通 史 昭和45年(1970) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和45年(1970) 7月10日号

 同盟情報部速報 第44号 昭和45年6月23日
 日本医薬分業実施推進同盟情報部

 (1)かぜ薬基準案につき厚生大臣に要望

 要望書提出

 日本薬剤師会全体理事会は、六月二二日をもってかぜ薬基準案について、同会の一般用薬問題特別調査会の答申書をつけて、厚生大臣あて要望書を提出した。この要望書は、かぜ薬承認基準案の取扱いを含めていわゆる大衆薬問題は、医療制度の抜本改正時に、他の関連諸問題とともに、調査検討されるべきであると強く要望している。要望書は次のとおり

 要望書

 いわゆる大衆薬問題について、当分一般薬問題特別調査会に諮問中のところ、一応の成案を得ましたので御参考までに別添申し上げます。ただし、本問題については、自由民主党の国民医療対策大綱においても採り上げられ抜本策樹立にともなって検討されるべきことが提言されております。当会としても昭和四五年二月二三日付意見書にて申上げたごとく、薬剤師職能に甚大な影響を及ぼすかくのごとき問題は、医療制度の抜本改正時に、他の関連諸問題とともに調査検討されるべきものであることを、再度強く要望いたします。

 (2)三師会、社会保障制度審議会に当分不参加 武田日薬会長談話発表

 三師会の、武見日本医師会会長、奥野日本歯科医師会会長、武田日本薬剤師会会長は、社会保障制度審議会に代表を送るかどうかについて話し合いを行なった。同審議会は、現在医療保険制度の抜本改正を審議しているが、諸般の事情から昭和三六年以来医療担当者の代表が同審議会に出ていない状況にあった。この三師会の話し合いでは、いろいろ経緯はあったが、結局現時点では代表を送らないことが決められた。

 この問題について武枝日薬会長は六月二二日次のような談話を発表した。<  「三師会として、社会保障制度審議会に委員を送ることについては、いろいろ話し合いがあった。はいらないのではない。はいるにははいるが、これには条件があるという結論が出る様子が見え、一歩前進するかに思えた。ところが、詰めの段階で予期しなかった事態が起き、停頓してしまったのは遺憾であった。なんらか打開の途が講ぜられ、三師会が加わっての社会保障制度審議会が、一日も早く開かれることを望んでいる。」

 (3)第一回、分業推進研修会講演集配布

 第一回分業推進員研修会は、本年四月一九日〜二〇日の両日、東京平河町都市センターで、全国一三六名の推進員の参集のもとに成果をあげて実施されたが、当日の貴重な講議の内容を記録し、必要な部面で活用してもらうため、このほど「第一回分業推進員研修会講演集」(A五一九四頁)ができたので、必要の向きがあれば、有料で増刷することになっている。

 (4)衛生検査技師法改正施行につき、厚生大臣に要望

 日本薬剤師会は、六月二二日、衛生検査技師法の一部改正法施行について、全国国公私立薬科大学長会議の決議にもとづき、厚生大臣に次のような要望書を提出、要望した。

 その内容は@試験委員に必ず薬科大学から関係者を参加させることA薬科大学の行なうべき教育内容の決定は、薬科大学側と協議することB公衆衛生的検査は該法律の範囲外であることの確認の三点である。

 福岡県女子薬 総会と会長受賞祝賀会

 福岡県女子薬剤師会(田中美代会長)は、二一日一時半から北九州市小倉区の望玄荘で第一七回総会を谷北九州市長、長野北九州薬剤師会長、三渕小倉薬剤師会長、並びに亀井県知事夫人を来賓に招き、会員百余名が出席して開会、引続き田中会長の日薬功労賞受賞祝賀会を地元小倉女子薬の肝入りで盛大に開催した。

 総会は地元岡本支部長の開会あいさつに始まり、会長あいさつ、来賓の祝辞についで宮崎(若松)、勝野(小倉)両氏を正副議長に推し、四四年度事業並びに決算報告を異議なく承認、四五年度事業計画、予算案の審議が活発に行なわれた事業計画は前年度に引続き@有資格者の入会促進(特にタンス免状の活用)A医薬分業PR徹底のため地域婦人との交流B各種研修会への参加を奨励するなどの目標を決め、予算(三八万七〇一二円)については、十年前の会費(年間六〇〇円)は当然増額して研修会等への旅費の補助などを行ない執行部の運営しやすい状態にすべきとの意見が多数であったが、家庭婦人を歓誘するため会費は値上げしたくないとする執行部の意見が対立したが、各支部の意見を持より次回理事会で決定することとなった。その他分業実現のため具体的意見、質疑など活発に行なわれ例年にない活発な総会であった。

 それより引続き同所において、田中会長受賞祝賀会を開き、谷市長、知事夫人を囲み、岡本小倉支部長の長唄の披露などがあり盛会裡に終了した。

 同盟情報部速報 第45号 昭和45年7月4日
 日本医薬分業実施推進同盟情報部

 (1)薬局制度懇談会の開催状況紹介
 薬局制度懇談会は、昨年一〇月第一回会合を開き、以来一一回開かれている。この間薬局受入体制の整備に関する重要課題が議題に供され、厚生省薬務局主脳部との意志の疎通を通じて大きな成果をあげつつある。とくに昭和四五年度国家予算に医薬分業推進に要する経費の計上を見たことはこの懇談会の意義をさらに大きくしたものと言える。現にこの予算による薬局に実態調査の実施の効果を分業推進に直結させるべく努力が進められている。六月三〇日の懇談会においては、引続き受入体制の整備のための研修、医薬品試験、調査等に関する事項が議題となり、分業体制の推進に資する懇談が行なわれ、次回は七月二一日の予定である。

 (2)「第三者の目に写った医薬分業」紹介
 健康保険組合連合会発行の月刊「健康保険」誌の「読者から」欄に、分業に関する注目すべき意見が掲載されているので紹介する。

 同誌六月号同欄の東京A健保組合の井出雄三氏という読者の「医療制度の抜本改正は医薬分業が柱」のなかで「医療費九・七四%値上げにより国民総医療費二兆円は更に二千億円の増加をきたすこととなった。医療費はこのままでは天井知らずの増嵩を続けることを防げない」ことから、医療保険制度の抜本改正が目下関係両審議会で審議中であるが、「目下の急務である医療保険財政の建直しに最も速効のあるものは、医療費の四〇%をも占めるのが薬剤費であることからしても、医薬分業の完全実施をおいて外にないと考える」と述べている。

 続いて「このためには薬剤によって医療機関の経営が成立つ現行の医療費体系を全面的に改革することが前提条件となる。医師の技術を正当に評価し、薬剤は薬剤師の手に引渡すことにより、過剰な無駄な投薬は姿を消し、医療費もあるべき姿に是正されてゆくものと考えられる。医薬分業こそ抜本改正の最大の策とあえていうのは、裏を返えせば薬剤が医療費増の最大原因の一つと考えるからである」と論じている。

 次いで投薬内容と処方料、調剤料について、高価薬と診療日数、投薬内容の疑問等の現在の投薬についての問題を挙げ、最後に「薬剤については余りにも問題が多く、薬価基準はその最たるものである。医薬分業によってすっきりした形で、医療は医療技術そのものの面でのみ正当な評価がなされ、正当な代価を要求すべきであろう。医薬分業こそ制度の抜本改正の要めであることを主張したい」と結んでいる。

 (3)イギリス、医薬品の再販制度の存続認める
 イギリスでは、このほど全医薬品について再販売価格維持制度の存続を認めることを明らかにした。これは、書籍についで二番目に出された決定で、このことについて同国の週刊紙「ザ・エコノミスト」は大略次のように報じている。

 昨年中に五〇〇軒の薬局が廃業したが、この決定で残りの薬局はいくらか救われるであろう。薬局は国民保健奉仕法の規定によって発行される年間三億枚、金額一億三千万ポンド(約一千三〇〇億円)の処方せん調剤を大きな仕事としているが、これには、二、五〇〇余品目一万種の含量、包装別品目を中意しなければならない。小薬局の卸売業への依存度は高い。この医療用医薬品は消費者には法定の一定額が賦課され、製薬業者では、政府との契約による固定薬価が制定されているので、この両者には値価維持制度は無関係である。ただ卸、売業者間で、価格競争が行なわれた場合、僅か一〇%の回転率のよい医薬品には値引き、そうでない大多数の必要医薬品はストックされない事態が起き、配給サービスの低下が起きることとなり、被害は消費者に及ぶこととなる。

 またOTC薬(いわゆる大衆薬)においてもこれを自由価格とすれば、薬局の経営は、スーパーマーケットに年間三千五百万ポンド(約三五〇億円)の商売を奪われることによって大きく悪化し、処方せん調剤だけでは立ちゆかなくなって廃業に追込まれる薬局が多くなる。このような理由で再販制度の存続が認められた。

 (4)全国主要都市公害調査結果発表
 日本薬剤師会は、昭和四四年度「薬と健康の週間」行事として実施した全国主要都市公害調査の結果をとりまとめこのほど発表した。

 この調査は、日薬会員によって、全国延一、八一五ヵ所において、全国一斉に時刻を定めて実施したものであり、この種の調査としては他に類を見ない規模のもので、昭和四三年度実施分と併せて、公害対策に大きな貢献をするものとして高く評価されている。

 調査は四五都道府県、二五四市町村、延一、八一五地点(前年四一都道府県、一八六市町、延一、五三七地点)で行なわれ、この結果から、一酸化炭素と騒音に対する強い対策が望まれるとしている。この報告は、日刊紙で大きく取り上げられ、中央ではサンケイ新聞、日本経済新聞、東京新聞の六月二七日朝刊に大きなスペースをとって掲載され、またNHKテレビは、七月四日朝の"こんにちは奥さん"の時間で取り上げ放映した。

 このような地道な日本薬剤師会の活動が積み重ねられて国民福祉の向上に寄与することは、薬剤師職能の尊重の気風を喚起し、ひいては、医薬分業等における職能の確立のための大きな原動力となることと考えられる。なお、本報告は日本薬剤師会雑誌六月号に掲載されているので参照されたい。

 (5)中医協全員懇談会開かれ、薬価基準全面改正発表
 中央社会保険医療協議会(遠城寺会長)は六月二九日全員懇談会を開き、医業実態調査等につき協議を行なった。その内容につき、同日、厚生省松浦医療課長は次のような談話を発表した。

 @薬価基準全面改正について
 薬価基準の全面改正は七月一日告示、八月一日から実施することについて経過報告が行なわれた。これによって、平均約三%の引下げが見込まれる。(薬価基準収載品目数は、内用薬三、四五〇・注射薬二、六六三・外用薬八六一・歯科用薬剤二一一、計七、一八五となった。)

 A新収載について
 八月一日付をもって、降圧剤フロセミド錠等一五種類の新医薬品を六月一日収載と同様の扱いで新収載することを決定した。

 B医業実態調査について
 支払側から、医師会側に対し、調査の具体案を提示することが要請された。

 準備進む 第38回九州山口薬学大会 鹿児島市で10月22・23両日開会
 九州山口各県代表者会で決定

 九州山口各県代表者会議は、七月四日鹿児島市水明山蒼で、各県薬剤師会長、同商組理事長並びに大会準備委員会の関係部長などが出席して@本年度九州山口薬学大会準備に関する件A当面する諸問題についてB時局対策などについて協議した。

 当日の出席者は四島、白木(福岡)松尾(長崎)山中、上野(熊本)長嶺(宮崎)杉原、益田(大分)森広(山口)(佐賀欠)の各県会長、理事長のほか地元山村会長、大会準備委員などが出席したほか坂口徳次郎氏も特に臨席した。

 山村地元県薬会長は「薬業界の昨今は混沌としているが、薬学大会はこのなかで従来にも増して薬剤師の意気を盛り上げるよう努力している。準備もある程度進んだので本日の代表者会で決定すべきことを決定、次の段階に進みたい」とあいさつ、次に四島九州山口薬剤師会長のあいさつについで、地元黒岩専務理事から大会準備の概況について、さらに各部長から部会毎に詳細な報告があり種々検討した結果、左記事項を決定した。

 @大会日程=10月21日(水)22日(木)23日(金)
 A会場=文化センター、県消防会館、旭相互銀行、県体育館、中央公民館
 B予算=約五三〇万円
 C各県提出議案=八月末までに提出する、この議案の整理は当番県に一任
 D特別講演=医事評論家石垣純二氏の予定
 E名誉会員、表彰者、感謝状などの推せん=該当者を九月十日までに当番県薬に通知する
 F研究発表の申込=原稿用紙は準備委から送付されたものを使用する、締切りは八月一五日
 G旅館の斡旋=一泊二、五〇〇円を目標に努力中(予約金一、〇〇〇円)
 H大会参加者=千名を目標に各県に割当て、特に交通至便の地域からの参加を勧誘する
 I各分科会日程
 ▽10月21日=大会運営委員会、薬剤部長協議会
 ▽10月22日午前中=薬剤部長協議会、商組代表者会、公衆衛生鑑識、薬務、製薬、学薬部会
 ▽22日午後=本会議、特別講演、懇親会
 ▽23日午前中=分業同盟代表者会。女子薬、薬剤学、卸、公衆衛生鑑識、開局部会
 ▽23日午後=薬剤学、開局部会
 その他各部会の運営、テーマ等についても検討した。
 次に本年度の薬学講習会については、日薬の基本方針決定後、例年通り九州山口統一して行なうこととし細部については福岡県薬に一任した。
 それより坂口徳次郎氏のあいさつがあり、坂口後援会について協議、既に行動の時期に入ったことを確認した。

 次に中央情勢の報告に移り、四島会長から諸般の状況、白木理事長から前日開会された全商連理事会の報告が行なわれた。主な内容は

 ▽いわゆる大衆薬=かぜ薬の基準案は七月下旬の中央薬事審議会の常任部会に提出、決定されるであろう、日薬としては内容について種々要望するとともに、このような問題は抜本改正時に検討すべきものであると強く要望している。

 ▽大衆保健薬=政治の場に持ちこまれたが、この問題は今後メーカーも小売も一団となって防衛すべきである。これらの情勢から薬剤師の職能について論議する時期が近づいたと感ずる。

 ▽医薬分業問題=薬局制度懇談会(分業問題について日薬と厚生省との懇談の場)で、厚生省の四六年度の予算編成について検討している。この予算は厚生省内で二番目に重要な予算である。一万八千の保険薬局が分業受入れをするために厚生省もようやく積極的態度を示すようになった。

 ▽適配条例=提言によりクローズアップしたが、厚生当局は医薬品の特殊性から敵背を撤廃する考えはなく、学識経験者による懇談会を作り運用の面で善処すると言明している。日薬はこの懇談会で医療機関としての薬局の位置づけをハッキリさせる方向に持ってゆく考えであり、再販問題の検討の場では、医薬品は指導販売すべきものであることを確認させるよう努力する考えである。再販は七月中旬の閣僚協議会の中心議題に採り上げられる見通しである。

 ▽公害問題=最近さかんにマスコミに採りあげられているが、吾々薬剤師が積極的にこれに取組んで一般社会に薬剤師職能の認識を深めさせるべきである。

 ▽再販問題=イギリスでは再販が洗直され、書籍だけが残っていたが、最後に医薬品の洗い直しが行なわれ、制限的取引慣行裁判所の判決は再販を認めると決定した。(薬局は地域社会に奉仕するもので競争の気まぐれの危険にさらすべきものではない)これは今後検討される日本の医薬品の再販制度に、医療用医薬品も含めて大きく影響するものと考えられる。

 ▽TEC問題=商組は昨年TECに加盟した場合の危険性を会員に周知したがすでに加盟店によってこれがあらわれつつある。今後これらの実情を各県とも調査、情報を交換して、これに対処するため商組代表者会等で検討すべきである。以上で報告を終り、質疑応答が活発に行なわれたが特に宮崎県薬は開局薬剤師が公害モニターとなり、公害問題に取組んでいることが報告された。

 九州山口医薬分業実施推進同盟

 ◇厚生当局、ほか諸般の情勢はすべて医薬分業を指向している。
 ◇吾々薬剤師は今何をなすべきか真剣に考え、かつ行動を始めよう。

 福岡県薬業協議会

 福岡県薬業協議会七月例会は、一三日の定例日に福岡県薬会館でメーカー六社卸五社、小売五名の委員が出席して開会した。地区状況報告は門司のスーパー内に小倉市から適配条例第二条七号に該当するとして申請が出されたが、同マーケット周辺は半径五〇米内に七軒の既設薬局がある過密地帯であることと、小倉市の店舗所在地の土地が収用されても三分の二は残ることで地元業者が開設を反対している件が報告されたほか、TEC加盟店のチラシ、ノーシン、わかもとの価格の乱れ、などが報告され次回定例会はお盆に当るので一一日に変更することを決めた。

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 福岡市学薬騒音公害に取組む

 福岡市学校薬剤師会(馬場正守会長)は七月初旬から夏期調査、実習、市内校の一斉調査、一部林間学校の調査など意欲的に実施しているが、さきに文部省の学校長へのアンケートの結果騒音が激しいとして指摘された学校が市内に相当数あるところから、騒音公害校調査に取組み、市内二八校の詳細な騒音調査を実施している。

 今回の調査は三つの時間帯に合計九回にわたって測定するもので今迄にない詳細な得難い資料が得られる模様である。


 業務連絡 福岡県薬剤師会

 (1)薬価基準改正について
新薬価基準が八月一日から施行され、八月一日以降調剤分は新基準によることになりますのでご注意ください。新薬価基準表は、日薬で施行日に間に合うよう作成中でありますが、官報、業界紙等に注意のこと。

 (2)未請求調剤報酬の一掃について
 昭和四五年五月分の政府管掌関係四、五四一件中月遅れ分八六一件の多数を含んでおり、実に一九%に達している。従来より、件数金額の多少に拘らず月々請求するようお願いしているのでありますが、上記の実情でありぜひ改善方をご指導願います。特に薬価基準改訂後に月遅れ分を整理しようとすれば、本人は勿論基金においても業務遅延をきたしますので、八月提出分で未整理分が残らないよう特にご指導願います。

 (3)保険薬剤師登録について
 保険薬局に勤務している薬剤師で保険薬剤師の登録をしていない者があるやに承ります。保険薬剤師でない者の行なった調剤は保険薬剤としての取扱いをうけることができません。薬局に勤務する薬剤師はすべて保険薬剤師になるよう。また、開設者は薬剤師を雇傭する際は登録の有無を必ず確認するよう指導を願います。

 (4)シンナー・有毒性接着剤の取扱いについて
 いわゆるシンナー遊びは年々増加しつつあり、警察の補導件数は昭和四三年二三九件であったものが昭和四四年は一、四五三件(前年対比四・八倍)の多きに達しています。昭和四五年も五月までに、すでに五〇五件となっています。昭和四四年中に死亡五件発生しています。

 青少年保護育成の見地から昭和四三年一一月三〇日福岡県警察本部長、昭和四四年六月二〇日福岡県衛生部長通知の趣旨により「二〇才以下の者に販売するときは使用目的、住所、氏名等の確認を行ない有毒性について説明し、交付すること」に協力のこと。

 (5)国保関係の振込銀行、印鑑届について
 国保連合会から各療養取扱機関に調査お願いが送付されていると思いますが、八月提出国保請求書に添付するか、もし請求がないときは、直接送付するよう希望していますので協力ください。

 6)チクロは七月一日から医療用を除き販売停止になっているので協力のこと(厚生省薬事課長)

 (7)医薬用部外品の石鹸によるかぶれ事例多し注意のこと(厚生省薬務局長)

 (8)エアゾール製品の容器は鉛半田は不可、錫半田、又はシムレス缶とすること(厚生省監視課長)

 支部別保険調剤調査票 昭和45年4月分 福岡県薬剤師会

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九州薬事新報 昭和45年(1970) 7月30日号

 福岡県薬理事会並に支部連絡協議会で 保険薬局会いよいよ発足
 学術大会準備、坂口後援など

 福岡県薬剤師会は七月二〇日一時半から県薬会館で理事会を、二四日支部連絡協議会を開会して▽中央情勢報告▽調剤薬局の開設許可と適配条例の運用について▽第38回九州山口薬学大会について▽第4回学術大会について▽社会保険業務について▽坂口後援会などについて協議した。

 (1)中央情勢報告
 四島会長から政府、日薬その他、中央の情勢について主として左記事項の報告があった。
 @厚生省の適配条例検討懇談会設置の状況並びに関東甲信越、都県議会議長会の「適配条例撤廃」決議について(詳細は同盟速報)
 A公務員薬剤師の給与改正要望=毎年日薬が行っているもので、日薬会長から厚生大臣、自治大臣、人事院総裁へ要望、厚生大臣から人事院総裁へ要望した。
 B薬務局四六年度予算に医薬分業推進のための費用七、五〇〇万円計上=内容は薬剤師職能拡充のための検査機関設置に対する補助金、分業推進資料作成のための実態調査費、分業推進指導薬剤師の研修費補助など。
 C再販制度=イギリスでは書籍とともに医薬品の再販が認められた。日本でも近く検討されようが、適正でないマージンは認められないであろう。
 Dかぜ薬の基準=中央薬事審議会の常任部会で決定されるが、地方委譲について異議の声もあり塩漬けの可能性もある。
 E医薬品の広告規制=医薬品の二重価格を示唆するような広告は規制される。メーカーもあらためて自粛の方向を示している。

 (2)調剤薬局の開設許可と適配条例の運用について
 六月二五日の薬事審議会(既報)で制限距離内の調剤薬局「藤田薬局銀天町支店」の開設が、調剤のみ行なう薬局として承認、許可された。今後、条例第三条のただし書の悪用を防ぐため内規を作るべく作業がすすめられている。

 また七月一一日の審議会では北九州市都市計画のため小倉区から門司区のスーパーマーケット内に開設申請の「三幸薬品」について審議の結果、土地収用後も三分の二程度の土地が残存するところから土地収用の原則論を検討すべきであるとして保留となった。また全国的な問題として条例の運用については、今後条例悪用の防止が論議され運用の在り方の是正が考えられる傾向となろう。

 (3)第38回九州山口薬学大会について(既報)
提出議案、研究発表については各委員会で検討中であることが担当理事から報告され、社保委員会は二七日に、薬局委員会は八月三日に再度開会、最終的に決定する予定である。

 (4)第4回日薬学術大会について
 工藤専務理事から準備の進捗状況について説明、大体左記事項が決定した。
 @日程=昭和四六年四月九日、一〇日、一一日
 A会場=博多駅前商工会議所新館を主会場とする
 B県、市に対する補助機に申請=県一〇〇万円、市五〇万円
 C準備委員会の編成=検討の結果左記諸氏を委嘱決定した。
 D分科会の企画=各分科会担当部長を中心に検討中

 (5)社会保険業務について
 @八月一日から薬価基準大改正が実施される、月遅れ請求の一掃をはかる。
 A社会保険研修会は大牟田支部は七月二七日、福岡支部七月二九日に実施。
 B保険薬局会の設立については藤田社保委員長から三月の県薬代議員会で会長から提案があったためその後検討の結果会則案を作成した、案が承認されれば各支部において早急に結成、分業運動の活動母体にして頂きたいと説明、これについては社保委員会との関係並びに屋上屋を重ねるべきでないなどの意見もあったが現状では分業活動が活発に行なわれないため、専門部会あるいは将来薬局組合に移行する意味も含め、ともかく現時点では分業問題に取り組み、具体的に活発に活動することとなった。

 (6)薬学講習会と調剤技術研修会について
 @薬学講習会は研修会と別個に従前の方針により開催する。
 A調剤技術研修は九月〜一〇月初旬の間に行なう、具体案作成のため小委員会を設ける。なお小委員は堀岡正義、瀬尾義彦、福井正樹、三宅清彦、工藤益夫、馬場正守の六氏に決定。

 (7)催眠剤のニセ処方せん、指示票の横行について
 二、三年前から東京等では発生していたが最近福岡でも事例が発生しているので注意すること(オカシイと思ったら発行医に照会すること)。

 (8)坂口後援会について
 この程自民党から公認され、日本医師会も推せん候補に決定した。後援会費、後援会入会申込書は各支部でとりまとめ県薬に提出願いたい。

 第4回日薬学術大会 準備委員決定

 ▽委員長=四島久
 ▽副委員長=佐藤勉、国松藤夫、浜真砂水、渡辺荒次郎、河野喜美彦、長野義夫、堀岡正義、鶴田喜代次
 ▽総務部=部長(兼)長野義夫、副部長工藤益夫、(兼)鶴原正蔵、武田大典
 ▽経理部=部長大黒清太郎、副部長鶴原正蔵、佐治八郎、木瀬克巳、富田浩三、合志正臣
 ▽設営部=部長(兼)鶴田喜代次、副部長斉田和夫、国武一人、西森基泰、藤野義彦、冨永泰資、坂井明夫
 ▽分科会部=部長(兼)堀岡正義、副部長各分科会係長
 ▽編集部=部長柴田伊津郎、副部長馬場正守、三根孫一、杉本好子、高倉博、小須賀正義、城戸嘉須子
 ▽記録部=部長福井正樹、副部長三宅清彦
 ▽案内、受付、宿泊部=部長(兼)鶴原正蔵、副部長森山富江、綱島幸枝、石井多嘉子、堀田靖子、榊チエ、(兼)城戸嘉須子

 ▼小委員会委員=四島久、武田大典、浜真砂水、渡辺荒次郎、大黒清太郎、長野義夫、堀岡正義、鶴田喜代次、工藤益夫、鶴原正蔵、友納英一、白木太四郎、斉田和夫、中村里実、安部寿、福井正樹、柴田伊津郎、馬場正守、田中美代、森山富江、 (敬称略、順不同)

 福岡県保険薬局会会則<福岡県薬>

 第一条 本会は、保険薬局の向上発展と医薬分業完全実施を図るをもって目的とする。
 第二条 本会は、福岡県薬剤師会保険薬局会と称する。
 第三条 本会は、県薬剤師会に所属する保険薬局をもって組織する。
 第四条 本会に、委員若干名と監事二名をおく。委員と監事は県薬剤師会々長が委嘱する。
 第五条 本会に会長一名、副会長一名、会計一名をおく。会長、副会長、会計は委員の互選による。
 第六条 本会に常任委員会を作ることができる。常任委員会は、会長が委員の中より指名するものとする。
 第七条 本会の委員の任期は二ヵ年とする。
 第八条 本会の支部を県薬剤師会の支部毎に設けて運営推進する。
 第九条 その他の事項については、県薬剤師会の定款および細則に準じて行なう。
 第一〇条 本会の経費は、会費および助成金を充てる。
 付則
 1第七条の委員の任期は初年度は昭和四七年三月三一日までとする。
 2本会則は、昭和四五年八月一日より実施する。
 3委嘱される委員は、当分の間、福岡地区一〇名、北九州地区一〇名、筑豊地区六名、筑後地区六名とする。

 福岡市女子薬総会 会費値上げ決定

 福岡市女子薬剤師会(榊チエ会長)は、一二日午前一一時から武田薬品福岡支店九階会議室で約五〇名の会員が出席して総会を開会武田薬品の陣内学術部長の学術講演「炎症と消炎剤」を聴取したあと、四島県薬会長から宰界の諸問題について詳細な情況報告、田中県女子薬会長のあいさつに引続き議事に入り▽会費値上げの件▽臨床検査技師取得の件▽健保請求事務について▽四六年度日薬学術大会準備の件などを協議した結果、会費は年額一、〇〇〇円(県へ六〇〇円納入、市四〇〇円)を一、五〇〇円(県へ一、〇〇〇円、市五〇〇円)に四五年度から値上げすることに決定したそれより全員で踊りのけい古を行ない、和気あいあいのうちに総会を終了した。

 坂口徳次郎氏 自民党公認候補に決定 日本医師連盟も推せん

 日本薬剤師会は高野一夫氏の落選後、参議院議員の統一候補をもたなかったが昨年の代議員会で日本薬剤師会代議員会議長坂口徳次郎氏の立候補を決定、その後武田日薬会長が後援会長となり後援会も発足各県支部も次々に結成されている。

 また七月九日には自由民主党の選挙対策委員会において、本年の参議院議員選挙の公認候補に決定された全国区の第一次指定が二五名あったわけであるが、坂口氏はそのうちに入った。新人としては九人中の一人である。また、坂口氏は七月二日日本医師連盟(委員長武見太郎氏)から、同じく来年の参議院議員選挙の推せん候補者に決定の旨通知があった。なお、一般後援会名誉会長は現参議院副議長安井謙氏、後援会長は現参議院議員迫水久常氏である。

 坂口徳次郎氏略歴
 明治四五年四月二四日、大阪株式取引所常任相談役坂口彦三郎氏次男として出生(五八才)、昭和一〇年大阪薬専(現阪大薬学部)卒、同校化学科村上教授研究室に入科、その後坂口薬化学研究所、デビュー本舗を創業、製品を海外へ輸出した。昭和一三年四月応召中支派遣、昭和一五年除隊大日本軽合金取締役調査部長、日本航空補機の取締役を兼ねた。

 大阪道修町二丁目に、坂口産業鰍開設、デビュー薬局を開局、昭和二六年に東京四谷左門町へ移転、坂口薬局を開局、政治活動専念のため昭和三九年廃業したこの間、二六年に分業推進常任執行委員長、三〇年から三九年二月まで日本薬政会幹事長歴任、現在参議院副議長安井謙(元国務大臣総理府総務長官)の秘書をつとめ、四一年二月以来日薬代議員会議長である。四三年一〇月国際医療政治経済研究所長に就任。

 文部大臣坂田道太、原田憲(前運輸相)、西村直己(自民党政調副会長)、田中栄一(自民党外交部会長)、大橋武夫(元運輸相)、迫水久常(元郵政相)、上原正吉(元科学技術庁長官)の各国会議員と親しい。 昭和一五年に紺綬褒章をまた自民党総裁賞、勲八等白色桐葉章を授与されている。柔道は講道館五段、常盤津の名取、九人家族、男二人女五人の子福者、酒もタバコもたしなまない。著書「インフレーションは防ぎ得るか」

 厚生省に迫る 高橋講師に論壇す 福岡県議会議員古賀治

 流通革命に 対応する道

 一、医学陣の必至の努力にも拘らず数百のカネミ油症患者は一向治癒しない。治療方法、治療薬が見つからないのである。このような場合六〇例の治療効果をあげ得るものが見つかったとしたら、医学陣は飛びつくであろうし、その新商品の発売許可の一日も早きを熱望するであろう。六〇例もの治療効果があったとしたら全然零の世界においては大きな光明だからである。使ってみて、それが実は三十%か四十%かの効果しか得られなかったとしてもその発売の続行は希望されるであろう。例え三十%でも苦しむ患者のため、快くなし得ることは有難いことだからである。新薬の許可が二ヶ所以上の研究機関で六〇例以上との規則であって結構じゃないか。

 一、最近は何が入っているから何にきく、この化学構造は何に効くと理論的になって来たが、医薬というものは、もともと何千年、何百年の人類の(臨床)経験の結果医薬として認められたものである。例えばアスピリンが入っているから風邪に良いと言っても、その化学構造が分っているから、近代的薬品のように感違いするが、その最初は、アスピリンを服用して風邪がなおったから風邪くすりとして使用されている。矢張(臨床)経験なのである、漢方薬においておや。

 高橋晄正氏は、きかないと厚生大臣にまで質問状を出しているが使っている大衆は、週刊誌の調査によっても八〇%の人は大衆薬は効くと言っている。私も疲れた時呑むとよく効くことを二十年間経験している。臨床経験上八〇%の人が効くと言っているんだから、再検討の余地はない。厚生省も一造反医師を一々相手にする必要はない。医者が時たま誤診することがある。死にでもするとその家族はあの医者はやぶだ、医者の資格なしという。たまさかの誤診に「医者の資格なし免許を取り消せ」と言うに似たり。

 メーカー‐問屋‐小売商という業界の問屋方式の間にあって、メーカー小売商直結方式で大正、エスエスが一流にのし上って来た。一つの流通革命が時流にのったのである。従来ジュースは酒販売店で扱われていたのに、武田はプラッシーを米屋を通じて発売した。新しいルートである、これも一つの流通革命である。

 以前は、医者は保健薬の投与はできなかった、過剰診療として削除されたのである。どうしても投与したければ処方箋を出せということで、保健薬は店頭売りと共に薬局専門であったがこの頃は、医者が不必要なまで投与している。今では薬局より医者の投与が多いのではあるまいか。恐らく売らんかなのメーカーが医者を通じて投与されるよう、し向けたと思われる。薬局にとってはマイナスの流通革命である。

 今日、我々に直接もっとも響いているのは、ダイエーなど大型の進出であり、大正フランチャイズを始めとして、日本、ジャパン、全日本などの進出である。大きいものは、一店だけでも大きいのに、その上協同化して尚仕入を安くしている、個々バラバラの零細企業がかなう筈はない。これら大型店が全国に普及すれば、小売業界はこれに対抗し得る一割は隆々と栄え次の二割は裏長屋的生活。そして後の五割はつぶれるか乞食同然の売上を余儀なくされることを覚悟せねばなるまい。これに対応する道は、仕入部門を協業化する外ない。薬業界の再編成は、ここ二、三年で急ピッチとなろう。薬業界の奮起を願うや切。(福岡県議会産炭地振興対策委員長)

 政治力の貧困 大分県薬剤師会会長 杉原剛

 分業推進員研修会で武田会長は「医薬分業は極めて重要な段階にさしかかっており、ここ一〜二年でその帰趨がきまる情勢となっております」と述べておる。また、去る七月七日の社会保障制度審議会で内田厚生大臣は概要次の様に審議促進を要請している。「医療保険制度の抜本改正については、制度のみならず、他の関連事項について、国民の医療を確保する観点から検討しなければならない。本問題は非常に複雑多岐でむつかしい問題であり、しかも緊急性をもつ問題である。また一方、実現の可能性を考慮して対処しなければならない。慎重に、かつ段階的に実施しなければならないものである。段階的に着手すべき事項について早急に答申をいただきたい。今後、医療費の赤字増大の危険性があり財政調整を含めて、さしあたり実施するものを早急に検討し、四六年度予算に間に合うように答申をお願いしたい。医薬分業は法律上では一応形が整っているが、実際には動いていないと感じている。その他多くの問題を含めて、よりよい総合的な方向で、とりかかるべきものを示唆してほしい……」

 このことは既に同盟情報部速報で報道されたところであるが、特記すべきは期限つきで審議を促進し答申を求めていることと、医療保険制度の抜本改正がなければ財政破綻を来たすことを仄めかしていることである。従って解釈のし方では、政府・厚生省自体が絶対的立場まで追いつめられているとも考えられることである。

 一方一般大衆、特に支払関係団体等においても、現代のゆがめられた医療費の内部事情が、ようやく判って来たことである。法改正による強制分業や任意分業と言うようなことより、医療保険の制度特に支払い制度の中から分業体制が促進されるのではないかと予測されることは私ひとりの思いすごしであろうか。武田会長の言をかりる迄もなくこの様な観点から、その帰趨は近く決せられると断言してはばからない。しかし乍らどの様な姿でやって来るのかは予断を許さない。あらゆる勢力が自己団体のインタレストを求めて策動をしている。そしてそれ等が総て政治力のバランスの下に決せられて行くのが現状である。

 物価安定政策会議の提言により政府の過保護が物価の高騰につながるという理由から、医薬品業界の再販売価格維持契約制度の在り方が問題としてとりあげられ、また適配条例が云々せられ目下物価対策特別委員会や閣僚協議会等で盛んに討議されていることはご承知の通りである。今更それ等の立法当時の状況を繰返すつもりはないが、その法案成立の趣旨はあくまでも消費者保護と国民の健康維持につながる医薬品の特殊性からであり、決して廉乱売から薬業者を救うことのみが主目的ではなった筈である。

 消費者保護基本法立法以来、いわゆる消費者行政といわれる一連の施策がなされており、特に最近は公害問題等の対策での基本的態度は天下り的なものから、地域住民の意志を優先する態度に変って来ている。(これが単なる国民の視線を逸らしたり、迎合でなければ幸いである。)適配及び再販の問題にしても、厚生省は「医薬品の特殊性」を堅持する態度は崩してはいないし橋本政務次官は「薬の再販を断じて守り切る」と発言しているが、その運用にあたっては懇談会(利益代表を含まぬ)を設けてやっていくとのことで「弾力的運用」なる意味深重な言葉をつかっている。これ等が迎合でなければしあわせと考えるのはひとり私のみであろうか。一般用薬規制問題にしても消費者行政に名を借りたびほう策に思われていたし方がない。

 ともあれ分業問題にしろ或は適配・再販の問題にしろ、われわれの側に反省すべき点が多々ありとはいうものの、得てして政治力の貧困の側にシワ寄せされ易いということである。去る七月十四日の全国都道府県議会議長会の薬事法一部改正の決議案(適配条例廃止)も一瞬の差でことなきを得たが、政治力の貧困さをつくづく思い知らされた出来ごとであった。

 分業推進と業界の現況 鹿児島県薬剤師会長 山村実治

 東京日比谷公会堂に於て六月三日開かれた全国薬剤師に依る薬業の危機突破大会に於て、厚生大臣代理として出席した橋本厚生政務次官は、大臣の挨拶文を代読した後、現在剤界及び薬業界が直面する諸問題に言及し、物価安定政策会議の提言に対し厳しい態度で厚生省としては、医薬品の特殊性にかんがみ提言を受入れることは出来ないことを言明した。即ち適配条例の撤廃と再販制度の廃止には応じないことを明らかにしたし、分業も絶対推進することを言明した。

 然し、私はこれ等の薬業界にとって非常に力強い言明の後に出て来ている薬業界内部及び外部の状況は、必ずしも橋本次官の言明に肉付けして、強化実現或は防衛する方向に動いていないように思うのである。先般は分業について私の所感を本紙に述べたので、本日は医薬品の流通上の諸問題点について検討を加えてみたい。

 まず、メーカーについてであるが、三千数百のメーカーを分類すると、一般(医家向薬局向)メーカーと医専メーカーとの両方があり、薬価問題について厚生省がその販売姿勢の是正を要望しているのは、一般メーカーに対して厳しく、医専メーカーに対しては緩かであるように私は考える。むしろ若し一流二流の表現を許されるならば一流メーカーは先発度が高いに拘らず、それに対して厳であって類似品製造メーカーに対しては緩であるかのごとき印象を受けるのは間違った観察であろうか。

 薬価基準策定に於ても、医家向添付の問題にしても現在でも尚一〇〇%添付一五〇%添付をしている医専メーカーがあることは事実であり、これが、私は分業実現にも大きな障害になる要因であるとも思うのである。薬価基準と実勢価格との差異と添付の問題が医専の方で横行しているのに、この問題については物価安定政策会議も主婦連あたりもそれ程触れずに、医薬品の二五%位の流れの中の半分位である薬局の再販制度が物価高騰の原因であると決めつけていることは、理論的にも実際的にもオカシイのである。全商連も日薬も一般用医薬品の再販制度を護持するために、唯今懸命の努力を傾けているけれどもこれをかく乱し、破壊へ導くような行動と仕組みとがあることは誠になげかわしいことながら事実である。

 現在問題になっている二つの特殊なチェーンの動きが薬業界を塗炭の中の陥入れることにならなければ良いがと案ずるや切である。武田と三共以外のメーカーの薬品ならば、制度品でもなんでも安い入手できる情報が全○○チェーンの発想であり、又○○○チェーンの基本的構想と条件であるとするならば由々しいことなのだ。

 例えば五万円宛仕入れる小売店が一〇〇軒あるのと五〇〇万円仕入れる小売一軒との条件が極度に差異があり、その差異を利用して制度品の乱売が行なわれるならば、制度品の約二五〜三〇%で漸く生活している零細薬局薬店は、最終的には営業できなくなって消滅するであろう。

 このような結果を招来するような二つの大きな動きがあり、その二つの動きは表面上全く異った様相を呈しているが、結果的には、私は再販崩しの作用をするものと考えている。そしてこれ等が二次的には日薬が推進している分業にも根底を揺るがすどころか、実現さえできなくなる結果を招来するものであると考えるのである。

 先日のドラッグトピックス、本紙上等にも出ているTFC問題も、われわれ業界人が等しく注目しなければならない問題であろうと思う。業界内部の一メーカーの商業政策によって、業界全体が疲弊することを許していいものかどうか。視野を広げ、ものの本質をよく見きわめることが今ほど吾々の業界に必要な時はないのではないかと感ずる。

 医薬分業をめぐる諸問題について 福岡県薬剤師会 中央研修員懇談会

 福岡県薬剤師会は、日薬の医薬分業推進員研修会で研修を受けた五名の推進員によって六月二三日県内五四名の各支部推進指導員となる会員に対し、伝達研修を実施したが、今後県内各支部における具体的推進方策、あるいは日薬が今後実施する研修会に対する意見等をまとめるため、七月七日三鷹小ホールにおいて今後各支部で行なわれる地区研修会に備なえ、医薬分業推進懇談会を開いた。

 当日は四島会長、工藤専務理事並びに中央研修員の中村里実、藤田胖、倉田憲治、平田勉、(藤木哲氏は欠席)の四氏が出席、懇談したが、今後各地区において分業推進方策が具体的に進められるに当り、会員の参考になればと、同懇談会の発言内容を紹介する。

 四島 本日検討願うことは本来ならば、社会保険委員会で検討する問題である。何といっても社保委の中核となって頂く皆さんがたに今後医薬分業を具体的にどう推進するか、今日までの経験、今回の研修を生かして検討願い、できることは早速今から始めて頂きたい理論の時期は既に終り行動の時期である、真剣にこの問題に取組んで頂きたい。

 工藤 日薬の研修会についてその意義、内容、成果、将来に対する意見など、また六月二三日実施した県薬の研修会についての意見、これからの分業推進のための具体的方策について、県薬として、地方支部として末端会員として、また中央に特に要望する事項などについて検討願いたい。

 ◆日薬研修会 次回は問題を堀下げて

 工藤 日薬の研修会については、各地区からいろいろ意見もでているが、初めて中央にでて初めて日薬幹部のかたがたから方針など聞き、感ずることも多かったと思う、この研修については秋にもまた必要があれば来年も実施されるようであるが、出席しての所感をまずフレッシュなところで平田先生

 平田 薬剤師の勉強のやり直しの意味ではなく、今後起り得る事態に対していかに順応させるかということが今回の研修会の定義であったと思う。

 工藤 第一回目としては、まず第一に現状分析、それから将来の対策であろうかと思う。

 倉田 講演を聞いただけでは分業が実現したがいいのか、あるいは悪いのか迷って帰った人が多かったと思う。分業はあくまで国民大衆のために必要であるということは勿論大義名分としては当然であるが、あのような秘密会では国民のためというより分業が薬剤師にとって、どのようなメリットがあるか、だから薬剤師は分業を勝ち取らねばならないというポイントをもっと強調すべきであったと思う。

 工藤 研修会の目的は対外的と対内的とあるが、折角やるなら対内的問題を堀り下げてもらいたいということですね。

 中村 講師の中に経済学を主体としたかたがおられたため私共の本来の主張と若干食い違う点はあったが、それはそれとして視野を広めるために意味がある。今回は初めてのかたが相当あったため初歩的な質問、要望もあったが、今迄の日薬の会合に見られない熱心さが溢れていた。

 四島 今回の研修会は分業推進の入門程度で、講師の顔ぶれからみても、あらゆる角度から現況を分析、これを自から理解したうえで行動に移ってもらうのが出発点である。

 医療そのものは国民のためのものであり、その医療のありかたを正常な姿にするために分業が必要であるというのが根本理念であって、われわれからみると国民のためであるとともに薬剤師の職能確立のために必要である。そのため会員一人一人が行動しなければならない時期だけれども、口では分業推進を叫びながら実質的には日和見的な会員が八〇%以上であるため、それを起す推進指導員を作るのが今回の狙いである。秋には具体的問題が検討される段階になると思うので次回研修に対する要望等についてもお考え願いたい。

 工藤 藤田先生個人としてのご意見は?

 藤田 全国の分業に熱心な会員が一堂に会して盛り上り、分業意識の高揚に効果があったと思う。今後の伝達については具体性がないと会員は納得しないと思うが、これを機会に研修員にハッパをかけPRの素材にして頂きたい。

 工藤 今回の研修会は分業理論と保険薬局の経済性が大きく採りあげられたわけですが田島、吉矢、竹内三氏の講演を要約すると現状ではあまり経済的にはプラスにならないのではないかという読みとりかたがされる、これが分業推進にプラスするかマイナスに働くかどう感じられましたか。

 藤田 受け取りかたによりいろいろであったと思うが、私はもともと分業は経済的メリット有りという先入感を持っているので自分なりに消化するからメリットありと思うが、一般的に、分業を普遍的に理想的に考えれば非常に経費がかかり、備蓄薬品も沢山必要だと受取られたと思うが、実際に自分の店にあてはめて考えるよう話をすすめればメリットの面も解ってもらえると思う。

 倉田 処方調剤を行なうことによりガバガバ儲けようと期待してはいないと思うが、薬価基準と実勢価格との格差がない時点で分業が実施されるとするなら、分業では最低の生活の保証すら得られないのではないかと感じたと思う。

 平田 処方せんを取扱った経験がある人なら解ると思うが、処方調剤の患者と一般のお客の態度は全々違ったものがある。そこに薬剤師として生がいがあるものと感じる。現在では一枚でも多く処方せんを取扱いその患者と接触することにより必然的に経済的メリットにつながると思う。日田薬剤師会は調剤する薬局を薬品販売業とハッキリ区別して一般大衆にPRしているが、立派だと思う。これらは見ならうべきで、そうすることにより経済的問題も自然落着くところに落着くと思う。プライドだけではメシは食えないが、そこから何かでてくると思う。

 工藤 経済性を高める面からいえば、どこの処方せんでもいつでもという方式は非常に困難だが個々の医師と薬剤師が協調して分業をすすめるのは非常にメリットがあるということですね。

 四島 その問題は中央でも相当論議があるが、私個人の意見としては、分業は理論的にも、薬剤師の職能を生かすためにも、われわれの生きがいとしても推進しなければならない。だが損をしてまでやれるものでない。だが現在は過度期であり出発点であるから初めは儲からなくともやらねばという意気ごみで始め、やりだしたらメリットにつながるよう努力することが大切だと思う。

 平田 県薬で地域別にモデル店的なものを作り、やれば成り立つ実例を示すといったことができないものでしようか。

 四島 今後は調剤を主として販売を従にする薬局も考えられる。今迄は販売を主に、すべてが行なわれたので商業地区に密集し、過当競争により弱者は亡びる一歩手前まできているが、これを脱却するみちは調剤に重点をおく薬局に切り替え病院の多い地区に移動することを考える時期がきたといえる。自分の能力に応じた形態で利益につながるようおのおのが考える時期であろう。量販を目標にやる人も当然あってしかるべきで、調剤と販売は別個の許可制に薬事法を改正することも考えられる。また商才にたけた者が調剤に重点をおいた場合は危険な問題が起るおそれがある。

 藤田 現在、開業医で分業をしようと考える医師は大体倫理的に高度な人と思うが、分業をじっしするについて危惧するのは、患者が分業を嫌って来なくなり、医業が成り立たないのではないかという心配である。だから現時点では近い所に正しく調剤してくれる薬局があればということで、将来は変ってくると思うが当分はこの気持だと思う。

 四島 それはおそらく三年位であろうと思う。過渡期においてはもっともだと思うが、そのうちに、どの薬局でも調剤ができるという常識が患者の方にできようだから二、三年の間は、開業医のいる地域に既存の薬局の移動あるいは新設も必要なことだといえる。

 平田 処方せんを持って来る患者には調剤した薬品の説明をよくしてやることですね。百パーセントよろこばれる。

 四島 過渡期には医院の近くの薬局が便利がられると思うが、分業が普遍化した時点では、患者は自分の家の近くとか信頼する薬局に持ってゆくことになろう。それには二、三年もかからないと思う。その後は薬剤師の姿勢とか誠実とか患者との密着の問題になろう。分業が進んだ時点では信頼性が問題にされ、処方調剤に重点をおく薬局が販売の面でも繁栄し、経済的メリットにつながるのではないだろうか。

 中村 今回の研修会は対内的と見えたけれども日薬執行部には相当対外的含みがあったと思うし、その成果もあったと思う。平田先生が言われるとおり処方調剤を交付する患者と販売する消費者には相当開きがある。このような無形のプラス面を会員に指導して頂いたら賛同される方も多いと思う。現在は過渡期だから複雑多岐で困難な問題も多いが、一つ一つ解決するため最善の努力をしつつ、ある意味では犠牲的な面が出てくることも(一般会員に強いるわけにはゆかないが)止むを得ぬことかと私は考えている。日薬の委員会等でも、これらを排除するため努力しているわけで、抜本改正については堀り下げて各角度から国民のために正しい医療の姿に(このような表現でなければ対外的には誰も納得しない)もってゆくよう努力されており、最終的には薬剤師が社会的にも経済的にも地位を築くためにやっておられるわけである会員の方々にプラスするよう苦心していることだけは理解頂きたいと思う。

 藤田先生は実践しておられるから理解されていると思うが、医師会と対立して分業を進めた場合困るのは薬剤師側であると思う。意地悪で処方せんを出されたら手も足も出ない。中央三師会が協調に留意する所以であろうかと思う。藤田先生がやっておられる協調分業ならば研修会の講師が言われたような困難性はないですね。その点をよく皆さんも考えて頂きたいと思う。

 ◆将来は調剤薬局の チェーン化も

 工藤 六月二三日先生方を講師として実施した県薬の研修会についてそのあり方成果等反省して将来の参考にしたいと思う。まず研修を受けられた側の斉田先生の処見を

 斉田 結構だったと思っている。かなり分業に対する認識と理解を深めたことと思う。

 工藤 講師の立場としてはあのようなスタイルはどうだったでしょうか。

 中村 大体よかったのではないかと思う。

 平田 次は支部で実施するわけだが飯塚の場合は病薬も参加してもらいシンポジウム形式にしたいと思っている。病勤は職能的に開局は経済性にかたよるので両者一緒にした方が薬剤師の立場を考えていいのではないかとの三宅先生の発案である。

 工藤 県薬の場合は無理と思うが、支部においては毎月何か問題を採りあげて研修会か集談会か、ともかく集まることが大切ではないかと思う。ある支部では保険請求審査の時集まってデスカッションしているところがあるが会員の多い支部など話題を求めて実施したがいいと思う。

 平田 研修会についてアンケートをとってみたが約八〇パーセントは、役員、講師には迷惑をかけるけれどもブロック別に対談式でやって欲しいとの希望であった。

 四島 私も一つ案を持っているのでいずれ検討ねがいたいと思っている、保険調剤を熱心にやる人のチェーンを作るべきで、便利良い場所の一番大きな薬局を基幹薬局(日薬構想の)にして一般会員の手に負えない調剤を受け持つとか共同調剤所にするとか考えるべきだと思うが、その前提として実際に行動している人の集いを作ることが早途だと思う。その他の会員との間にもつれができると困るので要領はむつかしいと思うが、出来れば実際に処方せんを発行している医師などに出席ねがえば有効だと思う。

 工藤 将来処方せんを出す希望の医師がふえた場合、既存の薬局が意欲を持たないならば、調剤に熱心な薬局が必要な所に次々に開設するような事態(現在量販店が多店化方式をとっているように)が起きると思う。この場合適配条例との関連があるが将来そのようなケースが出てくるのではなかろうか。

 平田 私の店はこの春待合室を設備、調剤室を整備したら約七〇パーセント売上げが伸びた。おもしろいデーターが出ると考えている。

 四島 最近ではそのような姿の方が大衆にアッピールしてきた証拠ではないか。

 平田 おそらく患者さんの口コミだと思うが、こんなに反響があるとは思わなかった。

 工藤 久留米の方がいかがですか。

 倉田 久留米では失敗の経験があります、一年程前歯科医師会と薬剤師会側と合同理事会を開き、備蓄薬品について話し合い品目を指定して全品目を揃えた薬局は薬剤師会が指定薬局とすることに決め、会員の賛成も得て備蓄薬品を小分けして準備したが末端歯科医師の処方せんはでなかった。出さない理由はメンドーだということだが、やはり投薬が儲かるからだと思う。だから分業に対する理論武装というか、何かそういったものが欲しいと思う。

 工藤 理論武装しても末端へはなかなか徹底しないと思う。だから会の幹部は幹部で、末端は末端同志、個々につながる策を講じないと実効はないと思う。

 倉田 今のところ関東医師製薬の薬品が儲かるということらしい。何かいい方法はないものかと思っている。今のところ行きなやみの状況だ。

 工藤 処方せん料のメリットぐらいではどうにもならないわけですね。

 四島 歯科医の場合は使う量も少ないし、むつかしいですね。その点忙しい開業医の場合は、処方せんを出すことによる他のメリットがある。薬価基準の決め方など問題が残ってはいるが、基準と薬価の格差がなくなったとしても処方せんを出すのを嫌うものもいると思う。というのは薬品について金融的な考えを持っているなどがある。また医家向け医薬品の直販メーカーの問題もただ安いだけでなく一〇円の物で二〇円請求できること、これらの防止は中央でも考えられている。処方せんを出す人が多くなれば処方せんを出さぬものはインチキではないかという世論を作りあげる必要もあるわけですね。何も彼も一緒に解決はできないが…

 倉田 歯科医師の場合簡単にパッタリ処方せんがとまることがある。

 四島 歯科医師の場合は処方が単純だから出させやすい反面むつかしさもあるわけで、信用の問題でなく、全く利害関係からであろう。

 藤田 その問題は福岡市でも全く同じことで、会同志は数年来緊密に交流しているが、末端で急に処方せんが出なくなる。調べたらメーカーが薬品を押し込んでいる。幹部は気の毒そうに弁解するけど裏を返せば末端同志の接触がないからであろう。

 四島 開業医の場合は若干違ってくるが、開業医対開局、開業歯科医師対開局薬剤師の対話を強力にすすめその人を中心に医・歯・薬がそれぞれグループを作り各地で懇談することが先決ではないかと思われる。

 倉田 リベートでつながっているということをよく聞くが、利害関係が一致すれば出すのでなかろうか。

 藤田 それだけは実際にやると後で大変なことになると思う。リベート分業をするくらいなら分業はやらない方がまだましだとさえ私は考えている。

 ◆請求業務は 保険薬剤師の責任で

 工藤 長年役員をしておられたのでおたづねするが福岡市は多数の会員を擁し小県より大きいわけですが研修の方法についてご意見を。

 藤田 その前に現在一番困っている問題は毎月四日の調剤請求書の審査を五、六名の先生方におねがいしているが、毎月大変です。開設者である管理薬剤師がノータッチで事務員に書かせるのか、注意しても間違いが絶えない。審査の日は連絡、照会、注意のため電話器にカジリつかねばならない。現在の審査員は労はいとわないが皆年輩の方ばかりで若い人が全々出て来ない。いつも間違う人は、自分が修得するためにも出て来て頂きたいと思っている。この審査日には具体的な例が目の前にあるので、これらを利用検討すれば自分の店の可能性とか種々な問題に役立つと考えられるのであるが……

 斉田 審査日に毎月分業推進研修を兼ねてやって頂くと効果的だと思う。やはり一枚でも請求している人は関心が深いわけだから、まずその人達から始めるべきだと思う。

 工藤 藤田先生の体験を伺うと非常に高度な問題からポピュラーな問題も含め巾広い問題があるわけだから請求についての相談室を設けたらどうだろうか。

 藤田 相談室は保険薬剤師自身が来られるのであればいいと思うが、実務をする人が来られるのであれば反対だ。

 工藤 勿論相談に来るのは保険薬剤師に限るようにする。

 藤田 保険薬剤師がマスターして頂かなければ話にならない、分業問題についても保険薬剤師以外の方とは話をしたくないですね、話がどのようにまがるかわからないし危険だ。

 四島 保険薬局会を早くつくることが望ましい。差当りは調剤請求する保険薬局の懇談会から始めてもらいたい。

 中村 全く同感です、数年前から講習会などでよく話したことだ、事務員でもいいではないかとクレームつける人もあった。保険薬剤師の義務ですからね。だがなかなか徹底しない。

 平田 雇用された管理薬剤師の場合が一番問題だ。変動がはげしいので困る。

 四島 厚生省の保険監査の時は開設者と管理薬剤師と両方出席するよう指導されている。これを徹底させるべきと思う。

 工藤 そのように、やるべきだと思う。

 ◆備蓄薬品と 金融公庫対策

 工藤 いろいろとご意見が出たが、これから分業を具体的にすすめる場合、県薬・支部・末端会員として行なうべきことはそれぞれ実行するとしてさらに中央において行なわれる今後の研修会、講習会について希望要望などがあれば承りたい。また先ほど県薬に備蓄センターを作れとの発言がありましたが具体的な案があれば

 平田 作ることよりも作る方面にむかっているという姿勢を示すことが大切ではないかと思う。

 四島 理想的、普遍的分業の場合は不特定処方せんを受入れるのであるからぼう大な備蓄薬品が必要であるが、現段階では成立つはづがない、開業医との話合いによる限定された備蓄薬品ですむよう努力する必要があろう。それでもなお希用薬品等の問題があるので当然これについては県薬としての方針も考えなければならないが、県薬としては卸に協力して頂く態勢をとって来た。中央においても現段階では地方の卸業者とタイアップして解決することが早途であろうということである。福岡市の場合卸組合に協力方を申入れ、一つの卸業者に共同の補給所を依託した形をとったが、現段階では県薬として希望がある地区の卸業者に依頼、地区の状況に応じて協調して頂くようあっせんする以外にないと思っている。別個に独立したセンターをつくることは不可能と考えている。ただ、ユニークなケースとして八幡では、協同組合が調剤用医薬品の供給業務を行なっている。

 平田 地区でやる場合に資金面の裏付けに医療金融公庫などに対する働きかけをして頂き県薬としての方向を示して頂きたい。

 工藤 どうも銀行側が医師歯科医師、薬剤師それぞれ差別待遇している。

 四島 全国的な問題で、結局薬局に貸す大ワクの予算がないところに問題があると思う。日薬の薬局制度懇談会では厚生省が分業の受入強化を推進する方針であれば少くとも一薬局二百万、一万八千の保険薬局に五ヵ年計画位で貸す大ワクを決めて欲しいと厚生省に働きかけている。ワクが決れば貸す方に努力しますからね。医師会は、この融資のワクを診療所の適正配置に利用している。この問題は抜本改正の論議の過程で薬局整備の問題として分業が国の施策であれば補助を、補助ができないならば融資をといえるわけで(分業審議会の中間報告に出ている)あるが、実現となると簡単にはゆかないと思うが、その方向に進めている、実現させるためには各地区から薬局改造には少くとも一千万は必要だという声をどしどしあげてもらいたい。現在の融資額は少なくとも多くの人が利用することにより薬局に対する融資条件の改正が早められると思う。

 藤田 備蓄の問題は私の経験からいえば普通の開業医ならば自己の力で一応やれると思うが、不特定の処方が巾広く来るようであれば真剣に考えねばならない。

 四島 福岡市薬の備蓄医薬品のその後の状況は?

 藤田 現在は保険薬局も一応固定してきたので、自分でやれるようになり、まだ閉鎖はしていないがあまり活用していないようだ。歯科処方を範囲広く受付けている保険薬局でも一二〜一三品目である、こうなると経済的メリットが大きい。

 四島 悲観的な面ばかり考えず前向きの姿勢で進めよう。

 ◆分業PRの具体方策

 工藤 国民大衆に対する分業PRの具体的方策について、中央並びに地方における方策は?

 四島 分業の一般大衆へのPRは中央的には第三者にやらせる方が効果的だが開局者の場合は接客態度の中でアッピールさせるよりほかないと思う、調剤販売の場合ともまず薬局、薬剤師が信頼されるよう努力することが必要ではないかと思う。

 藤田 末端の開業医がそれをいつも言っている。現在の「くすりや」さんの姿では処方を出す気になれないと……

 倉田 ところが患者は処方せんをもらい整備された薬局に持って行くか、吊りビラをした安売り屋に行くかが問題だ。患者と医師との感じ方が違う場合が多い。

 四島 物を買う場合はビラ等のある店の方が親しみを感じるかもわからないが、処方せんを持ってゆく医療機関として考えるのとはどうだろうか。現時点ではあるいは倉田さんの考えの方向かもわからないが、将来は医療機関らしい方をえらぶようになるものと思う。開業医に処方せんを出させるのと、患者に処方せんを持って来させるのと切り離して考えるべきですかね。

 中村 過渡期には安売り店に行くとしても、必ず落着くところに落着く。物を買う心理と患者の心理は根本的に違う。

 ◆分業と適配条例 運用の緩和の見透し

 工藤 分業と適配条例との関係、将来の見透し等について

 四島 中央においても分業の受入れ整備は、個人の受入れと地域と二つに分け、地域的整備をととのえるには地域毎に確立すべきである、そのためには適配条例の第三条のただし書を活用しようというのが中央における統一見解である。

 適配の出発点は、乱廉売など過当競争による弊害を防止するという経済的理由が八〇パーセント以上であったため薬局等となり、薬種商も一般販売業も同等に見ているが、薬局を調剤を取扱う医療機関として考えた場合は特例を作るべきだとして三条のただし書ができたもので、医療機関としての薬局の必要性をうたったものである。いずれは条例を薬局の適配に改正すべきとの意見もあるが、今、適配をいぢることは根本的にくずれる危険性があるので当分の間ただし書を活用しようということである。

 福岡では三年程前一度調剤のみ行う薬局が申請されたが当時はその地区内に保険薬局が数軒あり、受入れに支障をきたさないとの結論が出たことがあった。

 今回の藤田薬局支店の例であるが、分業進展の過渡期であるから患者の便利ということからすると、患者を歩かせるのは大体百メートル程度が常識であろうということだが、その場合まず薬局がない場合はもよりの薬種商、一般販売業が卒先して保険薬局になればいいが、そうでない場合は薬局を開設して差支えないという理論が成立つわけである。薬剤師会の立場としては、薬局は薬事法上調剤、販売両面が業務であることから薬局として申請したが、経済問題に基づく適配から考えると、地元とのトラブルも考えられるところから販売を除くという審議会の結論であった。将来開設者が問題となることと思う。

 薬業界の方針としては調剤と販売とは別々に許可すべきものであるとの意見、病院薬局の法制化という問題も含め、薬事法改正を行なうべきで、調剤と販売が同一場所の場合は一人の薬剤師でよいということでなければならないと考えられている。

 条例を撤廃せよとの物価安定政策会議の提言の問題は厚生省は撤廃しないと言明しているが、運用の面で緩和すべきだとしてそのための懇談会を作る作業を始めている。そこで予想されるのは@三条のただし書に調剤の確保と「医薬品の補給」という字句が押入されるのではないかAスーパー等に優先権を持たせよという提言の内容を調べるとスーパー等が本建築に取りかかるとその間、近接地に他のものが先願してスーパーの申請を妨害するケース等があり困るということで、これを防止するため青写真の申請も認めるべきではないか。この程度に運用の巾をもたせることになるのではないかと思う。差し当りは調剤確保のためという字句のとおり調剤だけということと、調剤確保のため知事が認める場合でも歩行距離一五〇メートルは離れるべきとか、医師等に悪用されないよう薬剤師自からが開設するといった内規が検討されている。

 条例の三条の特例について審議会で衛生部は、分業推進のためこのような事例が出ることは好ましいことだと打出しており、衛生行政が分業問題について前向きになったと考えていいと思う。病院勤務薬剤師のこの面の活用も容易になったと思うのである。全国にもこの特例による許可例が若干あるが、大病院前の会営薬局とが、第二薬局的なもの、調剤室の移動といった例が主で、開業医との対話の結果、分業推進のために許可されたケースは全国でも始めてではないかと思っている。

 斉田 福岡市薬部会長会ではこの問題について、分業推進の一助にはなろうが、地元との共同経営などが好ましく、個人の経営は困るとの意見があった。

 四島 その意見は聞いていた。今度の場合は特殊なケースで、この結果附近の他の開業医が処方せんを出すという約束のもとにやるわけだから、他の開業医の附近の薬局が努力すればこの地区は理想的な分業地域となることが予想される。これが狙いである。

 藤田 この問題では思わぬ副作用が出て、医院側から調剤のみ行なう薬局では経済的に成立たないと困るから臨床検査もやって欲しいと申出があった。臨床検査は現在医師会病院で行なっているが検体の報告が遅くて困るそうである。このことから私は今後、地方の薬剤師会、あるいは薬剤師がその地区の開業医の臨床検査を受持つことにより処方せん獲得の呼び水になるのではないかと思われる。薬剤師側の今後の研究テーマとしてお考えねがいたい。

 四島 今回は医師の要望により申請したが、逆に開設して医師に働きかけるケースも考えられる。中央で話が出たが、金を貸すのが商売の銀行でも、借りる方がおねがいしないと貸してくれない。出すのが建前の処方せんも誘いかけねば出るはづがないと……処方せんもある程度まででてくるようになれば出さないものが批判され、ナダレ現象が起ると思う。ともかく分業推進のため現在が一番大切な時期と考えている。各位の今後のご活躍をお願いして本日の懇談会を終わりたいと思う。

 同盟情報部速報 第46号 昭和45年7月13日
 日本医薬分業実施推進同盟情報部

 (1)社会保障制度審議会に厚生大臣出席 審議促進を要請

 七月七日社会保障制度審議会の総会が開催され、内田厚生大臣が出席、審議を促進し、段階的に実施しなければならない事項について、早急な答申を要請した。内田厚生大臣発言の概要は次のとおりである。

 医療保険制度の抜本改正については、制度のみならず、他の関連事項について、国民の医療を確保する観点から検討しなければならない。本問題は非常に複雑多岐でむつかしい問題であり、しかも緊急性をもつ問題である。また一方、実現の可能性を考慮して対処しなければならない。慎重にかつ段階的に実施しなければならないものである。段階的に着手すべき事項について早急に答申をいただきたい。

 今後、医療費の赤字増大の危険性があり、財政調査を含めて、さしあたり実施するものを早急に検討し、四六年度予算に間に合うように答申をお願いしたい。医薬分業は法律上では一応形が整っているが、実際には動いていないと感じている。その他多くの問題を含めて、よりよい総合的な方向で、とりかかるべきものを示唆してほしい。本審議会の会長は、現在石原委員が代行されているが適任の方が浮びつつあるので選任に努力したい。

 (2)日病薬、病院薬局 法制化の具体案を 提示推進方を要望

 日本病院薬剤師会の会長高木敬次郎氏は、七月七日日本薬剤師会を訪問、病院薬局法制化に関し、武田日薬会長に要望書を提出した本問題については、かねてより両者間で協議されているが、病院診療所の薬局の法的取扱いの改正について具体案を添え、病院薬局の法制化の推進をはかりたいとしている。

 日病薬の改正案は
 (1)病院薬局の法制化について
 (2)適配条例と調剤専門薬局との調整について
 (3)薬局の兼業(一般販売業)の取扱い方について
 (4)薬局の構造設備基準について
 以上四項から成り、それぞれ内容が具体的に記るされている。この具体案に基づいて、日病薬は日薬と細部の打合わせを行なっていきたいとしている。日薬においては、七月八日開催の薬制調査委員会(委員長久保長男氏)で早速この問題を取上げ、検討の結果、同委員会の小委員会において、今後調査検討することとなった。

 (3)かぜ薬承認基準案 審議行なわれる

 かぜ薬承認基準案の取扱いについては、速報第44号でお知らせしたっとり、日本薬剤師会全体理事会から本問題は抜本改正とともに検討すべきであるとの厚生大臣あての要望書が提出されている。日薬としては、本方針を堅持していきますが中央薬事審議会一般用薬特別部会は、六月二九日開催され、基準案の検討を行なっている。当日の審議の内容は左記のとおり、なお七月下旬、中央薬事審議会の常任委員会が開かれ、この案が審議される予定となっている。

 (1)アセトアニリド、エチル炭酸キニーネ、キニーネ塩類、ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は認めない。
 (2)胃粘膜保護剤として炭酸マグネシウムは認める。
 (3)ビタミンB群、dトコフエロール、グリチルリチンアミノ酸、アミノエチルスルホン酸は認めない。
 (4)「一日三回食後三十分以内服用」を「一日三回なるべく食後三十分以内服用」とする。
 (5)「かぜ症候群に対し、その症状を軽減する」を「かぜ症候群に対して用いる」とする。
 (6)漢方処方として、桂枝湯麻黄湯、柴胡桂枝湯は認める。
 (7)ゴオウ、シャジン、ジャコウ、セキサンナンテン、バイモの生薬六品目は認める。
 (8)オウゴン、カッコン、カロコン、コウボク、ゴミシサイコ、サイシン、シソシシャクヤク、ショウマ、ジコッピ、センコソウハクヒソヨウ、チモ、ハマボウフウ、ハンゲ、バクモントウボウフウは処方によっては認める。
 (9)メトキシフェナミン、塩酸‐二‐イソプロピルアミノ‐六‐メチルヘプタンは認めない。

 (4)全国都道府県議長会への適配関係提案取り止め

 昭和四五年六月一日、関東一都九県議会議長会が水戸市で開催され、各省所管事項にわたる提案があったが、厚生省関係としては、適配条例を廃止するため、薬事法を改正することを含めた三項の要望が採択され厚生省関係分は厚生大臣に提出、要望された。

 この文書は、おくれて厚生省に提出された。本会はこれを知り、ただちに薬制調査、薬業経済委員会で検討するとともに、七月一三日関係一〇都県薬剤師会会長に参集してもらい対策を協議した。

 従来からの例として、ブロック議長会から提出された事項は、全国都道府県議会議長会内の、おおむね各省所管事項毎にもうけられた担当委員会の審議にかけられた上、ほとんど修正なしに全国議長会に提出されることになっている。全国議長会は本年は七月二九日開催が定まっており、なお厚生省所管事項が付議される社会文教委員会は、翌七月一四日開催されることがわかった。

 よって、急きょ当該委員会を構成する府県の議長に対し、当該府県薬剤師会会長から電話、電報等をもって強力な「薬事法改正案提案阻止」の陳情運動を行なってもらうことを要請した。それとともに、委員会当日午前中は、大分県、山梨県、静岡県、京都府、大阪府、長野県各薬剤師会長または副会長各位の上京、参集を願い、本会鈴木副会長岩崎常務理事が同行し、直接委員への陳情運動を行なった。

 この結果、同日午後の委員会において、厚生省関係提案中第三項にあたる「薬事法改正について」の全文は議題から削除することが決定した。従って本議題は全国議長会へは提出されないこととなった。このような成果を得た今回の運動において、関係都道府県薬剤師会会長各位から多大の御高配を賜わったことを感謝している(7月20日速報)

 支部別保険調剤調査票 昭和45年5月分 福岡県薬剤師会

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 昭和46年度 九大大学院薬学研究科修士課程学生募集

 九州大学ではこの程、昭和四六年度九州大学大学院薬学研究科修士課程学生募集要項が左記のように決定した。

 一、出願資格
 (1)大学を卒業した者または昭和四六年三月卒業見込みの者
 (2)大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者(昭和二八年二月七日文部省告示第五号参照)
 (3)外国において学校教育における十六年の過程を修了した者
 (4)その他研究科において大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者
 二、募集人員 二六名
 三、募集専攻科目
生薬学、衛生化学・裁判化学、薬品製造工学、薬化学、薬品分析化学、薬品製造化学、薬剤学、生理化学、薬品物理化学、薬品作用学、植物薬品化学、微生物薬品化学、放射性薬品化学
 (備考 専攻科目のうち、第一、第二、第三志望を指定すること)
 四、入学願書受付期間
 昭和四五年八月十八日(火)から同年八月三一日(月)まで
 五、入学試験および健康診断
 九月九日(水)、九月十日(木)(健康診断は指定された者について行なう)
 試験場=九州大学薬学部
 六、出願書類
 (1)入学願書
 (2)出身大学(学部)長の調査書
 (3)写真二葉
 (4)卒業(見込)証明書
 (5)検定料金三千円
 (6)宛名明記郵券(一五円)貼付の封筒一枚
 (7)官公庁その他民間会社等に在職中の者は所属長の受験許可書を提出すること
 七、出願手続
 (1)志願者は出願書類の(1)(3)(5)(6)(7)を取り揃え、出身大学(学部)に提出すること。
 (2)出身大学(学部)では(2)(4)の書類を添え、出願期間内に必着するよう九州大学薬学部学生掛宛提出すること
 八、受験票は、出願者宛送付するが、受付締切日が切迫して出願した者には九月九日(水)午前八時三十分までに試験場入口で交付する
 九、合格者発表
 九月一一日(金)午前一〇時
 十、注意
 (1)出願書類の不備なものは受理しない
 (2)願書等送付の際は必ず書留郵便とし、封筒表面に「大学院薬学研究科入学願書」と朱書すること
 (3)照会および出願書類の請求は、九州大学薬学部学生掛宛とし、郵送で請求するときは宛先明記郵券貼付の封筒を同封すること
 (4)出願手続後の書類の変更検定料の払戻しはできない
 (5)入学者が定員に満たない場合は、第二次募集を行なうことがある。
 (九州大学大学院薬学研究科)