通 史 昭和49年(1974) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和49年(1974) 12月5日号

 福岡県薬剤師会 分業推進特別委員会 各支部に分業担当員を

 福岡県薬剤師会は分業推進特別委員会(安部寿委員長)を一一月二一日午時から県薬会館で開催、委員(二三名)のほか県薬から白木副会長、神谷専務理事、薬務課から大塚課長補佐らも出席した。

 委員会は白木副会長のあいさつのあと、神谷専務理事からの県薬の分業対策(会員対策及び対外活動)について詳細な説明、報告があり、藤野常務理事からはメーカー・卸との意見交換に関する報告、特に分業に対する日本卸の当面の方針が報告され、今後の分業推進については日本短波放送「医学の時間」に放送された武見日医会長の「薬剤師に対する要望事項」などを踏えたうえ、これに対処する必要があると述べた。

 ◆各地区分業推進状況報告

 福岡地区=市薬幹部と市医師会、同内科医会、同小児科医会とそれぞれ懇談会を持った。結論は未だ出ていないが相互理解はついたと思われる。話合いの中での問題点は医院と薬局の距離及び処方箋が的確に調剤されるかという二点であった。

 門司地区=医師会とは二回、歯科医師会とも話し合いを実施。対内的には三回研究会を開いた。診療機関一三五保険薬局が当然不足する。

 小倉地区=支部長が医師会長と個人的に会談した程度で正式な懇談は行っていない。枚数は少いが二、三の医療機関からマンツーマン方式で出るケースが現れている。

 遠賀地区=各地域で担当委員を決めて近く医・歯会と懇談会を行う予定。各地区とも具体的に推進すると同じ隘路にぶつかるこれらの是正をお願いしたい。

 飯塚地区=医師会とは正式に一回、分業担当理事と二回会合を開き、両会協同による両会会員の意識調査(アンケート)を実施、現在集計中である。第二薬局問題については事前に薬剤師会に通知するよう確認している。受入れは現保険薬局が受入れることで推進、会営薬局については手をつけていない。歯科医師会には標準処方を作り配布、これを受入れるための薬品は全保険薬局に備蓄。卸とは二回話合い、情報提供をお願いした。

 柳川地区=ケースバイケースで推進、内科医会に分業に積極的な医師がいるので二回個人的に話し合ったが正式な懇談会はまだ実施していない。

 筑紫地区=保険薬局が少い、まず保険薬局をつくることが先決。

 久留米地区=10月から保険薬局部会(別掲)を設立23保険薬局が加入した。近く三師会、卸とも懇談する予定。具体的には少量の処方箋が新しく出てきた程度。

 大牟田=薬剤師会より医師会へ処方箋発行については事前に話し合うよう申入れをしたが正式にはまだ懇談していない。しかし若手医師の有志から話し合いたいとの申入れがあり、備蓄薬品、待合室等につき懇談した。現在では医師側の三方待ちでケースバイケースで進む方針。歯科医師会とは標準処方を新しくつくり推進している。

 ◆分業に関する委員の要望等の主なもの

 ▽各地区とも診療機関の数に比し保険薬局の数が足りないがこの際保険薬局の洗直しをやるべきだ。(これに対し、大塚薬務課長補佐は、調剤のみ行う薬局は既設薬局から75メートルで開設でき、この距離はもう少し縮めてもいいのではないかという意見もあることが報告された)。

 ▽マンツーマン、点と線などと言ってただ経済ベースのみで推進することは危険である。将来は六医療機関の処方せんを一保険薬局で受入れる計算になる、そのための勉強であり、資金である。いずれは保険薬局がセレクトされる情況に追い込まれることも今から考えて置くべきである。

 ▽ヨーロッパの大きな薬局は距離その他で社会的に保護されていると聞く。日本の今の分業推進は非常にいびつで、現状ではマンツーマンで進めることが一番早い、その意味では距離制限ははずすことが早道であろうが、将来やはり基幹薬局は必要であろうし、距離をはずすことは基幹薬局を育てることを延ばすことにもなる。だが分業が進展した時点では立派な基幹薬局の方が支持されることも考えられ、先発したマンツーマン薬局が成り立たなくなり調剤薬局の過当競争が起る可能性もあると思う。このようなことも含めて許可基準を今から考えておく必要があるのではないか、現時点で云うのは早いと思うが・・・・・・

 ◆今後の分業の進め方について検討した結果の主な意見

 ▽地域により進展の度合が違うと考えられるので、この委員会で話し合い検討することが必要。
 ▽各地区で実際に受入れていろいろなケースの生の具体的報告をして欲しい。
 ▽各支部の中に分業担当理事を決め、これを中心に分業指向の核を多くつくることが必要。
 ▽有志関係の積極的対策。
 ▽保険薬剤師雇傭の保険薬局における非薬剤師、調剤の監視強化対策。
 ▽非薬剤師の保険薬局開設の抑止策の検討。
なお、当日の委員会には卸代表委員も二名出席したが、メーカー代表委員はまだ中央において分業に対する態度が決ってないとして出席することを辞退したもようである。

 森下泰議員 "活動状況"を語る

 参議院の森下泰議員は一一月一三日、ホテルグランドパレスで記者会見を行い登院後の活動状況を報告した。当日の談話の要旨は次のとおり。

 ▽GMP問題について
GMP実施に伴う開銀融資は四九年度分で一七社、三〇億にほぼ決定した。五〇年度は財政投融資で概算一八五億を要求している‐と述べ、GMP問題に積極的に取り組む姿勢を明らかにした。

 ▽医薬分業推進について
処方箋料五〇点に決定するまでには自民党社会部会、武見日医会長からも薬局の受入体制の整備について念をおされており、一日も早く薬局整備をして実績を作って欲しい。医療金融公庫による融資枠の拡大は今年中に決定をみる予定で、現在大蔵省で検討中である又医療金融公庫、中小企業金融公庫、開銀等の五〇年度貸出しについても三八〜四〇億円を目標に作業を進めている。

 ミニ情報

 医療金融公庫 調剤薬局への融資 限度百万円を新設

 医療金融公庫は一二月一日から五か年間「主として調剤を行う薬局」を対象に最高限度額百万円の貸し付けを行うことを正式に決定した。薬務局はこの決定にもとづき、近く都道府県に通知を出す予定である。貸し付け方式としては県薬剤師会が県知事に医療金融公庫に推せんするという制度をとる。貸し付け条件としては@調剤用医薬品を四百品目以上備蓄する調剤薬局A休日および夜間の調剤を行える薬局B資金は処方箋を受け入れる体制を整えるものに使用すること‐など五点が基礎となっている。

 福岡市薬剤師会 小児科医と懇談

 福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)は、さきに市内科医会と分業問題につき懇談したが、さらに一一月一九日七時半から市医師会別館において開かれた福岡市小児科医会(田中一会長)の理事会に、藤野副会長、荒巻専務理事、成沢(市救急センター専任薬剤師)の三氏が出席して分業について懇談した。当日の懇談会での医師側の意向は、現時点では受入れにまだ不安があること、患者が子供連れであることにも問題がある−などの理由から早急には無理であるが、相互間の理解の進展に伴い前向きに対処したい旨の発言があった模様である。

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 日本漢方交流会 久保川憲彦氏を理事長に

 日本漢方交流会(参加団体一五、会員数約八〇〇名日本最大の漢方団体)では去る一一月九、一〇の両日日本・近畿両漢方研究会の担当で大阪市において第七回大会を開催した。

 今回は薬物(附子)、古方、後世方、鍼灸の四部会制として、特別講演を行わず、その代り各部会毎にみっちり研究と討論に終始したので、参加者の収穫も一段と多かったようで、この種大会のあり方に一つの新機軸を提供したものといえよう。

 なお、同会は医薬を変更し、参加団体から二名宛の評議員により評議員会を構成して会の最高決定機関とし、その下に執行部である理事会をおいて運営に当ることになったが、同時に行われた役員改選により久保川憲彦理事(福岡)が理事長に選ばれたので、同会の事務局は福岡市に置かれることになった。来年度の大会は岐阜漢方研究会の担当で名古屋市において開催の予定である。

 医薬分業と薬学教育 長崎県薬剤師会会長 隈 治人

 薬剤師という資格はいうまでもなく薬学教育の決算として生まれてきた。一方、薬学教育は厳密には薬剤師育成の教育ではなかった。薬剤師国家試験の準備教育や特訓はやったのかも知れないが、徹底して有用な薬剤師を生みだすことを主眼とする教育内容ではなかった。これは私見ではなくて一般的な認識である。こういう認識と実態から例えば「いまの日本の薬剤師を医療担当職として信頼することはできない。なぜなら日本の薬学教育は薬剤師の育成をやってはいない。それは有機合成化学の教育が主体である。そんな教育を受けた薬剤師を信頼でききるわけがない」という医薬分業反対論が生れた。

 この薬剤師侮蔑論は論者当人がマスコミ的にかなり高名な医師(大学講師)であったことから、世間の薬剤師評価を低め、かつ薬剤師自身の対医師コンプレックスをつよめる働きをしたのかも知れなかった。 あるいはまた「薬剤師は純粋な医療職じゃない。日本の薬剤師は多目的職業人である」という別の医薬分業反対論もさかんに展開された。これは「国が薬剤師という医療職を養成している」から「国は薬剤師に医療担当の職を与えよという式の薬剤師側の分業要求を真っ向から叩きつぶす論理として使われた。この論者があまりにも高名な医師であって、またの名をケンカ太郎ということは大方がご承知のことだろう。

 薬剤師が医療以外の分野にひろく拡散して、いろいろな役に立っていることはまぎれもない現実の姿である。病院薬剤師という職が一番薬剤師らしい職、あと開局薬剤師、同管理薬剤師、臨床または衛生検査技師、公衆衛生行政職、高校または中学教諭などが主たるものであろうが、比較的少数しかいない国レベルの免許職でありながら、このように多岐にわたる雑多な職業に分散している例は他にはあるまい。

 この多目的職業といういい方自体、決して当を得たものではない。このことは薬剤師が医薬品の管理や調剤をやり、また検査もやり公衆衛生業務にも有能で、さらに高校の教師もできるという並すぐれた器用さと便利さとを指していることは明らかである。この器用さや便利さは大いに社会や国民のために役立つけれども、残念ながら便利屋は得てして軽んぜられるのが世の常であり、また器用貧乏という言葉も立派に生きている世の中である、という認識はもっておいた方がよいだろう。

 一〇月上旬、新潟市で行われた第七回薬学術大会のある部会で、永井恒司氏(星薬科大学)が薬学教育者の立場から「やはり薬学教育は医療の実務に通用する薬剤師を育てることを主眼とすべきである。その実務とは@処方箋の点検A調剤B製剤C医薬品の保管管理D情報の収集整理活用E薬事法規等について、知識と技術をみがき、経験をふかめ(医薬品についてのすべての責任)を負う能力のことをいう。 単に調剤という狭い手技の視野に限定されるものではない」と発言したことは注目すべきだと思う。永井氏はさらに「薬剤師は薬害についての最高権威であることにめざさねばならぬ」とか「知識伝達型の教育から能力開発型の教育への転換」とか「薬大同窓会を単なる親睦の場から卒後教育の場へ発展させよ」などのユニークな提言を行った。

 この永井氏の発言が氏自身の薬学教育者の体験と信念から出ているものであろうことは疑いない。であると同時にまた、この永井発言が「一〇月一日からの医療費改定、特に処方箋料五〇点」につよい刺戟と影響を受けていることも否定できない。長い長い医薬兼業が、こんご徐々にしかも確実に分業への歩みをとりはじめるとき、これまでの日本の「薬剤師」のすべてが変っていくであろうことは容易に予測できる。それはあえて薬学教育のみとは限るまい。

 過ぎし日々(39) 塚本赳夫

 お山にのぼらないでもお宮の見物をしないでも浅間様(せんげんさま)と云う所は子供達に取ってはいくらでも遊ぶ所があり、遊ぶものがある。裏の方には熊も居た、池もあれば橋もある。近いことでもあり妹達は二人でも三人でも時には憲甫も連れて四人で行く事もあった。

 或る時皆で妙なもの、少くとも僕は見たことのないものを各人が手に持って帰って来た。よく見るとかなり長い枯れた松葉の束(たば)だが、一本一本の先きには茶色の小さな珠(たま)がついてる。珠の方を上に向けて、小さな手で握っているのでこの珠が皆おどっている。

 僕は手に取って見ると、これは小さな「しじみ」なので、聞いて見ると浅間さまの溝の中に沢山居るよ!と答えて済している。次の機会にぼくも皆のお供をして行って溝のふちにしゃがみ込んでよく見ると、まるで石ころのようにしじみが沢山いて、流れの強い所ではころがり流れているが、静かな所では静かに白い舌(足)を出して眠ってる。これに自分達で集めた松葉を一本ずつつっ込むと彼等はびっくりして口を閉めて松葉にくいついたものである。

 長い松葉の先きについているしじみは長経1p位のものが大部分だが溝の中をよく見ると1.5〜2pのものもいない訳ではない。食べるつもりもないから大きなものをえらぶこともしてないらしい。この小さい流れは皆石できれいにかためた溝で道として歩るく所には低い石の手摺(てすり)のついた石の橋が沢山あるが、お社の屋根から雨垂れの落ちる所にある手摺には小さな摺り鉢形のへこみが沢山出来てる。

 もっとも妹達もやっていたが、その他の子供達もおままごとの御馳走作りで、草の葉や根を取って来て、このへこみで石で搗いたり、細長い石を乳棒のように使って砂などを入れて胡麻を擂(す)るまねなどしていたから、全部が雨水の作った穴だとも云えないが、その頃学校で教わった「点滴石をも穿つ」だとかに立つ矢のためしあり」とか云う諺(ことわざ)を聞くたびに今でも思い出す景色であり、又味噌汁のしじみが小さくて食べにくい時に松葉に喰いついていたしじみを思い出す。

 しかし実際には浅間様のしじみは一度もたべたことはないので味は全く知らない。少し遠い所に行く時は母か従兄などが立ち寄った時などに一所に連れて行ったりしてもらうことぐらいで年中行事のようにして皆が喜んで行ったのは、阿倍川橋から雄大な河原を見物するのが口実で、橋のたもとの阿倍川餅を食べる事が本当の目的だからこそ遠い道を歩いたものらしい。

 しかし副産物の景色を見ながら聞いた昔話も皆印象に残った。それは徳川家康が子供の頃男衆の背中におぶわれて見た石合戦を批評した話で、あのやり方ではこちらの組が負けるだろうと云うたら、見てるうちに彼の云うようになったので、お伴に着いていた本物の武士達が舌を巻いておどろいたと云う話で、僕達は自分達の知恵とくらべて見て変な子供も居るもんだと感心した。

 しかしこの橋からずっと川上の方に舟山と呼ぶ小さな緑の小山が河原のまん中にぽつんと置かれているのを見て、何時か行って見ようと決心した。それは友達から狐や狸が棲んでいるので時どき人がだまされて、家に帰れなかった事があると聞いた事がもとで行きたくなったものと思う。

 二三年の後に友人と行ったが、くまなく歩いて見ても動物には会わなかったがことによるとその巣穴かと思える草に被われた赤土の穴をいくつか見つけた、小川の伯父さんから聞いていたかわうその巣かも知れないと思って手を突っ込んで魚でも仕舞ってあるかと探って見たが何もなかった。帰ろうと思って歩き出したらもう日が落ちていたので友人と馳けだして帰った。これは僕にして見れば、大冒険の探検だから妹や弟は連れて行かなかった、小石のごろごろしてる河原が長くて歩るきにくかった事はよくおぼえている。

 福岡県薬理事会 第二薬局問題は、日薬の統一見解をみた上で

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は第二三三回理事会を一一月二九日(金)午後二時より、福岡県薬剤師会会議室において開催した。

 議事にさきだち白木副会長(長野会長病気欠席により)は「薬局は老人医療、乳幼児医療無料化等の影響を受け、医薬品販売は増々沈下の現実にある。県薬としては分業推進方策を積極的に進めているので、会員の方々は分業に進んで取組み、分業を確立して保険調剤を早く行うようにすべきと考える。先般、開催した薬学講習会(分業特別講習会)では保険薬局のほぼ全数が出席したと云って良いが欠席者に対する教育問題が残っている。分業は全薬局で行うのが理想的であるが現在二五%であるので残り七五%をどのようにするかが問題である。研修会等は各支部ごとに推進されたい。県薬としては二年を目標にして全医師が処方箋を出してもよい体制にもっていきたい」と述べて協議に入った。

 当日の議題とその協議内容のおもなものは次のとおり。
▽薬業忘年会について一二月一四日、理事・支部長会終了後、午後四時から開催する。
▽新年祝賀会について
一月六日(月)正午よりホテル・ニューハカタで開催、会費三千円。今回は特に知事、県医師・歯科医師の両会長等に案内を出す。 ▽九州薬事新報購読料について
県薬として積極的に支援を行う。
▽新年度予算について
特に県薬職員の給与について検討。

 ▽分業推進特別委員会報告(既報)=藤野常務理事
意識の変革と、保険薬局の資金的に非力な点より融資について力を入れていく必要がある。備蓄については卸は前向に考えている。地域ごとに分業担当委員で分業の点を広め大きな核とされたい。なお、中村里美、安部寿、磯田正春、藤野義彦の四委員を基礎委員とすることが決定された。

 ▽第二薬局問題について
薬務課は適法であればセーブできない、保険課は開設時にセーブしたい、との考えである。なお保険課では医院(診療所)と同一敷地内は不可、身代り薬局が出たときは仕方がない、との見解をしている。当面する大きな問題として種々検討が行われたが結論として @前項の中村、安部、磯田、藤野の四委員により実務的な検討推進を行うA現在、日薬において第二薬局問題は真剣に取組んでいるので近くその見解が明らかになる、その結果により県薬としての方策を講ずる‐ことと決定。

 ▽調剤業務研修会について
例年二月に開いているが他県に比してレベルが高かったと思うが、もう一度根本に立ちかえった方針で行うことが必要と考える。日薬が統一テキストを造ればこれによって行うが、造らなければ独自の方法をとらねばならない。@医薬品を知るA調剤を知るB保険事務を知る‐の三つの要素の内容とし、実施は例年通り二月を予定しているが日薬のテキストのことを考えて期日を定めたい。

 ▽薬局融資について
白木副会長より、第一勧銀、医療金融公庫、福岡商工会議所中小企業相談所の金融制度など種々の融資方法があることが説明された

 ▽その他
@一〇月の保険請求は前月比三〇%増十一月はあるいは五〇%増と予測されるA歯科標準処方の印刷については支部長会の席上で定めるB薬価基準は一二月一〇日全面改正、一二月一七日新規収載が官報に搭載される。「日薬版薬価基準」は五〇年一月末に出来るので一二月一四日までに各支部を通じて県薬に申込みのこと、内容は従来に加えて薬効と用量が示されている、価格は千八百円。

 第22回日薬病診 勤務薬剤師部会研修会

 全国よりの参加で盛会裡に終了

 第22回日薬病院診療所勤務薬剤師部会研修会は一一月二六日・二七日の両日、福岡市の九宏薬品渇議室を会場に、「急性中毒とその処置」をテーマに開催された。受講者は北は北海道、東北からも来会あり参加者二三七名(会員二二〇、非会員一七)の多数にのぼり盛会で、多大の成果をおさめた。

 本研修会は、日薬の天野寿作業務課長の司会で初められ、開催挨拶を日薬理事堀岡正義先生が行ってのち於保誠(佐賀県立好生館)清水龍夫(長崎大学)、黒田健(福岡大学)、堀岡正義(九州大学)、本田幸夫(宮崎県立病院)佐竹健三(熊本大学)の諸先生が座長となって、二日間にわたる講演が左記のように行われた。

 ○第一日目
(1)薬品中毒議論=九州大学病院薬剤部長堀岡正義。
(2)医薬品急性中毒の処置=九州大学医学部教授児玉泰。

 第二日目
(1)毒性学概論=九州大学医薬部教授石西伸。
(2)農薬中毒の位置=福岡大学医学部教授井上幹夫。
(3)家庭用品による疾病とその処置=福岡大学医学部教授利谷昭治。

 開催挨拶と薬品中毒総論の内容の概略は次のとおり

 ◆開催挨拶

 開講に当り、日薬の理事として且つまた病診勤務薬剤部会の担当理事として一言ご挨拶申し上げます。今回の日薬病診勤務薬剤部会研修会は第22回目に当りますが、昭和四〇年に開かれてより毎年主として東京及び関西を会場として毎年非常に盛会で我々病診薬剤師の職能向上に多大の寄与をいたしています。本年の研修会は医療薬学の分野で是非とも必要な"急性中毒とその処置"を主題としてほしい要望が強かったのでそれらの各界の権威の先生方を煩わしてご講演をお願いすることとなった。今回の研修会では申込みが二六〇名を越えると云う盛会ぶりで主催者として非常に感謝に堪えない次第であります。

 ご存じのように、病診薬剤師の団体である日病薬は今年の二月から臨床病院薬学セミナーを開講した。この日病診勤務薬剤部会研修会と関係がありますので両者で協定をいたしまして日薬病ではしゅとして薬効別にテーマをつくりこの研修会では管理的ことを中心としてテーマを取り上げる。かつまた本研修会は日薬主催・日病薬後援日病薬のセミナーにおいては日病薬主催・日薬後援の形をとり、どちらかの会員として所属している方々は両方の研修会に会員並の扱いとして出られることに改良したわけです。

 なおこの研修会は東京、大阪においては一〇月に開かれたが、福岡では九州山口薬学大会の関係で一一月に開催することとなりましたが万事スムーズに行きましたことをご報告し、最後迄熱心にご聴講下さるようお願いします。なお、九州山口地区は日本でも指折りのDI活動の所であり、病薬は組織化され活発に活動しており、このことは全国的に高く評価されているわけであります。今回の研修会即DI研究会に相当するとの考え方から、本日の第一講が終りました時間を若干お借してその打合せを致したいと思っています。

 医薬分業にともなって、開局者の皆様或いはメーカー、卸の方々にも色々とDI活動にご協力願わねばならない点もございますのでDI打合せ会にも是非聴講願い度い。(配布書類=DI活動組織図、注射用固形製剤の溶解後の安定性に関する調査ならびに安定性一覧表)

 ◆薬品中毒総論

 九大病院薬局で昭和四〇年から、或いはそれ以前からDI活動を展開していると、病院薬局に於いては意外に薬品その他の中毒に関する問合せが多い。それは何故かと考えて見ると外国のようにpoison inform‐ation center(中毒情報センター)と云った組織がない、それを現時点では少くとも病院のDIセンター或いはDI活動の中に組込まなければ、医薬品のみならず国民に対する薬品の使用に関する安全性或いはその管理と云うものを行う薬剤師としての役割を果たせないのではないかと感じて来た。薬品中毒に対する社会的背景と云ったような事を話すのが目的であると考えているか、順序としてテキスト(急性中毒とその処置=一九七四年日薬病診勤務薬剤師部会編、日本薬剤師会発行)に従って、まずそのことを何故行うことになったかと云うことを認識してもらうために−と前言して、本講義に入った。

 おわりに、薬品中毒総論と題して、化学物質の行政的帰省PIC・PCCと中毒の実態、また薬品中毒の防止法啓蒙活動、情報の提供活動或いは中毒防止の容器の問題、それらにおいて薬剤師の果たす役割、文献調査法・実例を述べたが、とくに薬剤師に対しては一般国民に対する中毒防止の啓蒙ならびに中毒時の医師への情報提供において、薬剤師の大きな貢献を期待したい−と結んだ。

 情報社会における分業(1)

 福岡市薬剤師会専務理事 荒巻善之助

 一〇月の医療費改正以来ようやく分業気運も高まりこれに関連した研修会が各地で催されているが一一月一六日地元保険薬局の殆んど全員が参加して開かれた鹿児島市薬剤師会(黒江四郎会長)の分業研修会において講演した荒巻善之助氏(福岡市薬剤師会専務理事)の「情報社会における分業」と題する講演要旨を四回にわたり掲載する。

 ジョーンロビンソンという女性ではじめてケンブリッジ大の経済学教授になった方があるのですが、この方が「ある経済学者の説教」という著書の中で次のようなことを云っています。「正しい知性」と「心のやすらぎ」と「富」は一緒に得られるものだろうか、ということです。

 「正しい知性」は「心のやすらぎ」と「富」とが両立するかどうかを判定するもの、とも云えるわけで、これを捨ててしまえば後の二つは両立します。又「心の安らぎ」、が不要なら、「正しい知性」と「富」とを同時にもつこともできるでしょう。そして又、シュバイツアー博士のように「富」をすてて「正しい知性」と「心のやすらぎ」を得る方法もあります。

 このように本来この三つは同時には成立たない。ところがこれを成立たせる理屈があるわけで、これが自由経済の理論だと思うのです。自由経済というのは、人々が利己心に従って、自由に利潤を追求することによって、自然に調和のとれた世界ができるという考え方ですから、企業にとって利潤追求こそが唯一の善であったわけです。然しこれがこういうふうにシンプルな形で成立つためには次のような条件が必要になる。その一つは自由な競争ができるということ、三番目は重要と価格の間に相対的な変動関係があるということです。

 今、自由経済をA図のように四角いもので考えてみると、横の方に広がった状態を寡占と考えてよいわけでこうなると競争がなくなるので価格操作が自由にできるようになる。そこで、今、独禁法改正で問題になっている企業分割というようなことを考えるわけです。

 ところがもう一つ、これが縦に伸びた状態、これが医療サービスの本来の姿ではないかと思うのです。 医療サービスを買うというのは大根を買うのとは訳が違う、買手には良し悪しを判断するすべがないわけで判ったときにはもうおそすぎるということです。

 もう一つ重要と価格との相対的な変動がない。講談などで娘が身を売って親のために人参を買う話がある。ふつうの商品ならば身を売っても買うなどということはないわけであって、何をさしおいてもこれを買わなければ命がなくなってしまうという所に医療の経済的な特殊性があるわけです。ですから、薬九層倍ということばがありますが、私はこれは「薬」という「物」に対して正当に云ったことではなくて、薬によって表現される医療サービスというものは、いくらでも高くなりうるものだ、というふうに解釈すべきだろうと思うのです。

 そこで医聖ヒポクラテスの誓いの言葉というのがあるのですが、それは、「医術を我に教えたる人を親の如くうやまい、その必要あるときは、我が財をもって人を助くべし。我が判断と能力のあたうる限りをもって、患者に、いともふさわしき養生の法を選び、清くして神聖なる生涯をまっとうしつつ、術を行うべし。いかなる患者を訪れるもそれはただ患者の為なりこの誓いを守り続けて、医術に生き甲斐を見出し人々から敬愛をうくべし」

 Kの言葉を読むと、ヒポクラテスはすでに数千年の昔、正しい医療のあり方を守るためには、医師の良心以外には何もないのだ、ということを看破していたと思うのです。そこで医療がこういう特殊な経済的特性をもっているにもかかわらず、一応正常な姿を保ってきたということは、やはり医師の良心によって支えられていたと思うのです。

 ところがこれは古きよき時代のことでありまして、現在の日本に於てこれが危機に瀕するような状況が生じてきた、それは云う迄もなく社会保障制度のあり方です。自由経済と社会保障制度は本来水と油の関係だと云われます。ですからこの二つのものを調和させるためにはいろいろむずかしい問題がある。

 まして日本の特殊な国情において、始めから技術評価の習慣がないのですから、「くすし」という言葉が示すように、医療費というのは薬代によって上積みした形でとる仕掛になっている。これはA図に示す通りです。ここに社会保障制度を導入してきたことが最初のボタンのかけ違いです。ですから医療の質の低下は当然起ってくるわけで、薬を必要最低限使って治療することがあるべき姿とはわかってはいても、それでは経営が成立たないとなると必要悪として認めざるを得ない。まして患者の懐が直接痛むわけでもないならば、雪だるま式にふくれてくるのは当然のことでしょう。

 こんなことは始めから判っていたと思うんです。武見さんのように物の道理のよく判る人が、こんなことが判らないはずがない。ただ自分の所の台所のうらを人に見せる馬鹿はいませんから、本当に困ってはいるが他人に打明けるわけにもいかない。そしてどうにもこうにもならなくなったのが、昨年11月の宮崎に於ける分業声明だと思うのです。

 今迄何回か分業になりそうでならなかった苦い記憶がある。だから今回だって武見さんの舌先三寸の都合で、どうなるか判ったもんじゃない、と思っている人があるかもわかりません。然し今申し上げたような歴史の流れから考えてくると社会保障制度の下ではどうしても分業しなくてはならぬ社会的要請があると思うのです。

 そこで武見さんの云う「古典的分業」ということばの意味をよく考えてみる必要があります。今迄薬剤師が主張してきた分業うというのは今考えてみると、まさにナンセンスなんですね、全くそう云わざるを得ない、かっての薬剤師の職能は、工業化社会の中では完全に死滅してしまっている。だからこそ百年の空白があったのです。

 今私達は社会保障制度の中に於ける分業のあり方というもの真剣に考えてみなくてはならない、社会保障ということは高福祉が目的です。だがこれは無料化とは違うわけです。無料化には現在、すでに大部分がそうなっています。然し医療の質そのものは逆に低下している。だからこそ医者に行けばタダで済むものを、相談薬局で何万円も薬を買うわけです。これは医療の荒廃としか云いようがない。この中で我々は分業というものを、どのように受け止めていくか、ということが問題なのです。

 日病薬 九州山口ブロック長会議

 日本病院薬剤師会九州山口ブロック長会議(ブロック長堀岡正義)は一一月二六日(火)一七時〜一九時福岡市の博多城山ホテルで開催された。本会議には日病薬より中野久寿雄副会長が出席し、日病薬代表として挨拶が行われた。なお、当日のおもな会議内容は次のとおり。

 ▽報告事項
中央情勢について
▽連絡事項
会員の給与実体調査について

 ▽議題
(1)医療費改訂関係
@医薬分業の進展に伴う開局者に対する技術協力について(薬剤師研修)。
A病院診療所勤務薬剤師の地位について。
B日薬に対する日病薬の「診療報酬改訂に伴う諸問題についての申出」について。
(2)給与関係
@人事院勧告の医(二)表について。
(3)代議員関係
@代議員定数および定款の改正案について。
A会費値上げ案について。
B第五回通常代議員会の協議事項提案について。
(4)地方連絡会議について
(5)九州山口薬学大会薬剤部長協議会採択決議案の取扱い方法について

 日本薬学会奨励賞 九大松島助教授に

 日本薬学会の理事会は一一月二九日、東京渋谷の薬学会館で開かれ、日本薬学会学術賞等の受賞研究が決定されたが、九州山口管内の受賞研究は次のとおり。
▽「ピリドキサール酵素モデルの研究」=松島義一(九州大学薬学部助教授)

 福岡市学薬で新幹線附近学校騒音被害調査

 福岡市学校薬剤師会(馬場正守会長)は明年三月一〇日よりいよいよ新幹線博多乗入れが行われるので新幹線騒音被害調査の予備調査として、現在試運転中の騒音を一二月一五日より附近一〇校において一斉に調査することとなり学校側の協力を求めている。

 日本薬学会 95年会内容決る

 日本薬学会第九五年会は来年四月四日から六日までの三日間、西宮市の武庫川女子大をメイン会場にして開催されるが、これについて宇野豊三組織委員長(京大教授)は一一月二九日午後記者会見し次のように語った。

 @一般講演の演題数は千題を越える。
 A参加人員は七千から八千人を見込んでいる。
 B参加申込者は高校野球開催もあるので早めに申込んでほしい。
 C特別講演は薬学と他学問との境界領域に関するものをお願いした。
 D今後の予定は二月のファルマシアにプログラムを掲載し講演要旨は二月末頃になると思う。
 E部会の名称では全国病院薬剤部長会議が「病院薬局協議会」に、病院薬局管理部会が「病院薬学部会」と改称。

 薬務局、医療金融公庫の融資額で通知

 薬局の処方箋受け入れ体制を早急に整備するため、かねてから医療金融公庫の特別貸し付けを受けられるよう折衝していた薬務局は「貸し付け限度額百万円を一二月一日から五年間実施する」ことで意見が一致したのでその旨を都道府県に通知した。

 この通知の中で、薬務局は特別貸し付けを受けられる薬局を「主として調剤を行う薬局」と規定し、この薬局は@都道府県薬剤師会の推せんする薬局A健康保険法の保険薬局および国民健康法の療養取扱い機関B調剤用医薬品を四百品目以上備蓄する薬局になることC夜間および休日の調剤について配慮がなされていること‐の四点を満たさなければならない、としている

 薬価大改正 一・六%の引下げ

 厚生省は四月時点、五月調査の薬価調査とその後の追跡調査の結果をまとめていたが一一月二五日の中医協に、全体で一・六%の値下り、医療費ベースで〇・七%の値下げとなったと報告、一二月一〇日頃告示、一月一日から実施する予定である。今回の薬価大改正では約七千品目のうち半数が値上り、一〇%据置きだが、上ったものは単価が安く、下がったものは高いため一・六%の影響となった。

 日病薬 第二薬局の見解

 日本病院薬剤師会(桜井喜一会長)は一一月二二日東京渋谷の薬学会館で地方協議会を開き、当面する諸問題について協議した。

 桜井会長はいわゆる第二薬局問題について「日薬は"利益追求のための第二薬局設置は問題があり、医療の質をまげる可能性がある。この可能性は排除しなければならない"と発言しているが、しかし一般薬局の開設が経済的目的ではないと誰が云い得ようか。いわゆる第二薬局(調剤専門薬局)の設立は現行の診療報酬是正されない以上、経理面からも調剤専門薬局に移行するのは当然である。適配条例に違反しなければ反対する理由はない。むしろ医薬分業の一歩前進であるとも云える」と述べた。

 さらに調剤専門薬局の性格に触れ、我々としては適配条例の一重点である調剤の確保のためには他のあらゆるものを排除しなければならない、として次のような見解を明らかにした@調剤専門薬局は調剤センター的役割をもたなければならないA医薬品情報センターとして応需できる体制が必要であるB調剤技術及び医薬品試験の指導的役割をもたなければならないC備蓄センター的役割も必要である。

 業界全体で販売姿勢を正せ

 宮嶋剛薬務局長は一一月二九日午後、日薬連の渡辺副会長ら業界代表を招き、日本ルセル社の添付販売の処分を契機に業界全体が販売姿勢を正すよう強く要請すると共に、同日付で「医療用医薬品の販売適正化について」の局長通知を、日薬連、日本卸連、日薬および都道府県宛に出した。

 厚生省告示 日本ルセル処分

 日本ルセルの添付商法で処分を検討していた厚生省は、五品目について来年一月一日から三か月間、薬価基準からはずすことを決め一一月二九日の官報に"薬価基準の一部改正"として告示する。