通 史 昭和48年(1973) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和48年(1973) 10月5日号

 第40回 九州山口薬学大会 各部会の議案・研究発表と特別講演

 ▼薬剤部長協議会

 1、病院薬局における品質管理のあり方を検討する件=九州大学病院堀岡正義
 2、DI用パンチカードの利用状況を調査し、メーカーに改訂版発行を要望する件=飯塚病院清藤英一
 3、入手困難な局方品等を調査し対策を検討の件=長崎大学病院清水龍夫
 4、日本薬局方の改正に際し要望する件=大分県立病院吉村淳
 5、第41回九州山口薬学大会薬剤部長協議会宿題委嘱の件=協議会委員長堀岡正義

 ▽特別講演…錠剤・カプセル剤の識別=東京大学医学部附属病院副薬剤部長中川冨士雄

 ▼薬学薬剤部会

 1、薬剤業務分析(第五報)=大分県立病院今井春二ほか
 2、薬剤業務分析(第六報)=大分県立病院吉村淳ほか10名
 3、大分県内病院診療所における錠剤カプセル剤の使用状況調査について=大分県病院薬剤師会共同調査班責任者国立別府病院岸川節夫
 4、病院で用いられる医薬品の品目数(特定薬品)について=宮崎県立宮崎病院本田幸雄・清藤成二・古賀稔
 5、歯科用ホルマリン、クレゾール製剤中のクレゾール定量法=九州歯科大学歯科薬物学教室柳元久美子・村上雄次・黒木賀代子・前山博子・乙須優子
 6、薬物投与による尿検査成績の変動について(第一報)=熊本県病薬・熊本地区抄読会研究班代表田川洋吉
 7、臨床薬学的研究(第六報)抗生物質と併用薬剤の相互作用について=熊本大学病院佐竹健三・財津直寿
 8、山口県病薬協同研究班による注射液の配合変化研究(第二報)ビタミンB1誘導体注射液について=山口県病院薬剤師会緒方哲也
 9、トラネキサム酸注射液の配合変化=山口大学病院神代昭・山本久子・阪中加津子・藤本千代子・小川豊子・米川千代・弘永千香子
 10、注射用セファピリンナトリウムの配合試験=飯塚病院清藤英一
 11、シロップ用アンピシリンの配合試験=飯塚病院清藤英一
 12、シロップ用ジクロキサンナトリウムの配合試験=飯塚病院清藤英一
 13、七局・八局方による固形製剤の崩壊性の検討=九州大学温研附属病院岩尾富成・仙頭一郎・樋口実・蛯谷治子・古川まゆみ
 14、固形製剤の溶出試験(第一報)=九州大学温研附属病院岩尾富成・仙頭一郎・樋口実・蛯谷治子・古川まゆみ
 15、医薬品の溶出試験(その一)
 16、医薬品の溶出試験(その二)=熊本大学病院佐竹健三・財津直寿・渋谷達幸・熊本医薬品検査センター前野繁清・高浜和代・中村喜美子
 17、小西式自動分割分包機(KC七二七‐K一〇型)の使用経験について=九州大学病院堀岡正義・中尾泰史・木村修
 18、調剤用混合機の試作について=九州大学病院堀岡正義・中尾泰史・佐藤健太郎

 ▽特別講演…DI活動のあゆみと現状=日本医薬情報センター理事長久保文苗

 ▼公衆衛生部会

 1、TOC‐COD‐DODの相関‐T特定焼酎醸造ならびにクエン酸工場排水について=鹿児島県公害衛生研究所奥園和光・荒牧繁一郎・郡山宗晏
 2、カドミウムの鶏卵およびにわとり各臓器での蓄積について=熊本県衛生公害研究所山本誠司
 3、熊本県近海における魚介類腸炎ビブリオ調査研究について=熊本県宇土保健所吉川正徳
 4、南部水道のPCP汚染調査=沖縄県公害研究所大城清昌
 5、公害関係調査における発光分光光度法の応用について=長崎県衛生研究所伴与一郎・赤枝宏・八並誠
 6、フタル酸エステル類検出法の比較検討=長崎県衛生研究所馬場強三・栗原繁・吉田一美
 7、食品添加物のソルビン酸定量法の検討について=長崎県衛生研究所桑野紘一・堀川万里子・吉田一美
 8、カルバメート系農薬(その一)薄層クロマトグラフィーによる分析=佐賀県衛生研究所井元孝・山口博之・土井鈴子
 9、カルバメート系農薬(その二)ガスクロマトグラフィーによる定量=佐賀県衛生研究所井元孝・山口博之・土井鈴子

 ▼学校薬剤師部会

 1、菊池郡市学校水質試験について第三報(フッ素含有量調査)=菊池郡市学校薬剤師会代表藤本磯男
 2、給食用消毒剤の安全性について=鹿児島市学校薬剤師会長篤文
 3、(続)僻地学校環境衛生長について=熊本県学校薬剤師会一門邦彦
 4、手洗の効果に関する研究=北九州市学校薬剤師会原口良介
 5、医療制度の改革と薬剤師=佐世保市学校薬剤師会坂井透
 6、環境衛生と学校教育=島原市学校薬剤師会松岡正久
 7、学校薬剤師の設置=沖縄県石田中学校薬剤師宮里節子
 8、延岡市における河川水質環境について=宮崎県延岡衛生検査センター児玉治兵衛
 9、学校環境衛生の整備改善の薬剤師の責務=大分県学校薬剤師会脇義隆
 10、防音教育の空気環境第二報=山口県学校薬剤師会石基博美

 ▼製薬部会

 1、市販ダイオウ、ソウジュツの品質試験について=福岡県製薬工業協会附属薬業試験所村上雄次・小田切玲子・片峯百合子
 2、Contnt uniformityと品質保証=武田薬品光工場小野真市・木村智文

 ▽特別講演…(演題未定)

 ▼薬務部会

 1、薬事法施行上の諸問題について
 2、毒物及び劇物取締法施行上の諸問題について
 3、薬物乱用対策について
 4、献血推進事業の諸問題について

 ▼薬業経済部会会議(商組)

 1、小売薬業における当面する諸問題の対策
 2、第二市場の問題(現金問屋等)
 3、小売?卸?メーカー
 4、ミルク問題
 5、今後の小売経済の指向について
 6、薬業界の動向、指導方向
 4、その他

 ▽特別講師 全国医薬品小売商業組合連合会理事長荒川慶治郎

 ▼開局保険部会

 1、消費者と薬局での医薬品の問題点=佐世保市武田吉之亮
 2、世界の医療制度=鹿児島市坂元昭夫
 3、薬学部の分離=佐世保市坂井透
 4、福岡県下における薬局経営の実態=久留米市鶴田喜代次
 5、保険薬局の調剤室設備=福岡市中野佐
 6、ヒフ病と取組んで20年間の反省=別府市薬剤師会木元清之
 7、医療保険制度、社会保険制度の改革と保険薬剤師保険薬局について=大牟田市中村里実
 8、医療制度の改革と薬剤師=九州地方医務局 相馬徹
 9、日南市における歯科協定処方について=宮崎市平部典俊

 ▽特別講演(演題未定)日本薬剤師会常務理事望月正作

 ▼卸流通部会

 パネル、ディスカッション
1、講師の研究発表(6名)
(テーマA)
最近の状勢に適合した卸の人事、教育、余暇指導、賃金、厚生福利等の運用について、如何に対処したら良いか。
(テーマB)
受注、配送、訪問を中心とした卸の内部作業の合理化問題と卸のGSPに対する対処のしかた。
(テーマC)
今後の人件費を始めとする諸経費の大幅なアップに対して、販売面から如何にしてコストアップを吸収してゆくか。その具体的な方策について。
2、発表終了後参加者全員の質疑、討議。

 ▼女子薬剤師部会

 1、交通公害調査=鹿児島市女子薬剤師会山田恭子
 2、医療制度の改革と薬剤師=福岡県女子薬剤師会宮崎綾子
 3、?最近の中小病院薬局の業務活動=下関市長府病院松村愛子
 4合性洗剤によるアンケート及び検査結果=宮崎県女子薬剤師会築地洋子
 5、近頃使用される防疫用殺虫剤について=佐賀県女子薬剤師会池田綾子
 6、女子薬会加入薬局の皮膚病薬の動きとODT療法の効果について=大分県女子薬剤師会江藤琉美子

 ▽特別講演…皮膚疾患の温泉療法について=九州大学温研所長中溝慶生

 福岡県薬剤師会 理事・支部長合同会議

 福岡県薬剤師会(会長四島久)は理事・支部長合同会議を二〇日県薬会館で、理事一六、支部長一六名出席して開会した。当日は▽中央情勢報告▽九州山口薬学大会▽薬学講習会▽調剤業務研修実施予定▽薬と健康の週間▽社会保険業務▽組織拡充方策▽DI活動▽県公衆衛生協会加入状況等について協議した。主な報告、決定事項は次のとおり。

 ▽…再販縮小問題は業界全体が反対の態勢をとっており、縮小された後の対策も検討されている。
 ▽…薬価基準は近く改訂される予定であるが、銘柄別収載は困難であろう。
 ▽…薬学講習会への参加について全会員に往復はがきで回答を求めた結果、三分の二が未回答と報告され、未回答者に対する回答促進と参加督励が要望された。
 ▽…来年二月実施予定の調剤業務研修会については、研修病院を指定制とし、参加費は一人二千円とする。
 ▽…薬と健康の週間行事の県下主要地区交通公害調査は学薬で検討中である。薬事功労者の推せんは支部より推せんの一四名を県に推せんしたことが報告され、中央で作成のリーフレットは五千枚注文している。
 ▽…福岡支部で作成の歯科協定処方は参考に。各支部も速かに協定するよう要望
 ▽…一〇月一日から身体障害者及びねたきり老人の医療費が無料化された(一部負担に相当するものを市町村が負担すること)また健保法改正により一〇月一日から社会保険家族の給付率五割が七割に改正された。
 ▽…八月行われた保険薬局指導結果は特に大きな指摘はなかったが、保険薬剤師不在の場合の指摘(不在の場合は待って貰うか、後で届ける)と歯科医の処方せん料請求もれ(医師側の問題)

 森下泰後援会 古賀治後援会結成

 九月二十日福岡県薬剤師会理事・支部連絡協議会に引続き、森下泰薬剤師後援会福岡県支部を結成するための結成総会が開かれ、出席全員(前田戸畑支部長を除き)の賛成を得て結成することに決定、規約も決め役員については、県連盟役員との関連もあるとして四島県薬剤師連盟会長に一任会計、その他具体的運営事項は新役員に一任することとなった。その後後援会規約に基き各支部長が左記のとおり決定した。

 福岡支部‐斉田和夫
北九州支部‐安部寿
筑後支部‐鶴田喜代次
筑豊支部‐佐治八郎
なお、次期衆議院選に福岡三区から立候補予定の古賀治(現福岡県議会議員)氏の後援会も当日出席者の全員賛成で結成された。

 福岡県下でインフルエンザ流行

 福岡県衛生部に九月二二日入った連絡では、久留米市鳥飼小三年三組(三七人)では三〇人がインフルエンザにかかり同日学級閉鎖福岡市元岡中でもインフルエンザによる集団カゼが発生、一四六人が罹患、一七人が欠席、とくに一年三組がひどいので学級閉鎖。宗像郡宗像町河東小三年二組(三〇人)で一三人が欠席学級閉鎖。糸島郡前原町前原中では一年生四〇九人中二七〇人が罹患し、一九日に二九人が欠席したが一応峠を越した。又、大川市田口小(七七〇人)でも一八〜一九日がピークで百人が欠席したため休校したが、二二日現在九〇名とやや下火になりつつある。

 県衛生部では期節はずれの発生に驚き菌型を検査中本年五、六月ごろ、北九州や長崎などでインフルエンザによるカゼが流行しているので、それが再びはやり出した疑いもあるとして警戒を強めている。
これまでの異状なインフルエンザの流行により、特に九州北部各県及び山口県は今冬カゼの流行が懸念される。

 環境庁 病院などの水銀流出を規制

 環境庁は、病院、試験研究機関等の水質汚濁源未規制業種の実態調査を行っていたが、このほどその結果をまとめ、外務省、法務省を除く全省庁との折衝をはじめた。

 この調査は、病院四九箇所、試験研究機関五二箇所について平均三回の検査が行なわれた。病院では一五一検体中PHの一般基準に適合しないものが一二例(八%)、大腸菌群数は一三四検体中七六例(五七%)Hgは一二九検体中二例(五%)となっている。試験研究機関ではPHの一般基準に適合しないものが一四九検体中二八例(一九%)で、カドミウムは一例もみられず、鉛は一四七検体中一例(一%)、Hgが一四七検体中六例(四%)という数値を示している。

 他の試験結果は大したことではないが水銀が病院、試験研究機関で検出されたことは問題で、この実態は放置できないとして、四十八年度までに病院、試験研究所の排水設備の設置、薬品の直接排水の規制等を行う方向にある。

 漢方の手ほどき(序の七)長崎大学薬学部講師 山口広次

 ▼誤治の治法

 吾々は神様ではないので時たま間違ったことをせぬとは絶対に言い切れぬ。大陰病で裏虚の者に間違って大黄や芒硝の入った瀉剤を与えると腹満(虚満)し心下痞硬す。かかる場合は附子、干姜、人参の入った附子人参湯など使用して腹中を温めてやるとよい。浮腫を来たしたら、五苓散で利尿を考えると可。
眩暈の場合は苓桂求甘湯を使用する。悪心、嘔吐、食欲不振になったら小柴胡湯を用いればよい。新薬の副作用で以上の様な症状になった場合も小柴胡湯を使用すべきだ。衰弱を来たしたら補中益気湯、脱汗を来たしたら桂枝加附子湯が目標となる。

 ▼治療剤

 1、補剤…体力を補う薬で、人参、黄耆、山薬、大棗、等の入った人参湯(温補剤)や竹葉石膏湯(寒補剤)を用いる。
 2、瀉剤・・・大黄、巴豆、芒硝を用いて攻撃してやる。この対象となるのは陽実証の体質である。大柴胡湯、桃核承気湯、大黄牡丹湯が代表処方である。
 3、潤剤…体液の枯燥したのを目標にする。知母、当帰芍薬、杏仁の入った処方を選べばよい。桂枝加芍薬知母湯や桂枝加厚朴杏仁湯がよい。
 4、燥剤…湿を乾かすもので生薬として黄連、黄苓、黄柏、麻黄があり、黄連湯、黄苓湯、麻黄湯、黄連解毒湯がある。
 5、熱剤…寒冷を治す。陰虚証の病人を目標にする。附子、干姜、生姜、細辛があり、処方としては真武湯、麻黄附子細辛湯。
 6、寒剤…熱を治す。石膏、柴胡、半夏があり、麻杏甘石湯や大柴胡等が代表する処方である。

 ▼漢方薬の剤型

 湯剤即ち煎じ薬や、散剤丸剤は一般の人もよく知っているが、膏薬には紫雲膏があり火傷や一般の傷に応用されている。目薬もあり洗滌薬に撒布剤、燻剤もあるが殆んど使用されていない。

 ▼下剤の禁忌

 陰証虚証には殆んど瀉剤はやっていない。具体的にあげると、
1、臍傍動悸のもの。
2、脉浮にして悪寒のある大腸病。
3、脉弱にして腹も虚軟なもの。
4、四肢厥冷のもの。
5吐せんとするものは嘔吐させてやる。

 ▼発汗剤の禁忌

 1、小腸病、大陰病。
 2、咽喉の乾燥しているもの
 3、貧血の大なるもの。
 4、常習性の衂血のもの
 5、多汗症のもの、尿の淋瀝するもの。
 6、下痢の続いているもの。
 7、外傷其の他で出血の甚だしいもの。
 8、少陰病で脉細沈数で邪が裏にあるもの。
 9、動悸の大なるものは、たとえ表証があっても不可。小健中湯等を用い、一応動悸が治まってからがよい。

 ▼未解決の漢方

 1、甘麦大棗湯
甘草、小麦、大棗の三種からなるも此のうち一品欠けても本来の作用がなくなる。この方剤は小児や婦女子のメソメソ泣くヒス気味を目標とする。
 2、茵蒿湯
茵、大黄、山梔子の三種からなり、胆汁を出す作用があって黄疸の聖薬とまで云われる方剤であるが、これも何れの一品欠けても其の作用は消失する。
 3、伯州散
反鼻(まむし)、鹿角、津蟹の三種からなり、化膿性疾患の内服薬として又外用としても最重な薬である。筆者は二年来の助骨カリエスに之と四物湯を合方して与え、三ヶ月位で全治させた尊い経験がある。 以上、三つの方剤は多分内部で新しい物質が出来て夫々の作用が起るのだろうけれど未だにはっきり解明されていない。今後の研究に俟つや大である。

 ▽正誤表
7月15日号5段13行…衣美食なり→衣美食となり。
8月5日号1段1、4、14行…炙→灸。3段16行…不老→不定。
8月15日号5段19行…陽明と→陽明を。
8月25日号左から6行…復部→腹部。2段5行…下復部→下腹部。2段12行…治せその→治せとの。2段左から10行…復中→腹中。4段23行…苓姜求甘湯→五苓散。
9月15日号1段左から2行…痾血→?血。4段左から2行…湯明病→陽明病

 過ぎし日々(8) 塚本赳夫

 幼稚園に行きはじめる前か後かはよくわからんが、誰か年とった女中が本郷通りの魚屋さんに買物に行く時、僕を連れて行った事がある。店の中のせまい通路に、かなり大きな犬が寝そべって居たのを知ってはいたがあまり注意しないで、女中のうしろ姿と店の奥の方ばかり見ながらずかずかと入って行ったが、どうも駒下駄の先の方で何か柔らかい物を踏んだように感じたのでびっくりして振り返ってよく見ると、その大きな犬のしっぽであったらしい。犬は済まし込で眠っている。僕は「おやっ!犬は尻尾を踏まれても痛くないのかな!」と思った。前に、小田原でも少しは犬と遊んだ事もあるのであまりこわいとは思わない、犬は人のよい動物だと思っていた。

 女中は奥の方で魚屋さんと買物の事で一生懸命に何かしゃべっている。僕は一寸調べて見たくなったので、犬のそばにもどって下駄の先の方で尻尾の一番先を踏んで見たが、知らん顔をして居て頭も上げない。体重をのせて力を入れて見ても変わりない。

 次に、だんだんと根もとに近づいて踏んで見ていたら犬はうす目をあけて横目で見ていたが、何番目かに「わん!」と言うと同時に飛び起きたと思ったら、もう大きな口の中に僕の細い脚は入ってしまっていて上顎(うわあご)の牙(きば)を僕の向う脛に当てている。店中の人は皆犬の声で僕の方を見かえって居る。むき出しの僕の向う脛(ずね)はすりむけて、少しは血も出ている。魚屋のおかみさんはあわててかけて来て紙でふいた後を「何だか様」のお礼と言うやんごとなさそうな白い物を出して私の足をなでて呉れたそして「これでもうとがめる事はありません、なおります」と保証して呉れた。

 犬のために一言弁護すれば、彼おとな犬は子供と知って我慢に我慢を重ねているのにあまりしつっこく実験を繰り返すので、うるさいからおどかして止めさせようと思って牙を当てるまねをしたものだと僕にはわかった。本気で噛みつくつもりならふくらはぎの方に当ってる下顎の方にも力が入って牙が肉にささっていた筈だから……。

 何より僕に不思議に思われたのは、この「お札」でなぜたから大丈夫だと報告したにもかかわらず、母は五百倍だか二百五十倍だかと言う石炭酸水で又洗って包帯して呉れた。しばらくは痛たかった。幼稚園にも大分慣れた頃の話だが、兄は尋常三年位になって高等師範の附属小学校に通っていた。

 前から見ると三角屋根の形で横に白い房がぶら下った帽子をかぶって学校に通って居た。一・二年生は赤房で、房が白くなって大いに得意になってる頃だから僕たちから見ても立派でうらやましい限りだ。
或る日、兄はこう言う同じ帽子をかぶった友達を連れて学校から帰って来た。はじめは彼等二人で遊んでいたが、そのうちに「たけぼうも出て来い!」(兄は少しいばって見せたい時には父や叔父のまねをして赳坊と呼ぶ)と言うので僕も庭に出て、かくれんぼうだか鬼ごっこだかをして庭中をかけ廻って遊んで非常に面白かった。

 二・三日して幼稚園の仲間に「僕んち(家)に来ないか?」とさそって見たら「うん行く」と言ってついて来た子があった。信夫さんとか言うおとなしい子だった。二人は気嫌よく手を引いておしゃべりをしながら空の弁当箱を振り廻しながら家に帰った。

 空の弁当箱は縁側にほうり上げ、二人は庭で穴を掘ったり、水のないお池を作ったり、時の経つのは全く二人には関係のない事のようであった。この間で一度手を洗わされた所を見ると「お八つ」を婆やが食べさせて呉れたものと思うが何を喰ったかおぼえていない。家の人達も次々に帰って来たらしい。従兄だの、若い女中(家からどこかの学校など通っていた人達)だのが縁側に来ては僕達の方を見て何か話をし合っていた。もう夕方になり庭も隅っこの方はうす暗くなり始めていた。

 告知板

 ▽健保法改正と「ねたきり老人」の医療費の無料化について
福岡県薬剤師会(四島久会長)は、九月二一日、福岡県薬理事、支部長に対し一〇月一日から実施される健保法改正と「ねたきり老人」の医療費に関し、左記の通達を行ない、会員に対する周知方を緊急要請した。

 @社保家族の給付率が、七割(現在五割)になりますので、保険薬局窓口徴集は三割、保険請求は七割とすること請求方法は従来と変らない。
A65才以上70才未満の「ねたきり老人」(認定患者)の医療費が無料となる。請求方法は、老人の場合と同様で、老人に合算して行うこと。
現在、対象認定患者は、県下約七、〇〇〇人と推定される。

 ▽薬剤師業経済研究特別委員会
福岡県薬剤師会(四島久会長)は、第一〇回薬剤師業経済研究特別委員会を来る一〇月一五日午後三時より、県薬剤師会館で開催する。当日のテーマは@いわゆる医療用医薬品についてAその他。

 ▽病態実験動物の講習会
医薬品の開発に病態動物の重要性が唱えられているが、日本薬学会主催で来る12月13日、14日の二日間、東京・薬学会館ホールで「医薬開発における病態実験動物」と題する講習会が開かれる。
講習会の申込み、問合せは日本薬学会・病態実験動物講習会実行委員会(電話〇三‐四〇六‐三三二一)受講料一万八千円。

九州薬事新報 昭和48年(1973) 10月15日号

 福岡県48年度 第二回薬事審議会 適配条例の緩和で検討

 福岡県薬事審議会(原田平五郎会長)は、本年度第二回審議会を九月二一日二時から武田薬品会議室で開会、▽薬局等の定数の改正▽適配条例の緩和について▽薬局等の許可などについて審議した。

 ▼適配条例の適用地域における薬局等の定数については毎年実状に合せ改正されているが、本年度の改正により定数の改正された地域は左記のとおり(()内数字は現定数よりふえた数)
福岡市(6)北九州市(4)久留米市(2)古賀町=合併前の区域(2)春日市(1)中間市(2)大野城市(3)志免町(1)宗像町=合併前の東郷町と赤間町(4)

 ▼適配条例の緩和については検討した結果、条例の除外規定として四六年一〇月一日施行の調剤のみ行う薬局の許可基準内視が、運用されていたが今回あらたに「附近住民を対象とする薬局等の優先」の規定を設けることになった。これは例えば卸屋等が店頭販売を行なっていない場合は距離並びに定数の対象としないということである。(詳細別掲)

 ▼その他、火災またはビルの建設等のため仮営業所を開設し、元の営業場所に戻ることが不可能になった事例がでてきた。この問題の取扱いをどのように考えるかについては、今後引続き検討される模様であるが、この問題は今後都市のビル化が進むなかで、相当数の事例が出るものと考えられ、非常にむつかしい問題をはらんでいると思われる。

 ▼薬局等の許可について当日審議された左記六件についてはいづれも承認された

 福岡県適配条例の緩和措置内規制定 10月1日より施行

 さきの福岡県薬事審議会において検討され、あらたに一〇月一日より施行されることとなった「薬局等の配置の基準を定める条例緩和措置内規」の趣旨ならびに細部は次のとおり

 1、趣旨
住民に対する適正な医薬品の調剤並に確保及び医薬品の適正なる供給を図ることを目的とすること
 2、調剤のみを行なう薬局の開設
条例の緩和措置として明文化したもので、取扱いについては昭和四六年一〇月一日施行の「調剤のみを行なう薬局の許可基準内規」によること。
 3、附近住民を対象とする薬局等の優先
薬局、一般販売業、薬種商販売業(以下「薬局等」という)がその所在地の附近住民を対象とせず事業所等のみを対象として医薬品を販売する薬局等は条例で定める距離の対象及び定数から除外されたこと。

 @附近住民を対象としない薬局等とは店舗の所在地周辺の住民に対し店頭販売をするための設備を有せず販売をしないものをいう。(例えば官公庁あるいは職域のみに限り注文により納入している卸を主体とした一般販売業)
 A取扱について
附近住民を対象としない薬局等は、今後新規あるいは更新申請の際、申請書備考欄に「店頭販売をしない」旨記載させること。
 B経過措置について
新規に開設しようとする薬局等は開設場所近くに附近住民を対象としない薬局等が所在するときは「附近住民を対象とした店頭販売をしていない」旨の証明書を附近住民を対象としない薬局等から徴収し、開設許可申請書に添付させること。

 日薬連薬価研 値上げと品不足を検討 当局へ善処要望の方針

 日薬連薬価研究会は、健保法改正の医薬品業界に及ぼす影響の分析と、医薬品価格の引上げと医薬品不足の実態究明を行なうことを決め、担当グループによる調査・検討を開始した。

 今回の健保法改正における措置は、短期的には医薬品需要を押上げる可能性が強いが、反面、医療供給体制(医薬品供給含む)の整備に対するきびしい行政指導が行なわれることが予想される。

 また、最近の医薬品の引上げ、品不足については、日医・全国保団連などが指摘し、厚生省は日薬連に対し医薬品の円滑な供給に努力するよう通達を出した。実際にどの医薬品がどの位不足しているのか、価格引上げおよび薬価との逆ザヤ現象の実態はどうか、その原因はどこにあるか、などを分析して、この問題が短期、一過性のものでないと判断され、企業合理化の枠を超える性質のものについては、医療確保および薬価と企業育成の立場から、その善処と指導を行政当局へ申し入れる方針である。

 全国保団連 医薬品不足と高騰に対策を

 全国保険医団体連合会(中野信夫会長)は九月一一日、厚生省薬務局長に対して次のような申し入れを行った。

 第一線医療機関では診療に必須な一部医薬品の入手不能、異常な値上がりで診療活動に大きな支障を来していて、国民医療にとって深刻な問題である。政府は速やかに医薬品の輸入、生産流通など品不足原因を克明に調査し又必要な対策を直ちにたてて欲しいというもの。

 なお、保団連では、この背景として@局方品は原料入手難と原料価格の上昇など採算割れを理由に、製造中止、価格の引上げとなって現われたA一般には、メーカーが大量販売から利益確保の方向へ姿勢を転換したとの見解をとっている。

 ▽山口県保険医協会が九月に実施した調査によれば、医薬品の品切れ状況は、とくに低価格の局方品に品不足と値上がりが顕著で、ブドウ糖が入手難を生じているという。局法外医薬品でも原料不足、品不足、天然資源不足、公害の影響による販売中止などの理由で医療機関に出回る医薬品が少なく、出回っても薬価基準を上回って販売されているものが増えつつあるとのことである。

 薬務局長通知 医薬品の円滑な供給で

 厚生省薬務局はこのほど局長名で日本製薬団体連合会に対し「医薬品の円滑な供給の確保について」の通知を行った。その要旨は次のとおりである。

 @医薬品は国民の保健衛生上不可欠なものであり、その需給動向が国民生活に大きな影響を及ぼすことは、その生産、流通に携わっている業界がもっとも承知しているところである。
 A先般来、医薬品の需給動向については目下実情調査中であるが、最近医薬品について、ブドウ糖等の局方品を中心とする一部医薬品に品不足がみられるとの噂を聞き及んでおり、当局へ陳情等がある。
 B貴会において、需要者等からこれら医薬品の不足入手難等につき相談等があったときは、都道府県薬務主管課、関係団体等と十分密接な連携を保ちつつ、実態の調査、当該医薬品の斡旋等、流通の円滑化について適切な措置を構ずる共に、貴会会員に対してもこれら医薬品の円滑な供給の確保に対する協力等の趣旨徹底方をお願いする。

 森下泰薬剤師後援会 福岡県支部役員決定

 福岡県薬剤師会(四島久会長)は、九月二〇日の理事・支部長連絡協議会で、森下泰薬剤師後援会福岡県支部の結成を行なったが、このほど役員を左の通り決定した。

 支部長=四島久
副支部長=斉田和夫、鶴田喜代次、安部寿、佐治八郎
常任理事=工藤益夫、友納英一、鶴原正蔵、福井正樹、中村里美、藤田畔、田中美代
幹事=馬場正守、三宅清彦、末松博、古賀ヒサ、大坪外洋夫
監事=冨永泰資、磯田正春
会計責任者=鶴原正蔵
同職務代行者=松井伊三

 地区班長=斉田和夫(福岡)磯部順市(宗像)建井智郎(粕屋)木村基(筑紫)古川周一(糸島)武井龍太郎(甘木)辻進(久留米)中島義一(八女)奥村陸平(浮羽)長尾直之(三井)古賀俊夫(柳川)竹下一生(大川)西元寺清継(大牟田)石田達夫(遠賀)古賀哲弥(若松)大嶋猛夫(八幡)前田正夫(戸畑)桂顕徳(小倉)大和幹男(門司)白石実(京都)平田静雄(築上)三宅清彦(飯塚)舌間七之介(直方)手島泰(田川)
(前号、森下泰後援会記事中、各支部長は各副支部長の誤りにつき訂正)

 久光、九大と共同で 新検査システム開発

 動物体内にはいった薬物や異物の分布、汚染状況の検査システム(オートラジオグラフィー)が、佐賀県鳥栖市の久光製薬(中冨丘邦社長)の研究所(井出博之所長)と九州大学薬学部の小嶋正治教授の合同研究で、実用段階にこぎつけた。通産と日本貿易振興会ではこの開発に着目九月末チェコのプラハ市で開かれる日本産業見本市に検査システム装置を出品した。

 この研究は、小嶋教授がオートラジオグラフィ製作過程で、一つのネックとなっていた凍結生体に付着させるテープに、同製薬の外用鎮痛薬「サロンパス」から薬の成分を除いてつくった「サロテープ」の吸着力が適していると判断し、同製薬が四十六年春に研究所を設立したのを機に協同研究となった。
検査システムの中核となる「ミクロトーン」(生体細断機)は久光製薬と日本電子工学がタイアップして九月はじめに一号機を完成したものである。

 魚の水銀やPCB汚染など公害被害の追跡や、新薬の研究開発に威力を発揮出来るものとして、製薬会社や官庁、病院などでこの検査システムの活用が高まるとみて、「ミクロトーン」や「サロテープ」(特許許可すみ)の量産にはいる。

 漢方の手ほどき(序の八) 長崎大学薬学部講師 山口広次

 ▼方面変換
@麻黄+杏仁→喘咳(麻黄湯)
A麻黄+白球→利尿(麻黄加求湯)
B麻黄+桂枝→発汗(麻黄湯)
C麻黄+石膏→止汗(麻杏甘石湯)
D麻黄+桂枝、石膏→発汗大(大青竜湯)
麻黄に色々な生薬を組合せて変った作用の変化が生じる。何故こうなるか説明が仲々六ケ敷い。

 ▼君臣佐使
君薬…配伍薬中最も大切なもの。
臣薬…君薬を助けて薬効を増大する。
佐使薬…副作用を防ぎ服用をし易い様に働く。
例…四物湯
君薬…当帰
臣薬…地黄
佐薬…芍薬
使薬…川?

 ▼薬物の禁忌
@鉄気を忌む…植物酸、鞣酸を含むもの。
香附子、牡丹皮、芍薬。
A銅、鉄を共に忌む。
地黄、玄蔘。
B火を忌む…揮発性成分、或は樹脂を含んでいて火に依って成分の一部を失うもの。
木香、乳香、菊花、川芍
C妊娠時忌むもの
附子、巴豆、芫花、桃仁
D配合禁忌
甘草と大戟、芫花、甘逐

 ▼基本薬方
@桂枝甘薬湯…(上衝急迫)桂枝、甘薬からなるが之が桂枝湯へと進展する
A芍薬甘草湯(腹痛、手足攣急)→芍薬甘草附子湯
B麻黄甘草湯(喘咳)→麻黄湯
C甘草乾姜湯(厥冷、煩躁)→四逆湯
D大黄甘草湯(便秘、急迫)→桃核承気湯

 ▼加減法
既定薬方より必要に応じて薬物を加え或は減じる
例…慢性腎炎の際、小柴胡湯より生姜を去り、茯苓黄連を加えた小柴胡去生姜茯苓黄連湯の如き

 ▼合方
二つ以上の薬方を合併させて一つの方剤とする。
@桂麻各半湯…桂枝湯と麻黄湯と各半分宛混合せしもの。
A柴胡桂枝湯…桂枝湯+小柴胡湯。
B胃苓散…平胃散+五苓散
C温清飲…四物湯+黄連解毒湯
D聨珠飲…四物湯+苓桂求甘湯

 ▼修治
@薬の治効を一層高める。
A虫害、カビ等を予防する。焼く、炙る。
B有害作用を減じる。(炮附子)附子を濡れた紙に包んで熱灰の中に埋める。
C反作用を避ける。麻黄の節は反作用があるので取除く。

 ▼味
@甘い健胃剤…甘草
モヒでも止らぬ胃痙攣の激痛を止める。
A苦い健胃剤…黄柏
川流に「陀羅仁肋静御前の癪を止め」とあるが、黄柏エキスが胃痙攣を治した例である。

 ▼匂
味の場合と同じく自己に嫌な匂でも病人にはとてもよい匂あり。香木は古来「気を開く」、「気を理す」と云われ精神安定剤として使用された。
@沈滞した気分を引き立てる快い興奮作用
麝香、丁香。
A感情の亢ぶりや気味の乱れを平かにする…沈香。
B興奮したものを静め、沈滞したものを引立てる。
白檀、木香。
五香散…(白檀、沈香、木香、麝香、零稜香)
之は原南陽の創製したもので弧臭に用う。
香い袋…香水代りに用いられた(白檀、丁香、大茴香、麝香、竜脳、甘松、山奈)

 ▼色
紅色、紫色…血分に入って清熱の作用あり。即ち血液循環系に作用してその熱を冷す効あり。
例…紅花、サフラン、肉?蓉(きむらだけ)
黄色、白色…気分に入って欝を散ず。即ち自律神経系に作用し神経を調整する効あり。
例…菊、金銀花。

 過ぎし日々(9) 塚本赳夫

 そのうちに母も帰って来て、信夫君を呼んで何か話をしていたが、僕の方は作業の続きをやっていた。
時々聞こえて来る話は、信夫君の「たけおさんがいるからいいや!かまわないよ」とか「一所(いっしょ)に寝るからいいよ」とか繰り返えして云うてるようだった。そのうちに僕も呼びつけられ、「赳夫さんは、信夫さんのお家を知ってますか?」と真っ正面から聞かれたが、本郷三丁目あたりまで一所に帰って来る事だけだ。「知らないよ!」と云ふと大人達はいくらかあわてて相談をしていた。

 結論が出たと見えて、今帰って来たばかりの若い方の従兄がえらばれ庭に出て来て、信夫君に色々と聞いていたが僕が小耳にはさんだ詞(ことば)は「椎の木の所」とか、坂を降りるとか、降りないとか云ふ話だった。

 椎の木と云ふのは僕達の遊び場所の一つで椎の古木が木柵に囲まれて居て、朝早く行けば「風の吹いたあとなどは椎の実がいくらも拾える」と話には聞いているが、僕達は木のまわりは広場になっていたから、大学正門に近い「からはし」近所と共に後では戦争ごっこの舞台になった所だが安部さんのお邸(やしき)の正門前のひろばだった。

 話を聞いていても、彼の家は西片町の中か、小石川方か、もっと菊坂や三丁目の方に近い所か聞いてる僕にも見当がつかない。しかも信夫さんが従兄に向ってもまだ帰らないと云い張っていて「たけおさんがいるからいいや!」をやって、盛んに従兄の説得を受けている。もう庭ではうす暗くてよく顔が見えなくなりそうだ。母も出て来て二言三言話していたが信夫君は急に帰ることになって「さようならー」の声を残して帰って行った。

 ややしばらくして従兄が帰って来て、母に報告してるのを聞くと「椎の木」まで行って彼にどっちに行くのかを聞いても、暗くはなるし、あまりよくわからんので途方(とほう)に呉れていたら、空(から)車を引いて通りかかった車屋(人力車夫)さんが「丸山さん(?)のぼっちゃんではありませんか?」と見付けて呉れたので車屋さんに案内してもらって門の前まで行って来た、非常に大きなお邸宅(やしき)で立派な御門だった、と云ふような事を話していた。

 あとで飯が済んでから、僕は訓戒を受けた。一つ、家の人にはっきり行先きを云わずに何処かに行ってはいけない事。二つ、だから幼稚園からよそに廻ってはいけない。三つ、従っておまえがしていけない事をお友達にもさせてはいけません。この三つの事がやっとわかるような、むずかしい事だが「なるほど」とうなずけた。別に悪い事をしたとも思わないが「ごめんなさい」を云わされた。

 ▽水銀騒ぎが響き「赤チン」姿消す

 「赤チン」の名で長い間親しまれてきた皮膚殺菌剤マーキユロクロムが近く姿を消すこととなった。全国で一社だけ製造を続けてきた富山市の富山化学工業富山工場(本社東京、中野譲社長)が、九月いっぱいで本品の製造をやめることとなったためである。生産中止は、原料に水銀を使っているため、最近水銀汚染騒ぎが大きく社会問題となり、多額の投資をし水銀防止施設を整備したのでは採算が取れないのが理由。

 第23回全国学薬大会及全国学校保健研究大会 富山市に二千七百名

 九月二八日富山市農協会館において第23回全国学校薬剤師大会が開かれ、全国より三〇〇名が出席した。開会式に続いて表彰式(日本学校薬剤師会賞)では益田学氏(大分)他一〇名が受賞した。

 次いでシンポジウムに移り東京都学薬、館森関夫氏、大阪府学薬、細部新一郎氏、愛知県学薬、稲吉良介氏、福岡県学薬馬、場正守氏が「学校環境衛生と公害」というテーマで意見や研究実績を発表した。次期開催県は宮崎氏に決定、宮崎県学薬会長児玉治兵衛氏があいさつを行い、夕刻から懇親会が行われた。

 全国学校保健研究大会は、二九日から一日までの三日間、同市公会堂及び班別協議会々場で全国よりの学校保健関係者二七〇〇名が集まり開会したが同大会での文部大臣賞受賞者一二名中九州山口では石本博美(山口)高橋賢治郎(福岡)久保正志(佐賀)の三氏であった。

 記念講演では京都大学教授西川義正氏の「限りある地球」が深く感銘をあたえた。

 班別研究協議会は、五つの会場に別れたが、特に学薬の出席が多く、公害問題等が学校保健に重要なウェイトを占めているのが全国的な傾向であった。

 最後は四つのコースに分れて学校視察と観光に、宇奈月温泉、立山アルペンルート、高山合掌づくり、能登めぐりと名残りをおしんで三々五々解散した。

 福岡県保険調剤実績(8月分)

保険薬局数      829
取扱薬局数      333
取扱件数      11,059件
取扱枚数      16,930枚
処方箋発行者数
一般医師       100
歯科医師       497
請求金額合計  16,360,209円

 卸経営堅調 医専伸長、薬専は悪化

 最近、大手メーカーが実施した卸経営調査では、調査対象卸三七社(回答数三十六社)のうちほぼ半数の一七社が本年四月〜来年三月に達成できる売上高として対前年比一五〜二〇%の高い伸び率をあげている。ことに開業医向けでは、三六社中五社が二〇%以上の伸びを、一四社が十五〜二〇%、一二社が一〇〜一五%を見込んでいて、一〇%未満というところは僅か五社に過ぎない。病院向けもほぼ開業医向けと同様で、二〇%以上二社、一五〜二〇%一五社、一〇〜一五%一二社、一〇%未満七社となっている。これに対して薬局向けでは、二〇%以上の伸びを見込んでいるものはなく、一五〜二〇%が二社、一〇%〜一五%八社、五〜一〇%一二社、〇〜五%二社横這い六社、減少二社で、開業医・病院に比して低い数値を示した。

 医薬品卸業界では今春来医家向け部門の売上伸長があり、全般的に経営姿勢は強気で設備投資意欲も高く、今秋および来春の卸各社決算はほぼ二年ぶりに足並みの揃った増収増益が期待されている。

 日本卸連 再販縮小反対陳情

 日本医薬品卸業連合会(渡辺徹太郎会長)は九月二〇日、斉藤厚生大臣、高橋公正取引委員長、自民党の再販関係議員に対して、医薬品再販縮小について白紙撤回を求める陳情を行った、その陳情書の要旨は次のとおり。

 @医薬品が再販指定から取消された場合、中小卸業中小小売業の経営が悪化し、医薬品の流通に混乱を生じ、最寄り買いの定時、定量、どこでも容易に入手する便利がなくなり、消費者に多大の迷惑を及ぼす。
 A再販は競争を阻害しているとの主張もあるが、再販商品は実際には値上り率が少なく、最も安定した価格の商品である。
 B医薬品は品質に対応した価格の設定が特に必要であり、価格差が消費者に不信不安の念をいだかせる結果となる。
 C値幅再販は最低価格の確定再販と同じ結果となりマージンの大幅の低下を来し、企業の経営を圧迫する。医薬品卸業のマージンは他の業種と比べると最低である。
 D不当廉売規制は実際上は実施不能となる恐れが大きい。

 福岡市薬だより

 @薬と健康の週間に、家庭常備薬の総点検のことに関して「福岡市政だより」に掲載することとなったので、一般市民より問合せがあればよろしく指導されたい。
 Aチラシ宣伝、値引販売は商組組合員の協力で大きな乱れもなくなった。要指示薬、老人・乳幼児の医療無料化等で薬の店頭販売は減少しつつあり、なお再販縮少改革により今後の医薬品小売業としては更に難かしい悪条件が加わることとなった。
県薬剤師会(四島久会長)では、薬剤師業経済研究特別委員会を開いて、薬局の業績発展に役立つ研究を行っている。
まず分割販売対象医薬品として「感冒薬」「胃腸薬」の二品目を選定して目下検討中であるので注目されたい。

福岡県薬剤師業経済研究委で 分業・第二市場・再販につき 四島会長大いに語る

 福岡県薬剤師会が、本年一月から毎月例会を開いて研究を続けている薬剤師業経済研究特別委員会は、一五日県薬会館で十月例会を開いた。

 これは分業達成を前提として、その間、消費者との信頼関係を深め、経済性を高めるために、いわゆる医療用医薬品の分割販売をすすめることとなったもので先に各メーカーに提出を求めていた分割用医薬品の選定については、小売側小委員会を開いて決定することとなった。次回は今後再販がなくなることを想定して、薬局としてはどうあるべきかについて検討することとなった。

 なお、当日開会に当り四島県薬会長は、現在、薬局あるいは薬剤師が当面している諸問題について詳細に所信を述べ、このような研究会を開いた趣旨についてもふれたが、その要旨は次のとおり。

 ◆委員会発足の趣旨

 この委員会は一月発足したが、これは組合とは別個な立場で薬剤師と医薬品の関係をよく考え、薬局の在り方をどうすべきかについて検討してきた。現在、有識者の間でも医薬品は高い安いの価格よりも無駄使いをさせてくれるなという認識に変って来ているし、社会の流れに敏感なスーパーも今までのように医薬品の銘柄の価格を目玉にすることから薬品部(相談部)そのものを目玉にするよう変って来ている。

 薬剤師の職能はいろいろ言われているが、私は次の三点が基本線であると考えている。
@医薬品は、いかなる場合もすべて薬剤師の手を経て消費者に渡すべきもの
A医薬品は、すべて薬剤師が指導して販売すべきであるから、薬価は(指導料も含め)薬剤師自らが決めるべきもの
Bただし、与えた医薬品に対する責任はすべて薬剤師が負うべきもの
メーカーが量産するようになってから小売業者は心ならずも銘柄指名による販売をして来たが、これを基本的に改める時期が来たと考える。

 分業については、いつも受入態勢が云々されるが、理論から言えば薬局は調剤することが前提で許可されているから何時でも態勢は出来ているといえないこともないが実状はそうはゆかない。医師が薬剤師を信頼しないからとは言語道断であるが、一番困ることは消費者に信頼されているかどうかということである。

 分業は向うからはやって来ない。だから、こちらから迎えに行こうということだが消費者がこれを要望すれば一番早道である。これを勝ちとるには三つの原則に基づき、軽医療の相談にのって消費者を指導すること(以前の対象投薬)、つまり製剤化されたいわゆる医療用医薬品の分割販売に真剣に取組んで消費者の信頼を得ようということである。この問題は、物を売るより技術を売って消費者との信頼関係を深め、分業を促進することが一番の目的であって、必ずしも利益追求のみで検討されているものではない。このことは、私は従来から考えていたが、当時は日々が販売戦争で振りむかれなかったが、今こそがその一番適当な必要な時期であると痛感している。

 なお、要指示薬についてはつきつめればこの法律そのものがでたらめな法律であると私は敢えて言いたい。この法律ができた経緯からもそう言える。このような法律を改正させるには薬の専門家である薬剤師の良識に基く販売を行ない、守られざる法律にすることが必要と考えている。ただし、そのためにも常々消費者との信頼感を深めておけば、このような面でも消費者が支持して呉れよう。

 ◆第二市場問題

 この問題は、名目は流通の正常化ということで第二市場の撲滅と差別対価の是正が目的であると思うが、現在のメーカー、卸の在り方からすればこれはなるべくしてなったと言えよう。自由経済の中では在る程度は仕方がないと言える(医薬品の場合はそればかりでは困る)。再販の場合はルートを乱したということで困るが、再販以外の場合、一般卸が出来ないことからきたものでちっともかまわぬと思う。弱い小売から見れば必要善であるが、再販品の場合は必要悪であろう。

 これの撲滅は、理論的には正しいと思うが現実面ではむつかしい。専売品のタバコでさえ正規のルートをはずれた販売が行なわれている現状で、メーカーも完璧に阻止は出来まい。だから、撲滅ということには私は批判的であったし、現在、その徹底化の時期であろうかと疑問に思っている

 ◆再販問題

 二八品目は再販解除、他は値幅(一割以上の)再販ということは、吾々としては実際問題として値幅再販即最低価格販売ということで話にならない。医薬品の使用量は減らすべきだとの攻勢からも今後価格は二・三倍に上げねばならない時期にきているにもかかわらず、値上げのむつかしい再販を死守しても意味ないと思う。

 不当廉売防止法にしても逆作用で乱売につながろうし、公聴会の結論も棚上げになる可能性が強い。それより量産、量販態勢を変えるべき時期に来ていると思う。現在、一般メーカー自体はポスト再販の施策に関しては業界内のムード待ちと思うが、数年前からあるMSC、タケダ会等はチェーンシステムの導入である。このシステムを如何なる方法でどの程度強化するかが今後の問題である。三者協議会は、これを中心に再販中止後の在り方を全国的視野で討議し、結論は出なくとも方向づけをして地方でムードを作り、中央の問題になるよう期待したい。末端会員は、再販についても日和見的で真剣ではなく、目先のことに追われて仕方がないとしても、少くとも指導的立場の方々はこれらの情勢を認識して頂きたい。

 日本薬学会九州支部会で 薬学教育問題討論

 一〇月六日(土)一三時〜一五時、福岡市第一薬科大学で日本薬学会九州支部第84回例会が開催された(既報)。例会終了後一五時一〇分〜一七時半、「薬学教育問題について」の討論会が薬学教育問題検討委員会辰野高司委員長及び同会川瀬清委員を中心に、熊本大学薬学部一番瀬部長が座長となって行なわれた。先ず委員会の「討論資料T、薬学教育に対する基本的考え方」について辰野・川瀬両先生より説明が行なわれ、次いでこれを踏えての質疑検討が九州大学、長崎大学、熊本大学、第一薬科大学よりなされた討論会の概要は次のとおり。

 ▼本会の趣旨
昭和四七年度より発足した日本薬学会特別委員会「薬学教育問題検討委員会」は、日本薬学会理事会より検討を付託された薬学教育問題について、今後薬学会々員の間での討論を基盤とし、さらにこれに関連した多方面の有識者の見解をも参考にして論議を進め、これによって今後の我国における薬学教育のあり方に関し日本薬学会としての一致した見解に到達したいと念願している。

 そこで今回、「討論資料T」として、まず本委員会の薬学教育に対する基本的な考え方を明かにして、これを討論していただくことにした。日本の薬学の発展のために、活発且つ数多くの建設的な意見を切望する

 ▼薬学教育問題検討委員会討論資料T、薬学教育に対する基本的考え方(ファルマシア8月号を参照)
▽委員会の論議を進めるための基本的態度
1、大学薬学部は薬剤師育成の唯一の場である。
2、〈薬剤師〉とは如何なる技術・科学に支えられた人格であるか
@薬剤師法総則の基本に立って考える。
A@の法のよって来たるところを歴史的に考える。
B日本の薬学教育の特色を歴史的に考える。
3、薬学教育の現状分析
@現在殆んどすべての大学で薬学教育のカリキュラム改革が考えられている。
A第二次大戦後の新制大学制度発足時の問題点。
B二分科、三分科制の発足にあたっての問題点。
4、薬学の理念を探ぐる作業を行う
@技術の学としての薬学…薬の生産(創薬・製薬)を指向する〈技術の学〉=創薬、製薬の論理と技術。
A国民の保健衛生指導者として身につけねばならぬ論理と技術…公衆衛生の技術と方法論。
B医療の場での薬学の論理と技術…患者への薬の適用の論理と技術=個体と直面する論理と技術。
C薬剤師の知的・技術的基本的業務として要求される技術は何か。
5、薬学教育問題検討の今後の方向
@〈科学〉、〈技術〉に対する全面的な問い直し
A医療に関する総合的教育計画の中で薬学教育が何を分担すべきか。
B薬剤師の基礎教育と専門教育。
C卒後教育。
D中央教育審議会答申、教育体制と薬学教育。

 ▼討論(※印は委員回答)
−九大青山先生−
病院勤務薬剤師としては医師は卒業後も問題点を母校にふり込むことが出来るが、我々薬剤師はそれが出来ないのでその意味では母校がなかったと云える。卒後教育がなかった。薬剤師のライセンスの問題が出てくるのではないか。特殊受験資格の問題があり、医療に従事する薬剤師には別にライセンスを与えたがよいと考える。現在の基礎教育の必要は十分認めるが、それ以上の教育をどうするか、どのようにもってゆくか。

 ※母校がなかったと云う意にはその通りと云う外ない共同作業がなされねばならぬと考える。資格問題についても二ツに分けて考える必要がある。補充教育は基礎教育の場で繰り返すことがよいと思うし、基礎教育基本と考えた。

 −長大小山先生−
薬剤師のあるべきすがたを考えてそれより薬学教育をした方がよいと云う必然性に疑問をもつ。薬剤師教育即薬学教育と解されるが薬学教育はそうでなくてもよいのではないか。

 ※薬剤師を育てなくともよい、薬学教育だけでよいかと云うことには問題がある。薬剤師教育を原点と考えて進めなければならないと考える。学部教育の立場だけでなく広い分野に立って考える必要があると思う。

 −長大小山先生−
実学が不十分であった、その原因は?歴史的な理由をふまえて、評価の面より研究が必要ではないか。

 ※生きた教育と基礎教育は両立すべきはず、両立させる方向で進むべきことが、課題であると考えられたい

 −九大井口先生−
あるべき薬剤師と云う大きな表題をかかげているが全薬学界で検討することとなると実現性の問題よりして抽象論的で迫力をかく。大学に余りの要求を出され過ぎている、具体的なライセンスの取り上げが必要ではないか。多方面の知識をもった薬剤師をつくるためには四年制でいいか否かも問題となる。

 ※多方面種々の意見を集約して、これを踏えて次の運動論となるような資料が出来上ってくると思う。

 −熊大佐竹先生−
臨床薬学と云うべきか、病院薬学と云うようなものを造ることに就いてはどう考えられるか。

 ※非常に興味をもつ提言であるが、制度化は仲々むずかしいと考える。この問題は現場での努力の積み重ねをお願いし、あらゆる運動とその情報交換を行ってゆくことが必要と思う。

 −第一薬大渡辺先生−
当大学は私学であるので薬剤師養成を第一義に考えているが、官学ではこの点についての疑問もあるのではないかと思う。実学、卒後教育については如何にすべきかの問題点をもつ。

 ※大学の先生が直接病院等に出向く機会をつくり、勉強されたことを教育に移す必要がある。病院の問題は大学の先生自身の問題であると云う取り上げ方をすべきと考える。

 −九大松島先生−
ライセンスを取るため、また認定をするために薬学教育は何かが確立しなければならない、何等かのミニマムを決める必要がある。

 ※これは薬学教育協議会で検討される事柄と考える。生きた教育を大学に如何に取り入れるか、ミニマムを如何に取り上げるか、積みあげてゆく過程が大事なことと思う。

 分業推進と要指示改善 当局へ日薬要望

 今回の健保法改正によって、被扶養者の七〇%給付高額医療費負担によって国民が診療を受ける機会が増加する半面、薬局利用度が更に大幅減少することは必然で、薬剤師の職域が危機に陥る恐れが出てきたことから日本薬剤師会はこのほど厚生大臣、自民党薬剤師問題議員懇談会(鈴木善幸会長)あてに医薬分業の推進、要指示薬制度の矛盾を早急に解決するよう強く要望した。

 要望書は「薬剤師、とくに薬局業務が圧迫され、窮地に陥らんとしている原因が医薬分業の遅延にあり、更に要指示薬制度という矛盾の多い規定を設定するなど一方的に薬剤師職能を制約し医療制度に歪みをもたらしたことは遺憾である」と述べている。

 漢方の手ほどき(序の九) 長崎大学薬学部講師 山口広次

 ▼病人の体質
似たものが似たものを治す。
1、?血体質…欝血、多血に依る赤色。
通導散
紅花、蘇木
2、臓毒体質…腸管の自家中毒による食毒と腎臓性自家中毒の水毒
防風通聖散(白色)
石膏、滑石
3、解毒体質…肝臓機能障害を伴った所謂胎毒。
柴胡清肝散(黄褐色)
黄蓮、黄柏、黄?、山梔子
黄疽…黄色の茵?蒿湯
皮?がただれて赤い…紫雲膏

 ▼四神
朱雀…南面に羽を拡げている、赤(大棗)で潟下
玄武…北面に亀を取りまいている黒(附子)で温
青龍…東で青で発散
白虎…西で白で白虎
奈良の薬師寺の薬師如来の台坐に以上の四神が刻み込まれ如来の使者として病邪を駆逐する。

 ▼六陳八新
1、六陳…古いものを使用する。採集した年には使用せず、翌年或は数年後使用。
狼毒、呉茱?、半夏、陳皮、枳実、麻黄
2、八新…新しいものを使用。
蘇葉、薄荷、菊花、槐花、款冬花、沢蘭、赤小豆、桃花

 ▼身体の各部に於ける虚実による処方。
1、頭部
実証…桂麻剤(麻黄湯、葛根湯、桂麻各半湯)
虚証…桂枝剤(桂枝湯、桂加葛根湯)
2、脇部
実証…柴胡剤(大柴胡湯、小柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯)
虚証@桂枝去芍薬湯剤(救逆湯、桂枝甘草湯)
  A梔子鼓剤(梔子鼓湯、梔子厚朴湯)
3、上腹部
実証…?連剤(半夏潟心湯黄?湯)
虚証…茯苓剤(茯苓飲、半夏厚朴湯)
?中腹部
実証…大黄剤(大承気湯、調胃承気湯)
虚証?芍薬剤(小建中湯、黄耆建中湯)
  ?乾姜剤(人蔘湯、大建中湯)
5、下腹部
実証…桃仁剤(桃核承気湯、桂枝茯苓丸)
虚証…当帰剤(当帰芍薬散、当帰建中湯、?帰膠艾湯)
腹部を上中下と分けたが一線を引くことは雑事で二つ或は三にまたがっている場合があるのでよく熟練してほしい。又、胸部に作用する処方も腹部にまたがっている場合がある。

 ▼後世方医学の基礎理念
無の世界の大極から陰と陽を生じ、始めは有るが如く無きが如く星雲の如きであるが、段々と陰陽が出来るに従って有の世界となる。陰が変じ陽が合して、木火土金水の五行を生じ、宗時代人体の諸現象の説明に陰陽五行説が盛んに応用された。

 ▼五行生尅説
天地万物に五つの基本的属性を規定して凡ての相互的な現象を説明する。その為め相生、相尅説を生ずる

 ▼相生
1、木は火を生ず…木を燃やすと火になる。
2、火は土を生ず…火が燃えて灰になる。
3、土は金を生ず…金物は地中より生ず。
4、金は水を生ず…金層の有る所水源あり。
5、水は木を生ず…木は土の水分で成長す。

 ▼相尅
1、木は土を尅す…木は土より養分を採る。
2、土は水を尅す…土は水をせき止める。
3、水は火を尅す…火は水を消す。
4、火は金を尅す…火は金属を溶す。
5、金は木を尅す…金属性の金具で木を切り倒す。

 ▼五禁の説
相尅説から説明すると、
肝(木)病には辛(肺金に入る)を禁ず、
心(火)病には臧(腎水に入る)を禁ず、
脾(土)病には酸(肝木に入る)を禁ず、
肺(金)病には苦(心火に入る)を禁ず、
腎(水)病には甘(脾土に入る)を禁ず。
腎に甘を禁ずとは西洋医学では云っていない。
最近は大人も小人も腎関係の病気が多い。漢方で云う所の腎とは腎臓、膀胱、生殖器全般も含めた広義のものである。

 私は腎の原因は風邪、オタフク風邪、扁頭腺炎、それに用うる薬、甘い物、塩からい物、皮?病、抗生物質の飲み過ぎと思う。そう云っていたら内科医で腎と取り組んでいる息子がもう一つ原因不明があると云ったので、私はそれはインスタント食品中に含まれる発光剤、展着剤、防腐剤、色素、人工甘味がそれに当るだろうと云ったものです。?

九州薬事新報 昭和48年(1973) 10月25日号

 自民党再販医薬合同委 "党の意見を聞くべきと"

 自民党の再販問題小委(竹内黎一小委員長)、医薬品問題小委(小沢辰男小委員長)の合同委員会は、党本部で二日正午より開催され、再販問題を協議した。両小委員会が自民党三役へ事態の収拾を預けてより以後、党三役が公取委の高橋委員長を呼んで再考を求めた経過の報告が行われた

 両小委員会として、今回の再販縮小の内容を直せということは言っていない、公取委が従前の約束を無視して今回の措置に出たことは遺憾で、まず白紙に戻すか又は委員長が遺憾の意を表して改めて党の意見を聞くべきであるとの意見が多かった。

 竹内小委員長は、再販改革の一〇月一日告示予定が延びており、不当廉売防止規定の公聴会が一七日から三〇日まであるところからまだ協議の余地はあるとの考えを述べた。

 公取委不当廉売公聴会

 公正取引委員会では二日、不当廉売防止規定についての公聴会を一七日から三〇日までの間に全国五ヵ所(東京都、名古屋市、大阪市、福岡市、札幌市)で開くことを告示した。福岡市での開催は一〇月二五日一〇時、福岡市博多駅東2‐11福岡合同庁舎

 不当廉売に関する全商連意見書提出

 公正取引委員会は小売業に関する不当廉売規定の告示を前に公聴会を開くが、医薬全商連はその公聴会に提出する「不当廉売に関する意見書」を四日公取委に送付した。この意見書は、不当廉売規制については原則的には賛成するが医薬品の特殊性に立って十分留意して欲しいと要望し、次のような理由をあげている。
1、医薬品は製造から販売まで各段階で法的規制をうけている。
2、安全性確保のための基準並びに設備器具の整備が必要である。
3、販売については対面販売であって他業種に比較し効率化が困難である。
さらに不当廉売基準として左の二点を指摘している
@直接経費に薬事法的管理費を加算する。
A業界内における不当な差別対価を排除する。

 次に公取委の「不当廉売に該当しないもの」の既定の設定については医薬品に関してはこのような例外規定は不適当、また同案中の「有効期限が切迫しているものの処分」「季節商品に関する処分」の二項については削除を提言し、最後に総括的観点より、"不当表示"の規制を強く要望している。

 調剤技術料二〇〇円を検討

 日薬の社会保険委員会はこのほど保険薬局の調剤技術料等を検討し、次のような意見をとりまとめた。
@現行八〇円の調剤基本料を二〇〇円、最低でも一〇〇円とする。
A現行二六円の調剤技術料を五〇円、最低でも四〇円とする。
B薬剤料は、頻用薬五%、稀用薬二〇%、極めて変質し易い医薬品三〇%とする。
C入院時薬学的管理技術料の新設。

 厚生省二回目実勢価格調査

 厚生省は、都道府県の医療用医薬品販売適正化委員会に対して、七、八、九月の三ヵ月間を対象に、適正化推進品目(二一製剤)と銘柄別一〇品目、局方品二五品目の実勢価格調査を行なうよう指示。十月末までに調査表を回収し、一一月上旬には集計結果を出すこととなった。適正化推進品目以外の医薬品を調査するのは去る二月に続いて今回が二回目である。

 厚生省では二月の調査と七月の建値改訂、今回の調査等が追跡調査に該当するとして、中医協の言う経時変動調査の役割を果しているとの見解を持っているようである。現在品不足と高騰が言われている医薬品についてもこれまでの調査や事情聴取等によりほぼ実態を把握しているし、薬価基準を上回っているものについては資材を整えつつあるので、もし中医協が再開された場合には、即刻にでも薬価大改正を行なえる用意が出来ているとしている。

 今回、適正化推進品目以外で調査対象とされている銘柄別一〇品目と局方品二五品目は次のとおり。

 銘柄別@ポンタールカプセル(三共)Aセレネース(大日本)Bペルサンチン(田辺)Cアンヂニン(万有)Dソルコセリル注(フナイ・大鵬)Eダーゼン錠(武田)FプロクターゼP(明治)Gリンコシン注(アップジョン)Hケフリン(塩野義)Iフルコートクリーム(田辺)。
局方品@アミノピリン末Aスルピリン末B塩酸クロルプロマジン錠(二五mg)Cメプロバメート錠(二〇〇mg)Dレセルピン注(一管中〇・〇五%一ml)Eアジマリン錠(五〇mg)Fアミノフィリン注(一管中二・五%一〇ml)Gジアスターゼ末H炭酸水素ナトリウム末I次硝酸ビスマス末Jプレドニゾロン錠(五mg)K酢酸コルチゾン水懸注(一ml中二五mg)L肝油カプセルM塩酸チアミン末Nリポフラビン末Oアスコルビン酸末Pスルフィソキサゾール末Qスルファジメトキシン末Sパラアミノサリチル酸カルシウム顆粒21パラアミノサリチル酸ナトリウム22イソニアジド錠(五〇mg)23ブドウ糖注(一瓶中五%五〇〇ml)24果糖注(同上)25リンゲル液(一瓶中五〇〇ml)。

 大阪府薬「薬剤師協組」の設立決定

 大阪府薬剤師会は九月二二日、府薬会館で代議員会を開催し、大阪府薬剤師協同組合の設立について可決した。この結果、明年三月認可、四月一日発足を目標に同協組の設立準備特別委員会を組織し、年内に細則を決定して諸準備を完了することとなった。

 代議員会では執行部の吉矢会長、八木副会長が定款の解説と質問の回答にあたった。具体的には次の諸点などをあげ了解を得た。 @要指示薬拡張反対、再販縮小反対といった言論活動だけでも設立の意味と価値がある。
A府薬医薬品分譲センター、同試験センター、堺調剤センター薬局はその業務内容からして府薬から切り離すのが筋である。
B薬局ローン、労働保険事務代行、火災保険の取扱い等、会員の福祉共済に役立つ協組作りをめざす

 避妊リング IUD許可の方針

 厚生省ではかねて検討中であった避妊リング(IUD)の製造許可について、このほど承認を許可する方針を決定し、十一月の医療用具特別部会に正式に諮問することとなった。

 二日会

 九州市場の安定化をはかるメーカーと卸の協議会である二日会は、十月二日福岡市明治生命ホールで開催され、左記諸件につき報告並びに討議が行なわれた。
@九月一四日、福岡県薬剤師会館にて行なわれた九州山口三者流通懇談会の報告
A前月確認された各県での卸と流対九州支部会との懇談について現在までの進度は、長崎県、鹿児島県、佐賀県、熊本県、大分県、福岡県(筑後地区、北九州地区)において開催ずみ。
B九月二七日、東京にて開催の日本医薬品卸業連合会の報告。
C其の他、情報交換。

 福岡地区十日会

 一〇月一一日、福岡地区薬業協議会に引続き開かれた福岡地区十日会の一〇月例会は、大型店の代表であった宗氏の急逝を悼んで黙祷を捧げたあと開会した。まず、宗氏に代って大型・グループの世話をする代表の決定については、次回全員出席して決めることとなった。

 次に値幅再販になれば実質的には値下げとなり、再販の価値がなく、再販がなくなる可能性が多いが、当協議会の存続の意味があるかとの発言に対し、出席者の殆んどはこの協議会が地区の薬価安定に役立っているとして、今後ますます流通の正常化のため、このような話し合の場が必要であるとの結論であった。なおその他、チラシ広告二、三件が報告されたが、鎮痛剤等の広告は最近の広告の規制の精神から特に自粛するよう要望があった。

 福岡市薬 薬と健康週間に献血と環境調査

 福岡市薬の薬と健康の週間行事の一環である献血推進運動は一六日市内目抜きの天神交叉点広場で行なわれ、献血者は一般一一九名会員七二名の多数にのぼり成功裡に終った。

 また翌一七日市学校薬剤師二八名が担当して実施した市内要所の環境調査は、姪浜、薬院六ツ角、香椎(国道3号線)の三個所で朝の八時から一七時まで熱心に調査され一般市民の注目をあつめた。なお、調査項目は一酸化炭素、騒音、じんあい等であったが、現在その結果集計中である。

 挾子

 ▼日薬はこのほど当局へ、健保法の改正による給付の引上げ、医療保険の推進、再販の改正等すべて薬局等の経営の圧迫につながる行政だとして医療制度の欠陥改善を要望した。このような要望は強く回を重ねてやって貰わねばならぬが、要望だけで解決しないことは誰もが百も承知である。一般会員はこれらの実現のため何をしてバックアップしたらいいか?お金を出すか代表を一人でも多く国会に送ることだと思うのだが…………

 福岡市薬、女子薬部会 初参加のボウリング大会

 10月11日午後8時から城山スポーツパレスにおいて福岡市薬開局・勤務・学薬部会と初参加の女子薬部会が対抗戦を行なった。

 開局部会井原・梅津両氏等がファイトを燃やしたが後続なく、部会優勝は若さと団結で勝る学薬部会が今回も優勝して五連勝を達成した。学薬部長の馬場氏は「市薬三部会で親善大会を毎月やっていたが今回から女子薬部会が参加して全部会が揃い、相互間の親善と技術が更に向上し、運動不足も解消出来る」と喜びを語っていた。当日の成績は
一位井原‐開局五五九ピン
二位梅津‐開局五四五ピン
三位藤原‐学薬五三九ピン
四位竹尾‐学薬五三九ピン
五位馬場‐学薬五二六ピン

 阿問呆答

 はなしにならないはなし
日薬代議員会傍聴席
阿 おまえは居眠りしているのか?
呆 いいや目をつむっているだけだよ
阿 目を開けてよく見ておかんといかんじゃないか
呆 だって傍聴席だからただ聴くだけで見てはいかんかと思っていたよ
阿 本当だね矢張り聴くだけにしておかんといかんね
呆 おまえもそう思うか
阿 余りミットモないざまは見せまいとして傍聴席と書いてあるのだろうからね
呆 早く行儀がよくなって観覧席と変えて貰うといいね
女の力は男の30倍
阿 代議員一二三名中女子はたった四名だね
呆 薬剤師の数は男女半々位だと聞いていたが
阿 女の代議員は三〇人分の力があるんだろう
呆 議長も女だからね
阿 やっぱり女は強いね
呆 昔から女の髪の毛は象でもつなぐというからね、当りまえだよ、男は皆女から生れた子供だよ、種よりも畑の方がエライからね、大事だからね………
体育の日
阿 体育の日はどうして休日だろう
呆 仕事を休んで体育にはげめということだよ
阿 毎日体を動かしている人は休んでまで体操なんかせんでもよかろうに………
呆 そういう人は仕事を休んでゆっくり休養せろということだよ
阿 そんなら休んで家で寝ていることも体育だね
呆 そうだよ、だから体育の日は休日にしてあるんだよ