通 史 昭和50年(1975) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和50年(1975) 2月5日号

 福岡県薬理事会 第二薬局問題は薬務局の行政指導

 県内ブロック毎にモデル薬局を設置へ

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は理事会を一月二三日(木)午後二時から県薬会館で開催した。まず本年初の理事会に当り会長代理として白木副会長の挨拶(長野会長は県衛生部との会談で遅参のため)が行われたのち、神谷専務の司会で議事に入ったが当日のおもな報告事項、検討事項は次のとおり。

 ▽県薬会長会報告=白木副会長
日薬地方連絡協議会(県薬会長会議)は東京渋谷の薬学会館で一月一三日開催され、医薬分業推進、会費値上げ問題等について協議した。分業推進とからんで、いわゆる第二薬局についての論議が行われたが、基本的には一二月二〇日付日薬の「調剤専門薬局(いわゆる第二薬局を含む)に対する見解」(既報)にもとづくが、この日薬見解に対する日医の回答「日本医師会の見解」(既報)なども考えて、日薬はこれについて「現時点では厚生省にゲタをあずけている」と答弁した。なお分業推進で、日薬発表の「将来の到達目標としての調剤応需薬局の規模と配置」のガイドライン(既報)などが示された。

 会費値上げについてはA会員二千五百円、B会員千円の値上げ(現行会費は九千円、三千五百円)を考慮中であることが明らかにされ二月二〇日、二一日の日薬代議会で提案決定される。なお五〇年度厚生省予算について特に薬務局関係の予算獲得には森下泰議員が全力を傾けて活躍した。

 ▽県衛生部の監査について
一月一六、一七日の両日県衛生部の監査が行われたが、これに関し@上呉服町の旧薬剤師会館の固定資産税A県交付金などについての処理方法を検討。

 ▽代議員会について
三月末に予算代議員会、七月頃決算代議員会の開催を検討。前者は三月二五日開催と決定。会費については日薬会費の値上げと県薬A会員三千円アップは諸物価高騰と分業推進実施に当っては止むを得ないとして三月の代議員会に提案決定する。なお日薬代議会が二月二〇日、二一日に開催されるので、県薬理事会・支部長会を二月一二日開催、同日午後二時より九州ブロック日薬代議員会を県薬会館で開催する。

 ▽分業推進方針について
一月二三日現在、県内の保険薬局指定の申請が一七件あっている。これは従来に比して非常な進展であって、福岡県内では他県より分業進度が早いと思われる。保険薬局の受入れについては担当理事で検討する必要がある。分業の推進構想として@県内四ブロック地区に各々モデル薬局をつくりたいA前項についてブロック毎に支部長と調剤薬局、県分業担当理事の三者懇談を推進する‐などを確認した。

 薬務局・日医・日薬 分業推進で会談

 日本薬剤師会(石館守三会長)は一月一三日、先に(十日)厚生省薬務局、日本医師会との三者会談を行い、医薬分業問題について協議したことを明らかにした。この会談の中で日医の武見会長はいわゆる薬剤師の生きがいに触れ、「薬剤師は調剤だけで生きがいを見い出すことが出来るだろうか、医療チームの一員として治療効果がどれだけあったかと云うことでなければならないのではないか」と述べ、また患者の待ち時間、銘柄別処方、店頭整理など具体的な注文があった

 これについて石館会長は「日医は薬剤師が医療担当者としてプライドを持つ必要があると述べたが、薬剤師の生きがいはようやく医薬分業の具体化で生れようとしている。しかし薬剤師職能は多様であり、OTC販売などもその一つであることを武見会長も理解してくれたと思う」と語った

なお席上、いわゆる第二薬局問題も話し合われ、日薬の調剤専門薬局(第二薬局を含む)見解、これに対する日医回答で了解に達している、として今後は薬務局が行政指導で対処することになった。

 三者会談の出席者は次のとおり。
▽日医=武見会長、熊谷副会長
▽日薬=石館会長、望月専務理事
▽薬務局=宮嶋局長、吉村企画課長、代田技官

 宮嶋局長談 分業推進は重点志向型で流通適正化にエリを正せ

 宮嶋薬務局長は一月一四日に新年初の記者会見を行い@五〇年代薬務行政の抱負A五〇年度予算の概要B医薬分業問題などについて語ったが、そのあらましは、

 ▽五〇年代の薬務行政
五〇年代といっても四九年に山積した問題があり、この路線を引き継いでいく四九年には資本の自由化が決まり、GMPの実施、医薬分業の推進、サリドマイド和解、日本ルセル社の処分などがあったがこれらはいずれもこれからの薬務行政の方向を示唆している。

 資本自由化は今年五月から実施される。GMPもからんで医薬品産業は技術面の向上が大切になる。医薬分業は五〇年は地固めの時期である。五〇年代は流通適正化に業界はエリを正すべきだ。医薬品産業としては、社会的関心が高まっているだけに、社会の求めるところに対応する意識が必要である。

 ▽五〇年度予算
薬務局の総額は二一億九千百九十万一千円で前年度比増加率は四・一%に止まったが、これは保存血液の供給補助金が前年度より六千万円下回ったためである。医薬品価格調査費は五千五万三千円と増額され、医薬品価格追跡調査費の中でプロパーの実態調査を行うとともに国民生活安定措置法の振り替えで大衆薬の価格および需給動向も調査する。日本薬局方調査費は新たに九局作成のため七百五八万七千円が認められた。

 ▽医薬分業問題
一月一〇日薬務局、日医日薬の三者が会合して分業推進について話し合った。分業の推進は重点志向型しかないという点では三者の意見が一致した、分業を早めるにはとにかく橋頭堡を築くことが大切で、東京都の基準薬局や大阪府の推せん薬局など技術的にも高度なものをまず作ることが必要だ。これが技術のレベルアップにもつながる。日医としては特に処方箋と調剤薬の違うものがあったり、処方をしてから薬を売りつけるようなケースに不安を抱いている。なによりも医師と薬剤師が患者を中心に連携を深めることが重要と考える。

 森下泰議員談 国会議員に分業への認識の場も

 参議院の森下泰議員は一月一六日、東京都薬剤師会館で記者会見し、五〇年度厚生省予算の概要を説明したあと、今後の予算獲得の方法論に触れて「従来のように業界がバラバラに要求するのでなく業界のプロジェクトを設置してアクションを起す必要がある。その窓口を私がお世話したい。これは予算面に限らず業界の諸要求についても活用出来る」と語った。また森下議員は分業問題について「自民党の中で分業やGMPなどの知識を持たない議員のためにコミュニケートの場を持ちたい、国会議員による分業視察も考慮中である」と抱負を明らかにした。

 ◆九州ブロック 日薬代議員打合せ会

 日時 2月12日(木)14時
 場所 福岡県薬剤師会館
 内容 2月20・21日の両日開催の日薬第37回通常代議員会に対する打合せ

 ◆福岡県薬理事会並に支部連絡協議会

 日時 2月12日(水)理事会‐11時、支部連絡協議会‐13時30分
 場所 福岡県薬会館
 議題 @日薬会長会議報告A県衛生部の感さ結果報告と対策B県薬代議員会について(会費・他)C会館問題についてD分業推進についてE第6回調剤業務研修会についてF地方選挙について

 ◆福岡県病薬 特別講演会

 福岡県病院薬剤師会(堀岡正義会長)は特別講演会を左記により開催する。本会に関しての出欠を二月一八日(火)までに、九州大学病院薬剤部内・福岡県病院薬剤師会に連絡方を希望している。
日時=2月22日(土)14時
場所=福岡市博多区博多駅中央街一・ニューハカタ4階
講演
@ スライド上映・抗悪性腫瘍剤エスキノンについて。
A 医薬品のBioavailability=三共(株)生産技術研究所次長・調整課長中村栄一
B 老年期の薬物療法=山口大学医学部第二内科教授三瀬淳一

 ミニ情報 日本薬剤師会 五〇年度予算

 日本薬剤師会は一月一四日に全体理事会を開き、五〇年度予算案の骨子を決定した。この予算案は四億五千二百三一万三千円で前年度比二六・〇八%の増加で、この結果五〇年度会費も開局者二千五百円、勤務者千円の値上げも決定的となり、来る二月二〇日、二一日の代議員会で提案されることになった。

 日薬連 総価入札改善意見

 日本製薬団体連合会(鈴木万平会長)は一月一三日午後、東京大手町の経団連会館で理事会・評議員会を開き、医薬品薬効再評価、GMP、保険薬価、医療用医薬品の販売適正化、一般用医薬品の価格安定、国際製薬団体連合会総会の経過など報告した。

 また、同日の総会で会員側から官公立病院の入札問題について、官公立病院では相変らず総価入札による三〇%、四〇%引きという要求が出ていて、これに応じない場合は納入させないなど極端なケースが見られるが、販売姿勢適正化を指導する厚生省当局の一方でこうしたことが行なわれるのは問題がある。厚生省へ改善を要求してほしい、などの意見が出されたが、同連合会としては委員会レベルで十分検討したうえ対策を講ずる方針である。

 配合剤再評価で「配慮」を要望

 厚生省は医療用単味の再評価進行に伴い、医療用配合剤の再評価に着手するため、三月頃にはその判定基準、評価方法を決定するのが日本製薬団体連合会の薬効委員会は近く専門小委の設置、審査窓口の整備など配合剤の再評価対策を急ぐとともに、厚生省に対して@配合剤の特殊性から評価結果の如何によっては医療上に及ぼす影響が大きいので実地診療のニーズを十分考慮してほしいA配合意義の説明を改めて臨床試験を行うことなく学問的資料で評価されたいB行政措置については十分な準備と期間の猶予をおき、市場の混乱を起さぬよう配慮してほしい−などについて要望する方針である。

 情報社会における分業(3) 福岡市薬剤師会専務理事 荒巻善之助

 現状ではマンツーマン分業という考え方が大分普及して参りまして、日薬の基本方針もこれだ、ということで、まあ止むを得ない、ということで表向きは反対しないけれども、心の中ではどうも嫌だ、と思っている人が相当にある。

 こういう方は年配の薬剤師に多いわけで、多分に古典的分業についての郷愁がある。又新しい分業を理解するうえでの柔軟性に乏しいということもあって止むを得ないとは思うのですが、私は具体的に分業を進めていくためにはマンツーマンより他に方法はない、と思っております。それは今迄述べて参りました、情報化社会に於ける分業という基本理念に於てもそうでありますし、又、物理的な推進条件についてもそうであるからです。

 只今、私は分業という言葉は必ずしも適当でない、チーム医療への参入だ、ということを申しました。チーム医療というからにはチームワークをやるわけで、チームワークをやるためには相手が誰だか判らなくてはてんで話にならない。医師が不安がるのも当然のことです。ですから医師の不安感というものは薬剤師全般に対する学問的ないし、技術的不信感では必ずしもないわけで、薬剤師とチームワークをやることについての不安、というふうに解すべきです。

 マンツーマン方式は、この問題を解決する唯一の方策でありまして、今述べたようにチームワークをやる、即ち情報の流れがマンツーマンであるということで、一対一の特定契約分業というふうに解すべきではありません。ただ現状ではどうしても歩行距離が問題になるので、特定契約分業の方が、全面分業に移行しやすいわけです。従って、必ずしも一対一ということが前提ではないわけで、相互に一対複数ということが、これからの分業を進める上での平均的姿になってくると思います。

 薬局側からみれば医師二ないし三、プラス歯科一、ということになるし、医師の方からみれば、患者の流れからして、三軒ぐらいの薬局が協力してくれることが望ましい。こういう形の分業とよんでいるわけです。

 点と点の分業が或程度進んでまいりますと、患者さんはだんだん歩くことになれてくる。以前厚生省でやった調査では、分業になると不便だ、と答えた人が七割あったそうです。第一、歩くことが不便ですね。ところが上田市で調査すると七割の人が不便でない、と答えているということです。これは歩くことになれて、それが当り前になってしまえばさほど不便とも思わなくなるのですね。そういう意味でなら欧米諸国ほど不便な国はない。相当に歩かないとなかなか薬局には行き着かないのですから。

 然し始めからそうなっていれば誰も文句は云わないわけです。だから日本の場合非常にいびつな形で出発したことにも問題がある。然しこういう形で多少処方せんが流れだしてくるとそれがだんだん相互に重なり合い入りまじってきて、今迄処方せんが全く来なかった所にも多少は来るようになる。そうすると、その地区での平均的な備蓄パターンができ上ります。これは患者の自然の流れによって形成されたものですから無理がないわけで、薬局の規模、立地、意欲の有無によるバランスがとれている。これを私共は面の分業とよんでいるわけですが、日薬のガイドラインによる三年目の目標が大体このあたりになるのではないかと思います。

 ただこれは、あくまでモデルパターンであって、みんながこんな形で都合よくいくというわけでは決してない。任意分業なんですから五年待っても処方せんが廻ってこない薬局があるかも判らない。だから絶対に無理をすべきではない。来るか来ないかわからない処方せんを当にして備蓄をし、抗生剤を次々にパンクさせるなどということは、全くナンセンスです。

 私は現代の医療に於てなされるようなものがあってはならないと思う。現代の医療に於ては、それが制度として定着することが必要なのであって、そうでなくては永続性がない、これは私共が分業を進める時、十分に考えておくべき事であって、薬剤師がやることは、それなりの社会的評価の中で進めていくし、要求するものは十分要求する、これが基本でなくてはなりません。ですから、もしそうでない形が強いられるとすれば、それは強いる社会の方が悪いのだと私は思います。今でも強制分業などということを軽々しく口にする人がありますが、そういう責任を個々の薬局が負うことになると、これはもう大変なことです。

 ですから、できる所からやっていけばよいわけで、医院の前に調剤薬局が新設できるような人は直ちにやるべきだし、近くに医院が何軒もあって、処方せんが出る可能性がある人は、常に医師にアピールして、受入準備を進めるべきですが、現状の立地も悪く医院からも離れているということであれば、その対策はご自分でお考えになるべきです。

 さて点と点の分業が面の分業に拡がって行く過程で薬局側の持つ諸条件があります。商業立地であるかどうか、医院から近いかどうか、そういうロケイションの優位性、加うるに意欲、人柄といったもの、こういうもので自然と患者の集り方は違ってくるわけですから、それによって、自然と備蓄のよくでき上った薬局が育ってくるはずです。そうなるとその薬局がその地区でのセンター的な役割を担うことになる。

 こういう考え方をすると備蓄センターなどというものは不要のものだと思います。稀用薬品は内服薬に関する限り救急的要素の少ないものです。こういう薬品はセンターになる基幹薬局迄患者或はその家族を歩かせても大した不満は出ないはずで、そういうランク分けが地区医師会との話合いで必要になる。これによって一般薬局の備蓄負担はぐっと少なくなると思います。

 備蓄センターの機能とはディストリビューターとしての流通機能ですから、これは本来「卸」の機能です「卸」の方がこの問題についてはスペシャリストである。そのために「GSP」があるわけで、こういうことに薬剤師会が安易に手をつけるべきではないと思う。むしろ私は流通管理を専門とする薬剤師職能があってもよいと思うし、そういう薬学の新分野が開発されるべきではないかと思います。そうでないと「GSP」はただ形式だけに終って、機能としては働かないのではないかという気が致します。
問題をここまで具体的に煮つめて参りましたので、備蓄及び分業受入れについての責任のあり方を少し考えてみたいと思います。

 過ぎし日々(41) 塚本 赳夫

 だから上の方のお兄さん豊さん(東洋拓殖)は大変おとなしい方だし、次の猛雄さん(呼び名は僕と同じで可愛がって下さったし、私が薬学に居た頃は稲田内科に居られ、後に聖路加病院の内科医長)などはとても好きだったが年が少しはなれ過ぎてるのでこわかった。一番親切なやさしいお兄さんだと思われたのは正夫さんで、後に日光の金谷ホテルの金谷真一家に御養子に行かれ今でも金谷ホテルの会長さんである。

 次は続いて希少価値のあるお嬢さんが居て文子姉さんとその頃僕は読んで居たが後の東大教授工博山崎匡輔氏夫人であり、僕がピアノを始めたころ手ほどきを受けた事もあり、その頃先生が北海道に出張された留守に生れたのが息子さんで、そのために道雄さんと名をつけたと伺ったような気がする。この山崎道雄さんは田辺製薬に居られて僕も大阪でお目に懸った事がある。

 次に幼少にしてなくなった鶴子さんと云うのが多分僕とおない年で、一ツ下が栄子さんで口喧嘩ではとてもかなわなかった。皆英和女学校に通っていた。幼稚園や小学校もあったかと思う。)清水の浜で裸で遊んでる時に「なーんだ赳夫さんはからだは小さくて手足ばかりで出来てるじゃないか!」とやられた事がある。後に関義長氏(三菱電気)夫人として活躍されたと伺っている。

 僕の家もずいぶんにぎやかな家だが数からだけでも井上家は約倍以上もにぎやかだと云えるので僕は羨ましい限りであった。稀にではあるが、この大集団である静岡に於ける井上家に遊びに行ってる時、この病院の道を隔てたおとなりにある小林さん(静岡三十五銀行)のお嬢さんで貞子(ていこ)ちゃんと云う眼ばかり大きくてきれいな娘さんが現われて来て、びっくりして騒ぎを見ていて、間もなく消え去った事がある。

 今考えるとこの子が後の憲甫夫人・通称年子さんであるのも不思議な因縁と云えるばかりでなく小林家の叔母さんは日光の金谷家で育って小林家に嫁に来た方であり、僕が散々お世話になった井上正夫さんは後に金谷家を継いで活躍された事などやはり世の中は広いようで狭いの一語に尽きる。

 分業推進実態調査 九州山口薬学会助成金により福岡市薬が実施

 福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)は、昨秋宇部市で開かれた九州山口薬学会総会において交付された研究助成金の対象となった「医薬分業の推進と実態に関する調査研究」を行うこととなり、このほど次のような調査を実施した。

 調査は福岡市における処方せん受入準備体制を知ると同時に医師会及び関係機関と対処するために行うもので、九州山口薬学会の研究助成金によって行ない、結果は本年秋長崎で開かれる第42回九州山口薬学大会において発表される。

 調査の対象は、薬局・小売形態の一般販売業すべてであり、個々の店舗ごとに実施する。調査項目は店舗の状態、保険薬局指定の有無、本年一月の処方せん受入実績、借入金の希望額、今後指向する店の形態、分業に対する不安項目、研修会に対する希望内容、分業促進のための対策の有無、市薬への要望などである。

 まむしの黒焼 西脇病院 森田健吾

 蝮の強壮剤としての薬効は皆さんご存じの通りですが、私がその蝮の黒焼を造った経験と失敗談を御笑い草までに記しましょう。昭和二五、六年頃私が伊王島鉱業所病院に在任当時満洲から復員して来た鉱員の夫人が入院中、衰弱甚だしく骨と皮ばかりに痩せ衰えていた。たまたま主人が大きな蝮二匹を手に入れ内科医と相談の上黒焼にして服ませ度いとの事でお鉢が私に廻って来た。

 勿論黒焼の製造は教ったことがない調剤学製剤学の本にも記載がない。薬種屋の古老にも二、三尋ねてみたが誰もご存じない。エーままよ自我流でやれと覚悟をきめて取りかかった。先ず焼くのに素焼きの壷が必要だ。一匹入る位の壷を市内の陶器屋を捜し歩いたが何処にもない。散々捜し廻ったあげくやっと一軒捜しあてたが大きすぎて円筒形の五、六倍もの容積の物がたった一つ、仕方なくそれを買って来た。

 それに一匹入れて貰って壷の合せ目を和紙で十分に目貼りして準備OK、、病院の空き地で、木屑を燃やし其の火の中に素焼の壷を載せて下からと四周から焔を当てた。さて焼く時間、程度が判らない、実際に何分位ではなかったかと思う。愈々壷を取出して冷後祈るような気持で恐る恐る壷を取って見た。処が焼けすぎて半分近く灰になっている。やっと黒焼らしいタール分を含んだような部分が半分位残っている。もう如何とも仕方がない。灰の部分も加えて全体を粉末にし投薬の散剤に加えて服用させた。

 まだ一匹残っている、第二回目は火加減ばかりが問題だ。今度は慎重に焔や熱の強弱も大体同様にしたつもりで時間を前より一〇分位短くして焼き、さて壷の蓋を開けて見たら今度は焼方が不足で胴の辺りは黒くもならず生焼けの部分が残っていたが、それは後で鍋の廃物で"ほいろ取る"(湿気を炒りとる)ような方法で乾燥した。脂肪がジリジリ出て随分手こずったが焦げる程度に焼いて乳鉢で粉砕して何とか調剤と混和して投与した。

 其後、当時浜の町観光通りから思案橋までの間は電車通りを塞いでバラックの闇市が立並んでいた、この中に一軒まむしの蒸し焼のどくろを巻いた姿のままで売っている店を見つけ内科医と相談して前の二匹より幾分小さな物で一匹千円位で買い求め毒牙の有無を確かめ眼前で粉砕機にかけて粉末にしてもらって散剤に混ぜて投与したがお蔭で私も手数が省けて助かった。用量は忘れたが一日量一g位までは宜いと思う。

 かくして相当長い期間服用が続いたがこの蝮が効いたのか、件の患者も元気快復退院し其後夜など手足を夜具の外に出して寝ていることもあると主人が語った由、私も黒焼は完全には出来なかったが努力も無駄でなかったと心ひそかに喜んでいる。

 其後又大きな蝮一匹手に入ったとて、今度は水剤用にアルコール漬けに出来まいかと相談を受けた。早速取りかかる。五〇〇g入広口空瓶のキルク栓に穴を二つあけ、一つには小さい硝子漏斗をさし込みには一つには短い硝子管を通しておく。先づ瓶に蝮を入れる。次に漏斗から清水を瓶の半分位まで入れる、頭はいつも水の上に出している。

 翌日になると水が濁って来るので瓶を傾けて短い硝子管から汚れた水を流し棄て漏斗から又新しい清水を注ぎ入れる。かくして体内の汚物を全部排出させてしまってから二、三日も全く水が濁らぬようになったら水を全部棄て去り愈々稀釈アルコールを漏斗から注入する。瓶の中で蝮は苦しさにのたうち廻るが人助けの為に成仏してくれと祈り乍らアルコールを凡そ瓶一杯、充分体の浸るまで入れて密閉し冷暗所に貯蔵すること一年以上、長い程良いと思う。

 それを何tかずつ、水薬に加えて投薬する予定でしたが私も退職したので内科医に其まま引継いで来てしまった。尚アルコールの濃度は忘れたが五〇%位でよくはないか、又焼酎を代用しても結構だ。漢方薬にも反鼻と称して蝮の皮を剥ぎ臓腑を去り頭・毒牙はそのまま棒状に乾燥した物を強壮剤に稀には排膿剤として使用し、養命酒の処方の中にも加えられている。
(長崎県病薬会報より)

 福岡県 薬業団体連合会 設立準備総会を開催 創立総会は二月二七日に

 福岡県薬業団体連合会の発起人会は、既報の通り一月一〇日に開かれたが、その設立準備総会は一月二九日(木)一二時より福岡県薬剤師会館会議室で開催された。

 当日は県衛生部より久保次長、岩橋薬務課長、大塚・内藤課長補佐と構成団体である福岡県薬剤師会、福岡県薬事協会、福岡県医薬品小売商業組合、日本製薬工業協会九州支部(武田、三共、田辺、エーザイ)、福岡県製薬工業協会、福薬会、福乳会、福岡試薬協会九州医薬品メーカー会、九州医薬品卸商連合会、福岡県医薬品卸業協会の一一団体代表者が全員出席し、薬務課作成の会則(案)など設立準備について検討した。

 まず、前回の発起人会で座長をつとめた県卸協の吉村会長より発起人会の報告(本紙一月二五日号参照)がなされ、五〇年代の業界に課せられたテーマは多種多様であるが、この状況のもとで我が業界の社会的責任、健全収益力、総合的業界イメージアップを強調した。次いで座長に県薬剤師会の白木副会長を選出し議事に入ったが、その内容のおもなものは次のとおり。

 ▽目的
会員の協力のもとに社会的責任の自覚に立って、薬業界の発展向上と相互連帯の強化を図り、もって県民の健康と福祉の増進に寄与する。

 ▽事業
@薬業界の相互連絡、情報交換に関すること。
A講習会、研究会等の開催
B県民に対する薬業知識の普及宣伝。
C会員の福祉に関すること
D優良施設、職員ならびに功労者等の表彰。
Eその他、この会の目的達成に必要な事業

 ▽会長・副会長
理事長の推せんまたは理事の互選により指名された者を総会で選出する。

 ▽顧問・参与
理事会の推せんにより会長がこれを委嘱する。(顧問候補=県知事、参与候補=県衛生部長)

 ▽理事
各団体がそれぞれ当該団体の役員または相当職にある者のうちから推せんした者について総会で選出する。

 ▽附則追加事項
@理事(会長、副会長を含む)を二五名以内とする。
A副会長を六名以内とする。
B代議員を五〇名以内とする。

 ▽会費
各団体月五千円。

 ▽理事・代議員候補配分
一一構成団体に対する各団体の理事・代議員候補配分数を左記のように決定、これに関し各団体は推せん者を二月八日までに事務局へ通知すること。
薬剤師会(理事3、代議員10)、薬事協会(3、5)、商組(3、6)製薬協(3、3)、県製薬工業(1、3)福薬会(1、2)福乳会(1、1)、試薬協会(1、3)、医療品メーカー会(1、3)、医薬品卸連(1、2)医薬品卸協(3、5)

 ▽理事会開催
二月一八日(火)午後一時より、県薬会館で。

 ▽創立総会開催
二月二七日(木)午後一時より、県薬会館で。

 日本薬剤師会 通常代議員会次第と50年度事業計画案

 日薬第三七回通常代議員会は二月二〇日、二一日の両日、東京渋谷の薬学会館で開催されるが、その次第は左記の通りである。

 (1)報告
第一号…昭和四九年度会務ならびに事業報告。
第二号…理事指名承認を求める件。

 (2)議事
議案第一号…昭和五〇年度事業計画案
議案第二号…昭和五〇年度歳入歳出予算案。
議案第三号…昭和五〇年度会費額に関する件
議案第四号…昭和五〇年度借入金最高限度額承認の件
議案第五号…昭和五一年度総会開催地に関する件

 (3)報告事項
日本薬剤師会年金第一期決算ならびに規程改正の件

 (4)協議事項
日本薬剤師会の五十年度事業計画案はこのほど決定されたが、その重点項目は次の八項目である。@福祉社会の基盤造りの推進A分業第二年度計画の実施B医薬品管理業務の体系的確立とその推進C薬局経営実態調査の実施協力D医薬品流通の適正化の推進E医薬品情報組織の整備F未組織薬剤師の組織化と日薬の機能強化Gその他関連事業ならびに継続事業の推進。

 分業推進関係では日薬の分業実施計画の二年度となるが、昨年末から実施に移した各地区の分業状況、活動状況の動態調査を引き続き実施するとしているほか、薬局の整備と座談会や広報による分業PRを推進するとしている。

 五〇年度に日薬が新たに重点事業として打ちだした項目は流通適正化の推進で医薬品関係の製・配・販の協議が活発になるものとみられる。なお事業計画に3Rの達成をあげている。3Rとは@Receht Receiving AReasonable Currency of Drugs BReinforce Members 日本語では@処方箋発行受入整備A医薬品流通適正化B会員増強

 大牟田市長選 古賀治氏を 自民党で一本化

 自民党大牟田支部は二月五日午後一時から大牟田商工会議所で総務会を開き、大牟田市長選の候補者の選任問題を討議、同選挙に出馬の意向を示している同党前県議の古賀治氏と同現県議の古賀喜一氏両氏のいずれにしぼるかを無記名で投票採決した。投票結果は古賀治氏が絶対多数を獲得し、自民党大牟田支部の単独候補と決定した。

 福岡県における 学校薬剤師の活動(上) 馬場正守

 学校三師のうちで薬剤師が学校保健に参画するようになったのは、他の学校医及び学校歯科医と比べて新しい。法律上昭和三三年に学校保健法の中に、大学を除く諸学校に学校薬剤師を置くことを得となり、三六年に学校薬剤師を置くものとするとなった。しかし本会では学校衛生委員会という名で、昭和二六年八月より活動を開始し、二九年六月に県学校薬剤師会と改め、県内を四ブロックに分けて、(北九州、福岡、筑豊、筑後)先づ学校薬剤師の設置運動を開始し、現在では県内に六〇〇名に達せんとする会員をもつ大世帯に発展した。この間に県当局関係者の絶大な協力があったことは特筆すべきで、ここに厚く御礼申し上げる。

 学校薬剤師の仕事の内容については学校保健法、準則及び施行令に定めてあり15項目に則り職務を行っているが、それは学校の学習能率の程良き向上のための方策を求めることであり、施策を進める上での資料の作成ということになる。その基準は保健体育審議会の文部大臣への答申をこれに置いているが近いうちに法として定められると聞いている。

 そこで学校薬剤師は学校保健の向上と、学校環境衛生の向上が主な任務といえる。学校医歯科医がその対象を児童生徒としているが薬剤師は対校舎、対施設、設備になり現在もっているものを最大限に活用してその目的を果すように学校長、関係当局へ指導、助言を与えることになる。また不備、不良個所があればその改善改良等を指示することも多いのでその活動には殆んど費用がかかり、この点が他の学校医、歯科医と異なる。

 第二の薬剤師の活動の実際は、担当校へ出向いて定期検査を行う以外に、日本学校薬剤師会の全国統一事業、本会の県内統一事業、また各ブロック、市郡町村学校薬剤師会の統一事業等が試みられ、事績を重ねつつある。全国統一事業では学校飲料水の検査を二ヶ年続けて行い、本県では水源の種類は九八%が上水道であるが、管末の残留塩素濃度が〇・一PPM以下が四〇%ありまた井水使用の学校で滅菌機が設置されていない学校が若干あり、寒心に耐えない。

 また照度照明環境の全国統一調査では、現在福岡市分が集計を終ったが一〇〇%(一六七校)回答のうち照明設備のある学校が七六%、カーテン、ブラインドがある学校八五・五%、天候によって暗い教室がある学校一五・二%となっている。また普通教室三三四七教室のうち、照明設備の全くない教室九・七%、改善、照明器具の増設等の必要ある教室一〇%、黒板照明の設備のある教室は六七・六%となっている。

 福岡市立学校では今までの照度調査の資料を参考にして今年度中にすべての学校の一〜二階は黒板照射灯を取付けることになり、その作業が行われている。そこで照明については大体満足すべき数値が得られるようになったので今後の学校薬剤師の活動の分野として照度立廻り点検という作業を今年度から試行実施し、その集計が終ったので発表した。

 福岡市内の学校数は一七七校で回答は八二・四%であった。校地外に大きな建物があり、その影響で日照を妨げられている学校は八校五・五%、校舎外に三階に達する大きな樹木があり教室の日照が妨げられている学校は三二校二一・九%二階に達するような大きな塀で一階の教室の日照が妨げられている学校が一校〇・七%である。

 また有効窓の外に樹木があって暗くなっている学校が四七校三二・二%、階段、便所渡り廊下等で暗い教室のある学校が六六校四五・二%窓よりの採光を妨げる掲示物成績物がある教室のある学校が二五校一七・一%、照明器具の要修理個所がある学校は三四校二三・三%という成績であった。

 学級別では三三六七教室で有効窓の外に樹木がある教室で有効窓の外に樹木がある教室四・三%、階段、便所、渡り廊下等で暗い教室は九・四%窓よりの採光を妨げる掲示物があった教室は三・八%照明器具の要修理個所がある教室は五・六%であった。これらは勿論参考資料として当局へ報告を行い感謝されている。

 情報社会における分業(4) 福岡市薬剤師会専務理事 荒巻善之助

 日本語には責任という言葉が一つしかないので、日本人は責任ということを一緒くたに考えてしまいます。然し英語では五つ、六つあるんです。
レスポンシビリティ
ライアビリティー
オブリゲイション
アカウンタビリティー

 この他にも、トラストとかデューティという言葉がありますが、レスポンスというのは、応答スル、という意味で誰に応えるのかというと、神さまに答えるということです。向うの人の信仰は神さまとの契約関係ですから、神さまに約束したことを守る。まあ、日本語でいう「責任」にいちばん近い意味をもつのはこのことばかも判りませんが、これは「備蓄責任」というときの責任の意味とは大分違います。

 マンツーマンで分業するときにまず話し合いをする。これこれの薬を置いといて下さいよ、とリストをくれます。よろしい、それじゃそれだけの薬は必ず置いておきます。その代りそれ以外のものを出すときは必ず事前に連絡して下さいよ、ということになると、これはアカウンタビリティーなのです。アカウントというのは御承知の通り勘定のことです。物を勘定する、計算する、だから、これだけのものは、と限定して負う責任はアカウンタビリティーになります。それ以外の処方を出したら医者の方が無責任です。

 面の分業に移って、センター的な基幹薬局を指定したとします。この場合地区の医師と薬剤師が話し合うことによって備蓄についてのコンセンサスに達したとする。この場合の備蓄はオプリゲイションです。オブリッジという言葉には強制スル、という意味がある基幹薬局ともなれば相当の備蓄がないとコミニティーの要求に応じることはできないわけで、その中には採算のとれないものも多数含まれるはずです。そういう薬品は始めから採算を度外視して備蓄しなければ社会的な責務を果し得ないことになる。こういう義務的な或は恩恵的な責任はオプリゲイションです。従ってこれをアカウンタビリティーと混同して考えると、分業はしたいがとてもとても、ということになると思います。

 さて、以上が私なりに考える分業展開の予想図ですが、これは日薬のガイドラインとも大体一致するはずです。ただこれは一応の外形的なもの、一応手の中に分業というものを受けてみる、というだけのことですから、これを薬剤師の職能として確立していくこととは又別のことです。さきほども申しましたように、病院薬剤師は新しい動きとして、どんどん医師の中に進出して行っている。ところが開局薬剤師は新しい動きとして、どんどん医師の中に進出して行っている。ところが開局薬剤師の方はそういうふうな基盤に乏しいというのは、チームワークをやる基本的な条件がまだでき上っていないということです。

 過日、武見医師会長が「薬剤師への提言」という放送を致しました。これはまことに居丈高な、と申しますか、自分のことはさておいて、一方的に薬剤師に求める論調でありますが、これは混乱した医療制度の、古い家並みをこわして、新しい道を作るわけですから、或意味では止むを得ない。残念なことには、薬剤師で、薬剤師のモラルについて、あれほど理論的に、あれほど明確に云い放った人は一人もなかったということです。そういう意味で薬剤師の一人一人が、虚心にあのことばに耳を傾ける必要があります。

 武見さんは、あの提言の中で、分業になったときの薬局が、調剤販売であっては困る、ということを云っています。調剤販売というのは武見さんらしい表現の仕方で、ことばだけではちょっと意味がとりにくいかもしれませんが、これに対応する医師側の体質としては、医療小売同業組合というのがあるわけです。そうすると例えばこういうことをお医者さんが云います。

 福岡市では休日診療をやっているのですが、これに薬剤師も参加している。ところが市の予算では充分な人員の出動ができにくいわけです。そこで予算をふやしてほしいと云うと「そりゃあなた方がまだなれていないからでしょう。看護婦の方が早いですよ」というわけです。こういう意見があるということは開業医だからという前提があるにしても、非常に問題がある薬剤師の仕事について全く理解がない。これを我々は徐々に改めさせていかなくちゃならない。それには調剤販売では困ると思うのです。

 現状、薬局のパターンを考えてみると三つぐらいの要素に分類できると思います。一つは無気力型、最後に相談薬局です。この中でいちばん悪いのがディスカウント型、いちばんよいのが相談型、ということになっている。これは薬剤師のもっている知識、能力、社会性というものからすれば当然そうなるわけで、それについては異論はないわけです。ただ、医療チームを組むということになってくると、相談薬局がやっていることは、はたしてチームとしてのメンバーシップに惇らないが、という問題が浮かび上ってまいります。

 というのは、相談薬局がやっていることは、現状では現代の医療にこぼれた人達を、どういうふうにして救うか、とおいうことであって、そういう意味での社会的な意義があるわけであります。然し、そういうふうに、こぼれた人達がたくさん居るということは、今の医療がいかに貧困であるかということの一つのしるしでありまして、我々が医療チームの中に入って行くということは、そういう貧困な医療を、いかにして質の高いものに変えていくか、ということが一つの目的でなくてはならないと思うわけです。

 相談薬局で自信のある人は、「私は処方せんなど当てにはしていない、ずーと相談薬局でやるんだ」、というような人もあります。それはそれで薬剤師の一つの生き方だ、という考え方もあるわけです。それはたしかに今の西洋医学の体質的な問題もある。然しだからこそ、その荒廃した医療制度の深い谷間で、大きく開いたあだ花のようなものではないか、という気も致します。

 お父さんが相談薬局をやったから、息子さんが大学を出て又相談薬局をやる、そういうことを、はたして今後の社会が許容していくかどうか、私は非常に不安だと思うのです。ということは、分業をやること自体の目的が、医療の質を高めることにあるならば、必然的にそういう医療にこぼれる人達が少くならなくてはならない。そういう意味でのジレンマがあると思うのです。そこでこの相談薬局の機能、云い変えれば薬剤師が現実に社会に根を下し、社会から支持されている機能、これをもっと前向きに使う必要がある。

 それはどういうことかというと、患者のもっている生活像、これを的確に把握する機能です。これができるから相談薬局ができるのだと思う。そういう意味では、我々の方がもっと医師よりも患者の側に居るわけです。だからこれを、医療チームの中にどう投影させるか、医師と薬剤師の情報の中に、どう組み込んで行くかということ、これが今後の開局薬剤師に課された一つの課題ではないか、そしてこの課題を解決したときに、今後我々がチーム医療の中に組み込まれていく素地ができ上るのではないか。そしてそのためには、医療チームの一員としてのレスポンビリシティーをもつ必要がある。私はそういうふうに考えております。
(完)

 薬務局通知 第二薬局に見解示す

 厚生省薬務局は一月二八日、都道府県に対して、かねてから検討していた「処方箋受け入れ体制について」を通知した。この中で薬務局は「調剤専門薬局の許可にあたっては医療機関から独立した機関であること」として、第二薬局を否定する形をとっている。通知内容は次のとおり。

 ▽既存薬局の受入れ体制の整備について
@既存薬局については調剤用の医薬品や施設設備の整備など調剤体制の充実向上をはかるとともに調剤業務を担当するにふさわしい薬局とする。
A患者に不便をあたえないよう薬局店頭に保険調剤に応ずる旨および開局時間などを表示するとともに休日、夜間などにおける調剤応需体制を整えるようにする。

 ▽調剤専門薬局の整備について
@円滑な処方箋の受入れをはかるため地域の必要に応じ、もっぱら調剤を行う薬局を整備する。なお調剤専門薬局の構造設備については調剤業務の実情に応じて調剤室の拡大、待合設備の設置を行うなどその充実をはかることが望ましい。調剤専門薬局の許可にあたっては調剤専門薬局も薬事法に基づく薬局であり、構造的、機能的、経済的に医療機関から独立した機関であることを本旨とすべきであり、この点につき十分留意すること。またこの場合、適配条例の適用については地域の実情に即した運用に配慮するとともに、地域の薬剤師会、当該薬局関係者などによる事前協議を十分に行うこと。

 ▽その他
@調剤を行うためには薬剤師の研修が不可欠であるので実施するよう努めること。
A処方箋に基づく薬局調剤の意義などにつき地域住民に対する啓蒙をはかること。
B処方箋の受入れ体制の整備状況などについては四半世紀ごとに薬務局に報告すること。

 保険局通知 処方箋発行の指導を

 厚生省保険局は一月二九日、都道府県に対して「処方箋に関する取り扱い」について通知した。この通知で保険局は「保険医などに対して地域の保険薬局の整備状況など勘案のうえ、処方箋の発行を行うよう指導されたい」と述べて、処方箋発行によるトラブルを極力避けるよう指示している。通知内容は次のとおり。

 ▽処方箋に関する取り扱い
@こんご薬局の整備充実が促進され、処方箋の受入れ体制も一層推進されるものと考えられるが、保険医などに対しては地域の保険薬局の整備状況、被保険者の利便等勘案のうえ、処方箋の発行を行うよう適切な指導を行われたい。
A入院している被保険者等に対する院外処方箋の交付は特別の事由のない限り、交付する必要はない。よって入院患者についての処方箋料の請求は原則としてあり得ない。

 ▽保険薬局の指定
とくに調剤専門薬局の指定に関連するので、これらの薬局の開設の許可に際しては薬務主管課との連絡を密にし、保険薬局の指定事務の処理にあたられたい。

 全国薬務課長会議 販売適正化の指導を 宮嶋局長が強調

 全国薬務主管課長会議は一月二二日午後一時から厚生省で開かれ、宮嶋薬務局長は挨拶、支持を行ったがその中での主もなものの要旨は次のようである。

 ▽医薬分業の推進については厚生省は薬局の受入れ体制の整備に努力を払うが、都道府県においても適切な施策を実施してほしい。

 ▽医薬品の販売適正化は重要な課題であり、都道府県で販売適正化委員会の活動強化などを通じて流通秩序の適正化に、今後とも格段の指導を願いたい。

 ▽今年五月一日からの資本自由化で医薬品市場の国際化は一段と進むことになる。又、物質特許についても特許庁は今国会に特許法改正案を提出する運びであり、明年から実施となろう。製薬企業としては研究開発体制の整備が一層緊急の課題となってきた。

 全国衛生部長会議 安全性確保、医業分業推進を 田中厚相が強調

 全国薬務主管課長会議は一月二二日午後一時から厚生省で開かれ、宮嶋薬務局長は挨拶、支持を行ったがその中での主もなものの要旨は次のようである。

 ▽医薬分業の推進については厚生省は薬局の受入れ体制の整備に努力を払うが、都道府県においても適切な施策を実施してほしい。

 ▽医薬品の販売適正化は重要な課題であり、都道府県では販売適正化委員会の活動強化などを通じて流通秩序の適正化に、今後とも格段の指導を願いたい。

 ▽今年五月一日からの資本自由化で医薬品市場の国際化は一段と進むことになる。又、物質特許についても特許庁は今国会に特許法改正案を提出する運びであり、明年から実施となろう。製薬企業としては研究開発体制の整備が一層緊急の課題となってきた。

 全国衛生部局長会議 安全性確保、医業分業推進を 田中厚相が強調

 全国衛生主管部局長会議は一月三〇日午前九時三〇分から厚生省講堂で開かれたが、田中厚相の挨拶の要旨(薬業関係分)と宮嶋薬務局長の説明・伝達事項は次のとおり。

 ▽田中厚相
医薬品の有効性、安全性確保には国民の関心も高まってきており、副作用情報システムの整備、医薬品の再評価の対策を進めていく医薬分業は、処方箋受入体制を整備し、計画的に実施する。

 ▽宮嶋薬務局長
(1)報告事項
@五〇年度薬務局関係予算案A医薬分業の推進Bサリドマイド被害者の補償C医療用医薬品の販売適正化D医薬品の安全対策E医薬品の再評価FGMPG血液事業。
(2)連絡事項
@一般用医薬品の自主的評価点検の促進A医薬品の最近汚染実態調査B医薬品再評価指定成分の承認・許可品目の調査。

 ミニ情報 薬価大調査 四月時点で実施

 厚生省薬務局の森経済課長はこのほど、薬価大調査は昨年と同様に四月時点調査で行う予定で検討をしている、と言明した。このため薬価調査は四月時点、五月調査で行われる予定である。

 日本卸連 三月に研修会

 日本医薬品卸業連合会の研修会は、来る三月五日と一〇日に東西のブロック別に次のように開催される。

 ▽日程と会場
3月5日、東京・薬業健保会館。
3月10日、大阪・日生研修ホール。

 ▽テーマ
「卸業の諸問題の克服と繁栄」

 ▽講師
流研のスペシャリストが予定されている。

 医薬全商連 大正製薬と会談へ

 医薬全商連(荒川慶治郎理事長)は一月二二日午後一時半から大阪薬業クラブで全国理事会を開き、昨年一〇月以来、問題とされている大正製薬の販売政策是正を要求する問題について討議した。

 同問題に関し全商連がこのほど実施した傘下組合に対するアンケートの集計結果をもとに各商組の意見をまとめた結果、大正商法はあまりに高圧的だ、販売精査S区があまりにめまぐるしく変わり過ぎる、などの批判点で一致し、これによりパブロン千個売りなど大正製薬の一連の営業政策に反省と是正を求める運動を展開していくことを全会一致で決議した。これに基づいて、近く荒川理事長ら役員大正製薬に会見を申し入れ、問題解決を迫る方針である。

 薬剤師総数 八万七千六五一人

 厚生省はこのほど四八年末の薬剤師調査をまとめたが、これによると全薬剤師数は八万七千六百五十一人(男四万四千二百九十八人・女四万三千三百五十三人)。

 業種別では@病院または診療所の勤務者一万六千九百九十七人(男六千五百七、女一万四百九十)A医薬品営業従事者一万六千八百五、五千三十一)Bその他一万六千八十二人(三千九百五十四、一万二千百二十八)C薬局勤務者一万五千七百五十五人(七千二百二十三、八千五百三十二)D薬局開設者一万三千九百三十八人(八千九百九十七、四千九百四十一)。

 福岡県下で 「かぜ」流行続く

 福岡、北九州市で流行していたインフルエンザは都心部から周辺の市町村へ移りつつある。県衛生部の五日朝までの調べでは、これまでの調べでは、これまで学校閉鎖の続いた北九州市や福岡市など都心部では二月初めまでにはほとんど閉鎖を解除、インフルエンザの猛威は一応静まったかにみえたが、四日になって飯塚市、春日市、田川、鞍手、早良、各郡などに"飛び火"したことがわかった。

 同衛生部によると、このインフルエンザはA香港型ビールズによるもので、一昨年一一月から翌年三月にかけて県下で猛威を振ったが、今年は症状も伝染力も比較的に弱いという。しかし現在なお拡大しているので油断はできないと警告している。

 福岡県薬 調剤業務研修会の講師の尽力に感謝

 福岡県病院薬剤師会(堀岡正義会長)は、一二月二五日の県薬剤師会理事会で第六回調剤業務研修会開催が二月一七日よりと正式決定(既報)されると、直ちに堀岡会長を含む委員一四名は前講義担当講師を中心として、その準備にとりかかった。

 一月一三日に第一回準備委員会を、一月一八日には第二回委員会を開いて前講義のテキストと実地研修用処方例について検討研究を重ねている。なお、二月一七日開催初日の講義終了ののち午後五時過ぎより、調剤研修指定病院の二六施設約三〇名の先生方は実地教育の指導統一を期して打合せを行うこととなっている。第一回準備委員会に際しては、県薬を代表して神谷専務理事が出席し挨拶を述べたが、関係者一同としても病薬の後援と尽力について深く感謝している。

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 福岡県薬業団体連合会理事会で設立準備成る 創立総会は二月二七日開催

 福岡県薬業団体連合会(略称…福薬連)の理事会は一月一〇日の発起人会と二九日の設立準備総会に引き続き、二月一八日(火)午後一時より、県衛生部の内藤薬務課長補佐と構成各団体選出の理事が参集、福岡県薬会館会議室で開催された。当日は、二月二七日開かれる創立総会を前に最終的な詰めを行ったが、その内容は次のようである。

 ▽新加入団体
福岡県歯科用品商組合

 ▽団体名称変更
日本製薬工業協会九州支部は筑紫二十日会とする

 ▽二団体の統合名称
九州医薬品メーカー会と九州医療品卸商連合会は統合して一本化し、福岡県医療品卸メーカー会となる。

 ▽構成団体と理事
・福岡県薬剤師会…長野義夫、堀岡正義、神谷武信、斉田和夫、中村里実、安部寿、芳野直行、山本市郎、富永泰資、田中ミヨ
・福岡県薬事協会…吉松正記、谷口源吾、栗須鶴喜、二村貞男
・福岡県医薬品小売商業組合…白木太四郎、藤野義彦、山手陽一、本松茂晴
・筑紫二十日会…村上要吉、田部進二、西川朝治、佐々木太、木村修、今村尚幸、岡田信、今村尚幸、岡田信、斉岡博司
・福岡県製薬工業協会…岡本秋之進、武石ー雄、奥村陸平、村上雄次
・福薬会…岡敏見、豊田雅一
・福岡県試薬協会…印正司、田中博
・福岡県医療品卸メーカー会…永田利雄、亀宝三芳、鴻江哲
・福岡県医薬品卸業協会…大黒清太郎、渡辺荒次郎、吉村重喜、松井博、江口健策、大黒清治、鶴原正彦
・福岡県歯科用品商組合…木村豊介、益村益
(以上一一団体、理事四七名)

 ▽会則の一部改訂
代議員制をとらないこととなったので、これにともなう会則の一部改訂を行う。
▽創立総会
二月二七日(木)一一時より県薬会館で開催。

 ▽役員・顧問(内定)
・会長=長野義夫。
・副会長=吉松正記、白木太四郎、村上要吉、岡本秋之進、吉村重喜
・専務理事=神谷武信
・理事=(前掲)
・監事=磯田正春、藤村徹也
・顧問=亀井光(県知事)青柳成利(県医師会長)堀尾義勝(県歯科医師会長)、国松藤夫(武田薬品顧問)、四島久(前県薬会長)

 福岡県薬剤師会 分業着々進行、更に拡大を 理事会・支部連絡協議会で

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は二月一二日(水)一一時より理事会を一四時より支部連絡協議会を県薬会館会議室で開催した。

 長野会長は支部連絡協議会での挨拶で、「分業問題にしても、業界の諸問題は非常に急速度に進展しているので、私達は未来の理想をえがきながらも現時点に立って正しい判断のもとに問題を解決していかねばならない。その基本はあくまでも一般大衆の疾病治療に大きな責任をもつ薬剤師であるという使命感に燃えていなければならない」と協調し、真剣な討議が行なわれるよう切望した。当日のおもな協議事項は次のとおり。

 ▽福岡県薬業団体連合会の設立について
白木副会長より発起人会と設立準備総会の経過報告(本紙既報)

 ▽昭和五〇年度予算(案)について
県薬予算総額は三千七百四五万七千円。A会費=二万二千五百円(日薬会費一万一千五百円を含む)、B会費=九千円(四千五百円を含む)。

 ▽分業推進について
@一月一三日開かれた薬務局、日薬、日医の三者会談(既報)A一月二二日開かれた全国薬務課長会議(既報)B県医師会の分業に態度が軟化してきたC医療費改訂は六月頃になるのではなかろうか−等々の事情のもとで、処方箋受入れを更にいそがねばならないことが強調された。一月二三日の理事会では分業推進構想として各ブロック地区にモデル薬局設置を促進することが提案されたこと、なお近く小倉、八幡、二日市、久留米、糸島(新生薬局支店2)、柳川、福岡市内(2)に調剤薬局が開設される予定で、県下の分業体制は着々と進行中であることが報告され、各支部ごとの分業状況報告でも、いづれも前向きに応需態勢が進められていることを確認した。

 ▽県薬会長会出席報告(一月一三日白木副会長出席)
▽代議員会について
▽第六回調剤業務研修会について
(右の四項目いづれも既報)

 ▽長野会長挨拶
多忙のところ、ご参集下さいまして有難うございます。実は私、昨年10月末から病床にふしていましたがようやく回復に向いつつあるようです。本日はとうに主治医の許可を得て出席することといたしました。

 分業問題にしても、業界の諸問題は非常に急速度に進展しておりますと共に、それに附随する色々な雑事がこれに搦らまって、我々薬剤師としての将来の見通しを或る面では明るく、或る面では煩瑣にいたしているようです。私達は遠い未来の理想をえがきながらも現在のいろんな時点に立って、正しい判断のもとに諸問題を解決していくようにしなければならない。ただ眼前のことのみに囚われすぎては大きな過ちを犯すようになるし、その基本はあくまでも我々は一般大衆の疾病治療に大きな責任をもつ薬剤師であるとの使命感に燃えていなければならない、と思います。

 本日は本県薬会館の一階で九州選出の日薬代議員の方々の会合が開かれていて九州の薬剤師会として、の方々の真剣に取り組んでいる事が、要は薬剤師の未来をどう開くか、そして現在の問題にどう真剣に取り組むかを、もう一度、正そうとしていることと私は思う。

 福岡県は九州の中心で、また日本の薬剤師会の大きなウエイトをもつ県薬剤師会は、非常に流動的な現在の立場に立って、未来を誤らないように進みたい、かように思います。今日の支部長会が真剣に討議を終りますことを切に希望いたしまして、ご挨拶といたします。

 福岡県における 学校薬剤師の活動(下) 馬場正守

 また夏期の学校プールは数年以前から県内の学校では、海水浴ができなくなったこと等で設置が盛んであり、その衛生的管理の方法等の研修会も盛大でその時期になれば本会より講師を県内各地へ派遣してその実施方法を指導している。また学校プールが八月の夏休みに入ると休止になるのでその間町内別に水泳指導で利用される事例が増加したので今年度から学校薬剤師がその消毒方法の指導、プール水の検査等に努力している。ここでは特に学校事業と切り離して開放プール調査費として年間報酬外に当別費用を出すようにした支部がある。これなどはプールの利用としては非常に有効なことと本会では関係者の進歩した考え方に敬意を払っている。

 さて給食の方では久留米支部が給食用器具の各種について細菌検査を続けている。大腸菌ではまないた、ふきん、手のひら等に多く腸炎ビブリオ、ブドー球菌、一般細菌についても調査し衛生的作業のすすめ方について有効な指導を行っている。また福岡市には今年度で中学校給食センター(一ヶ所で一六〇〇〇食調理可能)が市内三ヶ所に設置されたが、そのセンター内で使用する蒸気式熱風初期保管庫の性能度を生菌と庫内温度調査法とを使用して調査し、最も能率の良い方法等を研究してその結果を得て助言し、またセンター内の空気環境、食器洗滌度等も学期別に年三回、多数の学校薬剤師が調査に従事しその作業能率向上にも助言を与えている。またそのセンターは調理機械が大きな騒音を発するので騒音の防除についても種々研究しつつある。

 学校内における環境衛生は、その変化の原因が一〇年以前は校内にある場合が大部分であったが、高度経済成長の結果、学校外よりの原因が近時増加しつつある。私どもが出席する学会大会等では、その研究発表の五〇%以上が公害関係で占められつつあり、工場よりの騒音と排気ガスが主であり、全国的に見れば全国三六〇〇〇校中二三〇〇校が騒音、一〇〇〇校が大気汚染で被害をうけている。

 交通騒音では特に大型ダンプ、大型タンクローリー車よりの被害がある学校があったが、十分な調査後、鉄枠ガラス窓を厚ガラスサッシュ窓にして音を遮断する方法をとり有効であった。また飛行場付近の学校では二重窓、防音テックス、痛風装置という防音設備で建築された校舎を、夏期の学習が特に困難であるとして全教室に除湿、冷房装置を取付ける工事を三年前に行い、騒音問題を解決した学校がある。

 しかし本装置を取付けるまで実に一八年間にわたる騒音測定、空気環境測定等、その膨大な資料が本工事の基礎になったのは事実である。現在、本会の最大の課題の一つは山陽新幹線の博多乗入れであり、軌道附近の住民等の抗議は大なるものがあるが本会では昨年、未だ通過していない時点で、県内の影響があるであろうと思われる二三校を選出し静時の騒音の測定を終了した。現在、順次速度をあげて馴らし運転を行っているが、時速一〇〇qで騒音の上限が六五ホーンを超えた記録を入手している。これが二〇〇qの定速運転になれば、この数値は更に上昇するものと思料し、その対策を考慮中である。

 また林間学校(旅館)の水質検査、調理場の改善、非常口の表示、消火器の点検、食器の洗滌、部屋寝具の改善、改良をすすめており数年前と比較すると格段の向上が見られる。その他理科用の薬品についても、教委の指導課とタイアップして安全性、確実性を主体に点検した。

 最後に本会として次のような問題点があり、これらについては関係当局と十分協議の上ご一考をいただきたい。即ち調査器具の不備と年間報酬格差の著大である。最も学校薬剤師が使用しやすいように器具を集積し、活動しやすい位の報酬を得たく考えている。皆様方のご協力を感謝しつつ筆をおく。(福岡県学校保健会会報より)

 過ぎし日々 塚本赳夫

 この頃の小遠足の一つで清水(きよみず)山(約一〇〇米)行きがある。兄はいなかったようだから夏休みなどではなく、光子もいたかどうかも定かでないから盲腸炎から間もない頃だったかとも思える。市内に近い西の裾(観音様、つまり現在の清水山公園)から登って一気に頂上まで茶畑のあいだを行き、大休止を取った。

 南に出たかなり大きな根を見おろして皆腰を据えて、海の方や少し左手に有度(うど)山(その手前の一寸平らな所が今の日本平)、右手の谷間には近い所に火葬場があってさびしい煙を出して居た。そのうちに静岡駅を出た上り列車が煙を吐いて近づいて来たので皆は大喜びをして眺めて居たら、この南尾根の先端を切り落して作った急な崖の向うに入って見えなくなった。悲観する暇も与えず山の左側に先ず煙が見えてから機関車がその威容を現わし、その後には客車達がおとなしく続いて来た、皆んな汽車を上の方から見た事はないので大変な喜びようで興奮しきってしゃべりあっていた。その時「アレはトンネルだねっ!」と憲甫がポツンと云うた。僕は一瞬びっくりしたが「いいえ!あれは只、山の向う側の崖の下を汽車が通っただけだよ!」と訂正を加えた。彼は妙に頑固で「アレはトンネルだよ、だって又こっちの方に出て来たじゃないか」となかなか承知しなくて困った。
この問題は夏になって江尻に行くまで解決に至らなかった。江尻に行く時、汽車に乗る前によく話をして、左側の窓ぎわに兄弟を坐らせて問題の崖をよう見せると共に静岡から江尻までの間にはトンネルのない事を確認させたらやっと憲甫も納得して呉れた。

 この頃の或る夏は焼津の大崩(おおくずれ)トンネルに近いお寺の部屋を借りて数日間暮した事があった。波の好きな僕は朝早く起きて、町の方に出来てる高い波よけの石崖にぶつかる波を見に行ったり、波に逆(さか)らって出て行く八艇櫓の鰹船の勇姿を見に行くのも楽しかったが、夕方船の帰る頃ばあやだの叔母さん達が買って来て食べさせて呉れた新し過ぎる鰹のさしみは何とも云えずおいしかった。ちりめんじわがよってるとか、白い虫が動いてるからいやだとか云うてる妹達も居たようだが僕には非常においしかった。もっとよい事は焼津に行く時の汽車は長いトンネルを通る事で、汽笛がなるとあわてて窓をしめないと煙が入って来るので大騒ぎだった。

 地盤沈下で陳情 福岡県医薬品小売商業組合 飯塚支部長 本松茂晴

 福岡県医薬品小売商業組合飯塚支部では、近来老人・乳幼児・ねたきり老人の医療無料化など、社会福祉行政が急速に進むに従って医薬品小売業が圧迫される実情を当局に訴え、何等かの要求を出すべきではないかという意見が昭和四八年五月の総会で出されたが、福祉行政に水をさすことになってはとの意見により、暫らく静観することにした。

 しかし、四九年の総会において、同年度の主要課題として@業権の拡大と生活の向上、共存共栄。A業権の圧迫と心外の防止の二項目が決定した。これに伴い七月七日の参議院選挙終了後、ただちに本件に取り組むことになった。

 まず市当局に対する常任交渉委員四名、特別交渉委員六名を選出して交渉に当り、一〇月の定例市議会前に請願書を提出することとなり、各地区の議員を訪問して紹介議員一一名により請願書を提出、一〇月六日の経済委員会において継続審議となったため、八日から二二日の間に議長、経済委員長、市経済部長、係長などに八回にわたって小売薬業界の実情を説明、請願内容について話合いを行ったが、再び継続審議となったので請願書を取り下げ、内容を再検討して陳情書として再提出することとなった。

 そこで一二月の定例議会で市長、議長に内容別の陳情書を提出、市議会で審議された結果、「医薬品小売商業者に対する融資制度の創設」が採択され(12月18日)、飯塚市中小企業長期事業資金貸付要綱設立(1月16日)により医薬品小売業者も有利な条件の融資対象業種になり、また市が購入する薬品は飯塚地区薬業協同組合(29年11月12日創立、商組設立のため39年5月1日より休眠、現在復活の申請中)で納入することとなった。この運動を始めて(7月24日)以来、要望、請願、陳情を重ね、一応の目的達成(12月23日)までの五ヶ月間に会合二一回、委員動員数は実に六二人にのぼった。(同資金の貸付対象は、これまで市誘致企業のみであったが、同要綱の設定に伴い建築業、建設関連業種、一般製材業、機械金属鉄工業、医薬品小売業などにも融資されることになった)

 飯塚支部で、今回請願、陳情などの運動を行って感じたことは、市長をはじめ市執行部、議長、議員等が医療福祉行政が進めば進むほど医薬品小売業者が経営不振になる実状等に全く認識がなかったことで、吾々が福祉行政の公害をもろに受けていうことを十分説明し、多数の人々に実情を訴え、行政の公害は行政によって救済されるべきであると主張した結果、これが認識され、今後は十分考慮するとの約束を得たことは、これで十分とはいえないまでも一応の目的は達したと考える。

 この問題は一支部だけの問題でなく全国的なものであり、地方の一市のみで解決できる問題ではないので、全国的に、全県的に、全市町村毎に吾々の権利を要望するならば、もっと有利な融資や救済方法が考えられるのではないかと感じる。

 吾々は現在医薬品販売の減少を補うためチリ紙や雑貨の販売を余儀なくされているが、医薬分業を目前にこの雑貨販売も問題にされつつある。これも医療福祉行政のもたらした公害であり大きな政治問題である。次々に業権を侵害され、圧迫されながらそれを跳ね返す政治力と団結力の弱さが吾が業界の実情であることは誠にさびしいことだと考える。

 今後さらに福祉行政が増進するなかで小売薬業者はますます地盤沈下が予想されるが、いつも受身であった吾々も、ここらで攻撃に身を転じ、団結の強さを見せる必要に迫られている。政治家は黙っている者には何もしてくれない。うるさく喰い付くことによって重い腰をあげるのである。全国の小売薬業者が力を合せ、大声で叫ぶことによって吾々の業権を守り確立したいと思うものである。最後に吾々業界の監督官庁である県薬務課並に厚生省は、吾々の業権拡大にも業界の指導育成という意味で力をそそぎ、血の通った行政を行って欲しいと念願するものである。

 ▼陳情書の内容要旨

 ・物から人への国の政策転換に伴い、社会福祉行政が年々急速に進み、福祉優先の政策がとられることは我々も等しく喜びとする。

 ・医薬品生産は医療行政の予防医学の普及に平行して国民総生産の上昇と同じ率で上昇して来たが、医薬品販売は昭和35年当時病院向と小売販売店向比率が5対5であったものが健康保険制度の充実により7対3となり、さらに医療無料化の拡充による福祉政策で小売販売店の販売数量が激減した。これは国における医療行政の医・薬分業策が完全に実施されていないためもあるが、医療制度の福祉政策の増進を図れば図るほど医薬品小売店は経営規模の縮小をせまられる実情である。

 ・このため従来客層の約40%を占めていた老人・乳幼児の無料化により売上額の20%の客数減を他で補うことは全く絶望的である。(飯塚市のみ推定しても約一億五千万円以上の売上減)

 ・これらの打開策として低利で長期的な経済危機突破融資の制度化を創設して欲しい。また市役所納入薬剤・薬品は当組合を通じて調達して欲しい。

 日本卸連 JGSP案を再検討 GSP適格卸指向へ

 過般、日本医薬品卸業連合会(渡辺徹太郎会長)の総務委員会(松谷義範委員長)は「医薬の供給と品質管理に関する実践規範(JGSP案)を渡辺会長に答申しているが、昨年末、日本卸連と日本製薬工業協会はGPSP海外調査団を派遣し、その調査団の卸代表者等の提言からJGSP案の再検討気運がでてきている。調査団の松谷義範副団長(日本卸連副会長)は一月二五日の記者会見で次のように語った。

 ▽欧米と我国との卸機能の相違点は、完全分業下と分業に一歩踏み出した状況にあるということである。欧米では卸は医師との対話がゼロであり、薬は処方箋の薬だけが売れるという受身の状況となっている。我国の卸のセールスマンは今後分業の進展度によって減少傾向となり物的流通部門の徹底化、拡充化が促進されよう。

 ▽西欧においては、法律的なものは後からついていっている。それがなくても水準的には遥かに我国より高いものである。西独では新薬事法ができる見込みだ。例えば西欧のパッケージは我国よりも優秀でその分だけ卸の管理負担が軽減されている。販売第一主義の我国ではセールスマンに多大の資金が使われるが、西欧では完全分業下ということもあって、資金の多くが商品管理等の物的流通面へ投資される。

 ▽米国のケネディ法案等の内容は、今後、我国の業界に大きな影響を与えよう。GMP適格工場でないと海外に輸出できないだろうし卸業もGSP適格卸でなければ病院等に納入できないような事になろう。メーカー、病院、日薬等々と協力しながらGSPを完成し、卸業の法的地位の確立を推進する必要がある。

 宮嶋薬務局長 開発意欲の刺激策を 三月中旬再評価公表

 宮嶋薬務局長は三日の定例記者会見で@資本自由化対策A医薬品細菌汚染調査と今後の対策B再評価スケジュール、などについてあらまし次のように語った。

 ▽五月から一〇〇%自由化となるが、日本の医薬品流通市場は複雑であり、外資がすぐ入り込むのは困難と考えられる。さしあたっては技術対策が主となろう。日本は製剤技術等は国際水準だが研究開発面で立遅れている。今後、技術提携や技術契約などの変更上の問題が起ってくると予想される。また新薬の薬価基準収載に際して、研究開発費をどう織り込むか、先発権の延長がはかれるか、なども問題となろう。いずれにしても製薬企業の開発意欲を刺激できる施策について検討したい。

 ▽四八度にドリンク剤、点眼剤、シロップ剤、造影剤について実態を調査し、現在このデータに基づき欧米の基準も参考にしながら菌数限度基準を専門家に検討してもらっている。

 ▽三月上・中旬に常任部会を開き、再評価の四回目の公表を行う予定である。今回は強心剤、筋弛緩剤、卵胞ホルモン剤など三二成分である。今年はあと三〜四回公表できる運びだ。五一年度には医療用単味剤の主要成分は終了となろうが、その結果をみながら配合剤の再評価も並行して進めたい。大衆薬はその後になる

 各地の会合 九州ブロック 日薬代議員打合会

 九州ブロック日薬代議員打合せ会は、二月一二日二時から福岡県薬会館一階和室で、九州各県より代議員が参集して開催。当日は安部、藤野、磯田、芳野、西元寺(福岡)、木元(佐賀)、松尾(長崎)、下田(熊本)、山村(鹿児島)、益田(大分)の諸氏とオブザーバーとして堀岡福岡県薬副会長(日薬理事)が出席して、二月二〇日、二一日の両日、東京渋谷の薬学会館で開かれる日薬第三七回通常代議員会に提出する質問事項などについて打合せを行った。

 山村氏(日薬代議員会副議長)が座長となり、安部氏より事務的なものの説明がなされ、種々提案・討議が行われたが、その内容のおもなものは次のとおり。

 ▽分担について
予算と分業に関する分担者決定・・・予算五名、分業九名。

 ▽代表者質問者
大分の益田氏と決定。

 ▽日薬賞、功労賞候補
@日薬賞・・・杉原(大分)、山中(熊本)長嶺(宮崎)
A功労賞・・・堀岡(福岡)、斉田(福岡)、郡司(大分)、島(正行、佐賀)。

 ▽質問事項について
各代議員より活発な提案があり、真剣な検討が行われた結果、特に分業問題で壁になっている左記の項目を主題に取り上げることとし、益田氏にその纏めを一任した。
@流通適正化。
A制度の改正(処方箋のアップ、一物四価など)。

 福岡県学薬 伝達講習会

 福岡県学校薬剤師会(友納英一会長)は昭和四九年度学校薬剤師講習会を二月一三日(木)午後一時より県薬会館会議室で開催した。

 当日は県下、福岡・筑後・北九州・筑豊の四ブロック地区より会員のほか教育委員会の参加もあって、一三〇名余の多数の参集のもとに、柴田副会長の司会により開会しまず友納会長は挨拶のなかで「地域社会の環境の変化が学校衛生に影響しているので、この環境を良くし児童の健康保持をはかる必要が生じている。我々は薬剤師の職能をいかして学校衛生に努力しなければならない。医薬分業が推進され段々と表面化している時に、会員皆様の学校衛生に対しての努力に対してはその労を多謝する。」と述べ、ついで講習会に入った。

 本講習会の内容と講師は左記のとおり。
▽学校保健の動向と課題。
学校衛生基準について。(県教育庁・山下泰弘)
▽学校をめぐる細菌検査。
児童の手洗い観察と指導
(学校薬剤師・村田正利)
▽挨拶(県教育庁学校保健課・足立課長)
▽学校施設の計画と維持管理。
光学スモッグ。
(学校薬剤師・八谷正平)
なお、当日の頒布書は、
@第21回学校薬剤師講習録
(一九七四年、日本学校薬剤師会編)、A学校における騒音対策の手引。

 福岡県薬業協議会

 福岡県薬業協議会二月例会は、二月一〇日午後三時から県薬会館で卸の当番により開会、メーカー一〇社卸四社のほか小売側から白木、須原、大坪、本松、斉田、藤野、山手の諸氏が出席した。

 まず各地区報告では筑豊地区の本松ブロック長より飯塚市において昨年来、社会福祉行政が医薬品小売業を圧迫している実情について要望、陳情、請願などを重ねた結果、このほど市より有利な条件の融資を受ける業種に加えられ、また市が購入する薬品については、商組発足と同時に休眠していた協同組合を復活して納入することとなり、ある程度の目的を達したことが報告され、他地区でも当然要求すべきことは要求して業界の安定をはかるべきだと力説した。福岡地区からは最近大型店の家庭薬がチラシこそ出さないが一般小売店の仕入値より安く売られる件につき地区の指導価格が乱れないよう苦慮していることが報告された

 それより全商連常務会、医薬分業問題(日薬地方連絡協議会)等につき白木県商組理事長から報告があったほか、分業問題に関連して、結論には至らないが次のような問題が提起され、次回は三月一〇日午後二時半より開くことを決めた。

 ▽他地区と共同経営での調剤専門薬局開設の是非
▽調剤専門薬局の許可について県保険課と県薬務課の見解の相違について。
▽調剤用医薬品の医師納入は安く、保険薬局には薬価基準で納入する事例について。

 薬務局、サンプル規制を検討へ

 厚生省薬務局経済課では医療用医薬品のサンプル配布の実態を把握するため、三日から毎日二〜三社ずつ大手メーカーを呼んで事情を聴取している。

 @品目ごとの包装別、剤型別サンプル生産量Aサンプルを配布する際の社内における手続きB医師(医療機関)のサンプル使用をどう指導しているかCサンプルをつける目的あるいは用途は何か-など幅広い質問を行っているという。これについて森経済課長は将来、サンプル規制をしなければならないだろうと語っている。

 物質特許 今国会へ上程か

 五一年一月からの実施をメドに、物質特許導入(特許法の一部改正)を検討している特許庁はこのほど原案作成を終り、今国会に改正案を上程できる運びとなった。物質特許が導入されれば独占薬価が形成されやすくなるとの懸念も出るので、今国会審議ではこのことが問題として指摘される可能性が強い。特許期間が一五年間と長くなるため、これまで製法特許で製造していたメーカーに対する影響も大きくなってくるものとみられる。