通 史 昭和45年(1970) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和45年(1970) 11月10日号

 福岡県薬支部長会 講習・研修会への参加は対外的分業受入のPR

 福岡県薬剤師会は理事会並びに支部連絡協議合同会議を一〇月二九日午後一時半から県薬会館で開会、中央及び一般情勢報告、第38回九州山口薬学大会報告、本年度薬学講習会・研修会などについて協議した。

 当日は特に佐藤薬務課長も臨席して本年度薬学講習会並びに研修会などについて「講習会や研修会に参加することが前向きの姿勢ということだと思う」と述べ、分業は薬剤師が考えている以上のスピードでひそかに進んでおり、身近かな問題である。と会員の奮起をうながし、四島会長は中央情勢として @日薬臨時代議員会で石館会長、沖副会長が選出され正副議長は坂口、室両氏が再選されたが石館氏の都合により十二月初旬の会長就任までは現執行部が会務を行なう。 A昭和四六年度国家予算に医薬分業推進に要する経費(薬務局要求)の実現促進のため県選出国会議員に運動することとなった。なお、医薬分業推進に要する経費要求額は▽医薬分業指導研修費五〇〇万六千円(五〇薬局に一名、四七〇名につき九四ヶ所で指導、研修)▽医薬品調剤、検査及び備蓄センター設置費三、〇六六万七千円(五年計画初年度八ヶ所、一ヶ所一、一五〇万円の三分の一補助分)▽薬局利用患者実態調査費九六万九千円、合計三、六六四万二千円B日薬年金制度設立準備については会員の希望により日薬で検討の結果案ができたが会員の声を聞くためのアンケートをとることとなり、用紙は各支部を通じ配布、一一月末日までに回収することとなった。

 次に工藤専務理事から@四島会長の藍綬褒章受章A五郎丸前会長の厚生大臣賞受賞B衛生検査技師法の一部を改正する政令公布(10月14費)C薬と健康の週間行事と薬事功労者の県知事表彰(14名)D鹿児島市で開会の九州山口薬学大会等について詳細な報告が行われた。

 次に薬学講習会、研修会は本年度は四ブロックにおいて、両会関連して実施することになっている。 これにつき四島会長は「薬剤師は分業推進のスローガンをかかげて邁進しているが、講習や研修会は、専門家として自らの研鑽と同時に分業を進めるための対外的PRでもある。厚生省も分業指導研修費を予算に組み積極的姿勢を示している時期でもあるので勉強が嫌いでも分業推進運動に参加する意味で多数参加されたい」と要請した。

 薬と健康の週間行事については、福岡、大牟田、京都支部からそれぞれ行事内容の報告があり、社会保険関係については中村担当理事から九月分保険調剤について、枚数は若干ふえているも発行医が減少しているがその理由を解明したい、と発言、保険薬局会各支部の早期結成を要請した。(飯塚支部は結成ずみ)また分業推進伝達講習会は既に九支部において開催したことが報告された。

 伝達講習会を開催した支部及び出席者は次の通り()内は開催日と保険薬局数
▽大牟田支部(7月27日)33名
▽福岡支部(7月29日)98名(202)
▽甘木支部(8月2日)16名(16)
▽柳川大川支部(8月8日)14名(36)
▽八幡支部(8月25日)37名(76)
▽直方鞍手支部(10月2日)15名(31)
▽八女支部(10月12日)13名(16)
▽久留米支部(10月13日)26名(31)
▽飯塚支部(10月24日)25名(37)

 福岡県薬九月分保険調剤
▽取扱件数一二、三七四
▽取扱枚数一七、六八八
▽処方せん発行者数=官公一二、一般医師八四、歯科六四七
▽請求金額合計一〇、七〇六、八九六円

 九州山口商組理事長会 再販とTFC対策検討

 九州山口各県商組理事長会は一〇月三一日午後一時から福岡県薬剤師会館で開催、@中央情勢報告A再販問題についてB大型店、TFC問題についてC医薬品の広告のあり方などについて協議懇談した。これはさきの九州山口薬学大会の商組代表者会で、TFC問題等については早急に各県理事長会を開催することを申合せていたためのものである。

 当日は木元(佐賀)隈(長崎)上野(熊本)山村(鹿児島)矢田部(宮崎)益田(大分)油利(山口)の各県理事長または副理事長並びに福岡から白木理事長、藤野専務理事のほか副理事長、四島県薬会長、メーカー代表三社、卸代表三社も出席した。

 中央情勢については四島 隈両氏から詳細な説明、報告があり
 (1)再販問題について  日薬としても大衆薬の再販の価格体系が妥当であるかどうか検討する必要があるとしており、一三日協議することになっている、先般の日薬薬局委員会では再販品であって価格維持ができていないもの、再販でないのをあたかも再販のごとく取扱っているもの等については、まじめな再販を護持するために摘発すべきではないかとの意見もでていることなどが報告され、また隈氏はさきの自民党再販小委員会での業界代表各氏の発言を詳細に説明、その後の情報などから判断すれば、再販は確定再販が原則であり、値巾再販は異例である、再販はもともと価格の拘束であり、再販の競争は品質とサービスの競争であるべきだとの結論が自民党としては固まっているようであるが、今後も消費者、スーパー、大正製薬等の反対があるため予断は許されない。来年一月頃再販維持の結論が出されると思われるが過大なマージン等には何等かの措置がとられると考えられる。

(2)大型店、TFC問題について各県から実情が報告され対策について協議したが、小売業者は消費者のため純潔でなければならないことが基本であるから大正製薬に限らずメーカー資本が小売に入ることは防止しなければならない。また大型店のグループ化の実態等についても監視すべきであるなどの意見が圧倒的であった、当日の結論としては@小売の自主性の堅持A確定再販の護持B小売薬業界の安定化促進C広告とおとり廉売の規制を各県とも引続き強力に推進するため、再販値くずれの監視、広告是正の申合せ、自主性を守るための情報集収等に努力することを申合せた。

 なお、当日の会議は非公開であったが、再販問題について、適正な再販を護持するためには再販を結んで価格維持に努力しないメーカー、再販を悪用するメーカー等は業界自らが自粛する意味から摘発すべきであるとの意見と、内ゲバは避けたいとする意見が対立したといわれるが、内ゲバはおこしても自粛すべきであるとの意見が圧倒的多数であったといわれ、今後の成りゆきが注目される。

 福岡県薬薬学講習会 四地区で実施

 本年度薬学講習会は従来通り九州山口各県統一して開催されているが、福岡県薬剤師会では一〇月四日から七日までの四日間、四ブロック別に北九州(四日)福岡(五日)筑豊(六日)筑後(七日)それぞれ開会。出席数は予定を下廻ったが、参加者は例年になく最後まで熱心に聴講した。

 内容は各ブロックとも▽薬物、代謝と薬効(1時間30分)▽分業と調剤(1時間30分)▽臨床検査概論と法規(1時間30分)▽CO環境基準の設定と測定方法(1時間)▽分業問題(1時間)で、参加者は北九州八一名、福岡一一四名、筑豊五七名、筑後五五名であった。

 なお支部毎の開局会員数に対する出席率は次のとおり
福岡=三六・六%、宗像=一〇%、粕屋=三六・八%、筑紫=三〇・六%、糸島=一一・一%、久留米=四四・一%、八女=二二・二%、浮羽=三六・三%、三井=五〇%、甘木=五〇%、柳川大川=三八・八%、大牟田=七・三%、遠賀=一五%、若松=一六%、八幡=三二%、戸畑=四五・八%、小倉=〇・八%、門司=二一・六%、京都二五%築上=一一・一%、直方=九三・三%、飯塚=五六・四%、山田=○、田川=七・一四%

 薬事功労者選考基準 福岡県薬で検討

 福岡県では毎年、秋の薬と健康の週間中に薬事功労者の県知事表彰が行われるため、県薬あるいは地域から推選する場合の基準を決めるべきであるとして、このほど、県薬でその案ができ、さきの支部連絡協議会で、この案をたたき台に各支部においても検討するよう要望があった。薬事功労者選考基準案は次のとおり。

 薬事功労者選考基準案

 (1)福岡県内において三〇年以上無事故で薬事、薬業に従事し、その間地域住民の保健衛生の向上に寄与するとともに薬事、薬業界の向上、後進の指導に功労のあったもの
 (2)薬剤師会、薬事協会、商業組合、メーカ−卸等の県を単位とする団体の役員(支部長を含む)を一0年以上歴任し、県民の保健衛生に寄与するとともに薬事、薬業界の向上、後進の指導に功労のあったもの
 (3)地区を単位とする二項の団体の役員を一五年以上歴任し、二項に準ずる功労のあったもの
 (4)第二項、第三項の役員中二項の年数、三項の年数の合計が一五年を超え、第二項に準ずる功労のあったもの
 (5)第一項から第四項までの該当者中五四才以下の者は対象外とする
 (6)前各項の規定にかかわらず福岡県知事が特に功労を認めたもの

 石館新会長迎え 日薬臨時総会開催 12月7日関連会合も

 日本薬剤師会は去る一〇月一九日開催の代議員会の決定による石館新会長を迎え、一二月七日東京永田町の薬業健保会館で日薬臨時総会、地方連絡協議会ほか関係会合を開催する。

 午前一〇時〜一一時は全体理事会、一一時〜一二時は地方連絡協議会、午後〇時半〜一時は同盟常任執行委員会に引続き同盟臨時総会、一時〜一時半は薬政連総務会並びに臨時評議員会一時半〜二時は日薬臨時総会が開催される予定で、当日は石館会長の新任のあいさつ、役員の選任などが行なわれることになっている。

 薬学と薬業 坂井 透 佐世保市薬剤師会長

 医師は大学を出て、大病院に勤めようと、自分一人で開業しようとも、専門科目としては全然同じことをやっている。処が、薬剤師は違う。病院に勤める者と製薬会社に勤めるものと薬局を開業するものとではすることが全然違うのである。同じことを大学で学んで卒業しながら、開業した者と病院勤務者とでは、まるで別の世界の仕事である。この傾向は、戦前よりは戦後、殊に皆保険になった頃から甚しい差異を示すようになって来た。このことが医薬分業に大変な障害になっていることをお考えになっている方も多いと思う。

 私は昭和のはじめ頃熊本を卒業して薬局を開き終戦前後の一時的閉鎖の時を除くと、実働三十五年の経歴を持っている。そして私の弟、姉の子供三人、私の長男といずれも薬学を出たが、薬局を経営しているのは私一人で、あと皆病院か製薬会社に勤めている。

 六人のうち私一人が開局者であるがたまに一緒に話合う時など私一人がひどく孤立しているような感じを味あわされてならない。私と弟が戦前の出であとの四人は全部戦後派であり、且全員国立大学を出ているが彼等の話をきいた処では「薬学部は薬学士を養成する処であって薬剤師を作る処ではない。」という大学の教授の言がある。甚だしいのになると、薬剤師国家試験なんか受けるな、といった人もあるとか、このような話は私がたしかに私の一族の四人の青年のうちの誰からか聞いた話である。

 何故私がこんな話を持ち出すかというと、開局者と非開局者の間の(之は薬学部の教授なども含めて)生活様式、ひいては社会感覚に甚だしいへだたりがあり、之がひいては医薬分業運動の大きな障害になっているということを云いたいからである。之は選挙の時にいつもいやというほど味あわされる。私は戦前から薬剤師会の役員をしており、分業運動の全国大会などにも欠かさず出席している人間であり、又それを私の同族の五人もよく知っている。

 それでいて、竹中氏の時も、高野氏の時も、私から頼むと「それは薬剤師会の候補者でしょう。私には私の所属団体の候補者がありましてね。」という。彼等には薬剤師という感覚は全くないのであろう。それも一生薬学士の肩書のみの仕事を続けるなら或いはよろしいかもしれないが、そんな人は極めて稀であって殆んどの人は、定年退職後、又は途中で開局したり、管理薬剤師になったりして、薬剤師の肩書を使用する。

 このような現象は最早五十年以上にも及ぶのではないかと考えられるが分業運動七十年というその中で五十年近くも薬剤師でない薬学出身者が同じ名簿にのっていたことを思わねばならない。名簿の上だけの数字でならば参議院議員の一人は確実に出せるはずのものが実際はこのように見かけだけの数字を基礎にしていたのである。この辺が医師会と大変に違うところであるが、これは冒頭に述べたところの日常従事の仕事の差異に由来するものである。社保審でも一〇月三一日「医薬分業を完全に実施せよ」と答申した今日である。更に来年六月の参院選である。名簿の数字が薬剤師の数字と一致するような方策を強く考えたい。

 九州山口医薬分業実施推進同盟 福岡県の厚生省保健指導終る

 厚生省係官による昭和四五年度の保険薬局指導が福岡県で実施され、七薬局を対象に個別指導は一六及び一七日午前中に、本年一月一日から一〇月三一日の間の新規指定薬局三五薬局並びに一般希望者対象の集団指導は一七日午後一時から武田薬品福岡支店会議室で行なわれた。

 今回は厚生省保険局医療課山崎一衛課長補佐はじめ県から江口技官、柴岡事務官、国保は村上医療係長ほかによって指導が行なわれ一七日午後の集団指導には新規指定薬局のほか県下から多数の希望者も含め百余名が出席、柴岡事務官の司会により江口技官のあいさつのあと「保険調剤について」山崎氏が約一時間半にわたって講演、村上係長から県の連絡事項が伝達され質疑応答に入り、山崎氏並に県係官、工藤県薬専務理事がそれぞれ応答した。福岡県では毎年この指導が行なわれているが時局を反映して受講者の向上が見受けられる。

 研究助成金交付の件

 九州山口薬学会会員に対する研究助成金交付について先日の総会で承認されましたので、下記の要領で希望者を募り、役員会で審査の上、決定し発表致します。

 応募要領
 ▽応募資格 九州山口薬学会会員
 ▽採用件数 二件以内
 ▽助成金額 総額五万円以内
 ▽応募締切期限 昭和四五年一二月三一日
 ▽審査発表予定 昭和四六年三月頃
 応募者は研究要旨を四〇〇字詰横書原稿用紙二枚程度に書いて、左記の事務所宛てに郵送してください。
 ▽宛先 福岡市大字堅粕一二七六 九州大学医学部附属病院薬剤部内 九州山口薬学会
 なお、交付を受けた方は、その研究成果を九州山口薬学会で発表し、会報に載せて戴くことになります。

 九州山口薬学会

 

 挾子 八女支部学薬プール消毒予算獲得

 ▼福岡県薬八女支部(中島義一会長)はさきに学薬が行なったプールの水質検査の調査結果資料(比較表)を、女子薬剤師である筑後市議会議員(筑後保養院薬局長)に提出したことから、同氏は九月議会の一般質問にこれをとり上げ、来年度は同市の小、中学校のプール消毒予算全額を獲得、消毒薬を現物支給、またプール熱の予防のための廃水後の消毒は天日で干すだけであったがこれもクロール顆粒で消毒することとなり予算面で考慮することになり、測定器の比色版は消耗品であるから年次計画で購入支給ということになった。

 これらの事例は小さいことだが如何に政治力が物をいうかの表われである。さいわい来年は選挙年である、薬業界の見通しはきびしく小売、卸、メーカーも含め、かってない程政治力を必要としている。業界の自覚がのぞまれる。

 同盟情報部速報 第58号 昭和45年11月7日
 日本医薬分業実施推進同盟情報部
 社会保険審議会、抜本改正前提問題で意見書提出

 社会保険審議会(会長有泉亨氏)は、一〇月三一日かねて審議中の医療保険の前提問題について、意見書をとりまとめ、厚生大臣に提出した。このなかで、医薬分業については、次のように述べている。この内容は公益側小山委員の原案と考え方の点では大きな相違はないと言えるが、原案では医薬分業を「実施のための条件が整備された地域から段階的に実施すべきである。」とあったのが、「診療報酬体系の適正合理化、薬価に関する諸制度の合理化、薬価に関する諸制度の合理化、薬局側の受入体制の整備等分業実施のための条件の整備につとめ、その実現を待って実施に踏み切るべきである。」となっている。

 ◆医療保険の前提問題(関連諸制度)についての意見書医薬制度(抜萃)

 わが国の医療保険給付費に占める薬剤費の割合が諸外国に比して著しく高いことはもはや常識である。また、薬の乱用や薬害等の問題について大きな関心が寄せられている。政府は、この事態を直視して医薬制度の改善に努力すべきである。

 医薬分業は未だ十分に実施されていないが、その完全実施を図ることは、医師が投薬により利益を得ようとする誘惑を断ち切る意味において是非とも必要である。しかしながら現時点では、医師と薬剤師との間に正しい協力関係が得られるような条件が整備されていないこと、および肝心の患者の側に一般に医薬分業を歓迎しない風潮がみられることから、今直ちに医薬分業を完全に実施すると大きな混乱を招くおそれがあるので、政府としては診療報酬体系の適正合理化、薬価に関する諸制度の合理化、薬局側の受入体制の整備等医薬分業実施のための条件の整備に努め、その実現を待って実施に踏み切るべきである。

 近年医薬品に関しては、添付等によるはげしい過当競争、一部医薬品の独占価格的高薬価、いたましい副作用事故等の問題がある。これに対処するためには政府は、薬務行政の姿勢を転換し、国民に対しよりよい医薬品をより安く提供できるよう製薬企業の体質改善に努力するとともに、医薬品の製造から販売にいたるまで、その規制を強化し医薬品の安全性の確保を図るべきである。なお、これに関連して研究開発の助成、医薬品に関する特許法制の再検討を行なうべきである。

 また、医薬品の広告に対する規制が不十分なため国民が不必要に薬を乱用する傾向がみられるので真に消費者保護の立場から厳しい広告規制を行なうとともに消費者教育を行なうなど必要な行政サービスを強化すべきである。

 この意見書について、一一月一日の日刊紙は大きく報道した。とくに読売新聞は「医薬分業への基礎」との大見出しを付けて、この内容を報道し、毎日新聞は社説にて「医療保険抜本改正を急げ」と述べ、医薬分業の推進などの提案は国民の要望を集約したもので、政府はこれらの早急な具体化に努めるべきであると論じている。

 なお、同審議会は一一月四日引続いて総会を開き、同会としては、政管健保の赤字問題対策についてはふれず、抜本改正に焦点をあわせて審議を進めていく方針を確認した。

 ◆厚生行政年次報告(昭和四四年度)公表

 昭和四四年度厚生行政年次報告(厚生白書)が一〇月二三日の閣議の諒承を得て発表された。この報告のなかで医薬分業について次のように述べている。

 医薬分業の制度は、医療のうち、患者の診察治療は医師に、医師の処方に基づく調剤は薬剤師にと医と薬をそれぞれの専門家に分担して行なわせることにより、医療の適正化、合理化を図り、医療の向上に寄与しようとする制度であり、わが国においては、国民一般の慣習にかんがみ、漸進的な進展に期待するという姿勢で三一年四月に実施されたものである。しかしその後、この制度は十分に普及しているとはいえない。今後、すみやかに医薬分業の十分な実施を図るためには、薬局の受入れ体制の整備、薬剤師の調剤技術の向上、処方せんの発行側である医師の協力、診療報酬体系の合理化、国民に対する意義の徹底等の基礎的な諸条件を整備する必要がある。

 ◆国保中央会、抜本改革案に分業推進盛り込む

 国保中央会は、一〇月二一日総会を開き、医療保険制度改革に関する意見を決定、政府与党に申入れた。この意見の中で、前提問題の一項目として、医薬問題を取上げ、医薬分業推進を次のように主張している。

医薬問題 

 (1)医薬分業=医薬分業は、今日すでに世界のすう勢であり、分業を可能ならしめる体制の整備を急ぎ実施可能のところから順次行なうべきである。
 (2)医薬品産業=医療保険との関連において、医薬品メーカーおよび流通機構のあり方に対し、根本的にメスを加えるべきであり、社会公共的見地から例えば価格、広告、試供品等に過度の行き過ぎがあるときは、国が介入し得るよう強力なる措置を考慮する必要がある。

 ◆健保連、壁新聞で分業推進を強調

 健康保険組合連合会は、このほど壁新聞(薬と健康の週間に日薬に作成したものと同種)を作成し、医薬分業の推進をPRした。同会は、「良い医療費の仕組みを作ろう」というタイトルで、健生ニュース(壁新聞)一万部を作成、全国の会員(健保組合等)に配布した。内容は医師の診察の写真に、処方せんを浮出したものを、「医師の技術を尊重しよう!」との説明で上半面に入れ、下反面にはh「医療費は主食日の一・七倍使われている」「医薬分業が医療制度の理想」「良医が損する出来高払い!」「ムダな薬を使いたがるな!」「医師は処方せんを、薬は薬局で!」等のキャッチフレーズが掲げられ、漫画でそれらの内容を表現している。分業推進についての同会の熱意がうかがわれ、そのもたらす効果が大きく期待される。

 ◆薬局等配置問題懇談会第二回会合開く

 薬局等配置問題懇談会(座長星野毅御子郎氏)は、一〇月二六日第二回会合を開き、適配条例の問題等について検討した。適配条例については、@薬局と薬種商などが一律に扱われているのは再検討を要する。A条例が各県バラバラなのは再検討すべきであろう。等の意見がだされた。これらの検討から、できるだけ早い機会に学識経験者を参考人として招くことをきめ、また、次回(一一月一七日)には、「望ましい薬局像」などを検討することをきめた。

 調剤実務研修会開催要綱

 (1)開催者 都道府県衛生部病院薬剤師会、薬剤師会の共催とする。
 (2)開催期 昭和四六年三月末日までに各都道府県ごとに適宜企画実施のこと
 (3)受講資格 日薬ならびに地方薬剤師会会員
 (4)実施方法

 @各地病院薬剤師会幹部と事前に十分懇談し実務指導、指導病院の選定、実施方法等につき協議のこと
 A実務指導病院が決定した場合、当病院薬剤部長等と懇談の機会をもうけ実施に完璧を期すること
 B衛生部より実務指導病院に対し依頼してもらうこと
 C各都道府県とも実務指導は数群に分け、希望者に受講させることが望ましい(強制は好ましくない)
 D集中講義は一ヶ所を基本とする。但し地方事情により数カ所開催も可
E実務研修は出来れば病院の実情により土曜ないし日曜日が好ましい(これについては指導病院薬剤部長と協議のこと)

 (5)研修内容 集中講義=一日、三時間 実務研修=三日間、一日最低二時間
 (6)研修方法

 @原則として集中講義を行なった後、実務研修を行なう
 A実務研修の場合一指導者に三〜四名の受講者数とする

 (7)テキストについて

 @最近の調剤の傾向(集中講義用)
 A実習用処方例(実務研修用)
 B処方解説(実務研修終了時受講者に渡す)
 C他に指導者用処方解説を作る
 D本研修会テキストは一般的なものであるので、研修テキスト以外に各地区の実状にそった講義あるいは処方例の実習をとり入れて可

 (8)受講料およびテキスト代

 @受講料 二千円(集中・実務講義を含む)とする。但し、この受講料は各都道府県の講師謝礼、および実務指導施設への謝金(指導員の謝金含む)ならびに会場費講師の旅費その他運営に必要な経費に充当のこと
 Aテキスト代 五百円(三冊)(テキスト代五百円については日薬に納付する)

 国立大阪病院等で院外処方せん発行 大阪府薬「推せん調剤薬局」制進める

 かねて大阪府薬から処方せん発行について働きかけが行なわれていた結果、国立大阪病院、大阪南病院(河内長野市)では、希望する患者には院外処方せんを発行する態勢をとることを明らかにした。 これに対応するため大阪府薬では、とりあえず現時点で受入可能な二〇薬局を選び、院外処方せん調剤受入れに協力方を要請した。

 大阪府薬では、これら病院以外にも院外処方せん発行の機運が高まっていることを察知し、早急に「府薬推せん調剤薬局制度」を発足させるため審議を始めた。

 この制度案によると、推せん基準として設定される保険薬局としてふさわしい@経営方針A保険薬剤師B調剤用医薬品C構造設備D義務履行などに合致する薬局を「府薬推せん調剤薬局」に指定し、昭和四五年度中各地域支部毎に最低一カ所、昭和四六年度中には少くとも地域支部の代議員数に対応する数を整備することを目標としている。この推せん調剤薬局を分業完成の先発隊として理解し、全保険薬局が応援する体制をとり、推せん調剤薬局は地域のモデル保険薬局であり地域の保険薬局に対して調剤用医薬品の分譲やDIサービスを行なうことを盛り込んでいる。

 さしあたり、推せん調剤薬局は、大阪府下の代表的な病院の繁用医薬の予備調査から決定された調剤用最低必須常備医薬品四〇〇品目を備蓄する義務を負うこととなるようである。大阪府薬では、今後も各病院に働きかけ、処方せんの発行を増加する方策を推進しており、その成果のあらわれるのも近いということである。

 岐阜県薬岐阜支部調剤専門薬局開設

 岐阜県薬岐阜支部では、分業推進の具体方策の一つとして、支部が管理する調剤薬局j「市民薬局」を県薬会館を建増して開設し、九月一八日業務を開始した。

 総面積三三平方メートル(一〇坪)、建設費一三五万円を同支部にて負担建設され、今後、@分業にそなえて保険調剤実務研修の場とする。A稀用薬品を備蓄し、会員に必要に応じ一時借与する。B会員本人の処方せんを受入れ調剤する。C対外的にPRするモデルケースとすることを目標として運営される。同地区の分業推進に大きな力となることが期待されている。この薬局の設備は次のとおり。

 市民薬局の建設、運営は岐阜支部がすべて管理しており、建設費一三五万総面積三三平方メートル調剤室二六・四平方メートルである。調剤専門であるため、流し、事務机の他は調剤棚四台薬品棚一台が大部分を占め、ヒートシール錠剤を保管するプラスチック小引出六四〇組を整備、薬品は今のところ錠剤を中心に約二〇〇種が集められているが、利用に合わせて増加し、約一、〇〇〇種の収容能力がある。

 一九六九年米国薬局販売成績まとまる

 米国薬業誌ドラッグトピックス誌によると、一九六九年の全米の薬局の販売高は約四兆六千億円に昇りそのうち医薬品保健用品の売上げが約二兆三、六〇〇億円となり、全販売高の約五一%を占めた。

 医薬品の内訳として、調剤による売上げは約一兆六千億円、全販売高の約三四・四%を占めた。OTC薬の売り上げは約六千億円で全販売高の約一三・二%を占めた。

 主な品目と販売高を示すと
 総販売高四兆六、二九六億円総販売高に占める割合(一〇〇%)
 医薬品・保健用品二兆三、六〇四億円(五一%)、うち調剤一兆五、九三三億円(三四・四%)、OTC薬六、一〇六億円(一三・二%)、うちビタミン剤七八〇億円、咳感冒薬一、三九六億円、下剤四四二億円、内用鎮痛剤九一六億円、強壮剤変質剤二四八億円、外用鎮痛剤二七一億円、外用防腐剤一七五億円、制酸剤一九〇億円、その他一、六八五億円、化粧品類六、〇五七億円(一三・一%)、その他(家庭用品、雑貨、喫茶、タバコ等)一兆六、六三一億円(三五・九%)

 明年度分業予算獲得運動進む

 厚生省が昭和四六年度予算として要求している分業推進費三、六〇〇万円の獲得に万全を期するため、強力な運動が進められている。岩手、岐阜等の各県では、立派な陳情書を作成して、地元出身議員に対し陳情した。自民党の明年度予算についての方針の審議はすでに開始されている。この機を失せず、各県において地元出身議員に対する陳情を進められるよう希望する。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 110月20日号

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 70年代における薬務行政の見通し 九州山口薬学大会における講演要旨

 さきの九州山口薬学大会卸流通部会における厚生省木暮企業課長の特別講演「七〇年代における薬務行政の見通し」は最近の薬業界をめぐる諸問題を解り易く解明したものとして出席者に感銘を与えたのでその要旨を掲載する。

 七〇年代における薬務行政の見通しという題をいただいているが、薬務行政をめぐるいくつかの問題について申上げ、皆さんの七〇年代にのぞむ判断にしていただけば幸である。まず、自由化の問題、再販制度のゆくえ、保険をめぐるいろいろの情勢について申上げ、卸に対する種々の条件が激動しているなかで、このような問題が直接間接に影響を与えることになろうかと思うので参考にしていただきたい。

 ◆資本自由化の経過と第四次自由化の見通し

 薬業界も勿論国際経済のただ中に乗り出して行く情況にあるが、国際化の問題については一つは物の自由化、つまり輸入の自由化ともう一つは資本の自由化と二つの面がある。

 薬業界は輸入の自由化の面では他業界のトップを切り、輸入化をしてきたと云える。現在ではただ二品目テトラサイクリンとサイクロセリンとクレラムフェニコールと三つの抗生物質の原末と製剤だけが非自由化のまま残り、他は一切自由化されている。

 この二品目にしても、来年中には自由化の方針が決められているが、ご承知のような国際情勢で、物の自由化の完成を急げという閣議決定がなされ、時期が繰りあがり、原末の方は来年三月にも自由化されるのではないかという情勢である。従って物の自由化は終ったと云っても差支えないと思っている。

 資本の自由化については薬業界だけでなく、日本の産業界全般にわたり、未だ自由化の過程にあると云えるが、この自由化がとりあげられたのは四二年の七月一日、第一次の自由化が行なわれ、この時製薬企業については五〇%自由化と決められた。

 さらに第二次自由化は昨年の三月一日実施され、この時製薬企業の自由化は一〇〇%にすべきであると外資審議会を中心として非常に強く主張されたが、結果的には五〇%に据置くことになった。ただし皆さんに直接関係のある医薬品の卸小売の事業に対して五〇%自由化が決定、医療用の機械器具についても同様五〇%の自由化がなされた。

 第三次の自由化が本年九月一日から実施されたが、大蔵大臣が五月一八日外資審議会に諮問、外資審の中の専門小委員会で作った叩き台により第三次自由化が行なわれ、結果的には医薬品の製造流通とも五〇%自由化据置となったが、その結果に至るまでにはかなり紆余曲折があった。その内容を申上げる前に、第三次自由化までに日本における外国資本進出の現状は、一次、二次の自由化以来外資系の製薬企業は実に七三社(戦前からのものもわずかにあった)を数え、この七三社が七、五三三億(四三年度統計)の製産をしている。これは日本のその年度の総生産高の一〇%に当り、日本の他の産業部門では見られない現象である。

 外資審議会では第三次の場合も一〇〇%自由化せよとの意見が非常に強かったが、その根拠は@製薬企業は決算状況がよいから国際競争力があり、一〇〇%自由化しても大丈夫であろうA第一次で五〇%自由化したので既に実状に明るく対策する時間もあった、という主張である。これに対して私共の考え方としては次のような理由で一〇〇%自由化はできないと判断した。

 @医薬品の場合は国民に最も良い医薬品を供給することが何よりも優先するわけで、国内企業が如何に打撃を受けても仕方がないという考え方があるわけだが、これについては日本の医薬品の七割は外国のオリジンと言ってもよく、世界で開発された医薬品が日本をうるおしている現状であり、既にこれは達成されていると考えられ、一〇〇%にする必要はないこと。

 A経済の国際化をはかり、経済の効率化を進めるという自由化の基本的観点についても、他産業に比し最も国際化が進んでいる産業といえるから外国の進出の希望をかなえる観点からも一〇〇%にする必要なないこと。

 B自由化の第三の観点の企業防衛、つまり民族資本を守るという立場から考えると、日本の製薬企業は残念ながら決算上繁栄していることは否定できないが、国際競争力からすれば非常に劣っていると言わざるを得ない。

 国際競争力というのは資本の力と新薬の開発力と思うが、特に新薬の開発能力は非常に劣っていると言わざるを得ない。技術格差委員会の調査によれば新薬の開発は戦後国際的に重要な医薬品一三八品目が開発されているが、その内訳はアメリカ67、スイス20、ドイツ15、フランス11、イギリス10、オランダ5、ベルギー4、デンマーク3等でしているにすぎない。

 

 従って日本の開発力は現段階では非常に低位にあると言わざるを得ない。ここで自由化することは資本力においてはアメリカ等にたちうちできないし、外資が掌握してしまうということであると考えられ、イギリスやフランスが自由化後販売額で見た場合70%、フランス50%が外国資本(主としてアメリカ)に帰していることを考えると、日本も一〇〇自由化した場合、これらの国々の後をたどることにならざるを得ないと考えられるので、現状では一〇〇%自由化に踏み切れないと判断したわけである。

 このような意見を繰り返し訴えつづけたが、外資審は日本の製薬企業が今日まで何をしてきたか若しこのような実情がわかっていないとすれば一度イギリスやフランスのような情況になってもいづれ元に戻るようになるのではないかと判断し、余力のあるうちに自由化をすべきだと主張した。

 最近、研究投資が強く行なわれるようになってはいるが、この結果が現われるのは五年、あるいは十年先のことであることも考慮して五〇%据置いて欲しいとの私共の希望が入れられ、結果的には据置かれたが、厚生省関係では繊維と紙製の衛生材料の製造業と医薬部外品の製造業も第三次には新たに五〇%自由化された。薬局に関係ある単独総合小売店(チェーンでなく単独のデパート、スーパー等)も新たに五〇%自由化され従って適配条例の範囲内でデパート、スーパーの一角に薬品部を置くことも五〇%資本でやれることになったわけである。

 医薬品の輸出業(外国の輸出業者が日本から居をかまえて日本から輸出する)は五〇%であったが今回一〇〇%になった。また単独専門小売店(薬局など)五〇%は、面積に制限があったものがはずされ、厚生省関係では大体業種の数から云えば七八%が自由化された結果となった。

 問題は第四次であるが、当初は四七年の三月資本のであったがご承知のように国際情勢から来年の秋に繰り上げることが閣議決定している。そこで薬業界がどのようなことになるか考えると@EECのように国防産業を除き殆んど一〇〇%自由化されるかA薬業界は第一次で五〇%自由化されたが他業種は第三次でやっと五〇%自由化したものが多い、これを一挙に一〇〇%にできるかどうか、国際的に考えれば@と考えられるが、国内的には自動車、電算機業界の実情からみてこれらも含め、揃って一〇〇%にすることは非常にむずかしいといえるわけでAの場合は薬業界の特殊事情が勘案される可能性がでてくると思われるが、かりに第四次で一〇〇%の自由化を避けたいとするならば外資審議会の人々が納得するような対策の実をあげていないと五〇%据置きは非常にむつかしいと云わざるを得ない。製薬企業は勿論流通も含めて来年秋に迫っている自由化の問題を改めて検討、態度を決める必要があろうと思うのである。

 ◆再販のゆくえ

 再販制度の問題は非常に重要な時期にさしかかっている。再販制度は二八年位医薬品も指定品目となり、それ以後、次第に再販制度を利用するメーカーがふえ、現在は四七社に及んでいる。

 再販制度は業界の安定の面に寄与していると思われるが、一方物価の問題がクローズアップされるたびに撤廃、あるいは運用を厳正に、という要求があちこちからなされ、最近では四三年に物価問題懇談会が再販制度に対し攻撃の矢を向け、これをとりあげ四三年の一二月に再販品目の洗い直しが行なわれた。

 この時、自民党の政調の社会部会と商工部会合同の再販小委員会が作られ、物懇の批判にどう応えるかが検討され、その時第一に再販はブランド商品の品質の保持、新製品の研究開発意欲の向上、あるいは業界消費者のためにも良い結果である。

 従ってよい制度であることをまず確認しようという立場をとり、第二に再販制度は必要な制度であるが、運用が間違うと消費者に不利益をもたらすのみでなく業界の固定化にも通じる。従って良い制度ではあるが運用については虚心坦懐に反省しなければならないとの立場をとり、その反省すべき点として@不当に大きなリベート、現品添付を行なうことは反省しなければならないA販売の相手方に格差をつけること、過大な景品、旅行などを反省するBそのためにはどうすれば良いか、ということであるがまず第一に医薬品医ついては毒、劇、要指示薬、注射剤などは再販制度をはなすべきだとし、次に公正競争規約を作り業界の自粛体制をかためる必要があることを勧告し、また厚生省と公正取引委員会は業界に適切な指導をせよと言っており、オトリ廉売を排除するため、業界と当局は研究をせよ、さらに公正競争規約ができるまでの間、公取委は再販実施情況の監視を厳重にせよ、そして消費者の利益が不当に害されると認められる場合は、その行為を直ちに是正するようにせよと注文をつけているわけである。

 このような形で四三年一二月二八日自民党の意見が決まり、これに基づき公取委は前に述べた品目を再販指定品目からはずす措置をとることで一応落着いたわけである。ところが本年四月六日、物価安定政策会議が各官庁の行政介入の中で物価を不当につり上げている。このようなものはやめるべきであると勧告を行なった。

 厚生省に直接関係あるものとしては適配問題と再販問題で、適配条例という形で行政介入しているため、新しく効率のよい薬局開設がチェックされ、不当に薬価がつり上げられている。というもので、これについては適配問題懇談会を設けて検討、薬務局としてどのような解答を出すか研究中である。また「再販売価格維持行為が認められ価格維持されるだけでなく販売業者間の競争が制限され流通機構の効率化が阻害される。」と指摘した。

 このような認識のもとに化粧品、医薬品、家庭用石鹸等について独禁法の指定要件に該当しているかどうかを早急に検討し、問題がある商品についてはこれを削除すべきである。と強い注文を出している。これにどう対処するかが吾々の課題になっているわけであるが、勿論これは公取委を中心として作業がすすんでいる。この提言以来自民党としては再び小委員会を設けて現在まで三回検討を行なったが、近く小委員会の結論が出る情況になっている。

 だが、非常に注意しなければならないのは公取委の独占禁止懇話会の動きである。この懇話会に公取委が「再販制度を将来どうすべきか」と諮問したのであるが、その際、詳細な再販実施情況を報告し、次回一一月一七日に結論が出る運びになるのではないかと考えられているが、この実施情況報告の中で医薬品はきびしく報告され、再販実施メーカーは現在四七社であるが、この再販を利用するメーカーのふえ方を説明するに当り、「再販制度というものは、ただ再販の指定を受けただけでは効果がなく、値くずれする場合が多い。再販を効果かあらしめるにはメーカーが流通段階を整理し、場合によっては支配も必要である。

 三七年頃からメーカーが流通段階に進出、その結果再販を利用するメーカーがふえてきたものである。」と言っており、裏を返えせばメーカーの流通支配というものがかなり顕著になってきているので、再販制度はむしろ害の方が多くなる時期にさしかかってきているという意味のようである。

また、医薬品の場合は一、四二七品目が再販され、四四年度には一、一二二億円の売上げで、これは医薬品の薬局薬店における販売額の二六%であると報告している。次に、問題としなければならないのは再販の場合に利益、リベート、添付がどうなっているかを詳細に報告しているが、その中で医薬品製造業について数字をあげ、営業利益率が他の産業部門と比較して報告されている。それによれば物価安定政策会議のいう再販によってメーカーが高い利益をあげていることを裏書する数字であると見なければならないと思うのである。 

 さらに公取委ではマージン、リベートの情況を製企会に属するメーカーと直販、家庭薬メーカーに区別して報告、その他景品、販売員派遣などの現況、さらにマージンリベートの特殊な事例を報告しており、薬品については特に批判的事例をあげている。この部分が日刊紙に発表されたものであると思う。近く小委員会の結論が出ると思うが、このような資料を提出しているので、かなりシビアな結論になるのではないかと思うのである。

 ◆保険をめぐる諸問題について

 保険をめぐる問題については医薬分業問題と薬価の問題がある。健康保険の抜本対策云われて久しいが厚生省の諮問機関である社会保険審議会で、健康保険の前提になる条件の検討が行なわれている。

 この健康保険の前提となる問題というのは健康保険がよってたっているところの医薬制度、あるいは公衆衛生行政、公費負担医療の情況などで、保険以外の問題を論議しているわけであるが、このいろいろな制度の検討は一〇月三一日の社会保険審議会で幕を引くことになるわけである。

 この前提の条件のなかで私共が関係する問題としては医薬分業と薬価の問題がとり上げられているが、この二つの問題について各側委員が意見の表明をしている。

 まず、事業主側の意見は云わば経営者側の意見であるにもかかわらず薬業界に非常にきびしい批判をしている。医薬分業については分業体制を整備し、できる地域からやれ、と云っているが、薬価の問題についてはきびしく「薬剤の販売ルートの簡素化、合理化により経費の節減を図り、薬価の引下げに資するとともに添付習慣の是正を行なうべきである」と云っており、さらに「医薬品の特許制度を物質特許とし、研究開発の助成をし、品質の検査の強化などをせよ、薬価基準については収載品目の整理と薬価決定方法の合理化をせよ」と提言している。

 労働者側の意見はさらにきびしいが、総評と同盟と別に出しており、総評側は「分業については将来、そうあるべきであるが、現在ただちに実施すれば患者の二重手間になり、政府の低医療費政策にプラスになる面がある」と云っており、薬価については「現在薬剤費が保険医療費の四〇%を占めるという重大な事実がある。薬価基準を若干引き下げる程度では根本的な問題の解決にはならない、薬剤の製造、販売および広告を厳正に規制する対策をたて実施すべきである」と。

 同盟側は薬業界の情況をかなり同情的に判断している面もあるが、分業についてはできるだけ早くやれと云っており、薬業界について一〇項の意見を出しているが、そのうち添付の是正について積極的にこれらをなくす方法をとれと云っており、広告の制限については、医療用は勿論一般用についても思い切った制限をして医薬品の適正使用に資するようにせよ、と云っている。薬価については調査及び薬価決定の方法を根本的に中医協で検討して貰えと云っており、オンコストの問題も考えよ、と提言している。

 公益側の仲田委員は、薬品の許可を厳重にし、薬品の有効性については疑問が提起されるようなことがないようにせよ、広告の規制をせよ、医薬品開発の助成をせよ、などであるが、医薬分業については、今日までの意見と違った観点から出ており、分業は行なうべきだ、その理由は今まで薬剤の利益が医療機関の経営にリンクされているがきいおれを断ち切るために分業をせよと主張している。

 これらの意見を現在とりまとめ中であるが、とりまとめの叩き台を小山委員が作っているが、医療分業については「医師が投薬により利益を得ようとする誘惑を断ち切る意味においてこれを推進せよ」と云っている。薬剤の生産と流通機構では「わが国の医薬品の価格は国際価格と比し割高のものが多い。これは薬務行政が企業に対する保護主義を基調に運営され、自由な競争原理を導入しようとしなかったことに起因している」と薬務行政をきびしく批判、また「広告に対する規制が十分でないため国民が薬を乱用する傾向がみられるから消費者保護の立場から厳しい広告規制を行なえ」とも云っている。健康保険の抜本対策に関連して取り上げられるのは当然のことであるが、かなり深刻に批判されているという事情は承知いただけたと思う。

 薬業界にはいろいろの問題点があって業界自身が反省し、あるいは行政の面でも対策が必要であるが、現在、広い舞台に薬業界の問題がとり上げられ、いわば業界自体の問題でなく、国民全体の立場からの批判に耐えねばならない時期にさしかかったと云わねばならない。この健康保険の審議がどのような方向にゆくか、各方面の意見により大体想像できると思うが、これらの動きが薬業界の将来に大きな影響を与えるものと思うのである。

 ◆中医協の今後の動き

 中医協の関係については昨年の一〇月を対象に一一月、薬価調査を行ったがこの調査に基づき八月一日から薬価基準の大改正が行なわれたわけである。下げ幅は三%程度で業界としてはまあまあの下げ幅であったと云えると思うが、先程も述べたように審議会の委員のなかで、この方法も限界にきたという意見も起っていることを申上げておきたい。

 六月一日、治療指針使用基準関係薬品の緊急登載が行なわれたが、従来からの薬業界の問題がこれによって一つ解決したと考えている。今後中医協がどのように運営されるかということであるが、八月一日薬価基準大改正が行なわれたあと医療経済実態調査の問題をとりあつかっていたが、この結論が出たので今後は医薬品の問題にはいるわけである。そこで皆さんから希望のある銘柄別収載、オンコストなどの問題が論議されることになると思う。

 従って中医協の審議も薬業界にとり大切な時期にさしかかったと申上げられると思う。このように薬業界をめぐる諸問題は重大な時期を迎えたわけで私共もできるだけ種々な対策を講じて薬業界の発展に努めたいと考えている。

 福岡県薬業協議会 情況報告にとどまる

 福岡県薬業協議会一一月例会は一三日の定例日に県薬会館で開会、詳細な各地区情況報告のほかTFC加盟店のその後の動きなどについて報告が行なわれた。福岡地区は十日会で量販店及び各グループの代表者と広告の規制等につき懇談を重ねてきたが、一部TFC加盟店等の広告が規制できないため次第に出席が悪く、次回より午後一時から量販グループ代表と卸、メーカーだけの懇談を行ない、三時から地区協議会(商組、卸、メーカー)と合流して懇談することを量販店側の希望によって実施することを申合せていること、またTFC加盟の一店だけは話合いに応じないことなどが報告された。

 筑後地区は久留米のダイエーが二一日開店するため地元業者(他業種も含め)と話合いが持たれている。大牟田市は医薬品の広告について話し合いを行い広告してよい品目を検討、段階的に限定している、県境の荒尾市との懇談は今後の問題であると報告された。筑豊地区は別に問題はなく、北九州は広告について福岡方式をとり入れたいが、まだそこまで進展しないと報告され、次回開催日は日曜のため一二日午後一時開会と決めた。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 11月30日号

 薬剤師は健康コンサルタントに 日刊紙石館守三氏を紹介

 十一月九日付毎日新聞夕刊に、日薬の新会長に選出された石館守三氏を紹介する記事が写真入りで大きく掲載された、新会長として同氏の考え方の参考に全文を紹介する。

 見出しは「薬剤師は"健康コンサルタント"に」学界の長老、石館守三さん、「全国行脚しハッパ」老いの一徹、薬はんらんに公債「衛生試験所長やめ古巣へ」。と…

 「薬剤師奮起せよ。そして国民の健康増進の役に立て、ボクは君らをシッタするため全国を回るぞ」こんな勇ましい言葉を残して、わが国薬学界の長老石館守三さんが国立衛生試験所の所長を今月限りで退職、日本薬剤師会の会長に就任する。数々の輝かしい業績を持ち「あと二、三年いまのポストをつとめれば文化勲章間違いなし」との声を振切って全国を"行脚"し、医師の陰にかくれた形の後輩薬剤師たちに「国民の健康相談役となれ」と老いのハッパをかける。

 東大の助手時代、強心剤「ビタカンファ」を発明して学士院賞を受け、戦後は制ガン剤「ナイトロミン」を開発するなど、世界に名前の売れた六九才の石館さん。医薬品と食品の安全に目を光らす国立衛生試験所の所長室。薬剤師でもある石館さんは白衣を着て、故郷の青森ナマリを残しながら早口でしゃべる。

 「現在、薬剤師の世界には難問が出積している。医薬分業の推進、大衆保健薬の薬効と副作用の問題…。薬事行政は大きな転換期にきているが、薬剤師会の現状で解決できるだろうか。この団体は社会に対する責任を十分果たしていないと思う。だから、医師ほど尊敬されないんだ。薬剤師が民衆のよき相談相手となって薬の使用方法などを指導する時代になっているんだよ」

 薬剤師−。その数、全国に約七万五千人、医薬分業が完全実施にほど遠いこともあって「薬の調剤」と「住民の健康相談役」という本来の役目よりも、大衆保健薬や化粧品を店先で「ただ売るだけ」の仕事のほうが忙しく、世間の評価もまだまだといわれる。

 薬問屋のせがれで人生を"薬ひと筋"に生きた石館さんは"七〇年代の薬剤師"が残念でならない。退職後は各地で講演会、ゼミナールを開いて「国民のヘルス・カウンセラー」になるよう決起を呼びかける一方民間人の立場から厚生省にも自由にモノをいい、医薬分業の推進など薬事行政に注文をつけるという。やる気十分だ。

 石館さんは一〇月一九日東京虎ノ門の共済会館で開かれた日薬の臨時代議員会で、出席者全員の賛成で先に死去した武田孝三郎会長の後任候補に選ばれている。公務員であるため受諾をまだ正式には表明していないが、会員が待ち望んでいた「OK」のサインをようやく出したわけ。兼任の中央薬事審議会会長もやめるものとみられる。医事評論家の水野肇氏は「あの人は六九才のボンボン。身体がものすごく健康だし気持も若い。地方歩きをして薬剤師を奮起させれば、国民のためにプラス」といっている。

 大正一四年、東大医学部薬学科を出て大学に残り、助手のとき強心剤「ビタカンファ」を発明して学士院賞。三〇才の若さで薬学博士。東大薬学科を薬学部に昇格させ、初代の学部長をつとめた。昭和二六年には世界に先がけて制ガン剤「ナイトロミン」を開発した。白血病(慢性骨髄性)と悪性絨毛腫ように「かなりの効果」があり、胃ガン肺ガンなど多くのガンにも「延命効果」が認められる期待の薬だ。肝臓薬「グロンサン」の生みの親でも薬項効にクレームがつけられ、現在の大衆保健薬のききめ論争の"はしり"となったことでも知られる。

 四〇年の一二月から国立衛生試験所所長。中央薬事審議会会長としてこの九月スモンとの関係を指摘された整腸剤「キノホルム」の使用を中止させたばかり。石館さんが日本薬剤師会の会長として"里帰り"するのは一二月初めの予定だが"エース"を迎える日薬側は「薬剤師会が薬の有害性を問題にすることができるよう内部を充実させたい」(鈴木誠太郎副会長)と早くも組織立て直しを考えている。石館さんはいま「全国どこから回ろうか」で頭がいっぱいだ。今年の終わりか来年の初めには"青森ナマリの石館行脚"がはじまることだろう。(分業同盟速報59号より)

 第4回学術大会 薬局経営部会の 地元担当者決定

 明春、福岡市で開催される第四回学術大会の開局関係部会は「薬局経営部会」として運営され、薬局・社会保険・薬業経済と合同部会がそれぞれ開かれるが同部会における地元担当者がこの程左記のように決定した。

 ▽薬局部会
 司会=梶原敬史(八幡区)
 発表「医薬分業を阻害するもの」=荒巻善之助氏(福岡市)

 ▽社会保険部会
 司会=平田勉氏(飯塚市発表「薬剤師の立場から」=藤田胖氏(福岡市)

 ▽薬業経済部会
 司会=白木太一郎氏(福岡市)
 発表「グループ活動をしている薬局の立場から」=衛藤嘉蔵氏(小倉区)
 「健全薬局の立場から」=徳永文平氏(佐賀市)

 ▽合同部会
 司会=古賀隆氏(福岡市)

 同盟情報部速報 第59号 昭和45年11月14日
 日本医薬分業実施推進同盟情報部
 医事評論家大渡順二氏医薬分業、薬局等について論評

 「共済新報」一〇月号に医事評論家大渡順二氏は、「クスリは敵か味方か?」の論文発表し、医薬分業と薬局等について次のように論評している。

 先ず私たち国民が、クスリ好きの心理をかえること。その次は昭和三一年いらい事実上有名無実になっている医薬分業を即時実施に移すこと。そのためには、お医者の診療技術料金を大幅に引上げて、クスリで儲けないでも飯が食えるように優遇すること。同時に、チリ紙やコンドームでかせいでいる、現在の薬局を体質改善して、お医者の安心するような薬局にまで引上げること。クスリ会社の新薬の先発権(特許権に似た)を現行二年から五年にまで延長して、新薬の模倣を禁じて良心あるメーカーを助成すること。

 反対に、文部省予算を増額して、医学部の研究費を国庫でまかなって、クスリ会社からのヒモつき研究を遮断すること。これらは一連の連鎖作業で一挙に断行する必要がある。これをやれば、クスリ屋の過当競争もなくなり、お医者の過剰投薬もなくなる。私は、私のいう通りやってくれれば、荒っぽく踏んで、クスリ消費は半分に減ると見る。半分に減っていて、しかも、お医者は直して儲かり、クスリ会社も安定して儲かり三方損の反対に三方得である。

 (中略)

 お医者の使うクスリとは別に、私たちが薬局で買う売薬の問題も大きい。東大講師高橋晄正さんの大衆保健薬攻撃が実を結んで、こんど、厚生省に薬効問題懇話会という会が出来、既に出廻っている市販薬を総ざらいすることになったが結構なことである。いままでの厚生省は、効く、効かないのは二の次で、害がなければ許可するといったあまい方針だったがいつまでもこれでいいはずはない。

 こんどの、あの下痢止剤キノフォルムの販売停止で、キノフォルム剤が実に一八六種類も生産されていた事実を教えられて、私たちは今更に、クスリ会社の惨憺たる過当競争を知り、また、そうさせた厚生省の甘い行政に驚いたのだが、これだからこそ、私たちが、クスリ会社のCMで、クスリ漬けを強いられようというもの。そういう考えだから、薬局の距離制限もなくして自由競争させ、はては、スーパーマーケットに薬局を開設させようという風潮も出ようということになる。

 クスリの世界は、一切の過当競争を排して、もっと鮮やかな、厳粛な世界でやらなければならない。そうでなければ、せっかくの薬剤師の白衣が泣く。地域社会に於ける薬局の位置はもっと高く評価するべきじゃあるまいか。私たちが病気になったときの医療費の行方は、買薬三割、診療機関七割の対比が膠着しているが、最近は診療機関が毎年微増している。市民の近代的眼ざめと見るか、医薬品の濫給の結果とみるか或いはその双方とみるかは皆さんの判断だが、買薬の根強い需要は、あらためて考え直す必要がありはしないか。

 私たちは深夜、土、日旺、祭日などの、お医者にかかれない時間帯のためにも、また、お医者がきてくれない無医村のためにも、一定の救急箱と最寄りの薬局がほしい。富山の広貴堂などのおなじみの配置薬はすばらしい救急箱であった。だが、それに対する政府や医師会の指導はゼロである。私たちは一昨年いらい、この無医村及び無医時間帯から自分を守るために、新しく「軽医療」の概念を提唱し、「素人療法、ここまで出来る。これ以上はいけない」という健康運動を展開している。最寄りの薬局は、ぜひその指導者になってほしい。そして患者の主訴を整理して、余程緊急のときは、お医者と連絡のつく途を確保しておいてほしい。

 この三割の買薬層を、いまのまま放置しておくことは、私たちを、牛や馬と同じく牧場に放っておくようなものである。また私達自身も、進んで軽医療の知識を吸収し、お医者と患者の間の交通整理を試み、不必要な受診は月旺日まで延ばしても、ひと先ずは軽医療で済ませていくだけの慧知をもちたいものである。

 そのため私たちは在来の家庭医書も作り直して、軽医療向けの親切なものを提供している。老父母の膝の下を離れて、養鶏バッタリみたいなアパート暮らしの核家族は、発病当初の軽医療を知っていた。軽医療への自覚は、日本医療制度の盲点を反省することである。お医者の医療ばかりが医療ではない。同時に困ったことは、最近の厚生省の売薬の許可の方針が、ますます無難なものに逃げこみつつあることである。

 その一例は綜合感冒剤である。患者が飲み過ぎても安全なように、大切な薬効を犠牲にしている。そのため、ある信用ある薬剤師は私に「綜合感冒剤は五割余計に服用しなければ効かない」と教えてくれた。米国では逆に、アスピリンなど単体で売り出して単一の薬効を目がけている。役所の卑怯な行政といっていい。軽医療の問題は、もっと厳しく真面目に考えねばいけない。薬剤師会長の武田孝三郎氏は医療分業と、この軽医療のよき推進者であった。同氏の急逝で、私は頼りの城を失った感じである。惜しい。いかにも惜しい。

 また、同氏は健康保険新聞一〇月一五日号に「初診料千円の願い」なる一文を寄せ、故武田会長を偲ぶとともに、医薬分業を主として医療制度を寸評しているので全文を掲載する。

 「日本薬剤師会長の武田孝三郎さんは惜しい人だった。医薬分業の最も熱心な推進者だったが、生前、といってもだいぶ前の話だが、武田さんが日医会長との話の結論として「初診料を五〇〇円にすれば、日医会長はその日にでも医薬分業に踏みきるんだが……」と残念がっていられたのを、いま、あらためて鮮明に思い出す。

 今の相場に直せば、七〜八〇〇円、あるいは一、〇〇〇円でもいい。私なら、今日にでも初診料一、〇〇〇円で手を打つ。武田さんが健在なうちにこの線で三師会をまとめてもらいたかった。初診料一、〇〇〇円で医薬分業が出来、医薬保険制度の抜本策が出来れば易いものである。

 医薬を分業して、総体的に、診料技術料を大幅に値上げし、それだけでお医者さんが立派に飯を食っていけるような、そういうエレガントな医療費制度、私たちが待望して久しい。まじめなお医者を、注射投薬のヘドロから救い出して、むかしの仁医の面目を少しでも復活させたい。だが、ちょっとお待ち。それには条件がある。

 一つは、薬剤師の再教育と資質の向上、そのための資格試験のやり直しが必要である。私は、そっれによって、いまの薬剤師諸君の半分以上が失格するのも止むを得ないと思っているが、武田会長も、一度はその試練の必要なことは認めていた。もう一つはもっと厳しい条件がある。

 それは、一部負担の復活である。これは絶対条件である。健康保険オールタダ現行制度が、どんなに医療軽侮の風潮をつくり出しているか。患者はお医者をクスリ屋と間違え、お医者は患者の脈をみるより、支払請求書のつけ込みを考えている。

 

 初診料に足切りを適用してもいい。ともかく何かの形で、一部負担を通じて、医師と患者の間に、「医療の実感を感得させようではないか。受診のひん度の現象は二次的な効果である。財政的効果もあろうが、私は特に倫理的効果のほうに重点を置いて考えたい。武田会長が、墓石の下で合点のコックリをしているように思う。

 人体に影響与えぬ動物専用新抗生物質 藤沢薬品が発売

 近年動物抗生物質は各種のものが市販され畜産業界に貢献、最近では年率平均30%増の伸長を遂げているが、反面畜産生産物を通じて、人体内へ移行する恐れが論議され、世界的に規制が強まる傾向にある。このような状況から人体に影響しない動物専用飼料添加抗生物質の開発が望まれていたが、藤沢薬品中央研究所は昭和四二年富山県立山で採取した土壌中から主としてグラム陽性細菌に強い抗菌活性を有する硫黄を含むペプタイド系の新物質を発見、検討の結果新種の抗生物質であることを確認チオペプチンと命名し、消化管からの吸収がない特性から飼料添加剤としての開発をはかるべく努力、一方大学をはじめ全国各地の官公立試験場に評価を依頼していたところ、極めて良好な成績を得たので、明春早々発売する運びとなった。

 同剤の特長は
 @動物専用抗生物質として開発されたもので、人体用としては使用されないため人体の疾病治療の障害とならない
 A既存医業用抗生物質との間に交叉耐性がなく、他剤耐性菌にも有効に作用する
 B毒性が低いので、飼料に多量添加、長期連続投与しても副作用がない
 C消化管よりの吸収がないので肉、内臓、卵等可食部への移行残留がなく、二次的に人体に悪影響を及ぼす恐れがない
 D低濃度で成長促進ならびに飼料効率の改善作用が認められる。同社では動物用抗生物質が世界的に規制される傾向にある折柄、発売に当っては国内はもとより輸出についても有望視し、すでに国内をはじめ、米、英、西独などの主要国はもとより多数の海外諸国に特許出願済である。

 第四回日薬学術大会 ポスター出来上る

 第四回日薬学術大会準備委員会では着々準備が進められているが、この程、かねてからから製作中であったポスター出来上り、各関係方面に発送した。

 同ポスターはあざやかなブルーの地に白抜きでフラスコを描き、博多を象徴する献上の柄と日薬のマークが浮き出ている。デザインは専門家によるものであるが、絵にうるさい長野副会長が手を加え、完成したものである。