通 史 昭和48年(1973) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和48年(1973) 11月5日号

 新興都市大分に政治色豊かに 第40回九州山口薬学大会 会員千五百名参集

 第40回九州山口薬学大会は、澄み渡った秋晴れの一〇月二五・二六日の両日、新興都市として話題を呼んでいる大分市の中心、大分城内の県文化会館を主会場に千五百余名の会員が参集して終始熱心に研鑚、盛会裡に終了した。

 本年の大会は「医療制度の改革と薬剤師」をメインテーマに、本会議の特別講演は「薬と薬剤師と政治」の演題による吾々薬剤師の只一人の国会代表須原昭二参議院議員の講演、また開局保険部会の特別講演は望月日薬専務理事が「医療保険と薬局」と題して中央の諸情勢を詳細に解明、薬学薬剤部会では「DI活動のあゆみと現状」を日本医薬情報センター久保文苗理事長が講演したほか、薬剤部長協議会、製薬部会、女子薬部会でも行われ、研究発表五八題、ディスカッション二件など一年間の研鑚の成果が発表された。

 大会の内容は本会議、九州山口薬学会総会のほか薬剤部長協議会並びに薬学薬剤、公衆衛生、学校薬剤師、製薬、薬務、薬業経済(商組)、開局保険、卸流通、女子薬の九部会が開かれ、第一日二五日五時半からトキハデパートにおいて約九百名が参加して大懇親会が催され、中央からも望月日薬専務理事、秋島日本女子薬会長ほか数氏が出席、森下泰氏も会場を廻って雰囲気を盛り上げた。

 また、大会前日は午後四時から参会者の宿泊所である西鉄グランドホテルにおいて薬学会運営委員会、薬剤部長協議会運営委員会に引続き、大会運営委員会が開催された。なお、本大会の特色としては薬剤師職能への危機感から各部会並びに特別講演とも熱心で、最後まで席を立つ者もなく、政治に対する意欲の盛り上りが感じられたことであった。

 本会議

 本会議は、大会第一日二五日午後一時から県文化会館大ホールで、第一部式典第二部会議を約八百名の会員が参加し地元自衛隊のブラスバンドの演奏によって開幕、「医療制度の抜本改正の早期実現」「医薬分業のすみやかな実現」などのスローガンのもとに、地元荘司専務理事の力強い開会宣言により開会、国歌斉唱についで故瓜生田定前九州山口薬剤師会長ほか三五名の物故会員に黙?が捧げられ、益田地元県薬副会長の会式の辞に引続き、杉原大会準備委員長、四島九州山口薬剤師会長の挨拶についで林薬学会会頭は「昨夜の雨がうそのようにカラリと晴れあがった今日の天気のように、薬業界の今後もそうなければならない。この大会も40回を迎えたのでいよいよまどわず初期の目的に向って進みたい。」と述べて挨拶とした。

 次いで顕彰に移り、左期名誉会員の推せんが行われ感謝状並びに表彰状は四島会長から記念品料とともにそれぞれ贈呈され、被表彰者を代表して長野義夫氏(福岡)が謝辞を述べた。

 次に来賓の祝辞に移り、厚生大臣(代)、県知事(保健部長代読)、市長、県医師会長、歯科医師会長の祝辞についで望月日薬専務理事は日薬会長に代って挨拶「福祉政策が進めば進むほど薬剤師が陥落する現象が起りつつある。薬剤師の職能を確立し、薬学を社会に還元出来る社会にするため政治力をつけねばならない。」と述べて祝辞とし、祝電披露があって閉会、小憩のあと引続き第二部会議を開会、まず議長団に渋谷(山口)宮平(沖縄)両県薬会長を推し、前回(第39回)決定事項処理について長領宮崎県薬会長が報告、詳細については境野日薬常務理事から今後も引続き対処することが報告された。

 それより大会提出議案の審議に移り、工藤(福岡)隈(長崎)矢田部(宮崎)坂本(鹿児島)今井(大分)の各氏が別記一八議案の説明を行ない、審議の結果、満場一致原案通り採択と決定した。

 ついで左記宣言、決議文を力強く朗読、採択のあと次回41回大会は明年、山口県で開催することを決定、渋谷山口県薬会長は快く引受け、宇部市で開催すると挨拶して閉会した。

 それより同所において行われた須原昭二参議の特別講演は、一時間半にわたり熱心な聴衆に感銘をあたえ薬剤師の政治に対する無関心に激をとばし、薬剤師は自覚と誇りを持って職能を発揮、全く薬剤師の職能に理解のない当局へは政治力で当り、その政治力をつけるためには党派を超えて……と力説し「私は火をつけ話題にするから、これにガソリンをかけて燃すのは皆さんがたである。」と結んで万雷の拍手をあびた。

 ▼被顕彰者(敬称略)
▽名誉会員
森田真士(鹿児島)宗諦(宮崎)安西孝(大分)
▽感謝状
堀岡正義、佐藤勉(福岡)上木康正(大分)
▽表彰状
長野義夫(福岡)久本照明(佐賀)松尾貞義(長崎)伊藤競(熊本)川野郁朗(鹿児島)伊藤克亮(山口)平野正人(宮崎)郡司昇、後藤平太郎、安東哲男(大分)

 宣言

 われわれ薬剤師は現在の如き医療不信の中にあって薬剤師としての責務を痛感し、大衆の薬に対する誤った考え方を正し薬物療法の正しい指導に努力して国民健康のために日夜奉仕している。今や世論もようやく医薬分業の必要性を理解し、診療は医師、投薬は薬剤師としての専門分野で正しい活動をこそ真の国民のための医療の姿であることを認識しつつある。

 然るにわが国における完全なる医薬分業は遅々として進まざる現状にある。われわれは更に勇を鼓して先進諸外国目標に医療構造の中における薬剤師の果すべき義務と役割を明確にし、医薬協業の態勢を一日も早く作りあげる運動を展開すべきである。これがためには薬剤師の原点に立ち帰り自からの姿勢を正すべきは正し、情熱と精魂をかたむけて組織的団結を固め自からも誓って学識と人格を高めるべく勉強することを本大会の名において宣言する。

 決議
一、我等は福祉国家建設のためのあらゆる分野に薬剤師職能参加を推進しよう。
二、我等は医療制度の抜本改正と医薬分業のすみやかな実現に全力を傾注する。
三、我等は病診勤務薬剤師の技術料の適正化に努力する。
右決議する
昭和48年10月25日
第40回九州山口薬学大会

 九州山口薬学大会 採択議案一八件

 ▽福岡県提出
一、厚生省に対する要望事項
1、近時、各種医療保険の普及、社会福祉施策による医療の無料化に伴ない医療機関としての薬局の経済地盤は逐年沈下しつつある現況にかんがみ、次の施策を強力に推進されるよう要望する。
@医薬分業達成のための施策を強力に推進すること
A薬局に対する低利、大巾な融資施策を実施すること。
2、医療保険、社会医療、福祉医療の拡大に伴ない複雑多岐、非能率的になってきた調剤報酬請求の総てを、医療保険請求書に総括できるよう請求事務の簡素化を要望する。
二、日本薬剤師会に対する要望事項。薬剤師・薬局の向上をはかるため次の事項について速かに善処方要望する。
1、薬剤師の名儀貸し行為の絶滅をはかること。
2、薬局・一般販売業の開設申請者(薬事・薬業未経験者)の資格を審査すること。
3、診療所における原則分業を実施させるための施策を実施すること。
4、要指示薬問題の早期解決をはかること。
5、経口避妊薬の早期解放をはかること。
6、薬事法改正試案の公表と検討を行なうこと。
7、医薬品再分類の検討結果を発表し活用すること。
8、薬局には、必ず「薬局」の名称を使用させること。

 ▽長崎県提出
一、要指示薬の緊急投与除外規定について要望の件

 ▽宮崎県提出
一、薬局薬剤師の倫理規定を薬局店頭に掲示するよう日薬で作成配付方を要望の件
二、薬価基準の適正化のため不当実勢価格の医薬品を摘発公表する等断固たる対策を日薬に要望の件
三、保険薬剤師の薬剤師会加入の法制化運動を日薬に要望の件

 ▽鹿児島県提出
一、地病院薬局の法制化と病院薬剤師の技術料適正評価
二、勤務薬剤師の待遇改善、給与表の改訂運動
三、科大学六年制の実現と教科内容の改善

 ▽大分県提出
一、病診勤務薬剤師の技術料適正化の件

 福岡公聴会で 薬事法的管理費を

 ◆白木業界代表発言

 公正取引委員会の不当廉売防止規定に対する九州地区の公聴会は10月25日、福岡市の合同庁舎で約一〇〇名の傍聴人が参集した中で開かれた。この日は各界代表二二名が意見を述べたが、賛成一〇名、反対一二名で賛否はほぼ半々となったが、学識経験者として公述した大学教授ら四人のうち三人までが反対するなど規制案に問題の多いことが浮きぼりされた。

 福岡県商組の白木理事長は、原則的には賛成するが医薬品の特殊性に立って十分留意して欲しいと次の様に述べた。

 医薬品は生活必需品であり、生命に関連して消費されるもの。従って製造から販売までの各段階できびしい法規制をうける特殊性をもつ。よって品質の安全確保の基準を守り、設備器具の整備まで要求される。その販売は対面を義務づけられる。このように他業種に比しいわゆる「効率化」がむずかしい。故に医薬品不当廉売の基準については、その特殊性から単に直接経費のみならず薬事法的管理費を加算することが合理的かつ妥当である。

 また薬業界にはまだ一部に不当な差別対価が存在し、量販店を極端に優遇し、一般店をその分だけ冷遇し、その差別が不当に甚だしい、このような状態を排除することが何よりも先決であるまた「不当廉売に該当しないもの」の規定のうち有効期限が切迫しているものの処分、季節商品に関する処分については削除、不当表示の規制を強く要望する。なお、医薬分については別個に検討すべきものである。

 ◆第二市場の問題

 隈全商連常務理事は、第二市場についての考え方を「吾々としては大極的に変則流通を是正する方針で、現実に小売が第二市場をメリットとして利用しているのを止めよと言っているのではない。この点誤解のないように」と前置きして次のように述べた。

 「吾々が反対する根拠は@乱売の温床になる。A差別対価が公然と行われる。B品質管理がルーズとなり事故発生のもとである。Cメーカー自ら再販のルールを曖昧にし、違反を犯している。以上の四点で、乱売と差別問題は消費者との関連で考えると、医薬品についても公正自由な競争が行われることが好ましいのであるが、現在の流通はあまりに差別が酷くこれが行われない状態である。これを是正しなければ薬局の近代化が出来ないし、消費者が要求するところの公正な自由競争ができない。このことが重要な点で公正自由な価格競争をやるための差別対価撤廃を主張し続けているものである。第二市場とはメーカーが作り、メーカーが育てたもので現金問屋がやっているのでなく、メーカーがやっているのである。このことはハッキリさせて置きたい。

 昨年来、九州からこの問題について「何とかせよ」と叫びを上げたわけで、この問題は全く抜本的に解決する決め手はないがその後第二市場が大きく伸びることは押さえている現状である。昭和四一年、全商連が提唱した医薬品の特殊指定はこの差別対価に対する最も有効な歯止めであったが、すべて誤解に基き、小売自体で潰いえさせたのは残念であった。小売のメーカーコンプレックスがこのように正当な判断を誤らせ、自主性の確立ができないところであろうと私は考えている」

 ◆質疑応答(▽は質問、○印は回答)

 ▽この部会の使命は業界安定であるが@マージンの確保Aポスト再販を含め広告規制などの今後の在り方Bメーカーの過当競争を小売としては如何に対処するかC協業化された小売と第二市場の関連をどう考えるか(福岡)
○マージンについては、相談料あるいは薬事法的管理料といったものを含めるよう個別接渉の段階にある。最低30%は欲しいと考えているが長期的展望でないとむつかしい。広告規制問題は、広告委員会で意見をまとめ終ったところで、公正競争規約の中の広告規制も又拾い上げたいと考えている(荒川)
○第二市場と協業の関連は品質さえ注意すれば第二市場をメリットとして利用するのは差支えない。協業は当然小売同志が自主的にやるべきだから、吾々が第二市場に代るものをやれない現状ではやむを得ない。メーカーのセアー争いは小売としてはどうしようもないが、小売が自主的に生きるためにはメーカー選択の自由だけは失なわないようにすべきだ(隈)

 ▽差別対価は事実であろうが、第二市場は弱い小売にとっては差別対価の緩和でもあると言える(福岡)
○差別がある以上、第二市場はなくならないし利用するなとは言えないが、九州ではまだ現れていないが、やはり乱売の温床になる。また、薬品の管理の面で今後は危険性が考えられる(隈)
○第二市場は数字的には大きいものでないが、零細店のマージンの削除において、吾々の犠牲において行われていることを認識しなければならない。また、乱売の危険も含んでいる。利用する、しないの問題でなく奥に含んでいることを考えたい。公取にも差別是正について要請しているが、公取の調査でこれがハッキリすれば問題になると思う。この問題は販売姿勢の問題も含め、じっくり考えてやらねばならない。(荒川)

 ▽社会情勢の変化のテンポが早くなった。この部会としては再販よりもマージンアップを主題に転換して欲しい。たての系列ももう一度考え直して貰いたい。(福岡)
○その問題は経営問題委で検討している。今後のこる再販は従来の抑圧したものでなく、資料が適正でさえあれば価格は上げてもいい情勢に変ってきている。(隈)

 ▽卸の差別対価は今後、卸小売の合理化問題からも当然起ってくる。適正な差別なら当然あると言いたい。(大分)
○それまで否定するのは統制経済である。メーカーがリベート制で公表しているものなら適正と思うし問題にはならないが、現在、行われているのは全くひどいものである。(隈)
◇◇◇
第二日目午前中開かれた薬業経済部会は、前日福岡で行われた公取の不当廉売防止法の公聴会に出席した白木福岡県商組理事長を座長に推し開会した。

 まず、議事にさきだち白木理事長から福岡での公聴会では、薬業界としては医薬品の公共性、特殊性を訴えたこと、当日の発言者は賛成、条件付賛成、反対とまちまちであったことが報告された。

 次いで昨年来、隔月福岡で開かれている三者協議会(メーカー・卸・小売)存続の件については引続き開くことについて異論はないが、会議の在り方については実情に合せ、問題の内容によっては必要に応じ小委員会を開くとか、相手を選ぶ等、ケースバイケースで開くことを確認し、来る一一月三〇日の協議会から実行に移すこととなり、一一時一〇分二日間に亘る熱心な部会を終了した。

 第6回日本薬剤師会学術大会 盛会裡に終了

 日本薬剤師会の第六回学術大会は、10月11日より13日まで三日間、東京都品川のホテルパシフィックで開催された。

 全国から約四千人の参加があり盛会を極めた。特に薬局・薬業経済合同部会、GMPの製薬調査部会、薬業経済卸部会などが、業界の現況を反映して多数の参加者を集めた。大会初日の11日には日薬創立八〇周年記念式典が盛大に挙行され、大会に華をそえた。

 石館会長は本会について「薬剤師の職能昂揚に大いに役立つ大会であった」と談話を発表した。 ▽日薬創立八〇周年式典後の「福祉社会と医薬制度の将来」一ツ橋大江見教授の特別講演要旨は、薬剤師職能をゆがめているものは次のような経済的要因である。@現在の福祉政策が薬剤師にプラスになっていないA薬価基準が年々下がっており、薬剤師の経済を圧迫しているB再販制度は医薬品を物として扱っている。

 また医薬品には製造→管理→調剤→販売→消費という物流のルートと診療→処方→調剤→投与→作用という技術のルートがあり、この二つの流れは調剤の時点で結合している。医薬分業は技術の流れよりも管理→調剤という物流のルートで考える方が可能ではないだろうか。

 ▽薬局・薬業経済合同部会
今後の薬局の姿はどうあるべきか、また薬業経済追求の核をどこに求めるか等について熱心に論議した。
シンポジウムでは東京の佐谷圭一氏は「薬を売りっぱなしでなく、結果に対しチェックすれば必らず顧客から信頼を受ける、そして信頼の高まりは必らず売上げ増につながる」と強調し注目された。

 ▽製薬調査部会
製薬調査部会のシンポジウム「GMPと薬剤師」でメーカーの立場から日本新薬の武藤金治氏は、GMP実施の中で薬剤師は大いに活躍し、工場内での薬剤師の立場を確立せよと述べ、また開局者の立場から東京の山田静夫氏は、GMPによって出来た医薬品を分割販売する場所は調剤室のある薬局に限れ、薬剤師による医薬品管理権を業権として確立せよ、と主張。

 ▽薬業経済卸部会
「物流コストの低減について」をテーマにパネルディスカッションを行ない、辰野吉久、山脇憲司、青山忍の三氏が流通コスト低減への具体的施策を提言した。辰野氏は、競争すべき部分とすべきでない部分を明確にして、競争すべきでない部分については徹底した合理化整備を進めるべきである。伝票統一さらにコード統一へと展開することによりコスト低減を生み出せると述べた。山脇氏は、コスト低減の具体策として卸の営業費会計の統一、配送の共同化を強調した。青山氏は、医薬品流通では取引適正化の主対象は価格問題に集中、これが近代化と合理化のネックとなっている。マージン率の伸び悩みについては情報機能の拡充など新たな方向をとる必要があると強調した。

 ▽小売薬業経済協議会
全商連、東薬連共済の小売薬業経済協議会は、再販不当廉売規制を問題として取り上げ、再販品目の取り消し撤回を政治力、団結の下で要求しよう、不当廉売規制の再検討を要求することなどを確認。関係各方面に対する運動を展開することで意見の一致をみた。

 ミニ情報 日薬田中首相に分業要望

 日本薬剤師会の石館守三会長、望月専務理事、境野常務理事、井手事務局長と明年参議員選へ出馬する予定の森下泰氏は一〇月一六日斉藤厚生大臣を訪ね、医薬分業の推進などを要望、次いで自民党本部でまず小沢総務局長と会見し同様趣旨の要望を行なった。続いて、田中総理大臣と会い、@医薬分業を早急に実施してほしいA医療技術者の評価を適正に行ってほしいB薬局の振興策を講じてほしい旨の要望書を手渡した。

 田中首相分業に賛意示す

 日本薬剤師会の望月専務理事は一〇月一六日の石館会長らの田中首相、斉藤厚相との会見の結果について記者会見を行いその模様を次のように語った。

 福祉政策の進展にともないかえって薬剤師職能が圧迫されていることから、国の基本政策として、医療制度の中に薬剤師をどう位置づけるか、又医療の一環を担っている薬剤師が圧迫されるような福祉制度は改めなければならないのではないかという問いかけを行なった。首相も日薬の意見を納得してくれたようだ。斉藤厚相が約束した高額療養費制度に対する改善(高額医療費の負担制度の実施に当っては、同一月の同一診療機関に支払った診療費のみでなく、薬局に支払った費用も合算されるように変更)は今後社会保険庁と話し合って実施に漕ぎつけたい。鈴木善幸総務会長には会えなかったが、自民党の社会部会の中に薬剤師問題の小委員会を作ることの内諾は得ている。

 薬業四団体小沢氏と森下泰氏支援を協議

 自民党の小沢辰男総務局長は一〇月一六日、党本部に日本製薬団体連合会、日本医薬品卸業連合会、全日本薬種商協会、日本薬剤師会を招き、参院選候補の森下泰氏の後援会活動に対する意見調整を行なった。この結果、四団体の後援会の連絡協議会を中央と地方に設けて今後随時意見を行うこと。中央の世話人に石館日薬会長が就任することを決めた。なお会議の席上、四団体の後援会作りの現状が報告された。

 挾子

 ▼本年の薬学大会は今迄になく政治的な盛りあがりを見せた。議員さんは地元(票)に弱く当局には強い、この三角関係をもっと利用せよ……と、また、選挙にはもっとどろくさくなって運動せよ……といみじくも須原参議は発言、来年こそはこの言葉をかみしめようではありませんか薬業界のみなさん!またも落ちたか薬業界の言葉を返上するために……。

 ▼部会があまりに数多い。全般的関連のある知識を得たいと考えて大会に出席するが、部会がわかれ過ぎていて不便。学術的なものと経済的なものとの二部会に大別すべきだとの声が聞かれた。

 九州山口薬学会総会 役員任期二年に 林会頭重任

 九州山口薬学会総会は、文化会館で大会第一日二五日午後三時から本会議に引続き開会、林会頭は「九州山口薬学会の創立は大正一二年のことで、今年は五〇周年の記念すべき年にあたり、会報も記念出版した。地域の学会が五〇年も続いたことは驚くべきことだが、全国に先がけて存在しその存在意義を主張しつつ発展してきたことは私達の誇りである。沖縄県も旧に復した時、一層結束を固くし、この学会が設立された目的、初心を忘れず五〇周年を新しい出発点として常に問いかけ、それによって進歩をはかって頂きたい。」と述べて挨拶とした。

 それより議長に清水氏を推し、会務報告のあと研究助成金交付は、山口県病薬協同研究班による「注射薬の配合変化に関する研究」と九大病院峰正俊、飯塚病院清藤英一両氏による「注射用固形製剤の溶解後の安定性に関する調査」に交付されることが発表され、神代、清藤両代表に助成金が手交された。
ついで審議事項の会則一部改正の件は、本会の役員の任期一年を二年とし、本日から改正することを満場一致で承認、役員は議事に先立ち、五名の選考委員によって選考された左記会長ほか、役員の重任並びに理事中に長崎大学から柴崎寿一郎氏、九州大学から一名(未定)を追加することが選考委員長より発表され、満場一致で承認決定した。それより林会頭の挨拶があって閉会した。(その後、九州大学からの一名は井口定男氏が決定)
会頭
林清五郎(熊大薬学部)
副会頭
堀岡正義(九大病院)
清水龍夫(長大病院)
理事
庶務=磯田正春(九大病院)
会計=中島修(福大薬学部)
編集=青山敏信(九大病院)
井口定男(九大薬学部)
黒田健(福大病院)
於保誠(佐賀県立好生館)
柴崎寿一郎(長大薬学部)
吉村淳(大分県立病院)
佐竹健三(熊大病院)
本田幸雄(宮崎県立病院)
石橋丸応(鹿大病院)
神代昭(山口大病院)
高田勝美(琉球大病院)
監事
河野喜美彦(第一薬大)

 九州山口薬学大会 薬剤部長協議会 新卒教育・局方品不足など討議

 薬剤部長協議会は大会第一日の二五日九時から一二時まで約三百名が出席して県文化会館第一ホールにおいて開催された。部会長の大分赤十字病院郡司昇薬剤部長の挨拶で開会。まず議長に堀岡正義(九州大学病院薬剤部長)、清水龍夫(長崎大学病院薬剤部長)の両氏を選出、両議長により本協議会が進行された。

 特別講演は東京大学病院中川冨士雄副薬剤部長による「錠剤・カプセル剤の識別」が行なわれ、この講演では本年六月三〇日、七月一日の両日、フランスのポンタムソンで開催された、The International Symposium
Tablet Identification についても報告された。
最後に、山口大学病院神代昭薬剤部長の閉会の辞によって盛会裡に終了した。報告事項、議案の主たるもの及びその要旨は左記のとおり。

 ▼報告事項
▽病院診療所における新採用薬剤師の教育資料作成の件=九州大学病院堀岡正義
昨年の宮崎に於ける学会で提案したが、この時は各県病薬を中心として新薬剤師に対し、大学教育で不足のところを卒後研修として補うことが目的であった。

 宮崎提案の時期においては東京、大阪、神奈川の三カ所において研修が行なわれていたが、これは交通便利な人口密集地であって、考えて見ると交通不便であり、開催に不便な地方でも行うべきと思うし、何か勉強して来ての(通信教育方式とも云うべき)研修会でなければならないと考えた

 九州山口または広く全国統一的なテキストをつくり全国的に実施出来る様なものをと考え早速日病薬へ提案した結果、日病薬で取り上げて次の様な10項目の日病薬・病診薬局新任薬剤師研修カリキュラムが出来た。
@医療と医薬品
A医療と薬剤師
B医療と社会保険
C医療と人間関係
D薬品管理の理論と実際
E医薬品の品質管理
F調剤
GDI活動の意義と実際
H薬剤過誤と防止対策
I病診薬局に必要な関係法規
(@〜Cは10月までにすでに完成、他は来年4月までに完成予定)
なお、福岡県で九月実施の新採用薬剤師教育研修会について各県の参考にと考え報告することにする。(本紙八二五号に掲載) 薬剤師業務は三年で一応一人前になるので、今回の様な新卒の者だけでよいかどうかの問題がある。今後の問題点として研究すべきと考える。

 ▽日本病院薬剤師会近況報告=九州山口ブロック長堀岡正義
@給与改善
国家公務員給与の改善で今回病院等に勤務する薬剤師に対し特一等級の設置が実現した。このことは一般病院勤務薬剤師にも好影響を及ぼすこととなり、なお薬剤師全般の給与改善にはねかえってくることを期待し得る。我々薬剤師各位は各々の職場において自分自身の努力により改善を勝ちとることも要望される。
A薬剤師業務に対する技術料設定
甲表病院調剤技術料の完全実施、入院時薬学的管理技術料獲得について、中医協に対する作戦展開を積極的に行っている。日本医師会は反対の態度をとっておりなお中医協再開についても反対作戦中。日病薬は日本薬剤師会とタイアップして関係当局に対し強く働きかける方針である。

 ▽宿題報告「錠剤・カプセル剤の重量偏差調査の件」=大分県病院薬剤師会吉村淳ほか全会員
1、調査の目的
@実態把握の必要
A試験業務へのアプローチ
B日本薬局方との関係
2、調査の方法
@大分県病薬作成の"病院常用の錠剤・カプセル剤一覧表"を品目選択の根拠とする。
Aなるべく多数の会員の参加によって行う。
3、調査の結果
@測定中の吸湿によるとみなされる重量増加はそれ程顕著ではなく、中には測定中に減量するものもあったが、それらの因子による補正の必要は認めなかった。
Aロット間の相違は明かに認められる。
B局方品は裸錠一品目だけであるが、十分限度内に入っていた。

 ▼議案
▽病院薬局における品質管理のあり方を検討する件=九州大学病院堀岡正義
JGMPは単にメーカーサイドに止まらず、流通段階と消費段階においても実施されてこそ全きものとなるであろう。この場合、我々にとって必要なことは、メーカーに対して品質確保についての情報を提供することと、購入した薬品の保管方法の改善ならびに自家製薬の品質管理などであろう。

 品質管理において保管方法を取り上げて見ても、これを正しく行う必要は云うまでもない。10度以下9〜8度に保存が必要なものに対する保管庫がいくつの病院に設置されているが、多くは通常の冷蔵庫を代用している状態である。これを薬局の設備基準にもってゆき、多くの病院に設置する必要がある。これらの対策が如何にあるべきかを検討すべく、病院薬局に於けるGMPを考えて見ようと思う。

 ▽入手困難な局方品などを調査し、対策を検討する件=長崎大学病院清水龍夫
局方品に限らず一般薬品も入手難の状態となったが本議案を提出した時点では価格の点(原料高などで利益の面で商売にならない)水銀製剤の如く危険性のために製造中止品が出ていた。止むを得ず局方品のかわりに試薬を使用することとなっているが、試薬を使用して事故が発生した場合は我々薬剤師の責任となる、この様な事例はまだ生じてはいないが法的には責任が問われることとなる。

 現在、オキシシアン水銀硫黄、ローズ油、クエン酸ソーダ、昇汞、硫酸亜鉛などが不足している。局方品と一般薬品の入手難を加えて、九州山口地区の現状を調査し対策を講ずる必要がある。厚生省、日病薬で行っている入手難の薬品の調査だけでなく、どの様にしてもらえるか、どの様に対策すべきか検討することが必要である。

 ▽第41回九州山口薬学大会薬剤部長協議会宿題委嘱の件=委員長堀岡正義
宿題「注射薬の配合変化」
山口県病院薬剤師会代表神代昭(山口大学病院薬剤部長)

 九州山口薬学大会 薬業経済部会 薬事法的管理費を主張

 薬業経済部会は、大会第一日目九時から文化会館第二会議室で、荒川全商連理事長、隈同常務理事、九州山口各県商組理事長、並びに沖縄県小売商組専務理事のほか約八〇名が出席して開会、益田部会長を座長に会議が進められたが、当初予定の第二市場の問題についてのディスカッションはメーカーの出席辞退のため卸も欠席したことから隈小売側代表の説明だけに止まった。当日の荒川理事長の「差別対価と再販問題について」、隈代表の「第二市場の問題について」の説明要旨並にそのあとの質疑応答の主な点は次のとおりである。

 ◆差別対価と再販問題

 荒川理事長は、公取の再販縮小不当廉売規制発表の経緯について報告したあと、なぜ再販をここまで規制するかについて「当初は物懇の価格硬直性の指摘から起ったものであるが、今回問題にされた理由は再販品は昭和四〇年を起点として他の物に比較して決して価格が上昇していない点は認めているが、業界の寡占化が進んでいることと、五業種だけが保護され他との不公平の是正ということで問題にされた。

 石けん、洗剤、はみがきは完全に寡占化の状態、化粧品は資生堂のセアーが問題であるとされ、医薬品だけは生命関連商品であることと寡占でないことで残す考えが強かったようであるが最終的には化粧品の千円以下と医薬品(生産量の低い物等二八品目は削除)は残し、値幅再販は公正競争原理の導入という形で決ったようである。だが、吾々業界は値幅となれば現在の価格体系では15〜17%のマージンしかなく今後の薬局経営は非常に大きな打撃を受けることは必至である。

 不当廉売の規制については(一般には安売りの規制と誤解されている)全国五カ所で公聴会が催されているので、全商連としては地元理事長に出席願っている。吾々としてはこの規制に原則的に賛成であるが、6%の数字と除外例には問題があるので全商連で意見を統一してこれに当っている。薬局等では半数が相談客であるから非能率、非効率的で薬時法的管理費を認めるよう主張、全商連としてはこれに全精力を使っても、たとえ1%でも他業種との差を官庁に認めさせたい考えである。不当表示についても強力に規制するよう、今、具体的な資料を集めているのでこれを中心に主張するつもりである。

 一九日再販の告示が行われ、不当廉売防止法は七月一日から、再販の指定取消しは九月一日から一応やるということだが、公取は値幅再販の実施については、なお検討を続けると表現しているので、あくまで確定再販を併立させるよう対処したい。

 今後の吾々の運動としては、マージンの積み増しと価格の改正も含め、マージン確保が全商連の今後の大きな仕事で、吾々の販売姿勢の問題も含め相談料を加味した価格にするよう運動すべきであると考えている。

 ポスト再販については、委託の形あるいは流通強化をやらないと今後吾々の経営はむつかしい。制度的にどうするか、取引上どうするか、差別対価だけでなく計画注文、返品、支払問題など薬局の合理化も必要だが、生産の面にもメスを入れる必要があり、今後この問題は真剣に考え、対処せねばならない。

九州薬事新報 昭和48年(1973) 10月15日号

 望月日薬専務特別講演 薬局経営と医療保険 開局部会で

 九州山口薬学大会の開局保険部会は大会第二日二六日九時より大分県林業会館において約二〇〇名が参加須原議員も出席して九題の研究発表が行われ、最後に望月日薬専務理事は特別講演で最も新しい中央情勢を「薬局経営と医療保険」と題して医薬分業とも結んで詳細に解明し、須原議員は分業について野党としての考えを述べ、強制分業を提唱することによって日薬の地馴らしと考えていると発言「いよいよ明年は医療制度の抜本的改正をやらねばならない時期、分業の実現を期すために吾々は中央で議会に火をつけ、皆さんは地元に弱い議員に働きかけて分業運動に参加してほしい」と述べた。

 なお、望月専務の中央情勢報告要旨は「今の薬局の経営の中で一番問題なのは薬剤師自身が考えている薬局と一般国民が考えている薬局との間にイメージのギャップがあることでこれを埋めるところに前進がありそのままにしておくところに問題がある」と前置きして

 ▽医療保険の進展と薬局
薬局の売上げ品目のうち治療薬は医療保険に吸収されて暫減し、一般国民の家計の医療費支出の推移とハッキリ一致し、また、老人医療の無料化も薬局の経営に影響があることが現れている。

 ▽再販について
再販縮少発表以来種々対策、自民党小委員会に出て@再販をはずしても物価対策にはならないA薬は安いことだけが消費者の福祉にはならないB値巾再販はマージン低下を来たし、薬局経営が困難になる。この三つの基本から、再販は現状維持すべきことを主張、現状では一九日告示、二八品目の削除は来年九月から適用となったが、値巾再販については、引続き検討するとの言葉がついているだけで一応確定再販が認められたと考えている。だが公取は近い将来再販は全部はずす考えのようであるから今後これを念頭に対策を考えるべきと思う。

 ▽医療保険と薬局
健保法が改正され、給付の改正が薬局に不利であったため当局へ強く要請した結果、高額医療に薬局における調剤報酬を含ませること、休日診療予算の中に薬剤師の人件費を認める等は了解ができ、一応申入れは成功したと考えている。

 ▽原則分業について
現在医療費の約半分が医薬品費で、この中の利益が約30.%、これが潜在技術料であるから薬価基準をシビアにしてこれをなくし、再診料、処方せん発行料などの技術料を大巾にアップし分業否定の根拠を排除したうえで医師薬剤師は分業のメリットにつき話し合い、次第に分業を進め、ある程度進んだところで法改正を行なうという考え方である。

 ▽薬務局の姿勢について
最近の薬務局は薬剤師のほかに薬種商があるが、その下にもう一つ資格者を作る考えをもっている。また医薬品を薬事法にもない分類の医療用とその他の一般薬に分け、医療用医薬品は薬局の店頭で売るのは好ましくないと発言し、医療用と一般薬との間に位置する医薬品(この中に要指示薬も含まれる)は薬剤師に扱わせないということであったが、薬事法にもその根拠はないと強く申入れ、販売しても結構であるとの答を得たが、これは薬剤師の権利として当然のことである。

 また医療用という用語も問題で、医療用とか農業用ならわかるが、一般薬も国民の医療用であって分類の用語ではない。もし必要ならば第一類とか第三類とかあるいは薬価基準収載薬とかにすべきで、この問題はこれから進めてゆきたいと思っている。その間私は、薬剤師自らが販売する品目として医療用と一般薬との間に位置するところの医薬品を二類とし、これこそ薬剤師自身が他にまかせず、自ら指導して販売する体制を国民に見せる必要がある。

 なぜなら一般薬は今後の薬効再評価により部外品となるものが可成りでてくると思われ、その結果、薬剤師は配置薬並みの医薬品しか販売できないという業権圧縮を受けるわけであるから是非自ら指導管理して販売する医薬品の拡大をはかる必要がある。このような医薬品の中にはいいものがあり、国民に注意して販売することにより非常に良い結果を得ると思う。しかしこのことは当然保険医療との経済的な抗争となると思うが、是非やらねばならないと考えている。しかしこの種の医薬品をいいかげんな態度で販売すると薬剤師の職能はふっとんでしまうことになろう。

 また薬務局は薬剤師の国家試験に関連し、薬剤師の資質をもう一段高いものにするために医学の基礎知識が必要だという問題について、薬剤師は物質である化合物あるいは薬品を管理する者であるのにどうして医学の知識が必要なのかと考えているわけで、この根本的な考え方が一般薬の枠を狭め、あるいは休日診療や高額医療の面に薬局の存在を無視する一連の動きとなって現れる大きな根源であると考えられる。

 そこで薬剤師会としては薬務局と話合っても無駄と感じ、田中総理を訪問したわけで、薬剤師が組織として真正面から総理と会見、正式に要望したことは初めてのことである。そして次の三項を要望した結果、薬局と薬剤師の問題について小委員会を社会部会の中に置くことを約束したが、この対策が今後の日薬の大きな仕事である(総理への要望事項は@医療の矛盾を是正するため、薬剤師職能を活用し、完全なる医薬分業をすみやかに実施されたいA保険医療における医療技術者の正当な技術評価及びシステム化を進められたいB薬局の存立が危機に頻していることにかんがみ、医療機関としての薬局振興策についてすみやかに対策を講じられたい)。

 ▽森下選挙について
今申述べたように最近直接党に当り、対処する力ができたのは森下氏を推した補欠選挙以来である。党は補欠選で惜敗したが、薬剤師が善戦したことをよく認識しており、そのため来年度の予算も予定以上獲得できた。もし来年森下氏を落選させるならば、また元に戻るであろう。政治家は選挙の際活動しない団体には非常に冷淡である。金のない吾々としては票の力をもってするしかなく、来年は森下を、次期衆議院選には福岡から古賀治氏も出馬の予定であるし四年後には若い人々を出し政治の黄金時代を築きたいと考えている。薬剤師会は日薬だけが仕事をするのではなく、一人一人が日薬であるとの認識にたち選挙があれば地方議員をバックアップし、この人々を動かすことにより、はじめて全体的な強い力が発揮できると考える。

 神農さんと博多薬業界 その由来

 いつの世に住吉神社の境内に神農さんが祠られたかは今では知る由もないが、ずいぶん昔からのことであって、博多の薬屋さんは古くからお詣りしていたことが今に伝えられている。現に博多の方々は小供の頃からお詣りしてよく知っている方が薬屋さんに多い。

 昭和23年9月10日本紙第一号が業界の皆様の肝入りで発刊されましたが、当時は戦中、戦後を通じて世情の不安からようやく脱しかけつつあった時であります。メーカーも九州進出のため福岡に支店、出張所の開設が増加しつつあって業界も活気を帯びてきて、なお占領軍指令部より全面的国旗掲揚の許可があり、年末すでに新春祝賀の気分がどことなく醸し出されていました。

 たまたま業界の方々よりこの正月(24年の)は新年名刺交換会を開こうではないか、その世話を新聞でやれ!と云うことになって、初めて24年1月元旦11時に住吉神社の神農さんの神前で50余名が参集して互礼会を行なったのが、福岡に於ける新年互礼会の初めであり、また福岡薬業界が一同して神農さんにお詣りした始まりであります。

 25年よりはお詣りしてからは最寄りの向島婦人会館(現薬剤師会館)で年賀会を開いています。25年は参会者60余名、26年は約100名と次第に盛会となりました。其の後、年を経て現行のように1月4日正月仕事初めの日に行なわれる互礼会に発展したのであります。

 神農さんの恒例祭のことですが、正月にお詣りしているがそれとは別に大阪道修町の神農祭の日(11月22日)に恒例祭として福岡でも当日を「薬祖神に対する感謝の日」となそうではないかとの意見が出て、九州新薬会(筑紫二十日会の前身)と問屋の共催で、その第一回が50余名参加を得て25年11月22日に行なわれました。

 そのとき玉垣寄進の話がでて、其の後住吉神社側に相談したところ心よく賛成を得られた。26年の例祭を経て、当時の武田薬品の木村支店長が中心となってメーカー・卸の皆様の寄附金10数万円をかけて玉垣を造営寄進。27年の例祭は新装なった神域で厳粛かつ盛大に行なわれたのでありました。

 その後、筑紫二十日会の主催として例祭の世話を一本化して今日に到っています。その間、神前礼拝ののち住吉会館において祝宴を開き、九大薬学部の塚本教授(現福大教授)の神農にちなむ本草の講話を聞くなどいたしましたが大変有意義であったと存じています。神農さんと福岡の薬業界との結びつきについての由来の概略を申し上げましたが、このような由緒ある行事が益々盛大に行なわれますことを祈念して止みません。(編集子)

 ◆38年10月大阪道修町神農祭世話人発行の神農さんの由緒 少彦名神社(神農さん)
1、祭神…小彦名命
少彦名命は万物生成の祖神皇彦霊神(カンムビのカミ)の御子で、大国主命とは神勅によって義兄弟となられ共に我が豊葦原瑞穂の国を経発し、文化発展の根基を築かれた。又、特に少彦名命が最も力を尽されたのは生物愛護の御精神により、人間ばかりでなく、家畜の類に至るまで平等に病を療し、あらゆる心身の苦患を除くべく医術薬法を発明し種々の災厄を祓う法をも創められ無窮の神徳を遺された。

 古語拾遺節解に「大己貴(オオナムチ、大国主命の別名)少彦名二神、人畜共に諸病を治する薬法を定め人民の患を救い給う……更に薬法を製し万病を治せらる是れ日本医術の本源なり……」と書かれている。

 なお、医薬の神は天竺(印度)では薬師、中国では神農氏であります。この神農氏は中国上代の道化の祖と称えられ農耕を教え、薬草を試(タメ)して医薬の道を教えられた高徳の祖神である。

 2、少彦名神社の由緒
桜町天皇享保七年(西暦一七二二年)、時の将軍徳川八代吉宗公が南紀より大阪に入国の途次病に罹り容易に治らなかった時、道修町より進上した薬が非常に能く効き忽ちにして快癒せられた。吉宗公は直ちに大阪道修町の薬屋一二四軒に免許を与えると共に、諸国産地より入荷する薬の真偽善悪を吟味する特権を附与せられた。

 処が、薬種の吟味は非常に至難な業であり、一歩誤れが人命に関するので改役行司等が相談、神々の加護を祈り薬種の吟味に従事したが未だ安心出来ず、遂に、安永九年(西暦一七八〇年)十月、京都の五条天神社にお祭りしてある少名彦名大神と共に中国の薬祖神である神農神を道修町の改会所(アラタメカイショ)に勧請・鎮祭したのが当神社の起源である。

 3、張子の虎
毎年11月22、23日が神農さんの例祭で張子の虎が授与される。この虎の由来は、文政五年(西暦一八二二年)の秋、三日亡(コレラ)が流行して人々が大変苦しんだ時、道修町の薬種商が相談して疫病除けの薬として虎頭骨等を配合して製造し、虎頭殺鬼雄黄円という丸薬を施与し、合せて、張子の虎を作り神前に供えて祈願を籠めた。明治中期に売薬規則の発布に伴ない、この丸薬の施与を廃止して現在の張子の虎のみ病除けの御守りとして授与している。

 風俗通に「夫れ虎は陽物にして百獣の長なり、能く鬼類を食す。人、病を得れば皮を焼きて之を飲む……」とあり、又、本草綱目五一の獣の印には「鬼頭骨を杖にすれば悪夢におそわるるを辟く、戸上に置けば鬼を辟く、初生児の煎湯にそれを浴すれば悪鬼を辟け、瘡疔癇鬼症を去り、長大にして無病なり……」と記され、悪病除けに虎の威光を用いた所以を偲ぶことが出来る。

 製薬協・流対委流通秩序確立めざす

 製薬協・流通対策委員会は一〇月二三日午後、ホテル阪神で運営委員会と総会を開催した。流動的な環境にどう対処するかについて協議し"当面する諸情勢への対応について"次のような考え方を発表した。

 業界全体の発展のなかでの個々の企業の伸長という意識に立って相互の信頼を回復し、現事態を直視して供給の安定化、販売姿勢の正常化に積極的に対応することにより流通における適正な競争と協調の場をつくり上げる努力が今こそなされる時であることを強調。とくに販売姿勢の正常化については市場を混乱させ医薬品の信頼をそこなうがごとき行為は厳に避けるべきとしている。

 具体策としては、今後@流通の適正化に関する基準、A分科会活動、B本部、支部の連携ルール、C第二市場問題、を実務委員会で検討のうえとりまとめる方針。このほか日本卸連から要望の全日病対策、再評価制定後の返品対策の二件と、同委員会が作業を進めている流通過程における保存上の要注意品目一覧表の件はこんご卸連側と話し合いの上煮つめることとなった。

 高額療養で処方箋発行は「合算」

 厚生省はこのほど高額療養費制度の新設に伴う支給事務の取扱いについて各都道府県に通知した。それによれば医療機関が処方箋を交付した場合、処方箋にもとづく薬局での薬剤の支給は処方箋を交付した医療機関における療養の一環とみなして取扱われることになり、薬局の発行する領収証に基づいて行なわれることになった。これによって処方箋による薬剤費はその処方箋を発行した医療機関における医療費との合計が月額三万円を越える場合には高額療養費制度の適用を受けることになり、日本薬剤師会がかねて斉藤厚生大臣に要望していた懸案事項が解決したわけである。

 薬事法改正 日薬の答申原案
日本薬剤師会薬制調査委員会(森田茂夫委員長)はこのほど薬事法改正の大筋をまとめ、一一月中にも石館日薬会長へ答申することとなった。これまでにまとめた主な内容は次の諸点であるが、この作業は医薬分業を根底において進められたため答申を提出した後直ちに薬剤師法や医療法の検討に入る。

 @取締法といわれる現行法を社会福祉的な法律へと改める。
 A医薬品の取扱いは薬剤師に限るという原則を貫く。
 B薬局開設権は原則として薬剤師に限定する。
 C薬局開設時に医薬品製造業者、毒劇物取扱主任者の許可を同時に受けられるよう手続きを改正する。
 D管理薬剤師の責任と権限を明確にする。
 E医薬品を再分類して、要指示薬制度を撤廃する。
 F適配を堅持する。

 九州山口薬学大会 話し合う協調の場を! 根本的な心の導入も!

 卸流通部会
卸流通部会(平田穣太郎部会長)は九州山口薬学大会の二日、10月26日9時〜12時、大分県土地改良会館三階講堂で開催。まず地元、大分県医薬品卸業協会を代表して平田穣太郎会長の開会挨拶の後、九州卸連合会代表の大黒清太郎名誉会長は、皆様の努力によって本日のようなテーマで行うこととなったことは、経済的にも制度的にも数多くの問題をかえているその中で、卸が如何にあるべきかを研究し合うことは大変有意義なことであると挨拶。ついで、吉村益次九州卸連副会長の司会により本題に入り、左記内容で行なわれた。

 パネル・ディスカッション
1、講師の研究発表(6名)
テーマA=最近の状態に適合した卸の人事、教育、余暇指導、賃金、厚生福利等の運用について、如何に対処したら良いか。コーエー小倉薬品叶齧ア安部春鳥、九宏薬品渇c業部長古田暢。
テーマB=受注、配送、訪問を中心とした卸の内部作業の合理化問題と卸の"GSP"に対する対応のしかた。叶口屋マネージャー松下嘉雄、藤沢薬品且ミ長藤沢孝文。
テーマC=今後の人件費を始めとする諸経費の大幅なupに対して、販売面から如何にしてコストupを吸収していくか。その具体的な方策について椛蜊蕪海堂常務営業本部長大黒隆博、葛{崎温仙堂社長宮崎六夫。

 2、発表終了後参加者全員の質疑、討議。
卸薬業として当面している右の諸問題について、特に自由競争の場における卸相互間の協調が強く打ち出され、なお企業に精神面の基本的なものの導入の必要があるなどが強調され注目をひいた。発表、討議の要旨は次のとおり。

 ▽安部講師
私が業界に入って28年になるが昭和21年の初めての給料が七五〇円であった。今月、北九州周辺の苅田に日産自動車の進出が決定、筑豊の宮田にはトヨタ自動車の進出も決定されている。日産は目下来年度の高卒の募集をしているが初任給は七万七千九百円で、この20年間に一〇〇倍になった。生きがい(働きがい)がいわれて久しいが、テンポの早い今日の激変の中でヤミクモにあちらがやるから取りあげるという様なことはどうかと考えさせられる。

 豊かさの中に育って来た現在の若者の中から種々の意見が出てきて戸惑うことも多い。今、明年は企業の三大条件である人、物、金の三つとも不足だということを踏えて、これを克服するためには、私共は正しいもの、本当に働くもの、そして考える者という三条件を備えた人材が、はげましなぐさめの集団の中で働かないと、今日の時代を生き残り、生き抜き、生きがいとして感じ取ることは出来ないであろうと考える。

 当社では此度会社の「はげましプラン」にのせるために、従業員委員会が主催して課長以上の社員にインタビューを行い、また全社員のアンケートをとった。賃金とか、週休二日制などが出てくるものと考えていたが案外そうでもない。

 この結果より感ずることは、まず健康で明るい職場で自分に適した仕事をし、そのことでどえらい目的に挑戦し、それにふさわしい賃金を獲得し生活の安定を計り、色々仕事上の技術と同様に趣味を持ち乍ら、最終的には悔いのない人生をおくり度いと(特に30才前の社員)考えている様である。

 今後の対応策のあり方はどこがそうであるから我々もそうしなければではなくて、もっと現実を若者の先輩として追及する必要があるのではないだろうか。何を望んでいるかも探り当てそれにふさわしい対策を立ててゆくべきで、なぐさめはげましてゆくことを一番と考える。般若心経での、色即是空・空即是色という境地を掘り下げる必要があると思う。

 ▽古田講師
本テーマで、運用を如何にしたらよいかを特に考えて見たい。人手不足を考えた場合、質の低さをいう以前の問題もあり、他種産業と比較して賃金が高いとは考えられず、卸業として色々と困難性のあるなかで賃金を高くすればよいとか週休二日制とすればよいとかでは解決点とならない。若い社員が何か希望しているものに答えてゆくことが一番妥当な解決ではないかと考える。その何かとは@正しく働いていることを評価して欲しいA仕事に対する生きがいを見付けたいB伸び伸びやれるシステム或いは環境、を求めているかかる問題を解決してゆきそれに賃金などを社会的水準まで引上げてゆけばよいと考える。

 従来の階段的或いはピラミッド型の会社組織に対し人間関係に基づく組織をつくれば人間性回復、能力の向上が求められるという学者もいるが、ピラミッド型の現在の組織を一気に打破出来るかといえばこれ又問題である。今後は伸び伸び出来る組織を考えることが必要と思うし、より正しく評価して欲しいという希望にどうこれを給料にはねかえさせるかの問題が残ると考える。

 ▽松下講師
福岡市内では、外務員は朝出勤してから電話での受注と前日受注分を午前中に配達し、午後は午前中訪問時の受注を配達し、日に二回の訪問となり過剰サービスで、これはセールス一人の稼働は15〜20軒で、交通事情の複雑な現状ではこれすら困難となりつつある。

 それで得意先の規模、購入量を検討し一日一回又は隔日訪問に改善。訪問回数の減少する先に対しては幹部が訪問してその理由の認識を高めることにした。大量購入先に対しては受注品を即日配達か翌日配達かの区別注文を受けるよう研究中、内勤者の電話受注については良く教育した専門応対者をおきプロパー同行は不必要な時間を減らすために効率化を考え、支払不良先には回収専門の人員を投入することも考慮中。配送に運送会社を利用することは賃金格差があって中止。

 セールス一人当り販売高は四百万円。内外勤の比率は一対一。粗利は12%目標設定、一人当りの利益配分は二百万円。GSPについては、現在本社にのみ一定温保管庫があり、冷凍車も一台であるので、厚生省原案が出来たらその線にそいて完備する

 ▽藤沢講師
卸の三大経費(人件費、配送費、支払利息)は益々悪化する条件が増大しつつある。配送では、人の確保の問題、人件費高騰、配送費高騰で頭を痛めている。対処の方法として、訪問回数を減らす、電話受注の活用、配送の合理化が必要。この問題では卸間での協調が望まれる。

 内部作業では特に値引伝票処理が問題で、メーカーと共に合理化が必要。GSPについては、温度調節、換気等の完備の時期が来た場合、その分の保管料をメーカーに負担してもらうか、末端に還元する必要があると考える。

 ▽大黒講師
総てのものがインフレーションの中で値上りしてゆく現状の儘では毎年20%のコストアップは不可避である我々の企業を圧迫し、脱皮刷新のとき来るの感を深くする。経営指標(田辺経営)では、売上高経常利益率4%売上高粗利益率15%、一人当り経常利益(年)50万円、一人当り粗利益(月)18万円、となっているが我々卸では一人当り粗利益は月25万円は必要である。

 原則に立って考えると、入りを量り、出ずるを為さず、関西商法の松下幸之助氏に代表される真髄を見つめてみる必要があるのではなかろうか。@自力本願主義A能力主義B高回転主義C販売重点主義Dバランス発展主義。

 この様な経営的基本に立って具体策に入るべきと考える。@適正マージン、適正売価の設定と保持A流通コストの低減…何れも業界としてのまとまりが不可欠。B営業員一人当り販売利益効率の向上…販売の仕組みの変革と営業員の質的レベルアップが必要。C卸独自のマーケティン、マーチャンダイジングによる取扱品マージンの再配分と自社品、専売品の開発D適正利潤、成長分野への新規進出…隣接関連が望ましい、中途半端ではダメ。

 経営近代化が唱えられて久しいが、覇道の文化でない人を感化し、人に徳を慕わせる仁義道徳の文化の道を回復し度い、この反省に立って努めてゆき度いという感想を述べて、ここに失われた王道の復権のために和魂洋才士魂商才のすすめを披露する。

 ▽宮崎講師
木村コンサルタントの資料で金融比率が九州は高いが実際に回収が遅く金融比は高い。附加価値をどうするか、売上げを高くマージンを如何に高くするか、経費を如何に少くするか、の三点を考えて見ると何れもむずかしい問題ばかりである。

 私の所では薬の外にビール、酒を販売しているが医薬品(72%の占有率)が一番附加価値が高い。大黒講師の関連事業の取り上げは良い発想と思う。商品別の利益管理をし、これを末端に通してゆく努力が案外大きなマージン獲得につながる。4〜5人、少ない所で三人のセールスグループをつくり、それに女子一名を配属しセールスの流れ作業を分担させたが割り合い好調である。

 徐々に改革をしてゆく時代ではなく、現在の仕組みを白紙にかえして、必要なコストから必要な附加価値を計算し、これを如何にして具体的に生み出していくかという正しい仕組みを何んとか開発していかないと現在のような物凄いコストプッシュには堪え切れないと思う。メーカーは増収減益に堪え切る余猶があるが卸では増収であっても減益であっては赤字となるので生はんかな改革ではいかないと考える。

 ▽質疑検討
1、安部、古田講師に対し、来年の初任給は……
北九州で高卒(男)52千円〜53千円。福岡高卒(女)51千円〜52千円。大卒は何れも63千円。コーエー小倉薬品では、北九州中央部を離れて日豊沿線で女子、北九州筑豊両地区で男子を何れも高卒を募集したが、前途の如く日産とトヨタ自動車の進出のため現在一名の応募もない状態。

 2、大黒講師に対し、話し合いの纏まりが仲々出来にくいが方法如何……
競争原理の弱いテーマから入るべき。配送問題の如きは可能と考える。

 3、講師の指定はなくて、回収の改善策は……
松下講師=粘りが一番、値切られても次の約束を獲得すること、先方に負い目を与える。

 ▽最後に、司会の吉村益次氏は次の如く述べて本会の結びとした。
本日各講師の述べられたことは皆様も全く同意見と思う。日本卸でアンケートした結果、荒利13〜15%であるが実際にこれを達成しているところは全くない。リベート、販促費の増加は望めなく売買差益(一次粗利)が焦点となる。

 相互協調は是非必要であるが、すべきことと本来すべきことに無理があることを考えて行う必要がある。
内部管理の合理化問題に積極的に取組むことについては、宮崎講師より白紙にかえって新しい仕組みを考えるべきとの意見があって我々の今後の研究点の一つであろう。回収についての松下講師の指向は私も同意見で、卸の自守的と努力とセールス各々の自覚が根本である。

 本日は、この様なパネルデスカッションは初めてであったが、各々の考えている方面はかくあるとよく認識出来たのではないかと考える。その意味で卸間全体として話し合うこと協調が大切で、またその根本には卸自体の自覚が必要と思う。日本の場合は精神的なものが見直されてくることは非常に良いことで根本と考える、益々理解と協調をして良くなるための切磋琢磨が必要と思う。

 九州山口薬学大会 学薬分科会に出席して 福岡市学薬理事 村田正利

 九州山口薬学大会の学校薬剤師部会は、大会第一日午前九時から県医師会館で上木部会長のもとに約一八〇名が参加して開かれ、研究発表一〇題が各地の学校薬剤師によって発表された。私は坪根先生と共にこの分科会に出席したが分科会が多過ぎるせいか予想より盛り上りに一寸物足りない感がした。内容は貴重な報告が多かったがその割に持ち時間(約10分)不足のため充分な質疑応答もできず残念であった。

 しかし、本年六月鹿児島市内の小学校の父兄から提起された「給食用紙ナプキンの有毒性及び殺菌効果」について地方新聞が取りあげた「疑わしきは使用せず」の表題により、全く科学を無視した報道に対し、学校薬剤師が敢然と科学的に有効なことを立証し、問題の早期解決に努力したこと、また熊本県学薬の長期にわたる僻地学校環境衛生調査報告中、給食関係の設備良好な場所での大腸菌郡検出に陽性を示した事例などから、如何に管理指導者が重要であるかのデーター等、学薬の今後の指導の参考になるものが多かった。

 また沖縄県の学校薬剤師設置状況及び学校プールの設置状況はきわめて低く、全国平均七五%に対し七・四%であることが報告され将来、海洋汚染、各種公害に対する処置として環境衛生保全に必要な人的、物的な補充整備が必要とされることなどと合せ、政治的な代弁者の早期選出が痛感された。

 福岡県森下後援会 本格的活動に入る

 森下後援会福岡支部(支部長四島久)は一一月二日県薬会館で、午後一時から役員会と班長会を開いていよいよ本格的活動を開始することになったが、会議の主な内容は次のとおり。

 ▼中央情勢報告
@10月10日自民党橋本幹事長から石館会長に要請があり、明年の参院選において全国区30名、地方区50名(前回、全国区21名地方区48名当選)の当選を期している。11月中旬までにお願いする候補者に全力をつくして協力願いたい。

 A10月16日団体代表協議の内容
○自民党(小沢総務局長)‐森下一本にしぼり全力を傾注のこと
○日薬(石館会長他)‐11月末までに後援会結成
○全日本薬種商協会(田中副会長)‐埼玉、群馬を除き後援会結成
○日本製薬団体連合会(渡辺副会長他)‐本年中に後援会結成
○日本卸業連合会(松谷副会長他)‐本年中に後援会結成
申合せ事項としては@今後定期的に四団体の連絡協議会を開くA連絡協議会の本部長は石館日薬会長を選任B地方における連絡協議会の推進をはかる

 ▼協議事項
@薬業界関係後援会の主導権は薬剤師会である
A福岡県は重点地区になっており、得票は少くとも三万以上必要
B後援会費は会員一人五〇〇円宛拠出することとし入会申込書に添え本月末までに提出(各支部では地区の実状に合せ薬種商製薬協会等にも働きかける)
C後援会入会者名簿の本部用並に他県知人紹介用紙は本年中に提出

九州薬事新報 昭和48年(1973) 10月25日号

 再販形態で話合の余地 再評価近く一次公表へ 松下薬務局長談

 松下薬務局長は五日、再評価、再販、局方品の品不足対策、GMP問題などについて大要次の通り語った

 ▽再評価
近く常任部会を開いて第一次公表をしたい。有用性なしというものは製造承認取り消しとなる。それ以前から再評価申請をしていないものは、自主的に整理するよう指導している。現在行なっているのは医療用の単味だが、配合剤の場合は相乗効果もあり、単味で有用性なしとしても取り消すかどうかはケースバイケースである。現在メーカーに補足資料を求めているもの資料が出て調査会で検討しているものはビタミンB1鎮痛剤のアスピリン、サルチル酸、強心剤のジギタリスなどである。

 ▽再販
告示が出たが、確定か値幅かでは公取委と話し合いの余地は残っている。厚生省は確定再販を主張しており、安売り防止も医薬品マージン六%は少ないと考える。

 ▽局方品の品不足対策
ブドウ糖、リンゲル等はメーカーに増産を要請し都道府県にも斡旋を指示している。生産は減っていないが需要増があり、その原因は老人医療無料化などの影響があると考えられる。薬価改訂は急ぐつもりで昨年八月調査価格ではなく実勢価を反映させたい。

 ▽GMP
日薬連でまとめた案を検討し、プロジェクトチーム案を修正して今月末には厚生省原案をまとめ日薬連へ示したい。GMPの開銀融資は製薬業界が利潤をあげているということで大蔵省筋で難色を示しているが、GMPの投資でも売上げの五%はかかり、他に研究投資もあるので、計数を示して説得し、なんとか融資の道を開きたい。

 福岡三区衆院補欠選に 古賀治氏出馬 好機到来と19日急拠役員会

 楢橋渡代議士の急死で欠員二名となった衆院福岡三区(定員五)は、急拠補欠選が行なわれることとなり、早くも師走の短期戦≠ノ突入した。

 18日開いた自民党県連大牟田、久留米支部の役員会では候補調整に入り、荒木萬寿夫氏(8月24日死亡)の後継に県議の古賀治先生を公認推薦することを決定党県連は19日県連総務会にかけて、党本部の公認を申請することとなった。

 古賀治先生の衆議院出馬については、薬業界としては二年後の衆院選にそなえすでに後援会結成を行なっていたが、急拠決戦に挑むこととなったわけである。古賀治県後援会では、19日役員会を開催して具体策を検討した。来る28日の県薬支部連絡協議会までに具体的に計画を練り、同日の会にて協議のうえ直ちに実行に移すこととなった。我々薬業界の発展、薬剤師の業権獲得に働いてもらうために、このたびこそまたとない好機であるので、業界あげて古賀治先生支援の声が大いに高まっている。

 ▽政治歴
昭和46年4月大牟田市議当選、昭和30年4月福岡県議に当選以来5期連続当選農林常任委員、文教副委員長、厚生常任委員長などを歴任。

 私の考え方 森下泰

 (一)福祉社会と医療薬事制度
@社会の方向は成長から福祉へと転換し産業界に於ても情緒安定に寄与するものの時代が到来しました。
医療薬事はまさにこの要請に大きく且つすみやかに応じる使命を持つと思われます。
A議会制民主主義の下に於いては国民の一人一人が一票を持ち何人も政治とは無縁であり得ません。重要な使命をになう薬学薬事、薬剤師職能がいかに大きな票の力を持っても過ぎるということは無い筈であります。

 (二)具体的諸政策
@医療薬事の現状は、ツギハギ行政とその破綻の到来のように思われます。抜本改正が今こそ必要でありましょう。
然し、それは、いわゆる国営化ではなく、あくまで自由社会の上に築かれるのでなければなりません。
A「医薬分業」は高度福祉社会の基本的課題であり現在の諸問題はすべてこの課題が達成されていないところに発するものと思われます。国民医療の適正化のためには医薬分業制度の実現、薬剤師機能の確立が絶対に必要であります。
B「保険制度」に於て保険と医療保障の分別が必ずしも明確ではありません区分と重症優先、機会均等の考え方の導入、国の補助金増額、患者負担の合理化が早急に実現されなければなりません。
C「適配条例」については法体系の現実を是としながらその立法の趣旨は、単なる経済的要因ではなく医薬分業に伴なう医療供給形態の一環とすべきものと思われます。
D「再販制度」についても同様に国民生活にとって極めて重要、且つ慎重を要する医薬品の本質から評価されるべきであり、更に、販売の立場を重視した改善によって消費者(国民)の一層の理解をかち得るでありましょう。
E「勤務薬剤師」の評価に付いては早急に大幅の改善が必要であります。医療機関に於ける勤務薬剤師の職能は、保険医師と同等であるべく、医師の技術料と調剤料は別個に且つ均等の評価を受けて当然であると思われます。
F「軽医療」、薬事法で薬剤師の医薬品販売を単に「販売」と規定する考え方は、薬剤師職能を真向から否定するものであります。
セルフ・メディケィションと薬局の関係に於て薬剤師の職能と立場はこの際すみやかに明確化成文化されねばなりません。
G「要指示薬」、前項と同様に薬剤師の医薬品管理権を尊重する立場から早速の改正を必要と致します。
高度文化社会における大衆の便宜のためからも戦後とりあえず制定されたこの制度は改善されなければなりません。
H「学校教育」、現在の状況に於て薬剤師の育成に適切であるか否か甚だ疑しいものがあります。
国公、私立間の問題、修業年限、カリキュラムにおいて早急再検討是正されるべきものと考えます

 福岡県薬剤師業経済研究特別委 一次具体案成る

 福岡県薬剤師会(四島久会長)が毎月例会を開いて研究を続けてきた「薬剤師業経済研究特別委員会」は十一月例会を十二日県薬会館で開催した。

 当日は去る六日本委員会にさきだち開かれた小売側小委員会(委員=鶴田、工藤、斉田、鶴原、安部、大坪、佐治、山本、西元寺の諸氏)において分割用医薬品の適品第一次選定について検討した結果、選定した七品目の医薬品(感冒薬・胃腸薬・鎮痛薬)について報告、了承した。次に、取扱い方法について検討した結果、薬剤師会としては、来る二十八日開会の理事会、支部連絡協議会で報告、会員に周知、活用をはかることとなった。なお次回開催日を十二月十二日と決定、再販問題については次回検討することとなった。

 B薬物=アスピリン、アミノピリン、ヨード。
C細菌、寄生虫=肺炎球菌、連鎖状球菌、十二指腸虫、蛔虫。
(二)非アレルギー性
@物理的刺戟=寒冷、温熱、天候及び既設の変化。
A化学的刺戟=ガソリン、煙草。
B精神神経刺戟=泣き度いのを我慢する様な場合、例えば姑にいびられた嫁。
C内分泌自律神経=月経前、妊娠中。

 九州漢方研究会 創立15周年記念講演会 11月25日開催

 九州漢方研究会(塚本赳夫会長)は創立以来、諸先生の指導と会員の熱意に支えられ、正統漢方医学の普及に専念してきたが、本年九月をもって満拾五周年を迎えたのでこれを記念し、左記により特別講演会を開催する。
日時…48年11月25日10時
場所…九大薬学部講堂
演題…漢薬大黄について=武田薬品工業叶サ薬研究所長、後藤実薬博。血の道症と加味逍遥散の周辺=山田光胤医博。柴胡桂枝湯のこと=坂口医博。
▽会費=会員…千円、一般二千円、学生無料
なお、閉会後九大同窓会館(医学部構内)で記念パーティーを開催。会費二千円希望申込先は久保川薬局
電話八四一‐〇〇一一番
「講師紹介」
山田光胤…大正三年東京都生れ、陸士から東京医科歯科大学医学部卒、山田医院を自営の他、中将湯診療所で漢方治療を担当、医博日本東宝医学会副理事長、「漢方処方応用の実際」、「漢方療法入門」など著書多数あり。
坂口弘氏…大正十年東京都生れ、旧制八高から京大医学部卒、京都聖光園細野診療所々長、医博。日本東洋医学会理事長、「ホメオパシー療法」、「漢方の話」などの著書がある。

 福岡地区 薬業協議会

 福岡地区薬業協議会は、9日、11月例会を開き、去る10月25日福岡市において行われた公取の公聴会について大隈小売側委員から詳細な報告のあと「反対意見12名、賛成意見10名であったが、賛成の人もこの法が成立しても公正な取締りが可能か、三ヶ月平均仕入等の把握ができるか等、運用に危惧を抱く意見が多かった」と述べ、メーカー側傍聴者からは「薬の特殊性、業界の特殊事情をもっと切実に訴えて欲しかった」との発言もあった。

 次に今後の三者懇談会の在り方についても種々意見が出たが「内部では三者が業界のために最も良い方向を見付けることを目的とし外部に対しては一丸となり強く当ることが必要」との結論であった。
また、第二市場問題については、大分大会の経済部会で、ジックリ時間をかけて排除の方向で対処するとの結論であったが、直販メーカーの自社保身のための第二市場類似行為については、乱売につながるおそれが多分にあるので三者協力して監視し、対処しなければならないとの意見の一致を見た。
なお、引続き開かれた十日会では、大型店、グル−プ等の世話人代表には、先月逝去した宗氏に代り大賀薬局の牛島氏が決定した。

 交通問題と医療問題 長崎 築城 巌 市立長崎病院薬局長

 ご存じのように東京など大都市では大気汚染の元兇として自動車の排気ガスが先ずあげられる。そうでなくても交通の混雑ははなはだしいものがあり、最も便利であるべき自動車がまことに不便なものになってきている。これを解消するためには都市になるだけ自家用車を入れないで、電車、バスその他の大量輸送手段を用うべきである、とは識者の一致するところである。どのようにしてこのようにもって行くかその方法はいろいろ論議されているがその一つに都市の電車・バスを無料にする、という奇抜な意見がある。誰でもタダより安いものはない、と電車バスを利用するであろう自然、お金が沢山かかる自家用車は減少するだろう、というのがその根拠である。それを補償する地方自治体や国の財政的負担の問題を別にすると、確かに有効な手段の一つで外国でも例はあるそうである。

 しかし私は、この案に対しいくつかの疑問点をもっている。@としてタダなら歩くのをやめて一駅でも二駅でも電車、バスに乗ろうと近距離の人でも乗るため、車ばかりで足が弱くなっている現代人はますます足腰が弱くなり健康的によくないことになろう。まして子供がこのようであると決してよくないであろう。A老人など暇な人はたいした用がなくてもあちこち出歩き車で暇つぶしをすると、@の問題も合わせて電車、バスの乗客は二倍三倍にふえ満員になり、能率は悪くなり、速度も遅くなり、また乗務員はひどく疲労するであろう。Bその結果、それを嫌って再びタクシーなり自家用車の利用者は増え、交通混雑は静まらないであろう。

 何のためにこのようなことを書いたのかと言うと、これと似たようなことが医療問題でも起りつつあるからである。@老人の無料化が今後も拡大する可能性はある。ちょっとしたけがや鼻かぜぐらいでも簡単に病院に行き、我慢して動かすうちに治るような神経痛でも病院にかかり、自分の体は自分で守るというセルフメディケーションを忘れ、自分自身の健康についての配慮や知識を乏しくする。Aとして最近の病院の待合室は老人ホームのようになり、老人や同病者どうしがお互いに挨拶したり歓談したりして社交室のようになってきている。それと反対に医師・看護婦・薬剤師など病院の職員は、患者の増加に追いまくられてへとへとに疲れている現状であるB武見医師会長は過般"自由診療"という新しい診療体制の確立を意図し、全国医師会員に通知したと言うそれは保険による診療時間のほかに特別診療(自由診療)の時間をもうけるもので、現在の中医協の行き詰まりに業をにやしたためであろうが、先の電車、バスのように、マス化、非能率化、或は現在の乱診乱療を嫌った一部患者は、たとえお金が少々かかったとしても丁寧な診療を求めて歓迎するかも知れない。

 要するに私が言いたいことは、「タダ」ということはいろんな弊害を伴うものであり、老人医療に関しても、完全無料という方向よりも、年金の増額という方法で福祉が実現するほうがよいと思う。

 薬価改正 一月実施は無理
日本医師会の武見会長は八日付で、斉藤厚相の公開質問状に対する回答に返書を送ったが、この中で「現在の中医協をそのまま再開しても全く無意味と考える」と中医協再開を拒否する姿勢を明らかにした。
このため厚生省当局では@現在の情勢で中医協を再開しても診療側の出席を得られまいA薬価大改正は従来の方式をとるとしても、告示から実施まで約一ヵ月間置かなければならず、一月一日実施は難かしくなったと判断。薬価大改正、診療報酬の改定は早くて二月この分では三〜四月頃になるだろうとみている。

 インフルエンザ 九州山口で流行続く

 インフルエンザの流行はますます増加している。厚生省が一三日まとめたところによると、全国で患者数は一九万人を越えた。患者が多いのは福岡県七万四千九百九十二人、山口県二万四千四百三十一人、愛媛一万四千五百四十五人、熊本一万七百五十四人、大分八千四百三十四人などで九州山口を中心とした西日本で特に目立っている。

 福岡県薬支部連絡協議会 森下後援会合同会議

 福岡県薬剤師会(四島久会長)は、第二一八回理事会、第一八四回支部連絡協議会と連盟後援会役員、支部長(班長)合同会議を左記により開催する。
日時…昭和48年11月28日(木)13時30分
場所…県薬会館
議題
@中央情勢について
A薬学講習会について
B調剤業務研修について
C後援会活動について
D薬業祝賀忘年会について

 ▽九州山口三者流通懇談会
日時…昭和48年11月30日
場所…福岡県薬剤師会館
集合時間
・商組委員…10時
・乳業4社…11時
・カゼ薬4社…12時30分
・卸委員(商組、卸二者懇談)…13時30分
・メーカー委員(三者懇談)…14時

 ▽福岡県薬剤師会
調剤技術委員会
日時…昭和48年11月22日(木)14時
場所…九大病院薬剤部会議室
議題
@第5回薬剤師調剤業務研修会打合せ
A九州山口薬学会報告並びに部長協議会の試案処理の件
B九州山口ブロック会長会議報告
C特別講演会開催の件(48年2月予定)

 福岡市薬理事、部会長会

 福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)は第29回理事会、第25回部会長会の合同会議を左記により開催する。
日時…昭和48年11月26日(月)14時
場所県薬会館
議件
@中央情勢について
A森下泰後援会について
B社会保険業務について
イ)請求業務について
ロ)歯科薬品備蓄の件

 照度全国一斉調査 本年度日学薬事業

 本年度の日本学校薬剤師会の全国統一事業は、学校環境衛生調査のうち照度の一斉調査(昨年は学校飲料水の調査)を行うこととなった。調査対象は小・中・全日制高・定時性高・盲・聾・養護・幼稚園等である。福岡県学校薬剤師会は11月6日理事支部長会を開いて調査要領等の細部につき説明を行い、12月初旬には県下の調査報告書をまとめる作業を進めている。