通 史 昭和45年(1970) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和45年(1970) 8月10日号

 福岡県薬剤師国保組合 第28回 組合会 給付率引下げにより黒字

 福岡県薬剤師国民健康保険組合(四島久理事長)は昭和四四年度の国保事業が集結したため、第28回組合会を七月二四日開会した支部連絡協議会に引続き、県薬会館で開会、理事長のあいさつの後波多江議長によって議事が進められた。

 理事長はあいさつのなかで「本組合を設立して一二年経過、四四年度は種々な理由から組合員五九名減であるが、昨年四月から実施した給付率の引下げ等により五〇〇万円の黒字となったが、この状態が続くことは疑問である、受診零の優良家庭も相当ある半面、長期滞納者があることは残念であるので各支部でこれらの解消に努力願いたい」と述べた。

 議事は四四年度事業実施報告、一般会計並びに特別会計の決算認定など、いずれも異議なく可決決定、任期満了による役員(理事・監事並びに組合会議長・同副議長)を選考委員制により選出、引続き別室において新理事による臨時理事会を開き、互選の結果、左記役員が決定した。
▽理事長=四島久(留)
▽副理事長=岡野辛一郎(留)
▽常務理事=工藤益夫(留)
▽理事=須原勇助(留)、勝目一郎(留)、安部寿(留)、松村精一(留)
▽監事=斉田一夫(留)、山本一郎(新)
▽議長=波多江嘉一郎(留)
▽副議長=中村里実(新)

 なお、保険料一括納入地区への報賞金、健康優良家庭への記念品も贈られた。なお、四四年度組合事業の主な内容は左記のとおり( )内は前年度
▽被保険者数一、六五五名(前年対比五九名減)
▽保険給付諸率=受診率三二三・〇%(四三一・二%)、被保険者一人当り費用額一五、七二三円(一五、八五九円)、一件当り点数四八六・九点(四五一・三点)、保険者負担割合七三・〇%(八二・九%)
▽決算状況=歳入二八九八万九千円、歳出二二二九万二千円、剰余金五三〇万四千円
▽保険給付費と保険料との関係=保険給付額一、九〇五万円、保険料一、八八六万円、保険料一〇〇に対する給付額一〇一
▽出生者一六名、死亡者一三名
▽健康優良家庭=連続一二年一名、同五年一名、同四年二名、同三年一名、同二年六名、同一年一七名計二八名

 福岡県薬薬局委 委員長に神谷氏を 分科会テーマ検討

 福岡県薬剤師会は役員改選後初の薬局委員会を七月一四日、第二回目を八月三日県薬会館で開会、委員長副委員長の選出、第四回日薬学術大会分科会並びに鹿児島大会の開局部会提出議案、研究発表等について検討した。

 委員長並びに副委員長の選出については、委員長に神谷武信、副委員長に荒巻善之助両氏の留任を決め、同委員会が検討する当面の問題@明年福岡で開催の第4回学術大会分科会については、大会当日の運営は日薬執行部が移動して来る形に、立案については地元で決定、日薬の了解を得る形にしたいとする県薬の方針に従い検討した結果「医療の中における薬局の位置づけ」と大きなテーマを採りあげ、今後に問題を提起する方向にすすめ、薬剤師の職能の洗い直し、職能の拡充をはかり、現況を打開する方策等の検討をすることとしA鹿児島大会開局部会には神谷武信氏によって協同組合は将来備蓄薬品センター的動きをする必要があることについて研究発表を行うことなど決めた。なお、本委員会委員の福岡地区からの三名追加依嘱を決め糸岐良次、古賀隆、白木一郎の三氏を決定した。

 九州山口医薬分業実施推進同盟

 ◇厚生当局、ほか諸般の情勢は
すべて医薬分業を指向している。
 ◇吾々薬剤師は今何をなすべきか
真剣に考え、かつ行動を始めよう。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 8月20日号

 福岡県商組 理事・支部長会で TFC対策検討

 福岡県医薬品小売商業組合(白木太四郎理事長)は、理事、支部長会を八月八日一時から県薬会館で正副理事長のほか一二名の役員並びに四島県薬会長、古賀治県議会議員も出席して開催した。
当日は各ブロックの状況報告のあと白木理事長並に四島県薬会長から適配問題、再販問題について詳細な中央情勢報告があり、TFC問題については白木理事長から全国的及び県内情況が次のように報告された。

 「昨年TFC問題が起き、商組としてはこれに加盟した場合の危険性をPRしたが九州では現在長崎、福岡、大分、佐賀の各県で問題が惹起している、TFCのほか経済的援助を与えるTFCも潜航していると聞いている、TFC加盟店は売出しにはチラシを配布、店頭では派遣店員がマイクで呼び込みを行ない価格は大体四割〜五割のダンピングでミルク、再販品の値引きもしており、各店とも大体価格は同じであることから共同仕入れをしていると推定され、大正製薬の直売店的営業方針である。商組としては再販護持の立場からもこれら一連の動きを重視、大正製薬へ全商連から自粛を申入れたが、その結果同社としてはTFCが同社の死活問題であるとの感を受けたことからもこの問題は容易ならぬものと考えられる」と述べ、それよりこれが対策について出席者の意見を求めたが、当日は結論に至らず来る二六日の九州山口各県会長、理事長会結果待ちとなった。

 九大薬学部長に百瀬教授就任

 九州大学薬学部長塚元久雄教授は任期満了により退任、今後薬学の教育と研究に専念されることとなり、百瀬勉教授がその後任薬学部長に就任した。

 こぼればなし なんとかなりました

 福岡市学校薬剤師会(馬場正守会長)は七月初旬から騒音公害校の調査に取組み市内の騒音が激しいと思われる二八校について詳細な調査を実施した。

 ところがその結果を外部に発表することについて市教育委員会学校保健課のM係長さんから、調査結果の発表については教育委員会の許可を得なければまかりならぬとお達しがあり、研究発表も出来なくなった。しかも今迄薬剤師会で保管していた学薬の器具機材も教育委員会に引きあげてしまい今後の使用については、その都度学校長を通じて教育委員会から借り受けねばならなくなった。市学薬としては著しく意欲をそがれる結果となり、会としての統一事業にも支障をきたすところから友納日学薬会長、馬場市学薬会長が、これの改善策に鋭意努力中であったが、市議久保田、加藤、御田諸氏の仲介で円満解決を見た。

 「交換してくれ」に注意

 この程甘木市内の二、三の薬局にアリナミンAを持って来て「おたくで買ったがハイミナールと交換してほしい」と申出たお客があったが、薬局では在品なく断ったところ代金を返してくれとのことで返金した。

 ところがロット番号を調べたら近くの薬局で盗難にあったものと分った。犯人は三人組らしく、そのうち一人は指を染めた背の高いゲーボーイ風の男(?)他地区にあらわれることも考えられるので注意を!!

 学校薬剤師の訴え 市長さん!ゴミ処理をもっと真剣に

 七月二七日大分合同新聞、外三地方新聞に「学校薬剤師の訴え」としてゴミの処理について初号活字の見出しで別府市亀川古市一七組の学校薬剤師脇義隆さんの荒金別府市長に対する陳情の記事が載せられた。

 学校薬剤師として熱心にその環境衛生に努力している脇さんは昨年九月から再三市衛生課に対し焼却炉でも焼ききれないゴミ、燃えぬ残飯、ポリなどについてその回収処理を頼んでいたが市の回収は実現しないばかりか放置されるゴミに衛生面で子供にシワ寄せされる衛生行政に根本的な解決策を考えてほしいと市長に直接訴えたもの。その結果、荒金市長は学校専用車二、三台を購入する意向を明らかにしている。

 佐伯市学薬ハッスル

 光化学スモッグ、有害食品などこのところ公害問題がきびしく追求されているが大分県佐伯市薬剤師会では学校保健薬剤師の田中仁一、小川正純両氏が調査を担当して三日間にわたり、市郡内の小中学校が飲料水や水泳などに使っている上水道、簡易水道、井戸、川などの水質検査をした。

 検査は全校を対象に、重金属が含まれていないか、有機物などで汚染されていないかなど四九点について調べた。結果については教育事務所を通じ、不適確の場合は使用禁止などの要請をするといっている。

 福岡県 保健薬局会委員きまる

 福岡県薬剤師会はさきの理事会並びに支部連絡協議会で福岡県保険薬局会を八月一日より発足することを決めたが、その後会則の規定にもとづき左記委員を委嘱決定した。
▼委員名(敬称略)
▽福岡地区(10名)
藤田胖、小須賀正義、有田俊雄、中野佐、白木太一郎、三根孫一、榊チエ、網島幸枝、石津正行、建井智郎
▽北九州地区(10名)
井上康、山崎太郎、梶原敬史、阿部兼士、才田豊、藤木哲、本間功、泉健次、平田静雄、川本昇
▽筑豊地区(6名)
園田福一、近藤重三、井手上鴻、溝口昌幸、仲野勝繁、穐吉潤子
▽筑後地区(6名)
倉田憲治、石井理一郎、江上裕章、竹下一生、奥村陸平

九州薬事新報 昭和45年(1970) 8月30日号

 薬局等配置問題 懇談会委員決定

 八月一八日、厚生省は「薬局等配置問題懇談会」の委員七名の発令を行ない、同懇談会を発足させた。この懇談会は、物価安定政策会議、物価対策閣僚会議で提起された物価に関連して薬局等の配置規制の検討を行なうため学識経験者により構成される懇談会の設置要請にもとづいて厚生されたものであり、厚生大臣の私的諮問機関である。

 委員氏名は次のとおりで直接の関係者は避け、学識経験者が選ばれており、第一回会合は九月初めに開かれる予定で、以後二カ月に三回位のペースで開催される予定である。

 ▽薬局等配置問題
懇談会委員
加田純一(読売新聞論説委員)小西宏(神奈川県衛生部長)高橋思敬(サンケイ新聞編集委員)、田島義博(学習院大学教授)、星野毅子郎(薬業経済研究所理事長)、水野肇(医事評論家)、吉田甚吉(岐阜薬科大学教授)
懇談会発足にあたり、厚生省山高薬事課長は、同日記者会見を行ない、次のとおり談話を発表した。

 ▽山高薬事課長談
四月六日の物価安定政策会議並びに六月九日の物価対策閣僚協議会での「適正配置条例のあり方について検討を行なうため、学識経験者により構成される懇談会を早急に設置し」という決定により懇談会を発足した。

 なにぶんにも専門家の少い分野なので、人選に難行した。直接の関係者を避け学識経験者を選んだ。懇談会は厚生大臣の諮問機関である。今月末か九月早々に第一回懇談会を開催し、座長は互選で決めたい。以後の開催ペースは二カ月に三回ぐらいにしたい。さしあたっては、現状の把握、海外の事情の把握のほか、委員の要求する資料の提出等を心がける。よって、現段階では、いつ頃、どのような形の結論が得られるか予想もつかない。むずかしい問題であり、資料不足なので、二〜三回の開催で結論がでることはない。

 社会保険審議会に事業主代表委員並びに総評側委員意見書を提出
それぞれ分業について提言

 八月八日開催された社会保険審議会総会に、同審議会の事業主代表委員原田慶司、西山信太郎、渡辺正夫、森岡道一、高田哲男、進藤一郎、宮崎重雄、黒川克彦、占部実の九氏は「医療保険制度抜本改正の前提問題に対する意見」を提出した。

 また同日、被保険者代表の総評側委員安恒良一、和田富美夫、唐沢平治、横山信夫、木村勝郎(専門委員)の五氏も「国民皆保健下における医療保険の前提についての建議書」を提出したこれは同盟側の意見提出に続いて行なわれたものである。同審議会においてはこれらの意見をとりまとめ審議が進められる模様である。事業主代表、総評側両委員の意見に、それぞれ医薬分業が次のとおり取り上げられている。

 ○医療保険制度抜本改正の前提問題に対する意見(事業主代表委員)抜粋
3、医薬制度について
薬剤の乱用が医療費増大の一因をなしている現状にてらし、投薬ならびに医薬品の生産流通面、薬価基準の合理化改善が必要である。 (1)医薬分業体制の整備を早急に進め、実施可能な地域、分野より漸次分業を行なうとともに、診療報酬における技術の適正評価を行ない、医療機関経営における質的変化を図るべきである。
(2)薬剤の販売ルートの簡素化、節減を図り、薬価の引下げに資するとともに、添付習慣の是正を行なうべきである。さらに医薬品特許制度の合理化、研究開発の助成、品質検査の強化改善等により、その質的向上を図る必要がある。
(3)薬価基準については、収載品目の整理と薬価決定方法の合理化を図るべきである。

 ○国民皆保険下における医療保険の前提についての建議書(総評側委員)抜粋
3、医薬制度

 @医薬分業に対する政府の方針は、みずからの低医療費対策を遂行し、製薬独占の集中性をつよめるためにきわめて有効な手段として利用しようとしている。具体的には、院所内薬局の面積を規制し、設備のない院所は外来投薬を禁止するという方向をとり院所内の外来投薬を禁止するという方向をとり院所内の外来投薬のできる疾病を法的に規制するそして以上の条件をみたさない投薬は、レセプトで切っていくという事態が進行している。さらに、各地に薬局むけの備蓄センターをつくっていくという方針でのぞんでいる。

 将来の目標はともかくとして、現在の診断治療上の問題(正しい専門分化と密接なチームワークのとれる保証がない)、薬剤師、薬局の絶対的不足、患者にとって二重手間であるなどの理由からみて、機械的な医薬分業はきわめて危険であり、医療のあり方を破壊することにもなりかねない。したがって、当面政府がすすめている医薬分業政策には反対であり、将来医師(医療機関)と薬剤師(薬局)との正しい協力関係ができる条件のととのった段階では積極的に賛成したいと考える。

 A薬剤費が保険医療費の四〇%を占めることは、診療報酬体系が医師および看護婦など医療労働者の技術と労働を正しく評価していないこと、欧米のような医薬分業が成立していないことなどの理由もあると思うが、やはり決定的なことは、生産されている医薬品の相当部分を、保険医療および公費負担医療に依拠する製薬大資本の利潤追求にある。しかも、政府の方針は、これを規制しようとしないばかりか、逆にその保護政策をとっており問題である。

 したがって私たちは、診療報酬体系の適正化にあわせて、保険医療および公費負担医療において使用する薬剤の製造、販売および広告を厳正に規制する対策を立案し実施すべきであると考える。このことと真けんに取り組まないかぎり、薬価基準を若干ひき下げる程度では根本的な問題の解決にはならない。

 騒音公害被害校 の実態まとまる 福岡市学薬

 本年六月中旬、日刊紙が「県内の公立小、中学校九九六校中「騒音」「大気汚染」「通学途上における安全」「風紀」の四部門に分け、昨年文部省より学校長あてのアンケート調査で、三六五校が問題がある」と発表した。このうち騒音については一三二校(うち福岡市では三九校)が該当していた。

 そこで福岡市学校薬剤師会(馬場正守会長)では、特に学校外騒音の激しいと考えられる学校二八校を選出、これをA、B二つのグループに分け、七月一日から二十日まで二〇名の学薬会員が測定調査を実施した。

 調査方法は、簡易騒音計七台と支持騒音計一台を使用して、騒音の激しい一つの教室を選び夏季の学習の平常通りという条件で、窓を全開し原則として教室の中央に位置し、マイクの指向は教団の方向とし、測定時は、生徒在室の場合はそのまま測定し、主として校外からの騒音の計測に意を配って調査した結果次のことが実態として判明した。

 すなわち騒音レベルは低くく、静穏であるが、急に高い音がして授業中断が数多く生じる学校(飛行機、電車等が騒音源となる)と騒音レベルが常に高くて授業に差支えある学校(自動車の連続通過音)がある。そこで本調査の結論として

 @大いに影響されている学校ー被害が大きい。
イ自動車交通騒音の学校
奈良屋小、警固小、東光小、蓑子小、舞鶴小
ロ電車、飛行機騒音の学校 筥松小、月隈小、板付小、三筑中、博多二中

 A影響がある学校ー被害が中程度
花畑小、大名小、千早小、博多一中

 B少し影響されている学校ー被害が小程度
席田小、那珂小、千代中、三宅中

 C影響がない学校ー被害がない
東吉塚小、姪浜小、箱崎小、香椎小、馬出小、日佐小、南当仁小、那珂中、多々良中、吉塚中 であった。
なお、今回の調査に当った熱心な学薬の活動と詳細なデータは、関係方面から高く評価されている。