通 史 昭和49年(1974) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和49年(1974) 8月5日号

 福岡県薬剤師会 分業推進、政経不可分を確認 理事会・支部連絡協議会で

 福岡県薬剤師会(長野義夫会長)は七月一八日一一時より理事会を、一四時より支部連絡連絡協議会を福岡県薬剤師会会議室で開催した。

 長野会長はその挨拶で、参院全国区の森下泰氏の選挙の結果については県下の成績は全く不振で反省検討すべきこと、選挙が終ったので本日の役員・支部長会から県薬は本格的に事業計画を推進することとなった。特に分業に関しては技術技能の向上をはかるべきことなどの諸点を強調した。

 当日のおもな協議事項は次のとおり。
▽第一回保険薬局内容調査集計について
薬局数九三〇.回答数七五八(一般薬局九三、保険薬局六六三)。
保険請求=毎月請求する二九〇、時々請求する一八八、殆んど請求なし一八七.
分包器=ある一一七、なし五四八.
分業になった時改造=要あり五四〇、要なし一二五.
分業になった時借入金=要あり五三四、要なし一三一.
考察‐
@回答数82%弱
A一般薬局は早急に保険薬局になること。
B保険請求を時々する、殆んどしない‐が何れも約30%で計60%あり。この両者は請求時不慣れのため間違いが多いことが懸念されるので請求処理について注意のこと。
C改造の要あり80%余、借入金要あり約80%で何れも高率を示し、資金的に自力でやれない状態のものが非常に多数である

 ▽保険調剤調査について
49年5月請求金額二三、一二九、七七一(前年度当月一六、五九〇、四三八)

 ▽保険請求書について
不備が多く関係当局からも警告を受けている実状で、注意事項の説明あり

 ▽分業推進資料について
藤田胖氏の"診療報酬はどれだけアップしたか"を印刷物としたので医師との対話の資料として活用のこと。

 ▽九州山口第41回薬学大会各部会研究発表について
各委員会で積極的に推進のこと。

 ▽薬事功労者の推せん
今年度の県知事表彰者の推せん者を、各支部より提出のこと。(理事会としての推せん者は工藤益夫、藤田胖、三宅清彦の三氏)

 ▽県薬剤師連盟予算
48年度決算、49年度予算案は原案通り採決。
▽森下泰氏選挙について状況報告と情報交換があり、経済と政治の不可分を確認。

 ▽長野会長挨拶要旨
私達が新しく役員に就任いたしまして、その直後から選挙に突入し今日に至りました。これも日薬の事業計画の中の政治的な実力を附与するという項目に基づいたものでありますが、選挙の結果はご承知のようにお互い努力したにかかわらず県内では完全敗戦でありました。原因としては色々の理由がありましょうがこのことは近く反省検討の機会を持ちたいと思います。も少しやるべきと恨みも残りますが、森下泰氏がとにかく当選されたことは良かったと思います。

 県薬事業は本日の役員・支部長会から、さきの代議員会で決定された事業計画に基づいて行動が始まるわけであります。分業の問題も日薬で対策特別委員会を設置し、このほどその委員長に東京の水野氏を任命、いよいよ日薬も選挙後の事業交渉に正式に取り組もうとしています

 新しい委員会が発足してより余り日数も経っていませんが、各委員会は独自性を持ち、しかもお互いの間に関連がありますので交流をはかりながら、良識ある結論をだしていただきたい。支部長会は上意下達の機関でないので十分な意見を特にお願いしたいと思います。私はさきの県薬会報の冒頭に書いていますように、今後の"道"は険しい、険しいけれども我々が何んとしてもしなければならない技術技能については正しく反省を加えて、我々のこれからに備えて、医薬学が要求する職能を会員がすべて身につけるよう努力しないと、政治的な分業も国民大衆より本当に受け入れられることも出来ないのではなかろうか。現在の我々の技術技能だけでは駄目だと思うのです。

 なお、県下各地の若い薬剤師の未来を期待したい、そのためには我々老朽者が捨石となる覚悟で努力を重ねて、会の戦列に加わってくれるような空気をつくらねばならない。

 日本医師会 今後の医薬品対策で要望

 日本医師会はこのほど斉藤厚生大臣に、今後の医薬品対策に関する要望書を提出し、薬価改定に対して正式に強い不満を申し入れた。今回の改定は医療の本質をまげるものであるなどを指摘しているが、要望書の内容のあらましは次の通り。

 六月一日と七月一日の新しい薬価基準の発表により薬価問題は逆ザヤ現象を一応解消したかに見えているが、今後に対し危惧の念を持たざるを得ない。今回の改定は大蔵当局の物価抑制策に反するとして、大蔵当局が強く引き下げを要望し、値上げ品目と値下げ品目を同数にするような要求のもとに行政技術が行使されたもので、日本の医薬品の将来の発展にはなんら寄付していない。

 今後の医薬品の価格に関し、医薬品の登録抹消等を考慮すると、今回の改定は実に医療の本質をまげたものとして指弾されるべきものである。今後医薬品は特殊な原材料の入手難と人件費の上昇、研究開発費の高度化等により、今日までの方式の下においては逆効果を生ずる恐れがある。

 たとえば利益につながらない医薬品は登録を抹消し利益をともなわない医薬品の開発は行わないというような生命の軽視に通ずる薬務行政が企業サイドで致命的な歪を生じることは明らかである。医薬品企業における特殊性を見るならば外国製薬会社は優秀な製品を日本に持ち込まないで諸外国で発売する等の事実が現に見られることは人類共存の立場から極めて重大な問題である。今後の医薬品対策はそれらの点を十分了承の上、医薬品行政が大蔵当局の圧力に屈して、生命の尊重を害することのないよう格段の注意を切に要望する。

九州薬事新報 昭和49年(1974) 8月15日号

 医薬分業の在り方と現況 福岡市薬調剤事務説明会における談話 藤田胖

 医薬分業問題は昨年一一月、日本医師会の理事会で今後診療点数で再診料等があがっていくと、必然的に医薬分業に移行することとなる点を示唆した。

 この結果を受けて、日薬は分業遠からずと方針を決め、又厚生省も分業の線に添い推進することとなった。しかし、現実には少しも処方せんを出さないではないかとの皆さんの声があると思うが、これは現在法律で決められているわけではなく、また今後、法改正をして必ず処方せんを出す(強制分業)ことまでは医師会としても考えてはいないので、全面的に処方せんが出されることを期待するのは無理である。

 医師会は強制分業には反対しており、薬剤師の皆さんが考えている分業とは若干ニュアンスが違うのだと思います。日薬もまた法改正による強制分業は困難であるという方針のものとに推進しています。日薬としては日本医師会に対するアッピール、中医協対策、厚生省との折衝などの基本方針を進め、各県各支部段階ではそれぞれの対医師会対策を進めるよう指導しています。個々の薬局に対しては各地区毎に分業推進に努力をしていただくことを指導方針の建前としています。

 しかし、これは建前で、実際には結局、個々の薬局が近隣の医師と話し合って実績を積み上げて欲しいということであると思います。九州薬事新報にも何回か書きましたように分業は医師にも薬剤師にもプラスになる点や、その数字をよく理解して、医師との話し合いの参考にして欲しいと思います。

 飯塚の医師会の中に内科医会というのがあり、そのリーダーの方と話す機会を得ましたが、その内科医会でも分業をしなければならないとして研究グループを作り、その方が、リードを要請されているそうですが、具体的方法が判らず困っているとのことでしたので、二時間程話し合いましたが、結局医師側は、福岡市でも同じですが、大体、医薬分業やるべし、しかし具体的に現地でそれを受入れてくれる薬局がないというような云いかたをします。今迄の薬局の色々な姿勢を見ていると考えさせられるという医師もいるようで、ここでも皆さんの積極性が必要になるわけです。

 医師の中にも全く分業に反対の人がいるように、薬剤師側にも全く分業には積極性のない薬局がかなりあると思うが、それは各自の営業方針ですから色々なケースがあって結構だと思います。要は自分の薬局経営に分業をとり入れようという気持のある方は、何よりもまず第一に、分業を実施した場合のメリットを十分理解してこちらから積極的に医師に対話を求め、受入れる意欲のあることを理解させ、最初は10枚、20枚からでも始めてゆけば次第に数字の上でも医師も薬剤師にも分業がプラスであることが理解されると思います。

 日薬は現在、分業推進委員を養成するための理論構成及び実技についてのテキスト作成の作業を進めています。この日薬のいろいろな制定資料を待つのも結構ですが、分業を意識して積極的にやろうと考えている薬剤師は、取り敢えず私の作った資料を参考に、まず近隣の医師との対話を始めていただきたいと思います。医師は自分の方から進んで処方せんを出した結果が、思わしくなかったら、自分の責任になるであろうとの危惧を持っていますから、受入れ薬局としては、現在の薬局経営にプラス処方せんであるからその点を心配する必要がないことを認識してもらうよう努力することが必要だと思います。もしも、距離制限の関係で調剤のみ行う薬局を新設する場合は、処方せんのみで経営するわけですから一日平均60枚位は必要であろうと思われますが、普通の診療所であれば大体その程度は発行できると医師側も云っています。

 現在では、いつ医師側から話しを求めて来るかわからない状況にきています。福岡市でも現在、医師と話し合いをして「それでは分業の準備をしようか、受入れの方も大丈夫でしょうね」という医院が三ヶ所ほどあります。最後に、分業は次第に進みつつあるという認識を新にしていただき、薬局の経営方針に分業を取り入れるかどうか、決心すべきときだと考えます。 (49・7・25)

九州薬事新報 昭和49年(1974) 8月25日号

 福岡県薬剤師会 社会保険委員会 委員長に藤田氏

 福岡県薬剤師会の役員改選後の各委員会は参議院選挙により開催が遅れていたが、社会保険委員会が第一回委員会を八月八日、県薬会館で開催した。当日は安部、中村両担当理事のほか委員は藤田胖、中野佐、古川周一、石井理一郎、倉田憲治、井上浩一、阿部兼士、林良治、羽広薫仁、中野勝繁(代)の諸氏委員委嘱後初の委員会であるためまず委員長並びに副委員長の選出を行ない、藤田、林の両氏を正副委員長に推せん、議事に移り、@中央情勢報告A委員会の活動方針B九州山口大会薬局部会提出議案並びに研究発表についてC分業推進特別委員会についてDその他について協議した。

 藤田委員長は議事に先だち委員長のあいさつとして「私は現に分業の受入れ薬局をしており、この事実はまげられないが委員会として好ましくないことは指摘願って協力をお願いしたい。この委員会の性格からすると委員の方々も地区の代表者ということではなく、県薬会員のためになることを検討することが目的であり委員会の基本的理念もハッキリさせたいと思うので建設的な発言をお願いしたい」と委員諸氏へ協力を求めた。

 当日の意見としては、近く発足予定の分業推進特別委員会との関連、本員会の今後の活動方針について検討した結果、当日の結論としては左記五項目について今後掘り下げて検討することなどを決めた。

 @物流(例えば歯科医師の抗性物質の共同仕入問題等)
 A情報(薬価基準、レセプト等の改正時の早期衆知徹底、分業情報伝達等)
 B研修(請求事務、繁用医薬品、副作用等の研修など)
 C日薬に対する要望事項(保険調剤の配達についての報酬、保険薬局の標識調剤拒否防止方策など)
 D分業推進特別委員会との提携(検討事項の重複をさけ特別委への要望事項の検討、あるいは特別委からの諮問事項の検討など) なお、福岡県は一〇月から実施される三歳未満児の医療無料化に伴い、九月には研修会が必要であるがその方法などについても検討した結果、実施を県薬へ要望することとなった。

 当日の主な発言

 ▽県薬各委員会の委員長が重複するのは指向がかたよるという面から好ましくないのでさけるべきだ(井上)▽当委員会は分業に一番関連深い委員会であるが、本年度からは分業特別委が発足するのでここでは実務が主たる目的になると思うがその辺の意見統一が必要(藤田)

 ▽今迄は行動的な性格も持っていたが将来幅広く学術面、DI等もこの委員会で受持つべきでないかと思う(中村)

 ▽現時点ではマンツーマン方式が一番実現しやすく必要でもあるが、県薬としてはもっと幅広いビジョンを示して欲しいとの意見もある(倉田)

 ▽分業形態▼マツーマン方式▼備蓄センター設置、資金積立など実施の蒲田方式▼ある程度の基準を決め、推せん薬局を指定する大阪方式などいろいろあるが、当県薬ではどの形態を推進するかをこの委員会で決めるべきかどうか(藤田)

 ▽分業特別委があるので、ここでは分業を阻害する種々な要素のうち地区的に解決できる問題について検討すべきだ。また日薬は全薬局の分業受入れを指導しているが、保険調剤したくない薬局もあるという矛盾を考慮し、これをハッキリさせるべきでないか(井上)
 ▽福岡県保険薬局会を以前結成したが、あれは実在しているか(倉田)
 ▽結成当時は分業資料を作成したり活動したが、分業が進まないために実際には消滅した形(中村)
 ▽これを復活、推せん薬局等を考えては?(倉田)
 ▽必要があれば復活すべきだが、まず急ぐことから始めたい(安部)
 ▽レセプトの書き方がいつも変る、これの徹底が一番急を要する。まず各支部に請求事務担当委員を決め、その方々を教育すべきだ(藤田)
 ▽それと分業特別委が実施する以外の分業問題は全部この委員会でやるべきだ(倉田)