通 史 昭和44年(1969) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和44年(1969) 3月10日号

 思考すべき日医会長の挨拶 日薬通常代議員会

 日本薬剤師会第26回通常代議員会は二月二十五、六の二日に亘り東京永田町の健保会館で開会、医薬分業推進を柱とする四十四年度事業計画並に予算(約一億〇一六八万)を原案通り可決した。

 第一日劈頭、武田会長は『全薬剤師の悲願である医薬分業は四囲の情勢が予想以上の速度で進展しており、武見日医会長も十八日の記者会見で、薬剤師に調剤の主体があることをはっきり認め、場合によっては学術団体として話合いを持つ可能性を示している。この機に受入れ態勢が進まねば吾々の意とする分業には進まぬこともあり得る』と警告するとともに会員の力強い結集と協力を求めた。

 引続き@新年度事業計画及び収支予算案A日薬代議員会議事規定の一部改正B四十五年度総会及び第三回学術大会開催地の決定などについて原案の説明が行われ、これを委員会に付託した。この間、斉藤厚相、武見日医会長、大竹日歯専務理事が来賓としてそれぞれあいさつを行った。

 翌二十六日は予算委、決算委で審議、代議員会に報告して承認、分業確立のための対策を打ちだすことを確認し、これに関連して同盟は情勢に呼応して対内対外的に強い運動を展開することを決めた。 なお審議に先だち鳥取県代議員から要指示医薬品、大衆薬等の規制問題など薬剤師職能に関して重大な問題についてその細部にわたる経過説明を要望する緊急発言があり、政治的な配慮から、非公開で会長から状況報告があってこれを了承した。

 一方全国会長会議では代議員会で承認を得た「医薬分業早期実現に関する請願書」を武田会長ほか各県会長名で衆参両議長にそれぞれ代表者から提出した。 当日の武見日医会長のあいさつは剤界について最も注意すべきもので、その内容次の通り

◆日医武見会長挨拶

 日本医師会を代表しませてご挨拶を申し上げたいと思います。日医日薬両団体は、歴史的な発展の経過から見ましても亦未来に亘って非常に強い連携であって唯の連携ということでなくて、二つが一体にならなければ社会的な機能が完成されないという位の一体でなければならないと信じている者であります。

 この両者の関係をつなぐものは政治ではございません。これは学問である筈であります。私は政治的な運動で両者の関係を新らしい方向にもって行こうとする態度には反対であります。学問の路線で両者がつながらなくては社会的な機能は盛上ってまいりません。この意味におきまして両団体の間で政治的な葛藤を起す様なたくらみは厳に戒めなければならないと私は信ずるものであります。

 今日医薬分業問題の歴史を見ますと、政治の場に於ていくつかのトラブルが出ております。政治によって正しい路線が見出だされたためしはございません。日本の政治の場に於て学問が正しい路線を与えられた歴史はなく、大学の崩壊を見てもお判りであろうと思います。

 私共は日本の政治の知能水準の中で学問を如何にして守り、具体的に如何にして発展させ、如何にして民衆の生活の中に定着させるかということを常に考えております。学術専問団体の提携と良識以外に国民は期待していないと確信いたすものであります。

 私自身が開業以来、分業の実践者といたしまして、にじみ出る様な経験をいくつか持っております。私はこの経験を活かしまして二十一世紀の医療といわれる地域医療の中に体系的にこの方針を組み入れて行くというのが私の考え方であります。

 この意味から申しますと地域医療体系化というものが、日本の場合に非常に必要になってまいります。コミュニティ・ヘルス、或はインダストリアル・ヘルス、或はゼリアトリック・ヘルスという三本の柱をどの様に立てて、その中で関係団体がどの様な活動を展開するかということは非常に重要な問題であります。

 私は自民党との七回、十五時間に亘る医療基本問題調査会に於きまして徹底的にこの問題を話合いました。然し今日、抜本改正の自民党の草案なるものを見ますと、鈴木調査会長の出された草案よりも遥かに後退しまして日本の前途を思いやられるものがあります。少なくとも医師会、薬剤師会は官僚に隷属せず、政党に隷属せず、自己の立場を主張して来たことは、私は国民と共に喜びたいと思います。今後も私共は、ことに私は武田会長の物の考え方、施策の進め方に対しては全面的な賛意を表しているのでありまして今後もこの緊密な路線で、問題を二十一世紀の医療に絞りまして焦点を合せて進んでまいりたいと存じているものであります。

 その証拠には数日前に薬科大学の学長等にお出でいただき、薬剤師会の幹部のご臨席をいただきまして、政府が今度決定しようとする衛生検査技師法に対しまして、重大な修正決定をいたしたわけであります。

 これ迄の薬剤師は臨床検査に対しましては無試験検定の部分がありましたけれども、今後は生理学的な検査については試験をしようという厚生省の考え方であります。私は国家試験万能というものが、如何に弊害があるかということを知っております。それよりも薬科大学がカリキュラムを改正されることによりまして無試験で生理的検査をやれる様にした方がいいじゃないかという提案に対して、薬科大学長は全員ご賛成でございました。

 今度私は、思い切って臨床検査の方々が患者の採血までもご自分でやれるというふうに領域を拡げたいと申しました処が、人体に触れるという問題で、この点は薬剤師には許可しないのだという話しでしたが、私はカリキュラムを少し変えて実施していただくことによってそれが可能であるということを考えておりましたら、大学長各位もそれは可能であるということをおっしゃられました。厚生省も薬剤師免許証を修得してから更に一年間なりそういう勉強をすることは時間のロスであるから、その点は考え直しましょうということで話合いが決まったわけであります。

 こういうふうにいたしまして私共は学問の路線で問題を解決すれば、解決の道は立派につきますし、二十一世紀へ通ずるのでありますが、政治問題になさる方はこの問題をぶちこわして行うとする方に向くのが、日本の政治状態であろうと私は思います。卒直に私は自身の抱懐しております考え方を申述べまして今後の両団体の提携を推進したいと思います。ご挨拶申し上げる機会をお与えいただきまいたことを心からお礼申し上げまして、私のご挨拶を終わります。

画像  同盟速報第10号 (全文転載)

 昭和44年2月20日 日本医薬分業実施 推進同盟速報班

 (1)武見日医会長記者会見で調剤薬局についての考え方発表

 武見日本医師会長は2月18日記者会見をして、調剤薬局について日医の態度を決定したとして後記のような発表をしました。発表されたものには、意味のとりにくい点がございますが、解明次第お伝え申上げます。

 武見日医会長 記者発表要旨

 @地域奉仕の形態として調剤を考えるべきであり、利潤追求をはなれ、地域奉仕という基本観念でなければならない。

 Aそれには個人企業が利益を独占することは好ましくない。医師会と共同で地域に奉仕すべきであり、運営についても医師会と共同でという考えである。

 B医療主体は医師であるが、調剤の主体が薬剤師にあることを認めるのはやぶさかでない。

 C従って営利主義ではなくこの条件に適合した形で地域の薬剤師会が具体的に計画することを希望する。この調剤薬局では物品販売はやってほしくない。この体制を薬剤師がとれない場合は医師会が主体となって薬剤師を雇うことも考えている。

 D薬剤師会は分業を政治問題として解決しようとしているが、この現状には批判的である。政治問題でなく地域医療の中で専門団体同志として話し合うべきである。分業に関する政治的解決の考え方を止めた場合には、将来日薬と日医の代表が話し合うことも考えている。

 E薬剤師団体は新しい考えをもってほしい。武田日薬会長の分業に関する考えは私に近いものである。武田日薬会長の考え方には私は賛成である。

 Fこの態度決定は日薬代議員会の前に日医の考え方を示したものだ。

 (2)日本歯科医師会と分業推進打合せ

 日薬幹部は2月4日、日本歯科医師会幹部と打合せを行ない、分業推進について次のような合意に達しました。

 @日歯・日薬協定処方に関する地区研修会の開催
日歯・日薬協定処方の設定によって、日歯会員の処方せん発行は漸次増加の一途を辿っているが、なおその推進を図るため地域別に、両会員合同の研修会を開催する。この細部に関しては近く都道府県薬宛通知する予定である。

 A日歯・日薬協定処方の手直し、
本年1月1日施行の薬価基準の改正に伴い、日歯・日薬協定処方の手直しを実施する。予定期日は8月頃である。

 九州ブロック学校薬剤師会 日薬の元山学薬部会長臨席

 学校薬剤師九州ブロックは二月二十日一時から、日薬の元山学校薬剤師部会長を迎えて、福岡県薬会館で九州ブロック会を開会した。当日九州ブロックからは、長須日本学薬会副会長(熊本)久保(佐賀)坂井(長崎)後藤(大分)友納(福岡)の各県学薬会長及び地元県副会長の外理事四名が出席した。
先ず長須ブロック長のあいさつに次いで元山部会長から次記報告があった。

 (1)文部省における学校環境衛生に関する指針

 @地方交付税の改正が行われ、学校保健関係では校医等の報酬の引き上げがあった。
 A保健体育審議会に対する文部大臣の諮問に関連して環境衛生検査実施状況の把握について実態調査を行う。
 B学校公害については生徒におよぼす公害が生じつつある。

 (2)学校環境衛生の基準解説学校薬剤師講習会録購入要望。

 (3)本年度事業計画

 ▽日本学校薬剤師総会(4月7日)名古屋市。
 ▽日本薬剤師会学術大会学校薬剤師部会(4月8日)名古屋市。
 ▽全国学校薬剤師講習会(7月か8月の2日間)和歌山県高野山。
 ▽学校環境衛生講習会(文部省主催)日時未定、山形、三重、山口の三ケ所
 ▽全国学校保健研究大会、日本学校薬剤師大会(11月22日〜24日)鹿児島市

 (4)日本学校薬剤師会(日薬学校薬剤師部会)事業計画

 @保健体育審議会に協力し環境衛生検査実施状況の把握のため学校薬剤師実態調査を実施する。
 A研究発表に対する協力

 (5)日本学校薬剤師会会費については四十一年、四十二年、四十三年度分を今年度一括徴収し、四十四年度分は会員一名につき百円徴収し、これは総会等出席代表者の旅費に当て、日薬から学薬部会へ指導費として支給される二百万円を主として事業費に当てる。それより長須熊本県学薬会長から本年十月熊本で開会される九州・山口薬学大会学薬部会運営について各県の意見などが求められて種々検討した。

九州薬事新報 昭和44年(1969) 3月20日号

 代議員会26日開会決定 福岡県薬 理事会並支部連絡協議会

 福岡県薬剤師会は第一五九回理事会並に第一四七回支部連絡協議会を三月十一日県薬会館で開会した。
理事会は午前十一時から、支部連絡協議会は午後一時半から開会、日薬代議員会報告並に県薬代議員会等につき検討、引続き分業推進同盟、薬剤師政治連盟評議員会をも開会した。

 支部連絡協議会は工藤専務理事の司会により先ず四島会長のあいさつに次いで、工藤日薬代議員から

 (1)第26回日薬代議員会出席報告

 ▽二月二十五、六の両日東京において開会、報告事項二件、議案四件をいづれも原案とおり承認可決された。
 ▽医薬品製造に関する(製造承認の一部を都道府県に移譲せよ)動議一件、医薬分業早期実現に関する請願一件、要指示薬に関する決議二件、いづれも原案のとおり採択、承認された。
 ▽質問は分業問題、要指示医薬品に関するものに集中し、分業推進確立について盛り上った。
 ▽武見日医会長の記者会見で発表した分業に関する政治的解決に対する反論について、武田日薬会長から日医並に医師に対する批判や泥試合しないことと解釈する旨発言があった。また医薬分業問題も要指示医薬品問題も、日薬は出来るかぎりの努力をしており、将来の見込みも明るいので信頼して協力願いたいと言明された。
 ▽日薬会費は前年通りで、値上げはしない。
 ▽次期参議院選挙立候補予定者に坂口徳次郎氏が賛成多数で承認された。
等詳細な報告があった。

 (2)第24回代議員会及び総会開催について、
本月二十六日九時半からミタカホールで開会することに決定、当日の付議事項の内容及び業務分担など検討の上決定した。

(3)第2回日本薬剤師会学術大会について、
四月六日〜八日、名古屋市で開会される。明年の日本薬学会年次総会は、札幌市で開かれるが、日薬の学術大会の開催は未定である。また四十六年の薬学会年次総会は福岡で開催することに決定しているが、日薬の学術大会については日薬から何も聞いていない。病薬の態度、研討を願いたい。

 (4)その他の意見

 ▽薬価基準改訂後保険調剤請求のミスが多いので、全保険薬局に「保険調剤の参考」(県薬、作成)を配布する。
 ▽衛生検査技師免許申請、麻薬小売免許申請は相当申請されているが、更に誘導されたい。
 ▽地区三師会等で懇談の場合、調剤センターについては日薬、県薬とも公営薬局論は否定しており、既存の薬局利用が基本線であるので十分注意願いたい。
 ▽調剤事故に対する保障について対策を研究して貰いたいとの要望については、既に中央で研究中である。
 ▽会員に対する周知事項の改善について、中央でも研究しているが本会としても改善するよう検討する。
 ▽薬局でできる医薬品製造品目中にサルファ剤を追加してもらいたい希望意見については、中央に要望する。以上で支部連絡会議を終り、引続き政治連盟評議員会を開会した。
 薬剤師政治連盟 評議員会及び医薬分業実施推進同盟総会開催
 四島会長からそれぞれの会の現況が報告され、且つ将来に対する意見発表があって異議なく承認。次に政治連盟の四十四年度歳入歳出予算並びに支部別割当は提案通り承認決定した。なお次期衆議院議員立候補について今日話題になっているのは次の諸氏である。
 ▽平越幸一(和歌山)▽岩下かね(三重)▽須原昭二(愛知)▽中井信夫▽若林勝市(以上大阪)

 福岡大学薬学部 入試合格者発表 本年十周年を迎う

 福岡大学薬学部の44年度の入試合格者は三月五日発表された。受験者は薬学科一、一〇三名、製薬化学料(男子のみ)五〇八名で昨年より多少減少したが、年々その素質の向上が目立っている。

 なお、三月一日から製薬工場、研究室、講堂を含む鉄筋三階建(将来四階建)の建築が始まり、今秋九月の後学期から使用出来るようになる。又旧館の内部改造、施設の充実、最新な機器類の導入が図られ、薬剤師の養成にとどまらず研究面に於ても一層の飛躍が期待される。

 福岡大学は本年創立35周年記念式を今秋挙行するが、薬学部も創設10周年に当るので同じ頃、内祝の準備が計画されている。合格者氏名本紙次号掲載

 同盟速報第11号 昭和44年3月5日

 日本医薬分業実施推進同盟速報班

 第26回日薬代議員会、地方連絡協議会、同盟執行委員会等が開かれ分業に大きく推進

 去る二月二十五日から二十七日にわたり、標記諸会議が開催され、当面の重要課題につき審議が行なわれました。とくに医薬分業については、斉藤厚生大臣、武見日本医師会長、大竹日本歯科医師会専務理事が来会、本問題にふれた挨拶があり、また地方会長連名をもって、国会に請願運動を行なうこととなったことなど、大きく前進がはかられる体制となりました。

 会議中の重要事項ならびに来賓挨拶については、御出席の方は御承知のとおりでありますが、次のとおり改めて御通知申し上げます。

一、衆参両院議長に提出した請願書写(別添)
二、斉藤厚生大臣挨拶(〃)
三、武見日本医師会会長挨拶(〃)
四、大竹日本歯科医師会専務理事挨拶(〃)

昭和四十四年二月二十七日
衆議院議長 石井光次郎殿
参議院議長 重宗雄三殿
請願者 東京都中央区銀座六ノ八ノ七 社団法人日本薬剤師会会長 武田孝三郎ほか四六名
紹介議員 橋本龍太郎 田中茂穂

 (1)医薬分業早期 実現に関する 請願書趣旨

 医療保険制度抜本改正にあたり、医薬分業を早期に実現するため、関係諸制度の整備をはかられたく、ここに請願いたします。

 理由

 医療保険制度の抜本改正について、自由民主党医療基本問題調査会において鋭意審議が進められているとことであります。本改正に関し、同調査会において、医薬分業の推進が取り上げられ、検討されているのであります。

 国民医療の根本をなす医療制度の改善、近代化は、医療保険の赤字対策の点からも刻下の急務とされております。しかし、医療制度の改善の中核を占める医薬分業の確立は、このような赤字対策のみに止らず、国民医療の改善、向上のため喫緊かつ肝要なことであります。このことは、文明諸外国がすべて、円滑に実施いたしている医薬分業の長い実績に照し、断言いたしてはばからないところであります。

 医療担当者が、それぞれ責任を分担し、職能を発揮することが、国民医療の近代化のため必要であります。我が国においては、薬剤師職能のみが、医療担当者たる職能のうち、最高学府ならびに国家の試験による資格づけにかかわらず、本来の職能を発揮し得ない跛行状態のまま放置されております。

 我々薬剤師は、医薬分業実施のため薬局の受入体制の整備を着々と実施いたし、いささかも渋滞を起さない措置をとることを、行政当局に対し、お約束申し上げています。薬剤師職能が、真に国民の健康、福祉の増進に役立つために、医薬分業は早期に実現されなければなりません。

 このような趣旨をお汲み取りいただき、医療保険制度の抜本改正にあたり、医薬分業を実施するよう関係諸制度の整備をおはかりいただきたく請願いたします。

 (2)斉藤厚生大臣挨拶

 只今、ご紹介にあずかりました私、斉藤でございます。昨年の暮れ図らずも厚生大臣を拝命いたし、皆様方とともどもに国民の保健医療、体位の向上という非常に大事な仕事に従事させていただくことに相成りました。私も非常に光栄に思っている次第でございます。

 全国の薬剤師会の代議員会に出席させていただき、全国を代表される皆様方にお目にかかるのはこれが初めてでございます。さきほども申しましたように、今日の日本の産業経済の発展に伴ういままでに予測をしなかったような、いろいろな障害も、われわれ国民健康の上にもたらされているわけでございます。

 皆様方のそういった意味におけるご職責も非常に重くなってきていると思いまするし、同時にいろいろな日本の産業形体の変化にかんがみまして、皆様方のお仕事の上にもいろいろな変化、影響が及んでいることと存ずるわけです。

 薬剤師関係の事柄につきましては、私から申し上げるよりも、皆様の方がいろいろな見地からまた実際の体験の上から、いろいろと貴重なご意見をおもちだろうと思うわけで、皆様方のご意見を伺い皆様とともどもに日本の国民保健全般の上に寄与したいと思います。多年の問題である医薬分業の問題は皆様方も非常にご関心事であろうと思います。承りますと、昨年度からとくに医薬分業の推進同盟という名前で、医薬分業をいかにして進めて行くかということについての体制を整えられているそうで、まことに結構と存じます。

 いま非常にやかましい医療保険の抜本改正の問題に当面しておりますが、私どもこの機会に医師会、歯科医師会の方々のご協力も得て、ぜひそういう方向に進めたいと考えておるわけであります。いよいよ医薬分業は、もうどうしても行なわねばならない段階を迎えつつあると思う次第でございます。医薬分業をやって行く上において、この上とも皆様方の受入態勢をつくっていただくかにつきましても、いろいろご意見を伺わせていただくと同時に、その体制づくりに遺憾ないようおねがいしたいと思います。

 薬事関係の行政、仕事もますます重くなってくるのでありますが、皆様方から忌憚のないご意見を伺わせていただきたい。そのほうが私は結構と思っております。

 最近、要指示薬の問題で相当いろいろと波紋をおこしているようにも聞いております。要指示薬制度については今日の制度のままでいいかどうかという点については検討しなければならない問題があると思いますが、しかしこの根本精神は、やはり国民の保健という面から必要なものではなかろうかと考えますので、この制度の根幹は守られるように、この上ともご配慮ねがいたいと思います。

 いままでこれに対する取締まりがほとんどなされていなかったというような実情から、突如急激にやられても困るという皆様方のご意見もよくわかりました。そこらは実情に即してやってまいりたいと思いますが、この制度の維持できますようにおねがいしたいと思うのであります。

 全国の薬剤師会長さんはじめ、役員の方々とも、今後昵懇にねがい、皆様方のご意見が日本の国政に十分反映できますよう、私もつとめてまいりたいということを申し上げまして極めて簡単でございますが、ごあいさつといたす次第でございます。

 (3)武見日本医師会長挨拶

 前記 3月10日号

 (4)大竹日本歯科医師会 専務理事挨拶

 日本歯科医師会の竹中会長が止むをえぬ所要のため専務理事の私、会長に代わり、本日の代議員会のお喜びの言葉を一言申し上げます。

 年の意義ある、また画期的な式典をもたれまして、以後七十五年の経験と抱負の上に立っての、この有意義な代議員会をもたれたものと確信いたします。

 只今、医療界においては、多くの共通した問題をもっておりますが、とりわけ医薬分業をどう進めて行くかという問題がクローズアップされ、また各界に話題を提供しておるようであります。

 私どもは二十一世紀の繁栄する文化、高度の経済発展、社会の大きな構造改革の中において、当然のこととして、医薬分業は一日も早く実質的に推進されねばならないと思います。かつ、併せてこの医薬分業その専門領域にあられる薬剤師の皆様が主体制をもって進められるべきであり、私ども友好団体においては、この医薬分業がうまくできますよう、あらゆる協力をする立場にあるものと確信しております。

 従って、過般、ちょうど三、四日前厚生大臣から電話で、日本歯科医師会に対して国会答弁の関係上、日本歯科医師会は医薬分業について基本的にどう考えるか回答をもらいたいということでしたので、直ちに私どもは、会議を開くことなく、従来の既定の線に従い、医薬分業の主体はもとより、薬剤師会が進めるべきであり、われわれは協力すべき立場にある。そして、これを完ぺきな姿にも本歯科歯師会は基本的にとるものであるとお答えいたしました。

 私どもが協力の立場にたち、皆様が主体性をもって行っていただき、かつ、行なわれたものが客観的にみても、この方法がいちばんよかったというものを実現させていただくことが、皆様の使命であります。日本歯科医師会といたしましても基本的態度を公表した限り、そのようにぜひともとり進め方をおねがいしたいのであります。

 また私どもにおいても、つとに協定処方の取きめをしておりました。この協定処方についても、先般さらにこれを積極化するために、諸般の検討を双方で行ないたいということで皆様方の会の役員の方々とお話し合いいたし、日本歯科医師会としても全面的にこれを了として、近く詳細打合わせ、協定処方の拡大を積極的に図って行くこととしております。

 日薬におかれては、従来の歯科との友好関係を堅持され、時にふれ、折りにふれて、その友好をより一層あたためていただいておるわけですので、この協定処方をめぐる中においても、中央は中央、地方は地方で、また地方の各域においても歯科医師会と薬剤師会、そして地方の医師会さんをもまじえ、地方三志会の渾然の姿というものを確立したいと考えております。このような基本的な方針をもって近く双方で話合いを進めたいと思うのであります。

 また、只今中央医療協議会においては、適正化などについて話し合いが行なわれておりますが、皆様の調剤行為にあっても、歯科医師の治療行為においても、もっと技術が尊重されますよう、両会は一層友好と相互理解を高め、私どもにも格段のご協力をいただき進めてまいりたいと思います。つねに日本歯科医師会は友好団体の最たるものであるということを念願におかれ、討議下さるよう心からおねがいして、本日の会が成果を得られますよう期待します。

九州薬事新報 昭和44年(1969) 3月30日号

 スムースに総会とともに 福岡県薬 第24回通常代議員会

 社団法人福岡県薬剤師会は三月二十六日十時、福岡市綱場町三鷹ホールで第24回通常代議員会を開き、議長選挙及び四十四年度事業計画並に予算案を執行部原案通り決定した。

 工藤専務理事司会し堀岡副会長の開会あいさつに始り、本年は正副議長改選の年に当るので先ず恒例により司会者指名の仮議長に高倉等氏が選ばれ次いで、別に選考委員によって議長に須原勇助氏(再選)副議長に神谷武信氏(新)を決定、新議長のあいさつに次いで代議員七七名中五一名出席で代議員会の成立を宣し、物故会員に黙?を捧げて会長演述に移った。

 会長は現在全薬剤師が取り組んでいる医薬分業について「四囲の情勢は好転しているとはいえ、関連法規の改正等困難な局面も予測される」と述べ、本年が山場になろうと会員の自覚をうながした。それより来賓、福岡県知事の祝辞を佐藤薬務課長が代読、武田日薬会長、森田県会議長などの祝電披露があって議事に入った

 ▼報告事項

 (1)報告第一号 昭和四三年度会務並に事業報告

 工藤専務理事、岡野副会長ほか担当理事からそれぞれ詳細な報告があったが、特に会の活動強化の一環として佐々木理事より、過去二ケ年に亘り実施した臨床薬理学講座を引続き開講したいが、現在の薬剤師が技術を売ることに欠けていると指摘される昨今、医師側の期待に応えるためにもこの講座が必要であり、その必要性を強調して詳細に述べて会員の奮起をうながした。

 次に助成団体である県病院薬剤会、県学校薬剤師会、県女子薬剤師会、県薬剤師健康保険組合の各会務の概況報告があり、種々質問があって異議なく承認。

 (2)報告第二号 第25回臨時及び第26回日本薬剤師会代議員会出席報告
福井日薬代議員から詳細な報告があり、二、三建設的な質問がありて承認。

 (3)報告第三号 昭和四三年度歳入歳出中間報告
鶴原会計理事から詳細な説明があって異議なく承認。

 ▼決議事項

 (1)議案第一号 昭和四二年度歳入歳出決算認定の件
鶴原理事説明、斉田監事からは監査報告があって、歳入合計一〇、七七九、五八四円、歳出合計九、二二五、九七四円、次年度へ繰越金一、五五三、六一〇円の決算を承認したが、質問は各種補助金に集中した。

 (2)議案第二号 昭和四四年度事業計画決定の件
は長野副会長から、日薬の諸施策に即応し、はげしく流動する剤界を安定、薬剤師の職能向上と地位の安定を期し医薬分業問題を中心として最重要なものから実行に移すと説明され、質問続出後可決決定した。

 それより議案第三号、四号の会費決定とこれに伴う予算は何れも原案通り決定した。会費は同盟会費を拠出しているため前年通り据置き、C会費(医薬品製造業者および特志者)のみ前年一万五千円を二万円と増額決定した。

 会議は終始意見の陳述、及び質疑応答が活発に行われたが、その主なものは

 ▽分業を阻害すると思われる一部の販売姿勢、一部メーカーの対歯医への薬品納入、保険薬局と他薬局、薬店との区別の不明確等について遺憾に思うが方策は?
○全く同感であるが法律での規制は困難、差当り調剤拒否をなくし、保険薬局標識をかかげ、開局者の倫理観を是正することが根本。

 ▽本年度の事業中に開局者開業医に対するD1に関するテキストの作成要望
○テキスト作成は薬理学講習会をも含め考慮、差当り薬理学講座、薬学講習会等のテキストの利用をすすめたい。

 ▽県薬会館の建設を考えて欲しい
○分業、参議院選挙資金を要するので今は困難、分業後に考えたい。

 ▽会館建設にグループ保険を拡大利用したら
○若い層の加入が少く目標がたたない、多数の加入があれば困難でない。

 総会

 引続き同所で百余名出席して総会が開会され、代議員会決定事項報告並に四二年度決算の認定、次いで支部表彰が行われ直方、浮羽、八女、糸島、福岡の五支部代表にそれぞれ表彰状と記念品料が会長より手交され、久留米支部には第36回九州山口薬学大会地元としての協力に対し感謝状が贈呈され、引続き同所において和かな懇親の宴が催された。

 同盟速報第12号(全文転載)昭和44年3月15日

 日本医薬分業実施推進同盟速報班

 (1)鈴木調査会(自民党医療基本問題調査会)の抜本試案

 同封別添のものは週刊社会保障誌が、いずれかから入手し、同誌上に掲載したものであります。全文をご送付申し上げますので、ご熟読の上、特に三頁、四頁に記述されています医薬分業並に薬剤師職能に関する項目についてご研究いただきたくお願い申し上げます。

 【註】本速報12号に添付された「鈴木調査会抜本試案」3頁4頁記述の医薬分業並に薬剤師職能に関する項目中重要事項を摘記すれば次の通り(記者)

 第三 医療制度の整備近代化

 (一)医療関係者の養成確保
ア、医師、歯科医師(略)
イ、薬剤師
医薬分業の実施にそなえ薬剤師の計画的養成及び研修事業の実施を図る。
ウ、看護婦、保健婦、助産婦(略)

 (二)医療関係者の処遇
医療関係者は、安んじて国民の医療に専念できるよう、その専門的技能、勤務形態等にふさわしい処遇を受ける。医師、歯科医師、薬剤師については、西欧における水準等を考慮して技術料について適正な評価が行われなければならない。

 (三)医療機関(略)

 (四)へき地医療(略)

 (五)薬事制度
ア、医薬分業の推進
医薬分業は、医療関係者の緊密なる連携協力のもとに、おおむね五年後には全国的規模において実施されることを目途とし、一定の地域、特定の医療機関から逐次実施するとともに、必要に応じ、公営の調剤備蓄センターを設け、これを推進するものとする。これとあわせて、診療報酬の技術料及び調剤料の抜本的再評価を行なう。なお、薬剤師の調剤技術に関する研修を行なう。

 イ、新医薬品の開発と安全性の確保
@資本及び技術導入の自由化による開放経済体制への移行に対処して、製薬業界の基盤を強化し、国際競争力を付与するため、国は独創的医薬品の研究開発を助成するとともに新規開発医薬品についての先発企業保護するため、医薬品のための特許制度を確立する等の措置を講ずるほか、研究開発に要した諸経費を考慮する。
A医薬品の安全性を確保し、優良な医薬品を国民に提供するため、医薬品の製造(輸入)承認審査をいっそう厳正にするための措置を講じ、その際いわゆる大衆保健薬のあり方についても検討を加える。
なお、いわゆる要指示薬制度について再検討を行なう。

 (2)佐藤総理、斉藤厚相が分業推進について答弁

 二月四日参院予算委員会に於て大原亨議員(社会党)が抜本改正に関する質問をいたしました処、医薬分業については佐藤総理、斉藤厚生大臣より概ね次の様な答弁がありましたのでお知らせします。

 質問(大原議員) 医療保険の抜本改正で何が第一の問題か

 答弁(斉藤厚相) 国民全体が適正医療を受け、負担ができるだけ少く、そして国民の健康管理制度とマッチしてゆくことが根本である。医療報酬制度を抜本的に改正し、医師の技術を生かす様にしなければならない。又医薬分業も多年要請されており、薬剤師関係団体で準備を進めてもらって、抜本改正の際に、同時に分業体勢に入れる様にしたい。抜本改正には、医薬分業を少くとも基本にして考えていかなければならない。

 質問(大原議員) 総医療費の42%が薬剤費で、外国の20%に比べて多い。医療制度が医薬品メーカーのために行なわれている。これを抜本改正するには、医師、歯科医師、薬剤師の技術と責任を尊重し、思い切った評価をなし、薬を売れば売る程もうかる売薬医療を克服しなければならない。

 答弁(佐藤総理) 医者にかかると、ずい分沢山薬をくれる。全部が飲めるわけでもない。その程度のものなら売薬で済む様な気もする。何のためにお医者さんを呼ぶか、こうゆう処に今問題がある様だ。そうゆうことで患者も勿論のこと、同時に又国家の負担も重くなる。これでは相なるまい。やはり国民ひとしく、病人としては全ての者が自分らの信頼するお医者さんにかかり得る様な制度を設けることが必要だろう。技術を売るのか、薬を売るのかという様なことで、色々論議されている。厚生大臣が詳しく答弁した通りである。

 (3)民社党は党大会で医薬分業推進を政策として決定

 民社党は去る二月十三日から十五日の定期党大会に於て一九六九年度政策を決定しております。その第三に掲げた「高度福祉の実現」の一環として「年金と医療保険の拡充」をとりあげその中で、医療保険における国民の過重負担の排除と公費医療制度の充実のための一項として「医薬分業を推進し診療報酬と薬物対価に分離し、技術については医師技能を正当に評価する」ことを決定しております。

 (4)公明党も党大会で医薬分業実施を政策として決定

 公明党は去る一月二十一日の第7回党大会に於て、福祉経済政策の一環として「大衆福祉実現を目指して」社会保障の充実をはかることを決定しております。その中で「医療制度の改善」をとりあげ、その冒頭に「@医薬分業を実施可能な地区(六大都市及び地方過密都市)より薬剤センター(仮称)を設置し、逐次、実施に移していく。更に漸次地方にも設置していく」ことを議決しております。なお、「この薬剤センター」については、本会の意図が十分に汲み入れられる様同党と連絡いたしておりますので念のため申添えます。