通 史 昭和48年(1973) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和48年(1973) 7月15日号

 九州薬事新報の復刊を祝す 日本薬剤師会会長 石館守三

 九州山口薬剤師会と福岡県薬剤師会のお世話で九州薬事新報が復刊されることになった。昭和二十三年以来九州山口地区には安河内義夫氏の創刊された同紙があり、広く情報の伝達と意見交換の場を提供してきたのであるが、四十六年休刊となり地域の読者にはまことに不便、不都合が多かったことと思われる。
このたび、地区の薬学、薬業界の要望に答え、九州薬事新報が再刊されるに至ったことは、まことに時宜を得たものであり、御同慶に耐えない。現在、医療社会保険をめぐる諸制度の改革、医薬分業の推進と薬剤師職能の確立、医薬品の安全性と有効性の確保、公害の防止など幾多の難問が山積し、薬学、薬業界は酷しい情勢のもとにある。九州薬事新報はあくまで新聞の使命に忠実に、正確な報道に努められ、薬業界の木鐸として存分の活躍をされるよう期待し、九州薬事新報が地域の薬学、薬業と共に更に発展されることを祈るものである。

 九州薬事新報の"復活"

日本病院薬剤師会九州山口ブロック 会長 堀岡正義

 九州山口地区の薬業界の動きを関係者に伝達する役割を果してきた九州薬事新報の存在意義をわれわれは以前から高く評価していたが、先年事情により同紙が休刊の止むなきに至ったとき、その存在の重要性を改めて思い知らされた。

 何といっても日本の薬業界は東京と大阪を中心に回転している。したがって業界紙も両都市に集中しており、記事も東京および関西におけるニュースが多い。その他の地区のものは通知をのせるていどで、生の取材がない。

 九州山口、それに沖縄も加えたこの地区は、今秋第四〇回を迎える九州山口薬学大会に象徴されるように従来からよくまとまっており、相互に連絡をとりつつ業界に生ずる事態に対処してきた。その団結力は高く評価されねばならない。そして九州薬事新報は各県をむすぶメッセンジャーの役割を果してきたのである。

 今回、関係者のご努力により、同紙が復刊することとなった。復刊というより"復活"われわれは正にそれを待ち望んでいたのである。病院薬剤師会の各種会合は最近各県ともさかんである。それらの企画にはユニークなものが多く、その県だけの会員を対象にしていたのではもったいないものがある。そこで病薬では講演会、研修会などの通知を相互に交換することを申し合わせている。おかげで他県よりの参加者も多く、かなり実をあげている。九州薬事新報にこのような会の開催を掲載していただくことにより、上記のわれわれの考えかたは、より効果を上げうることとなるであろう。

 同紙編集の任にあたられる郡家、安河内両氏の健筆と関係者の後援により、九州薬事新報の復活が、薬剤師の職能向上と団結のため中核となって活躍されんことを祈ってやまない。
(九大附属病院薬剤部長 福岡県病院薬剤師会長)

 祝辞 福岡県衛生部長 岩下 泉

 九州薬事新報が復刊されるにあたり一言お祝いを申し上げます。九州薬事新報という薬事業界紙は、地方色豊かなことで懐かしい思いがある方が多いと思います。終戦後間もなく、安河内義夫先生によって創刊され、県下薬局薬店に隈無く配付されていたことを聞いています。二十有余年続いた地元唯一の業界紙も安河内先生のお亡くなりになってから間もなく休刊となり淋しく思われていたものです。

 今度福岡県薬剤師会を始め地元薬業界の有志の発起により、再び九州薬事新報が復刊されることは、発起人となられた有志には御苦労でございました。業界紙というのは中央で創作されるのが大部分であって記事も各社共通するものが多く、親しみや懐かしさがないものであります。

 今や薬業界は医療制度の問題、医薬品の供給姿勢、薬害問題と多難な状態にあると思います。業界は一体となって、これらの問題に対処して行かねばならないと思われるとき、業界紙として地元から発刊されるとは、情報の提供や問題点の解決にも利用することができ、業界には大いに貢献度の高いものと信じますので九州薬事新報が地元業界から親しまれ、信用されて大いに発展することを祈願してお祝いの言葉と致します。昭和四十八年七月一日

 祝辞 福岡県知事 亀井 光

 諸般の事情により、休刊のやむなきに至った九州薬事新報が本日再び意気も新たに復刊されることになりましたことを心からおよろこび申しあげます。

 ここ数年来医薬品を取り巻く環境が、特に激しくゆれ動いていることは周知のとおりであります。すなわち医薬品の資本自由化、添付廃止など医療保険における薬価適正化対策の進行、医療費公費負担制度の拡大に伴う薬局薬店の販売の態様の変化或いは「薬事公害」と称される薬害問題等々多くの課題が山積している状態であります。

 医薬品関係の業界がこのような多くの難問題を克服、安全性の高い医薬品を供給するという社会的使命を果たしてゆくためには日々推移する諸情勢を的確に把握し適時適切な手を打つことが必要であります。
このような変動の激しい状勢のもとに「九州薬事新報」が業界の良き水先案内人として再び発刊されますことは誠に喜ばしい次第であります。

 また、貴紙に対する関係者の期待は極めて大きいものがあろうかと思います。貴紙が、かかる期待に応えて、新しい、正しい情報を迅速に伝達することによって薬業界の発展と向上が誓約され、ひいては県民の健康で明るい生活が保障されるものであります。何卒この重責を肝に命じ今後のご活躍をお祈りして、お祝のことばといたします。昭和四十八年七月一日

 復刊ご挨拶

 近時私どもの関与する薬学、学術、医薬品の流通、並びに末端供給態勢、医薬分業を中心とした医療制度の在り方等々、幾多の問題が社会問題として大きく取り上げられ、厳しい情勢のもとにあることは御高承の通りであります。この時局を解決するためには、お互が新しい正しい情報を速やかにキャッチし、対策を出し合い万全を期することが必要と考えます。

 昭和二十三年、これらの目的に副うため、業界のご支援にて、九州薬事新報が創刊されましたが、主幹安河内義夫氏の逝去により、昭和四十六年、第八一七号をもって休刊の止むなきに立ち到りました。其の後、九州山口地区を中心とした地方紙がないため、情報の提供、交換、意見の発表の場を失ない誠に不便、不都合な状態が続いていた次第であります。

 先般来、九州、山口ブロックの各界の有志の方々より、早急に地方業界紙を復刊せよとの強い要請があり、去る五月一日、九州薬事新報復刊準備委員会が正式に発足し、世話人代表として、九州山口薬剤師会長・四島久、九州卸連名誉会長・大黒清太郎、九州卸連会長・渡辺荒次郎、筑紫二十日会相談役・国松藤夫の四名の方々のもとにて復刊準備が進められて参りました。

 此度、委員会のご指名により吾々両名が其の編集に当ることとなりましたが、其の責務は重大でありますのに浅学非才にて恐懼にたえません。今後勉強を重ねながら、唯々努力してまいる所存でございますので、皆様のご指導とご鞭撻を伏してお願い申し上げます。

 尚、復刊第一号の本紙に寄せられました皆々様のご厚情とご支援に対しまして衷心よりお礼を申し上げ、復刊のご挨拶と致します。
安河内 寿江、郡家 邦吉

 必要なことと必要でない必要なこと 九州大学薬学部長 田口胤三

 九州薬事新報は安河内鬼子がなくなってからしばらくその娘さんが面倒をみておられるうちにいつの間にか消えてしまったと思っていたら今回県薬剤師会の方で御世話され復刊されることになったそうで誠に結構なこととお慶び致します。

 鬼子御健在の頃は年末になると原稿用紙をもって御来訪になるのをなつかしく思い出します。この訪問が私にとっては暮を告げてくれるお使いでありました。サンタクロースは来なくても鬼子の来られない年はなかったように思います。私は専門以外のことを書くのを余り好まなかったので、鬼子に一献差上げる漫画で新春の執筆をごまかしたこともありましたが、鬼子には辞退しがたい風格があり短いものであれ必ず何かは書いたような気がします。

 その頃に比べると今の世の中は厳しくなりました。薬業界にも問題が多く、中には社会問題化している事柄もあり、それらを取扱われるのが本紙の主目的であり呑気なことは載せられないと思いますが、情勢が厳しければ厳しい程ゆとりのある紙面にしていただきたいと思っています。つねづね私は薬剤師は庶民の間にあって身の周りの化学製品や化学的現象についての解説者、相談役として最も適した人であると思っています。こういう役目を果すことは直接職業に関係ありませんし一文にもなりませんが、こんな一見不必要と思われることをすることが薬剤師としての一層の信頼と尊敬をうる道ではないかと思っています。

 職業意識が強すぎると反って気付きにくいことですが、この余分なことと思われることに払う努力は必ずや大きい代価として還えされるに違いありません、こういう立場に立って今迄述べたような直接薬業に関係ない問題について、わかり易い啓蒙的な記事を載せられると共に、時宜に適した解説を加えられ、庶民の化学の相談役としての薬剤師の手助けをされることを本紙に希望致します。

 九州薬事新報復刊に際して 福岡大学薬学部長 塚元久雄

 九州薬事新報が再び新たに発刊されることになったことは慶びにたえない。今書いてる原稿用紙は紙質は違うが執筆していると故安河内義夫さんが新報の新年号に何か投稿をと依頼されに来られた当時を、思い出す。同時に新年の名刺交換会など安河内さんを中心とした色々なことが九州薬事新報の名とともに頭をかすめる。

 九州薬事新報は今般発刊されたというより一時中絶された新報が復活したと考えてもよいのではなかろうか。以前の九州薬事新報もそうであったが今回の新報も発刊の主旨として中正で種々なわくにはまらず、新聞としての使命をはたしていくことを期待している。

 この良き伝統を基礎として今回復刊される九州薬事新報が薬業界新聞として多角的に内容を充実され、薬業界の情報ニュース等は勿論だが我々薬業界ばかりではなく医学歯学等の業界などで薬業界と直接関連あるごとき重要な事項については抄録的でよいから我々に知らせるように努力して戴きたいと思う。

 現在は学術経済政治等の面で我国のみならず世界を一つの単位として広く知らねばならない時代になった。甚だ勝手で無理な注文かもしれないが視野を広くされたいことを希望して復刊の祝いの言葉とする。

 復刊を祝して 福岡県衛生部 薬務課長 武田大典

 昭和二十三年発刊されて業界に親しまれていた「九州薬事新報」が昭和四十六年四月休刊になり残念に思っていましたが、今度復刊の運びになったことを聞き誠に喜ばしく心から御祝い申し上げます。

 御承知のとおり現在医薬品をめぐって種々の難問題が山積しており国民の関心も著しく高まっております。このような際に九州唯一の薬事に関する専門紙として皆様方の期待も極めて大きいものがあると思います。日々推移する中央の諸情勢を的確に把握し速やかに報道されるとともにローカル色豊かな情報の伝達に大いに期待をかける次第であります。

 又私ども行政に携わるものも薬務局の通達その他行政上の諸題について情報を提供したいと存じております。なお読者諸氏におかれても折角の業界紙でありますので種々の御意見御感想を発表して盛立てて戴きたいと存じます。終りに今後ともますます発展されることを祈念して簡単ではありますが私のお祝いの言葉といたします。

 復刊を祝う 長崎県病院薬剤師会 会長 清水龍夫

 気楽に読み、親しく接している新聞ほど、空気みたいに無くなってから飢えを感じるものである。前身の九州薬事新報が休刊になって僅かに二年にしてそれを感じるのは、気づかずして同紙に負うところが大きかった故であろう。恩恵には浴しながら何等の協力もしなかったが、心淋しく思っていたところである。

 薬業界紙は数多いが、全国紙では果し得ない近隣の情報源が今ここに先輩諸賢の御努力で復刊されようとすることは、極めて意義深く有難いことである。但し有難がっているだけでは今回の企画は十分な価値が発揮できないので各県で発行されている薬剤師会報、病薬報の九州版と見なければならない処に更に又意義を感じるものである。謹んでお祝いを申し上げるだけでは済みそうにないところには、そぞろに責任をも感じるのである。

 趣意書に見るが如く企業紙でないならば、これは即ち九州薬学会報、九州薬剤師会報九州薬業会報に準ずるものとして、その各単位団体は支援してゆき度い。

 本年は九州・山口薬学大会は四〇回を数え、全国にも類を見ない業界、学会の融合のもとでの盛況を迎えている。それは決して九州山口に城廓を作る排他性ではなく、近隣の提携融和のあらわれ以外の何ものでもない。その情報を伝え、密度を増す為の媒体としての本紙は、九州各県の総意と期待を荷ってここに実現したもので、第一歩はこれを利用することからその価値が生れ出るものであろう。快調の船出を御祝い申し上げ、更に風雪に耐えて業界に貢献あらんことに切にお祈りする次第です。
(長崎大学医学部附属病院薬剤部長)

 復刊にあたって 竹内克巳 エイシン薬品株式会社社長

 九州薬事新報がたくさんの方々のご好意によって復刊の運びになったそうで、時々穴うめの記事を書かせていただいた一人として心からお喜びを申し上げます。

 私はこの記念すべき復刊に当って月並みのお祝いの言葉を申上げる代りに、今後の九州薬事新報の歩みについて少しばかり註文を申し上げてみたいと思います。なぜならこれがほんとうに亡き安河内先生に喜んでいただける事だと信ずるからであります。

 高度成長の波に乗った薬業界は、今苦悩の道を歩きつつあります。ダウ平均二千円時代の花形株であった薬業界はダウ平均五千円時代になって逆に株価は半値に落ち込んだ。これは日本産業界における薬業界の今日の姿の表現であります。更に薬業界は昭和五十年を境として決定的大転換期にはいると思います。

 どの様な形でこれが現れるかと言われると大変むつかしいのですが、大ざっぱに言えば医薬品の本質を解明しつつ医薬品の使命の正常化(?)が進んでゆくと思います。

 高度成長時代の薬業界はオーバーな言い方をすれば「クスリ」の本質を見失っていた。只商業ベースで売りまくったという感を深くするのであります。二三の公害(?)問題があるにしても、他の化学工業界が悩まされている公害問題に比べれば薬業界はむしろ幸福であったとも言えるとさえ感ずるのであります。

 情報過剰時代と言われる今日、九州薬事新報が只単なるローカル情報紙であってはならない、ニュースという形のものであれば中央紙にはとても及ばないのは当然の事で、ここに九州薬事新報にオリジナルな何物かを求めたくなるのです。ズバリ言えば、九州薬事新報に「社説」の欄がほしいと思います。九州薬業界は今後どうあるべきかを社説の欄で大いに御教示をいただきたいと私は思っております。

 編集氏の高い識見と不動の信念とをもって、九州業界の正しいリーダーとしての御活躍を期待するもので毎号の社説を先ず読ましてもらう喜びを……と思っているわけであります。「社説」があるということは、九州薬事新報の性格の表示でもあり、又九州薬業界の正しいあり方へのルールを作ることともなりましよう。老人や幼児の医療の無料化は当然小売薬局の医薬品の売上げ減となるのは当り前のことでしようが、だからと言って雑貨屋の隅にクスリがあるのも困った事です。

 各メ−カ−は医療用品の開発に血道をあげ始めたのですが、これが前者の穴うめになるとは考えられない節がないでもないと思います。制度品商法も一寸あやしくなりかけているというのに皆さん方至極ノンビリしていられる様に思うのは私一人だけでしようか。

 大阪の参院選で森下氏破れ共産党に勝をゆずった。来年は野党政権の足固めの年になるかも知れない、薬業界はその時の対策を持ち合わせているでしようか。ガソリンがガロン一〇〇円になった時問屋はどうなるでしようか、人海戦術にたよっている問屋の泣き所が沢山目の前にニョキニョキと出て来たと思います。一体どこに生きる道を求めればよいでしようか。メ−カ−となると更にきびしい試練が待ち受けている様に思います。

 薬の本質から考えて当然やらねばならない事はやらねばならない。これがやれない企業は消え去るより致し方ない。運命論に似た考え方がここに存在する様に思います。

 この様な薬業界のかかえている沢山の問題そして今後起るであろう色々の問題について正しい指導と批判を力強くすすめていただきたいと思います。そしてそれを「社説」として力説していただきたいと念願するものであります。

 祝辞 第一薬科大学 学長 松野俊雄

 近く、九州山口地区を中心とした地方薬業界紙「九州薬事新報」が復刊されることを承り、一言、御祝辞を申し上げたいと存じます。私、この地方薬業界紙は従前から出版され、今日まで続いているものとのみ信じておりました処、昭和二十三年から昭和四十六年まで発行されておったのが巳むを得ない事情で休刊しておったことを聞いたとき意外に思い、再発刊を期待しておりました矢先き、九州山口薬剤師会および福岡県薬剤師会の肝入りによって再発刊の運びに至りましたことは真に有意義なことであり、必ずや立派な内容の整備した薬界紙が発刊されることを信じて疑わないものであります。

 さて、現時代の目まぐるしい変遷に伴い、薬学教育の改善、新カリキュラム(臨床医療分野を取り入れた教育課程)の問題・医薬品の有効性と安全性の問題・医薬品薬効の再評価の問題・医薬品の流通機構の問題・医薬品の供給態勢の問題・医薬分業問題等々数多くの問題が社会的問題として大きく取り上げられ薬学界、薬業界とも極めて厳しい情勢のもとにおかれていることは皆様御承知の通りであります。この際、広く業界、学界の意見を充分に聴取し、各種情報の提供、交換、意見の発表の場として一層の努力を払われて、立派な業界紙を社会に発表されんことを祈念して私の祝辞といたします。

 復刊の希望と期待 九州医薬品卸業連合会 名誉会長 大黒清太郎

 地方業界紙として九州薬事新報が多年安河内鬼子氏の努力によって独自の色彩ある存在であった。鬼子先生亡きあと、継続刊行出来難いことになって休刊今日にいたって居るが今回在福有志並びに関係者一同の発議とご協力によってここに再刊の運びになったことは、意義深いものがあり、業界のたねにもご同慶に堪えない処である。

 惟うにここ数年来の薬業界の諸相は異状な変化の支配を受けて大きく転回しつつあり、又今後も更に多様化の方向に進むことは容易に察せられるものがあろう。全国にある薬業紙は新聞雑誌を併せどれ程の数があるのか日々入手するものだけでも枚挙にいとまがない程の数に上ると思うが、其の中にあって読者の倦まざる支持を得て期待せられる記事を以て毎号を送ることは誠に容易なる業ではない。

 由来同業関係新聞は日刊新聞と相違して概して記事内容は硬直的で、所謂興味に乏しいことが通例であることは業界の実態から已むを得ないものであると思う。情報時代と称せられるが中央業界紙の二番煎じ的ニュースでは関心に乏しく、読むものとして失望させられる処となる。厳正公平にして一方に偏することなく、而もこの業界の各界各地の情報も正確に捉えて極めてスピーディに収録することが何よりも緊要であろう。

 地理的に福岡の情報が主となることも又已むを得ないとは思うが中央に於ける諸種の記事はそれぞれの業界紙に譲りここでは専ら九州各県及び山口県の関係問題を主体としたものであってほしい。

 各地薬剤師会、薬業士会小売商組の動きは勿論メーカー、卸業者等の動きについても幅広い分野の取材を集めて、真に価値ある紙面の編集せたれることを期待する。むろん限られた要員と時間と経費の制約もあって、今日直ちに十全のものは期し難いが、仕方がないがおつきあいで的な存在から脱皮して少なくとも九州山口の地域の地方色を協調して、委嘱ある権威的存在になるようあってほしいものである。
この為にも花森安治の暮しの手帖式経営は読者の為には忠実な方針であっても今日の業界紙では望むべくもない。

 この点関係メーカーには真にご迷惑ではあるが、有用な存在として広告にご利用願って、応分のご援助を願うことになると恐縮に堪えない。又情報の提供について官公庁、病院の諸先生、県薬務課当局始め各県の業界諸先生各位の絶大なるご支援ご協力に俟つもの大であろう。以上至難の業と思うが新たに編集陣に参画せられた郡家氏の識見に期待してそのご健闘を切に希うものである。
(株式会社大黒南海堂社長)

 復刊を祝す 長崎大学薬学部長 小林五郎

 今般九州薬事新報社が復活、再出発されます由おめでとうございます。思えば最近二十年間の日本経済の発展は目覚ましいものがありまして、遂には世界の経済大国と言われる程に成長いたしました。しかし、その一方日本国土の荒廃が著しく目につく様になり、外国の学者からさえも破滅的な方向に進んでいると指摘される現況であります。今後十年間は人間の生命、及び生活環境の重視へと進まざるを得ないと思います。この際、問題になる重要な点は、人口問題、環境浄化、老人対策、疾病(難病)の克服等、多々ありますが、その何れをとりましても広い意味で薬業界、又薬学界の差当り研究すべき事柄とも言えましょう。これからの業界の任務は極めて重いと思います。

 我々薬学領域で働く者としては、かつて無い社会的注目のもとに行動せざるを得ない様な情勢が、これからは、益々強まることでしょう。この進歩のはげしい時代に、九州薬事新報の再出発は地区の視野を広くし、この多くの問題に対して情報、啓蒙に重要な役割を果されるものと期待して止みません。

 新生を寿ぐ 九州医薬品卸業連合会 会長 渡辺荒次郎 株式会社川口屋副社長

 情報社会を背に、休刊されて居た九州薬事新報が、装いを新らしく復刊されることになった。マスコミの重要性を今更喋々することもなかろうが、薬業界の体質改善が迫られて居る七三年に、恰も我々がお願いでもしたかの様に、業界情報伝達の場を開かれたことは誠に慶びに堪えない処である。

 ともすれば対立になるメーカー、卸、小売に絶えざる新鮮な空気を送り、大衆に信頼され、社会に奉仕出来る薬業紙として、新生の第一歩を踏み出されんことを念じて已まない。

 さて、薬業界は誠に複雑多岐な問題を抱え込んで日の目を見ない日常である。その要因の一つは世間に対する薬業界の正しい認識のアピール不足である。因に、今春闇に見た労組の「生産性を上廻る賃金の要求」の背景をなした理論「生産性を上廻る部分が価格に転嫁されても、それは国際市場に均り合い、国際収支黒字不均衡を是正して円切り上げを防止する」と言うことに例をとっても我々薬業界は置き去りか。我々は価格転嫁どころか薬価基準切り下げが現状である。加うるに買い叩きの実情を具体的にご説明申し上ぐればこれだけでも"成程"ではないか。

 なお、キノホルムを筆頭に、事あればクスリのみが爼上に上っている。薬害の問題等、薬の専門知識無くしては到底批判出来ない内容の問題を、外観理論でクスリヤのみに皺寄せされて皆黙ってジットしている。剰え我々は医師会の様な強力な組織も出来上っていない。

 斯様の時に、メーカー、卸、小売のコミニュケーションの場、気兼ねのない情報交換の場が出来、ひいては薬業界の正しい認識が喚起せされて行くならば愈々業界の体質改善に移行出来るステップとなり得よう。

 今一つ。当地は中央より遠隔の地の為に、情報入手が多少遅れがちになっていた事は已むを得ない事であった。然しながら、経済界の変化は昔日の十年が一年のスピードを以て変化しつつある現今、之は大変困った問題である。それが新幹線の九州乗り入れと符合して、今後九州の隅々までに、本紙に依り迅速に、正確な情報が伝達されるならば、業界は勿論関係諸兄の状況把握に大いに資される事と信ずる。

 どうか、目的を持った業界紙として、編集の方針、運営方針を確立され我々と共に在っていただきたい。
此の意味で、本紙の復刊を心から祝い、また九州医薬品卸業連合会としても、当然のことながら、出来るだけのご協力を申し上げたいと思うものである。

 復刊お祝い申上げます 筑紫二十日会 相談役 国松藤夫

 世を挙げて情報化時代と云われる昨今、薬業界薬学界においても種々の新聞、雑誌、刊行物が発行されており、業界の動向や学界の進歩を刻々と伝えています。一般新聞においては全国紙は毎日一乃至二頁を地方版として組んでおり、又全国紙の他に各地域にローカル紙が発行されており、地域住民と深いつながりを持っております。

 業界紙においても、全国紙の他に、ローカル色のある新聞が必要なことは言をまちません。世の中に「空気のような」と云う言葉がありますが九州薬事新報は本当に空気のような存在であります。発行されている間には何もその存在価値について関心を持たれていない当り前の事のように思われていたものが、なくなってみると改めてその有難味が判り、物足りなさや不便を感じておりました。

 今回約二年ぶりで九州薬事新報が復刊される運びになりました事は福岡県のみならず、全九州山口地区の薬業界、薬学界にとりましてまことにご同慶にたえない次第と存じます。現代は又対話の時代であるとも云われますが、お互に心に思う事、考える事を発表し、その主張を述べることが必要と存じます。

 これらの主義主張を公正な立場でとり上げ、又それに対する賛否両論を報道し乍ら正しい世論の醸成に導く新聞を持つ事が業界のみならず社会全体にとっても必要なことであると存じます。即ちお互に所信を披歴し又他人の意見を聞くことによって色々の問題は解決への道が開かれて来るのではないかと存じます。ひとり薬業界内部の問題のみでなく、広く地域社会全般に対して業界の実情をPRする事も本紙の持つ大きな任務ではないかと存じます。

 薬業界、薬学界の内部においては常識と思われる問題でも、一部の意見によって誤って大衆に伝えられている事も多いのではないかと思われます。このような現況において正しい知識を判り易く一般大衆に伝え、理解してもらう為にも、業界紙の持つ使命を再評価すべき時期ではないかと存じます。このような重大な使命を持った本紙が、復刊されるに至りました事は、誠に時宜を得たものと存じます。

 本紙の復刊に当りまして私共は業界の一員として、本紙の益々の発展のため、協力させていただきたいと存じます。本紙の発展は地区薬業界の円満な繁栄につながるものであると存じます。喜ばしい八一八号でスタートした九州薬事新報の今後益々の御発展をお祈り申上げて御祝いの言葉と致します。
(武田薬品工業株式会社監査役)

 九州薬事新報復刊 鹿児島県薬剤師会 会長 山村実治

 九州薬事新報が装いを新たにして発刊されることになった。中央における薬業紙は沢山あるので本紙は主として九州山口の薬業界に関することに重点をおいて編集されるそうで本当に有意義な新聞となるであろう。編集部の方々も非常に充実して居るからさぞ立派な新聞に育つであろうから、我々としても後援を惜しんではならない。後援とかくと他人の仕事を応援する様に受取れるが、この新しい新聞は、関係メーカー、卸、小売が協力して作り、運営して行く新聞であるから、九州山口各県の薬剤師会、業種商会、商組は勿論、卸メーカーも自分たちの責任に於て良い新聞を作って行く努力が必要である。

 然し、新聞事業は、仲々六ヶ敷いと言われているから、当局者は大変苦労が大きいと思うし、今期の要る仕事であろう。各県の各団体が記事をどんどん送れば九州、山口薬業者の立派な機関紙の役目を果すに違いない。更に、各県には夫々団体に会報があるが、最近の事象のめまぐるしい変化に対応するためには、時機を失したり、通報性を失ったりすることがよくある。この様な点もこの新聞は解消してくれるに違いない。

 又一県では解決が困難な事が起りがちである。即ちいろんな事が広域的になって来ているから九州、山口で処理したり与論を喚起したり、意見をまとめたりするのに非常に便役をするであろう。九州、山口の地に根を下し、そしてその区域の業界、剤界の良き広報紙となり、諸々の付託されたものを果す立派な新聞に育つ様に祈るや切である。

 編集方針もこの様な点を重視して中央のニュース取次紙でなく、名実共に地方紙としてその使命を果すとの事であるから、この方針通りにお願いしたいが、各県からの原稿集めは相当骨が折れるであろう。初めのうちは協力するつもりが軌道に乗せるまでは当事者は苦労が大きいであろう。兎に角、我々も頑張りますから、当事者の方々は大変でしょうが宜しくお願い致します。

 九州薬事新報の復刊にあたり 

全国医薬品小売商業 組合連合会理事長 荒川 慶次郎

 今度九州地区の薬業界の方々の総意により九州薬事新報の復刊を見ました事は誠に重大なる意義をもちお目出度存じます。現代は情報の時代と云われますが、近時政治は勿論の事経済界、薬業界の様相は時々刻々その様相を変化しております。

 医薬品の流通の問題、医療制度のあり方等におきましても水の流れるが如く刻々とその姿を変えております。かかる時我々業界人としましても適格なる情報の掌握なくしては到底正確なる判断とその対策を樹立する事は不可能であります。そうした意味に於て新聞の持つ敏速なる適格なる情報の提供の使命は非常に重大であります。その責任もまた大きなものがあります。

 今度九州山口を中心とした情報の提供、そして交換業界人としての意見の提案の場を提供されますことを目的として九州薬事新報が皆様方の総意により復活を見ました事は時代に適合した快挙とお目出度く存じます。今後薬業界は一層困難な事態に突入することは明白であります。かかる時貴紙の果す役目と使命は重大なるものがあります。業界の期待を裏切る事のないよう御活躍を祈り発刊の祝辞とします。

 復刊に寄せて 沖縄県薬剤師会 会長 宮平善雄

 九州薬事新報復刊にあたり心からお祝い申し上げます。薬学、医薬品の流通とその供給態勢、分業を中心とした医療制度の諸問題が今日、社会的に論議されつつあるのも世相の反映かと思いますが、こう言う多事多難の時に薬事新報を復刊せられることは、最も時機を得たものと思い関係者の英断と熱意に対して厚く敬意を表します。

 不偏不党中正に徹するは勿論乍ら薬業界の世論作りと指標確立に邁進せられ大衆へのPR等、幾多の難問もあると思いますが関係者の今後の活躍に期待してお祝いの言葉と致します。

 九州薬事新報の復刊にあたって

福岡県商組理事長 全商連副理事長 白木太四郎

 九州薬事新報の復刊に当り心より敬意と祝意を申し述べます。元福岡県薬務課長安河内先生によって創刊されました九州薬事新報が、先生の御逝去後、家族の方で続けられておりましたが、その後廃刊のやむなきに至りました。九州・山口の薬業事情を伝え、薬剤師会並に商業組合の事業運営並びに志向についての情報や、中央情勢の重要問題等を伝え、その問題点についての示唆を示し、小売薬局、卸、メーカー等にそれぞれ重要な役目を果していたのが、その機能を失って、下部組織への連絡が中断されました形で誠に九州薬業界の発展に歯の欠けたような状況でございました。この度薬学、薬事、薬業、各界の有力者の協議の結果、困難な運営であるが、みんなの協力の力で、七月より再び発刊される運びになりました。

 九州でも一番問題の多い福岡県の薬業事情が記載され、更に各県の薬業界の動向を中心にして、編集されることになりました。新聞編集方針としてあくまで中正を期し、特定の企業、権力、個人、思想に左右されることなく、広く各階各層の意見が充分発表されうるようにしたいという事であり、相互向上発展のためにあるといわれております。

 誠に九州薬事新報は、九州山口地域業界の灯台であり、灯台の灯が消えて困難な暗夜の航海が続けられましたが、又明日からは業界の嵐の激浪の中にも灯台の煌々たる光がともされ、航海の安全と発展が期待されるわけであります。

 今や小売薬業界は未曽有の危機に当面している、小売薬業の滅亡か、或いは、少数が生き残り得るか、今後薬業界の発展のための法改正や権利の進展については益々難多しの時代を迎えようとしております。
例えば分業の問題を考えましても、六年前に厚生大臣の発言で、医薬分業が五年後に実施される声明がなされ、三師会でも日本の医療制度の改善のため、そのように推進すべきであると協調されましたが、日薬高野会長が参議院の席を失われて以後の三師会の協調は、我等の理論や学者としての識見の上に於ての、日薬としての発言はなされたけれども、政治性に於て一層の弱体化を示している事実はいなめない。

 当時、分業を賛成した日医武見会長は、医薬分業をされた当時の事情と、現状とを比べると、その当時のような専門的調剤技術を必要としないし、調剤はヒートシールされた錠剤、カプセルの銘柄と数を数える能力さえあればそれでよいのだといい、又日本薬種商全国大会に臨んでは、ヒートシールの医薬品を販売するのは貴方達こそ適切でそのためには医師会は大いに協力すると語り、医薬品の取扱いについての薬事法にきめられた薬剤師制度不在の放言がなされ、更に医師会として分業反対のためのポスターを作成し漫画入りの「患者が朝家を出て医師の診療所を訪れ、診察を終えて処方せんをもらって薬局を訪れ調剤をしてもらい、家に帰ってその薬がのめるのは夕方すぎになる」病の苦痛を一日中待たされてやっと夕方薬がのめるのだ。分業になったら患者は大変な不便になるのだと宣伝されており、病院開業医の待合室にそのポスターがはられて分業反対を積極的にPRされている。

 大衆薬の安全性という錦の御旗のもとに、効く薬の使用制限や、効く薬を効かない薬の用量への格下げ改正や、更にこの方針に従って今後十年間に各症状別薬品についての洗い直しが進められている。

 要指示薬も一昨年十二月二十八日突如として厚生省の一方的発表として、多量の追加品目を告示されましたが、官庁は御用納めで休日であり年末の陳情も反対運動もできず、新年正月を迎えての早々の総決起大会もやり難い時機を狙った故意的意向の下に実施されている。要指示薬に指定した一品目の生理周期変更薬(いわゆる経口避妊薬)の指定理由に女性ホルモンの発ガン作用、脳血栓症の副作用があるからといわれているが、それは十年前に発表されたものであり、その当時これを調査された東大医学部小林産婦人科医長によれば、十年前の学会の内分泌委員会が医学的に見てとりあえず一年間の連用は差支えない。医師の監督の下なら問題ないとしたのを今回引用して、薬局はいけない医師なら差支えないとしている。

 英国医薬品安全委員会で八年間の調査の結果「女性ホルモンを長期間服用しても副作用の心配は何らない」として四七年十月二六日、新しい経口避妊薬(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)十種類の販売を許可し、米国のFDA(食品医薬品局)も「血栓症、子宮ガンとは無関係、乳ガンには両論ある」と宣言、ソ連と日本を除く各国ではほとんど解禁状態になっている。

 現在経口避妊薬ピルは米、英、北欧に於いて一、五〇〇万人の女性に常用されている。厚生省は日本で四六年度の中絶手術は七三万件と公表しており、公表してない分を推定すると二〇〇万件の手術が行なわれているといわれ、その九五%が既婚婦人で、受胎できる女性の八人に一人が中絶をしており、手術の後遺症や死亡を考える時これの被害こそ誠に重大であります。

 世界各国の婦人が中絶から身を守るためピルの恩典を受けているのに日本ではこれを拒否している。厚生省の非科学的官僚行政に対し誠に憤りを感ぜずにはおられない。副作用があるとして要指示薬に指定されたこの製剤が月間売上約三億円という事実があり、要指示薬指定以前より逆に増加している。このような女性ホルモン剤を将来医薬分業にするための準備態勢だと称して、要指示薬に追加した真意が何処にあったかが露呈されている。チクロが副作用ありとして使用禁止になったが、それはアメリカの砂糖輸入のためであったと後で伝っているが、何かそれと同じような臭いが感じられる。

 中央薬事審議会やその中の薬効審査会或は副作用調査会の議も経ずして要指示薬に追加告示された全品目を、白日の下で再検討することが必要であろう。四月五日の参議院予算委員会の第四分科会で須原参議員の質問を見ればよくこの間の事情が理解できると思います。

 医薬品生産高を見ますと昭和四三、四四、四五年までは年産前年比増二二%で増産されましたものが、四六年は二・四%の増と激減し、一兆八六八億円になっております。医薬品中の医療用薬を除き、一般用薬の占める比率は、四三年は二九%、四四年は二七%、四五年は二五%、四六年は二二%と漸減し二三四二億円の生産であり、四七年は更に下っていないかと考えられます。配置家庭薬一〇〇億を除くと二二四二億円であります。小売価格を卸・小売の手数料を加えて五掛として小売価四四八億円で、薬局向五万軒の小売一軒当り年売上九〇〇万円に当り約二五%は大量販売店で販売されるので、一軒当り平均年六七五万円の売上になり一日一万九千円の大衆薬の売上になります。

 医薬品製造承認の現状は医療用は昭和四四年は前年比五一%、四五年は四〇三%、四六年は六九%、一般用は四四年は前年比七八%、四五年は一四四%、四六年は五二%と急激な減を示しております。

 スーパーマーケットチェーン協会並に消費者運動としての再販廃止運動が、公取への陳情や大衆へのPR等ですすめられておりますが医薬品の特殊性は、唯価格が安いということのみで決定されるものではなく、乱用助長や副作用薬害の問題も伴うものであり、英国に於て他の再販は廃止されたけれども医薬品については英国経済裁判所の判決理由にある如く、医薬品は市場に於ける乱売競争の立場におくべきでなく、国民が自らの健康を自ら治すという立場からも再販を実施すべきであり、それが国民の福祉につながることを四ヶ条にわたって説明し、再販がなくなった場合の消費者の不利益を六ヶ条に亘って説明しており、医薬品については国民の保健衛生を何ものにも優る利益であるという立場を貫いている。医薬品の再販を外して医薬品の価格を利用し、おとり商品として乱売の具に供し自分の商業政策に利用しようとする動きについて、全薬業者は十分警戒注意すべきであります。

 医薬品のドリンク剤の防腐剤、使用制限についてもマスコミのとり上げ方は、如何にも毒物を使用していたという印象を与えるとり上げ方であり無承認の防腐剤使用ということで、薬事法違反回収指示として、一一社一五品目を誇大に報告され、小売業者のドリンク剤販売に対して不信感を殊更にあおっております。漢方薬の製造基準についても何らか考えられているということであり、六五才以上老人と三才以下乳幼児の治療費無料化は薬局店頭のこれら対象客をかっさらう事になりつつあります。

 小売業者の前途は益々多岐多難であり、医薬分業受入態勢のためだとほのめかしながら、大衆薬の規制や要指示薬の拡大追加を許して来た我薬業界も、医師会の分業反対声明を機として我々は益々団結を計り、国民のセルフ・メディケーションに沿いうる、吾々の専門的知識技術の研鑽と、組織の強化による結集を計り、農協の如き政治力を薬剤師各自の自覚によって培い対処して行かねば、小売薬業の前途は誠に風前の灯であり、希望ある前途、栄光への道は自らの手で切り開く努力をする以外、悔いを百年に残すでありましょう。

 薬剤師の免許証はある、俺の一生はこれで生活が確保されていると安心し、油断し、無関心の薬剤師がありはしないか、薬剤師の免許証はあったしかしその薬局は、いつの日か水泡の如く消えてなくなったの悔いはお互いに味いたくない。

 薬種商は自分の資格保持のためには全てを投げうって集り、多額の金を積んで「数は力なり」その団結の政治力で戦っている、果して今日このとき薬剤師こそこの現状を認識し政治性に総決起すべきではないだろうか。

 九州薬事新報の復刊を祝して 佐賀県病院薬剤師会長 於保誠

 この度「九州薬事新報」が各界有志の方々の御支援御協力のもとに、準備委員会が設立され愈々復刊の運びとなりましたことは誠に慶賀の至りに存じます。心よりお祝い申し上げます。

最近、医薬品の副作用をめぐって、その安全性、有効性について国民の深い関心と批判が高まりつつあることは周知の通りであり、又医薬品の品質管理、流通、供給の面に、更には医療保険の抜本改正等、難問題が山積しております。この時に当り地方薬業界の専門紙として「九州薬事新報」の使命は重且大であると考えます。九州山口地区の薬業界の健全な発展と薬剤師職能の向上のためにも、公正な情報の伝達と、吾々の良きアドバイザーとしての役割を果して貰いたいと切に希望すると共に今後の発展を祈念して止みません。
(佐賀県立好生館薬局長)

 復刊を祝す

鹿児島県病院薬剤師会 会長 鬼丸徹 鹿児島市立病院薬局長

 我々は現在おかれている環境の中から、色々な情報を得ているが、その過多にふり廻され、薬業界の複雑さ、推移の激しさに唖然とするのが実情であります。各県の事情を知る由もない時に、九州薬事新報が復刊されることは、時期的にも必要なことと、お喜び申しあげ、又期待も致す次第であります。これからが尚、御苦労の多いことと存じますが、我々の燈として、益々の御健闘を祈ります。

 小異を捨て大同につく 宮崎県薬剤師会 会長 長峯 三千夫

 九州薬事新報の復刊に当り、お喜び申上げます。日本薬業界は現在薬効の再評価、広告の規制、適配の緩和、再販の縮小、流通の複雑、医薬分業其他種々の難問題を抱蔵しながら流動している。元来医薬品の使命は、必要な時に、必要な品が必要な時に、必要な分量を正しく使用されて疾病の予防、治療に貢献すべきものであることは云うまでもない事である。昨年夏欧州各国の薬業視察により、先進国がこの基本的観念に忠実であることに私は深く感銘した。

 然し日本では医薬品が国民の健康のためと云う目的以上に、経済的優先(金銭的利益)のために、大量生産、大量販売、大量消費が謳歌されて、乱売や医原病を生じている。このままで行けば、国民の薬に対する不信は更に増大し、水銀やPCBの公害問題と同じ道を辿る危険性をもっていると思う。又全国的薬業団体は政治的に分断されて、全国区参議員一名も出せないまま、何処に活路を見出すのであろうか。薬業関係の個人や各団体が狭い視野で夫々の権利のみ主張し、本元の目的を見失っては、やがては政治家は勿論国民にまで見離されてしまう。

 メーカー、卸問屋、小売業者、勤務等薬業関係者すべてが、小異を捨て大同につく考えで協調し、団結して行く以外に、道は開かれ難いのではなかろうか。このために少くとも九州山口ブロックでは、新しい情報を交換し、緊密な連繋を取って進む必要を痛感する次第である。然しながら新聞の編集には目に見えない苦労が伴うことを九州薬業人が推察しお互いに助け合って行かねばならない。九州薬事新報が薬業界の新たな前進に多大の貢献をし発展することを心から期待してやまない。

 九州薬事新報の復刊を喜こんで 馬場正守

 向夏の候、「九薬報」の復刊の報を聞き、嬉しく存じます。安河内先生が逝去されて二ヶ年、私どもは中央誌に薬業界の動きを見るだけでしたが、今日より再び身近な九州の空気を吸う事が出来る様になり、肌の合った暖かさを感じる様です。

 承まわる所に依れば、会の動き、業界の事も含めて随筆等も記載されるとの由で、先賢先輩の御意見を広く知る機会が得られ、この様に考えると尚一段と喜びが高まります。

 さて福岡県学校薬剤師会はその母体を昭和二十六年福岡県薬委員会の中の学校衛生委員会(故磯田会長)に求める事が出来ます。昭和二十九年には学校薬剤師会として誕生したわけですから、今年で十九才になるわけです。初代故磯田先生、二代早川先生、三代友納先生と発展をつづけ、現在では五五〇名の学薬会員を持つ一つの団体とし、内外ともに認められる様になりました。これまでには幾多の困難もあった様に聞いていますが、歴代会長の手腕と、その指揮の良さと併せて、県薬会長の程良きご指導があって、上手に乗り越え得たものと存じます。

 本誌にも今日から、その折りにふれて学校保健と薬剤師の問題等を提起する機会があるやと考えますが、諸姉諸兄のご指導を願います。私は学校薬剤師は、薬剤師としての仕事を通じて、社会に奉仕する一つの職能と考えています。労多くしてその報酬は決して多ではありませんが、薬剤師の地位の向上としては、前途が最も明るく、そして社会が最も求めている道であると心ひそかに思っています。九州の学薬の先生方よ、「九薬報」を通じて、肩を組み、手をつないで高らかに一歩一歩前へ進んでゆこうではないか。
(福岡県学校薬剤師会常任理事・福岡市学校薬剤師会会長)

 医薬品等を供給する者の責務を考える 福岡県薬剤師会 会長 四島久

 環境保全、公害防止という言葉が決定的世論となり吾々にとっては薬害防止、医薬品の安全性の確保という事が至上の責務となってきたようである。医薬品の場合安全性と同等に重要なことはいうまでもなくその有効性であり理想としては有効無害ということであろう。然し有効無害という物はそうザラにあるものではないからこそ薬と毒は紙一重、裏表とか使い方では毒にもなる等格言らしいものがある。

 然し吾々末端の医薬品供給者は如何にして害を及ぼさずに効あらしめるかということを常に考え研究し、使用者に適切な指導をする責任を持たねばならないことになる。医薬品の特殊性とは医薬品そのものに対する価値判断が素人に出来ぬものであり且つその使用法等に関する知識もないから医薬品そのものの品質管理、使用方法の指示など、すべて吾々の責任において指導供給すべきものであるという事である。
であるからこそ吾々が医薬品を供給するに当って修得した専門知識を活用すると同時に一つ一つの医薬品の安全性、品質の確認をして使用法等を指示し供給せねばならないことになるが果してそれが実行出来得るであろうか、それぞれの医薬品を一つ一つ化学的に試験検査をして供給することは非常に困難な事であり不可能に近いであろう。

 とすれば如何にしてその責務を果すかということが現実の問題となる。一般に医薬品は生産者自身が自己の製品については厳密な試験検査(これも同時生産製品の中から一部抜き取りして行う)をし、規格確認をして流通業者を経て(勿論此の段階でも十分品質管理が行なわれる)末端供給者の手に渡るものであるから吾々の段階では生産者、中間流通業者との信頼関係を基として特殊な場合を除き改めて品質検査を行なわないのが常識となっているのが現況であろう。

 不幸にして供給した医薬品による薬害が生じた場合その責任は生産者のみに帰するという考え方も成り立つかも知れないが、そのものを供給した吾々もその生産者のものを選んで供給したという責任から免かれることはできない。だとすれば吾々が供給する医薬品を選ぶに当って、只有名生産者の製品だからということのみで能事足れりという訳にはゆかない。むしろ無名であっても優秀な生産者の製品を選ぶ事が本筋でなければならない。優秀であるうえ有名であれば尚更結構である。

 利害得失よりも吾々自らが選んで恥じない信頼出来る生産者の製品を選ぶ責任があると考える。戦後二十余年に亘る所謂三マス時代(マスプロ、マスコミ、マスセール)の在り方から責任ある医薬品供給者本来の在り方に変身して行かねばならぬ時代になってきたことを私は痛感する。

 信頼という言葉は単なる信用という言葉よりその内容が広く深いものである。双方の信頼関係とは相互に信用度を高めて行く関係を意味していると思う。永年に亘る良識的業績の積み重ねと信用し会う付き合い取引等の蓄積によって信頼関係は生れて来るものであろう。

 又生産者の研究、検査、試験、生産作業等の在り方が生産者信頼の基礎となるものであり、流通業者に対する信頼もその企業良識その他を知ることによって生じて来るものである。消費者と吾々との間に於ては吾々の営業姿勢によって信用され相互の信頼関係が産れて来ることとなろう。

 生産者−流通業者−吾々-消費者の間が信頼という一本の強い綱によりつながる事によって薬害のない有効優秀な医薬品が必要にして充分なだけスムーズに流れて行く事になり、その様になして行く努力をすることが吾々の責務と私は考える。

 先日機会を得て十八年前砒素混入粉乳事件を起した森永乳業の大和工場を見学した。砒素ミルク事件以来被害者世論に痛み付けられ乍ら再び禍失を起さない為めに、完全工場の設置に総てをかけ新生産機構を開発し六年前に完成した由である。

 大して大規模の工場とは見えないが設備は総て近代化しオートメシステムとなっており此の工場の能力は全国各社粉乳生産工場の総生産量の三〇%以上の生産力を持つと聞いた。それ程の工場であり乍ら従業員は僅か八十名であり尚驚くべき事はその半数四十名が試験室勤務であり原乳原材料製品の検査試験に没頭している事である。

 生産工程の精密さは勿論であるが試験検査の設備状況も一流製薬メーカー並のものと見受けた。食品生産者として此程迄の完備が要求されるものかと一寸奇異な感じがした程であった。話しによれば此の程度の設備をした工場は世界中で米国に只一工場あるのみとの事である。

 過去の禍失を率直に認め被害者へのつぐないのために如何なる犠牲を払っても全力を注ぐという真摯な在り方と再度禍を犯さない様優秀食品の生産に異状な迄の努力を続けている姿に接し感深きものがあった。過去は過去として現在は優秀生産者と見ることができ、一日も早く流通業者消費者との間に信頼関係が出来る事を望むものである。

 学薬こそ頑張れ 長崎県学校薬剤師会 会長 桑原方治

 創刊おめでとうございます。筆不精の私が投稿する羽目になりました。昨年長崎県学薬会長をお引受けしたばかりで、申しあげる言葉もありませんが只現在の薬剤師界、業界の暗中模索している中に学薬としての使命の重大さを痛感しています。

 学校環境衛生や地域の環境衛生、公害等、この仕事は薬剤師でないとできない仕事であり又他にゆづってはいけない私共の大切な仕事だからです。大きな使命だと思っています。社会の位置は学薬によって薬剤師の地位を向上させつつあることも皆様すでにご承知のこと、心ならずも年間を通じ一度も学校を訪れない人、又学校職員その他社会一般の方からの質問に対しても回答もできない学薬であってはいけません。

 常に原因を追求し研修を重ねあらゆる公害の予防に努力することです。学薬こそ頑張らないと益々窮地に陥ってしまいます。自分に云いきかせると同時に長崎県学薬の会員にもお願いしている次第。先覚者、又後輩に対する現代に生きる唯一の私共学薬の使命として任務遂行の徹底を心よりお願いします。
九州薬事新報の再出発に際し一言お祝いと投稿の機会を得ましたお礼と益々貴社ご盛隆を祈念します。

 我が道への愛 長崎県女子薬剤師会 会長 野川フミ

 太陽に輝く国体を昨年開催された鹿児島市での一人言です。古い人間である私は、現代若い方々の言語、行動にややもすれば戸惑いを感じます。又腹立しく思うこともたびたび、例えば愛する、愛されると言うことにしても愛されたいの方が幸せかのように望んでいるようです。その反対に自分一人のみ強く愛するとか愛とはギブアンドテイクでなくギブアンドギブではないのでしようか。あらゆる生物、花、鳥、犬猫に対しても、まして人間は勿論です、男女間、夫婦間の愛も親子の愛もみな同じではないでしょうから、同じ道を歩む私たち薬剤師もお互に惜みなく愛情をそそいでいけたらどんなに幸せかと思います。

 鹿児島へきてお顔すらしらない後輩の方々の懸命に働いていられるお姿や歓迎を受けてこれが薬剤師である職能を本当に愛してる姿だ美しいと感じました。この気持があればこそ研修会も盛会で実多いものであったのでしょう。あたえて損をするものではありません。日常ヘマばかりやっている私ですが薬剤師の道をこよなく愛し、又すべてを愛しようと努力している慾張りかもしれませんが心の中はいつも朗らかです。前言の和かい方々への戸惑い、腹立しさも今日ばかりは一時休止、ああよかったと楽しい一日であったことを感謝しつつこれからも辛抱強く愛してのみ生きることに専念したいと思っています。

 AC型小売薬業界 長崎県薬剤師会 会長 隈治人

 「色の白いのは七難かくす」というコトワザがある。僕は死んだ祖母から、よくこの言葉を聞かされたものだ。いま字引きをひいてみると「女の顔色の白いのは少しくらい醜くても美しく見せる」という解だった。難というのは欠点の意であることが確認されるわけである。

 私の娘や息子は「お父さんの顔はきたならしい」とズケズケいう。近ごろの子供には孝行という言葉は教えられていないらしい。可愛気のないこと、おびただしい。それにもまして二人の娘が「わたしたちのような美人が、どうしてお父さんのようなキタナイ人からうまれたんでしょうね」とまでいう。その図々しいことまさにおハナシにもならぬ。僕はガク然としてコンプレックスに陥ったりする。

 もともと僕は色白の美男子であったから、それは若いときにはモテモテのモテモテで、女性の追求を避けるのに大変な苦労もしたものである。一人二人なら面倒もないわけだが、何しろ数が多いし、それに情の濃ゆい惚れようをされることがまた多くて、ウンザリすることも屡々だった。そういう色白の美男子だった僕が終戦を境にして、どうしてこんなにキタナラしくなったのか。

 それを思案してハタと思い当るのは、僕にふられた無数の美女たちのそれこそ無数のウラミやツラミ、つくづく女の恨みというものは恐しいと思うのである。しかしこのような怖さの実感はまあ特例中の特例で、あなた方のよう普通にしかモテたりフラれたりしなかった人たちには、とてもとてもおわかりになるはずはないと思う。「顔と人格」との関係について僕はつぎのような一家言をもっている。つまりに簡明にいえば四つのタイプA型=顔がキレイで心もキレイ。B型=顔がキレイで心がキタナイ。C型=顔がキタナクて心がキレイ。D型=顔がキタナクて心もキタナイ。僕は終戦までA型で、終戦後から現在まではC型である。

 偽善者という言葉の正反対側に露悪家という言葉がある。高校の国語の試験にもでる反意語ともいうべきもの。この言葉は私の記憶ではたしか夏目漱石の発明創案であった。善人の癖にワザと悪人らしく振舞うのが露悪家なのである。偽善者には気取り屋タイプが多く、気取りがプロフェッショナルになると偽善者の適性に叶う。露悪家には正直者で照れ屋が多い。照れ屋だからワザと悪党っぽく振舞うのだと思う。偽善と露悪についてもABCD型が当てはまる。良さそうで良いのがA型、良さそうで悪いのがB型、これがプロフェッショナルになると偽善者。悪そうで良いのがC型。この落差の烈しいときが露悪家、ワルのワルがD型。

 いまの世はまさに「乱世」で、乱世にはB型とD型の人間が横行し、そういうタイプがともかくも金を儲けたり地位的にも成功したりする。テレビのコマーシャルで僕が注目している言葉は「楽チン」と「カッコ良い」のふたつであるが、このふたつこそ現代の「偽善」たるB型を代弁しているように思われる。

 もうひとつ「猛烈」という流行語があった。これがD型のワルのワルの厚顔な強行突破主義を代弁している。現代は複雑でB型とかD型とかいう原型的なものばかりではない。B型とD型を組みあわせたものが組織的には強い実力を発揮しているようである。これを分解して書き直すと「良さそうで悪く」て「悪そうで悪い」という重層型である。被害者乃至カモ役になる大衆は「良さそうなところにダマされる」が「実際にはわずかばかりの汁を吸ってタップリしぼられ」て悪党であるBアンドDは「たっぷりしぼった汁のなかに、ダマした相手を溺死させる」ようなムゴイことを平気でやるのである。

 薬業界という社会に僕が始めて入ったのはいまから二十四年も前のことだったが、小売のその後の歴史をふりかえって見ると、まず卸の小廻りによる小売領域への侵犯、その莫大な被害(薬局に卸す価格よりも安い価格で大会社の消費者に薬品を納入するのがD型卸の常道だった)、それに抵抗を示してようやくその作業が軌道に乗りかかったと思ったら量販スーパーの安売り攻撃にさらされ(スーパーの売値は薬局の仕入値よりも何割も安)、再販制度の大幅導入によってやっと安定期が来たかと思ったら再販批判と否定論が消費者プロからうちだされて、また悪戦苦闘の道へ―等々卸に痛めつけられたかと思うと、スーパーに首を折られそうになり、やっと生き延びられるかと思ったらプロ消費者から足もとをくずされそうになる―というわけで、この二十四年間、一日として精神安定のゆとりなどなかった、といっても過言ではない。

 よく考えて見ると薬局薬店の経営者にはA型C型が大部分を占めており、いまの乱世では苦労せざるを得ない人たちばかりなのである。そのうちにひと握りのB型D型族がいるわけであるが、これとても小物ぞろいであっておおかたは虎の威を借る狐タイプのようである。しかし国民消費者にとっては、小売薬業界にA型C型が多いということは大きな仕合わせであろうと僕は考えている。

 私の提案 熊本薬剤師会副会長 下田健次郎(旧名 正)

 現在、我々薬剤師がかかえている医薬分業、公害、適配、要指示薬、勤務者待遇改善等の諸問題は国会並びに社会に於て大なり小なり取上げられている事はご承知の通りである。我々もこれら諸問題が早期解決、実現するよう一日千秋の思いであるが、これらの諸問題について対処推進するのは日本薬剤師会及び都道府県薬剤師会(以後略して日薬、県薬と呼ぶ)である。

 然し、現状は余りに非力で会員の期待に答える事は当分実現しそうもない。そこで現状を打破する為め敢えて私は提案したい。その動機は次の通りである

 熊本県薬は昭和四十三年六月組織と機構を一部手直し保険薬剤師部会(別称保険薬剤師会)を設立、其の負担金として保険薬局は毎月保険調剤報酬の一%を指定銀行で控除、県薬口座に振込むという年初を指定銀行宛に差出し、負担金徴収を実施した事に始まり、四十四年十一月設立の県薬医薬分業同盟は日薬分業同盟の規約を県下保険薬局に適用、三年間其の特別負担金の完全徴収を目標に努力し日合う割当額を除く全余剰金を県の医薬分業推進のための積立金とした。

 其の間、負担金徴収について会員の意見を徴したところ、最も多い要望は県薬に医薬品備蓄センターを早急に設置せよということであった。そこで調剤用医薬品の備蓄を兼ねた会営調剤センター設置を立案、昭和四十五年六月好機をのがさず同センターの設立を決意し、全国都道府県のトップを切って会営調剤センターと医薬品検査センターを設置、医薬分業受入体制の両輪を揃え実動に入った。

 現在、両センターは器材、陣容とも整備され、相協力して堅実な運営をしている。昭和四十三年六月組織と機構の手直しから実動に入って今年六月で満五年になった。県民所得が全国都道府県中、四十何番かの熊本県薬剤師会としては、此の事業は誠に難事業であったが、山中会長の果敢な実行力、適切な指導と会員の熱心な協力、並に関係者の不抜の努力の賜で達成出来たと思う。

 私は関係者の一人として此の事業の立案推進に当ってきたが、この経験によって大きな確信を持つことができた。「薬剤師会もやれば出来るということを」これが私の提案の動機である。この貴重な体験をふまえて次の二項からなる提案をした。

 一、日薬及び県薬の機構の一部改革
 二、日薬及び県薬の財政整備

 ▽第一項 機構の一部改革

 日薬は現在常務理事が八名か九名であるが、この常務理事制の強化確立を次の通りにする。

 (一)常務理事にはそれぞれ専属事務職員若干名を増員して付け、チームを作る。
 (二)常務理事には月額一五万〜二〇万円の給料と公務員並の率でボーナスを支給し生活を保障、開局者は必ず自分の薬局には別に管理薬剤師を置き後願の憂なく担当業務に専念出来る人を任命する。
 (三)日薬常務理事制には給与と活動費として新に一億円以上の予算を付ける。
 (四)県薬はその規模に応じて専務理事一名か更に常務理事若干名を任命し、それぞれ専任事務職員を増員して付ける。
 (五)県薬専務、常務理事にも月額一〇万〜一五万円の給料と公務員並のボーナスを支給する。
 (六)県薬専務、常務員制には給与と活動費として県の規模に応じて三〇〇万〜一千数百万円の予算を付ける。

 ▽第二項 日薬及び県薬の財政整備

 昭和四十八年代議員会報告によると四十七年十二月末現在の日薬会員数は、A会員開局者二四、七六七名B会員勤務者一二、〇四七名、決定された日薬四十八年度会費額は、A会員年額七、〇〇〇円、B会員年額二、五〇〇円、この金額を各県に割当てられた会員数に応じて交付金を支給されることになっている。今年の日薬の徴収会費総額は一億六千七百七十万円である。これを次の通りの骨子に整備する。

 (一)開局者は毎月売上額の〇・二%が月額会費、これを取引銀行で控除して県薬口座に振込み支払う。
 (二)勤務者は毎月給料の一%を月額会費とし勤務先で控除、県薬口座に振込み支払う。
 (三)集った会費を県薬は毎月その四割を日薬に納入し日薬の会費収入とする。残り六割は県薬の会費収入とする。
 (四)現在の各県薬に対する日薬交付金は廃止する。
此の骨子を四十八年度日薬予算会費収入に試算すると次の通りになる。但し、開局者は前年度年売上高を月商に平均換算し、平均月商一五〇万、勤務者平均給料今年度分月八万円と推定した。

 1、開局者の場合一ヶ月会費は一五〇万円の〇・二%。三、〇〇〇円、一年間三六、〇〇〇円
 2、勤務者の場合一ヶ月会費額月給八万円の一%八〇〇円、一年間会費額九、六〇〇円
 3、開局者二四、〇〇〇名、年会費総額は八億六千四百万円、勤務者一二、〇〇〇名年会費総額は一億一千五百万円、合計九億七千七百万円
 4、総額の六割が全国都道府県薬の年内会費収入である。その金額五億八千六百万円、総額の四割が日薬の年間会費収入となる。その金額は三億九千参百万円、日薬の四十八年度会費収入に較べると実に二億二千五百万円の増収となる。
 5、此の骨子による日薬会金積立金として給料の六%強の三、一六〇円を必然的控除支払っている。何故支払うのか、それは制度が確立している、公平である、見返りがあるからであろう。開局者の場合、熊本県に例をとると、すべての保険薬局は昭和四十三年以来毎月調剤報酬の一%を指定銀行で控除支払っている。何故支払うのか、それは制度が確立し、それが公平であると判断し、又将来見返りが期待されるからだと思う。以上、二つの実例からして日薬が勇気を以って組織費増収分二億二千五百万円から、第一項機構改革による予算一億円を差引いても尚一億二千五百万円の余剰金が残る。
 6、県薬の会費収入見込は此の骨子による場合の見込は、例を熊本県に取ると私の試算によると四十八年度会費収入に約五〇〇万円の増となり、専務理事制に必要な予算は充呈して余りがある。次に私の案の実施の可能性と実施した場合の成果に就いて

 一、実施の可能性

 先ず勤務者に例をとるとこの人の月給五万円、毎月政管健保、厚生年金、退職機構を改革し、制度を確立し、かかえている諸問題が早期解決、実施が実現する見通しが立つならば、全国の会員はこの骨子による会費の支払に賛成するものと確信する。

 (1)会費は毎年売上額並びにベースアップに伴いそれにスライドして増収となる。
 (2)日薬並びに県薬が今日まで永い間、毎年会費額の決定、会費徴収に莫大な時間と労力を必要としたかは関係者であれば皆痛い程ご承知と思う。この時間と労力の節減された分を事業の推進に投入出来る。
 (3)会費の増収による余剰金を以って日薬全会員を一丸とした共済年金制度を確立する。現在、日薬に共済と年金の二つの制度があるのを一本化して、共済年金制度を作り全会員に可能な見返りを保証することが出来る。
 (4)日薬の歴史を見ると、目的達成の寸前まで行き挫折した事が幾度となく繰返されている。その原因は活動不足によるものであることは周知の事である。然し、この案によると日薬並びに県薬会員は会費徴収の時間と労力から解放される、特に日薬常務理事、県薬専務常務理事は身分保障で後顧の憂いなく豊富な予算をバックに思う存分の活動が出来る体制となる。

 以上、私の提案の概略に就いて申述べましたが、もし日薬執行部が私の提案を取上げ、実施計画案を作りそれぞれの機関にかけて全国の会員の大方の賛同を得て実施されるならば、少なくとも五年以内には、日薬が現在かかえている諸問題は解決、実現し、全会員の期待に答え得るものと確信する。

 期待される 女子薬剤師像 福岡県女子薬剤師会 会長 田中美代

 裁判化学や、有機化学といった専門書をかかえて、登校する彼女達の、学問に対する情熱といったものが結婚のためだとするならば日本の亭主関白連はよろこばしいことかもしれないが、薬剤師という職能人養成のための、薬価大学の存在価値はナンセンスというべきかもしれない。

 企業や、国公立機関等が今日なお女子薬剤師を敬遠する、その理由のほどが、どこにあるのか、男女の格差が、能力によって左右されるということは、或はやむを得ないことかもしれないが、今日の学問的水準の上では、決してその優劣はないはずである。むしろ多年の薬大入学率からみると、女の方が優れていると申しあげても、お叱りはうけないだろう。

 それなのに何がために、彼女達は敬遠されなければならないのだろうか。結婚のための便宜主義から薬大をえらび、卒業とともに家庭に入る、そして何時しか薬剤師としての意識構造もうすれて、やがて学問に対する情熱もさめ、家庭の中に埋れて行く。こうしたケースが、女の生き方だといわれるならば、やむを得ないこととはいえ、何がための専門教育なのかと申しあげたい。医療人としても又、社会人としても、反省させられることではないだろうか。たとえ女の行くべき道が結婚ということであっても、社会からうけた恩恵というものに対しては、何等かのかたちで、社会に還元するという気持のほどはあってほしいと思うのである。

 私があちらに行き、西ドイツ訪問の時であったが、四〇〜五〇才をすぎた一応家庭や育児から解放された主婦が再び薬剤師としての職能にかえって、社会のために働く義務を負わされている。その話をきいて学ぶべきことではないかつくづくと感心させられたものである。

 私達女子薬剤師達の待遇が、男子に劣っているということを、私はあえて否定はしないが、事実でもある。しかしながら今日、若い同性達が薬大の入学率において男性にまさっていることも又事実であろう。その優秀さがあるならば、私達はその事実を高く評価するためのPR的努力はつづけなければならないと思うのである。

 おんなの五五才は、おとこの七七才の能力と同じでありますかのように仰言って、女性の五十五才定年制に軍配をあげた、勇ましい裁判官があったが、今日男女の格差を法律でもって律しようなんて、これ又ナンセンスというべきであろう。

 私はここであえて、社会の評価に応える女子薬剤師の真価を高めるため、薬科大学修業年限の延長を提案したい。優秀な同性達のため、六ヶ年の薬剤師教育を充実することによって、医師におとらぬ医療人としての女子薬剤師像を打ち立てる。途は遠くとも、結婚のための薬剤師ではなく、社会の評価に応える医療人としての女子薬剤師を養成するためならば、あながちの修業年限延長の提案も、大方の賛成を得られるものと確信しているのである。

 長い年月をかけて論議された分業も今日なお、実現しないが、何れにしても医師と薬剤師との相互信頼によってのみ、実現されることである。こうした現実の中で、女子薬剤師としても、医師に対する情報の提供者となり得る、臨床薬学といったものを身につけ、或は又いわゆるO・C・Dとよばれる販売体制を確立して行くことによって、医療人としての女子薬剤師像といったものをつくりあげたい。これが私の念願でもあり、希望でもある。

 このたび九州薬事新報という、九州山口薬剤師会の機関紙としてのせいかくをおびた業界紙が、大方の期待と与論の支持をうけて、復刊されることになった。まことに意義ぶかいことであり、よろこびにたえない企画である。私はこの業界紙の復刊にあたって、貴重なスペースを割いて頂いて、私見をのべさせて頂いた光栄のほどを感激しながら、この業界紙が、私達女子薬剤師の指針となり、情報の提供機関ともなって、啓蒙のほどを切にお願いするとともに、御発展を心から祈念してやまないのである。
(一九七三・五・三一記)

 市町村が行なう母子ミルク入札問題の解決を急げ

鹿児島県商組理事長 山村実治

 このことは、日本全国に亘る問題であろうが、福祉関係予算として各市町村が、福祉関係予算として各市町村が夫々母子ミルク購入予算を計上し、ミルクメーカーを呼んで競争入札を行ない、現品を役場に搬入、母子ミルク(市販ミルクと同じもの)を妊産婦乳幼児に役場職員、主として保健婦が渡している。

 ところで、その入札価格は驚くほど安価であって、我々小売薬業者の到底想像出来ない様な値段である。営々としてミルクの正価販売維持を守って来ている我々としては大変な異状感と大きな憤りを感ずる。益々、進行、高度化する福祉政策の将来を考えると、極端に考えれば早晩ミルクは薬局、薬店を通らない事態が来るとも考えられる。

 市町村がメーカーの自己シェアー拡大と言う他をかえり見ない入札制度は全く好ましくない。止むを得ず入札制度を採るとするならば、大量を年間を通じて販売している卸、小売りの正規のルートが何故極端な格差があるのか当然我々の仕入値も入札価格まで下げるべきである。そうしたら我々はその安い値段(現在一割もないマージンだが)で消費者に渡す事が出来る。

 この様な入札に依る二重価格性は、我々薬業者を余りにも馬鹿にした行為であると言わねばならない。我々の犠牲に於て、メーカーは市町村に良い顔をしているのではないのか。我々から得た利益を背景に入札制度を戦っているとしか考え様がない。この様な不合理な問題は、九州商組としてあくまで結論を得るまで手をゆるめるつもりはないし、ゆるめてはならない。近来の事件としては、極めて大きな問題である。この事に関し、七月四日迄に具体的回答をする様九州商組としてメーカーに強く要望している。

 熊本県本年度薬剤師会総会 会費値上げ見送り

 熊本県薬剤師会は、本年度総会を六月一六日一時から交通センター三階において、沢村副会長司会のもとに開会した。

 来賓には、高田参議院議員、薬務課長、他を迎えて議長に石原直喜氏を推して議事をすすめたが、同県薬は、会営の調剤センター(国立熊本病院の外来本人を主として受入れる調剤薬局)並に、検査センターについて次のような現況報告があった。

 清水谷副会長から、調剤センターについては現在、女子薬剤師三名、受付二名、事務員一名、アルバイト二名で運営され、取扱数は年間八、七二二回で順調に運営され、事務負担金の名目で県薬の会計を潤し、今年度の会費値上げを見送る素因となっている、ことが報告された。

 また、検査センターについては前野所長から、薬剤師三名、その他二名、四月から一名増員して運営され調剤医薬品、食品、上水、下水などを検査しており、本年は特に県からの要望もあって簡易水道の水質検査等が多く、昨年より三〇〜四〇%検体がふえている。今後は時局柄、水銀やPCB等の検査も必要になろうと報告された。

 それより活発な審議の後いずれも原案通り可決、決定、引続き薬剤師連盟の評議員会をも終了、四時から同所において和気あいあい裡に懇親の宴を催した。なお、出席会員中、若い薬剤師の少ないのが目立っていた。

 当日の会員の意見等、主な発言は次のとおり
○会に広報部を設け、何か問題が起った時は各学術機関からの意見等を時期を失しないように速かに一般外部に発表すべきである。
○店頭倫理を重要視し、薬務課よりの白衣着用の呼びかけ等も取り上げられたい。
○薬学の進歩に合せるためにも、薬剤師の地位向上のためにも薬学教育の四年制では足りぬので、早急に六年制にするよう日薬に要望せよ。
○出席者に青年が少ない。青年薬剤師の活躍が望ましい。

 福岡県 県庁薬剤師会総会 城内閣誕生

 福岡県薬剤師会の肝入りにより昭和四十二年七月発足した福岡県庁薬剤師会は四十八年度の総会を六月九日(土)県薬会館で開催、任期満了による役員改選などを行い、武田初代会長が薬務課長に就任されたため二代会長に城敏治(県麻薬係長)を満場一致で選出した。

 当日は来賓に古賀治県議会議員外岩下衛生部長、四島県薬会長などを招いて開会、武田会長は「本会設立の主目的である身分確立については予防課長の新設や食品衛生方面への薬剤師の進出などで突破口が開かれいくらか拡大されてきたと思うが、今後の努力如何にかかっていると考える。また今後は保健所や病院等との横の連絡を密にし、衛生公害センターも設立されることになっているのでこの方面の研修などにも力を入れ、未加入者の加入促進を推進して組織拡大をはかりたい」とあいさつ、四十七年度の経過報告、決算報告、規約の一部改正(筑豊・北九州ブロックを合併して従来の四ブロックを三ブロックに改正)、役員改選にうつり、選考委員によって四十八年度の事業計画、予算などを決めたあと同所において懇親会を催した。なお、当日決定した新役員と所属別会員数は次のとおり

 ▲新役員
会長 城敏治(薬務課)
副会長
栗原与四郎(八女保健所)
坂口繁雄(朝倉病院)
山下泰弘(教育庁保健課)
常任幹事
古賀正邦(薬務課)
幹事
牛島清(黒木病院)
森千竹(直方保健所)
大庭久光(薬務課)
野口修一(保険指導課)
成国勝彦(環境整備局企画課)
中村幸男(衛生研究所)
ブロック幹事
福岡=大森二郎(宗像保健所)
北九州・筑豊=中村重義(京都保健所)
筑後=野口精一郎(山門保健所)
会計幹事
鬼木輝(浮羽保健所)
松尾和彦(粕屋保健所)

 ▼会員数一〇七名(未加入者七名)
▽県庁
薬務課一五(課長一、技術補佐一、係長二、技術主査一、企画主査一、技師八)
保健指導課二(技師二)公害課一(技師一)
▽保健所五五(衛生課長六予防課長一、技術主査七、企画主査二、技師四〇)
▽衛生研究所一〇(専門研究員二、研究員四、技師四)
▽病院三〇(薬剤科長五、技術主査二、技師二三)
▽教育庁一(技術主査一)

 新聞の発足

 「フテーガッテーどうじゃろうかい。二、三年休刊になっとった九州薬事新報が、薬剤師会やら、メーカー卸屋の応援で、又七月から新しゅう発行さるげなが身近に業界の事がわかって助かるばい」
「そうたい。この暑い時い、原稿ば書こうてちゃ!ハッカン(発刊-発汗)に汗だく?たい」(スハラ)

 漢方の手ほどき(序の一) 長崎大学薬学部講師 山口 広次

 学生時代余り好きでなかった生薬学を一生の伴侶とせねばならない様な運命になってしまった。昭和十六年二月中国山西省臨汾にて第四十一師団高級薬剤官として軍務に精励していた頃衛生材料の不足を来し葡萄糖の注射薬が無い、ホウタイ材料が充分にない、沃丁の補給も思わしくなくその他全般的に不足を来した。ホウタイ材料は何とか代用品で間に合せたが、治療薬はそうはゆかず薬の一滴は血の一滴と思って大事に節約して使用する様指示すると共に、内服薬は何とかならぬものかと思案の末、学生時代の生薬学を思い出し漢方薬店を訪れ、品種・数量・産地を検べ指導も受け傷病兵に応用したが、これがきっかけで終生を漢方薬に取り組む結果となった。その当時何故に材料が不足したか知るよしもなかったが、半年後大東亜戦の勃発で南方に集積していた為だと後でわかった。

 目下長崎大学薬学部で正課として漢方を講義しているし、又月一回福岡に出て九州漢方研究会で講義をしたり又受講したりして牛の歩みに似て遅々として進まないが研鑚に励んでいる。

 近時新薬の公害が漸く世人の口に上るつけ漢方薬が見直されつつあるのは欣快に耐えない。医師の中にも漢方を勉強する人が日増に増え又中国の針麻酔に刺戟されて此の研究者も段々増加しているのも喜びにたえない次第。

 洋薬が猫の目玉の如く変り信用を失いつつあるのも漢方が注目される結果となっている。洋薬が猫の目玉の如く変るのに三つの原因がある。

 (一)昨日まで有効らしく見えたものが効果がない
例-或る種の強肝剤

 (二)思った程の効果がない。
例-ホルモン剤

 (三)効果より副作用が大で、所謂薬品公害である。
例-サリドマイド。キノフォルム等

 此の三つが原因で雨後の筍の如く生れて来るが、生き残るものが少ない。漢方をやっていて閉口するのは好意的だが盲信的な人がいて洋薬で三ヶ年服用しても治らぬのに漢方では十日もすれば全治するのではと、とてつもない質問をうけることがある。

 こんな人には私は神でも仏でもない、服用を続けてみないと不明ですと答えている。又厄介に思うのは科学者であると自負している医師、薬剤師にして漢方を迷信呼ばわりする輩のいることである。私は欺かる人には君には傷寒論、金櫃要略の読書の有無を尋ね、又自分で服用し患者に応用したことありやと質問している。否との返事が大概返って来るが食わず嫌いでの排斥はやめてくれ、科学的な根拠に基づいて反論すべきだと言ってやることにしている。大概ぐうの音も出ない。

 ▼中国の医学

 中国の素問という本の異法方宜論に
一、石は東方より来り
一、毒薬は西方より来り
一、九鍼は南方より来り
一、灸炳は北方より来り
一、導引按?は中央より出づとある。此の五つをひっくるめて東洋医学という毒薬変じて薬となるのであって我々がこれから勉強しようと云う漢方は東洋医学の五分の一に過ぎない。

 五つを簡単に説明すると・・・・・・?石の件は中国から見ると東方は東支那海であり又海岸線が連っている。海岸地帯は怪我が多く又魚や塩蔵物を多く摂取する為フンケルが多い。従って軽い手術に類したものが発達した。

 毒薬の件は中国の西の方は山岳地帯で狩や鉱業が盛んで気候激変し、従って厚衣美食なり内臓疾患が多く薬草に頼る治療法が発達した。此の地で私も戦争したが昼は一二〇度、夜は〇度以下に下り此の気候の激変との戦いがつらかったのを思い出します。

 九鍼は南方より来りは南の方はクリーク地帯で高温多湿、従って農耕盛んで穀物を常食として血行障害による筋脉の病が多く鍼が発達した。南船北馬との言葉は此の二つから生れている。
(次号につづく)

 阿門呆答 ◆はなしにならないはなし 久呆

 田舎から出て来た男が東京の人に尋ねた
阿 光化学と云う工場は何処にあるでしょう
呆 それは公害でしょう
阿 東京の郊外と云うことは聞いていましたがどのあたりでしょう
呆 ・・・・・・・・・

 嫁さんに頭の上がらない親爺に小供が聞いた
阿 父ちゃんと母ちゃんはどっちが上だい。
呆 夜は父ちゃんが上で昼は母ちゃんが上だよ
阿 それで男女同権かい
呆 ・・・・・・・・・

 風邪を引いた馬鹿と云われる男がお医者さんと話した
阿 先生とうとう風邪引いたよ、私は馬鹿じゃないですね
呆 此の頃の風邪は馬鹿でも引くよ
阿 そんなら馬鹿がかからない病気とはどんな病気ですか
呆 馬鹿や阿呆も病気の中だよ、医者でなおせん病気が馬鹿と恋だよ
阿 そんなら帰えろう、とてもおれの風邪は治らんだろう

 テレビのチャンネルを争っている兄弟
阿 6に変えるよ、マンガがあるから
呆 9の方がいいよ、西部劇だから面白かろうが
阿 そんなら兄ちゃんは6にして逆さに見ればいいじゃないか、9に見えるよ!
呆 おかしいな、逆さに見ても矢張りマンガが見えるよ
阿 兄ちゃんの目がどうかしているよ、いっとき目をつむっていたがいいよ
呆 そんなら目をつむって見るよ

 挾子

 ▼各界諸氏のご後援によりまして漸く復刊第一号の発行に漕ぎ着き得ました。活字として、出来上って見ますと、準備時間等の制約もありましたが甚だ不満足なものとなりました。

 もとより、業界すべてのお互いの消息の緊密度の確め合い、意見の出し合いと進むべき方向付けの場として充分に活用することが使命と考えます。

 九州・山口地域紙として、右の使命を目ざしてローカル色濃厚な内容を盛り上げ度く存じています。ご承知の如く、我が業界にても諸種の問題点多く、直ちに結論の出得ないことどもが多々ありますが一歩更に一歩と目的に向って進み、解求してゆく姿勢こそが求めらるべきであることは言を俟ちません。つねに、平静不偏な心境にあって、動中動を求めて進み度いと思う。

 プリズム 俳人・曙子先生

 山地曙子先生は本年一月目出度くホトトギス同人にご推薦されました。先生は朝鮮在住当時より俳句を現ホトトギス主幹高浜年尾先生に学ばれ、一貫してホトトギス派の俳人として進んで来られました。

 句歴三十余年、現在薬品問屋ホクヨーの社長としての激務のかたはら、北九州ホトトギス俳句会の幹事として後進の指導と育成に当っておられます。本紙も時おり句稿をいただく事にしております。

 公害防止講習受講者全員合格

 日薬主催の公害防止管理者(大気第二種)資格認定講習は、五月一九〜二七日、福岡市・福岡商工会議所ビル大会議室にて開催された。受講者は福岡県外を含めて二〇六名で、講習会終了後試験が実施された。その結果は全員同格の発表あり、講習会の成果の上々なることを証明し得た。

 D・I実例集発表

 長大病院薬剤部・長大薬学部薬剤学教室においてはD・I実例集第一八号発表
@ 緑内障患者に対して禁忌である薬品AFT二〇七(フトラフール)について

 福岡市薬ボウル大会 部会対抗で学薬優勝

 福岡市薬剤師会では六日五日午後八時から開局部会勤務部会、学薬部会対抗のボーリング大会を大濠ボールで開催した。

 各部会それぞれ十名づつの選手を出して熱戦の結果若さと団結において優る学薬部会が前回につづいて第十戦を団体優勝した。本大会は毎月開かれているので参加希望者はそれぞれの部会担当者へ連絡されたい。
一位=竹尾、五五八ピン、学薬
二位=村上、五四七ピン、勤務
三位=藤原、五一四ピン、学薬
なお各部会の担当者は開局−西森、勤務−鶴岡、学薬−馬場

九州薬事新報 昭和48年(1973) 7月25日号

 母子ミルク入札 第二市場流通問題 討議・対策着々と進展

九州山口の三者流通う懇談会

 七月十日(火)、福岡市・福岡県薬剤師会館に於いて左記により三者流通懇談会が開催された。
小売側委員懇談会 午前十時三十分より

 議題
@流通問題について
A母子ミルクについて
午前十一時三十分より
乳業四社との会合
二者流通懇談会(卸・小売)午前一時三十分より

 議題
流通問題について
三者流通懇談会(メーカー・卸・小売)午後二時〜五時

 議題
流通問題について

 ◆母子ミルク入札問題

 根本的な原因としてメーカーの過当競争があげられる。社会福祉事業なのでメーカーとしても立場上苦しい面があるが、本件については、これまでのやり方については深く反省せねばならないと考えているとの発言あり、メーカーの提言は左記の通り

 @市町村よりの配布は受給券によって小売店に於て現物引換に努力したい。その時の手数料については検討するが大体五%位と考えている。
 A市町村よりの見積入札については、四社足並を揃えてG単価の算定を行い厚生省原案(予算計上額)に近づけたい。
これは昭和四十八年契約分についても努力する。
昭和四十九年以降は市場販売価格と大差ないマイナス一〇%位に納めて行く考えである。今後は商組共連絡を密にして遺漏のない様に努力する。
(厚生省原案は粉末ミルク一〇〇〇g、七八〇円程度)
 B現在、九州では大分県、鹿児島県、佐賀県に於て問題化されているが比較的所得の低い県であり、県当局に於て強い姿勢で入札を強いられる故である。
北九州市、福岡市は大体七八〇円程度で落札されている。
 C要は価格差であり、前向きに努力中である。
右に関し、真剣な討議がなされた結果、次の様な申し合せを行った。
 @四十九年度は乳業四社としては入札より手を引く
 A離島等にて関与せざるを得ない場合が生じたときは七八〇円を堅持する。
 B受給券は商組にて引受け市町村と話合う。
 C四十八年中は出来るだけ価格アップに努力し、四十九年度対策の基礎工作を行う。商組代表とメーカー代表共々市町村に働きかける。

 第二市場流通問題

 (一)七月三日、名古屋市の愛知県薬剤師会館にて開催の東薬連代表を加えた全国医薬品小売商業組合連合会の「第二市場対策懇談会」に出席した、九州代表の隈(長崎)、益田(大分)両氏より報告がなされた。変則流通市場の繁栄を排除しなければ小売業の安定はない。第二市場に対しては絶滅の方向をとるべきである。(会議の報告内容は本紙掲載の全商連第二市場対策懇の記事を参照のこと)

 (二)流通委員会メンバー
@前向きの努力をして各社協力して善処して来た。
A販売価とリベートの問題となることであり、公取の指導下にリベートを考えている。
B今後ともキメ細かく努力して行き度い。

 (三)家庭薬メーカー
納入規制をしてゆく考えである。

 (四)卸
卸自体の責任も感じている。メーカーの責任ばかり追求されていたので我々も自粛の要を感じて以来再々会議を重ねて来た次第である。最近、福岡における第二市場では再販品の荷動きが鈍化の傾向にあり、再販品の品薄状況が確認されている。限度をきめての規制、完全納入ストップ等の意見があるが、前向きに規制してゆく事に統一した考えで処理して行くことを決め、継続的に努力する考えである。

 (五)申合せ事項
@かぜ薬の納入についての善処
A再販品の契約事項のうち、取引条件の修正の件

 (六)次回の三者流通懇談会は九月十四日(金)開催。

 第二市場ルート寸断へ 全商連第二市場対策懇 メーカーに要望書

 全国医薬品小売商業組合連合会の「第二市場対策懇談会」は東薬連代表も交えて七月三日名古屋市の愛知県薬剤師会館で開かれた。

 同懇談会は第二市場の主要な拠点をもつ東京・名古屋・大阪・九州の四地区の商組代表者が、第二市場の不正流通問題に全国的レベルで取り組むために、初めて会合を開いたもの。

 討議の焦点は、右の四地区を結ぶ「不正流通パイプ」をどのように断ち切るかにおかれたが、結論的には商品の不正流通はメーカーの管理体制の不備に集約されるとして、再販契約の違反はメーカー、小売の双方にペナルティの行使を義務づける問題を含めて、直ちにメーカーに対し、事態改善と具体的安定策についての要望書を提出、引き続き八月に再販メーカーとの中央流通懇談会を開き、要望書にもとづく第二市場対策について本格的なツメの折衝に移るとの方向づけを決定した。

 この東薬連との第一回合同会議では、全商連がこれまで行なってきた実態調査の結果を討議したが、最近の大阪、福岡における第二市場では再販品の荷動きが鈍化の傾向にあり、再販品の品薄状況が確認された。しかし、名古屋市内を中心とした中京地区第二市場は依然衰えをみせず、東京、大阪との流通パイプの"健在ぶり"を裏づけているという。

 また、東京、大阪の第二市場は医家向け薬品が圧倒的に多く、一般品が品薄状況。中京第二市場は九〇%以上が一般品で占められ、その荷動きも状況も現金問屋が直接小売店に注文にかけまわり、薬局薬店の第二市場利用度も活溌を極めているなど名古屋市場における需給の複雑な関係をも示している。

 第二市場阻止に関する具体的な方策としては、再販品についての現行マージン率の改訂、再販契約違反に伴うメーカーへのペナルティ行使、卸への支払いカットなど強硬手段を支持する意見、事態改善にメーカーとの懇談会設置、といった意見もあったが、何れも小売単独の具体化にはキメ手を欠くということで、対メーカーとの中央折衝に持ち込むことを申し合わせた。

 当日の出席者は、隈(長崎)、益田(大分)、荒川(全商連理事長)、立木(大阪)、若原(大阪)、林(岐阜)、吉田(愛知)の各商組代表者と筒井、矢崎、三浦の東薬連代表。

 女子薬の今後を討議 福岡県女子薬総会

 福岡県女子薬剤会(会長田中美代)は本年度総会を志賀島の国民宿舎志賀島苑会議室で城戸嘉寿子氏の司会により開会した。

 来賓四島県薬会長のあいさつについで田中会長は、「四十七年度は分業も成らず要指示薬指定の撤回もできなかったが、本年度も引続きこれらについて実現するまで努力を重ねたい。女子薬剤師の数が全薬剤師の五〇%を占めるこのになった現情から、女子薬の資質を高めなければ薬剤師全体の沈下につながる。

 或る機関紙に女子薬は男子薬剤師に従属したものだとの表現があったが、日本女子薬を始め各県の女子薬会も設立の原点に立ち戻って反省すべきである。

 また老人医療、乳幼児医療の無料化は福祉政策とはいえ開局者にとってはいよいよ職能を狭められる結果となるのでますます努力して地位向上を計らねばならない。」とあいさつ。上田氏を議長に議事に入り、それぞれ原案通り決定したあと、役員改選は会長に田中美代、副会長に佐伯薫、永倉静江三氏の重任を決めた。

 その他去る四月東京で開かれた日本女子薬剤会理事会並に代議員会に出席した宮崎綾子氏から左記について報告があった。
▽本年度日本女子薬剤師会研修会は十月高知で開催
▽テキスト「食品添加物について」「医薬品の作用機構」化粧品とその健康衛生上の問題点」は成作中である。これは各ブロックの本年度の研修会に利用、消化することが望ましい。
▽本年度は女子薬でアメリカ旅行を予定している。
▽女子薬の在り方に対する批判について
▽避妊薬ピルについて

 なお、当日は女子薬の在り方につき活発な討議がなされ、会が誕生してすでに二十年、若い会員の激増する現情から新しい若い役員をどしどし選出し、積極的な推進を希望する声があった。当日の出席者は約五十名であったがうち二十二名は同所で波の音を聞き修学旅行を思出しながら宿泊した。

 福岡地区 薬業協議会・十日会

 福岡地区薬業協議会は七月例会を十一日県薬会館でメーカー七社、卸四社、小売委員九名出席して開会、前日同所で開催された三者懇談会(別掲)の内容報告、その他各地区(福岡、粕屋、宗像、糸島、筑紫)の情況報告があったが、各地区共大きな問題はなく小康をたもっていると報告された。

 前回から問題になっている殺虫剤の価格については薬系の取扱う比率が減少しているためメーカーとの話合いに困難を来たしているが、薬系が取扱う必要がないのかという観点から話合いたいとの発言があった。

 引続き三時から開かれているものであるが、当日はダイエー、渕上、バーゲン、大賀薬局、博商、九友会、青葉会、東口薬局からそれぞれ担当者が出席した。

 当日は大した問題は提起されず、サロンパス、浅田アメ、明治粉乳の価格改訂報告のほか斎田委員よりお盆前後の販売合戦で他を刺戟するような行動を互に慎むよう、また大型店からは新設の店舗がこの会の申合せ事項(広告に関する申合せ)の違反をしないよう開設時に予め注意して欲しいとの要望があり、次回は八月十日三和レストランで開くことを決めた。

 二日会

 七月二日午後一時より、福岡市明治生命ビルで開催(本会は九州市場の安定化をはかるメーカーと卸の協議機会である)小売側から要望されている第二市場問題につき意見の交換を行った。

 学校保健関係薬品管理について講演

 福岡県嘉穂郡学校保健会は七月九日三十度を超す猛暑の中を嘉穂郡綜合庁舎大会議室で郡内の養護教諭、保健主事六十名が集まって学校保健関係薬品の取扱いと管理について講義を聴いた。講師には県学薬常任理事馬場正守氏が当り、二時間にわたって「学薬との関係」「保健室について」「その薬品について」を実際問題を交えて熱心な講義行ない、同席した地元学薬及び教師から感謝された。

 共栄医薬品卸協組通常総会

 六月十八日午後二時半より、北九州市の西日本工業倶楽部にて開催。新年度予算案、事業計画を原案通り可決した。コーエー小倉薬品を中心としたグループ七社の四十七年総売上高は二四〇億円で対前年度比二一%増。共栄協組自体の取扱いは年商九千三百万円

 福岡市薬BW大会学薬部会三連勝なる

 七月二日東区アストロボールにて月例の大会が勤務部会の当番で開催され、二時間にわたる熱戦の末、学薬部会が三連勝の偉業をなしとげた。終了後アローにて開局、勤務、学薬の三部会選手三十五名に対して勝利賞、参加賞が渡された。

 一位=馬場(学薬)五六一
二位=松永(病薬)五四三
三位=竹尾(学薬)五三五
HG=馬場(学薬)二一〇

 過ぎし日々(1) 塚本赳夫

 生年月日は明治卅年五月廿日、母の書いたものには皆こう書いてあり、自分で云う時には「五月・はつか」と云う。いつか「ごげつ・にじゅうにち」と云はれてびっくりした事がある。台湾に居た時に五日、六日、七日、八日を「ごにち、ろくにち、ひちにち、はちにち」と云はれておどろいた事があるが、九州でも時に耳にする地方があるから九州弁の影響か、台湾の日本語か?私の父も「はちにち、はっしぇん、八日八銭」と云うて悪い息子共に笑われた事があった。

 私達が聞いて育ったのは「ついたち、ふつか、みっか、よっか、いつか、むいか、なのか(なぬか)、ようか、ここのか、とうか」でこれは外国人で日本語を勉強する人は苦労するばかりであまりよいとは云へない。ともかく五月廿日でまだ暑くなく、夏に向ってるうれしい季節だ。そのためか私は夏が好きで冬はスキーをやり初めてからやっと好きになった。

 生れた所は東京、麹町三番町(さんばんちょう)、外濠(そとぼり)よりは中だが内濠より外でよかったと思っている。市ヶ谷駅の近くで大きな銀杏のすぐ下と聞いている。(子供の頃牛込の方から見てもよく見えるオバケイチョウと云うのがあったが、それかも知れない)

 父はその頃駒場の農科大学(農学部のこと)農芸化学(一高となり教養部となった所)まで徒歩で通って居たらしい(勿論電車はなかった)。

 二十六年十月に兄が生れてからも虎の門の家族女学校?とかの先生をしながら学校の中に住んでいたように聞いている。今ではめづらしくないが二人共朝からの勤務ではずい分無理をした事だろうと、同情せざるを得ない。

 兄は十月生れ、私は夏休みのちょっと前だから私達兄弟の中では一番長く母乳で育ったのは私だと、後になってからもよく話題にされたもんだ。多分九月まで母の乳房にかぢりついて居る事が出来たと云う事だろうと思う。

 私から下の兄弟は又四年経って、一月に妹が生れ、次の年から全部九月生れの年子(としご)で節子(九月九日生、津田栄の夫人、昨秋没)光子(三堀三郎夫人)弟、憲甫(ガンセンター総長、最後の二人は共に九月十六日生)等が次々と生れるので中の妹節子は母の里小川家に里子に出されていた時期もある。

 今より便利な事に貸家住まいだから家がせまくなれば次から次と適当な家を見つけて引越しながら育てられたが殆んど一人一人の赤ん坊に「ばあや」が付くし、父の弟つまり私達の叔父(叔母)が次々と来たり、母の里の親戚の人達が東京の学校に入ったからとて、家から学校に通いながら、家の事を手伝いながら我われの世話もして呉れていた。おかげで蔵前の高等工業(大岡山の工大の前身)のボートレースだの音楽会などによく連れて行ってもらった事がある。

 三番町の家は小さかったと見えて私が生れて間もなく、動き出して本号弓町(富坂上、本郷教会の近く)本郷西片町、東片町など移動しながら大きくなって行った。

 父は幼名又喜(またき)後に道遠(みちとう)共にM・つかもとだから化学会誌などに当時駒場に来ておられたオスカー・ロイプ(Oscar Low)と共著で論文を書いており、私が大学の頃朝比奈先生が実験室で話されたお話の中で当時のバイルスタイン(旧版、四冊で完結していたもの)にはM・塚本は載ってるが俺の名は出てないと云うておられた(大正十年の春頃)。

 聞く所によると父には兄が一人あったのだが乳児の頃亡くなって祖父が大いに悲しんでいる所に父が生れたので又喜と名づけたと云う話であった。道遠の道は塚本家代々の道庵(家租、初代道庵が黒田長政公に仕え私の祖父道甫が九代目道庵である)による。 (筆者紹介)
元九州大学薬学部長
元福岡大学薬学部長
生薬学専攻

 薬局経済の 地盤沈下をどうする 福岡県 薬剤師業経済研究特別委

 最近の小売薬業界は一般的に低調に向い、特に老人幼児、公害医療等の無料化が推進され、薬局の経営は逐次影響を受けている。しかも強制的一律分業の実現が望めない現況において、このまま推移すれば薬剤師職能を発揮すべき薬局、一般販売業者の存在は危機にひんするおそれがある。

 このような現況において商業組合的見方、対策とは別に薬剤師職能を中心とした観点から、現状の分析、将来の対策を考究し、完全分業達成まで、十分薬剤師の存在をあらためて認識させ、社会的、経済的地位を確保、向上させるため福岡県薬剤師会では本年初めより「薬剤師業経済研究特別委員会」を発足させ、新薬メーカー、家庭薬メーカー、卸、小売の医院約二〇名を委嘱して毎月一回例会を開き、種々研究検討を続けることになった。

 結論が出るまでにはまだ相当の日時を要すると思われるが、まず検討の資料として会員の実情把握が必要であるとの見地から三月アンケートを実施、その結果にもとづき検討が続けられている。発足当時からの各委員の意見とアンケートの結果を記載し、今後引続き毎月の例会の実情を掲載することにする。

 ◆各委員の重な発言

○・・・研究の主眼を売上増、収益率向上、経費節減方策のいずれにおくか。
○・・・薬剤師の社会的、経済的レベルアップが目的だ。
○・・・薬の特殊性を十分考慮して収益の確保が必要で、一般商品販売と異る点を念頭におかねばならない。
○・・・底辺にある薬局等の向上に主目的をおき、その線で研究すべきだ。
○・・・薬局の取扱医薬品の品目数は?
○・・・薬一八〇〇〜二〇〇〇で、その内の二〇%の品目(三五〇〜四〇〇)が売上額の八〇%を示めている。
○・・・医薬品の再分類を速かに完成すべきである、薬は大衆が選ぶべきでなく専門家が選んで与薬すべきだ、メーカーの反省を求める。
○・・・分業を阻害する一因にメーカーの販売姿勢がある。これも大局的に考えねばならない。
○・・・特売の押込み、送りつけで在庫管理、仕入の合理化が破壊される、それにより返品、支払不良のかたちで卸にはね返ると思うが卸はどう考えるか。
○・・・一般に人件費その他経費が増加し、大量販売しなければ経営がなりたたない。返品は特売で三〇%一般薬で一七%程度ある。返品の整理費は販売に要する費用以上に高額を要する。
○・・・四六処方を活用せよ、医家向医薬品の零売ができるようメーカーは考えよ。
○・・・薬局等の収益性は、社会全般から見たとき大いに向上させねばならない。そのため収益率を引上げることはむつかしいので個々の単価を引上げ、収益額を確保せよ。
○・・・流通不適正の主因は、生産過剰にある。メーカーは生産を規制、特売を是正せよ。
○・・・医療の無料化に伴い、処方せんが出る機会が多くなると思うので処方せん獲得にこの機会を活用せよ。
○・・・現在、マスプロ、マスセール方策は安全性、その他の理由で、中量生産に移行しつつある、薬局は物品販売から医薬品中心にかえることが必要である、そのためモデル薬局をテストに開設し、検討してはどうか。
○・・・医薬品取扱のウェートを引上げよ、指名品販売を少なくするよう努力せよ。
○・・・要指示薬問題を根本的に解決することが薬剤師業の確立第一歩である。
○・・・分業阻害の最大の原因は薬価基準と実勢価格との大巾な格差にある、地元出身代議士に善処を要望せよ
○・・・薬剤師職能を生かすために先ず十分勉強し、薬局のビジョンを検討せよ。
○・・・自家製剤を活用せよそのため協同製剤を検討せよ。
○・・・薬局は、大衆の信頼を回復し、相談販売が主とならねばならない。
○・・・薬局、薬剤師の販売姿勢を正し、五人組を作り、お互に技術の練磨、活用につとめよ。

 ◆薬局等小売経営に関するアンケート

 アンケートは次の九項目について調査された。
@店の営業状況について(四七年の平均日商額四六年対比、従業員数)
A店の一日の来客数(男女別)
B総売上げ中の各区分の売上げ比率(医薬品、制度品、チェーン品、化粧品類、乳製品、雑貨、医療用品、殺虫剤、その他)
C現在困っている問題に番号を付す(廉売問題、資金繰り、従業員不足、同業者の増加、店舗拡大、計数管理、税務対策、立地条件の変化、扱い商品の多様化、保険の普及、社会医療の無料化)
D今後の経営重点方針に番号を付す(保険調剤、薬局製剤、漢方製剤、相談販売、医薬品専門、取扱品の多様化、店舗の大型化、支店設置、模様変え、規模縮小、協業化)
E粗利益(営業全体、医薬品のみ)
F月平均処方せん取扱い枚数と前年対比。
G在庫額と年間回転率。
H店を中心に直線一五〇メートル以内の医療機関数。

 ◆アンケートに対する解説

 アンケート店日商別数
日商一万円以下一〇、一万円クラス四六、二万円クラス四七、三万円クラス三四、五万円クラス二六、七万円クラス一九、一〇万円クラス一〇、一〇万円以上八(この中日商一一万五千一店、一二万一店、一三万一千一店、一五万一店、一八万九千一店、二五万一店、一〇〇万二店)
▽四六年対比商増減状況平均に於いて対四六年より日商がダウンしたとの報告は二一、八%(四四店)で、残りの大半の一五六店では少く共横這乃至上昇の経営になっておりダウンも大体一〇%以内が大半で一方上昇の経営も一〇%迄の所が大半である。然し、日商七万以上の店では一五%以上の延びが可成りあることを示している。

 ▽従業員数
アンケートで店主夫婦等家族をどの様に加算しているかの点で稍々疑問のある報告であった。参考迄中小企業の指標に依る従業員一人当り年間売上高は次の通り。

 四五年年間販売五、〇八三千円、月販売四二三千円(二八日営業として一人一日売上一五千円)四六年年間販八、四〇五千円、月販売七〇〇千円(二八日営業として一人一日売上二五千円)四七年年間販売八、六三三千円、月販売七二〇千円(二八日営業として一人一日売上二五、七千円)

 ▽一日の来客数と客単価一人当り販売単価四〇〇円台三二・八%、三〇〇円台一七・〇%、六〇〇円以上一〇・九%、二〇〇円台九・三%

 ▽在庫と回転率
四八年度中小企業の指標による薬局(店)の回転率は七・四回転(化粧品店は四・九回転)に対し七回転以上の報告は僅かに五・四%で、大勢は四回転位の報告で過剰在庫がめだつようである。

 ▽売上中の医薬品の取扱率と医薬品中の制度品、チェーンの構成状況
A、売上中の医薬品の取扱率は六〇〜七〇%との報告は四二%で、日商クラス毎にみても一万円クラスで四九・九%、三万クラスで五一・九%、七万クラス五五%と高い率を示しており、一方日商上位の一〇万以上店では四〇〜五〇%の医薬品取扱に縮小しているケースが報告され、一〇万クラスでこの範囲の取扱が七〇%、一〇万以上では八五・七%を示している。
b、医薬品中制度品の取扱率は五九・八%、約六割の店が二〇〜四〇%の取扱との報告である。亦、チェーン品取扱も二〇〜四〇%のセエアーとの報告は五七・六%(二〇〜三〇%のセエアーとの報告は五七・六%(二〇〜三〇%のセエアーでは三一・六%)
c、売上中、医薬品売上を四〇〜六〇%とする店の他品の取扱状況は化粧品外をどの位の比率で販売しているかをみると、化粧品取扱零が全体の三分の一、五%取扱が三分の一となっており、医薬品構成の率の低い店程、化粧品の取扱は高率となっている。乳製品は五〜一〇%、雑貨は五%、医療用品、殺虫剤五〜一〇%、その他取扱〇〜五%での取扱が主となっている問題
廉売問題(一九・三%)社会医療の無料化(一九・三%)、保険の普及(一五、九%)、保険の普及(一五・九%)に報告は集中し五四・五%の高率を示し、扱い商品の多様化(一〇・〇%)、立地条件の変化(九・六%)、同業者の増加(六・八%)と困っている店を挙げている。

 ▽粗利益
中小企業の指標の二四・九%以上の粗利益をあげている報告は七六・七%で、医薬品のみの粗利益では二八〜三五%の粗利店は六六・一%も占めており、充分粗利益を取っているとの報告である。

 阿問呆答 はなしにならないはなし

 ◎物価
阿 物価はなぜ下らないの
呆 上向いているからだよ
阿 なぜ下向かないの
呆 下向いたら落ちるぢゃないか
阿 落ちちゃいけないの
呆 落ちたらこわれるぢゃないか、こわれたら物がなくなるではないか

 ◎にわか雨に会って駆け出した兄に弟が云うた
阿 先も降ってるから走っても何にもならんよ
呆 そうか、そんならゆっくり行こうよ
阿 ゆっくり行ったら余けいぬれるよ
呆 そんなら走ろうか
阿 走っても先も降っているよ
呆 そんなら此処で休んでいようよ
阿 それが一番いいよ、ぬれてもくたびれんからね・・・・・・

 ◎電車の窓から自宅を見ていた兄弟
兄ちゃん、お家が左の方に走って行くよ。電車が右に走っているから、お家が左の方に走っている様に見えるのだよ(頭をひねり乍ら)
おかしいね
おかしくはないさ、電車もお家も右と左に走っているのだよ(久呆)
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 告知板

 ▽九州山口薬剤部長協議会薬学会役員会
七月二十五日(水)福岡市博多駅前、朝日ビル九階ホテルステーションプラザにおいて開催。
午後二時〜四時三十分‐九州・山口薬剤部長協議会委員会。
午後四時三十分〜六時‐九州・山口薬学会役員会。

 ▽長崎県病薬長崎地区会
7月14日14時30分より長崎グランドホテルにて講演会を開催した。
題「向精神薬について」
講師九州大学薬学部
教授 植木昭和先生
約50名の出席があり盛会であった。今年度の長崎地区会委員は次の通り
松谷康見 長崎市民病院
湯下国治 長崎国立療養所
麻生忠介 長崎逓信病院
岩永節生 長崎原爆病院
高木 章 十善会病院
鈴木隆治 三菱病院
馬場 厚 長崎大学病院
堀部ミサ子 同
地区会長は松谷康見が再選されたが、@会員の研究発表、A会員相互の親睦を図る、等の事業計画をたてた。

 ミニ情報 

 森下泰と明日を語る会

 石館日薬会長を代表に剤界有力者が発起人となり「森下泰と明日を語る会」が結成された。明年の参院選全国区に対する森下氏後援会であり、広く賛同を得るよう協力を呼びかけている。

 漢方特委近く発足

 日本薬剤師会は「漢法特別委員会」(仮称)を近く発足させて、漢方がかかえる諸問題の解明にのり出すことになった。
常務理事会では左記方針を決め、人選を急ぐこととなった。
@担当役員に杉本、久万、小森の三常務をあてる。
Aメンバーは十五名程度
B東京を中心とした漢方取扱い開局者を主力とし、これに地方会員および専門学者を加える。
なお、日薬としては左の四項目を当面の問題として審議を行う方針という。
@制度上の問題
Aニセ漢方の絶滅対策
B日薬四七処方との関連性
C生薬の品質規格

 添付禁止警告

 去る四十五年十二月に禁止措置がとられ、一時鳴りをひそめていた医薬品の添付販売が、最近復活したとの声が聞かれるため、厚生省薬務局は去る二日付で「医薬品販売姿勢の適正化」について各都道府県ならびに各関係団体あて通知。これは四十五年末に禁止措置をとって以来、昨年八月に続いて二度目のもの。

 理論武装の必要性 深まる製薬業界

 このほど、日本医師会の武見会長はメーカー四十四社の代表との懇談会席上、医療の国営論が聞かれるがこれは製薬産業の国営論にもつながる問題だと指摘し研究、開発指向の確固たる立場をきずくよう警告を発している。

 すでに、国際的な医薬品価格の比較が国会で問題となったり、医薬品産業のあり方といった問題が論議されたり、きびしい環境におかれている製薬企業にまた新たな一石が投じられた感あり。こうした動きを受けて、製薬業界にも理論武装をする必要と、具体的に体質を改善していく努力を重ねるときが来ているとの認識が深まっている。

 西独再販制度ついに廃止

 西ドイツ連邦議会は七月六日、再販制度の廃止等を謳った独禁法改正案を採択。これによって、指定商品の再販を実施している国は州にその判断を委ねている米国を除けば日本だけとなった。公正取引委員会はこれについて、「現在作業中の再販制度の再検討に参考になる」と述べている。