通 史 昭和50年(1975) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和50年(1975) 9月5日号

 医薬品業界の現況と展望(中) 竹内克己

 ◆資本の完全自由化とその影響

 五月一日からいよいよ資本の一〇〇%自由化が動き出す。業界が必死になって引きのばして来た問題だけにその影響はジリジリと業界の中にしみ込んでくるであろうし、今迄合弁で充分羽を伸ばせなかった外国資本が一人歩きを計るケースが多くなってくるであろう。

 昭和六〇年には日本の医薬品生産額は三兆円の大台に乗せると推計されている。外国資本がこのアメリカに次ぐ膨大な市場を見落す筈がない。現在外国資本系の商社二〇〇社で一〇%を少し上廻った程度の売上げでしかないが、薬価基準によって価格の下支えがあり、国民皆保険という一億人民を総動員出来る患者層を持つ健康保険制度によって「いい薬でさえあれば必ず売れる」という約束がある日本市場は正に絶好の投資市場であることはたしかである。

 来年一月発足予定の物質特許と相携えて先発国の優位をそのまま日本へ持ち込まれる可能性は十分にある。又一方化学工業薬品メーカーが省資源型企業への脱皮は医薬品への指向に食指を動かしつつあることも亦否めない。化学工業薬品がトン単位の商売であるのに対し医薬品はミリグラム単位の商売が出来る所に省資源型産業への転換のさそい水になること必至である。

 現在外資系会社の売上げは一〇%一寸で大したことはないようであるけれ共将来的にみれば、現在の医薬品メーカーと新しく参入した化学工業系或は商業資本系メーカーと更に外資系メーカーとの比率が一対一対一となるであろうというのが専門家筋の一致した見方のようである。このように考えてみると二〇〇〇とも四〇〇〇とも言われる日本の医薬品メーカーの何%が生き残ることが出来るだろうか。

 現在大手メーカー一二社で日本の医薬品総生産の五四%を消化し一〇〇社でも五八%にすぎない。即ち大手一二社で日本における治療薬のほとんど凡てをまかない得ると言っても過言ではない。生き残れるメーカーは五〇社にすぎないという巷間スズメのささやきが真実味を帯びて来て寒気を覚える。このように考えてみると外国の圧力によって致し方なく資本の完全自由化に踏み切らざるを得なかったことは事実であってもこの事は凡てマイナスというわけではないと思う。

 なぜなら日本経済が世界的視野に立って今後発展を続けてゆかねばならない過程の中で、殊に省資源産業のにない手としての医薬品の開発が世界的レベルの中で考える道が拓かれたことは非常に意義あることであり、世界の薬業界を相手に新しい開発に全力投球が出来ることは大変喜ばしいことである。然し小企業にとってはどうしようもない厳しい道を歩かせられることとなったことは否めない、そして年間売上げ三〇〜五〇億程度の企業に最も強烈な影響が来るだろうと言われている。

 ◆日本人と外国人の考え方の相違

 資本自由化後の外国企業の動きはどうなるだろうかということは非常に興味のあることである。今迄日本企業と合弁形式のものが殆んどであり、それ等の企業は日本的経営法を一応マスターしてしまっていると考えるのが順当であろうし、日本人のマネジャーが実務の指導を今後共続けるような組織図となるであろう。ただ、日本人と外国人との相違は、外国人は将来的見地から一度決定したことは情況の変化によって容易にこれを変更しなということである。

 日本人はあの当時と現在とはこんなに状況の変化があったという理由で計画を簡単に変更するが外国企業は仲々そのような動きをしない。従って長期的計画をがっちりと組み立てて急がずあわてずヂリヂリと歩を進めてゆく、即ち既定の歩みに関連したマイナス投資をいとわない。日本人は短期決戦型の動きしか出来ないというところに大変な相違があるように思われる。これは資本力の問題もあり、或程度致し方ないことでもあるがこの基本的性格の相違が長い目でみて日本企業への重圧としてのしかかってくるのではないだろうかと私は考えている。

 外資企業は着々と歩を進めている。日本チバガイギーは一億七〇〇〇万円の資本を一八億七〇〇〇万円に増資したし、日本ロシュも倍額増資で四四億円の大会社になった。このようなケースは今後次々とあらわれて来るに違いない。そして次に来るものは外資の日本企業買収というさわぎが起こる可能性ゼロとは言い切れない。そのことは既にイタリア医薬品メーカーがその洗礼をうけた苦い経験がある。それは製造した医薬品は売らねばならないという絶対の条件がある。それには既に販路をもつ日本企業に魅力を感ずること必至だと思われるからである。

 ◆GMPということ

 GMP(医薬品の製造及び品質管理に関する基準)が昭和五一年から実施されようとしている。GMPとは四九年七月厚生省がWHOからの勧告に基づいて作成を急いでいたものである。最も簡単な表現をすれば世界のどの国へ持って行ってもその国の基準に合致する医薬品の製造基準を決めましょうということである。先ず第一に全工場を無菌操作工場に模様変えをしなければならない。粉末薬も軟膏も亦この無菌操作製造でなければならない、軟膏にも大腸菌が入ってはいけない、とは至極当り前の事には違いないが、これは大変なお金のかかる仕事なのである。大工場ともなるとさし当って何十億もの生産性につながらない投資を必要とする。

 この資金の調達には各メーカー共大変な苦労をしているようであるがどうしてもやらねばならないことでこれをやれない工場は閉鎖以外の何物でもない。たしかに日本の医薬品の品質は向上するだろうが現在の薬業界にとっては低成長に入るのに二重苦を背負わされた形となってしまった。しかし日本の大手企業はすでにこれに合致している工場を持っているしさわがれる程大変な事でもないようにも思えるが、中小企業の殆んど全部はこの荒波をかぶる事はさけられないだろう。

 これに対して開発銀行の融資の道もあるにはあるが恐らく日本製薬工業協会所属の七二社位しかその対照にはなり得ないのではないだろうか。GMPは正しいことであり当然やらねばならないことに違いないが、このことによって医薬品の本質が改善され、より有効なそして副作用の少ない製品に向上することとは少し意味が異るようである。

 ◆GSPということ

 GMPに対してGSP(医薬品の供給と品質管理に関する実践規範)これは医薬品卸問屋の薬品管理の方法に一定のわくをはめようというものである。メーカーの段階で如何に品質管理を正しくしても卸問屋段階で不適当な取扱いをしては無意味であるということから、流通過程においても正しい品質管理のあり方を決定実施しようということである。日本医薬品卸業連合会は非常な熱意をもってこれと取り組んでいるが、ご多分に洩れず、これも亦大変お金のかかることなのである。勿論これは一向に生産性につながらないどころか永久にマイナスを背負わねばならない。

 医薬品の運搬には温度管理の出来る運搬車を使わねばならなくなる。この運搬車一台でも五〜六〇〇万円もかかるだろう。倉庫も幾種類かの温度別の倉庫を準備せねばならなくなる。現在の医薬品卸問屋の低マーシンではこれを消化することは困難であり、必然的に少量分割配送等は不可能になる。ここにも大企業しか残り得ないというファクターが存在する。

 GMPとGSPとは一連の流れであり、当然行われねばならない事である。これに伴って病院、診療所、薬局等の医薬品管理にも必然的に強力な指導が行われるようになるであろうし又当然の事でもあるが、当然の事が円滑に行われるためにはその立場立場において協力し合い自我をすて、大道につく心がまえが必要となるであろう。

 日本卸は厚生省の方針に全面的に協力して医薬品の品質の確保に早急な協力体制を作るべく努力中であり諸先生方の深いご理解とご協力を切望するものである。このGSPのタイムリミットは五五年位になるのではないだろうか。医薬品卸問屋の統廃合は一応終ったような様相を示していたがここに又新しい噴火口が出来たことになる。たしかに医薬品卸問屋の数は多すぎる。これが統合されればみんなが恒温室を作ったり、冷蔵庫を持ったりするムダがはぶける。このムダを必要経費として吸収出来る企業だけが生き残れることとなる。統廃合も又やむを得ない事かも知れない。

 福岡市学薬、学校給食センターの衛生調査実施

 福岡市学薬では総勢二四名の会員により、市内にある那ノ津、有田、柳瀬(合計四万八千食調理能力)の中学校給食センターの調理室及び配送室の空気環境調査を夏休み前に行った。

 朝八時半から午後三時までの調査測定作業は、真夏の温度と調理場の蒸気で困難を極めたが、結果としては落下細菌がやや多いセンターが見受けられ、食器の洗浄では脂肪分の洗浄不足と大腸菌群の附着が散見された。この調査報告は市当局へ提出され、市ではこの報告を資料に、給食の向上へ努力することになっている。

九州薬事新報 昭和50年(1975) 9月15日号

 日薬臨時代議員会 石館会長、分業推進で会員の自覚と努力を要望

 日本薬剤師会は八月二四日(日)午前一〇時から、東京港区の日本女子会館で第三八回臨時代議員会を開催した。当日は、既報のとおり、四九年度会務並びに事業報告、同決算報告を承認するために開かれたが、適配失効、マンツーマングループ分業の停滞などの状況下においての代議員会であるので注目された。

 石館会長は三〇分にわたって会長演述を行いその所信と決意を述べた。なお、当日は全国各ブロックからの質問事項に関し、当面する諸問題についての日薬の見解が明かにされたが、その内容のおもなものは次のとおり。

 ◆「会長演述」

 ▽適配失効について
会員一同は一時は大きな衝撃を受けたが、この変革は一面では全薬剤師に対する警鐘であり試練である。日薬は薬剤師職能に立脚して将来に向って敢然と進む契機としたい。

 ▽医薬分業について
分業推進の第二年度を迎え、地域によっては著しい進展が報ぜられているものの、大部分の地域ではマンツーグループの分業が停滞傾向にある。その成否は会員自身の自覚と努力にかかっているが、日薬としても薬局の医薬品管理規範を作成するなど、信頼される薬局・薬剤師の確立を目指す所存である。

 ▽流通対策、薬価の適正化について
分業推進の根本問題であり、業界全体の直面する課題である。それを直ちに解決することは困難だが、現在日薬は薬業経済調査委員会で検討中であり、成案ができ次第、行政当局に実行方を要請する。

 ▽中医協問題について
三師会協調路線を確認したうえで医師の技術料を引き上げることには賛成であるが、技術の分担を阻害するものであってはならない。再開中医協での要求については準備しているが、今日の経済情勢のもとでは大きな期待はできないと考えられる。このため日薬は最小限度の要求にとどめたい。

 ◆「日薬見解」

 ▽薬価問題
日薬は独自の薬価調査で実勢価格と薬価基準の格差は認識している。現在保険薬局の購入価格は非常に高く、単に薬価を下げるような操作では保険薬局は買えなくなる。また銘柄別収載によっても銘柄間の格差をどうするかなどの問題が残る、ルールそのものの改革が必要である。

 ▽流通の適正化
今日の流通の混乱はメーカーの販売姿勢と保険制度に原因があり根が深い。メーカーが相変らずこのような姿勢を続けるならば、薬の供給は医療法人の方向にいかざるを得なくなる。現在は自由主義社会であるから、この中で解決しなければならない。漸進的に少くとも次善の策を見出すべく努力しつつある。また医療保険制度についてのビジョンも検討する考えだが、軽医療費は自己負担とすることも一案である。

 ▽病院薬剤師の技術評価について
日薬は基本的に薬剤師の報酬は同一であるべきだとの確信をもっている。病院薬剤師の技術を正当に評価することは全薬剤師にとってもプラスであるが、具体的にどのような方法で働きかけるか検討中である。

 ▽分業問題
処方箋料を千円に引き上げるべきだとの声もあるが当面は日医との話し合いの中で七百円を主張したい。しかし今回の中医協では財源難から無理だ。調剤専門薬局(第二薬局)は様々な形があるが、現在はある程度まで分業を進めるためには「必要悪」として認めてもよいのはないか。これは地方薬審でケースバイケースで処理して欲しい。

 ▽薬学教育について
薬科大学の年限延長問題など薬学教育については日薬薬学教育委員会、薬学会薬学教育問題検討委員会、大学基準協会、薬学教育協議会などで検討しているが日薬は年内にも年限問題での結論を公表する。

 医薬品業界の現況と展望(下) 竹内克己

 ◆物質特許は来年より

 医薬品はその製造方法が特許で守られている物質であってもその製造方法を変えて造ればこれもまた特許となるというわけで同一物質が幾つかの会社から発売されるという在来の習慣が来年から出来なくなって一つの物質には一つの特許しか認められないということになる。これが物質特許である。

 従って今迄のように同一物質が名前を換えてゾロゾロと出廻るということは極度に規制されることになる。開発の努力をしたメーカーには努力賞としての優位性が確立されることとなる。従って開発力こそ企業を支える唯一の宝刀となるわけである。

 これもまた大企業にメリットの多い方法であるが、小企業でも素晴らしい製品の開発に成功したら間もなく大企業の仲間入りが出来るチャンスが生れることとなる。今迄のように大企業が製法をかえてまねをするという被害は少なくなるであろう。

 新製品の関係が非常に困難になりつつある。それは今迄のように有効であれば多少の副作用は致し方ないという考え方から各メーカー共副作用による事故に非常に神経質になっているし、又厚生省としても安全性重点思考に傾きつつあることは開発への大きなブレーキとなっているし、このことは決して元へ返ることはないだろう。この事は一製品の開発に長い年月と膨大な費用を必要とすることとなりやはり小企業の手の届かないものになるだろう。

 医薬品メーカーの統廃合が行われた例は非常に少ない。物質特許がその経済力を発揮するのが五五年以降になるのではないかと私は想像しているが、この頃メーカーの合併等が起る可能性については否定的な考え方をしている。それは小企業には大企業がほしいと考える何物もないからである。人も機械も使いものにならない、工場用地は狭ますぎて何の足しにもならないという現状は私の否定論の根拠である。

 それでは残ることは倒産しかない。弱小企業経営者の発想の転換が望まれるし、今後五ヶ年歩みには自己を捨てて多数の社員とその家族にために最善の努力を考えてもらわねばならない時期が到来したと思う。開発力の有無こそが医薬品メーカーの「いのち」である、と同時にそのメーカーと取引きしている卸問屋のためにも同様の事が言える。

 如何に販売力を持つ問屋であっても取引先のメーカーが売れる医薬品の開発をやってくれなければ売りようがないということになる。即ち卸問屋は現在より更にメーカーの新製品の開発に一喜一憂の度を増すこととなろう。なぜなら同種同効品が他のメーカーから発売されることがなくなるからである。現在A社とは取引がないのでA社発売のB成分の製品を販売せず同じB成分の製品でX社発売の製品を拡売するということが非常に困難になるだろうことは想像される。物質特許は医薬品業界の大改革であり、結果的には価格安定への道へつながるに違いない。このことは必然的に処方箋発行、医薬分業への指向になるのではないだろうか。

 ◆薬効再評価と新製品の開発

 数年前から続けられている薬効の洗い直し作業は少しずつ進みつつある。我々が長い間親しんで来た薬剤が無効と判断されるケースなども出て来てドキッとしていることもあるが、全体的にみてはまだまだ少し手ぬるいのではないかという感さえある。然し新しく発売して五年の命というのが現在の医薬品業界の常識であってみれば色々とむつかしい問題も起きて来る。

 薬効再評価と新発売の厳重なチェック更に複合剤の原則的禁止、さては物質特許と人命の尊重への指向が着々と進むことは当然医薬品業界が背負わされる十字架への道である。メーカーは軽い気持で製品は造れなくなったし、多額の投資、販売の不成功は直ちに会社の存亡にかかわる大切なこととなりつつある。

 厚生省の医薬品の副作用情報の急速な伝達に力を入れ、医薬品が最も安全な形で使用されることに努力していることは既にご承知の通りであるが、医薬品業界としても一寸した副作用ミスは数十億円の損害をこうむることとなるのでうかつには手を出せないというのが現況である。

 ◆むすび

 私は今ほんとうにざっくばらんにありのままの姿をここに書きなぐってみたけれ共、現在医薬品業界では一時帰休もなく賃金カットの話も聞かないが今年の後半には弱小メーカーにアクシデントが発生する可能性があるような気がしている。

 大手企業でも売上げ額は或程度の上昇を示しているが利益は殆んど昨年を下廻っている。各メーカー共輸出にも懸命の努力をしているが、四七年度実績三億四〇〇〇万ドルと三五・八%の伸びを示しているが、外国依存度の高い我国では輸入六億ドルと三〇・〇%増を記録している。これが逆転するのはいつの事か、更に資本の自由化がこの数字をどのように変えるか、さし当ってこれが昭和五五年への課題となるであろう。

 一方卸業界は一応安定した成長を保っているようであるが、春闘相場の成り行きと今後の成り行きとには大きな関心を払わざるを得ないのが実情である。

 日本の医薬品業界は今迄日本経済の成長度とほぼ同じ曲線をもって上昇を続けて来た。日本経済が安定成長へ定着するとなれば恐らくは医薬品業界もそのようになるであろう。然し医薬品が人命に関連ある産業であってみれば我々の日常生活が複雑になればなる程、又医療技術の向上と共にその歩みは確固たる基盤の上に立っているものと考えている。業界の中には必死の苦闘がくり返されてはいるけれ共これは医薬品業界の絶対的存在に影響を及ぼすものではなく、風吹けば波荒れるという一つの現象だと考えている。この荒波が静まる日を待望しつつほんとうに人のいのちを守るに役立つ医薬品が物質特許と共に生れ出る事を待ち望むものである。

 通経剤の販売で田中厚相に要望書

 日本母性保護医協会(森山豊会長)から八月一五日付で田中厚相に通経剤の販売に関する要望書が提出されていることが、このほど明らかになった。この要望書は、薬局等において通経剤の販売が本来の薬効から逸脱して販売されている例があると指摘し厚生省に対し強力な規制と指導を求めたものであって次のような具体的な内容をあげている。

 @妊娠の相談を受けた薬局店頭において通経剤による堕胎を示唆した例がみられており、流産の目的での販売を規制すること。
 A市販されているいわゆる通経剤の副作用についての調査を早急に行うとともに有害な通経剤のチェックを行うこと。
 B通経剤という名称は一般人に誤解を与える恐れがあり改称を検討せよ。

 同協会では、この要望書を出すに先だって独自に薬局等での通経剤の販売について調査を行ない、二〜三の薬局で流産を示唆した事実を確認したとしている。上村薬務局長は、この要望書の扱いについて今のところ沈黙を守っているが、その理由は「通経剤の誤った使用例を一般に公表することは影響が大き過ぎる」ということのようである。しかし、このままに放置できる問題ではないとして、安全課、監視指導課、審査課を中心として対策の検討に入るよう指示を出しており、この三課による検討が近く開始されるもののようである。

 この場合の一般用医薬品としての通経剤はホルモン含有製剤ではなく、生薬を中心としたものだけに今後薬務局としてもこの種の薬の総点検を迫られることになるものと考えられる。一方、薬剤師に対する国民の信頼を失うことも考えられ、これを契機として薬局薬剤師の在り方が基本的に問われることになる可能性が強い。

九州薬事新報 昭和50年(1975) 9月25日号

 福岡県薬 理事会・支部連絡協議会 請求実務は県薬より支部移管へ

 県薬務課の薬局等管理方針決まる

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は第二四一回理事会と第一九五回支部連絡協議会を九月一二日(金)一一時より、県薬剤師会会議室で開催した。当日は薬務課より岩橋課長、内藤課長補佐が出席し@請求業務指導員の設置A請求手数料の賦課B適配廃止後の管理体制の適正化C九月以降請求業務の変更D医薬分業に関する薬局等の実態調査E九州山口薬学大会F薬と健康の週間Gその他(日薬臨時代議員会報告など)‐について、神谷専務理事司会で連絡協議、報告が行われたが、そのおもな内容は次のようである。

 ▽請求業務指導員の設置について
昨年一〇月に医療費改訂が行われてより一一か月を経過し、その間調剤報酬請求額は急上昇、本年七月の請求額は八千三百万円余(九大恵愛団取扱いを含まず)で昨年同月比三・五倍となり、今後益々上昇線をえがく傾向にある。この状況に対処し調剤報酬請求事務を円滑にするため請求指導員を各支部から一名選出し報告願うこととなったが未報告の支部が二、三あるので至急報告されたい。指導員の第一回研究会は九月二三日に行う。来年には各支部で請求業務を実施してもらい度い方針

 ▽請求手数料の賦課について
日薬は二百円の基本料を設置した時に、その一部(二〇円)を手数料として徴収し、試験センター基金にして欲しい−とのことですでに一六県で実施されているが、福岡県でも一〜二年後には設置する必要がある。請求実務は前項の方針で県薬よりも支部が多くなるので手数料は支部へ還えしたい。手数料徴収を行ってないところは直ちに実施すること、支部の組織強化への手段としても取り上げながら。

 現在、賦課の各県別状況は▽佐賀=千枚まで一枚一五円、千枚超分一枚五円▽長崎=未定▽大分=請求額の一%▽熊本=請求額の一%▽宮崎=請求額百万円まで一%、百万円超分〇・五%▽鹿児島=請求額百万円まで一%、百万円超分〇・五%▽沖縄=請求額の一%▽福岡=未定。

 福岡県の現況は▽福岡=請求額の一%▽久留米=一枚に付一〇円▽八女=請求額の五%▽若松=請求額の二%▽八幡=一枚に付二〇円▽戸畑=請求額の二%▽京都=請求額の二%▽飯塚=請求額の二%▽直方=請求額の二%▽田川=請求額の二%。県薬としては、社保委員会等に諮問して本年中に十分な検討を行って県一律の賦課を来年より実施することを確認した。

 ▽適配廃止後の管理体制の適正化について
八月二三日県薬務課において県薬、商組の代表者が会合し、薬務課原案について相談をうけ、左記のような特に薬剤師職能の向上として名儀貸しの廃除を骨子とした県薬務課方針で実施されることとなった。なお正式通知時期は字句修正等のこともあり後日となる。

 薬局等の配置の基準を定める条例の廃止について

 T薬局、一般販売業、薬種商の管理体制の適正化について
1、管理薬剤師の勤務について
@立入検査時における調査点検事項
ア、業務日誌の記載状況(小売)
イ、同(卸・メーカー)
ウ、雇用契約書の遵守
エ、管理薬剤師不在の場合
オ、管理者の義務

 A立入検査後の措置
2、薬事に関する実務に従事する薬剤師の員数について
3、薬種商の業務管理について

 U不良薬品等の監視対策の強化について
1、医薬品等の貯蔵、保管、品質管理について
@構造設備
A貯蔵保管
B必要事項の記載
C分割販売(バラ売り)

 2、毒薬、劇薬、要指示医薬品、温度規定のある医薬品について
@譲渡手続、交付の制限及び表示
A要指示薬
B保存温度規定のある医薬品

 V医薬品の販売体制の適正化について
1、事故防止のため対面販売
2、広告規制
3、医薬品等(医薬品、部外品、化粧品、医療用具)以外物品販売の面積規制(一三・二uの確保)
4、スーパー、百貨店等の医薬品等の売場面積の明示
5、薬局の名称の続一(○○薬品は○○薬局への名称変更)。

 ▽九月以降請求業務の変更について
1、県外国保の請求について
2、薬局コード番号の設置について
1、、2については、9月15日号の「県薬だより」で本紙に既報。
3、乳幼児(重度心身障害者)の明細書の様式改正について
一〇月一日(一〇月診療分)から医療費明細書のうち、社会保除(社保)の明細書の様式が変更となる。同時に従来別々の様式であった乳幼児用と重度心身障害者用のものが統一され、併用様式となる。

 ▽医薬分業に関する薬局等の実態調査について
9月15日号の「県薬だより」で本紙に既報。

 ▽九州山口薬学大会について
詳細は本紙既報のとおり長崎市で一〇月一六〜一七日に開かれるが、開催地の隈会長からの多数参会の願い出を伝達、大会への協力方を要請。

 福岡県の表彰者は白木太四郎、斉田和夫、福井正樹の三氏。なお感謝状は筑紫二十日会と九州医薬品卸連合会に対し贈られる予定。

 ▽薬と健康の週間について
「薬と健康の週間」行事は例年医薬品の正しい使用及び薬剤師の職能の周知を目的として行われているが、今年は一〇月一二日〜一八日に実施される。本年は焦点を「薬の正しい使い方」に絞って大衆に深く浸透させる日薬方針、並びに県薬務課の指導方針を踏えて、検討を行った結果、原則的には「医薬分業」リーフレット(日薬作成‐クスリの使い方を中心に述べ結論的に医薬分業に導くことを内容としたもの)の店頭配布を決定。なお日刊紙広告が大衆への最良の広告手段であることから、これに関しては来週一六日に開かれる福薬連に諮ることとし、県学薬としては学校用水調査を実施する。この「週間」に行われる知事表彰の候補者推薦がでてないところは早急に県薬へ提出することを要請。

 ▽その他
1、DI地方委員講習会出席報告=柴田理事
2、福岡県三師会報告=神谷専務理事(既報)
3、社会保険担当者講習会出席報告=中村副会長
4、日薬代議員会報告=磯田常務理事
5、特例販売業について
規定の範囲内で厳しく規制して、一般販売業への切り換えの許可は許可として取扱われ度い旨、薬務課へ意見具申。
6、九大病院薬事委員会編集「医薬品集」について
このほど第四版が刊行された、薬剤師必携の書として推薦。
7、森下泰後援会組織について
森下泰後援会福岡県支部が福岡県本部となる、そのほかに各支部があることとなる。なお支部長のもとに班長(開局会員一〇名に一名を選出)をおき組織の強化を図ることとなったので、今月中に班長を互選してその名簿を県薬へ提出のこと。
8、営業停止処分について
薬剤師不在と漢方薬零売により、このほど福岡市内で一薬局が一週間の営業停止の処分を受けた。県の管理方針に従って遵法するよう全会員に注意を喚起。

 日薬発表 調剤請求薬局七千五百

 日本薬剤師会はこのほど最近一年間(49年3月〜50年2月)の処方箋枚数および金額(社会保険分)をまとめ発表した。

 それによると最近一年間の処方箋は五百三万一千八百七十五枚、八十九億九千三百九十万六千円。前年対比で百三十九万四千六百二十二枚(七二%)、三十億四千百十八万円(六六%)の増である。

 また調剤報酬請求薬局数は50年2月現在で二万三千二百三十一保険薬局のうち七千五百五十四軒で、49年2月の四千四百八十二軒、49年10月の六千軒に比べて大幅に伸びている。

 一か月平均の処方箋枚数は四十一万九千三百二十三枚、一保険薬局当り十八・一枚、一請求薬局当り五十五・五枚で、金額は七億四千九百四十九万二千円、一保険薬局当り三万二千三百円、一請求薬局当り九万九千二百円となっている。