通 史 昭和50年(1975) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和50年(1975) 6月5日号

 九州山口薬剤師会 分業・適配条例廃止後の対策
九州山口薬学大会等の情報交換

 九州山口薬剤師会(長野義夫会長)は、会長、代表者・役員合同会議を五月二一日午後一時から福岡県薬剤師会館で開催、各県より左記諸氏が出席、四九年度決算及び五〇年度予算(各県負担金前年通り)を承認したあと、分業問題、適配の廃止問題、第42回九州山口薬学大会(於長崎県)等について情報交換を行なった。

 ▽分業進展情況について

 福岡=大型調剤薬局の新設もふえ、請求金額も昨年の約二倍で六千万円、適配条例の撤廃も分業促進の柱にしたいと考えている。

 鹿児島=請求金額は大体二・五〜三倍になったが、ここ一、二ヶ月はあたまうちの感がある。分業推進対策は県段階を終り、支部段階だが支部により格差がある。大体において歯科医師会とは協調態勢にあるが医師会の方は防壁がかたい。会員の出資による会営薬局が県薬事務所の一階で二五日頃オープン予定(診療所がかなりあるのに薬局がない場所)、これは会員の分業意欲を盛りあげるための企画でもある。

 佐賀県=神埼に会員の協同出資による調剤薬局を設置、マンツーマン方式は以前から三軒程あったが、現在は県内に一二〜一三ある。請求額は昨年九月時点の三倍で約四千万円。

 長崎県=長崎市と佐世保市は歯科医師会との話合ができており、月千枚位出ている。医師とのマンツーマン方式が二軒あって日に四〇枚〜五〇枚位出ているが全般的にはあまり進展していない。

 宮崎県=いろいろのケースがあるが四月実績は昨年の三倍程度になった。

 熊本県=会営の調剤センターを早くから設置していたため、ここで備蓄薬品等会員の便を図っている。月三千枚位のマンツーマン薬局が三軒、県全体としての請求額は昨年九月の約二倍。

 大分県=県の特質として保険薬局が他県より多く、その殆んどが少しでも受付けている。別府では皮ふ科より出ており、マンツーマン、グループ対グループなどの話合いが進んでいる。適配撤廃で医系の門前薬局開設の懸念があったが、医師会できびしくチェックしている。適配撤廃後の対策としては、薬剤師会、県保健課の話合いで、保険薬局指定の時点でコントロールしたいとしている。

 山口県=二月医師会と話合ったが、各支部からの盛り上り対策を−との医師会側の意向であった。県薬としては人口一〇万以上の都市には会営センターを、五万〜三万都市には四百品目薬局を一〜二設置したい考えで、すでに会営センターは下関、宇部を除き大体設置、三医院とタイアップ薬局が徳山に一軒あって月二千枚位。県全体としては昨年の請求の二・五倍位。

 沖縄県=センター的なもの三。うち一つは会営で調剤と検査センターを兼ねたもの、グループ出資によるものが二つでいづれも実動するのは六月からと思われる。マンツーマン方式もある程度あり、八重山地区では歯科とは百パーセント分業を実施している。

 ▽適配条例廃止後の日薬の方針並に各県の対策については、日薬でも基本方針を建て薬事法の抜本的改正のなかで、薬局の開設権を薬剤師に限定し、薬剤師会への強制加入を法制化すべきだ−などの対策を考えているが現時点では法的な力はないが、保険薬局指定の時点で、薬剤師会に加入し、会の指導を受けることが条件の一つとなるよう対策を考えているので各県でもその方向に進める努力をすることとなった。

 ▽第42回九州山口薬学大会については担当県である長崎からその準備状況の報告があり、10月16、17の両日文化ホールを主会場に開催され、前日15日に運営委が開かれる予定。

 ▽当日の各県出席者
佐賀…武田会長、島副会長、於保副会長
長崎…松尾副会長、宮崎常務理事
熊本…山中会長、清水谷副会長、佐竹副会長
大分…杉原会長、益田副会長
宮崎…岩井副会長、矢田部総務理事
鹿児島…山村会長、坂元副会長
福岡…長野会長、白木副会長、堀岡副会長(代)神谷専務理事、藤野常務理事

 福薬連理事会 マスコミに業界の正しい認識を 医薬品卸の中央活動を確認

 福岡県薬業団体連合会(長野義夫会長)は五月一九日(月)午後一時半より、福岡県薬剤師会会議室で第二回理事会を開催した。

 当日は連合会構成の一一団体の理事ならびに県薬務課の岩橋課長、内藤課長補佐と国松顧問が出席し、@適配条例の廃止についてA業界に関する報道についてB情報交換について−などの議題を中心に、長野会長が座長となり報告、検討が行われたが、その内容の大略は左記のとおり。

 ▽会長挨拶
「適配」の廃止が最高裁判決となったが、これが良かったかどうかの問題は将来、これに関する批判として出てくる。私は適配は一〇数年間、その目的を十分業界に貢献したと思うが、自由経済のもとでは永続きするものとは考えられない性質のものであった。

 適配条例廃止にともない先般、県薬務課に対して、
@所謂"名義貸し"の取締
A薬事法の設備基準の厳守
B新開業の人に対しては、その地区の同業者とよく話し合いを行うよう、またそれぞれの団体に所属するように(薬剤師であれば薬剤師会へ、薬種商であれば薬事協会へ加入するよう)行政指導をいただきたい−との三つの問題点をあげて、お願いした。

 今後、どのような形で我々の業種がふえていくかと云うことは予断を許さないが、薬業という大切な職業を持つものとして大衆に答えなければなりません。ご承知の九州中央病院における誤薬問題は初歩的なミスではあるが大きな事柄で、全体の薬剤師の再研修をもう一ぺん磨き直さねばならないと思う。一般大衆も薬に対する大きな恐怖を抱き、これらが入り混って妙な風評が起ってくる恐れがある。私達は正しい薬を、正しい薬の与え方を、正しい疾病治療への方向付けをしなければならない。本日の理事会ではかような大きな色々の問題があると思うので、十分な検討審議をお願いする。

 ▽業界に対する日刊紙の報道について

 ◎神谷専務理事
前回の理事会後の大きな問題は会長が述べられたように適配条例の廃止であるが、@誤薬事件A距離制限の撤廃B医薬分業の進捗にともなう業界にたいする報道−が挙げられる。朝日、毎日、読売の中央三紙は、去年の四月〜七月の間の「医薬分業に関する薬局等の実施調査」の結果を厚生省がこの四月に発表したものを取り上げて記事としたが、その紙上表現が如何にも受入れ体制不備であるという印象を与えるものであった。

 地方紙でも同様で、この点に対し、県薬としては中央紙への対処法を日薬に強く要請した。西日本新聞は五月七日「薬屋さん医薬分業で大繁盛、売行き昨年の三倍」の見出しのものを出したが、その内容もまた認識不足極まるものであるので、即時抗議、正しい報道が行われるよう申入れた。新聞記者の見る目の低さと認識不足に対し我々としては積極的な方法を講じる必要を講じる必要を痛感している。

 ・吉村副会長
このような事は、県民に対し迷惑をかけることとも考えられるし、我々業界全般に対しての観念も網羅されたことであるので大きな問題である。正確なPR情報提供についての役割を十分認識させるために、はっきりした文書を日刊各社に出すことも一つの方法ではないか。

 ・神谷専務理事
各社を呼んで話し合いの場を持つ必要も。

 ・磯田理事
薬の週間行事の時に記者が来たので、薬に関する報道については何んなりと問合せに応じると申入れ、専門語が色々あるので我々の所に一応記事をもって来いと云ったことがある。

 ・本松理事
一席設ける位の事も考えては如何。飯塚市では商店街の売上げ状況が筋違いの報道とならないように、年二回新聞関係と一席設けて懇談会を開いている。

 ・吉村副会長
マスコミの報道については、薬効再評価に関しても新聞の書き方に問題があるので、何らかの政治的な解決法はないものか、考えねばならないと思う。

 ・長野座長
正確な材料をそろえ適当な機会をとらえて、日刊紙の担当者に医薬品の重要性を認識させ、なお誤った報道をしないよう打合せをしたい。

 ▽医薬品卸のレポート

 ◎吉村副会長
県卸レポート(@取引流通に関する予備調査A50年第一回県卸研修会−5月17日開催B再販商品の価格改訂に就てC薬局等の適配条例違憲判決の当面の措置に就てD薬価調査に就てEアウトサイダー問題に就てF県卸の事業活動−薬・医・病専各委、流通合理化、総務及び分業検討委員会G4月4日〜6月3日のスケジュール)と四月度日本卸レポート(@ブロック長会議A薬政連ブロック長会議B正副会長会議、他)について説明が行われ、県医薬品卸としての活動状況の詳細が報告された。

 ・白木副会長、藤野理事、芳野理事、他
特に吉村副会長(日本卸の副会長)の中央での活動に関して、その推進方と要望など種々意見交換が行われた。

 ▽薬事審議会について

 ◎岩橋薬務課長
各県の薬事審議会は厚生省では現在のところその必要はないとの見解を持っているようであるが、当県としては必要に応じ意見を聞く機会を持ちたい考えであるので検討を進める。

 ▽其他の情報交換

 @田部理事代理山川氏より六月五、六日大阪で開かれる厚生省主催のGMPの講習会に、県製薬工業協会からの参加について問合せあり、これに対して岡本副会長より回答が行われた。

 A岩橋薬務課長より、最近試薬で製造中止品目が出ているがその状況は如何との質問あり。印理事から、中央よりの文書が到着したところであるので早速、明日薬務課へ届ける旨の回答あり。

 ▽配布文書

 @県卸レポート、日本卸レポート(四月)=県医薬品卸業協会。
Aテトラサイクリン系抗生物質等の使用上の注意事項について=厚生省薬務局長通知(三月三一日付)。

 日病薬、法改正に備え薬制委活動へ

 日本病院薬剤師会(桜井喜一会長)はこのほど本年度第一回の常任理事会を開き、役員担当、公務員薬剤師の待遇改善要望、潜在技術科に関する要望等を協議した専門委員会のうち、本年は薬事法改正が大きな問題となるとの判断から、特に薬制委員会の活発化が申し合わされた。

 また適配の失効により、病院薬剤師会としてはどのような方向づけを行うべきか、基本的見解を早急に同委員会で決定し傘下地方病薬に通知することになった。同委員会の担当は中野副会長、宮家委員長、古川副委員長。

 なお、薬局員の定数、給与の改善や、調剤手数料、入院時薬学的管理技術料、入院時薬学的管理技術料設定要求の根拠となる有力な資料を作成するため「経営分析特別委員会を設置。さし当って病院における経費の分析を行ない、一年程度の短期間に有用なデータを出したいとしている。担当は中野副会長、委員長は福地多久郎が決定した。

九州薬事新報 昭和50年(1975) 6月15日号

 九州山口ブロック 商組理事長会 荒川全商連理事長も臨席

 九州山口各県医薬品小売商業組合代表者会(白木ブロック長)は、五月二三日午後一時から福岡県薬剤師会館で荒川全商連理事長を迎えて開催され、各県より左記理事長並に役員が出席した。

 木元(佐賀)上野(熊本)川島(鹿児島)益田(大分)白木、須原、大坪、本松、中村、藤野、山手、戸田(福岡)

 当日はまづ白木ブロック長のあいさつのあと、荒川理事長は、全商連の総会(五月一四日)終了を報告、適配の廃止後の対策については、これに代る行政的措置について小売側の結論をまとめて明確に意志表示したいと述べ、再販については一物二価の解消、小売マージンの確保、その他六月からの小売資本自由化の影響、差別対価問題等につき現況を説明、また経済問題に関しては商業組合に対策を一任するよう日薬に要望したことなどが報告された

 それよりポスト適配について協議、各県からいろいろな意見が出されたが、結論としては、左記事項に関し、荒川全商連理事長に善処方を要望した。

 ・医薬品の広告規制の強化特に罰則の設定。
 ・有資格者(薬剤師・薬種商)のみの開業権の確立
 ・流通問題特に差別対価の是正等卸・メーカー対策なお、今後ますます小売薬業にとっては重大な時期であるので九州山口商組理事長並に卸・メーカー対策。

 なお、今後ますます小売薬業にとっては重大な時期であるので九州山口商組理事長並に卸・メーカーとの三者懇談会を七月二四日午後一時から同所において開催することを決定した。

 当日各県から出たポスト適配についての主な意見は次のようなものである。
▽…商組は小売薬業すべての代弁者でなければならぬ、結論は出にくいが会費を相当額微集してこの際組合意識の昂揚をはかることが基本である。
▽…適配撤廃は予期していたがやはり困る、今後組合員が大同団結して自ら価格を安定させ、外部に当るほかはない。今後は消費者と手を組みメーカーに対すべきではないかとも考えている。
▽…ブロックで団結、そして県、さらに九州山口各県で団結して事に当れば解決する面も相当あると考える、実行力ある結束した商組にしたい。
▽…小売の開業権は資格者に‐の運動を起すべきだ。
▽…意図的な至近距離の開設には行政指導をきびしく、名儀貸し薬剤師の取締強化等を当局に要望すべきだ。
▽…組合のまとまりの悪い地区はこのチャンスをとらえ組合の強化を図るべきである。
▽…京都方式といわれる強力な商組運営も考える時期に来ていると最近は考えている。
▽…日薬と商組のやるべきことをハッキリわけるべきである。

 福岡県薬 理事会・支部連絡協議会 適配撤廃で商組の盛り上がりも期待

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は理事会と支部連絡協議会を五月二七日(火)午前一一時より、県薬剤師会会議室で開催した。当日は@県薬会長会議出席報告A距離制限の撤廃B業界報道C保険請求D分業推進委員会−などに関して報告と検討が行われたが、そのおもな内容は次のようである。

 ▽長野会長挨拶(要旨)
今回の地方選挙で我々の同志四名(古賀治、秋吉、古賀学、坂の四氏)が当選されたことは、我々の前途に分業問題は勿論であるが政治的な面に夜明けが開けたことであって、この情熱を我々の未来のために持たねばならないと考える。このたびの適配廃止のこと、分業も任意分業であることなどを考える時、会員同志がその自覚を十分にし結束と融和をもって進まねばならない。

 ▽県薬会長会議出席報告=白木副会長
(1)50年度日薬の事業計画は@福祉社会の基礎作りの推進A分業第二年目の計画の推進B医薬品管理上の体系の確立とその推進C薬局経営実態調査への協力D医薬品流通の適正化の推進E医薬品情報の整備F未組織薬剤師の組織化と日薬の機能G其の他の関連事項。(2)分業推進情況報告のうち特に注目されたのは、大阪で受入れ体制を進めている「面」の対策。(3)薬局監視で業界の混乱を押え得るかの問題については、医薬品保管、販売、調剤投与、施設しか規制出来ないではないかとの意見が大勢を占めた。(4)各県で漢方研究会を開く場合はその資料が神奈川県にあるので利用されたい。(5)自主指導員をおいて、我々の態度を自主的に育成していきそして一般薬局を正しい姿にもっていくと同時に、スーパーなどにおいても同じような姿勢で同じような販売方法で規制していく方法。この方法は現在、東京都で実施中。−など。

 ▽距離制限撤廃について=神谷専務理事
適配廃止の直後、五月六日県薬の正副会長と薬事協会の方と県薬務課へ出向き@名義貸しの取締りA薬事法の設備基準の厳守B新開業の人に対しては、それぞれの団体に所属するように(薬剤師であれば薬剤師会へ、薬種商であれば薬事協会へ加入するよう)行政指導を願いたい-等々の要請を行った。昨日、商組の総代会が開かれたが、かつてない程の盛会で、もっと商組の組織造りをしなければならない等の活発な意見がでて、大きな盛り上りを見せた。

 ▽福岡県商組総代会報告=藤野常務理事(県商組専務理事(略・・・別掲)

 ▽業界報道について=神谷専務理事
薬業界のニュースについて日刊紙の報道が大変な認識不足、特に見出しが甚だ適切を欠いているので西日本新聞に対しては正しい報道が行わるよう申し入れた。折りにふれ担当記者を集めて実状の認識をしてもらうための方法を取りたいと予定している。

 ▽保険請求について=神谷専務理事
請求先の変更、保険者コード番号などについて説明が行われ、保険請求に関しての勉強と練達の必要が強調された。

 ▽分業推進委員会について=安部委員長を中心に意見交換が行われた結果、六月二五日頃に薬局委員会と合同で@福岡、若松両地区の分業状況について話しを聞くA保険業務について-などをテーマにして開催することを確認した。

 サッカリン摂取量決める

 食品衛生調査会は五月一四日、東京の都道府県会館で常任委員会を開き、サッカリンの一日摂取許容量をこれまでの五倍の五r/s(体重)に緩和することを決定した。

 これは、国立衛生試験所の実験で、問題となっていた膀胱腫瘍の発生を否定する知見が得られたこと、WHOおよびFDAの見解からも膀胱腫瘍発生に関する疑問は払拭されたとの結論に達し、その結果、WHOの最大安全量としている一・〇%(=五〇r)および安全係数としている百分の一(=五r)が妥当であるとの意見の一致をみたためである。

 小売業の完全自由化

 政府は五月二三日の閣議で、外資審議会の答申どおり小売業についての対内直接投資の一〇〇%自由化を六月一日から実施することを決定した。

 医薬品小売業関連では医薬部外品を扱っているジョセフ・マグニン(本社米国で銀座、原宿、大阪などに出店あるも服飾が主)一社で他に家庭用品を扱っているのがある程度。厚生省は医薬品小売業への影響は当面全く考えられないと見ており、業界関係者もほぼ一致した見方をしている。

 福岡地区薬業協組 総会で役員改選

 福岡地区薬業共同組合(須原勇助理事長)は、福岡県医薬品小売商業組合発足以来、その福岡地区ブロックとして運営しているが、第25回総会を五月二八日午後二時から県薬会館で開催した。

 当日は中村吾一郎、馬場勘二氏など本協同組合の元理事長のほか多数の組合員が出席、工藤益夫氏を議長に推して事業報告、決算等の認定のあと五〇年度の事業計画、賦課金、予算など原案通り決定、任期満了による役員改選を行ない、須原理事長並に監事二名の留任を決め、左記役員が決定した。

 ▽理事長 須原勇助
 ▽副理事長 大隈次郎
 ▽専務理事(会計兼務)山手陽一
 ▽理事 藤野義彦、戸田連城、山口芳包(福岡)、岡橋好(糸島)、石井源吾(筑紫)、田中日出夫(宗像)、建井智郎(粕屋)
 ▽相談役 白木太四郎、四島久、斉田和太、吉松正記

 二兆円大台は52年か 三菱銀行調査

 三菱銀行発行の「調査」五月号は「医薬品の名目生産額を推計すると、五〇年五一年と二年間は低迷を続け、五二年に二ケタ代の伸び率を回復する」と推測している。

 四九年の名目生産金額は一兆七千億円台に達し、二兆円の大台乗せは五〇年に達成されるだろう−との見通しが出されているが、日本経済全体が低成長時代に入っていること、医薬品業界を取りまく諸種の環境が一段と厳しくなっていることなどから一〜二年間は前年比伸び率が一ケタの低い数値に止まるだろうとの予測である。

 調剤の原点に還れ 清水貞知

 ◆不幸な犠牲
去る五月七日の日刊紙上「九州中央病院において誤薬事件発生」なる記事が掲載されていた。分業促進が叫ばれている折柄だけに、我々関係者にとっては大きな衝撃だった。しかし逆説的にいって、私の長年の経験からすれば相当大きな病院でもこの種調剤過誤は、日常茶飯事であって敢て異とするに足りない。

 薬袋の誤記、薬用量の間違い等、小さい誤から数え上げれば大抵一日数件は散発している。ただそれが所謂誤薬事件として表面に浮び上らないのは、それらの汚点を薬局の外に一歩もださない配慮がなされているからである。といって過誤を犯すと口を拭って不明朗に密殺してしまうというのではない。

 ◆チェックが肝腎
それこそ何処の病院でも投与前のチェックには神経を尖らせ、水も洩らさぬ配慮がなされているのである。大事をとる病院ではダブルチェックをさえ行なっている所も知っている。それ程チェックシステムというのは、大切な事柄である。

 だが、九州中央病院でそれを怠っていたというのでは決してない。間接的な情報だが、この不幸な事件が起きた背景は偶々当該調剤を行った時点が昼休時で調剤者以外にそれをチェックする薬剤師がいなかったという真に不運な廻り合せであったと聞いている。厄災というものは、えてしてそんなものである。

 ◆街の薬局では?
巷間、分業促進の声かまびすしく所謂調剤薬局簇出の気運にあるが、それら街の薬局で果して充分なチェックシステムがとれるかどうか。過去の自分の経験に照して、想えば慄然たるものがある。功を逸って事を一簣(き)に欠き、若しそれが不幸致傷事件にでもつながればその補償二千三千万要求は通り相場の世の中、当の薬局一朝にして産を傾けるは必定、それにもまして一般薬局に対する世間の信望も亦一夜にして失うこととなるであろう。それ程チェックシステムこそは調剤不可欠の要件である。

 人、或いはいう。「自分のところは一人だが、その点充分注意している」と、間違ってはいけない。私のここでいうチェックとは、第二者による調剤行為の確認なのである。いくら同一人がチェックを繰返してみても、薬品名にしろ薬用量にしろ、当初間違って誤読、誤認、うのみにしてしまった以上は、過誤の発見の仕様がない。簡単なことだが「思い違い」というものは他人から指摘されて初て気付くものである。という点からして、私は調剤は複数薬剤師で初て全うし得るものだと確信している。では単独薬剤師の調剤は全く不可能か。否。全然否定はしない。但しそれには条件がある。

 ◆新しい調剤行為
そもそも、現在における調剤行為とは、いう所の計数調剤とか計量調剤等の機械的所作がそれではないと思っている。いうなれば、医療におけるX線診断がX線写真をとる撮影技術それ自体にあるのではなくして、主眼は読影にあるのと同断である。

 極言すれば処方箋通りに薬を盛り合わせることは合目的な結果であって、調剤重要性の比重は、むしろその処方箋内容の解読にこそあるものだと思っている。その能力を備えた薬剤師ならばベンザリンとベンジリンを読み間違えたり、ソルベリンとソルボンを取違えたりすることは決してしないであろう。

 ◆誤薬を避ける要決
処方箋は医師の精根を傾けた一つの創作品とも観るべきものである。その盛られた中味を含味熟読、理解してこそ、初てその内容も生き、投薬に対する適切な指示も為し得るものと思う。更には内容の理解だけに留らず、延ては薬品相互間の作用或いは副作用更に臨床検査値に及ぼす影響に至るまで、時に医師に提言できるようになれば占たものである。これが新時代に即応した調剤の基本概念であると信じて疑わず、又その境地に達して初て誤薬も避けられるものと信じている。人間は試行錯誤の動物である。
人間から錯誤を取除くためには複数制によるフィドバックシステムの確立か、先に述べた薬剤師の能力を高度に高める以外にない。

 福岡市薬 医薬品集を発行 研修会を5月20日開催

 福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)はこのたび福岡市立休日急患診療センター「医薬品集」を発行したが、この医薬品集を基本として休日急患センターに出動可能な保険薬局の薬剤師を対象とした研修会を三回にわたって開くことを計画し、その第一回研修を五月二〇日(火)一三時より県薬剤師会館会議室で開催した。
当日は@薬物療法の条件、A抗生物質の選び方・使い方について、吉本・河野両講師の講義が行われたが、参加者五三名で質疑応答も熱心で有意義な研修会であった。その概略は次のとおり。

 ▽開会挨拶=藤野副会長
諸先生方には休日急患センターに出動していただき今日まで恙なく経過していることは感謝に堪えない。
この研修会は、卒後研修の一環ということもありますが、休日センターの格付け、保険薬剤師の条件を満して頂くために、本日第一回を催した。このたび「医薬品集」が出来上ったので、これを中心にして吉本河野両先生に講義をお願いした次第です。最近、市内の病院における誤薬の問題もありますので、休日センターでは成沢先生を専任とし調剤業務を進めているが皆様にはアシスタントの立場でなく専任の気持で取組んで頂きたい。

 ▽講演
(1)薬物療法の条件(薬物の選択と投与量の決定因子)=福岡市立第一病院・吉本喜四郎薬局長
講義前の提言…私共が過去、薬科大学で学ぶことのできなかった病態生理と薬の結びつきについて解説してみたい。本日は総論として薬理学のもう一度振り返って見ようということで「薬物療法の条件」を取り上げた。私共が今迄考えていた薬というものは、あくまで化学物質としての薬という角度から眺めてきたが、これでは臨床の立場で薬剤を把握することは誠に困難であります。例えば配合禁忌にしても所謂、科学的、物理的な配合禁忌は理解出来るわけですが、薬理学的配合禁忌はどうしても病態生理が絡んでこないと理解し得ない−と云うことで、私はHost(患者)の立場を中心にして、話しを進めたい。

 (2)抗生物質の選び方・使い方=九州大学歯学部病院・河野義明薬剤部長
講義前の提言…@医薬品集は、昨年一〇月に取りかかり本年二月一杯までに休日急患センターに在庫している医薬品について、各編集委員の努力の結集により出来上ったもので、この数は二三九種類、ミリ数の相違を入れると三三九種類である。近頃は薬効の再評価で適用が変って適用症例が削除されたものが段々増えている。更に使用上の注意で、新たに追加したものもありますが、多少以前の能書を使っているので、新たに出来てきたものについては逐次追加して頂きたいA研修会では一応、医薬品集を基礎として話しをすることにしていたが、よく医者から相談を受ける抗生物質に関しては医薬品集だけでは不足であるので、市薬に相談して別にテキスト(抗生物質の選び方、使い方)を作ってもらった。

 医薬全商連 ポスト適廃は自主規制で

 医薬全商連(荒川慶治郎理事長)は五〇年度通常総会を五月一四日午後一時半から大阪商工会議所で開催し、新年度の事業計画、同予算を原案通り可決した。

 今回の総会は、四月三〇日最高裁が下した適配条例の違憲判決の直後であり、この問題について荒川理事長は「全商連が中核となって、早急に各小売団体の招集を行う用意がある。この中で流通秩序の確立、商組による流通管理の問題などを決めていきたい」と決意を述べるとともに、具体的な方策として@差別対価の是正A広告規制の強化B公正競争規約の成立推進と再販制度のテコ入れ−に取組む意向を表明した。

 討議では、小売業界による「自主規制」の確立と強化を指摘する意見が圧倒的に多く、全体としては三年前、適配緩和の提言があったにも拘らず、事態を放置してきた厚生省の責任追及の意味から、同省に具体的な"対案"を迫まることを決めると同時に、当面、今国会での薬事法一部改正の審議を通じ、厚生省の対策を質すなどの運動を展開することを決議した。

 当日、総会に出席した森下泰参議院議員は、適配失効をめぐる党や厚生省の反応について「率直に言って自民党はこの問題が他の酒米、煙草などの問題に波及することを極力警戒しており、厚生省も事務的な処理でこの場を切り抜けたい意向が強い」などの状況を明らかにする一方、個人見解として「こうなった以上、業界の自主規制を強化することだ。それには小売業界の一致団結しか方法はない」と語った。

 日薬
 適配以後の対策強化を指示 自主・行政規制で対処を

 日本薬剤師会は五月二五日東京平河町の都道府県会館で地方連絡協議会を開き@薬剤師会の自主規制の強化A行政による規制の強化B薬事法の抜本改正による改善C独禁法を検討−などを骨子とする適配以後の不良医薬品ならびに国民の安全にして有効な医薬品使用に関する対策強化策を指示した。その内容の概略は次のようである。

 ▽自主規制の具体案
@地方県薬に自治指導員制度を設置するA現行法における薬局等の開設者ならびに管理薬剤師義務の確認B薬局管理者の権限強化(薬局管理規定および薬局等の医薬品管理規定等の作成)C日薬と県薬に薬剤師道審議会を設置する‐など。また日薬はこの自主規制を助けるため薬局等の経済環境作りを打ち出し、メーカーの販売姿勢の是正(流通の適正化)をも推進する考えである。

 ▽行政の規制強化策
@薬局等の開設希望者に対し、医薬品の取扱いの倫理などを熟知させるための事前の行政指導A管理薬剤師の権限、業務の明確化ならびに行政による適正指導B管理薬剤師の管理を実地に行うようにし、名義借しなどを一掃する。このため管理薬剤師の交替手続きの簡素化を検討C薬剤師定員の再検討D地方薬事審議会の存続E薬局の設備改善による医薬品試験の実施および試験委託の承認−など。

 ▽薬事法の抜本改正
今後、法学者を加えた薬事法改正特別委員会を設置し、あらゆる角度から検討を行う。

 ▽独禁法の検討
薬局等の経済的環境作りと相俟って再販品の上方硬直性によるマージンの圧縮を是正し、長期的には医薬品のもつ特殊性に則とって医薬品価格の商業ベースからの転換を打ち出している。

 日本卸連 50年度の重点事業を策定 流通近代化と諸制度の改善

 日本医薬品卸業連合会の第二二回定時理事会は五月二三日、東京虎ノ門の共済会館で開かれ、五〇年度収支予算、事業計画等を決定した。

 五〇年度収支予算は前年比で六百万円増の五千五百万円。事業計画は「薬業界は誠に厳しい状況にあり、かかる時こそ我々は、課せられている社会的使命の重要性を認識し、関係者全員が総力を結集してこれからの困難を克服し医薬品需要構造の変化等に即応出来るよう、その機能の向上、改善等を積極的にはかり、もって一般の要請に応えなければならない」と提唱、次の項目を掲げている。

 ▽市場安定対策
@医薬品の安定供給をはかることA流通秩序の確立および価格の安定化に努めることB販売姿勢の適正化C政府の物価安定政策への協力のため生活必需物資取扱卸商に対する中小企業振興事業団の長期低利融資の確保D総合大商社の資本力組織力を乱用した中小企業への進出防止E商取引基本契約制度の実施促進。

 ▽流通の近代化の促進
@受注、配送、情報、在庫管理等のシステム化を推進することA流通機構の近代化促進、倉庫センター設置についての構想を検討し所要の対策を推進するB統一伝票制度の実施促進、通産省および日本商工会議所等と連繋を密にしその実施を促進することC各種コード番号の統一、コード体系を統一しコンピュータ化に備えることD機能別会計の導入をはかること。E「卸薬業」の内容充実等をはかると共に「卸薬業史」の編纂を進めること。

 ▽連合会機能の向上
各委員会は、それぞれの担当事項について積極的に所要の検討を進めているが初期の目的達成のためには当連合会員の構成員である各地区協組等との協力態勢の確立および情報交換等が必要であることに鑑みその強化をはかること。

 48年度国民医療費 三兆九四九六億円 薬剤比率は四六・四%

 厚生省は五月三〇日、四八年度の国民医療費を発表した。これによると、国民医療費は三兆九千四百九十六億円で、対前年度比一六・二%増、国民一人当り医療費は三万六千三百三十二円(前年度比四千六百六十円増)である。国民総生産に対する割合は三・四三%(前年度三・五九%)、対国民所得は四・三一%(前年度四・四五%)となった。

 同年度の診療報酬の引上げは四九年二月に実質一七・五%が実施されているが厚生省では、国民医療費への影響は三%(二か月分)程度と見ており、他に人口増などによる影響約二・五%、残りは診療内容の変化で、国民医療費の伸長の大部分は「薬剤費増」と推測している。国民医療費に占める薬剤費比率は約四六・四%と推計された。なお、四九年の国民医療費は約五兆三千億円(関係予算の積上げから推計)になると見られており、ここでは四九年二月、同年一〇月の二回にわたる医療費引上げがあるため薬剤費比率は大幅に低下が見込まれる。

 国民経済研究協会 医薬品産業に鋭いメス

 経済企画庁から調査を委託されていた国民経済研究協会は、このほど「消費者被害救済制度の経済効果に関する研究」をまとめた。

 この研究は@消費者被害者救済制度の経済効果A製造物責任における損害賠償ルールの経済効果B消費者主権と情報C品質維持の経済効果D社会的課税とその効果に関する一考案E再販制度の経済効果F消費者保護のケース・スタディ医薬品産業‐の七章からなっており、多方面にわたる分析、調査がなされている。

 特に医薬品問題では「消費者被害は商品によって身体、生命に受ける肉体的被害に大別されるが医薬品産業における薬禍と薬価問題はその典型である」として薬価問題、薬禍問題、医薬品産業の特長と問題点について次のように指摘している。

 ▽薬価問題
現在の自計式薬価調査ではメーカーと医療機関の利害が薬価基準を高位に維持することで一致する限り、正確な調査は期待できない。その改革の方向として、医薬分業の望ましいことを確認したうえで、公的機関による独占的買上げ方式を評価すべきである。たとえ医薬分業体制が推進されたとしても医師の処方箋がブランド名で指示されるなら薬価の根本的解決を見ることはない、薬価問題はメーカーの異状ともいえる製品差別化政策があると判断できる。

 ▽薬禍問題
薬禍問題の総てを企業の責任に帰すのは酷である。薬禍は医薬品自体以外に使用方法にかかわりを持つからである。しかし、メーカーの直接利益に結びつかなかった安全性のチェック体制は貧困であった。また、情報入手の方法としてはアメリカ医師会編「薬物評価」の日本版を公開する必要がある。

 ▽医薬品産業の特長と問題
医薬品産業の集中度は低位で、ここ十数年顕著な低下傾向を示している。生産段階では合成行程を持たずにバルクメーカーに依存するゾロゾロメーカーの存在が許されるほど低い。製品差別化については、医薬品の化学構造の若干の変化あるいは剤型、包装は無限のバリエーションが可能で製法特許しか認められていない。しかもメーカーの広告、販売活動が活発となり一層進んだ製品差別化なされている。また、大手メーカーの主だったものは輸入問屋から成長しており、もっぱら外国技術の導入に依存してきた。

 再販制度の経済効果では「再販制度は生産者の流通経路支配を補強する効果をもっており、その結果、販売業者の段階ならびに生産者の段階の両方で競争的価格水準以上の価格を消費者に強制する効果をもち、消費者の利益と対立している」と断定している。

 福岡県商組総代会 賦課金で議論沸騰 現状組合意識では値上げ困難

 福岡県医薬品小売商業組合(白木太四郎理事長)は五月二六日午後、福岡県薬剤師会館で第20回通常総代会に岩橋県薬務課長、長野県薬剤師会会長、吉松県薬事協会会長を来賓に迎えて開催した。

 当日は今回の適配条例撤廃による小売薬業経済の危機感により、例年になく出席者も多く、賦課金をめぐり論議が沸騰したが、一応原案通りいわゆる塩漬予算を承認した。

 総代会は山手理事の司会によって白木理事長のあいさつのあと、岩橋課長、長野・吉松両会長よりそれぞれ来賓のあいさつがあり、いずれも時局柄商組の重要性とその活動強化を望む旨の祝辞が述べられ、斉田和夫氏(福岡市薬会長)を議長に推して議事を進めた。

 報告事項並びに決算については執行部の説明のとおり異議なく承認したが、従来通り(十年来)の賦課金(一〇〇万円・・・福岡地区三〇万、筑後地区二五万、北九州地区三〇万、筑豊地区一五万)について、須原副理事長は、物価の高騰並びに重大時局に突入した現在組合活動強化の必要性からも、他県のように二〜三倍の賦課金値上げは当然であるが、現状では徴収の面で困難性があるため前年通り据置いた旨の説明があったが、これに対し、適配撤廃後小売薬業界の危機感を組合員に認識させ、組合意識の昂揚をはかるためにこのチャンスを逃さず組合活動を強化すべきだとの意見が出席者の間では圧倒的であったが、理事会、その他で検討した結果、その時点で対処することとして一応賦課金及び予算案は原案通り可決決定した。

 なお、総代会終了後、同所において始めてのこころみとして、薬務課長を囲んで懇談会を開催し、薬務行政に対する要望や疑問等について熱心な質疑応答が五時まで続けられた。

 福岡市薬勤務部会 総会と後援会

 福岡市薬勤務部会(堀岡正義会長)は左記により第二五回総会および講演会を開催する。
日時 6月21日(土)14時
場所 福岡市、第一勧業銀行ビル七階、三鷹ホール
(1)学術映画(14時)
「Hepatitis」
(2)総会(14時.30分)
(3)講演会(15時30分)
「Bioavailabilityについて」第一製薬(株)製品管理課長神原秋男
(4)懇親会(17時)

 日本卸連総務委 薬事法改正要望案

 日本医薬品卸連合会の総務委員会はこのほど「卸法制化に関する薬事法改正要望案」を纏め、渡辺会長に答申した。法改正の要点は@卸売業種の法制化で「卸売販売業」の許可を設けるA医薬品流通のルート規制で製造業(輸入販売業)・卸・小売業・医療機関という流通経路厳守のために卸行為については卸売販売業の許可を得たもののみの好意とするB卸業の設備基準については新たに卸業の構造設備基準を定めるとし、細部は省令によることとするが、この場合、製造業のGMP体制移行に伴って、相当高度の設備になるべきであると指摘している。

 流通合同委、ロット番号等で意見交換

 第一五回流通調査合同委員会は五月二〇日午後、東京大手町の経団連会館で開催された。出席者は日本製薬工業協会の流通委員会のメンバーと日本医薬品卸業連合会の正・副会長らで、ロット番号に関する件などについて協議した。

 ロット番号に関しては、日本卸連側は@GMP、GSP環境から製造ロット、流通ロットはあって当然のものである。医薬品のロット番号が現状のままであるなら商品管理は困難で、そのうえ追跡調査はできないであろうA九州地区においては現金問屋筋が流通番号を末梢したり、医薬品の入れ換え等を行っている。これは一歩間違えば大きな問題となるB新しい業界の環境作りの意味で、医薬品に製造ロット、流通ロットをつけるような法的な規制措置を当局に求めるべきではないか-との意見を述べた。

 これに対し製薬協側は、流通ロットはかかない方針のため無理である、流通ロットをどの医薬品にもつけることはできない等の見解を明らかにしたため、今後の課題として煮詰めていくこととなった。また、ロット番号と関連する使用期限表示については、日本卸側は二種類ぐらいの記号か、二色ぐらいの色別の方法に統一し、間違いのないようにしてほしいと要望した。

 都薬務部、薬事監視体制強化へ

 東京都薬務部は適配違憲判決によって今後監視を強化する必要が生じたとして五月末から監視内容別にチームを組み重点監視を行うことになった。これは薬務部の若手職員と薬事監視員を十人単位で割りふり@薬局等で薬剤師が実際に業務を行っているかA市販薬の副作用状況B生薬の取締りC生活家庭用品の監視D薬局等における広告の状態E医療用医薬品のパンフレットの監視−の六項目について調査・監視するものである。都薬務部はこれについて纏まり次第、状況を発表する予定である。

九州薬事新報 昭和50年(1975) 6月25日号

 日本東洋医学会総会 福岡市で盛大に開催久保川憲彦氏新理事に

 第二六回日本東洋医学会総会(名誉会長=塚本赳夫元九州大学教授、会長=小島喜久雄鹿児島大学教授)は、既報のとおり五月三一日・六月一日の二日間、福岡市の福岡明治生命館で開催された。

 第一日目の午後開かれた総会の役員改選では全員が再選されたが、理事二名の追加について新たに久保川憲彦氏(福岡、開局薬剤師)と小川幸男氏(鹿児島医師・医博)が選出された。日本東洋医学会の役員に開局薬剤師から選任されるとはかってない初めての事であり、九州地元は勿論、全国の開局薬剤師より歓迎されている。

 特別講演(貝原益軒…福岡が医学井上忠教授)、シンポジウム「食養」など蘊畜あるものをはじめ、一般講演では各研究が数多く発表された。そのなかで、長崎大薬学部の山口広次講師は本年四月から一単位の講義(これまでは〇・五単位)となり、名称も従来は生薬学の漢方であったのが「臨床生薬学」となったことを報告し、漢方講座の進むべき方向として、将来、大学に専任の教授を置く問題は我々薬剤師の場合仲々難かしいと考えるが、医師の場合努力如何では実現の可能性があると思うので、東洋医学に携わる医師各位の熱意を切望すると述べ、注目をひいた。

 ▽展示場出陳社名
斎生堂薬品、天藤製薬、九州サンクロン、津村順天堂、和漢薬研究所、本草閣薬品、明和生薬、大草薬品、山陽電子工業、前田豊吉商店、日本商事カネボー薬品、横田書店。

 福岡県女子薬 総会を6月15日開催と決定

 福岡県女子薬剤師会(田中美代会長)は、五月二四日福岡県薬会館において全体理事会を開き、役員全員が出席して本年度の総会並びに県内ブロック研修実施計画などについて協議した。

 協議の結果@総会は六月一五日、県薬会館において開催することを決定A研修会については、医薬分業推進の中で埋もれた会員の掘り起しとともに医薬品の管理者として社会に寄与するための研究会を福岡・北九州・筑豊・筑後の四ブロックで七〜八月の間に開催する予定で準備をすすめることとなった。

 随筆 豆腐の話 市立長崎病院 吉岡龍三

 冬の寒い晩に湯豆腐で、夏のむし暑い夜に冷奴でとお酒の好きな人にはこたえられない豆腐の味であります。五〜七分角に切った豆腐を「やっこ」と呼ぶのは、江戸時代の槍持奴に共通する衣装の紋所から連想されたものであります。

 豆腐は日本独特のものかと思われますが、原産は中国で、漢の高祖の孫維南王国劉安(西紀前一二二没)の創製と伝えられ、少くとも二、〇〇〇年を経過しているわけですが、わが国に伝ったのは奈良時代遣唐僧によるものと推察されています。しかし一般に普及したのは、太閤秀吉の朝鮮征伐のとき兵糧奉行が覚えて伝えたものといわれています。

 中国に興った豆腐が日本で普及発達し、現にその品質においても本家を凌駕するに至ったのは、日本の水が豆腐の製造にたいへん合っていたのと日本人の嗜好にもぴったりだったのではないでしょうか。

 酒と豆腐は水道の水では優良品ができないと云われ(灘地方に溢出する水が良質なため灘の生一本が生れた)、現に水道施設のある所でもボーリングを行ってその水を使用しているところもあるくらいです。
植物性蛋白食品として世界的に優位を認められている豆腐も製法は単純で、一晩中水に漬けて十分に水分を吸収させた大豆を粉砕してそのまま煮沸させ、熱いうちに布で炉過した豆乳(カスが「おから」と呼ばれる)を枠に入れて凝固させると出来上がります。

 昔は凝固剤に食塩製造時の副産物である苦汁(ニガリ、主成分は塩化マグネシウム)を使用し、カルシウムの補給も微量ながらできるようになりました。

 豆乳は、動物性と植物性の違いこそあれ、牛乳とよく似かよった食品で、わが国では牛乳が普及する以前は、母乳の代りに赤ん坊に飲ませたものであります。また、友人と私を含めて数人の経験で申しわけありませんが、精力増強にも少なからず役立つようで、中年以降で思い当る方があれば、一度飲んでみられたらいかがですか。

 江戸時代の笑話に「昔から豆腐好きのものには果報があるといわれた、おれも豆腐は好きだけれどこのとおりいつもピイピイしている」と一人が云うと「いやそうではない、どんな山奥海辺へ行っても豆腐のないところはない、自分の好きなものが手近にあるからそれが果報なのだ」と一人が云ったというのがありますが、さて豆腐の好きなみなさんはいかがでしょうか。

 厚生省薬務局 「ポスト適配」で乱売監視を強化

 薬局等の適正配置規制が薬事法から削除されることによって、薬局の医薬品乱売が再燃するとの懸念が出ているが、厚生省薬務局は「ポスト適配」の一環として昭和三五年二月一二日付薬務局長通知「いわゆる乱売に伴う医薬品等の監視」(後掲)の改正を行い一八日に開かれる全国薬務主管課長会議で明らかにする。

 改正の方向は、三五年当時のような社会的背景ではないが、適配条例削除によって医薬品の乱売が起り得るとの観点と社会的背景を考慮して、再度通知するわけであるが、全体的な通知主旨は、三五年通知を踏襲するものと見られる。なお全国薬務主管課長会議は、六日の国会で成立した薬局等の適配は規制削除の薬事法一部改正をメインテーマに行われ、適配廃止に伴う諸問題について薬務局より指示が行われる。

 ▽」いわゆる乱売に伴う医薬品等の監視について
(1)乱売されている医薬品特に製造番号等の抹消又は不分明のもの及び乱売の著しい医薬品等については、薬事法第四九条に基づき左の措置を講ずること。
@随時、頻回にわたり薬事法第四九条に基づき収去し、検査を行ない、薬事法に違反する行為については厳重な処置を講ずること。なお、都道府県衛生研究所において、収去品の試験が困難であるものがあるときは、速やかに当局に連絡のうえ処理すること。
A当該業者よりその仕入れ先等の報告を徴し、関係都道府県とも連絡を密にしそのルートを明らかにし、薬事監視に遺憾なきを期すること。

 (2)乱売に伴う広告宣伝に関しては、次の措置をとること。
@医薬品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大なものは、薬事法第三四条違反として措置すること。
A医薬品等の広告(チラシ、ビラ、サンドイッチマン等の行為)中における販売価格の表示方法その他の広告方法が、医薬品等の品位又は信用を著しく害するもの、又は、医薬品の乱用を助長すると思われるものは、医薬品及び化粧品適正広告基準の趣旨に基づき、指導のうえ中止せしめること。

 宮嶋薬務局長談 新薬収載は中医協再開待ち HBワクチンの開発を急ぐ

 厚生省の宮嶋薬務局長は二日、定例記者会見を行い「ポスト適配については今後、関係者の意見をひろく聞いた上で、その方向性を決めて行きたい」と述べるとともに、@適配後の動向についてA新薬収載問題B小売業の自由化CHB抗原について、あらまし次のように語った。

 ▽適配後の動向
薬事法の一部改正案が五月二九日衆議院社労委員長の提案で上程され、可決された。ここでは@廉売防止A不良医薬品の監視B医薬分業の三点がとくに指摘された。今後の問題としては、この三点に集約されようが、参議院の審議、また関連業界、関連省庁の意見を聞いたうえ、その方向性を決めたい。

 ▽新薬収載
先日、日薬連の保険薬価研から新薬の随時収載の要望が出されたが、一気にこのような方式に改めるのは難かしい。当面は年二回の収載ルールを確立していくことである。しかし、新薬収載は中医協の同意を得る必要がある。医協の動向に注目している。中医協が再開されれば即時収載できるように保険局とも詰めを行っている。

 ▽小売業の自由化
薬務局関係ではごくわずかな影響しかないが、適配の違憲判決が出て嫌なムードになった。しかし総合的な判断に立って自由化に踏み切った。国民的にみても大衆薬のブランド名は定着しており外資が導入されて、外国の医薬品が売られても影響はないと思う。

 ▽HB抗原について
厚生省内の研究班の結論が近くまとまるが、予防薬治療薬の開発が急務だとの意見が多いので、HBワクチンを開発するため化学技術庁に対し、研究費の申請を行う。また免疫グロブリンの開発についても局内予算で行っていく。ワクチンについてはかなり期待できる見通しである

 薬務局、新薬のヒヤリング開始

 厚生省薬務局は二日から延べ十日間にわたる新(開発)医薬品の薬価算定に関するヒヤリングを開始した。今回対象となる新医薬品は三〇数成分約七〇品目とみられているが、厚生省では業界の希望する随時収載は当面困難であるが、中医協再開次第、年二回定期収載の原則に基づき、追補収載する準備を進めている。

 中医協再開は、日歯の正常化後、日医・自民党の政治折衝および新開発医療技術の依命通知に対する一号側委員の反発などに対しての政治的解決をみてからであって、新医薬品追補は早くても八月の公算が強い。

 医薬分業の推進をはかれ 朝日新聞

 医薬分業に関して、理解ある論説が六月七日朝日新聞の社説に掲載された。日刊紙の薬業界への認識不足のために、その報道が特に問題視されている昨今、この論説は医薬分業問題を、初めて正当にうけとめたいものといっても過言ではない。同時に、医薬分業についての世論の高まりを示す証左ともいえよう。同社説を見落とされた方のために、左記して、参考に供する。

 長い間、有名無実となっていた医薬分業が最近になって、ようやく進み出した。昨年十月の医療費改定で医師が調剤を薬局に回す時の処方箋料が引き上げられたことがそのきっかけとなった。処方箋料が百円から五百円になったので、それまでは薬を調剤していた医師が処方箋の発行をふやしはじめた。社会保険などの処方箋発行枚数は今年の二月に、前年同月の倍以上になったという。

 医薬分業は三十一年に形式的には確立されていたがこれには大きな抜け穴があった。医師法などで、患者がいらないといったり、交付が疾病の治療を困難にする場合など、医師の処方箋発行義務が免除されていたからだ。このため医薬分業は従来ほとんど進まなかった。四十七年度の一般診療の入院外投薬薬剤費に占める保険薬局の調剤額は、わずか〇・九七%であった。

 医療保険で使われる薬の値段は、薬価基準で統制されている。そのうえ、医薬品メーカーは厚生省が四十五年末に規制するまで、競って薬の「現物添付」をおこなっていた。医師にとっては、これらが「潜在マージン」となった。薬や注射をふやして、もうけようとする医師はいまだに跡を絶たない。

 医薬分業が定着しなかった原因は、患者側にもあった。多くの患者が薬をふやしてもらうことが自分にも「利益」になると思いこみ医療機関だけでなく薬局にまで出かけるのはわずらわしいと考え、現状を変える必要性を認めていなかった。だが、薬の使いすぎは患者のためにはならない。その副作用が目立つようになり、厚生省は四十二年十月以前に承認した約四万品目の「薬効再評価」をやりだしたものの、その時期が遅かったため、サリドマイドやスモンなどの被害者が発生することを食いとめられなかった。

 四十八年度の「国民医療費」推計は三兆九千億円余に達したがその四六・四%は薬代と注射代であった。
この割合は異状に高い。西欧諸国では、一三%ないし二〇%程度である。薬の過剰投与は、保険財政を圧迫する要因にもなっている。医療の高度化、多様化に伴い、医薬品の種類がふえその作用も強力となり、複雑化している。この情勢のもとで、処方箋のチェックによってより安全性の高い調剤が期待できる医薬分業を推進しなければならないことは明らかである。

 日本薬剤師は現在、二万五千近くある薬局のうち一万を保険薬局として整備しようとしている。日本医師会も医師技術料の正当な評価を条件として医薬分業を支持するようになった。厚生省は今年になって分業率を五年後に五〇%にまで高める方針を打ち出した。一〇%ぐらいまでは急速に進みそうだが、目標が達成されるかどうかは病院の出方にかかっている。

 医薬分業を軌道にのせるためにはもちろん、診療報酬体系の適正化、薬局の受け入れ体制の強化、医師と薬剤師の相互理解増進、医薬品流通機構の再編成など解決しなければならぬことが少なくない。とりわけ、日用品や雑貨の小売商化してしまっている薬剤師の調剤技術水準の引き上げが重要な前提となろう。医薬分業すれば、患者の負担は一時的にふえる結果になるかも知れない。しかし、医療制度を合理化し、国民医療の質を確保するためには、実現しなければならぬことなのである。

 薬務局通知 調剤室は「複数階分置でも可」

 厚生省薬務局は六月二日かねてから検討していた「調剤室等の設置場所等について」を都道府県に通知した。これは、大阪府からの照会に答えたもので、内容は次のとおりである。

 @調剤室、待合室等薬局の構造設備が分置されていても、薬局としての同一性連続性があること。すなわち、薬局としての同一性連続性があること。すなわち、薬局内の専用階段等によって患者等が昇降できる構造で、当該薬局の構造設備に行くことができること。この場合、ビルの共用階段や百貨店などの一区画に薬局がある場合の一般顧客用階段は当該薬局の専用階段でないものと解すべきこと。

 A複数の階にわたって、薬局の構造設備の一部が分置されている場合でも少とも一のフロア面積は階段エレベーター部分等昇降、往来に必要とされる部分の面積を除いて一六・五平方メートル以上であること。

B当該薬局において常時調剤等の実務に従事している薬剤師によって複数階にわたる当該薬局の業務の管理が十分適切に行うことができると認められるものであること。店舗の構造設備の一部を他の階に設けることとしている医薬品の販売業の許可申請が提出された場合でも前記@に準じて取扱う。この場合少くとも一のフロアの面積は一般販売業は一六・五平方メートル以上、薬種販売業については一三・二平方メートル以上必要。

 薬局開設者又は医薬品の販売業者が当該構造設備についてその一部を他の階に移す変更を行った場合は、前記@、Aに照らして判断すること。前記@、Aに適合しない場合は、当該薬局開設者又は医薬品の販売業者に対し改善命令等必要な措置をとること。

 C@「○○調剤センター」「○○調剤医療センター」等の名称は薬局の名称として適当でない。A専ら調剤を行う薬局は「調剤専門薬局」、「調剤薬局」という名称としてもよい。B一般用医薬品等の販売業務に比し、調剤業務の割合が高いと認められる薬局は「調剤薬局」という名称を付してもよい。但し、この場合は、当該薬局において処方箋の受入体制が整備されている必要がある。

 自家製剤加算の取扱いで通知

 厚生省保険局医療課は二日、さきに日本薬剤師会から照会のあった「自家製剤加算の取扱いについて」を各都道府県など関係方面に通知した。この中で保険局は、日薬の照会事項を全面的に認めた形をとっている。通知の内容は次のとおり。

 (1)薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形薬を加え、当該医薬品を自家製剤の上調剤した場合は、次の場合を除き自家製剤加算ができる。
@調剤した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合
A散剤を調剤した場合
B液剤を調剤する場合で承認内容が用時溶解して使用することになっている医薬品を交付時に溶解した場合
C一種のみの医薬品を水に溶解して液剤とする場合(安定剤、溶解補助剤、濾過、加温、滅菌行為をなす必要があってこれらの行為を行った場合を除く)

 (2)次の場合には前記(1)にかかわらず、剤型が変らない場合であっても自家製剤加算が算定できる。但し調剤した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合を除く。
@同一剤型の二種以上の既製剤(賦形剤、矯味矯臭剤等を除く)を混同した場合。但し散剤及び顆粒剤を除く。
A安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等製剤技術上必要と認められる添加物を加えて調剤した場合。
B調剤技術上、濾過、加温、滅菌行為をなす必要があってこれらの行為を行った場合。

 福岡県薬業協議会

 福岡県薬業協議会は六月一〇日(火)、午前中から開かれた十日会、福岡地区薬業協議会に引続き午後二時半から県薬剤師会館で、メーカー・卸・小売業の三者が集まり、小売側の司会により開催された。

 当日は県薬務課より柚木係長出席、まず白木県商組理事長より、五月二六日に開かれた県商組総代会の報告が行われ、県商組の五〇年事業計画は@組織の強化A薬業経営の安定B大衆薬の防衛C情報活動-などをあげて説明がなされた。なお九州山口ブロック商組理事長会、医薬全商連総会の報告など現況報告が行われたが、商組としては団体交渉権があるのでこれを利して積極的な活動を展開していきたいとの中央動向を述べた。次いでメーカーより最近の値上げ品について伝達と情報交換があってのち、同協議会の商組会員に対する伝達方法について質疑検討が行われた。四ブロックからの地区協議会報告と情報のおもなものは次のとおり。

 @チラシ等の広告規制の徹底A福岡市原にダイエーは独立の薬局設置許可をこのほど得たが、この薬局はそのままにおいて開業せず、来年今頃原団地にダイエーができてからその中に薬局を設置する予定で、今後とも地元薬業者との協力体制を続けることを約束したB若松地区の分業推進は順調に経過中-など。
次回は七月一〇日午後二時三〇分より開催することを決定。

 医療反省 横田豊寿

 医療とは法的に判然と定義づけられているが、本質的には患者の精神的、肉体的苦痛を和らげ、社会復帰を容易にしてやることであろう。薬剤師はこれらに携る医療の中の一員である。患者とのつながりは現時点においては「処方箋」が重要な意味をもっている。今後分業化が更に進むにつれ処方調剤のもたらす重要さは尚一層の要素を内蔵することとなろう。

 分科されている医師診療による処方の内容を専門化されていない薬剤業により判断消化するは、はなはだ危惧の念に堪えないことであるので今後における調剤は内容を十分玩味した調剤に移行すべく努力したいものである。

 特に投薬を通じて患者の反応を見ることは現時点では至難の業である。そこで慾を云えば別個に「薬の相談窓口」を設け有効性・安全性・副作用・保存法・服用法等の指導、相談に応ずる。又入院患者にも回診時これと同等のことをなし、効果・反応等を勘案し爾後の処理治療資料等診療科にアドバイスするのも一方法であると考える。

 最近幼少時で問題になっている「大腿四頭筋短縮症」がある。本症は大腿の全面にある大腿直筋・中間広筋等が四つある大きな筋肉である。そこへ注射を繰返すと特に成長期にある乳幼児は筋肉全体を繊維化させ成育を止め下肢の機能傷害を起すものである。このことは十余年前整形外科学会では問題となっていたが小児科医が気付かずにいたことの悲劇で今後の社会問題になりそうである。

 このことから私は「サリドマイド禍」を連想せずにはいられない。外国では早くからサリドマイドが問題になっていたのに日本においては放置され幼い人々に苦痛をもたらしたことは残念で仕方ない、事はメーカーサイドではあるものの吾々も全く関係なしとは云えない事柄である。

 さて処方箋の内容は有効性に比重がかけられているが、薬剤サイドにおいてはその外に更に相互作用・副作用・禁忌等について配慮せねばならぬことは前にも述べた通りである。
二〜三の例を挙げるなら、

 (1)抗生剤
用い方の良否により正に起死回生の薬物であることは衆知の通りである。然し造血器(血液障害)・肝臓・腎臓に障害が起り易く特に妊婦への投与は新生児の第8脳神経障害があることに留意せねばならない。

 (2)副腎皮質ステロイド
抗炎症作用の王座とも云えるその効果は抜群なれど細菌に対する抵抗が極度に衰えることがあげられる。又胃の粘膜の抵抗を減少させるため胃液の塩酸を濃厚化し消化性潰瘍を起して胃壁が破れ易く然かも破れたらなかなかなおりにくい難点がある。然も満月様顔貌、浮腫等数々の副作用のあることは常識である。

 (3)経口糖尿病薬
日常生活の多様化特に食生活の向上に伴い最近「糖尿病」が目立って多くなりこのために経口糖尿病薬が多用される。それ故本剤の投与については皮膚の?痒光線過敏症、消化器の膨満感、腹痛、下痢、神経系の頭痛、不眠、関節の違和、その他低血糖、眼底出血、口角炎等の副作用があることを予想してからかからねばならない。

 これ等特定のもののみ二三例を取り上げてみたが勿論これらは用量、期間等の影響することが甚だ大きい事柄であるということを考える時「投薬時」にある程度の判断もできる筈である。それ故にこそ「真の投薬業務」の奥深さ、難しさ、重要さが問われるのであろう。医療の中でこれらの反省を薬剤師のみに求るは甚だ酷であることは十分了解できるけれど医療という大きな網の中では医師にしろ、看護婦にしろ、更に薬剤師にしろ反省は許されるかも知れぬが過誤は許されない。それ故過誤につながらぬ反省を常時堅持し、日夜研鑚することによって私も薬剤師の一員としてあえて要望するものである。

 私は本態性高血圧症による医療を受けている。薬に生涯手離せぬと宣告されているが一抹の不安は冠拡張剤の連用である。本剤の加護により心臓への栄養補給がスムーズになされ「ヘルツのポンプ」も可動してるが本剤の中断による機能不良を考えるとき本剤投与の中止による自活力化の方が良薬ではなかろうかと時折深刻に考えることがあり、別の反省が閃き、折を見て医師と話し合ってみたいと考えている。
私事ながらこれも医療の反省ではなかろうか。(長崎県病薬名誉会員)

 薬学教育問題検討委 医療従事の薬剤師教育纏る
DI・試験等の採択を十分に

 日本薬学会の薬学教育問題検討委員会(辰野高司委員長)はこのほど「医療に従事する薬剤師教育についての考え方」をまとめ、日本薬学会理事会に報告した。同委員会は四八年八月に「薬学教育に対する基本的な考え方」を討論資料として発表しているが、今回の「考え方」は@医療に従事する薬剤師の現状分析A医療従事者教育の反省B医療に直接参加する薬剤師の教育C結語‐から成っていてその内容の概容は次のようである。

 ▽現状分析では、病・診勤務薬剤師の業務は調剤・製剤、管理などの受動的側面とDI、試験などの能動的側面があるが、従来は能動的側面が十分でなく、両者の結合が必要である。また医療現場では「薬剤師の理念」「科学に基づいた調剤学」などを大学の各教科の中に確立することを求めている。

 ▽医療従事者教育の反省については、医療が医師のみによって行われるものではなく医療チーム全員による協力作業であるという基本的認識に立った上で、薬剤師教育も医療チームの中で薬について考え、発言し、実行していける薬剤師を育てるために行わなければならない。

 ▽医療に直接参加する薬剤師の教育については、同委員会が「薬学教育に対する基本的考え方」の中で「薬を患者に適用するための論理と技術」が不十分であると指摘したことに基づいてどのようにして自ら探求し発展させていく方法を学生の身につけさせるかの教育の原点に立った教育者の反省が要求される。なお、このたびの同委員会の「考え方」では、開局薬剤師に対して触れていないが、医薬分業の進展と生涯教育の必要性などから各大学、薬学会支部活動として真剣に取り上げる時期に来ていると結んでいる。

 独禁法見解 医療職は「事業者」か 添付、分業にも大きな影響

 公正取引委員長の私的諮問機関である独占禁止懇談会(脇村義太郎会長)はこのほど、事業者の範囲についての検討を行った。独禁法では原則として事業者か、事業者の団体の行為を規制しているものであるが、医師、薬剤師などの医療関係者、弁護士などはこれまで「自由業」とみなされて、独禁法の規制を受けていなかった。そこでこれらの医療職について、事業者と認定することが出来るか否かが、同懇談のテーマとなったわけである。

 独禁懇では、これまでこの問題に関しては見解がわかれ、法学者の間でも論争されていたが、今回は「個々の自由業において個別的具体的に判断すべきであり例えば医師や薬剤師が共同して新規開業を妨害する場合などは事業者と規定して差支えない」との説が大勢を占めるにいたった。

 この背景には@適配違憲判決などで自由業団体の自主規制ができにくくなった。A医師等の団体による一斉診療拒否が国民に被害を及ぼすと考えられる。B距離制限新規開業の妨害といったケースは自由競争原理に反するー等の理由があげられるが、とくに諸外国ではここ十年間ほどで自由業に対する独禁法適用が現実化しており、これが今回の多数意見に大きく影響を与えたものとみられる。

 薬剤師等が事業者であると認定された場合、たとえば適配に変りうるような自主的規制措置を薬剤師団体が行うと、当然、独禁法になり、また医師団体の一斉診療拒否、保険外の診療報酬価格の決定等も違反との判断が成り立ち得る。なお医師への添付行為は、事業者間取引の一つとして鮮明化するわけで、景表法の範囲にまで届き、問題は大きくなる。また調剤専門薬局と地域医師団体との処方箋発行協定も違反行為となるおそれ十分で、分業への影響も考えられる。

 日薬、卒後教育の三年計画を樹てる

 日本薬剤師は三日、全会員を対象とする卒後教育三年計画の概要を決定した。これは薬剤師として必要な基礎課目を三年で習得させようとするもので、日薬は卒後教育の終了後、生涯教育の段階に移行させる考えである。

 卒後教育の内容及び単位数は次のとおり。
微生物学(単位一・五)解剖生理学(一・〇)病理学T(一・〇)薬剤学(一・〇)病理学U(一・〇)薬理学T(一・〇)薬物療法T(一・五)薬理学U(一・五)生化学(一・〇)薬物療法U(一・五)

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