通 史 昭和46年(1971) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和46年(1971) 4月10日号

 日本薬学会の劈頭を飾り 全国病院薬剤部長会議

 福岡市民会館に千六百余名参集

 桜花ほころぶ陽春の候、日本薬学会九一年会のトップを飾り全国病院薬剤部長会議が盛大に開催された。今回はアメリカよりも客員J・A・オッディス氏を招へいし、最近におけるアメリカ病院薬剤師の動向、特に臨床薬学の現状について講演、全国各地より参集した会員諸氏に多大の感銘を与えた。

 毎年日本薬学会年会のへき頭を飾る全国薬剤部長会議が今年は四月七日午前九時より福岡市民会館において盛大に開かれた。北は北海道より、南は九州南端奄美大島まで、特に今回は本土復帰を目前に控えた沖縄よりの参加者を加え、その数千六百余名、さすがの市民会館大ホールを埋め尽す盛況振りであった。

 会は定刻午前九時、飯塚病院三宅清彦氏の司会により九大病院堀岡正義氏の開会の辞に始まり、九大薬学部井口定男薬剤学委員長の挨拶あって後、報告事項に移り「医薬品の分類番号に関する調査」「病院薬局の構造基準」「処方せんに記載する用法指示の略号調査」及び「DT活動業務基準設定」その他、目下病院薬局の当面する重要事項の調査研究の報告があり、満場の会員を傾聴させた。

 又、日大板橋病院の発表した「注射薬の混合に関する実態調査」については、現在多剤併用、薬品公害が取沙汰されている時期だけに聴衆の注目をひき、何処の病院においても如何に多くの注射薬の混合注射が行なわれているかまざまざとその実態を改めて認識させられた。

 その他千葉大病院永瀬一郎氏より「薬剤師の病棟巡回制度実態調査」に関する報告があったが、これは目下病院薬剤師に課せられた新しい課題、所謂臨床薬学に関するものであった。これは各病院共乏しい薬剤師定員の中から人材を割き、毎日、又は週一・二回薬剤師を直接病棟に派遣し、病棟における薬品管理の外、先の混合注射の際起る配合禁忌の問題等について医師、看護婦の相談指導にあずかるというものであり、まさに一九七〇年代新しい病院薬局のあり方を示唆するものであった。

 その後、出題の議案、課題研究募集、宿題報告などの後、今回特にアメリカより招へいしたアメリカ病院薬剤師協会専務理事J・A・オッディス氏「アメリカ病院における新しいあり方」と題する講演があり、九大病院高田勝美氏と質疑応答には日本スクイブ株式会社柏野実氏がこれに当った

 ◆アメリカ病院の 新しいあり方

 アメリカ病院薬剤師の新しいあり方は、従来の閉鎖的な薬局から一歩を踏出して、薬剤師自から病棟に進出し、医師や看護婦と共に直接医療に参加することである。その方法は種々あるが、注射薬を混合する際、薬剤師自からが行なったり、又患者の与薬も看護婦の手を煩わせず自から行なったりすることもある。つまり薬についてはその調製から患者への与薬まで一貫して薬剤師自から行ない、責任を持つことによって、これまでかなりあった薬剤による過誤を減少させることができた。

 又、そうすることによってこれまで発見できなかった薬の副作用によるものと思われる予期しない症状を発見し、そのため患者の無用な苦痛を救い、又入院期間を短縮させることもできた。このため従来の薬学教育を変える必要があるし、現に臨床薬学の講座を設けた薬科大学もあるが、主として組織的な卒後教育を行なうことによって、これを補っている。

 薬剤師は薬局の中に閉じこもっていたのでは発展性はなく、積極的に病棟に進出し、直接医療に参画するだけでなく、薬に関するあらゆる情報を医師や看護婦に提供せねばならない。と正に画期的な内容の講演であった。

 満場を埋める聴衆を終始熱心に傾聴させ、中には熱心にメモをとっている会員もいた。講演を終えて後質疑応答に入ったが、新しい薬剤師の養成の問題、病棟進出を試みるに当って医師の抵抗、違和感をどう克服して行くか等実際に即した問題が多かった。

 参加者の声

 岡本氏(和歌山医大病院)
盛会でしたね。マイクもよく聴きとれ、スライドもきれいですよ。年々内容が充実してきたようです。

 佐藤氏(八尾市立病院)
ちょっと見た所では余り変り栄えがしないけど、注射薬の混合については興味が持てました。

 A女史(こども病院)
身近な問題が多く大変ためになりました。特に質疑応答に活気があって盛り上ったようです。

 岡部氏(国立大分病院)
この会でこんなに集ったことはないんじゃありませんか。テーマもまあ現状に即したものが多かったようですが、も少し今日的な社会的色彩を帯びたものも欲しかったですね。

 藤田穆氏逝去

 熊本大学名誉教授藤田穆氏は心蔵病のため、東京都小金井市東町五ノ六ノ二の自宅で三日午後二時半逝去された。享年七七歳、喪主は長男黎明氏。

 同氏は明治二七年日清戦争のさなかに福岡県と佐賀県境、背振山脈の南の斜面にある村に生れ、佐賀中学から一高理科、東大薬学科にすすみ、大正一三年熊本に赴任以来、熊本大学(熊本薬専)に三六年の長きにわたって教授として奉職、その間薬専校長、薬学部長を長年勤め、また九州薬学会では安香、村山両会長のあとをうけて三代目の会頭となり九州薬学会の発展に尽された。

 熊本大学退職後第一薬大の学長となり三八年病のため辞任、静養されていたが昨年、長年住みなれた九州を離れ、長男黎明氏のもとに移られた。

 同氏は昭和二八年から四三年まで毎年本紙の新年号に投稿され読者の共感をよんだ。その題をひろってみると「副作用」「病気を治すのは一体どちら側か」「カウンターカレント」「門松と春の七草」「科学と文芸」「不壊金剛心(生命地上発生説)」「人作り」「日本人の体格改造」「国語の乱脉」「保健医療の健全化」などがあり、同氏の生来の志望であった生命探究の哲学的方向を示すもの、あるいは霧の邦人の雅号による漢詩など、同氏の人柄を彷彿とさせるものである。

九州薬事新報 昭和46年(1971) 4月20日号

 日薬第4回学術大会開幕 異色の日薬総会

 専門家意識に燃えた参会者二千六百

 日本薬剤師会第4回学術大会は桜花爛漫の福岡市において九日午前九時から商工会議所ビルと西日本相互銀行ビルで開幕、同日午後の日本薬剤師会通常総会をはじめ各部会および関連行事が行なわれ、約二千六百名の参加者が三日間にわたり、それぞれの分野で研究発表や討論を行ない一年間の研究の成果を発表、また石館新会長による日薬の今後の基本方針が明らかにされ、参会者の職能確立に奮起する意欲を盛りあげた。

 日薬通常総会

 第26回日本薬剤師会通常総会は西日本相互銀行三階大ホールに約六百名の会員が参集して開かれ、まず第一部の日薬賞ならびに功労賞贈呈式が行なわれ、左記受賞者にそれぞれ石館会長から表彰状と薬師如来像、ならびに副賞が贈られた。次に受賞者を代表して山之内氏が謝辞を述べ、今大会に特に出席したアメリカ薬剤師会専務理事アプル氏並びに東大名誉教授落合英二両氏に日本薬剤師会名誉会員証が贈呈され、故武田日薬会長(武田氏令室)、石館会長にアメリカ薬剤師会名誉会員証がアプル氏の手から贈られた。またエチャウズフィリピン薬剤師会長からはアジア薬学大会に協力した日薬に対し感謝の楯が贈呈された。

 ▽日薬賞受賞者
内海正三(岐阜)、太田哲郎(東京)、久保文苗(東京)、高取治輔(長崎)、宮木高明(神奈川)、宗形義(福島)、山之内種清(滋賀)

 ▽日薬功労賞受賞者
安部繁雄(香川)、辛島英三(愛知)、指田孝(神奈川)、佐伯浩(長野)、坪野勝(宮城)、徳永文平(佐賀)、中野勇(東京)、野崎友雄(東京)、平吉昇(兵庫)、前田謙一(岡山)、村岡しずえ(大阪)

 次に第二部日薬総会に移り、四島大会準備委員長は開会の挨拶で会館類焼に対する各位の援助を謝した後「七〇年代の社会的あらしの中で薬剤師の職能をいかに確立するか大会の各分野において十分検討されたい」と述べ、石館会長は海外からの演者に、錦上花を添えるものと感謝の意をつたえ、新会長としての所見を次のように述べた。

 さきの代議員会で代議員各位の認識に心強さを感じ、会長の責任の重大さを痛感している。現在の社会情勢はますます混迷の度を増しているが、これは、医師と薬剤師の責任の分担がなされていないところにその原因がある。そのため医療体系の抜本改正が積極的に推進されるよう努力しなければならない。日薬としては先般、医療体系の正常化をはかるため、医療費体系に対する日薬の基本方針を関係当局に表明した。医薬品の過剰生産、過剰投薬等吾々薬剤師としては放置し得ない問題である。これらのよってきたる原因は種々あるが社会的道義の不在からと考えられ、元に戻すには余りに困難ではあるが世論の動向にまどわされることなく、この病根を根本的に是正する心がまえが必要である。医薬品の管理を他にまかせることなく、医薬品に対する責任を持つ唯一の責任ある団体であることを皆さんとともに新たに認識したい。

 また国民の環境衛生に対する問題も薬剤師の職能であることを認識し、薬剤師を通して行なわれるよう努力しなければならない。これら薬剤師の当然の職務を遂行するためには無関心という態度は最も恥ずべきもので、社会に対し責任を持った発言をするため、大同団結をしなければならない。日病薬も社団法人となることを確認している。今大会は各職域による単に職業的団体という認識でなく、国民の福祉健康に貢献することを目標に研鑚するものであり、日本薬学会もまた目的は違っても目標は一つでなければならない。今後の薬学教育には薬剤師会の意志を十分反映させるよう取りくみたい。

 また分業は客観的にも推進せざるを得ない情況であるが吾々としては受入れに努力、日薬としても研修会等積極的に実施したいと考えている。春は近いと考えられる。勇気を以って努力されたい。と結び、来賓の祝辞に移り厚生大臣(厚生省豊田参事官代読)、亀井県知事(岩下衛生部長代読)、阿部市長などの祝辞、祝電披露の後定款により会長を議長に議事に入り、坂口代議員会議長並びに鈴木、沖、桜井副会長から代議員会決定事項の報告があって異議なく承認した。次に、次期大会会長あいさつがあって総会を終了、引続き特別講演▽臨床化学検査の現状と将来=永井諄爾氏(九大病院中央検査部長)▽一九七〇年代の課題=アプル氏(アメリカ薬剤師会専務理事)▽フィリピンにおける新薬事法と医薬分業について=エチャウズ氏(フィリピン薬剤師会長)の講演があり、アプル、エチャウズ両氏には講演終了後振袖姿の女子薬剤師によって記念の花束が贈呈され、華やかな雰囲気が会場に流れ国際色豊かな盛大な総会ならびに特別講演を終了した。なお、会場から溢れた聴衆はロビーに特設のテレビによって視聴した。

 なお石館会長は総会終了後坂口徳次郎氏の参議院議員立候補について、日薬の発言が日薬の代表者坂口氏を通して国会に反映するよう格段の努力を会員に要請、坂口候補を国会に送ることは個人の批判を超越した問題であり、薬剤師の名誉をかけた問題であると発言して注目をあつめた。

 日本学校薬剤師会総会 学術大会のトップを飾り

 日本学校薬剤師会総会は、大会第一日目九日九時から、福岡商工会議所ビル三階会場において、種村日薬理事の司会のもとに、全国学校薬剤師三百余名が出席して開かれた。

 総会はまず永山会長から昭和二六年一〇月九大で学校薬剤師会が結成されて以来、今年は二一年目を迎え順調に発展していると現況を報告してあいさつとし、石館日薬会長は来賓のあいさつで、学薬の多年の功績に対して感謝の意を表わし「学校薬剤師が苦難におくせず酬いられることの少い仕事に取くみ、薬剤師の職域のため、社会のため大きな貢献をされた実績については会長になる以前から敬意をいだいていた。

 近来しばしば薬剤師に対するかんばしくない批評も聞かれるが、諸外国においても日本の学薬は高く評価されており、胸を張って今後もがんばって貰いたい。」と述べた。

 それより議長に高松(神奈)、古賀(福岡)、立花(大阪)の三氏を推して議事に入り、事業報告、決算、新年度予算を異議なく承認したあと、事業計画など活発な意見が出され、執行部の原案通り(会費も前年通り)決定、副会長一名の辞任に伴なう補充選任については山之内種清氏(滋賀県学薬会長)を選出した

 それより森副会長を座長に推して活発な協議が行なわれたが、特に時局柄公害と学薬の関係について討議が重ねられ、学校保健の先生の環境衛生実技講習などが実施される場合、学薬が指導することが望ましいので学薬はその方面の勉強をしておくこと。また学校と公害については@教育として公害をどう考えるか。A学校自体の環境衛生管理の面をどうするかの二面があるが@については近く文部省の方針が決まる筈であるが、大体現在の考え方としてはそれぞれの教科の中で正しい自然環境をやしなう方向にすべきだとしており、Aについて学校の立場で調査する場合と学薬自体でやる場合の責任の所在を明確に行動することなどが協議された。なお、四五年度実施した実態調査の初歩的項目の照度の定期検査実施校は全国小中校の約三分の一程度であり、他の項目等は更に低く、騒音が一八%であったことなど非常に遺憾であると報告され、各地の活動を更に活発化するよう執行部から要請した。

 薬局経営部会に出席して 一保険薬剤師の感じたこと 平田勉

 薬局分科会の委員長報告は、特に公害と薬剤師、医薬品の安全性と有効性の観点から薬局における薬剤師の管理面からの能力向上、責任観念を強く主張し、家庭薬の面からは軽治療と永年の歴史的信用が現在の地位、信用を維持してきたものだが、ただ一部においてその有効性が科学のメスで国民の前にさらけ出さねばならない事態も起ってくるのではないか、有効無効の問題を別にして信仰的に使用されているものも白日のもとにさらけ出される時がくるのではないか、その時期が近づいていることは十分認識すべきであるとの意見は全く同感である。

 星薬科大学生による「未来の薬局」の堀下げは一部観念的とはいえ、日薬幹部は新しい卵がどのように考えているか、手を差し延べ彼等なりの理想論に耳を貸し、彼等と接触する方法を考えるべきであろう。

 神奈川県における開局薬剤師と公害について清水氏の発表は、地域薬剤師のあり方、職能地位向上への一指標として、本学術大会の目玉商品の価値十分で、特に公害センターへの開局薬剤師の参加は、日薬が指導、その実施に全力投球すべきである。亀井福岡県知事は当選直後の記者会見で、福岡県に公害センターを作ると発表しているが、薬剤師の立場からこれらにどのように参加するかが今後の課題である。

 「医薬分業を阻害するもの」として地元演者荒巻氏は、医薬品の安全性からの分業のクローズアップは、生産者段階での製品チェックと剤型変化から、従来からの薬剤師職能と現在のそれとの間に変化が表われたが大衆に医薬品情報を提供する能力の有無がプロフェッションの軽重を問われる時代がくる。そのためにはDT活動の横の連繁を強化して自らの体質を変えてゆくことが重要になるとの発言は、現在の開局薬剤師への警告として受けとれる。

 このような考え方が「薬局の再編成」として演述された東京の境野氏の医療チームの形、つまりクリニックファーマシーとして現在の薬局が体質改善をはかり、薬局における物と技術を分離し、流通体系の一元化をはかることによって管理面と安全性に責任をもつべきであるという考え方に発展しているが、荒巻、境野両氏の内容を一本に結べば分業形態下における薬局のあり方と保険薬剤師の姿勢が出てくるとみてよいと思う。

 三分科会を通して今大会薬局経営部会の底流にあるものは、既に分業という名の列車はホームを離れた。この列車が何処に停車駅をもつか、それは受入れ側の薬剤師のネック、つまりほけ薬剤師のあり方によって決まることが感じられた。

 桑原医師は医師の立場から分業を既成事実と認めたうえの発言で、それを医師ベースで行なうか、既存薬局を利用するか、その主導権は医師と国民大衆に握られているとの感を自覚させられたとみてよいと思う。

 向井外科は分業にふみ切るとき現時点では患者を遠く歩かせることを危惧して医院のそばに適配条例の特例第一号として藤田薬局支店(調剤のみ行う薬局)開設を要望、桑原医院は中村氏を通して藤田薬局那珂支店(販売も行う薬局)を医院の隣接地に開設を要望して実現したものであるが、桑原氏は講演の中で自分の医院は藤田氏と常時調剤を受持つ薬剤師と二名の薬剤師を無料で使っているようなものですと発言、また佐賀市にも自分の友人が分業を実施しているがこれも適配条例の佐賀県特例第一号であるとの発表は何を意味するものか、各講師から発言されたように「エシカル」を扱わねば今後、薬局としての価値は消滅するということ、一方エシカルは医師の立場から作られた薬局に指向するとするならば、既存薬局薬剤師が医師と協調できる体質改善と経営指向の変化を求めない限り分業という名の列車は既存薬局の前を素通りすることになろう。医師と相互信頼をもつ薬剤師のみが次々にエシカルの支店をふやし発展してゆくであろう。

 桑原氏曰く「ある日薬物を大量に飲んで昏睡状態の患者があるとの知らせに往診したが薬瓶の中に残っていた一錠を藤田氏に見せたら即座に「セデス」と判明、死ぬことはないと安心した。薬物については一切藤田薬剤師にまかせているので副作用等のDTもして頂き助かります」と、クリニカルファーマシーとしての特徴が十分生かされていることがうかがえる。荒巻氏のいう情報提供、これが行なわれてはじめて医師と薬剤師の関係を強固にし、分業という名の列車を自分の前に停め得る最大のものではなかろうか。

 桑原氏の学術大会での講演は医師会の了解のもとに行なわれたと考えるならばこれらの発言は今後、薬局がどうあって欲しいか、その意志表示とみるべきで、藤田薬局の二支店並びに久保薬局(佐賀市)の内部構造、待合室等をスライドで発表紹介した桑原氏の講演は、日和見的薬剤師に対する一大警鐘であり、大きなショックを受けたのは私一人ではないと思う。薬剤師が迷っているうちに医師の分業に対する考えはすでに実行段階に進んでおり、このスライドがはっきりそれを明示したものと考えてよいと思う。

 分科会の途中で行なわれた石館日薬会長のあいさつも、分業なくして抜本改正はあり得ない、会員諸君は元薬剤師ではなく薬剤師としての前進をお願いする。との言葉と併せ、今のままでは既存薬局の前に分業列車は停車せず、別な形の薬局が出現するのではないか、今後、開局薬剤師は経営理念の転換を急ぐとともにプロフェッションとしての地位の確立や地域社会における存在を表明して地域保険医療にとけこんだクリニックファーマシーとしての自己開発と医療チームの一員として重要な位置づけを行なわなければならない。これ以外に全薬剤師、薬局の存在の意義、価値、社会的経済的地位の確立、向上は期待しえないのではなかろうか。(県保険薬局常任理事・飯塚支部長)

九州薬事新報 昭和46年(1971) 4月30日号

 福岡市薬総会 会費10%値上げ 会館建設特別委設置も

 会員数四二六名、部会数三一を抱える福岡市薬剤師会(斉田和夫会長)は、二二日午前中開かれた福岡市学校薬剤師会総会に引続き前後一時半から第26回定時総会を開催、会費値上げ(約10%)やさきの県薬会館類焼に伴う市薬会館建設特別委員会設立など、執行部の原案通り決定した。

 当日の出席は委任状のほか約八〇名の会員が出席、例により出席率は低調であったが活発な質疑応答が展開された。

 総会は白木太一郎理事の司会、国武副会長の開会のあいさつで開会、斉田会長の演述のあと、来賓の祝辞として県薬務課長の代理武田課長補佐、四島県薬会長、加藤、久保田両市議会議員のあいさつの後、特に工藤県薬専務理事を議長に推して議事に入り、報告事項に引続き議案の審議に移り、四五年度決算(七、六三〇、六四四円)を異議なく承認、次に事業計画は日薬、県薬の事業計画に即応して@医薬分業推進A薬剤師職能の高揚と管理能力の向上B会の組織強化と活動の活発化C市薬会館の建設等を重点項目とし、主権在会員をモットーに運営、予算額約一千万円の規模で事業を推進することとなり、予算案は会費を各ランクとも左記のとおり一〇%程度値上げ(会館類焼のため会館使用料増高等のため)し、また、従来特別会計としていた福岡市からの国保交付金残金三六万円並びに保険調剤手数料(保険調剤請求額の一%及び保険薬局一店当り年額六〇〇円の基本料金合計九六万円)を一般会計に繰り入れて会計の一本化をはかるなどを活発な質応答の後、賛成多数で可決決定した。

 ▽会費
A会費 年額二四、〇〇〇円を二六、四〇〇円に(大型小売、卸)
B会費 年額一九、五〇〇円を二一、四〇〇円に(薬局及び一般販売業者)
C会費 年額一三、五〇〇円を一四、八〇〇円に(メーカー、卸、薬種商)
D会費 年額五、三〇〇円を五、八〇〇円に(勤務薬剤師)

 これに対する意見として分業同盟費、組合費等も一括会費の中に含まれているがこれらの会費は出したくない会員もあるとの発言があったが、斉田会長は分業推進も薬業安定も薬剤師会としては大きな柱であり、基本線であるからこれらを負担金として出すのは当然である。会員であればこの基本線に協力願いたいと要請した。これに関連して会員の商組に対する認識の反省と商組の在り方について執行部の反省も必要であるとの発言もあった。

 次に市薬剤師会として市薬会館建設のため、市有地の払下げなど陳情しているが今後これを積極的に推進するため特別委員会を設立すること、また、福岡市薬剤師会を社団法人化することについても異議なく可決決定した。

 それより、会費早期完納部会の表彰を行ない、閉会のあと同所において第18回還暦祝を行ない副島恒夫、矢野憲太郎、戸田悌子、中島利雄、結城一夫、国松藤夫の六氏に記念品を贈呈、引続き同所において懇親の宴を催した

 福岡市学薬総会

 福岡市学校薬剤師会は、市薬剤師会総会に先立ち午前一〇時半から県薬事務所会議室において、第16回定時総会を開き、会務、事業報告、決算報告などを承認事業計画。予算なども原案通り決定した。

 福岡市の学薬は一五四校を受持つ七二名の学薬会員を擁し、昨年実施した騒音公害校の実態調査は、時局柄度々日刊紙が大々的に報道して薬剤師職能のPRに役立ち、また、本年度から市内小、中学校の手当も約七〇%アップした。

 最近、学校保健に対する考え方が多少変りつつあり、従来は各種調査など学薬の方から学校側に働きかける傾向にあったが、今後は学校側が関心を示し、学薬に相談するような在り方が正しいとの判断から、本年は市の学校薬剤師会の立場からの統一事業は行なわず、市教委、学校長会との協議による統一事業を実施することにし、校長会からの希望による梅雨時の照度の検査を全市一斉に行なう予定であることなどが報告されまた、県薬会館の火災によって焼失した器具は、多少保険にかけていたため保険金が渡された時点で、また購入することなども報告された。

 野球・ボーリング 部員福岡市薬募集

 福岡市薬剤師会は毎年、春秋二回、三師会親善野球大会、麻雀大会など行なっているが、本年は野球大会を五月、ボーリング大会を七月に行なう予定である。薬剤師側のアベレージは医師会、歯科医師会に遠く及ばないため、三師大会前に市薬大会を予定(六月)しており、野球部員並びにボーリング部員の募集を行なっている。なお、野球は江頭監督へ、ボーリングは中野キャプへ申込まれたい。

 論壇 無資格の薬業

 今年も当福岡市において二千六百余の会員を集めて薬剤師会総会その他関連学会が盛大に催された。日頃、研鑚のうん蓄を傾けまたは当面の重要諸問題を熱心に論議するその様、真に爛漫の春にふさわしい一大絵巻物であった。

 それにつけても、この会が医師会などと根本的に異っている一点がある。それは、この会に集まる会員が薬業界の総てではないということである。いうまでもなく、薬業界は複雑で薬剤師の外に薬種商その他が実際の営業第一線に立っている。それらの有資格ならばともかく、実際店頭に立って客に応接し、又は今回女子薬のシンポジウムで取上げられた「薬剤師と患者の人間関係」にしても、実際にその掌に当っているのはアウトサイダー、全くの無資格者が多い。潜在的乍らここら辺に、薬業界全般に響く問題がありそうである。

 何時の会、学会でも表面に浮沈する現象は派手に取上げられるが根の深い困難な問題は、とかく敬遠してやり過すきらいがないでもない。次回の大阪での会では一つ、これらの問題も掘起して検討していただきたい。

 ◆お知らせ 

 本紙は都合により次号より当分の間休刊致します。
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