通 史 昭和45年(1970) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和45年(1970) 3月10日号

 九州山口医薬分業実施推進同盟

 ◇薬剤師は医師と並びパラメディカルスタッフの中核としての自信と実力と使命感を持し 明るい分業への扉を拓こう!!

 ◇斜陽‐衰退‐座して死を待つか!蹶然‐栄光‐黎明への道(分業の実現)を極めるか鍵は全薬剤師の手中にある。

 分業推進中心に 日薬代議員会開会 会長に武田氏を四選

 薬剤師職能の具体的な前進の年に 武田会長演述(要旨)

 昭和四五年度は、分業実施問題の解決を含めて薬剤師職能の具体的な前進をかちとる年にしたい。自民党の国民医療対策大綱のなかに、分業五年推進案が表明され、政府もこれを受けて社会保障制度審議会、社会保険審議会に諮問した、そのいずれの審議会においても医薬分業を重点項目として審議する体制をとっている。

 日本医師会は昭和四四年度事業計画に「医薬の分離」をはじめてとりあげ、「医療総合対策に関する意見」のなかで、分業の必然性を認め、既存薬局の整備によって分業の進展が図られるべきだとの見解を明らかにしている。

 更に、画期的なこととして、昭和四五年度政府予算に、医薬分業推進に要する経費五九万六〇〇〇円が認められた。次年度以降の政府施策の拡充が大きく期待される。日本医薬分業推進同盟の機関として設置された医薬分業推進審議会において分業に関する中間報告が提出されたので、この線に副い「分業なくして薬剤師職能の確立はない」ことを改めて十分認識し対処したい。全薬剤師の総力結集と会員個々の積極的行動を念願する。

 大衆薬問題については、中央薬事審議会の一般用医薬品特別部会に薬系委員六名(内開局者より三名)を送り対処しており、「かぜ薬承認基準案については薬剤師職能を守る立場から意見書を提出し善処を当局に求めている。二月一日、調剤料改訂が行われたが十分でないので適正な姿となるよう努力を続ける。
小売の公正競争規約問題の成り行きには、医療機関である薬局の立場から深い関心をもち対処したい。

 加藤薬務局長 祝辞(要旨)

 局長になって半年、昨年はチクロ等安全性の問題が社会的問題となり、予算も安全性の面から要求、今後も正しい医薬品の安全性、有効性に力をいれたい。抜本改正のなかにハッキリ分業が示されているため予算を約一千万要求したが、残念ながら最終的には約六〇万円が認められた、金額は別として意義は大きい、今後も困難だが各方面と連絡をとり、日本の医療を正常にもどすため抜本改正とも合せ、方向としては分業推進に邁進したいと考えている。

 大衆薬(医療用以外の医薬品)については、一つの承認基準を作ることが正しい方向と考えており狭めようとする考えはない、製造承認申請が厚生省にたまったことから基準を作り、これを地方に委譲して迅速に進めることが狙いでこの問題をとりあげたものである。医薬品の問題は他にもいろいろあるが、役人の独善をさけ、重要な行政を進めたいと考える。

 武見日本医師会長 祝辞(要旨)

 医薬分業は法律でやる時代は過ぎた、学術秩序として、医薬両団体が学術専門団体として分業を推進すべきであり、両会長の間に十分な了解がすでに進んでいる。

 薬価基準は次第に大包装に移りつつある。これは医薬分業推進を困難ものにしつつある。厚生省は、薬局のみが取扱う医療用医薬品を、二〜三日分の小包装にしたものの設定にふみ切らねば医薬分業は難しかろうと思う。そして薬剤師に薬価の三〇%の利益が与えられねばならない。薬剤師会と医師会が団結した圧力というものが新しい社会的な路線を開発して行くことが必要なことは火を見るより明らかだ。

 決議(要旨)

 医療制度改革の基盤たる医薬分業は積極的且つ明確な態度で臨むべきである。
一般用医薬品の取扱いについて、審議された承認の基準がいささかも安全性に名をかりて、規制へと指向するものであるならば、われわれは、断じて容認するものではない。
その他意見書、要望書等が提出されたが主なものは左記のとおり。
▽代議員会における議会運営について意見書が四国ブロックから提出された。
▽かぜ薬承認基準に関する意見書は日薬から厚生大臣へ提出されたことが報告された。
▽役員選出のための休けい時間を利用して、東京都開局青年薬剤師会会長ほか数人により、全国代議員の皆様へ要望として全国的に青年薬剤師会の設立を要望した。
▽大衆薬規制反対、薬剤師職能に関する要望書は京都から提出された。

 公衆衛生功労により 内田数彦氏 県知事より表彰

 第17回福岡県公衆衛生大会は三月三日(火)午前十時半から福岡県医師会館ホールで盛大に開催したが(既報)当日の公衆衛生事業功労者県知事表彰受彰者に薬剤師会から福岡市学校薬剤師会長内田数彦氏が選ばれ受彰した。

 挾子

 ▼福岡市三師会は毎年三回会合を開いて懇親を深めているが、二月二五日市内「かき善」で四四年度最後の三師会を開いた。各会から会長はじめ幹部各六、七名づつ出席、医薬分業などについても前向きの懇談が行なわれた。

 福岡市薬の保険部会は従来からその話合いの結果によって事業を行なっているが、この会合で毎回医・歯両会から指摘されることは、保険薬局の区別がわからないということであったが、今回は特に薬局の店頭が乱雑で、保険調剤を取扱う保険薬局とわからない。つまり医療機関らしくないということを強く指摘されたことである。

 また医師が、医薬分業の内容について具体的に理解していないので教えて欲しいとの要望もあったという。結論としては現在いかに薬剤師と医師との個々の対話が必要であるかということである。と薬剤師側の幹部が語っていた。

 要するに保険薬局とハッキリ解るような標示と医療機関らしい店頭のあり方と、末端医師と薬剤師の対話が分業推進の面で現在一番必要だということになるようである。市内の東部や南部で、すでに全面的に処方せんを出したいと意志表示している医師も何人かあると聞く。こと分業について、一番のんびり落着いているのが末端の薬剤師のような気がしてならない。

九州薬事新報 昭和45年(1970) 3月20日号

 福岡県薬 国保審査委員に 薬剤師任命を要望

 福岡県薬剤師会は三月九日県薬会館において第一七〇回理事会を午前一一時、支部連絡協議会を午後一時半から、引続き薬剤師政治連盟評議員会を開会、終了後国保組合会をも同所で開催した。

 理事会並に支部連絡協議会は来る二六日開かれる代議員会打合せをはじめ中央情勢特に日薬代議員会、大衆薬問題などについて報告を行なった。

 支部連絡協議会は二四支部中一七支部が出席、工藤専務理事が司会、中央情勢特に日薬における代議員会並びに一連の諸会議について四島会長から報告があった。

 ▽医薬分業については全国各県に、薬局二〇〇店に一名位の割で分業に熱心な意欲あるオルグのようなものをつくり、中央で研修したうえ各地区の分業推進委員となって会員の指導に当るよう早急にすすめることになった。

 ▽大衆薬問題については、分業とともに今年度の大きな課題である。厚生省のかぜ薬承認基準案については日薬の一般用薬特別調査会の答申にもとづき日薬会長名で厚生大臣に意見書を提出したが、この問題は今後も引続き注視、対処すべき問題である。

 ▽公正競争規約については日薬として公取の説明、見解を聞くことになっているがまだ実現していない。

 ▽第4回日薬学術大会(昭和四六年四月開催)の開催地は日薬代議員会で福岡が予定地に決定した。この大会を引受けるについては、薬学会にあわせて開催地を早期発表、主催者、会計等もハッキリするなど、今後の学術大会の構想、運営方針について根本的なことを日薬に要望、了承を得たので、二六日の代議員会で決定する。

▽第25回通常代議員会は二六日三鷹ホールで開会するので当日の運営委員、担当業務の区分など決めた。

 ▽社会保険業務については四月提出分に限って一日繰上げ三日までに提出することとし、国保診療報酬審査委員に薬剤師を任命するよう当局に要望することに決定、四四年度支部別調剤実績については工藤専務から詳細な報告があった。

 ▽現在県公害課に薬系技師がいないため、薬系技師を採用するよう当局に要望することも決定した。

 ▽麻薬禍対策について最近麻薬の規制が世界的に酷しくなったことから大麻、LSD(幻覚剤)が代って被害を起す傾向にある、これらにも麻薬同様の関心を持つよう要請した。

 それより引続き県薬剤師政治連盟評議会並に同医薬分業実施推進同盟総会を開催、四島会長から全般的報告があり、薬政連の昭和四五年度予算案を審議、原案(歳入、歳出とも一八三万円)を承認した。

 福岡県薬務課 薬事監視強化 広告内容・指定医薬品など

 福岡県薬務課は厚生省の医薬分業推進にともない医療機関としての品位を保つよう薬局等の薬事監視に当って、店頭の在り方など相当酷しく指導している。

 また薬種商販売業については先般、卸業者に対して薬種商及び新薬種商の指定医薬品について説明会を開き医薬品の納入について留意するよう協力を要請するとともに誇大広告、二重価格等の広告についても強い姿勢でのぞんでいる。

 先程飯塚で配布したチラシの内容についても違反広告として対処した。その指摘事項は左記のとおり。

 (1)あっと驚く!○○まつりびっくりセール。薬の○○会に、ご入会下さい。○○会のレシートが家計簿の手助けを致します。ぜひお集め下さい五千円より砂糖、味の素人形等のサービス品をお楽しみ下さい。

 (2)竜角散200を120円。浅田アメ250を150円。

 (1)は医薬品等適正広告基準(8)(11)に該当するので好ましくない。
 (2)は二重価格を暗示したものと考えられる。というものである。

 現在開業医の在り方が批判のまとになっているが、今後薬業界が批判を受けないという保証はない。いわゆる大衆薬問題も安全性の面から考えれば現行の販売態度を基礎にした場合、物の規制へと指向するであろうと危惧されている。業界がこぞって業権を護る態勢を持つ必要があろう。

 第3回 九州山口DT講習会 熊本に八十余名参集

 日本薬剤師会病診勤務薬剤師会主催の第3回九州山口地区DT講習会は、去月二六日から二八日までの三日間にわたり熊本市の熊本共済会館で開催したが、参加者山口県五、福岡県二二大分県五、宮崎県六、鹿児島県三、熊本県二一、佐賀県五、長崎県一二、のほか地区外中国、四国、大阪等からも特別参加者があり、予定数をオーバー、八八名が参加して盛会裡に終了した。

 福岡県病院薬剤師会が全国にさきがけてDT活動を始めてから五年、各会員の努力によって予想以上成功裡に経過しており、その組織は福岡県から九州山口へと発展、現在では石川、大阪、岡山、鳥取、広島などでもDTセンターや各種の活動が実施され、関東、新潟、東北など多くの地方で組織化が進められ、各地で定着化し、一般化するまでに生長しようとしている。

 講習会は三日間にわたり左記プログラムによって行われた。
▽DT活動の課題=堀岡正義(九大病院)
▽DT活動の実例報告・討論会=等泰三(熊大病院)田川洋吉(熊本逓信)清藤英一(飯塚病院)
▽Biochemical Pharmacology=高畠英伍(長大薬学部)
▽精神治療薬の薬効評価例と臨床薬理学を中心に=小川暢也(九大薬学部)
▽医薬品資料の利用・DTパンチカードを中心に=高杉益充(阪大病院)
▽臨床薬学の課題=田村善蔵(東大薬学部)原田憲穂(国立大竹病院)
▽医薬品副作用の収集処理と諸問題=高杉益充(阪大病院)
▽副作用資料の整理チャートの設計=梅津剛吉(九大病院)
▽討論会=司会芹川久夫(熊本逓信)
▽まとめ=神代昭(山口病院)

九州薬事新報 昭和45年(1970) 3月30日号

 福岡県国保組合 第27回通常組合会開催 保険料・給付とも前年通り

 第27回福岡県薬剤師国民健康保険組合通常組合会議は、三月九日県薬会館で開かれた福岡県薬支部連絡協議会に引続き、三時から開催され▽四四年度一般会計歳入歳出予算▽同年度特別会計歳入歳出予算について原案のとおり可決決定、知事の認可を受けることになった。

 当日は組合議員二五名中一八名出席、工藤常務理事の開会あいさつにより開会四島理事長は昭和四五年度の歳入歳出予算についての審議が主な目的であるとあいさつして組合の国保事業の状況を左記のように報告した。

 ▽昨年四月組合員の給付率を一〇割から八割に改め、その他の被保険者の保険料月額七〇〇円を八〇〇円に改め、増加が著しい医療費対策とし、保険財政の健全化に努めたため組合員の受診率は前年度より低下し、大体所期の目的を達しつつある。

 ▽四五年度においては本年二月一日の診療報酬点数改正および自然増を考慮しても前年度なみの給付率、保険料で国保事業は運営できるものと考える

 ▽国保事業運営のかなめは財政の健全にあるので、保険料は早期に完納して貰いたい。

 それより波多江議長あいさつの後、荒木七郎氏ほか六名の物故者に黙悼を捧げた後ただちに議事に入った。特に質問等により問題となった点は、

 ▽被保険者数一六三二名(本年二月末現在)は昭和三五年の二二〇六名以後、年々減少している。これについては国保被保険者の減少は市町村組合を問わず全般的傾向であるが、本組合で特に考えられることは、薬局の大型化に伴う健保への移行、給付率が八割になったことから市町村国保との格差が減少したため保険料の額により市町村に移行するため、また家族が成人し被用者保険に移行する等が考えられる。

 ▽四五年度歳入歳出予算については医療給付費の前年度対比伸び率を二〇%とみて歳入歳出予算総額はそれぞれ二、八九四万八千円である。(歳入のうち保険料は約一、八〇〇万で国庫および県支出金が約三分の一を占めている。)

 ▽国保組合の将来性については財政面から決して明るいものではないが、赤字解散等最悪の状況にならないよう常に十分配慮している旨の説明があった。

 なお本組合の現況は、
▽保険料(月額)本人一、三〇〇円その他八〇〇円
▽助産費一件につき組合員一〇、〇〇〇円、その他二、〇〇〇円
(いずれも前年通り)

 福岡県薬 県知事に要望書 国保審査委員と公害課に薬剤師を

 福岡県薬剤師会はこの程国民健康保険診療報酬審査委員会委員に国民健康保険薬剤師を代表する委員を委嘱するよう、また県衛生部公害課に薬剤師である技師を配置するよう県知事並びに関係当局へ要望した。

 国保審査委員については四、五年前も要望したが委員の定数の関係で実現しなかったが、二月一日から実施の診療報酬改訂による調剤料の自家製剤加算等の問題を機に、また公害課については各種公害がクローズアップしてきた時期を機会に、全口的な運動展開に呼応して前記国保審査委員会と県公害課に薬剤師を任命するよう要望したものである。

 なお、両要望者は左記のとおり。

 要望書

 近時、国民健康保険診療報酬中の調剤報酬は逐次増加してまいりました。また昭和四五年二月一日から施行されました調剤料の改訂により製剤加算が複雑になりました。現在、福岡県には民生部保険課、国民健康保険課のいづれにも薬剤師である技官、技師がいないのみならず、診療報酬審査委員会にも国民健康保険薬剤師を代表する委員が委嘱されていないのであります。

 すでに、栃木、千葉、東京、神奈川、新潟、岐阜、静岡、愛知、大阪、兵庫、三重の一三の都府県では、薬剤師である委員を委嘱しているのであります。

 保険調剤業務はますます複雑、多量化の傾向にあります現況にかんがみ、国民健康保険法第88条の規定の趣旨により、雄県福岡県として、ぜひ国民健康保険薬剤師を代表する者を国民健康保険診療報酬審査委員会委員に委嘱いただきますよう要望いたします。

 要望書

 近時、県内における公害問題は政治、社会問題として大きくとりあげられ、その対策も着々と進んでいることは、ご同慶に存じます。公害対策上、薬剤師のうけもつ範囲は、空気の検査・食品の検査等をはじめ、まことに広域にわたるものであります。

 本会では、毎年公衆衛生委員会等で諸検査を実施し県民の保健向上に協力しているのでありますが、公害対策の飛躍的拡充、整備が強く望まれている現状にかんがみ、本会も社会の要請に応え、公害対策事業の躍進を期しております。このときにあたり、公害対策事業の専門的技術指導のため、県公害課に薬剤師である技師をぜひ配置いただきますよう要望します

 九州山口医薬分業実施推進同盟

 ◇世は安全性時代にいる。薬害防止に分業推進を訴えよう。
 ◇分業推進は国民大衆のためのものであることを銘記し行動すべきである。