通 史 昭和45年(1970) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和45年(1970) 4月10日号

 同盟情報部速報 第35 36 37号
 日本医薬分業実施推進同盟情報部

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 (1)熊崎厚生事務次官社会保障制度審議会で分業推進強調

 厚生省の熊崎事務次官は去る三月一六日社会保障制度審議会の総会で医療制度の抜本改正について厚生省の考え方を説明した。

 この説明のなかで、医療制度全般についての問題点それに対する対策の考え方が詳しく述べられたが、とくに、医薬分業につき、推進を阻害する諸条件の究明排除によって推進をはかることをのべ、また診療報酬体系等の諸条件整備につとめることにも言及し、分業推進に熱意ある態度が示されている。

 さらに分業に関しては、審議会の石原幹一郎会長代行から「分業の進め方については日本医師会でも分業をやれといっており、すでに都市の一部でも分業の進んでいるところがある状態である。ただいまの説明では消極的なものだ」との意見に対して熊崎次官は「医薬分業は前向きの姿勢で検討している@何年どこからやるA関係団体との話し合いで進める。の二つの考え方があるが、後者の方がよいと考え、現在五ヶ年年次計画で進める方針である」と答え、年次計画推進を強調した。

 (2)日薬、メーカー側と分業につき懇談

 三月一六日東京交詢社において、日薬はメーカー側と分業問題等に関し懇談した。日薬側は武田会長、鈴木副会長、沖常務理事等が、メーカー側は保険薬価研究会正副委員長会社が出席した。日薬側からは日薬としての分業実施方針について説明の後、日薬およびメーカー側として日薬代議員会における武見日医会長の分業実施方針につき懇談した。その結果、本問題は各界に影響するところ大であるので引続き研究調査することとして散会した。

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 (1)衆議院予算委員会において医薬分業について質疑応答

 衆議院予算委員会第三分科会において三月一七日久保三郎議員(社会党、茨城選出)は医薬分業について質問し、内田厚生大臣、山高薬事課長が答弁した。その概要は次のとおり。(質問は全部久保議員)

 質問 現在の医療制度は医薬分業であるか。
 厚生大臣 たてまえは医薬分業であるが選択権が広く認められており、実際には医師が調剤している場合が多い。

 質問 制度上は医薬分業だが、実際に分業なのかどうか疑問を感じる。実際をきちんとしておらず本音とたてまえが違う。諸外国とくらべて不完全だ。
 薬事課長 昭和二四年米国使節団の勧告に応じてやったもので、形は分業体制をとっている。

 質問 形は分業でも現実はそうでない。今後の方針を聞きたい。
 厚生大臣 医療制度の抜本改正について現在検討中である。その関連として関係者の協力で進めていくことにするよう関係審議会に諮問している。その答申をまってやっていきたい。

 質問 私は専門でないので分らないが薬局へ行き薬を買うと「医師の指示」と書いてある薬まで売ってくれる状態では薬局にも問題がある。総医療費に占める薬剤費の割合は四二年で四二%、外来だけだと半数以上が薬剤費で金額も六、五七〇億円と大変な額である。医師には盲腸を手術してもたいして金が入らない。医師の技術料が低い。こういう点を是正して分離すれば正しい医療ができるはずだ。分業ができない原因はなにか。
厚生大臣 この点については突きつめていないが、やはり抜本改正に関連がある。

 質問 医療費の問題にからみ医師は薬でもうけている。技術料が安いから薬でおぎなっている。こういう観点からみると現在の医療は間違っている。分業を、分業すると安くなるという観点から云々するのは間違っている。国民としては効く薬を飲ませてもらいたい。高い安いは二の次である。
 厚生大臣 同感である。質的、人的の整備が必要である。医療関係者の相互協力が大切である。制度一本だけでは駄目で、分業の方向に向けながら、薬局の施設整備、薬剤師の調剤能力充実などさらに実態調査、研修などを行なっていく。

 質問 調剤技術を身につけた薬剤師が化粧品やドリンクを売っている。もっと国民の保健衛生に寄与できるよう適切な診療報酬に改め薬剤師の専門技術が発揮できるよう前向きの姿勢で、単純に割り切って進めてもらいたい。

 (1)井出市蔵氏同盟執行委員長に就任

 三月二三日付井出市蔵氏(日本薬剤師会副会長)は日本医薬分業実施推進同盟の執行委員長に就任した。

 (2)一般用医薬品特別部会開かる

 厚生省中央薬事審議会一般用医薬品特別部会は三月二三日開催され、「かぜ薬承認基準案」が審議されたなお次回開催は常任部会開催の都合等もあり五~六月頃となる模様である。(この間に意見があれば受付けられるはずである。)
 なお「かぜ薬に配合する生薬」については、日薬の一般用薬問題特別調査会から日薬会長あて答申書が提出された。これに基づいて厚生省に要望が提出される予定である。

 (3)分業推進員研修会開催きまる

 医薬分業推進のため薬剤師自体の職能意識を高揚し一層分業意欲盛り上りの徹底を図るべく、分業推進員研修会を開催することとなった。この件についてはすでに各支部長あてに通知されている。本研修会はいわば細胞単位研修会とも称すべきもので、各支部で推せんのあった方に受講していただき受講後分業推進員として各支部長の指導のもとに、支部管内における分業意識滲透徹底のため活動していただきます。研修会の講習課目は「医薬分業と薬剤師」等七科目を二日間にわたって医事評論家、厚生省係官等の講師によって講義が行なわれる。研修会は四月二〇日の両日東京平河町都市センターで実施され約四〇名の受講者が見込まれている。

 (4)医師、医薬分業実現を要望

 健保ニュースの三月一五日号の連載インタービュー「医療の荒廃を憂える」欄に「戦中派の医師として」と題して医師本吉鼎三氏の談話を掲載している。

 本吉氏は川崎市で小児科医院を経営しており、神奈川県支払い基金の診療側委員を兼ねている四五才の医師で、談話は医界における世代の断層は戦中派の役割りが十分に果されなかったことに起因すると反省し、医の倫理と「量」の問題において現在では、医療の質から量に問題の所在が移行していると説き、これから予防重点の医療への改革を要望しています。

 また医師に対する報酬は、医師の生活費と医療に要する経費に分けて考える必要があるとしている。とくに医薬分業については「これはなんとしてもやるべきだと思っています。これ一つ実現するだけで日本の医療のあり方は根本的にちがってくるでしょうね。医薬分業に踏み切ることによって日本の医療は大きな分水嶺を越えることになると思います」と述べ、その重要性を強調しその実現を待望されております。

 (5)「医療制度はこれで良いのか」講演会東京で開催

 医療制度を改める会(責任者楠山栄三氏)の主催により三月二七日午後〇時半から四時半まで東京新宿紀の国屋書店七階ホールにおいて「医療制度はこれで良いのか」と題し講演会が催された。分業を実践している宮方医師はじめ数氏の医師、医学者と社会党大原享議員らの講演があり、医薬分業早期実現の必要を呼びかけた。

 同盟情報部速報 第25号 昭和44年12月6日 (全文掲載)
 日本医薬分病実施推進同盟情報部

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 一、テレビニュースで医薬分業を解説

 十二月二日午前七時四五分からFNNニュースに続く時事解説で、サンケイ新聞社科学部石橋一郎記者は医薬分業について次のように解説しました。

 「医薬分業はむつかしい問題であり、明治から百年以来の課題となっているが、現在政府は、医薬分業について積極的態度を表明している。今年の春には、自民党は、国民医療対策大綱の中で、医薬分業を五年で実施したいと言っている。

 厚生大臣は、目下、関係審議会に諮問しており、厚生省は分業のために動いている。おそらく、来年夏までには政府案も決定するであろう。百年戦争とまで言われていたものに終止符が打たれようとしている。開業医が、現状であらゆる薬を使っていくことは無理となっている。多くの薬の中には、めったに使わない薬も多くある。開業医は二〇~三〇種類の薬でまかなっている例もある。

 医薬分業とは、医師が診断し、薬剤師が調剤しそれぞれ報酬を受取るシステムで、明確に職分を分けようとすることである。ヨーロッパでは、医薬分業に相当する言葉がないと言うことで、それ程、医薬分業が常識化している。ヨーロッパ各国は、もちろんのこと、ソ連圏、東欧等はさらにきびしい分業でありネパール、ベトナム、中共も分業である。ヨーロッパ諸国が殖民地としてきたところは、全て分業になっている。ただ、台湾、韓国のように日本が占領していた各国は分業になっていないフランスはすでに、一四世紀から分業であり、遅く発足したイギリスでも、一九一〇年代には分業になった。

 各国の薬局で受取る処方せんの数(年間)を見ると左記のように、日本は僅か一薬局一日〇・五枚にすぎない。このため、日本の薬局は、出来上った薬を売る姿となっている。分業について、日本は世界で一番後進性を有する。
 ▽アメリカ 薬局数五万五千、処方せん数十一億枚
 ▽ドイツ 薬局数一万、処方せん数五億枚
 ▽イギリス 薬局数六千、処方せん数二億五千万枚
 ▽日本 薬局数二万、処方せん数四百万枚

 日本は、明治七年の医制から医薬分業を原則としている。現行法も、医薬分業の原則をたてている。しかし、但書がついている。但書で、医師は患者がいらないと言えば処方せんを出さなくてもよいこととなっている。その他に、がん患者等の場合、船中の場合等医療上の必要に応じて処方せんを出さなくてよいという但書もある。この法律を解釈すると、患者がいらないといわない限り、処方せんはすべて出さなければならないものである。医薬分業の声は戦後に高まったが、今日、はじめて実現しそうな状況になってきている。」

 二、国保制度改善強化全国大会で医薬分業早期実現を決議
 国保中央会の主催により十二月二日、東京九段会館において、全国の保険者三、五〇〇、被保険者四、三〇〇万人の代表者一、八〇〇人が参集し、国保制度改善強化全国大会が開催されました。医療保険制度の抜本改正には、医療制度の抜本改革が必須であるとして、その重要な一環として医薬分業の早期実現を決議し、政府、国会並びに各政党に、このための積極的な措置を講ずるよう要望しました。決議事項の要点は次のとおりであります。

 決議(前文略)

 記

 一、医療制度の改革に関する事項
 1、医療制度の改革を断行し、地域医療の確保をはかること。
 2、公的医療機関の使命を重視し、その育成強化、医師の確保等、強力な施策を推進するとともに、特にへき地、離島に対しては、特別の対策を講ずること。
 3、医薬分業を早期に実現すること。

 二、医療保険制度の改革に関する事項
 1、医療費の適正化と支払方式の合理化等(以下略)

 三、社保審に各側委員意見提出、医療制度改革に重点
 医療保険制度抜本改革について審議している社会保険審議会(会長=有泉亨氏)では、現在、審議の進め方をとりまとめる段階の作業が行なわれていますが、去る十一月二十二日の全員懇談会で各側委員から意見を取りまとめ、今後これらの整理を行ない、運営委員による具体的審議を行なうことになりました。

 この日、意見を提出したのは、事業主側、被保険者側、公益側二の四者で、事業主側、被保険者側及び公益側(一)の三者は、いずれも、医療保険制度の前提として、医療制度の審議を第一項目として挙げ、最優先審議事項にする意向を強く表明しました。

 福岡県薬剤師会 第25回通常代議員会開会
 役員改選で会長に四島久氏四選 副会長に長野・堀岡・鶴田

 福岡県薬剤師会は第25回通常代議員会を三月二六日福岡市三鷹ホールにおいて開会、四三年度決算、四五年度事業計画並びに予算など執行部の原案通り承認、任期満了に伴う役員改選については、会長に四島久氏、副会長に長野義夫氏、堀岡正義氏の四選を、副会長に鶴田喜代次氏の新任を決めた。

 当日は代議員七八名中六七名が出席、工藤専務理事の司会により、友納常務理事の開会のあいさつで開会。須原議長により物故会員に黙祷を捧げたあと四島会長は四四年度は医薬分業の基礎を作った画期的な年であったと業界をめぐる諸問題について(別掲)詳細な報告並に今後の方針について述べ、引続き来賓の祝辞に移った。

 来賓として臨席した佐藤薬務課長は亀井県知事の祝辞を代読、業界出身の古賀治県議会議員は、私も代議員の一人であるがと前置きして、最近の業界は暗い面ばかり表われてきているが、厚生省の近年の態度は非常に遺憾に思うと述べ、今回朝日新聞に出された東大の高橋晄正氏の公開質問状に対しても、医薬品というものは苦しんでいる人々がたとえ30%でも50%でも救われるものであれば許可、使用さるべき性質のものであり、厚生省の毅然たる態度がのぞまれるとあいさつ。

 次に田口九大薬学部教授は明年四月福岡市で開催される薬学会組織委員長として大会準備の報告を行ない、当日特に武田日薬会長に代って臨席した坂口徳次郎氏は、長野副会長の紹介に続いて、九州の雄県である本会に日薬は期待している旨の挨拶のあと議事に入った

 ▼報告事項
 (1)報告第一号 昭和四四年度会務並びに事業報告
 工藤専務理事、長野副会長ほか担当理事から詳細な報告があったが、特に例年にない事業として薬剤師研修および分業PRのためのアンケート実施が報告された。次に関係団体である県病院薬剤師会、県学校薬剤師会、県女子薬剤師会、県薬剤師健康保険組合の各会務の概況報告があり、異議なく承認。
 (2)報告第二号 第27回日本薬剤師会代議員会報告
 福井日薬代議員から詳細な報告のあと武田日薬会長は再任の挨拶で、自分の生命をかけて分業問題に取り組むと述べ、代議員の質問にも自から進んで回答された旨報告、種々活発な質問の後承認した。
 (3)報告第三号 昭和四四年度歳入歳出中間報告
 佐治理事が報告、異議なく承認、午後は神谷副議長により議事がすすめられた。

 ▼決議事項
 (1)議案第一号 昭和四三年鶴原常務理事説明、三宅監事から監査報告があって歳入合計一一、八一六、五四五円、歳出合計一〇、一八一、六八〇円、繰越金一、六三四、八五六円を異議なく原案通り可決決定した。
 (2)議案第二号 昭和四五年度事業計画決定の件
 日薬の事業計画に即応して推進するほか今年は特に第4回日薬学術大会開催準備の完成をはかると波多江理事が説明、活発な質問のあと可決決定した。これによって明年四月開かれる学術大会は福岡市で開催することが決定したわけである。
 (3)議案第三号 昭和四五年度会費決定の件
 (4)議案第四号 同年度歳入歳出予算決定の件
 (3)(4)一括上提、安部、鶴原両常務理事からそれぞれ説明、会費は年額前年通り▽A会費(薬局、一般販売業を開設する者および上級勤務者)七、五〇〇円▽B会費(勤務薬剤師およびこれに準ずる者)三、五〇〇円▽C会費(医薬品製造業者および特志者)二〇、〇〇〇円で、分業同盟会費を拠出する間は会費値上げを行なわない方針で歳入歳出それぞれ一三、一五八、〇〇〇円予算を異議なく原案通り可決決定した。

 ▼役員選挙
 再び須原議長により選考委員制を採択、委員は四区から一二名選出、議長を加え別室において選考の結果を議場に報告、一同に諮って選考通り左記正副会長、監事並びに日薬代議員を選出した。
 ▽会長 四島久(再)
 ▽副会長 長野義夫(再)堀岡正義(再)鶴田喜代次(新)
 ▽監事 米村牛O(新)柴田伊津郎(新)
 ▽日薬代議員 長野義夫(再)安部寿(新)工藤益夫(再)中村里実(再)福井正樹(再)
 ▽予備代議員 上田ヨシエ(新)西元寺清継(再)瀬尾義彦(再)芳野直行(再)藤野義彦(再)
 四選の四島会長は、重大な時期を会員各位のご支援により精一杯の努力をする、理事の指名については近日中に決定したいと述べ、予め承認を得た。以上で代議員会を終り、引続き総会に移った。

 総会

 総会は代議員会に引続き同所で代議員並に一般会員百余名が出席して開会、会長から代議員会における演述並びに決定事項の報告は既にお聞き及びの通りであるので省略する旨の発言があり、昭和四三年度歳入歳出決算認定の件を異議なく承認、引続き支部表彰に移り、優良支部として左記五支部に対し表彰状並びに記念品代がそれぞれ贈呈された。
 ▽一位直方支部、二位八女支部、三位福岡支部、四位八幡支部、五位糸島支部

 薬政連並びに分業同盟懇談会
 薬剤師政治連盟並びに医薬分業同盟懇談会は総会に引続き同所で開会、会長は「分業問題もここ一、二年が山場であり、来年の参議院選には今日坂口徳次郎後援会を結成して必勝を期したい」と述べ、また長野副会長は連盟幹事長として政治連盟、分業同盟が両立した経緯を説明、坂口氏を参議院に送ることについて会員の協力を求めた。

 次に三淵氏(小倉区)から「昭和五〇年新幹線の九州乗り入れ実現までに県下の都市部では分業達成することを今日の決議にして頂きたいと発言、これを採択するとともに来年の参議院選には必勝することをも確認した。

 次に藤田胖氏から、同氏が実施している医師との話し合い分業の実態、経過を報告、会員の積極的行動を要請した。以上で活気に溢れた諸会議を全部終了、引続き同所で坂口徳次郎氏を囲み、なごやかな懇親会が催された。

 会長演述 一般用薬について 薬種商とは一線を
 県薬代議員会における四島県薬会長の演述並びに質問の回答によって示された日薬及び県薬の基本的方針の要旨は左記のようなものであった。

 (1)四四年度は医薬分業確立に画期的な年であった。
 ▽自民党医療問題基本調査会の国民医療対策大綱(抜本改正案)が示された。
 ▽政府もこれを認め、社保審、制度審に諮問し、各界層においても分業推進に多大の賛意を表明してきた。
 ▽厚生省も分業推進に要する経費約一千万円の予算請求、うち約六〇万の調査費を獲得した。金額はわずかであるが、国家予算の中に組まれた意義は大きい。
 ▽その他薬務局が厚生科学研究費として五〇万、保険局が調剤報酬に関する調査費として五〇万の予算を計上している。
 ▽支払者側は勿論、一般の分業に対する世論も向上
 ▽医師会は基本的には分業賛成であるが、実際にはそうでない。日薬代議員会における武見発言の小包装及び三〇%マージンの問題は、今日迄の抽象論に代り、具体性をもったものと解釈、薬局だけで扱うという前提を素直に受けとり、これを追求していくべきだと考える。
 ▽県内における開業医との話合い分業も進展しており、特に処方せん発行医師が医師会より迫害を受けなくなったことは大きな進歩といえる。その反面処方調剤の実績があがらないのは、会員個々の積極的対話等の不足ではなかろうか。
 ▽分業阻害行為はまだ相当行なわれている、各地区とも注意をおこたらぬ事

 (2)一般用医薬品について
 ▽薬業経済に関連して特に対策を強化しなければならない問題である。
 ▽一部に誤解があるようだが、大衆薬の軽医療に資する事は、薬剤師の職能の大きな分野である意味から日薬としてもこれに精力を傾注している。
 ▽この問題の対策については薬剤師と薬種商との間に当然格差並びに考え方の相違点が出てくるから薬種商を含む小売組合とは別個な立場になる点を理解されたい。
 ▽今後、次々に出される承認基準に対する対策は重大である。

 (3)薬局経済対策
 ▽薬局組合または薬剤師業組合への進展が考えられなければならない。
 ▽店頭においての健全販売が要請されよう。
 ▽大型店連合等に対する対策の研究が必要であり、小売、卸、メーカー三者一体となって取り組まねばならない。
 ▽物価安定関係の政策審議会の首相への答申中、再販、適配条例廃止論が出た、薬務局は反対しているが楽観は許されない。

 (4)新年度の基本方針
 ▽分業推進委員の特別研修予定、第一回目は四月一九、二〇日の両日、本会から藤田胖(福岡)藤木哲(北九州)平田勉(筑豊)中村里実、倉田憲治(筑後)の五氏を推せんした。
 ▽すでに理論の時期は終り行動が要請されており、今後は各個人個人の努力が必要。
 ▽また今後、ヤングパワーの発揮ということで青年薬剤師会または中核薬剤師会によって活発な行動の展開が望まれる。
 ▽適配条例二条七号の改正(恩典悪用防止のため)問題及び適配条例の知事の特例の活用(調剤確保のため)について善処しなければならない。

 (5)四六年度日薬第4回学術大会準備の完成については、去る四〇年の福岡市開催全国大会と異なり薬学会とは別個の準備が必要であるので会員の協力を願う。今後準備委員会の発足、経費の調達、旧習脱皮等が考えられている。

 6)研修会の開催
 ▽薬学講習会、地域別薬理学研修会の積極化、分業推進委員の伝達研修会の開催、歯薬並びに医薬協同研究会の開催、三師会懇談会等の小地域毎の開催も積極的に行ないたい。
 なお、会長演述で、今後薬業経済、敵配条例運用の面で、薬剤師業の立場から薬種商とは一線を画さねばならぬことになることが予想されるとの発言は注目をひいた。

 九州山口医薬分業実施推進同盟

 ◇分業推進は大衆に密着した日常活動から。
 ◇完全分業も一枚の処方せん獲得から。
 ◇今すぐ分業推進行動を始めよう。

 福岡県薬事審議会 調剤確保のため知事の 特例適用につき審議
 開業医の要望により市薬陳情

 福岡県薬事審議会は昭和四五年度第一回審議会を四月一四日午後二時から藤沢薬品工業福岡支店会議室において開会した。

 薬局等の許可について知事から意見を求められたもの五件のうち薬局二件、一般販売業一件は問題なく承認、前回保留となっていた「博多コクミン薬局」は前回の申請書を取り下げ、博多駅前朝日ビル地下に変えて申請、距離を確認することで承認した。また前回実情調査のため保留となっていた「保坂ストアー薬品部」は昨年問題となった道路拡張工事のため条例第二条第七号の適用によりダイエー内に開設しためぐみ薬局宮原氏の姉金子美佐子名義で市内飯倉に申請したものであるが、今回は承認された。

 次に条例第二条第七号の規定による(福岡特別都市計画公園建設のため買収されることとなった)金山義雄氏申請野間サニー薬局(スーパーマーケットサニー野間店内)については、地元三部会(高宮、野間、長住)によって陳情が行われているので、許可後も地元業者と協調するよう指導することで承認した。

 そのほか当日特に福岡市薬剤師会並に藤田胖氏から陳情があった「保険調剤確保のため条例の制限距離内の薬局申請」についても審議した。

 この問題は、福岡市雑餉隈地区における四名の開業医師から福岡市薬剤師会長あて医薬分業を実施するため処方せんを発行したいので、同地区に保険薬局を設置してほしい旨の要望があり、その受入れのため藤田胖氏から条例の制限距離内(既設の一般販売業から直線距離一〇九・四メートルの医院の隣接地)に薬局を許可してほしい旨知事に陳情があったものである。

 薬局開設の許可は、条例により医薬品の一般販売業薬種商販売業と同一の条件により距離の制限を受けているが、調剤の確保のために知事が特に必要と認めたときは、この限りでないと定められている。陳情の主旨は、この条項をもって特に許可を考慮してほしいというものである。

 同地区には、三〇〇メートルの範囲内に薬局二、一般販売業三、薬種商一があるが保険薬局の指定を受けておらず、薬局の一は三〇〇メートルの距離にある。また処方せん発行希望の医院から一番近い直線距離一〇九・四メートルの一般販売業が保険薬局になった場合でも歩行距離は一七四メートルである。

 この問題について審議したが、当日は結論に至らず実情を調査することになった。なお、この件について藤田福岡市薬副会長は、厚生省が度々発言している医療機関が互に話合い協調して分業に積極的に取り組んでいる薬剤師の一人であるが次のように語っている。

 藤田氏談話
 「もしこのケースが実現しないと、私が開業医師と現在実施している話合い分業を、医師会側で各地区に拡大するよう努力している開業医師の方々が分業意欲を失う結果になるであろうことが一番危惧される。分業が普遍した時点であれば別だが現実にはまだ過渡期であるから、たとえ一番近い一般販売業が保険薬局の指定を受けても歩行距離約一八〇メートル(直線距離一〇九・四メートル)のところまで患者を歩かせるわけにはいかぬというのがこの医師の考え方であるから、医院の隣接地での開設が許可にならねばこの地区の分業実施は全く実現はむつかしい。

 反対に、もし許可になればこの医師によって処方せんが直ちに発行され、同地区の他の二名の医師も同医院にならい処方せんを発行すると表明しているから、これが同地区のよび水となって他の医師も分業に踏みきり近くの店舗は必然的に保険薬局となり、この地区全体が現実に吾々薬剤師が望んでいる分業実施地区となる、と私は期待しているわけで、私の今回の申請はその発火点であると考えている。なんとか実現するよう当局はじめ関係者の理解ある処置が望まれるわけである。」と語っている。これに対し、当局の態度は消極的のようであるが、関係者は当局の分業に対する市政の試金石としてこの成りゆきを注視している。

 なお、当日審議の結果、承認した薬局等は次のとおり
 ▽博多コクミン薬局(一般販売業)福岡市博多駅前朝日ビル地下二階、申請者=潟Rクミン代表者絹巻薫、管理者=原正稔
 ▽保坂ストアー薬品部(一般販売業)福岡市飯倉、申請者=金子美佐子、管理者=上野マチ子
 ▽北九タカラ薬品(一般販売業)北九州市小倉区板櫃日明上ノ原、申請者=浅野良子、管理者=二村正子
 ▽ラジウム薬局(福岡市元町)申請者=山本由紀子 管理者=上野啓次
 ▽キリン薬局(福岡市薬院二丁目)申請者=小野信方、管理者=井口登美子

 薬局等の許可について報告があったものは次のとおり
 ▼薬局一三件
 ▽山下薬局(筑紫郡大野町大字下大利)開設者=山下寛之、管理者=本人、1月21日
 ▽徳力薬局(北九州市小倉区徳力)開設者=栗原花子、管理者=高宮早苗、1月26日
 ▽蛭子屋薬局(福岡市塩原井立)開設者=具嶋圭次、管理者=東木和恵、2月1日
 ▽平位薬局(中間市笹尾)開設者=平位育博、管理者=本人、3月7日
 ▽幸町薬局(北九州市戸畑区新池)開設者=尾形昭夫、管理者=松隈穆子、3月13日
 ▽吉永薬局(遠賀郡水巻町吉田垣添)開設者=吉永寅男、管理者=本人、3月13日
 ▽牟田薬粧葛v留米営業所(久留米市安武町安武本向山)開設者=代表者牟田クニヱ、管理者=牟田順子、3月13日
 ▽ホリカワ薬局(福岡市塩原堀川)開設者=高嶋美代子、管理者=桑野幸子、3月13日
 ▽イナトミ薬局(筑後市長浜)開設者=稲富旭、管理者=本人、3月26日
 ▽大土居薬局(筑紫郡春日町下白水)開設者=岡本千代子、管理者=井本さつき、4月1日
 ▽タカシマ薬局(福岡市博多駅前三丁目)開設者=潟^カシマ薬品代表者高嶋康和、管理者庄野圭子、4月1日
 ▽林薬局(北九州市小倉区山本)開設者=林多佳子、管理者=関根雅子、4月10日

 ▼一般販売業七件
 ▽名店薬品ストアー(福岡市三宅)開設者=大下直樹、管理者=宇都美智子、1月30日
 ▽(有)ゆたか薬品(福岡市姪浜町)開設者=(有)ゆたか薬品代表者藤野穣、管理者=吉田久美、1月30日
 ▽剛弘堂薬店(築上郡椎田町椎田)開設者=中園一美、管理者=中尾房枝、2月3日
 ▽倉田薬品国分店(久留米市高良内町)開設者=倉田憲治、管理者=新保静子、2月7日
 ▽金丸薬品(福岡市大字原)開設者=佐々倉清子、管理者本人、2月13日
 ▽内田誠心堂舞松原店(福岡市津屋山口)開設者=森川公人、管理者=良永利子、3月26日
 ▽有垣薬品工業兜汢ェ支店(福岡市昭南町二丁目)開設者=有垣薬品工業椛纒\者前田稔、管理者=岸川絹子、4月1日

 ▼薬種商二件
 ▽ミネ薬品(北九州市小倉区紺屋町)開設者=安木久子、2月1日
 ▽宮田町薬品(福岡市宮田町二丁目)開設者=吉田貞子、2月20日

 第三回 日薬学術大会に参加して工藤益夫

 明、昭和四十六年に、第四回学術大会が福岡で開かれることになっている。それで大会準備もかねて横浜の第三回大会に参加したので見聞の一端を報告したいと思う。

 年一回のわれわれの全国大会は従来日本薬学会と日本薬剤師会とが協力して日本薬学会と称し共催の形で同時に開かれていたのであるが、昭和四十三年からそれぞれ別個の大会をもつことになったのである。 それでも、第一回の東京大会、第二回の名古屋大会は同じ所で日を接して行われたが今年は夏に札幌で開かれる薬学会年次総会と全々別に学術大会は横浜で開かれたのである。これは全く初めての異例のケースである。

 日薬が日本薬学会と協調して薬学、薬業の向上と発展をはかるうえからも今回の大会開催は特例として今回限りのものとしてもらいたい。一昨年来、薬学会の札幌開催は確定しているにもかかわらず日薬の学術大会開催地は諸種の事情により一向に決定せず、これで新発足の学術大会も終わりかとさえ憂慮されたのであるが、日薬幹部の熱心な説得と神奈川県薬の森下会長の英断で横浜開催が決定した。

 しかし短い準備期間と会場予定の大学施設が長期紛争のため荒れはてている等の悪条件が累積し、大会はいかなることになるのであろうかとひそかに心配していた。しかるに四月二日から四日の三日間にわたり神奈川県薬業会館、横浜市立大学で展開された大会は、われわれの杞憂を全く吹きとばし、例年にない寒冷と降雨にもかかわらず約四〇〇〇人の多数が参加してまれにみる大盛況であった。

 これは諸種の悪条件を前にして、神奈川県薬会員の積極的協力と団結、神奈川県における剤界人の豊かな政治力と地方公共団体の他に見られない協力の成果であったと思われる。私は明年の大会準備もあるので森下神奈川県薬会長ほかできるかぎり多くの方々に面接しお話しを承った。会場設備も分科会もその他も巾広く見学させてもらった。特に印象に残った点を二三摘記したいと思う。

 ○日本薬剤師会総会と日薬会賞、分業功労賞の受賞式とが別々に行われているが来賓列席の総会時に受賞できれば錦上さらに華をそえることができ時間的にも有利ではないかと感じた。本県関係の受賞者は次の三名。
 日薬賞   長野義夫氏
 分業功労賞 田中美代氏
 同     藤田 胖氏
 長年にわたる功績が認められたものであるが個人の栄誉は勿論ながら福岡県薬としても名誉この上ない慶事である。

 総会において分業と大衆薬についての質疑応答が活発に行われたが全く異例のことながら会員がこれらの問題に対し大きな関心と期待をもっていることを如実に示したものである。

 ○社会保険、分業関係の発言の主なものは
 1、調剤料その他薬局に支払われる技術料等について欧州各国の実状と日本の現状との比較報告があり保険薬局の経済性を高める上から分業推進とともに改善されるべきだ。
 2、分業推進は他人まかせにせず、先ず特定の理解ある医師個人との協業からはじめることが肝要である。
 3、分業に理解ある医師との協業により調剤専門薬局を開設しようとするとき、適配条例の壁、地区同業者の理解と協力が容易に得られない現状は遺憾だ。
 4、医事評論家大渡順二氏の「当面の医療制度の諸問題について」の主な論旨は、
 イ、保険医療における一部負担は必要だ。
 ロ、医療の抜本改正にあたり医薬分業は絶対に行なわねばならない。
 ハ、病院と診療所との連繋、系列化をはかり病院は外来を中止することが必要。
 ニ、薬局は、軽医療は重視せねばならないが患者をどしどし適当な専門医に紹介すること
。  ホ、医師会は診療所の適配を検討せよ。
 ヘ、医師は医業は聖職であることを再認識し国は聖業にふさわしい収入を保障せねばならない。英国式人頭割制度も検討に価するものと思う。
 ト、薬剤師は薬剤センターを作れ、そうでなければ医師が作り自分の手で分業を進めるだろう。
 チ、医師会は、分業推進の条件として薬局の姿勢の是正と薬剤師の再教育を強く要求するものと思われる。
 リ、薬は一般の物品と異なるので、きれいな静かな環境で清潔な手で交付されねばならない、スーパー方式の販売には反対、薬を売るのでなく健康を売るつもりで薬局業務に精進すること。
 ヌ、薬局は、一般に医療、健康についての大衆啓蒙が不足だ。

 ○学習院大学田島助教授は「薬業経済の動向」について、現在画期的新薬の開発がない実状から薬業経済は益々複雑、困難化しつつある。国の内政面から見ると公害と並んで物価の問題が重大事である。適配と物価、再販制度と物価の問題が論議されつつある。チェーン化も消費のパターンの変化に伴い大きく検討されねばならない事項である。

 ○日薬は将来「開局薬剤師会」を設立するため前向きの姿勢で検討を続けている。

 ○日薬は学術大会開催について薬学会と協調し向う五年間位の年次計画を作成することが大会開催準備を円滑にするため望ましい。

 ○神奈川県薬では、大会開催に先だち県民を対象に「生活の中の化学展」を開き大衆啓蒙につとめた。また大会前日には、神奈川県薬創立八十周年記念式典を盛大な行ない神奈川県人のエネルギュシュな一面を如実に示した。

 ○会場設備、見学、懇親会、日程の組み方など短い準備期間中に種々趣向をこらし運営されていたが多くの学ぶべき点の中に改善したい事項も見聞したので来る大会の準備にあたり活用したいと思っている。 それにしても大会の成否は地元会員の状況いかんにあるので、各位の深いご理解と積極的ご協力と適切なご指導を期待しお願いいたし第三回学術大会参加報告にかえる次第である。

 受入れの姿勢を整えることが先決 木元金次郎

 第二十七回日薬代議員会第一日、武田日薬会長は冒頭の演述で「昭和四十五年度は医薬分業を具体的に推進させるべき最も重要な年と考えている」と発言し、これと取組もうとする会長の並々ならぬ決意は全代議員の胸をうった。

 分業についてのかれこれの論議は余りにも多く且つ久しい。三歩前進して二歩半後退、曲りなりにも今日を迎えたことの感慨は人それぞれのものがあるであろう。分業のムードは、今や最高潮「この機会を絶対に逸してはならぬ」。そこまでは開局薬剤師として誰もがわかっていることであるが、さてそれを自分のものにするにはどうしたらよいのか、ここで迷ったり悩んだりで諦めてさえいる薬剤師も少くはないように見受けられる。

 分業という言葉にひっかかって医と薬が必死に争ったことはさして遠い昔の話ではない。その生々しさが、双方の頭の隅のどこかに影をおとしていることを否定することは出来ない。医薬の協業と言うべきところを分業としたばかりに米櫃の争いの形となり、前向きの進展を見ぬままに、不必要なまでの対立感情を誘発してしまったのである。元来医と薬は、その成立の過程からみても明らかなように、一応は分化されてもそれはあくまで無縁のものではなく、一体的に有機的につながって人間的に相協力して医療の完璧を期して相共に精進すべきものである。

 さすれば現在のように開業医制度を根幹とする日本の医療で開業医の先生と開局薬剤師が今までのようにつながりのないものとして、将来もそのまま、無縁であることは国民医療対策として許さるべきことではない。医と薬の関係は車の両輪というよりも夫婦の関係に立つべきものである。医師の処方せんに忠実に対応しながら、医師の治療方針に協力する女房役の開局薬剤師を現在のように販売業に追いやって、挙句の上さて「そんな格好では俺のところの女房役はとても」と言われて当惑しているのがいまの開局薬剤師である。

 勿論多くの開局薬剤師の勉強が十分でなく処方せんの受入れに必ずしも真剣でないものがあることも事実である。自らの職能を活かすポストに近付くことも出来ぬままに、余りにも永い年月がすぎてオイソレと意欲が出てこないのも無理からぬことではなかったろうか。然し今や事態は一変して医療制度の抜本改正を機会に遅すぎたとは言うものの間違いなく分業の春が訪れようとしている。分業に執念の意欲をもやし地の利と人の和を得た開局薬剤師の一角にはすでに天の時を得た協業が急速に展開されている。今度の横浜大会ではこのことをウント印象づけられた。

 分業はいまにりょう原の火のようにもえさかることであろうとの期待と希望をつよくもった。機は熟した。すべての開局薬剤師が処方せんの受入れについて先ず精神的に立ちあがること、そして技術的に学問的に機能的にその姿勢を整えることが焦眉の急である。

 受取った一枚の処方せんにかかわる医師の懸念と患者の不安に対し十分に応えることによって国民の信頼をかち取ることこそが分業達成への公道であると信ずる。終りに医療は今や封建性と官僚性の間に棒立ちになって激動の時を迎え結局は大きく国民の医療に衣替えしようとしている。薬剤師職能の位置づけに過誤なきを切に祈念する次第である。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 4月20日号

 福岡県 薬業協議会

 福岡県薬業協議会四月例会は一三日の定例日、福岡県薬剤師会館で一時半から開会した。当日は山手会計委員からの四四年度会計報告を了承したあと各地区状況報告が行われ、筑後地区からは久留米のダイエーは一二月開店予定であること、甘木市の歯科医師への抗生物質一括納入については、実際には一括納入でないことなどが報告され、福岡地区は東口薬品(実際は現金問屋と考えられる)の進出が報告された。

 なお当日は特別に議題もないことから座談的に適配条例の悪用の多発から、東京、大阪において、この改正にとりくみ、大阪においては四月一日から改正されたことが四島県薬会長から詳細に報告され、いづれ他府県も東京、大阪の改正にならって改正することになろうが大阪の改正をみても、天災及び土地収用などの場合の移転が無条件でなく、他地区を市町村としたことと距離を決めたことであるが、現在の社会情勢からこれ以上のことは望めないであろうと述べた。

 大阪府 適配条例改正 新規則まとまり今月から実施

 大阪府ではさきに「薬局等の配置の基準に関する条例の配置の基準に関する条例の一部を改正する条例」案を二月府会で可決、改正の要点になる規則について四月一日施行の段取りで作業を進めていたが漸く間に合わせた。

 これまで強制立退きによる移転は適配条例第二条第五号(福岡県条例では第二条第七号)により距離制限とは無関係に移転でき、条例適用除外になっていたが最近これを悪用する例も多発し、薬務行政上の円滑な施行に多大の支障をきたしていた。そこで強制立退の場合といえども法律的にある程度の規制を行なうことが必要とされ、昨年九月大阪府薬剤師会から府会議長に一部改正に関する請願書が出され、府会でとり上げ今回の施行になったものである。

 今回施行になった規制を要約すれば(大阪の条例は制限距離一三〇メートル、福岡の条例では一五〇メートル)薬局等の業者が強制立退(天災、土地収用など)で移転する場合は@新所在地が、旧所在地から一三〇メートル未満のときは、おおむね従前の距離以上はなれていること。(もし従前の距離が六五メートル以上あるときは、おおむね六五メートル以上あればよい)A一三〇メートル以上一、五〇〇メートル未満のときは六五メートル以上はなれていること。B一、五〇〇メートル以上のときは、同一市町村区内ならば六五メートル以上、異った市町村区内ならば一〇〇メートル以上はなれていること。C替地が与えられた場合は、原則としてその替地上にあることとなっている。

 支部別保険調剤調査票 昭和45年2月分 福岡県薬剤師会

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 日薬 分業推進員研修会 19・20日 東京都市センターで

 日本薬剤師会は、会員内部における分業意識の高揚滲透を目的として分業推進員研修会の第一回目を本月一九・二〇日の両日東京都の都市センターにおいて左記要領により開催することになった。福岡県薬からは中村里美、藤田胖、藤木哲、平田勉、倉田憲治の五氏が出席する。

 ▽場所 東京都平河町都市センター
 ▽日時 昭和45年4月19日午前10時開講、20日午後5時30分閉講
 ▽日程

 第1日
 開講式(10時から30分)
 医薬分業の現況(太田分業審議会長)
 社会保険と医薬分業(厚生省宮沢技官)
 社会保険と調剤業務(厚生省代田技官)
 薬業と医薬分業(岐阜薬大教授吉田甚吉氏)
 外国における医薬分業(開局竹内一氏)

 夕食(指導計画井出副会長)

 第2日
 薬務行政と医薬分業(厚生省山高薬事課長)
 医療制度と医薬分業(医事評論家水野肇氏)
 医薬分業の経済学的考察(学習院第教授田島義博氏)
 医薬分業と薬剤師(吉矢分業審議会副会長)
 伝達講習の具体的方式(協議)指導、鈴木副会長閉講式(4時45分から)
 (バッジ、終了証授与、夕食後散会)

 長崎県 大衆薬について陳情運動を展開

 三月二八日福岡市で開催した九州山口各県商組代表者会議において、一般用医薬品(大衆薬)の規制について検討した結果、「かぜ薬の基準案」は早ければ四月下旬には決定し、実施されると考えられることから各県とも地元選出国会議員並びに厚生大臣、薬務局長製薬課長、中央薬事審議会会長等へ「緊急要請」文書を発送して反対気運をもり上げることを決議したが、長崎県薬剤師会並びに県薬種商協会、県医薬品小売商組は、会長並びに理事長名で次のような趣旨の文書を送付して長崎県選出国会議員と関係当局に文書あるいは面接による反対運動を業者個々が実践展開するようよびかけている。

 本件については医薬全商連においても、そのことの報告を兼ね全国的運動を行なうようつよい要請がある筈でありますが「かぜ薬の規制」は早ければ四月下旬には強引に決定し実施されるやに承わっております。大衆薬規制について「かぜ薬の規制」が決定されることは、既成事実がデッチあげられることを意味し、そのことがこんごの大衆薬規制に不当な口実をあたえ、それを強靱に促進されるおそれを生じますので、いわば「かぜぐすり」の問題は一般薬問題の天王山となることは疑いをいれません。 このような実情ですから各位はそれぞれ文書及び面接による反対運動を確実且効果的に実践されますようお願いします。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 4月30日号

 病院薬局を薬事法の薬局に申請 法制化の突破口に 福岡県薬理事会で検討

 福岡県薬剤師会は役員改選後初めての理事会を四月二〇日午後一時半から福岡県薬剤師会館で、会長ほか役員一五名が出席して開会した。

 (1)四島会長はまず、役員改選で再び会長に選ばれたが、この期間は会にとって一番重大な時期であるので従来にも増し、前向きで協力願いたいとあいさつのあと理事の選考の経過について説明、新役員を紹介し、担当業務について協議の結果左記のとおり決定した。

 (2)事業計画に基づく事業の推進策について
 ▽恒常的推進は日薬の決定通り行うが特別事業として大会準備の完成
 ▽医薬協業体制を個々のケースで実現できるよう適配条例、第三条のただし書(知事の特例)の活用をはかる。 ▽病院の調剤所(薬局、薬剤部)を薬事法の薬局、健保法の保険薬局とするケースを作り、病院薬局の法制化の突破口としたい。(具体的に病院側と接衝し、薬事法上の薬局に申請しなければ理論だけでは進まない既成事実を作りあげることが早途である)病薬でも具体的に検討されたい。
 以上について会長から詳細な説明があり、三淵理事は
 ▽経済の自由化、大型チェーン結成の実状を考え、分業推進のため零細保険薬局が消滅しないよう特に国の責任において特別の保護施策を検討する必要がある。また本年の薬と健康週間中に北九州市で講演会を開催したいと発言、これら具体的な事項については次回検討することに決定した。

 (3)毒物、劇物の廃棄について
 衛生部長通知により薬害防止のため毒物劇物取締法施行令第40条の規定を確守して事故を未然に防止する事。

 (4)シンナー、ボンドの取扱いについて
 販売の自制が強く要求されている、県商組名で「用途不明の者には販売しない」旨のポスターを作成、全販売業者に配布、掲示を要望して協力を求めることになっていることが報告された。

 (5)福岡県における無医地区対策と移動保健所活動について
 県下の四七無医地区中、本年度六地区(上川底、畑、地の島、鹿里、古塚、尾久保、道目木)において地域綜合保健活動を行う、主催は県と医、歯、薬の共催であるが、作業の主体は所轄保健所である。会として水質検査を担当することになるので当該支部は積極的に協力すること、なお、四月三〇日に県との打合会が開かれる。

 6)その他
▽大衆薬 については専門的に種々検討され、厚生省も修正案を出したが、国会方面でも問題化している現状から日薬では十分検討、誤りのないよう努力している。
 ▽大阪府で適配条例の一部が改正され、四月一日から施行された、これで適配条例適用除外の恩典の悪用はある程度減少すると考えられ、各府県でも条例改正の動きがでてくるものと思われる。
 ▽物価安定協議会(総理大臣諮問機関)の総合部会において「行政介入と物価について」の報告をまとめたが、その中に医薬品の価格を抑制するため適配条例の撤廃と再販、制度品の指定要件を再検討すべきだと主張している。厚生省としては撤廃する考えはないが、運用について懇談会を作り検討するとの意向である。今後国会において論議されるおそれが十分あるので注視すべきである。日薬は二一日薬局、薬制合同委員会を開いて検討する。

 そのほか県薬事審議会、日薬分業推進員研修会、坂口後援会等について報告があった。なお、新役員および担当業務は左記のとおり
 ▼副会長▽長野正義(再)学術、勤務▽鶴田喜代次(新)薬業経済
 ▼専務理事
 ▽工藤益夫(再)庶務
 ▼常務理事
 ▽鶴原正蔵(再)会計▽安部寿(再)経済▽福井正樹(再)勤務▽中村里実(再)社会保険▽友納英一(再)学薬▽斉田和夫(新)組織
 ▼理事
 ▽佐々木照政(再)学術▽森山富江(再)女子薬▽瀬尾義彦(再)学術▽佐治八郎(再)会計▽三淵学(新)学術▽馬場正守(新)公衆衛生▽杉山官(新)組織▽三宅清彦(新)組織
 ▼理事参与
 ▽大塚正美(再)薬事、組織▽田中美代(再)女子薬▽白木太四郎(新)薬業経済

 第4回 日薬学術大会 会期四月九・十・十一日と決定

 福岡県薬剤師会は第四回日薬学術大会準備について四月二〇日開会の第一七二回理事会で検討した結果、会期および会場、準備委員会の編成などについて次のように決定した。

 ▼会期=昭和四六年四月九日(金)一〇日(土)一一日(日)の三日間
 ▼会場=博多駅前周辺を中心に準備する
 ▼準備委員会の編成
 ▽準備委員長=四島久
 ▽総務部=部長長野義夫、副部長工藤益夫
 ▽経理部=部長鶴原正蔵、副部長佐治八郎
 ▽設営部=部長福岡市薬剤師会長
 ▽編集部=部長柴田伊津郎、副部長馬場正守
 ▽分科会部=部長堀岡正義、副部長各分科会長
 ▽記録部=部長福井正樹
 ▽案内、受付部=部長友納英一、副部長森山富江
 未定の副部長その他の委員は部長が決定する
 ▼次回準備委員会開催日五月七日

 九州山口医薬分業実施推進同盟

 ◇世は安全性時代にいる薬害防止に分業推進を訴えよう。
 ◇分業推進は国民大衆のためのものであることを銘記し行動すべきである。

 阿部王樹翁の句碑除幕式並祝賀会

 阿部王樹翁(八十三才)の句碑が自宅近くの直方市植木花の木堰に建立された。花崗岩で高さ一メートル五十八センチ。

 表に「乳瘤垂るるいちょう大樹や初明り」の句

 王樹翁は市の文化発展に貢献され、昨年十一月地元から句碑の話しが起り、工事が進められていたもので、四月十二日午前十一時から現地に於て除幕式が行なわれ、次で午後一時より植木町小学校講堂に於て祝賀会が催された。先ず直方市助役が委員長としての経過報告の後直方市長、北九州市長同人社代表、門弟代表の祝辞、福岡県知事はじめ多方面よりの祝電、祝句披露、伊馬春部氏挨拶王樹翁の謝辞、次で祝宴に移ったが参会者五百余名なかなかの盛会であった。(杉峰報)

 祝 合屋杉峰
 句碑除幕銀杏大樹の芽吹きそめ
 ものみなの芽吹きそめけり句碑除幕

 同盟情報部速報 第38号 昭和45年4月18日
 日本医薬分業実施推進同盟情報部

 一、社会保障制度審議会総会で医薬分業中心に審議

 去る三月一六日、社会保障制度審議会総会において厚生省の熊崎事務次官が、医療制度の抜本改正について厚生省考え方を説明したことは、速報第35号でお知らせしました。この説明に関連して各局の意見を聞くこととなり、四月一〇日同審議会の総会が開かれ、医薬分業を中心に薬事制度に関し、次のような質疑応答が行われました。

 当日厚生省からの出席者は次のとおりであります。
 薬務局参事官(薬務局長国会出席のため代理)、薬務局企業課長、同薬事課長、保険局長、保険局企画課長、同医療課長、医務局長

 ○医療保険制度の改革に関する諮問について(出原企画課長から、諸外国とわが国との年間外来受診日数の比較資料について説明)

 ○近藤文二委員(関西学院大学教授)物価安定政策会議が薬局等の適正配置条例について提言したが、現在適配条例の狙いはどこにあるか、また当局はこれに対してどのように考えているか。
 ○山高薬事課長 適正配置については、薬事法第六条で、住民に対する適正な調剤の確保と、適正な医薬品の供給を目的とすることが規定されている。狙いとして、昭和三五〜三六年頃にあった乱売を防止することがあった。その当時、小売り業の乱立による過当競争があり、さらに不良医薬品の流通、毒劇物等の適正な取扱いを無視するような結果を招くおそれがでてきた。薬局等が市街地において乱立する反面、無薬局町村地域の住民に対する医薬品の供給、調剤が阻害される傾向が大きく、さらに加えて、押し込み販売等による大衆薬の氾濫が、国民一般に安易に薬を乱用させる風潮を生ずるおそれもでてきたので、適正配置規制のための薬事法の一部改正が議員立法で提出された。

 ○近藤委員 その時は、医薬分業との関連はあったのか。
 ○薬事課長 当時は関連がなかった。

 ○近藤委員 物価安定政策会議の提言についての考え方はどうか。
 ○薬事課長 この提言は、物価全体に関する問題であるので、慎重に判断したい。

 ○高橋思敬委員(サンケイ新聞論説委員)当時、すでに開設されていた薬局は適正配置規制に関係ないのか。昭和三八年以前に開設している販売業をそのままにしておいて、適正配置の実情は、その目的を果していないのではないか。
 ○薬事課長 当時開設されていた既存の薬局等を白紙にかえすのは不可能であった。現在、適配条例の運営によって、販売秩序は安定していると考える。これを撤廃すれば、再び昭和三五年当時の乱売状態が再現されるおそれもある。

 ○高橋委員 それだけで、制定当時の目的は達せられたか。現に乱売は行なわれている。
 ○薬事課長 販売秩序の維持には、他の要因もあろうが、適正配置も大きな要因となっている。

 ○高橋委員 管理薬剤師は極端に言えば、名義貸しが多い。薬剤師不在の一般販売業はあり得る。
 ○薬事課長 名義貸しがないように厳重に指導している。夜間も薬剤師がいるようにしている。一般販売業も同様である。

 ○肥川治一郎委員(総評)
 @薬価基準収載品と大衆薬との関連は今後どのようにしていくか。薬価基準収載品目の拡大をはかり、大衆薬をはずすのかどうか。A今後の薬価調査をどうするか。B薬事制度としての医薬分業の位置づけをどう考えているか。C薬害が最近多いが、厚生省はどう処置するか。D流通段階の過程で厚生省の権限はどこまであるか。
 ○木暮企業課長 昭和四二年、医薬品の製造承認に関する基本方針を定め、一般向、医療向の区別をつけた。生産段階では、製造許可を行っており、流通段階でも薬事法にもとづき監視と行政指導を行っている。薬価調査については、一一月に実施し、集計を準備する段階になっている。薬価調査は毎年一回行なうことが、中医協できめられている。調査は90%を上回る回収率で、現在、前段階の作業を終った。若干の価格変動はあると思うが、集計したあとでなければ、結果はわからない。
 ○梅本保険局長 現在のところ、引き下げの予測はできない。
 ○薬事課長 分業については、医師、薬剤師が専門的立場から、薬剤の投与を分担することで進めている。 分業推進にとって@薬局の受入体制(薬局設備の充実 薬剤師の質の向上)を整える必要がある。A販売姿勢についても場合によっては直さなければならない。B薬は医師からもらうという古くからの慣習もある。C世論も盛り上っていない。などの問題がある。これらを検討しながら、昭和四五年に薬局の実態調査を行ない、十分究明し、漸進する方向で検討したい。

 ○肥川委員 国民医療上の問題のなかに、薬剤多用が問題になっているが、現実はどうなのか。また今後はどういう対策をとるか。医療制度、薬事制度を抜本的に改めるというが、具体的な対策を示せ。
 ○下村薬務局参事官 薬剤の多用については、基本方針で、薬を種類分けし、科学的データを添付して申請させている。医薬品の品質、医薬品本来の使用目的の両面から、積極的に考えていきたい。
 ○薬事課長 分業については、現在の制度で分業はできている。薬理学的問題、副作用問題等、および調剤技術について研修を図る。このほか、適配は医薬品の供給が中心となっているが、調剤の面からも検討していく。また薬局設備充実のため必要な融資も考える。

 ○肥川委員 分業はわかった。薬剤の多用傾向については、薬務行政からみた場合どうか。
 ○薬務局参事官 多用の内容が問題である。計数的な面からだけでは片づけられない。将来の方向としては質のよい有効な薬を使うこととしたい。

 ○肥川委員 医業経営のなかで、試供品が多く使われているが。
 ○企業課長 試供品については、一月一三日大手七一社で申し合わせを行ない自粛することとなった。

 ○今井一男委員(共済組合連盟会長)薬剤師の質が悪いので研修するというが薬剤師が劣るということはあり得ないと思う。それは名前だけを借りた薬局の場合ではないか。
 ○薬事課長 研修は専門的職能をさらに向上させるもので、薬の発展に即応するためである。
 ○薬事課長 研修は専門的職能をさらに向上させるもので、薬の発展に即応するためである。

 ○今井委員 医師よりも劣るのか。薬剤師会が聞けばおこる。
 ○薬事課長 常に薬剤師は勉強しなければならない。研修については薬剤師会と相談してやってきている。

 ○今井委員 薬剤師のレベルが低いのか。
 ○企業課長 薬局の経営実態から説明する。薬剤師の養成課程や技術は諸外国と比較して少しも劣っていない。ただ、開局薬剤師にあっては、経営内容にしめる薬剤の取扱いが次第に低下し、化粧品等の取扱いがふえる傾向にあり、医薬品の取扱い以外に時間を取られるという実態がある。こういう点で研修の必要性があると思う。
 ○太宰博邦委員(厚生団理事長)分業には一五年前からなっているが、国民の一人として、薬局の処方より、医師の処方の方がよいという観念がある。薬務局としては、分業を推進していく意向はどこまであるか。薬務局はなんらの対策をとらなかったのではないか。制度審が分業をやると答申しても、薬務局のやり方では空文になる。
 ○薬事課長 実現をはかっていきたい。

 ○太宰委員 薬局への融資は相当あるか。
 ○薬事課長 現在のところあまりないが、今後はワクを拡げるなど関係者と話しあっていきたい。

 ○滝野好委員(国保中央会専務理事)地方的には、薬剤師会と医師会の協調で進んでいるやに聞いている。上田市などのようなモデルケースを作り、意欲的に進めるべきである。
 ○薬事課長 資料が不十分であるが、全国の保険薬局一九、七〇〇のうち、六、〇〇〇の保険薬局が実際に処方せんを取扱っている。地域的にみると長野県では六〇%の薬局が処方せんを扱っている、少いのは秋田、富山、福島などである。モデルケースについては、上田市とかの進んでいるとみられる地区の分業達成の動機などを調査して、進めていきたい。

 ○近藤委員 @分業をすすめると薬剤費は増加するのか減少するのか。A大衆薬は分業のときに問題がある。物価安定政策会議は届け出制にせよと提言しているが特許の問題もある。
 ○薬事課長 大衆薬の届け出制については、大衆薬は国民が自分の判断で使用するものであるから、安全性を重視しなければならない。従って許可制を廃することは考えていない。
 ○保険局長 薬剤多用については、保険サイドから言うと、内容を分析していないが、時間の説明したものは、一般に問題点として提起されているものを、厚生省としても検討していくとしたものである。分業は赤字対策、薬剤対策のためではない。医師と薬剤師の職能の分化を明確にするのは当然である。分業と薬剤費の問題は、そのやり方によっても違う。ばく然としてやる場合は、感じとして、当初は増えてくると思うが、総合して判断すると、薬剤の多用はセーブされてくる。相当の抑制の効果はある。

 ○近藤委員 効果が々なら安い方がよい。今のは非科学的な答えである。局長は厚生科学研究の野上教授の報告は受けていないのか。
 ○保険局長 分業は単なる財政的な構置でないと指摘したものである。報告については、東大の野上教授がサンプル調査したのを聞いている。

 ○石原幹市郎会長代理 調査費六〇万円の内容は?
 ○薬事課長 薬局の実態調査を行なう。現に調剤を主たる業務にしている薬局を調査して、分業の資料にする。

 ○石原会長代理 分業について前回も指摘したが、厚生省は積極的でないように聞える。分業をすすめる上での諸条件、とくに、大都市は条件がそろっていると考えるか。
 ○薬事課長 条件がそろっていると思う所もある。上田市等、今後も調査していく。

 ○石原会長代理 大都市は分業しても大体いいかと聞いている。諸条件の整備はこれからという考え方か。
 ○薬務局参事官 上田市の分業の要因は、個人的信頼関係によるところが多いと聞いている。大都市では個々バラバラであるが、医師との個別の分業はある程度成り立っている。

 ○石原会長代理 薬剤の長期投与は害にならないか。医師の処方期間はどうか。
 ○松浦医療課長 健保では二日間、長いのは一四間、平均すると四日間である。

 ○田中慎一郎委員(日経連、十条キンバリー社長) 厚生省の意欲を聞きたい。抜本改正で、分業はどのように位置づけされているか。厚生省は意欲がないと感じた。分業の効果はないと考えているのか。絶対やらなければならないと考えているか。
 ○薬務局参事官 分業は本気でやりたい。ただ、やるには障害が多いので苦心している。
 ○松尾医務局長 分業は医療保険制度抜本改正と必ず結びつけなければならないものとは考えていない。患者のサイドからの考えを抜きにして考えられない。機能を分けることは当然である。患者サイドから、納得させるのに相当の努力が必要である。

 ○小山進次郎委員(厚生年金基金連合会理事長) 制度審は分業促進論が圧倒的だが、今後医務局長の言っているものと別の考え方で議論しなければならない。昔と条件が違っているにもかかわらず、従来と同じ考えではやっていけない。現行法とは別に、横たわる問題がある。薬剤師の職能が大部分製薬会社に移っている現在、分業の今日的意義も変っている。職能の確立というほかに、分業による経済的効果、保険への影響という問題が大きなウェートを持っている。

 ○滝野委員 国民の理解、認識をとるのは大変だというが、国民の有力なものという意味なのか。薬価基準が実勢価格とピタッと合ったら分業ができるのか。
 ○医務局長 国民の有力なものとは何かは分からないが、二度手間になることに対する疑問を解明するのが大変であると言った。

 ○肥川委員 ある団体では強力に推進し、ある団体では反対となっている。この審議会の受持つ課題であるので、やはり近い将来議論を助けるための方策をとるべきである。
 ○石原会長代理 次回に引続き医務局長を中心に聞くこととする。
 (次回は四月二十日、五月八日開催の予定)

 二、社会保障制度審議会総会の質疑応答に関し、薬務局長記者会見

 加藤薬務局長は、四月一五日、去る四月一〇日開催の社会保障制度審議会総会において行なわれた質疑応答に関し、日比谷クラブ記者との会見を行ない、次のように発言しました。この記者会見には、同局の下村参事官、木暮企業課長、山高薬事課長も出席しました。

 ○加藤局長談話

 (1)社会保障制度審議会(以下制度審と略記)総会における医務局長の発言については、直接医務局長に電話で聞いた。それによると制度審には医療保険制度が諮問してあり、医薬分業はたてまえとしては、必ずしも抜本改正の前提条件ではないし、財政対策としても、分業を前提としていないと発言したものである。分業自体に反対しているわけでなく、いわば、日医と日薬の分業の取組み方が違うように、医務局と薬務局との発言の違いとなっているのであろう。

 (2)国民への医薬分業のPRについては、分業を推進していくうえに、国民に対するPRも必要だが、現在これといった決め手はない。現在、医薬品が錠剤化の方向に向ってきているが、薬の管理は薬剤師が行なうという薬剤師職能を繰りかえし国民に説得するべきである。分業は医学、薬学的にみてベターである。

 (3)適配条例については、安くて良い医薬品を国民に与えるために検討することは良いが、条例を一挙に撤廃することは、かえって混乱を招く。@良質な医薬品の確保 A薬局の健全な育成 B国民大衆の利益等の観点から、ただちに撤廃にふみ切ることはない。

 (4)再販についても、医薬品の特殊性を考慮し、再び池袋事件(昭和三五〜三六年頃の乱売事件)を起さないよう公取委ともよく相談したい。ただ運用面で改善するのにやぶさかではない。

 ○企業課長

 この問題については、要指示薬等の品目の洗い直しは行なったので、この点は整っている。あとは公取委の方で具体的に示せば行政指導も考えている。

 (5)医薬分業については、事務次官を中心に医務、保険、薬務の三局で検討していきたい。これらについては国会が終ってからになろう。

 (6)薬価基準については、昨年一一月調査し、一二月に回収したが、販売、購入サイドとも前回以上の回収率である。一応、八月一日実施の目標で、ほぼスケジュール通りである。

 7)今後薬務行政については自民党社会部会と連絡を密にしてやっていくが、必ずしも全部について事前協議するわけではなく、説明を求められたものについて説明することとしたい。