通 史 昭和49年(1974) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和49年(1974) 1月5日号

 新年のごあいさつ 日本薬剤師会 会長 石館守三

 新しい年を迎えるに当り各会員諸君に心からの挨拶を送り、ご多幸を祈ります。時勢が変遷する中にあって、われわれ薬剤師の職域にある者は不退転の信念を持し、自らの職責即ち国民の医療と健康に貢献すべき使命の前進に邁進すべき決意を新にしたいと思います。そのために日薬の当面している課題は沢山ありますが、その中での重点的なものを三つあげてみましょう。

 第一は医療の荒廃を改善するために医療担当者の技術の評価の適正化と同時に、医と薬の職能と職責の分化すなわち、医薬分業の良心的な実施であります。今や医と薬は利害相反する仲ではなく、漸く雪解けの時を迎え、これを具体化すべき時期に入ったことであります。これに対し腰に帯びをしめ直して対処したいと思います。

 第二は、薬剤師の職域が拡大され、同時に各職域における業務管理の職責が重要視される時を迎えています。これに対応するためには、開局・勤務薬剤師は云うに及ばず、製薬界、卸業界、環境衛生および教育研究者に至るまで凡そ薬剤師業にあるものの職域の組織化が緊急に必要になって来たことで、それらが各都道府県薬、日薬と一体となって行動し、精進することが全薬剤師の社会的地位を高める大いなる柱であります。来るべき年にはその準備を進めたいと考えています。

 第三は薬剤師職能の当然の主張を政治に反映させるために、会員諸君の政治的意識の高揚が求められます。薬剤師の職能を確立するために各職域にある会員は長期的視野に立って、一致団結することが要望されます。自らの職能と職責を果たすことは、それは直接に国民の医療に貢献する所以であるとの自覚と信念に基いているからであります。会員諸君のご健闘を期待します。

 年頭所感 福岡大学薬学部長 塚元久雄

 寒さが近年になく厳しく感じられる。昨年を回顧すると日本はもとより世界中が波瀾に富んだ一年であった。中東問題が核となり、石油問題がからみ世界中に経済的な嵐をまき起した。特に資源のない日本は全く狼狽の極に達し、政府は勿論のこと一般市民も前途の不安感、物質不足を来たすとの考えから極端に悲観ムードがただよった。

 ついにはトイレットペーパー、砂糖、洗剤、更に専売品の塩まで買い漁りという、まるで戦時中の如き様想が展開された。この事実は必ずしも笑劇とは云えない。人心が焦燥を感じた結果であろう。こうした考えが今年も続くことを恐れはするが、日本の経済は、もはや世界の政治・経済と結びつき、それ等と相関性を有することは当然のことであろう。本年は日本にとって大きな試練の歳となろう。

 薬業界に於いても、日本経済の波に抗することは出来ない。やはり苦難の歳を迎えたことに変りはない。電力、ガス、石油等エネルギー源の不足、原料不足それに伴って生産削減、コスト高騰、いずれの方面からも圧迫を甘受しなければならない。私は統制経済を好むものではないが、製薬業者が従来の如く同一製品を乱立することなく、今日の事態を認識され、各業者共少ないエネルギーと原料を有効に活用し、この苦難を克服し、将来に光明を見出されることを熱望してやまない。

 これは製薬業者のみならず私等研究者も又、卸・小売の諸兄もすべて本年はその向うべき道を、従来の惰性を一度考えるべき歳ではなかろうか?年頭に際し、皆様からお叱りをうけるかも知れないが、私の感じたことを僭越ながら述べた次第です。乞御寛恕を。 (前九州大学薬学部長)

 新しい年を迎えて 第一薬科大学 学長 松野俊雄

 あけましておめでとうございます。新年のお慶び申し上げると共に、所感の一端を述べさせていただきます。

 さて、薬学という学問は医学と相構えて、あるいは生死の分岐点に立つ重患者を病苦から救うという程の貴い使命を担うものでありました。例えそのような起死回生的な新薬の開発は容易でないにしても私が薬学を専攻したのは自分ながら驚く程の純粋な動機でありました。ライ病はもとより肺病でさえ、間違いなく怖ろしい死につながる業病と考えられた時代でしたから、少くとも、薬学に足を踏み入れたときは、そのような病を絶滅できる薬を作り出すことができればよいという夢がありました。

 ところが、明治以来日本の薬学教育は殆んどが天然有機化合物の単なる構造決定や、薬とは限定せず、一般に天然有機化合物の合成研究に明け暮れしていましたが、時代の変遷に伴い薬用になる植物の成分を手際よく純粋に抽出し、その有効性を確認のうえ、天然物と同一構造の物質を化学的に合成しさらにその薬理作用と安全性を究めるようにまでなったのであります。

 第二次世界大戦の終了後、我国の機器分析の進展は新薬開発のパターンを容易にしたかのように思われるが、いざ臨床面では微妙であり、変幻的な生体のメカニズムと対決する段階になると体内に入れられた薬物の運命はとかく迷路に入り込んでしまうのであります。私は少くとも戦前までは見られなかった物質本位の薬学教育から脱皮して生体いや、それも病苦に悩む人たちの健康を取り戻したいというような研究学問でありたいと望むものであります。

 一方現行薬科大学のカリキュラムにおける専門教育はその殆んどが薬学における基礎教育科目の雑多な羅列に過ぎず、いうならば化学、化学に明け暮れしていたことであります。なる程現在までの薬学は物質の化学的探究の面においては優れていたが、化学と生物学との接点にこそ薬学の本質があることを見落していたか、あるいは無視していたのではなかろうか、このような分析から薬学の専門教育における従来のカリキュラムを整理統合し医療関係の諸学科目を充分に汲み込んだ学科課定を設定することが、今後、我国の新しい薬業界を背負う薬剤師教育であり、一日もいや一刻も早くこれが完成に邁進するのが私たち教育者の責務であると確信しています。

 以上述べて参りました問題の解決は私どもの今後の重大なる使命であり、懸命に取り組んで参りたい所存でご座いますが、ここに改めて皆様のご協力をお願いして新年のご挨拶といたします。

 新春を迎えて

  全国医薬品小売商業組合連合会 理事長 荒川慶治郎

 新春を寿き九州の皆様方に御挨拶申し上げます。昨年は中東の戦火に端を発し世界中が混乱のうちに年を送りました。これが為日本の産業構造の方向にも大きな転換を余儀なくされました。消費万能、使い捨て時代から急旋回して節約、ケチケチ時代に突入しました。

 薬業界に於ても大きな影響の及ぶ事は当然で、もう既に品薄、品切の声が身近に囁かれております。こうした環境悪の中で小売薬業界としては昨年来の懸案である再販制度の縮小の問題不当廉売の規制、或は薬効再評価の動向も予断を許さない事態があります。

 再販制度の縮小は昨年十月に公取委員会は本年九月一日より実施を告示しておりますが明らかに消費者団体のパワーの前に屈したもので末端流通業者即ち零細な小売の犠牲により再販問題の解決をはかろうとするもので我々は承服の出来ないものです。

 今度の値巾再販はメーカーには何等の被害のないもので、零細店切りすてであります。今後我々として明確な答えの得られるまで公取に抗議を続ける考えです。また、薬局薬店が地域社会の中で医薬品販売業としての社会使命を達成するためにも適正マージンの要求は当然であります。確定再販の復活と、適正マージンの確保のためには公取とメーカーとに納得の行くまで強硬な交渉をする覚悟です。

 不当廉売規制に就ては原則的には賛成でありますが薬事法的管理費の加算はなんとしても実現したい、この件に就きましては全国五ケ所における公聴会に於て全商連として強く要望をして参りましたが七月実施の(予定)日まで活発な運動を続ける方針です。

 ここ数年大衆薬の衰退が喧ましく云われております。薬効再評価の動向は我々として等閑視出来ないもので結果如何んによっては小売業界は大きな困難に直面するものと思われます。本年こそ今迄のようなぬるま湯にひたっておるような消極的な経営態度を放棄してもっと積極的な販売の拡大、取引の合理化にとりむくべきです。皆様方の個々の自覚と全国の統一された力でこの難しい局面に希望と繁栄の光を見出す事を祈りご挨拶に代えます。

 激動する小売薬業を語る 新春三者放談会

 出席者
メーカー勤務
林 春夫
国武昭二
御勤務
波多江文雄
大黒隆博
開局
藤田  胖
辻   進
荒巻善之助

 ◆まえがき

 本企画は、薬局経営を主体にして「今年の薬業界の当面する問題」−再販・分業等々−を主テーマに、それぞれの職場において実際に営業にタッチされておられるメーカー、卸、小売の中堅幹部の先生方の生(ナマ)の声を集録させていただいたものである。

 去年は世界的なインフレの中で、日本もその渦中にあって諸物価の高騰を生じ、そのうえ中近東の石油問題で日本経済は歴史的に見ても大変な深刻な岐路に立つこととなりました。48年は流れを変える年と云われ、この49年はこのような激流の中で、短期的にはインフレに対処し、長期的には資源問題をかかえての苦闘の年と云えると思います。我々の薬業界でもますます多事多難なことは必然でありましょう。

 昔から薬業は世間の好、不景気に対し他の業種と比べて余り影響を受けないと云われますが、現代においてはこのことは楽観的に過ぎるかも知れませんが真実性もあるかと考えられます。新春らしい言葉の表現をいたしましたが、本日は「今年の薬業界の当面する諸問題について」、諸先生方のご意見を気軽にご放談下さいますようお願い申します‐

 ○今年我々の置かれている状況がどうであるか。それを土台にどのように反映してくるかが問題になると思う。一番大きな問題は公害、資源で、生産、流通、消費構造が、はっきり一つの転換期にきていてそれに乗っかって、薬局経営の問題、再販問題、その他が一つのウイニングポイントとして動いてくるのじゃないかと思う。具体的な形としてどういうふうに動いてくるかが一つの考えるポイントじゃないか。

 ○再販に対するメーカーの態度は化粧品業界と薬業界では大きな差があって、薬の方では再販を余り重要視しない、或いは余り頼りにしない傾向が化粧品に比べれば非常に強い。一方、小売業者は再販で食っていたと思う。メーカーは再販があったからチェーンを押えることが出来た、と云うのは再販品を取扱っていればチェーン品を取扱うのとマージンは変らないので、それなら一流品を売っているほうが楽だと我々は再販品を取扱っている。公害、資源問題でメーカーの生産は減り、その皺寄せは医家向以上に薬局、薬店にくるし、漢方薬系統の原料も中共が出さないとすれば胃腸薬ですら店頭から消えるような状態も考えられる。今まで乱売戦争に明け暮れていた小売屋がトイレットペーパーのおかげで一勢に定価になったことは結構である。このまま続いて欲しいと思う。メーカーに聞きたいのは資源がなくなる、公害が起って造らなくなる、電力削減で品物がなくなるという三段論法、これは小売店にとって大きな問題だ。

 ○禍い転じて福となすこともおきたが。
○製品関係の原料もさること乍ら、ビンは出来たけどキャップが出来ないなど容器の方でも苦慮するだろう。
○昔はパパママストアは必ず経営はうまくゆく。パパママストアか然らずんば大型店だと云い、中間の店はよくないとされていたが製品が少なくなると売る品がなくなってパパママは経営がなり立たなくなるような調子になってきた。

 ○公害、材源の問題などによって事態が変ってきた今まで公取が打出していた再販と裏はらのようなことになって来た。メーカーで再販が必要であると思われるような生産が維持されるかどうかということが、我々小売業者として一番危惧し考えさせられるところである。その結果によって再販が必要であるかどうか、裏はらな状態がでてきたと思う。
○原料、容器の問題があるにしろ、過剰生産がなくなり適正な生産になるのではないか。過剰と適正の違いじゃないだろうか。今迄が余りにも多過ぎたから不足を感じるということで感じ方の違いではないだろうか。
○適正に分配されれば良いけど。
○医薬品は保健産業という意味からして配給も適正でなければならない。
○流通チャンネル自体が放任したものでは駄目で、そこには何らかの統制(コントロール)を加えないと。
○今、ワクチン(流感)は厚生省の指示によって出しているが、ユーザーの方は納得してもらえないという事態がある。
○現在メーカーは医家向80、小売向20の比率で造っているが原料が逼迫することになって小売の20%がダウンするようなことになると、品薄のため再販は必要かという面も出てくるのではないだろうか。
○原料に限らず今後はGMPの問題も出てくる。風邪薬は今まで過剰生産であったと思うし、今後も一般需要には充分間に合うと思われる。
○トイレットペーパーはハプニングで再販で押えてもらわなくても自分で上ったこのような世情になって公取は慌てて、逆再販、独禁法の緩和など昨日とは反対のことを云うに至っては噴飯ものだと思う。雑貨化粧品が売上高の50%を占めているところは非常に危険である、薬品だけのところは免疫が出来ているから!危険性は少ない。
○品が不足して、小売薬局が悪乗りをして全国的に小売価格の乱れが起った場合、価格は統一されるべきと思うが。
○小売の立場から悪乗りをすることはあるだろう。
○そうすると医薬品の品位と云うものが一般大衆からどういうふうに受けとられるかが問題である。
○業界あげて正常な展開をすべきである。
○全然期待うすですね。
○上限の販売価格が心配しなければならない程、品不足になるだろうか。
○現在生産の20%減、80%が正常な生産量じゃないかと思うが。
○メーカーとしてはGMPの完全発足が昭和50年からだからデスクプランはあるにしても実際稼働した場合のことは暗中摸索じゃなかろうか。
○薬業界の再販はこれから大きな必要性があるかどうか疑問ですね。
○再販は終ったですね。

 ○先程からのお話しで、長期的には秩序ある適正生産という形になるでしょう。トイレットペーパーのハプニングは良く考えて見ると、需給のバランスが根本的に長期的に崩れた現象ではなくて短期的な連想買いであったと云える。医薬品の場合は、長期的に見て秩序ある適正生産という型になると再販がいらなくなることはあり得ないだろう。やはり再販は今までの形では無理としても、業界の主体的な力で価格の安定をやらねば価格が下方に乱れることになる。薬局は地域地域に必要であるという本質を持っている以上適正な配給は卸としてもすべきです。メーカーからは値上げ原材料物資が前金の要求に急速に展開して来ているが、手形サイドの短縮等も卸の経営にとって深刻な問題となっている。まあ、適正なマージンというものがあるから、我々は、資金の回転が早くて適正なマージンが取れるところに優先すると云うことはメーカー支払の面からお願いしていく型が出てくるんじゃないかと思う。パパママであっても払いの良いとこは決して差別しないと思う。

 ○卸の配送の合理化の問題は?
○小売店との話し合いの中に、合理的な供給活動と方法に改革がせまられて来た感じがする。
○卸屋のこれからの省力化はどういう方針、方向でなされるか。具体的に現れた時、小売としてそれにどういうふうに対応するか考えねばならない。お互にうまくやらねばならない、週休二日の問題もでてくるし今までよりも訪問頻度が少くなってきた時に小売薬局はどうするか。在庫の問題と支払いの問題をうまくコントロールしなければならないと思う。卸は省力化の問題について思っているだけでは駄目で進んで理解させるべきでそして色々アドバイスをして頂きたい。又卸の外務員に対しては薬局の先生方は薬品の教育をしてやる位のこと考えてもよいのではないかと思う。

 ○せんだって、薬効の再評価があったけど、あのような日刊紙の発表のされ方は何んですか。いかにも無効だ、無効だというような言い方をされたりして。あの報道のあり方では、薬についての批判は全部小売薬業者が受けてしまうのである。一般大衆は薬局の薬に対して不信感をよけいに抱いたんじゃないか、と危惧の面が先きに立って困ったことだと思った。政治の面で、この辺は解決せざるをえないということになる。すると代議士を出せ、参議院を出せということになります。

 ○社会福祉が進み、医療の無料化等から薬局経営の多角化ということで漢方薬酵素、健康食品など相談販売の形で商品が動き、薬業経済に相当なウェートを占めている。この問題が医薬分業になる過程で薬局への信頼の因子になるかどうかよく考えてみる必要がある。
○昨今は健康食品に関心が持たれているが、これなどは積極的に先取りして薬局で買うべきものだと大衆にアピールすべきではないか、周辺医療という面からも薬局で取り扱うべきであろう。
○薬局の店頭で売るものが無くなっていくという傾向は世界的なものと考えられるから、その代りになるものを考えるべきではあるが、健康食品も薬に類似したもの(例えば糖尿病に効果があるとか)薬と競合するので平行して売ることは却ってむつかしいと思う。ダイエットフードの方が市場も大きいし、取り扱い易いと思うが、やり方が問題で下手をするとヤシ類似行為になり兼ねないし、種類も豊富に揃えないと駄目だと思う。

 ○一つのテストパターンとしては興味があるが、それだけでは食えない、それ以外に結論を教えて下さい。
○それが解っていれば今までにドンドン儲けていますよ(笑)
○小売薬業について感じることだが薬種商の方々は非常に商売に熱心で店頭をはなれないし、地域住民との対話もある、これらが薬剤師には少し欠けるのではないかと思うのですが。
○全くその通りで薬剤師の場合、専門の勉強がマイナスに働く、勉強をすればする程不信感がわく、例えば酵素などのどこが効くのか?メカニズムは?クレブスサイクルにどう入って行くか? 焦性葡萄酸がどう分解するのかなどと云いたがる。
○だからダイエットの方がやり易い。

 ○漢方についても本当に自ら信じないと売れない。現在経営のいい店は薬品以外に力を入れている所か、対象投薬の亜流をやっている所と思うが、薬剤師として権威を持ち、信頼されることに忠実になればなる程食えないし、だからトイレットペーパーも売らねばならない(笑)
○食えぬ前に腹が立つ、腹を立てない人は余程の聖人か余程食うために一生懸命な人かだと思う、処方せんが来ない理由はいろいろあるが、その一つに現状の薬局が信頼に値しないということも確かにあると思うが、それは食わんがためであることもいなめない。
○このような問題を小売店が集まり勉強会をやるべきでそのような機会が少ない、儲ける奴は儲け、儲けぬ奴はボヤき、漢方屋は教えんということ(笑)。息子に継がせる業種にするために、この話し合いの場をもっと持つべきだ、そして頭のいい皆さん方の声を聞き(笑)、ディスカッションを重ね、各人が自己の能力と資力と立地条件に合う道を考えればいいと思う。

 ○次は薬剤師会・組合の在り方について一言。
○それを言うなら全部悪口になる(笑)。
○葡萄糖が不足した時日本医師会はいちはやく「供給が円滑にゆくよう措置せよ」と厚生省に申入れた。日薬も医家向け80%対薬局向け20%の比率がどうなるか、漢方薬・健康食品等も適正な評価をして薬剤師や栄養士でないと売れないような、国民サイドからも適切だといったような主張が会としてもあっていいのではないか、職能団体として権威あるものの拡大をもっと図るべきではないだろうか、個々の努力しか残されていないということでなく。

 ○漢方の問題は日薬でも47処方と同じ位置づけをすべく委員会を作って検討している。近く結論が出るはずである。
○皮肉でなくおたづねしたいが病院に葡萄糖がないのは悲劇だが、今薬局から何がなくなったら悲劇でしょうか?これだけは大衆のために何としても確保しなけらばならない物は?
○緊急性とか切実性とかから云えばあまりないですね。
○そこに吾々の弱さがある、その必要性のあるものはすでに取りあげられてしまい、大衆が一緒になってそうだそうだと云ってはくれないあわれさがある。

 ○ライセンスの問題がでてきたが、基本的に考えて薬剤師の地位の向上が、薬局経営にプラスかマイナスか考えてみると、余りプラスにはならないと思う、薬局の表ゲイは調剤であるが現在では調剤という面では医薬分業にならぬ限り話にならない。そういう意味から云えば調剤薬局のみが唯一の薬局であって、これは薬剤師の地位向上と大体併行して経営が好転することが考えられるが、一般薬局の現状は小売薬業と雑貨とか化粧品とか、つまり周辺のサニタリー物資といったものを充足させるという社会的な役割があると思う(アメリカのドラッグストアみたいに)が、薬局というものをどのような形に考えるかによって、それぞれ経営のやり方が違って来ると思う。漢方士(?)ということになれば薬剤師の領域からハミ出したものになると思う。

 薬剤師では食えないから漢方士(?)になれというのなら話は別だが、あくまでも薬剤師ということを中心に考えた場合の薬局経営は、将来、パターンは分化してくると思われる。商人の顔と薬剤師の顔と両面を持った薬局と、薬剤師の顔だけの薬局と、逸脱した薬局といった職業になるだろうと思う。

 会の在り方も話題になっているが、それを云うなら政治力の問題に帰着すると思うが、これは相当やっているが仲々成果があがらない現状と思う。だが、政治力がなくてもできる消費者運動への介入という問題があると思う、消費者運動は主婦連あたりに代表されると思うが、今の主婦連は一種の扇動団体というべきで、これは日本の経済構造がそのように育てあげたと言え云える。その構造が今、転換しているということは、消費はこうあるべきだとの指導団体にも一度もどる必要があると思う、チリ紙戦争と云えば薬局とスーパーと云われる位だから今後製作構造が変ってくる物品をもろに取扱う業種として薬局、あるいは薬剤師会が先頭に立って消費指導をもっとやるべきではないかと考える。それを誰がやるかというとむつかしいけど(笑)。

 ○大衆啓蒙は大切な薬剤師会の仕事の項目に入ると思いますね、或る程度は各人の店頭でもできるが、我田引水になるおそれがあるのでね。
○現在の経済構造の変化は医薬分業にとってはプラスであろうと思う、いろんな面で集約化されるということは物の流通からプラスアルファーの流通に変ってきたと云えるので、技術料のアップは当然納得されると思うからである。

 ○昨年一一月医師会は全体理事会の決定事項として五年後の分業に備えて技術料の40%アップ(実質的には従来の技術料の70%アップ)を要求して厚生省と話し合うと発言したが、三師会が共闘するとして薬剤師会側も総医療費の40%アップの試算をした。これがそのまま実現するわけではないが、今後業界の中のもろもろの材料から薬価基準と実勢価格との格差のちぢまり等分業については明るい面がでて来たと云える。薬剤師会としては医師会の昨年の発表事項が今後医師会内部にどのように滲透していくか非常な関心事である。

 ○だが技術料があがった時点で薬で甘い汁を吸った医師が薬を離すだろうかということと、財政的に技術料アップが医師が考えている程のアップ実現が可能かどうか危惧する。

 ○次に会について一言、全国的に、も少し若返って欲しい、会長・副会長は別としても特に委員会の委員やスタッフにはもっと実情を調べ適材適処を望みたい。いわゆる人的体質改善をはかり、有能な若い人をポストにつけるべきだ。今日は○○の結婚式でといった方々では困る。(笑)
○ほんとうにそれは大切なことだ!それには有能な人をタダ働きさせてはいかんよ!若い人の場合は特にそうだ。少くとも本当に仕事をする人には時間を制約する意味でなく有給制にしないとね。
○ニワトリが先かタマゴが先か分らぬが、それには会費をあげねばならず、何かメリットがないと会費はとれない。
○それにはやはり政治力が必要だ、最後はそこに帰着する。

 明けましておめでタイガー今(虎)年もどうぞよろしく。昭和四十九年笑月 

  糸岐ぼんち 吉例エトにわか占い

 運勢、トラの皮模様でなにかと黄黒(気苦労)多し。がんばれ、清正公のトラ退治で突かれ(疲れ)ちゃおしまい。
 災害、れぐれもご用心トラ年でケガは(毛皮)付きもん。
 恋愛、成就。言い交した(良い皮した)仲じゃもん。
 待人、あれから一時間、もう来んと(猛虎んと)。
 犯罪、娘さんご用心。痴漢が虎視(腰)たんたん。
 商売、繁盛。客の虎の子まで吸い上げてもうケモノ。
 栄進法、妻をメトラ(牝虎)は社長の娘。これぞ早道。
 回春法、当店へどうぞ。中国トラい(渡来)の妙薬あり。

九州薬事新報 昭和49年(1974) 1月15日号

 医療費点数改正 調剤基本料一〇〇円に 二月一日実施予定

 斎藤厚相は一二月二七日中央社会保険医療協議会(円城寺次郎会長)に対し、総わく一九%の医療料金引き上げを正式に諮問した。斎藤厚相は二八、二九日の中医協総会で審議の上、二九日には答申を得る予定であったが、答申をまとめることが出来ず、三一日に改めて総会を開催。諮問案の一部(再診料、歯科の初診料など)を配慮することでようやく支払側も答申に応じることとなり、医療料金引上げは厚相諮問案通りほぼ実施されることとなった。

 これにより、一月一四日告示、二月一日実施予定となった。調剤報酬の改正(案)は左のとおり。
@調剤基本料
八〇円→一〇〇円
A調剤料
内服 二六円→四〇円
頓服 一五円→二〇円
其他 四〇円→五〇円
(なお処方せん料は甲・乙とも現行六〇円より一〇〇円となる)

 ◆答申受領後の厚生大臣談話
歳末の忙しい中を中医協会長以下委員各位におかれては、貴重な時間をさかれ診療報酬改定について熱心に審議戴き、本日答申をいただきました。委員各位のご努力に対し衷心より感謝いたしますとともに答申の趣旨を体し、これが実施に努力いたす所存であります。

 今回の改定は、国民の生計費に影響するところもありますが、最近の物価・人件費の変動を勘案するとともに、国民がより良き医療を享受できるようにという見地から、技術料の適正な評価という従来の方針に沿って、当面是正すべき事項につき行うこととしているものであることをご理解いただきたいと思います。全国の医療担当者、医療従事者は、その趣旨を十分了承され、国民医療の向上に今後ともご協力をお願いいたします。

 また、このたびの審議の過程で最も問題とされました歯科の差額徴収、室料差額の問題については、診療担当者側のより一層のご努力、ご協力をお願いするとともに、当職としてもこの改定を機にこれらの是正の措置を早急に講じてまいる所存であります。

 なお、今回の診療報酬改定は、長期的展望に立って行われるものでありますがたとえば、永年の懸案でありました医薬分業の問題に致しましてもこれが実現のための第一歩となるべき要素を含むものでありましてようやく一定の期限を目途に医薬分業の推進を図ることが可能になったものと思われます。当職としては例えば五年位を目途として薬局等受入体制の整備を計画的に行うとともに、物価・人件費の動向をも勘案しながら技術料とくに診察料につきこれに見合った適正な評価を積み重ねるよう、今後とも逐年努力いたす所存であります。この問題は今後、長期的展望に立って適当な国民医療の確保を図るため、いわゆるスライド制の導入に関する諮問事項とも関連があろうかと思いますので同諮問事項についても早急に答申を得ることを期待し、これが実現に努力いたす考えであります。

 福岡市三師会 年末年始急患診療に協力

 福岡市は年末年始の民間病院休診の際の急病人対策として一昨年からスタートさせた急患診療事業を昨年は拡大、市三師会などの全面的協力で民間病院の平常診療が終わる三一日午後六時から四日午前八時までの五日間開設、千六百人以上の急患を扱い市民に喜ばれた。福岡市薬剤師会もこれに協力、年末年始の休みを返上して業務に当った会員は左記一五氏であった。

富永宏資、榊チエ(開局)松岡佑、岡田悟、豊福利治、柴木敏久、唐沢博順、中尾泰史、中尾泰正、天野久高、石原尚武、城野勝美、実渕豊、吉本喜四郎、蓬莱公子(病院勤務)

 福岡県薬事薬業 第24回年賀会

 福岡県薬業界恒例の第24回薬事薬業年賀会は正月四日(金)正午から、本社主催、福岡県薬事薬業諸団体の協賛により、福岡朝日ビル九Fのホテルステーションプラザ大ホールで約三五〇名が参集して盛大に行われた。

 会は県薬剤師会工藤専務理事の司会により開会、主催者を代表して郡家主幹あいさつののち四島県薬剤師会長、田口九大薬学部長、堀岡九大病院薬剤部長、国松武田薬品顧問、大黒九州医薬品卸連名誉会長からそれぞれ各界を代表して薬学、薬剤師業時局などについて年頭の言葉が述べられた。

 それより塚元福大薬学部長の乾杯の音頭で開宴、新春の気満ちた会場において和気あいあいのうち新年の互礼のあいさつが交され、斉田、内田、藤野三氏の音頭により祝めでたを和唱、白木福岡県医薬品商組理事長の万才三唱により本年度の盛大な年賀パーティーを閉じた。

 ミニ情報 日薬事業計画 分業推進を前向きに

 日本薬剤師会は一二月一八日常務理事会を開き、49年度事業計画案、予算案について検討した。事業計画については医薬分業の推進を前面に据える方針で、具体的には受け入れ体勢について@厚生省と連絡を密にしながら全薬局を対象とする実態調査を行うA医療金融公庫の活用など薬局融資の活発化をはかるとともに、日薬は積極的に融資の窓口的役割をはたすB医療用医薬品を中心として薬剤師研修会を実施する‐などが折り込まれる予定で細目については分業対策特別委員会で検討する。

 予算案については分業のための予算のほか人件費等の自然増もあって相当増えることが予想されるため常置委員会の整理統合などを行い全体として前年比二〇%増におさえたい方針であるが若干の会費値上げは必至とみられる。

九州薬事新報 昭和49年(1974) 1月25日号

 福岡県薬業協議会 小売の合理化せまられる

 福岡県薬業協議会は、本年の初会合を一月一一日午後三時から県薬会館で、メーカー九社、卸三社、小売七名の委員が出席して開会。

 当日はメーカー側議長となり、一二月例会の報告に次いで各地区情況報告が行なわれたが、各地区とも価格問題よりも今後の品不足問題、昨年末県卸業協会から小売店へ出された配送・返品についてのお願いの件に話題が集中したことが報告された。

 この件については当日も卸側委員より「メーカーの配送も含め、今後予測されること、また、医薬品の持つ特殊な使命等から卸の苦哀を披歴するとともに要望したわけで、公正な配分と無駄の排除が目的である」との説明があった。それより昨年度の会計報告を了承したあと次回は二月一三日(水)一五時から開くことを決めた。なお、福岡県医薬品卸業協会名で小売店に配送・返品についてお願いした文書は次のとおり。

 一般的経済環境はもとより薬業界をとりまく内外環境も誠にきびしく、加えて、モノ不足による値上げ動向等により経営は一段と深刻になりました。私ども医薬品卸としましても、健康に関わる社会責任を貫くための経営諸改善に積極的に取り組んでおりますが、特に、
@人手不足A賃金諸経費の高騰BGSPの実施と責任C交通事情の悪化D石油ショックによる配送の極度の困難度等、予想外のブレーキが続いております。

 斯る状況から、「当日受註分の即日配送のお断り」の件につきましては、既に東京・大阪・名古屋で実施されておりますが当地区におきましても皆様方関係諸先のご協力を得まして実施のやむなきの状況でございます。

 尚、左記の場合のご返品につきましても、ご返品された商品が仕切価格で入帳出来かねる場合がございますので、店頭陳列には充分ご留意下さいますようお願い申し上げます。@開封された商品Aマジック等により価格記入された商品B有効期限の切れた商品。以上重々のお願いでございますが、私ども社会責任の完遂のためご理解ご了承賜りますようお願い申し上げます。

 昭和49年度 保険料大幅アップ 福薬国保組合理事会

 福岡県薬剤師国民健康保険組合(四島久理事長)は十二月理事長ほか理事全員出席して理事会を開き、本年度国保事業の概況報告並びに四九年度の事業計画について検討、保険料の大幅な引あげ等を決め、予算編成を進めることとなった。

 本年度事業は現在まで大体順調に運営されているが医療費改正ほか医療福祉の推進により療養給付費の不足見込額約五五〇万円は、予備費及び繰越金を財源に予算を更生することとする(48年度の給付見込額は前年対比二一・五%の伸びを示している)。

 昭和四十九年度事業計画及び予算については、給付費は自然増二一%、点数改正分一九%老人医療の無料化等の社会医療の波及分五%計四五%の伸びを考慮することとし、給付割合、葬祭費、助産費等は前年通りに据置く。保険料については医療費の伸びと国保健全財政確立のため、次のとおり大幅に改正することとなった。
▽組合員(月、一人)
一、六〇〇円を三、〇〇〇円に。
▽その他(月、一人)
九〇〇円を一、五〇〇円に

 薬界短信

 福岡県麻薬中毒者相談員推せん
福岡県薬剤師会はこのほど県の麻薬中毒者相談員として次の五氏を推せんした。なお、五氏とも前期からの継続者である。
杉山官(門司区)、三渕学(小倉区)、原田幾太郎(飯塚市)、奥村陸平(田主丸町)、早川政雄(大牟田市)