通 史 昭和45年(1970) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和45年(1970) 12月10日号

 日本女子薬剤師会 九州ブロック研修会 29日熊大薬学部で開催

 日本女子薬剤師会は各ブロックで研修会を開催しているが、一一月二九日(日)一二時半から熊本大学薬学部第一講義室において九州ブロックの研修会を開催した。

 当日は秋島日本女子薬会長をはじめ九州各県から一五〇余名の会員が参加、まず地元熊本県女子薬会長水民婦而子九州ブロック長の開会のあいさつについで、下田熊本県薬副会長は、熊本県薬も調剤センターと医薬品研究センターを作りつつあり、現在は情報収集の段階であるが、来春女子薬剤師に管理して貰い活動を開始する予定であると報告した。また秋島会長は「女子薬剤師の数は全薬剤師の五〇%を占めようとしている現状から、このように各地で研修会を開催している」と女子薬剤師の自覚をうながしてあいさつとした。

 次に講演にうつり、来年七月の参議院選挙に出馬予定の坂口徳次郎氏の「国際薬剤師連合総会より帰国して」は「まず、ソ連は、食事が非常に悪く、医療制度も不完全であり、国営であるためサービスはゼロである。国民大衆に対するものはすべて粗末であるが国家的なものは優秀である。医薬品もその例にもれず大衆薬は粗末で、国家的優秀医薬品は常に百種が確保されている。

 ヨーロッパでは、薬剤師は街の薬局でインターンを終え病院に勤めており、日本とは全く逆で、街の薬局がそれ程権威があるわけである。ヨーロッパの観光地は日本人で溢れているが、アンマ、農協等の団体をよく見かけた。女子薬も団体で観光団を結成するよう努力し、視野を広げて貰いたい。」と述べた。

 次に熊本大学医学部精神科講師による「水俣病について」は、「水俣病については昭和三七年に研究は終ったと考えていたのは間違いで今日もなお被害は続いており、今後の問題は政治にまかせるほかはない」と述べ、水俣病が世界的に有名になったのは胎盤を通して胎児に影響することで、メチール水銀の許容量をどこまで引下げべきか未だ解らない。また適当な治療法がないため予防に重点を置かねばならない。とも述べ、結論として「工場側は自分の仕事に責任を持ち、最も簡単な方法で"ドクミ"の理論を実行すべきである。無禍失責任などは自然科学の立場からは決して起ってはならない」と述べた。

 次に熊本大学薬学部教授一番ヶ瀬尚氏は「食品添加物の生化学」について主としてチクロの研究について演述、終って質疑応答に入り活発な応答が続いた。

 引続き来年度の九州ブロック研修会は佐世保で開催することを決め、野川長崎県女子薬会長の「心良く引き受ける」とのあいさつがあり、田中日本女子薬副会長の閉会のあいさつで四時半閉会した。

 福岡県 公衆衛生大会 12月9日開会 河原畑、波多江ほか三氏表彰

 第18回福岡県公衆衛生大会は一二月九日(水)午前一〇時半から福岡市中洲の明治生命ホールで開会、大会式典並びに特別講演、シンポジウムなどが行なわれるが、同会で福岡県薬剤師会から県知事表彰を河原畑武雄(大牟田)、波多江嘉一郎(福岡)の両氏が、公衆衛生協会長表彰を安部寿(八幡区)、橋本祐一(久留米)、野口美智子(福岡)の三氏が受賞することになっている。

 なお、大会の内容は左記のとおり
▽大会式典
▽特別講演「家庭裁判所からみた世相のあれこれ」=小松仁 ▽シンポジウム「福岡県における公衆衛生の現状と70年代への展望」=司会倉恒匡徳(九州大学教授)、演者=木下伝(県地区衛生連合会副理事長)、竹末康夫(県医師会副会長)、井出一郎(聖マリア病院長)、岸川亨(福岡市保健予防課長)、玉井輝雄(飯塚保健所長)、秋山高(北九州市衛生研究所長)、橋爪喜三郎(八女郡星野村長)、助言者=山口誠哉(久留米大教授)
▽懇親会

 日医会長、独自の調剤センター構想発表

 武見日医会長が、一一月一六日広島市において記者会見を行ない、独自に調剤センターをつくる趣旨を含んだ談話を発表したことが日刊紙に報ぜられた。談話は次のとおりである。(内容の細部については不明である)一応お知らせします。(朝日新聞記事から)

 「各地区ごとの医師会で来春から薬局センターを設け"調剤薬局制"を実施する。薬局センターには良質の薬品だけを置き不良品を駆逐することで国内製薬会社や政府の薬事行政に反省を求める」、なかなか思うようにはいかない。だが諸般の情勢は次第に進みつつある。

 石館新会長は本月一日就任され七日所信表明がある筈であるが、現在のまま進めば数年後には薬剤師無用になろう。これを防止するために強気で対処される気構えが見受けられ、新しい路線を前の路線をふまえたうえで邁進されることとたのもしく感じている。薬業が薬剤師のものであることを社会的に確立するためにピッチをかけねばならない」とあいさつとし、次に新薬協会を代表して浜田辺製薬福岡支店長があいさつ、西県病薬副会長の乾杯の音頭で開宴、和気あいあいのうちに三宅監事の万才三唱で四時半閉会した。

 挾子

 長崎県薬剤師会(隈治人会長)は、長崎新聞朝刊のコラム「水や空」に、FDAの医薬品総点検に関する報道に基づき執筆された。「薬に関する」記述中、「日本人の薬好きは世界に冠たるものではなかろうか」「三食のうち一食は栄養剤で事足りる」「クスリ九層倍、医者百倍」「クスリの物価」「高橋晄正氏について」「具体的な指摘のアクロマイシントローチやルチンについて」それぞれ具体例、または学説を示して反論、あるいは誤りを指摘、今後報道に当っての注意をうながした。最近公害ばやりで毎日のように薬剤師に関連する問題もとり上げられている。誤った報道を正すのも薬剤師の地位向上の一環として是非必要なことであろう。本紙の新年号「私の五行提言」のなかに「県薬にスポークスマンを」があったが、早急にこの提言も実施したいものである。ことクスリに関しては薬剤師に質問されるよう努力が必要であろう。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 12月20日号

 石館会長所信表明 薬剤師のために薬学がある

 基本方針打出し内外に発表を

 福岡県薬剤師会は一二月八日、県薬会館で理事会、支部連絡協議会を開会、前日日薬で開いた臨時総会並びに関連諸会議に出席した四島県薬会長は、石館新会長の所信表明を次のように報告した。

 日薬の臨時総会では、先の臨時代議員会で決定した事項を承認。石館新会長が正式に就任のあいさつをされた。その中で、会長になった意味を表明されたがその内容は、薬剤師会そのものが現在は非常に重大である。日本の薬業、薬学両面からいって薬学と薬剤師は分離すべきでない。あくまで薬剤師の仕事があるために薬学もあるという考えを自分は持っている。と述べ、従ってこの機会に薬剤師会の在り方、基本姿勢を内外に発表すべきであるがそれについては早急に基本方針協議会を設置して三分科会に分け、第一には会員の構成をどう拡大するか、同時にこれを維持するための会費問題の検討、第二に医薬分業の具体的推進に関する諸問題の検討、第三に薬剤師の倫理や薬剤師職能の基本線などを検討してハッキリ打出し、社会に対してもこれをアッピールする必要がある。

 遅くとも明年の代議員会前に結論を得て、代議員会を機会にそのような体制をとりたいとの考えである。この協議会の委員は大体三〇名とし。委員は執行部、会員をとわず、あらゆる分野から選んで委嘱するという考え方である。

 また、辞意を表明していた理事者は、会長の要望によりあらためて指名したこととして留任することとなり、基本問題を検討すると同時にこのような問題についてもスッキリした形をとりたいということである。

 新会長としては俗にいう"やる気充分"で人事問題よりも仕事を前向きに進めることが先決だとの意見である。従って当分の間、会の構成に変りはないが、基本線のすすめ方は今迄とは若干違った積極性をもつであろうと考えて頂いて差支えないと考える。と述べ石館新会長は薬業畑に生まれ、学問の世界に入り、薬剤師の立場から最後の仕事として、薬剤師会を立派なものにし、薬剤師の職能を確立させることが自分に課せられた使命であると表現されているので大いに期待し得ると考えると報告、その他、分業同盟会長は兼仕されるが、薬政連の会長は政治の分野における認識が浅いので沖副会長を会長に決定。この方の人事については沖会長があらためて検討されると思われる、と報告した。

 また、総会ではウイリアム・Sアプル(アメリカ薬剤師会専務理事)、落合英二(東大名誉教授)両氏を名誉会員に推すこと、明年四月福岡で開会の第四回学術大会にアプル氏とフィリピン薬剤師会長ロウルデス・T・エチャウズ女史を招くことを決定したことが報告された。

 薬務課 広告の自粛をバックアップ 福岡方式にならうよう通知

 福岡地区薬業協議会は、量販店並びに各グループ代表等と昨年暮から引続き広告の自粛について話合いを続け、一応福岡方式として価格が守られ安定しているものを限定して(再販価格品目、指導価格が守られている品等)広告に価格を入れて良いことを申合せ、実施していたが、最近、TFC加盟店並びに一般小売業者がこれを破り、チラシがひんぱんに出ることから、県薬務課では薬業者に対してもようやく一般からも批判を受けてきたため、小売薬業者の姿勢を正す意味からこれら申合せ事項に違反しないよう衛生部長名で通知を出し、広告の自粛をよびかけ、違反者については即刻注意を与えている。

 医薬品等の広告自粛の徹底について通知

 医薬品の広告自粛については、さきに、昭和四五年九月一八日付第四五薬発第一、六四五号衛生部長通ちようをもって、特に医薬品の特殊性を認識し、その販売姿勢を正しく積極的に一般向け広告の自粛適正化の自主的規制方を全薬業界に要望指示したところであります。

 これに対し、あらゆる階層の小売業を含めた薬業協議会は、代表者において検討され、福岡地区において医薬品等の広告の自粛申合せが自主的に承認決定された旨、報告がありました。

 よって、この福岡地区業界の自主的自粛申合せ事項の内容を検討したところ、十分その努力の跡がうかがわれ適正なものであり、これが励行推進により、販売姿勢の正常化、広告の適正化も、はかられるものと期待しているところであります。

 然るに、昨今の市中の広告の現状を見ると、自主的自粛申合せ事項の内容に照し、一部に申合せに反するものが見受けられる。よって、更に強力に薬業協議会等において、自粛申合せの主旨及び事項の徹底を末端まで滲透されるよう要望します。

 今後、当薬務課でも、薬事監視、その他の際に、自主的自粛申合せに反する不信行為を続けて、その販売姿勢を正さない者については、自粛申合せの主旨を考慮して調査し、指導する考えであります。

 以上、かような事例が一部に発生しているので福岡地区に限らず、福岡県下全地区について貴会員のみあらず、医薬品等の販売にたづさわるすべての業者に漏れなく周知徹底させ、自主的に自粛申合せを励行し販売姿勢を正し、遵法精神にのっとり公衆衛生の向上に寄与されるよう要望します。

 福岡の薬業祝賀会 亀井知事も祝辞 二百余名参集してお祝い

 福岡県の薬業会は、さきに藍綬褒章を受章した四島久氏(福岡県薬会長)、厚生大臣賞を受賞した五郎丸勝氏(前福岡県薬会長)、文部大臣賞を受賞した柴田伊津郎氏(県薬監事)、神谷武信氏(県学薬常務理事)の四氏を主賓に、亀井知事をはじめ岩下県衛生部長ほか十数名を来賓に招き、薬学、薬業者二百余名が参集して一二月八日龍鳳真珠の間において、四氏の受賞をたたえて盛大な祝賀会を開催した。

 祝賀会は工藤県薬専務理事司会、四氏の功績をそれぞれ詳細に紹介、長野副会長が発起人を代表してあいさつ、亀井知事は来賓を代表して祝辞を述べ、国松武田薬品監査並びに大黒南海堂社長もそれぞれ各界を代表して祝辞を述べた後、受章者を代表して四島久氏は「私共は皆さんに代って受賞したものであるから、こちらからお礼を申し上げねばならない。」と謝辞を述べ、開宴、内田数彦氏の尺八、戸田連城氏の黒田節、須原勇助氏のにわか等が次々に披露され、興にのった亀井知事も美声をはりあげて出陣の歌を披露し、盛大裡に祝賀会を終えた。