通 史 昭和44年(1969) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和44年(1969) 10月10日号

 同盟情報部速報 第18号 昭和44年9月26日 (全文掲載)
日本医薬分業実施推進同盟情報部

一、同盟常任執行委員会等開催

 九月二四日午後一時半から、東京虎ノ門共済会館において、同盟常任執行委員会が開催され、同日同所において順次開催された。日薬全体理事会、日薬政連正副会長正副幹事長会ならびに坂口後援会正副会長会に併せて、医薬分業推進を中心とした時局対策について協議が行なわれました。

 当日協議された主要なものとして、@薬局制度懇談会(仮称)の発足とA中央薬事審議会一般用医薬品特別部会の設置について、があげられます。これについて次項でご紹介いたします。

 二、薬局制度懇談会(仮称)設置きまる

 日薬では、当面の諸情勢に応じ、薬剤師職能ならびに薬局のあり方に関し、具体的検討を行なうため、日本病院薬剤師会代表を加えて、薬局制度懇談会(仮称)を設置することに決定しました。同懇談会は、十月以降定例的に会合を開くことを予定しております。なお、懇談会には、厚生省薬務局の幹部も、オブザーバーとして出席の予定であります。

 三、中央薬事審議会に一般用医薬品特別部会設置される

 厚生省中央薬事審議会に新に一般用医薬品特別部会が設置され、去る九月一八日初会合が開かれました。
この特別部会は、当面、十月一日から実施されることになっている医薬品承認事務の一部地方委譲にそなえて、かぜ薬の基準作成を目標として作業がはじめられます。委員として、薬系から次の三氏が選ばれております。

 上野高正氏(虎の門病院薬剤部長)桜井喜一氏(横浜市立大学薬局長)高木敬治郎氏(東京大学教授「薬品作用学」)また開業医から四氏が選ばれております。

 今後、本特別部会は、漸次、いわゆる大衆薬の基準について審議が行なわれる模様であります。日薬は、これらの事情から、かねて、開局薬剤師の委員を加えることを要望いたしておりましたが、近くその線で、若干名の委員が追加される運びとなっております。

 四、同盟分業推進審議会全体委員会開催

 医薬分業推進のための諸問題について、武田同盟会長からの諮問に答申するため、分業推進審議会は、去る六月二十三日の第一回全体委員会開催後、数回の小委員会を開き、答申案の取りまとめに努めてきましたが、九月二十五日第二回全体委員会を、東京永田町薬業健保会館において開催いたし答申案を審議いたしました。答申案の内容が、複雑多岐にわたるため、当日は審議未了となり、継続審議として慎重な審議が続行されることとなりました。おおむね、十月末までには、会長あて答申される運びとなるようであります。

 五、中医協の緊急是正審議について

 中医協は、現在、委員間の意見が対立したため、医療費緊急是正の審議が中断しておりますが、意見が調整され、近く(今月中にも)審議が再開される運びとなった模様であります。なお、九月四日の中医協に、支払い側委員が提出した「診療報酬体系の適正化に関する見解」について、九月二十二日付「厚生福祉」(時事通信社発行)に、一本香告樹氏(同盟、企画部長)が解説されているので医薬分業に関する部分を抜粋してご紹介いたします。

 「支払い側委員が主張する診療報酬体系の適正化のおもな基本的な考え方は次のようである」として四点あげられております。
@物の対価と医師の技術料部分を切り離し、技術料を適正評価する。
A診療報酬点数表を簡略化する。
B甲表、乙表を改善するとあり、次に
C医薬分業を保険医療費支払いのうえで推進できるようにすること。があげられております。(なお一木氏は中医協の委員であります。)

 六、「健保法」修正成立の際の参院本会議における医薬分業関係質疑答弁の詳報

 「健保法」修正案が参議院において可決、成立した経緯につきましては、八月六日付、速報9号でお知らせしましたが、当時の議事録を入手しましたので、分業に関する部分を抜粋し、ご紹介いたします。

 昭和四十四年七月三十一日参議院本会議

 ◆質疑 渋谷邦彦議員(公明)
次に今日の医療事情における最大の欠陥は、文明国として反省の余地があるとしてきびしい批判を受けている大きな問題点の一つに医薬分業が全く行なわれていないということであります。先ほどの質疑応答のなかでも、ちらっとその辺りの片りんが出ておりましたけれでも昭和二十六年一月臨時診療報酬調査会が、物の報酬と技術の報酬に分離する医療費体系をつくるべきだという答申があり、引続き臨時医薬制度調査会から「医師の処方せん発行を義務づける」「薬剤師の調剤は医師の処方せんによる」「医師が調剤できるのは、診療上必要があると認められた場合、薬局の普及が十分でない地域に限る」という答申がありました。

 これらの答申をもとに、政府は若干の手直しを加え、すなわち、「患者やその看護者が特に希望する場合」という条項を足したわけであります。そして国会の審議を経まして、医薬分業関係法として公布になったわけでありますが、その後紆余曲折しながら、昭和三十一年四月、やっと実施の運びになったとはいいますものの、実際には、「患者が希望した場合は医師が調剤できる」という項目のみが生きまして、完全な骨ぬきになってしまいましたことは衆目の一致した見方であり、当時の立案者であった政府もよく心得ているはずであります。

 医薬分業が医療費の不当な増加や健保の赤字対策に最も効果的な方法といわれているのは、もう常識であります。政府、自民党はなぜ勇断をもって効果的な医薬分業を示せないのかなぜ逃げ道をつくったのかこの際、疑惑の多いこの問題について適切に国民の前に明らかにしていただきたいと思います(中略)

 医師、薬剤師がそれぞれの立場を尊重し、医師の報酬は診断や技術を中心にされるべきであり、医療技術の向上発展の上からも医薬分業が行なわれることは必須条件であります。今日まで放任されている理由がわからない。したがいまして、今後のき然たる方針を示していただきたい。(中略)

 また、赤字財政にならざるを得なかった主たる要因は医療給付が増大したことよりも、医薬分業を行なえなかったところにあったことが明瞭であり、それを国民にしわ寄せして保険料の負担をはかり、赤字解消を仕組もうとしている政府の対策では、しょせんは焼石に水である。この点については、大蔵大臣、あなたは財政担当者としてどう考えるか、お答えをいただきたい。

 ◆答弁 斉藤厚生大臣
診療報酬体系と支払方式につきましても、いま中央医療協議会においていろいろ審議していただいているわけでございますが何といたしましても、まず医薬分業というものを確立しなければならないと存じます。

 先ほど医薬分業に関する現行法の不十分さの御指摘がございまいした。私もさように考えております。昨今は日本医師会におきましても医薬分業を必要とするという方向になってまいっておりますので、これが実施は五ヶ年以内の計画的な策定によって実施をいたしたいと、かように考えております。すでに関係方面、関係団体の協力を得ましてその実施対策を、その年次計画をただいま立てつつあるわけでございます。

 また、地域的にはすでに実施に踏み切りつつあるところもあるわけでありまして、こういうものの指導をいたしますると同時に、その方針のもとにこれを進めてまいりたい、かように考えます。

◆答弁 福田大蔵大臣
医療給付の面にも問題があるんではないか、そういう御指摘であります。確かにそう思います。大蔵省といたしましては、厚生省に対しまして給付の合理化について努力せられたい。こういう要請をいたしておるわけでありまするが、厚生省でも、ただいま厚生大臣からお答えがありましたように、最善の努力はいたしておるのでありまするが、なかなかむづかしい問題であるということも御了知願いたいのであります。

 ◆質疑 中沢伊登子議員(民社党)
今回の修正案において、薬剤の一部負担を取りやめることとされておりますがその結果については、政府はどのように判断しておられますか。

 ◆答弁 斉藤厚生大臣
一部負担がなくなりましても乱給の起こらないように、先ほど申しましたあるいは医薬分業制度または診療報酬制度におきまして、技術料を高く評価するように、この緊急是正の際にもそういったものを織り込んでやっていただきたいと、中医協に希望いたしておるわけであります。

 ◆討論 山本伊三郎議員(社会党)
政府はこの際、医療制度の根本的な改善を考えるべきであると私は思うのであります。いわゆる健康保険制度の抜本改正の基盤として、医療制度の改革というものが重要な要素である。これを私は十分皆さん方に知っていただきたいのであります。

 次に私は医薬分業について少し触れておきたいと思います。今日世間では、お医者さんが薬を商い、薬剤師が化粧品を売っておる。こういう悪口を言う人があります。しかし、こうあってはならないことでありますが、この悪口は今日のわが国の医薬制度の実態をあらわしておるんじゃないですか、薬剤師さんは化粧品を売らなければ生活できないという実態であります。私は、あえて欧米の実情を引例することはいたしませんが、なぜこのような医師が薬を扱うことに多くを費やし、薬剤師が薬種製造業者の手先として、その商品の小売りに、また化粧品の小売りに奔走しなければならないんですか、私は理解に苦しむものであります。

 高度な学問をして世に出た人材はもっと国が大事にしなければならぬと思います。日本人は物に対していろいろ大事にする観念がありますけれでも、人に対してはきわめて冷酷であります。特に現在の政府、佐藤総理は人命尊重を言われますけれども、人間に対する考え方はきわめて冷酷であります。社会保障の現状を見ましても、私はそれを立証できると思うのであります。願わくば、政府は勇気を持ってやっていただきたいと、まだ希望はつないでおります。

 福岡市薬の『薬と健康展』 県貿易会館

 「薬と健康の週間」は十月十二日から十八日までの一週間、厚生省、都道府県、日本薬剤師会、都道府県薬剤師会の主催で、本年度も実施されることになっている福岡地区では昨年同様『薬と健康展』を十月十六、十七、十八の三日間、県産業貿易会館三階で実施する。本年度は例年の行事のほか食品公害問題を採りあげ、市の環境衛生課並に食品衛生組合の協賛を得て食品添加物の展示なども新たに加えることになった。

 主な行事内容は@展示=医薬品、食品添加物、成人病の献立料理、パネルA薬の相談(会員担当)B血圧測定(保健所担当)C血液型判定(女子薬担当)D栄養相談(保健所担当)スピードくじなど。

九州薬事新報 昭和44年(1969) 10月20日号

 福岡県薬支部連絡協議会 薬剤師研修会経過など報告

 福岡県薬剤師会は十月七日午前十一時から理事会、午後一時半から支部連絡協議会を開会して@中央情勢A薬剤師研修B保険業務C薬学講習会D臨床薬理学講座E薬と健康の週間F37回九州山口大会G不正ヘアースプレーの回収Hシンナーの取扱いなどにつき報告並に協議を行った。

 ▽中央情勢報告は四島会長から詳細な説明があり、新しい情勢として
@分業審議会の答申は十一月中旬出される予定であるが、最終的には法律改正が必要であるが、法律改正に対する抵抗を少なくするためにも分業の実績を積みあげておく必要があるA薬局制度懇談会が分業推進のために設置され、薬局はどうあるべきか、また病院薬局の制度をどうするかなどが検討されることになる、構成メンバーは日薬五名(分業審議会から太田会長、吉矢副会長、日薬の井手、鈴木、桜井三副会長)厚生省から五名(薬事課長、製薬課長、下村参事官のほか薬事課の技官二名)とし、日薬会長、薬務局長は随時出席することとし、近く第一回目が開かれる予定である。

 ▽薬剤師研修について
受講者四五四名で第一回としては成功であった。今回は調剤業務から遠ざかっている薬剤師に最近の調剤を認識して貰うことが主目標であったが、それ以上の効果はあったと思われる後講義終了後、受講者および受入病院双方のアンケートにより今後の在り方などを検討、引続き第二第三と計画し、次第に内容も向上させたい。なお受講者に配布したテキストのほか解説書も作成する。なお後日修了証が渡されるが、テキストだけ必要な人には研修会終了後千円でわける。

 ▽保険業務について
七月、八月の二回にわたり県保険課係官により保険薬局個別指導が行われた。また分業の進展に伴い十一月には四地区において集団指導が計画されているので十分注意して整備されたい(注意事項は九州薬事新報九月三十日参照)なお保険医側の間違いについては県保険課で指導しているが、実際には却って分業阻害の面も出るので受付薬局が申出て協力を求めることが望ましい。歯薬合同研修会を実施した支部は大牟田、京都の二支部のみである、早急に実施されたい保険薬局は結核予防、生活保護の指定を受けるよう歯科医師会から申出があったので会員を指導されたい。

 ▽薬と健康の週間
@薬事功労者推せんは薬剤師会から滝口、河原畑、有馬、吉村、上田の五氏を推せんした。
A環境衛生検査は本年も従来通り学校薬剤師が指導して一六支部、二九個所で実施する。
各地区行事は福岡、大牟田八幡等で計画中。

 ▽第37回九州山口薬学大会については県から三百名位参加するよう各支部ですすめることとなった。

 ▽その他分業同盟会費、薬政連会費等の早期納入についても要望があった。

 福岡三師会 秋の親善野球 歯医会優勝

 福岡市の三師会は定期的に春秋二回親善野球試合を行っているが、今秋の試合は九月二十八日正午から春日中学校において行った。

 第一試合は薬剤師会対歯科医師会で8対3で歯科医師会が勝ち、第二試合は医師会対歯科医師会で行われ、8対3で歯科医師会が優勝した。

 勝敗はともかく親善の方は大いに効果をあげた。なお薬剤師会のメンバーは増田(九大)小田(開局)鶴田(開局)江頭(開局)戸田(開局)小松(開局)西森(開局)中尾(九大)でバッテリーは投手柳原(九大)捕手鶴岡(九大)の諸氏であった。

 校舎落成祝賀会 10月10日 長大薬学部

 長崎大学薬学部では新校舎落成披露と創立八十周年記念を兼ねて、十月十日、午後五時から長崎市を一望に眺める「矢太楼」において東京、大阪を始め九州各地から同窓会会員約二百余名が参集して盛大な祝賀会が開催された。

 当日は午後三時から落成した新校舎大講義室で、本年度長薬同窓会定例総会をも開会、引続き同所において講演「長薬の変遷について」を高取治輔教授から聴取後、会員は原爆によって一瞬のうちに灰燼と化し、その後二十余年を経て落成した地上五階建ての立派な薬学部の行届いた設備を感慨をこめて見学した。

 百万ドルの夜景と云われる矢太楼での祝賀会は隈長崎県薬会長の司会によって始り高取同窓会長のあいさつの声は喜びにふるえていた。次いで、長大学長、知事、市長、日薬会長等の祝辞、感謝状贈呈などがあって開宴、賑やかな喜びに満ちた盛大な祝賀会であった。

 福岡県薬 調剤の確保と適配条例 社保委へ諮問

 福岡県薬剤師会社会保険委員会(藤田胖委員長)は十月九日一時半から県薬会館で委員会を開会、本年度歯薬合同研修会、医師会(医師個人)対策等について協議した。

 当日は協議にさきだち四島会長から中央情勢特に分薬推進方策について@中央行動(団体的行動)の社会的方策、政治方策、内部指導A地方行動の団体的行動(関係団体等への対策、世論の形成、受入態勢の整備)薬剤師、診療所の個別分業の促進などについて詳細な説明があり、特に地域的受入整備に関連して適配条例が問題となるが、条例を改正することは条例そのものを危険にする可能性も多分にあることから、知事の特例適用ということになるがどのような場合に特例を適用するか、具体的に検討するよう要望があたった。

 それより工藤専務理事並に中村担当理事から最近の状況各種伝達並に注意事項の説明があって協議に移り
@歯薬合同研修会については早急に小地域毎に開催して処方せん増発を図る。
A保険薬局標識取付けの促進を図り、医療金融公庫の活用は現在未だ全国で三件で利用者が少い、日薬では引続きワクを広げる努力をしているので将来のためにも活用、利用に努める。
B医師個人対策については藤田委員長から実例により詳細な説明があり、一部の医師会では分業に相当の関心を示していることなどが報告され、各地区で積極的に促進を図ること、特に小児科は実現の可能性が多いなどが説明された。その他分業が実現するかどうかは大衆啓蒙如何によって決まるので標語の活用について、分業受入れの地域体制についてなど熱心に協議、医療機関としての薬局と適配条例との関連についての会長の諮問については宿題として後日文書で委員会に報告することになった。

九州薬事新報 昭和44年(1969) 10月30日号

 熊本城を臨む市民会館に 第37回九州山口薬学大会 会員千二百余名参集

 第37回九州山口薬学大会は十月二十三、四の両日熊本市民会館において盛大に開会、会員約千二百名が参加して、終始熱心に一年間の研鑽の成果を発表した。

 本年の大会、本会議の特別講演は参議院議員(元厚生次官)高田浩運氏の「現時点の薬業界と時局」で、現在会員が関心を示している諸問題について解明し、各分科会においてはマーケッティングセンター取締役斉藤定良氏の「マーケッティングリサーチの意義と効用‐薬品調査を中心として」=薬剤部長協議会。熊本大学教授長島秀夫氏の「肝疾患とその治療」=薬学薬剤部会。医薬全商連理事長荒川慶治郎氏の「薬業界の現況について」=開局(経済)部会。九大病院薬剤部長堀岡正義氏の「点眼薬の製造法について」=製薬部会。厚生省薬務局企業課長の木暮保成氏の「医薬品流通の問題と薬価基準について」=卸(流通)部会。など講演六題、研究発表六〇、シンポジウム一などが行われた。

 大会の内容は本会議(一部式典、二部会議)、九州山口薬学会総会のほか薬剤部長協議会並に薬学薬剤、薬務、公衆衛生鑑識、開局(保険)、開局(経済)、学校薬剤師、製薬、女子薬剤師、卸(流通)の九部会及び商組代表者会議、本年始めて開催した分業同盟代表者会議が開かれ、第一日二十三日六時からは市内鶴屋デパート五階大食堂において約八百名の大会参加者による大懇親会が催され、知事を始め多数の来賓も出席して大会のふん囲気を盛りあげた。

 そのほか大会前日には観光ホテルで大会運営委員会、市民会館では薬剤部長協議会委員会が開かれた。
なお今大会会場市民会館は熊本城を臨む市内の環境にめぐまれた場所に威容を誇る立派な新しい建物で、大ホールのほか大会議室及び多数の会議室が付属しており、広々とした廊下や階段、ロビーがあり、医薬品の出品展示、薬科機器の展示もゆったりと展示されており、女子薬部会を除いて各部会が一個所にまとまりすべてゆったりと余裕のある会場であった。

 ◆本会議
本会議は大会第一日の午後一時から市民会館大ホールで第一部式典、第二部会議を約八百名の会員が参加して、先ず自衛隊のブラスバンドのファンファレによって開幕した。

 会議は「完全分業実施に応える態勢の確立」「薬剤師道倫理の昂揚に努めよう」の二大大会スローガンのもとに、地元熊本県薬副会長によって力強く開会が宣言され、全員起立して国歌斉唱、山中大会準備委員長の開式の辞に引続き四島九州山口薬剤師会長並に松村九州山口薬学会頭のあいさつがあり、松村会頭は、この歴史ある本薬学大会を新しい時代に即応するよう会則改正すべく案を提示するので十分審議して貰いたいとあいさつして前大会の約束を果たした。

 次いで顕彰に移り、左記名誉会員の推薦並に感謝状、表彰状が四島会長から記念品料とともにそれぞれ贈呈され、被顕彰者を代表して佐々木究氏(熊本県)が感謝のことばを述べた

 ▼被顕彰者(敬称略)
▽名誉会員 高取治輔(長崎)上野景治(熊本)
▽感謝状(団体) 熊本県医薬品卸業協会
▽感謝状(個人)松前顕義、伊東競、田口広通(以上熊本)前野恵(熊本県薬事務長)
▽表彰状 佐村信一(山口)高倉等(福岡)森本基(佐賀)溝口助作(長崎)土橋ヒデ(鹿児島)古賀忠雄(宮崎)椿方辰、佐々木究吉田末定(以上熊本)

 次に来賓の祝辞に移り、厚生省薬務局長(代木暮企業課長)県知事(代副知事)県議会議長、市長、三師会を代表して県歯科医師会長の祝辞に次いで桜井副会長による武田日薬会長の祝辞代読があり、坂梨副会長から多数の祝電披露があって閉式、休憩ののち第二部会議を開会した。

 まず議長団選挙は司会者一任で山村鹿児島、長嶺宮崎両県薬会長を推し、前年度第36回決定事項処理について桜井日薬副会長並に四島日薬常務理事から詳細な報告があり、特に桜井副会長は報告の中で、「医薬分業達成するには医師が吾々薬剤師を信頼することが第一条件であり、一般大衆にも医療機関としての信頼を得ることが必要である、吾々は現在この点を一番努力しなければならない」と述べた。

 それより各県より提出の議案審議に入り、別記十六議案をそれぞれ提出県から説明、審議の結果、いじれも採尺と決定した。それより左記宣言、決議文の力強い朗読があって、次回開催県を鹿児島県と決定山村鹿児島県薬会長の引受けのあいさつがあって午後三時閉会、引続き同所で九州山口薬学会総会を開会した。

 ◆宣言

日本の薬学は世界に於ける最高の水準に達している事は自他共に認めるところである。吾が国は福祉国家として総ゆる施策の下に、その完成に努力しつつあるが、医療問題の健全なる遂行には医薬分業の完全実施以外根本的解決の方途はない。吾等薬剤師は国家社会の世論に応え今や分業実施の態勢を確立すべき秋である。ここに吾々は科学的英智を培い総力を挙げて大同団結し国家社会の要求に応えよう。
右宣言する。

 ◆決議

一、吾々の修得せる専門の薬学と良識によって国民大衆の健康とその保持に奉仕せん。

一、医薬分業の完全実施は国民大衆の要求するところである。これに応えるため薬剤師本来の義務と権利を行使する。 右決議する。

 九州山口薬学大会 開局(保険)部会

 医薬分業問題の進展に伴い意欲的な活動状況の発表を予想して参加者多数を集めた開局保険部会は大会第二日、二十四日午前九時から市民会館大会議室で開会、部会長下田正氏の開会あいさつの後、ただちに左記研究発表に入ったが、発表時間が短かく詳細な発表が聞かれないものもあり残念であった。

 @一診療所と一保険薬局の医薬分業(医薬協業)の対話と実状について=藤田胖(福岡県)
福岡市の内科小児科医院と一保険薬局が相互の対話から分業に踏み切り、保険薬局は全く販売面では期待出来ない場所で医院の隣家を借りて薬局支店を開設、医院の発行する処方せんを全面的に受け入れ、経済的にも成り立つことを身を以って証明、医師は医師会で、薬局は薬剤師会で互に他の会員の啓蒙をはかっている実状が報告されたもので聴取者に多大の感銘を与えた。

 A別府市の地域薬剤師会の分業推進=益田学(大分県)
人口一二万、小売薬業者数一〇二店という薬局薬店の密集地で、薬局三八、歯科医師五四が隔月に合同講演会を開き研修して分業を推進している実状の報告で、医師会とは三年計画で近く話合いを実施する段階であることも報告された。

 B宮崎県における保険調剤の動向=矢田部政雄(宮崎県)
宮崎県の保険調剤実績は昭和三六年まで全国最下位であったが、歯医会と折衝、協定処方などを設定して以来年々増発、四一年には百倍以上の延びを示したが、四一年九月或るメーカーによって抗生物質が歯科医師会に一括納入されて以来、処方せん発行が激減した、分業阻害の要因は薬価基準と実勢価格の差にあり、多量の添付等が無くならない限り分業は不可能と考えるのでこれの排除こそ緊急事である。

 C私の分業考察=岸村滋雄(山口県)

 D私の保険調剤を生かした薬局経営=合田武司(熊本県)
分業の実現には日薬、県薬の施策も重要であるが、薬剤師個々が毎日店頭で努力することにおいても相当の成果があり、近くの医師との対話が最も重要である、その対話のキッカケには薬品についての正しいアドバイス、新薬の紹介など自らの向上、努力が払われなければならない。

 E私共の保険薬局のビジョン=横田武(長崎県)
一病院(成人病専門病院)と地域内複数薬局(約三〇店)が医療医薬品研究会を開催して互に研修、病院は外来の処方せんを出し、薬局は成人病患者の診療依頼等を行うもので、卸問屋が協力している。

 F処方せん獲得の具体案=坂元昭夫(鹿児島)
医薬分業は「薬剤師の心」によって推進される。保険薬局は受入態勢の第一歩として各種保険の指定を全部受けるべきである。これは全く困難な根気のいる仕事である(担当官の認識が低いため)が、薬剤師全員がこれを実行するならば関係各官庁に対し「医薬分業」をPRする最も有効な方法と云える。

 以上の研究発表を聴取していずれも個々の薬剤師が幾多の困難にもめげず各地区で努力していることがうかがわれた。分業標語の募集と標語の活用など意欲的に実施している。

 次に協議に移り本会の今後の在り方、中央への要望などについて協議検討した結果、本代表者会として左記事項を決定した。

 (1)本会の決定事項
@医薬分業実施推進同盟九州山口代表者会は年三回開催
A開催期日はその都度決定する
B代表者は各県二〜三名とする
C分業推進共同PR費として各県同盟は年一万円を負担する
DPR紙の配布拡充に努力する

 (2)日薬分業同盟に対する要望事項
@医薬分業を最終的に決定づけるものは、社会大衆の意志と思われるので中央において、マスコミ利用による大衆啓蒙の展開を要望する。
A調剤料の改正
B甲表、乙表、薬局における薬治料の一本化と甲表における調剤料の分離
C病院薬局の法制化
D医療金融公庫準則の改正と受入体制の確立のため融資、補助金制度の設定
E生活保護法による調剤報酬請求業務の簡素化
F医薬分業推進と地域受入態勢強化のために薬局の適正配置を図るべく知事権限に依る薬局開設を容易ならしむる如く促進され度い。
G公営調剤センターは都道府県薬営のものを指す事を確保する。
H薬局とその他の医薬品販売業とを明確にするため薬局は必ず「○○薬局」の名称を使用するよう許可の段階に於て指導されたい。

 同盟情報部速報 第19号 昭和44年10月15日 (全文掲載)
日本医薬分業実施推進同盟情報部

一、社保審の動き

 社保審(社会保険審議会)は、九月三〇日と十月八日に、総会を開き、引続き諮問について審議を行なっていますが、九月三〇日の会議において、委員側から厚生省に対し、医療制度並びに健康管理体制について省側の態度の説明が求められ、十月八日、それに対し省側の説明が行なわれました。

 そのうち、医薬分業及び関連事項については、国民医療対策大綱の基本線にそって、次のように配布、文書にもとづき説明されておりますので、ご紹介いたします。

 ◆関連制度について
医薬分業は、薬局の整備診療報酬体系の合理化等の諸措置を基礎として、おおむね五年後には全国的な規模における実施の段階に到達することを目途に比較的分業のための諸条件を整備しやすい地域から逐次段階的に実施の範囲を拡大していくこととしており、さしあたり調剤薬局の実態調査及び薬剤師の調剤技術研修を行なうべく努力している。

 二、制度審の動き

 制度審(社会保障制度審議会)は目下、委員のみの審議が行なわれている段階で、その審議内容はつまびらかにされていませんが、おおむね医療制度について審議が進められている模様であります。制度審では、次回(二七日)から、二回の予定で、医療報道関係の学識経験者(四〜五名)の意見を聴取することがきめられております。

 三、中医協の動き

 中医協(中央社会保険医療協議会)は、前号でお知らせいたしましたが、十月三日審議再開となり、六日九日に審議が行なわれています。現在、前号でお知らせしました支払側委員の見解とこれに対立する診療側委員の意見との調整がはかられ医療費緊急是正問題の解決をはかる段階にいたっております。

 なお、分業に関しては、支払側から「分業を保険医療費支払いの上で推進できるようにする。」ことが主張されていることは、前号にお知らせしたとおりでありますが、調剤料について次のような見解を明らかにしております。
「調剤料は剤数、日数比例制を廃止し、処方料に準じて固定点数とすべきである。(乙表)」

 四、武田会長退院

 かねて入院加療中の武田会長は、その後の経過良好にて十月九日退院されました。

 五、十一月の会合予定

 十一月中に次の関係会合が予定されておりますのでお知らせいたします。
▽十一月二五日(火)会場=東京永田町薬業健保会日薬全体理事会(午前十時〜午後一時)
同盟常任執行委員会(午後一時三〇分〜二時五〇分)
日薬政連正副会長正副幹事長会(午後三時〜四時二〇分)
坂口後援会正副会長会(午後四時三〇分〜五時)

 ▽十一月二六日(水)会場=同
日薬地方連絡協議会(地方会長会)(午前十時〜午後一時)
同盟支部長協議会(午後一時三〇分〜二時五〇分)
政連支部長協議会(午後三時〜四時二〇分)
坂口後援会支部長会(午後四時三〇分〜五時)

 六、同盟京都支部の事業と誤認される報道について

 十月九日付読売新聞朝刊で報道された「大衆薬値上げに"怪文書"‐公取委の指導で二五%‐『デマ』と係員はカンカン」の記事中パンフレットの差し出し人が、「京都市伏見区車町一、医薬分業推進同盟京都支部」となっており、本同盟の京都支部と誤解されるおそれがあります。が、本件については、京都府薬剤師会の村雲会長(本同盟京都支部長)は、全く関知されておりません。また、同盟本部とも全然関係がありません。

 七、注目すべき一つの医薬分業提案紹介

 十月十一日付社会保険旬報(九四七号)に井草憲太郎氏(高崎市、井草病院長)の「健保制度改革への一提案」なる原稿がのせられています。この論文中で、井草氏は医薬分業を中心として注目すべき一連の提案を行なっておられますので御参考までに御紹介します

 私が最も提案したいのは、次のような点である。一つはまず医薬分業をすること。その方法論の一つとして次のようにする。

 まず医師、医療機関は、薬は購入しない。投薬処方にあたっては、官給のレシート(または処方箋)を三枚作る。一部は控え、一部は保険薬局へ、一部は保険課、支払基金へおくる。そして投薬、処方料、薬剤管理保管料を合算して、一日一剤二〇〇円(物価にスライドさせる)として、薬剤等はトンネル式にフリーパスさせる。よって、薬剤の購入価格等によるマージンは一切なくなり、また請求事務は家族本人、国保は別途に処理されることとする。

 二つは、これを拡張させると入院、外来の注射料についてもいえる。入院の場合には、注射料(技術料)、入院患者管理料を含めて一日三〇〇〜五〇〇円(スライドさせる。以下同じ)として、外来分の場合には、再診および注射技術料を含めて二〇〇〜四〇〇円とする。そして注射の種類等の前記の場合のように三枚のレシートにかいて別途請求し、医療機関はその薬剤は購入しないで保管、管理、使用技術等の責任のみ負う。

 三つは、初診料、往診料、一般処置料、手術料等は現行の甲乙二表を改正して少なくとも倍以上にし、たとえば初診料=一、〇〇〇円、往診料=二粁ます毎にこれを倍加する。(漸減法は廃止)処置料は一〇〇円より一、〇〇〇円まで、手術料は一、〇〇〇円より二、〇〇〇円飛びにして、腹部手術A?は二万円(盲腸炎手術程度)以上五、〇〇〇円飛びにする。レントゲン検査およびその他の検査料ももっと簡素化する。そしてこの医療行為を少くとも三〇〇位のクラスに分けて、コンピューターに算入できるようにする。A?…AnB?…BnC?…Cn、D?…Dnという工合にも少しすっきりしたものにする。以下略)」

 九州山口薬学大会 商組代表者会 適配条例の改正について検討

 商組代表者会議は、大会第一日二十三日九時から十二時まで市民会館第七会議室で、翌二十四日午前九時から十二時までは第二会議室において各県から左記代表者が出席して開会した。

 本年度は特に議題を「適配条例の問題点において」にしぼり、同問題を掘り下げて検討するとともに臨席の荒川医薬全商連理事長から▽適配条例の問題▽大衆薬について▽公正競争規約について▽再販問題▽森永乳業の新販売制度についてなど小売薬業界の当面する諸問題について中央情勢並に全商連の今後の考え方などについて約一時間詳細な報告があった。

 ▽出席者氏名
福岡=白木、藤野、大隈
佐賀=木元、島、坂井
長崎=隈
鹿児島=川島、山村
宮崎=古賀
大分=益田
山口=森広、宗岡
熊本=上野、石原、豊田、富永

 会議は上野部会長のあいさつのあと同氏を座長に推し直ちに適配条例問題について協議した。

 最近都市の改造が進むに従い、薬局等の強制立退きによる移転で極端な権利行使が実行されるケースが各地区に起っており、悪用であるとの物的証明が出来ない限り阻止出来ない実状にあるため、条例の適用除外例の一部改正の是否等について検討し、九州山口ブロックとしては左記基本方針に沿い各県それぞれ検討、十二月二日午後一時再度本代表者会を開催することを決めた。

 その他保険調剤確保と適配条例との関連については別個に検討することとし、森永の新販売方式についてはその後同社と本会の約束に違反する事例が見聞されるので、各県の実情を調査して持ちより、次回検討して今後の態度を決定する。

 次に大正製薬問題については、各個人の営業は自由であるが、そのため業界が混乱することは分業推進の面からも避けねばならないため、各県とも正しい情報を流すよう努めることとなった。

 ◆申し合せ事項
薬局等の配置基準を定める条例第二条の五号六号および七号の規定は既存開設者の営業活動を自由にし、また相続および法権力による土地収用の場合の救済を容易ならしめるためのものである。

 しかるに近来この規定がほしいままなる実質的権利の移転に悪用され、条例本来の目的である配置の適正をみだすような実質的新規開設の道を拓く禍根となっていることは、誠に遺憾である。

 よって吾々はこの禍根をとり除き条例本来の目的が貫徹されるために次の二項について速かに条例改正の実現を図る事が急務であると考え、協議の結果、そのような機運を促進し、且つその目的に向って共同歩調をとることを申し合せた。

 @相続または法権力による土地の撤収などの場合実質的に権利の移譲が出来ないような予防的拘束措置を講ずること
 A前項による移転については別個にある程度の距離の制限を行うこと

 福岡県薬業協議会十月例会

 福岡県薬業協議会十月例会は十三日午後一時から県薬会館で開会、各地区情況報告並にめぐみ薬局のダイエー内開設に関連して協議した。

 各地区の情況報告は筑後地区では久留米の日本ゴム生協の再販品の値引きについて、北九州地区は小倉にコクミンが進出、派手に乱売している。筑豊地区はあまり問題はなく、価格も大体守られている、福岡地区はめぐみ薬局のダイエー内移転問題の経緯が報告され、開店後家庭薬等は四掛、三掛半のものもあることが報告された、この問題に関連して来る二十三、二十四両日熊本で開会する薬学大会商組部会では適配条例の第二条第七号(土地の強制収用等による恩典)の悪用を防止するため、これをテーマに協議することとし、めぐみ薬局開設によって過当競争が起らないよう各階で努力することを申合せた。

 挾子

 二十七日の西日本新聞夕刊に、福岡市内の某薬店が秋の売り出し広告にシュガリン(チクロ)を広告したため団地の主婦から市役所内消費者相談コーナーに「無神経すぎる」と苦情が持ち込まれたと報じられていた、最近チクロが有害であると問題になっているが、問題になっていること自体にもいろいろ意見はあると思うし、結論もまだ出ていない(10月27日現在)、販売することもまだ違法ではないが、主婦が云ったようにたしかに無神経であったようだ。残品処理のため意識的に売出しをしたと憶測されても仕方あるまい。 薬業界の姿勢が云々される昨今、一人の無神経から業界全体の批判に発展せぬとも限らないことを考えて貰いたい……