的管理の技術が正当に評価されることを求め続けてやまない。右決議する。

 九州山口薬学大会 採択議案10件

 ▽福岡県提出
1、厚生省に対する要望事項
調剤報酬の源泉課税の緩和。
2、日本薬剤師会に対する要望事項
適配廃止後の管理体制の適正化。

 ▽佐賀県提出
1、製薬メーカーの医療機関に対する極端な添付、値引きなどの悪徳商法の徹底的排除。

 ▽宮崎県提出
1、中小企業分野調整法等について日薬に要望の件。
2、保険薬剤師の薬剤師会加入法制化について日薬に要望の件。

 ▽鹿児島県提出
1、投薬時一部負担金の平等化。
2、薬科大学の年限延長。
3、支払機関審査委員に薬剤師の参加。

 ▽山口県提出
1、病院薬局の法制化と技術料確立の件。

 ▽長崎県提出
1、医薬品検査センター設立のための資金の一部として、保険調剤報酬の一部を徴収する件については全国一律(又は九州山口一律)の基準を設定すべきであること。

 福岡県女子薬研修会 潜在薬剤師多数参加 多大の成果をあげ終了

 福岡県女子薬剤師会(田中美代会長)は五〇年度第一回研修会を九月二八日(日)、一〇月五日(日)の両日、いづれも一〇時〜一六時三〇分、北九州会場と福岡会場で開催した。

 北九州会場で参加者一二〇余名、福岡会場では一六〇余名にのぼり盛会を極めたが、両会場とも潜在薬剤師が参加者の三分の一を占めたことは、この研修会が医薬分業推進の一環として潜在女子薬剤師の掘りおこしを大きな目的の一つにしている点からも非常に有意義なものとなった。

 福岡会場での研修は、森山副会長司会により開会し、まず田中県女子薬会長は挨拶にたち「県女子薬の昭和五〇年度事業計画として研修会を開くことを決定し、その第一回を九月二八日北九州会場で、本日当会場で開催する運びとなった。医薬分業が段々と高まってまいりまして潜在している女子薬剤師の掘りおこしの必要が叫ばれている時に、その方々が多数この研修会に参加されたことは喜びに堪えない」と述べ、次いで福岡県薬剤師会長(代理=白木太四郎副会長)は大畧次のような挨拶を行った。

 「薬剤師数において女子が八〇%を占めようとしている現状において、薬局経営特に医薬分業に対し男子が現在懸命に努力をしているが皆様の力なくてはその進展、達成はできない。県薬としては県医師会・歯科医師会と話し合いを積極的に行なっているが、任意分業であるので、末端では色々と分業実現には問題がある。医師と薬剤師の各々の信頼によるマンツーマン、マンツーグループ方式での実現が是非必要である。現在、福岡県の分業状況は東京、大阪、神奈川に次いで全国第四位であるが、皆様の積極的な参加を願いたい」。両会長挨拶ののち、研修会を左記のとおり実施したが、参加者は終始熱心な態度で受講した。

 @「薬務行政について」=福岡県衛生部薬務課長・岩橋孝。
 A「抗生物質の使用について」=九州大学歯学部附属病院薬剤部長・河野義明。
 B「医薬品情報について」=山之内製薬福岡支店学術課長・小野皓偉。
 C「薬品の相乗作用について」=九州大学附属病院薬剤部・梅津剛吉。
 D「医薬分業と女子薬剤師」=福岡県薬剤師会専務理事・神谷武信。
この研修のうちで@とDの内容の主旨は次のようである。

 ▽薬務行政について
薬務・薬事関係で最近非常に問題が多く、社会的な問題となり又薬に対する不信が盛られている。行政上でも適配条例の廃止、GMP、医薬品再評価等々の問題があり、更には流通のうえで添付問題などがある。薬品の特殊性が失われている現状を踏えて、この是正を行わねばならない。まず@薬局らしい薬局を造ってほしいA管理薬剤師の問題を−特に強調したい。医薬分業の問題が特に出てきた時点で、薬局らしい薬局をと云う趣旨の文書を出したが、これが殆んど行われてないので、薬局管理体制の強化を進めたい。管理薬剤師の問題ではいわゆる名儀貸しの廃除と共に、組織の中での規定の強化とその権限強化を指導していきたい。薬剤師でないものが処方調剤を行ない、分包零売をするという事に関し、このほど行政処分をしたが、このような処分は今後どんどんやっていく。薬務行政に対し、よろしく皆様の理解をお願いいたしたい。

 ▽医薬分業と女子薬剤師
かねて女子薬剤師の方々の掘り起しについてお願いしているが、本日の研修会並びに北九州会場において潜在薬剤師多数の参加を得られたことは誠に喜ばしい。医薬分業の現況としては福岡県は請求総額で全国第四位であるが、我々薬剤師の目標にはまだまだ少な過ぎるし、是非とも女子の方々の参画を願いたい。分業の進展には保険薬局の数の不足と調剤業務の練達が大きな問題である。

 隣県の佐賀は保険調剤請求の総額では福岡より少ないが、保険薬局一軒当りの請求額は全国一位で、福岡県のそれと比較すると倍以上を示し、すでに保険薬剤師の不足を来たしているほどの現状であり、その給与も高くなっている。薬務課長より先き程お話しがあったように、行政は分業指向型になっていることも明白であります。分業への参加について@積極参加(保険薬局開業)A間接参加(薬剤師定員…複数薬剤師としての)があるが、当面の参画として@保険薬剤師の指定を受けることA処方調剤への研修(医師法施行規則・薬剤師法による研修、窓口業務と請求業務など)を積まれることをお願いしたい。

 なお、医薬分業が任意分業であるので医師個々との信用度のつながりによるマンツーマン、マンツーグループ方式の分業展開が基本となることを考えてその積極的展開にも参画していただきたい。女子薬剤師の生甲斐を目指し踏えながら、薬剤師全体の職能向上と社会的地位向上のために、皆様の分業への力強い参加を切に希望いたします。

 過ぎし日々(7) 的場長紀

 二十二年六月第56回集談会は、生みの親であり育ての親である徳島先生が、飯塚病院を定年退職されるので、その送別会を兼ねて開催された。実は一年前に定年に達しておられたのであるが、九州薬学会開催の重要な仕事を無事に完了されての心残りのない退職であった。

 当時未だ飯塚市外であった幸袋町に愛人堂薬局を開設、薬局業務の外余暇に附近の小中学生を定例的に集めて簡単な化学実験や、理科の指導をされ、かねて敬服しておられた熊本薬専、のちの熊大薬学部長藤田先生の持論である「薬剤師は街の科学者であれ」を見をもって実践された。

 二十二年十月、57回集談会に九大病院薬局長松村先生の「最近の駆虫剤」の特別講演をお願いした。当時は戦後の食生活で農家は勿論家庭菜園まで殆んど糞尿を肥料として使用していたため回虫の検査では殆んど陽性であった。サントニンの量も極めて少なく闇買いなどで補いはしていたが、代りに海人草が僅かながら使用され、條虫駆除には綿馬エキス、石榴根皮が使用されていたが、日本産の綿馬エキスは副作用の点で、その頃から石榴根皮がよく使用されるようになり、新しい根皮がよいというところから各地のザクロの根が相当に掘り出されて薬局で煎剤として投与していた。余談になるが当時飯塚病院には輸入品の蟯虫駆除に使用するブトラン、ポルドウのブドウ酒、橙皮シロップが地下室の奥に大事にしまってあった。当時としてはめったにまみえるものでなく、いろいろな方面に有効に役だった事はいうまでもない。

 駆虫剤講演のうち、ヘキシルレゾルシンは最初アメリカより輸入され、その後日本でも合成され製薬各社より発売されたが、糞便中に同薬により破壊された虫体が認められ、同薬により腸管内壁の粘膜が相当傷めつけられたのが報告され、数年後には使用されなくなった。アメリカでは牛馬の駆虫に使用されていると伝え聞いた。

 二十二年十二月、58回集談会に於て日炭高松病院、庄野薬局長の私案「調剤用具及び装置瓶」の供覧あり私の考案した簡易アンプル熔閉装置を披露した。二十三年四月当時飯塚市飯塚薬局卸部の一部を改造して、集談会の試験室として街の人々から井水検査、尿、糞便検査など無料奉仕した。建物、検査器具、試薬など提供した佐治八郎氏集談会の事業としてこの諸検査には三宅清彦氏外に協力してもらった。この設備は各開局者の薬局に試験室を設置することを義務づけられるに至って自然消滅した。

 二十三年五月開かれた第59回集談会に於て徳島先生は、人との応対で話しかたの上手、下手が何事によらず如何に影響するかの経験談があり、特別講演として熊本薬専真崎辰次教授の「アルコール醗酵について」があった。

 二十三年七月の第60回は久しぶりに田川市三井田川病院講堂で行い、会員発表の外、武田薬品学術課の遠藤武男氏の最近の新薬についての特別講演があった。同氏は学術課にあって課長となり部長となり、製薬連の副作用調査委員会の委員長として手腕をふるっておられるのは周知のとおり。同年十月61回は飯塚市東町公会堂で行い、県薬務課より安田技官、尾崎技官を招き、麻薬取締法、薬事法が共に改正されることにつき説明を聞いた。新薬事法により戦前よりの薬剤師免許証は返上、二十三年十一月一日付で新免許証交付ということになった。

 通産省、通信・訪問販売を規制へ
通産省は一二月から通常国会に提案する特殊販売規制法の作成作業を進めているが、これは昭和四〇年以後急激に伸びてきた通信販売、訪問販売、展示販売、及びマルチ商法の行き過ぎた販売方法を規制しようとするものである。通信販売は漢方薬、健康食品、訪問販売はコンドームと薬局商品との関連も多くこの立法化で業者は大きな影響を受けることになる。

 法案の内容は@通信販売については、商品インフォメーションの段階で業者の住所、取引内容等を明確にさせ、返品についても業者側に厳しいものとなっているA訪問販売については、セールスマンの氏名を明示させ、事業者の住所、責任の所在を明確にして販売にあたらせるほか、取引内容の明示も義務付けられる。特にこれまで問題の多かったセールスマンと業者の関係では、セールスマンと客とのトラブルが起った場合全面的に業者の責任において解決させることにしている。

 さらにこの法案では違反の場合は罰則を課すことも検討されており、かなり強力な規制法になりそうである。各業者はこの立法に対して通信・訪問とも特別の抵抗姿勢はみせていないが、コンドームの訪問販売業者はこの六月に協会を設立し自主綱領を作成するなど対応を急いでいる。

 県薬だより 日薬提携「薬局ローン」の金利引下げについて

 日薬では薬局ローンの金利引下げに関し、提携銀行と協議を続けていたが、このほど三和、富士、三菱の三行は日薬の要請を全面的に受け入れ、左記金利に改訂することを承認した。三銀行とも日薬会員からの借入れ申込については積極的に配慮しているので、日薬は会員の分業対策費等の資金需要についての利用を希望している。なお、第一勧銀、大和についても近日中に金利改訂の回答を得られる見通しとなっている。

 ▽三和銀行
融資額十万円〜二千万円。
金利(年利)3年内9.3%、5年内9.6%、7年内9.9%
適用=9月1日実行分より

 ▽富士銀行
融資額十万円〜一千万円。
金利(年利)…三和に同じ
適用=9月22日実行分より

 ▽三菱銀行
融資額十万円〜二千万円。
金利(年利)…三和に同じ
適用=10月1日実行分より

 「備考」
1金利
保証協会保証付の場合は0.3%(年利)引きとする。

 2、薬局ローンの概要
@融資の重点目標
当分の間は分業実施に伴う事業資金を優先的に取り扱う。
A融資金額
十万円以上二千万円まで(十万円単位)、融資額の上限は銀行により差あり。
B融資期間
6ケ月以上7年以内(6ケ月単位)。
C据置期間
3ケ月又は6ケ月
D返済方法
毎月元利均等の分割返済
E担保
?有価証券?不動産?信用保証協会保証?確実な連帯保証人(但し、三百万円以下で3年以内の場合)のいずれか。
Fその他
最寄り支店と通常取引きのできる距離にある薬局で支払基金への指定協力を条件とする。(なお、借入手続等に関し不明の方は県薬事務局へ問合せ下さい)