通 史 昭和43年(1969) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和44年(1969) 02月10日号

 斉藤厚相へ日薬が 分業推進の要望書提出 附全国各県衛生部長会議

 日本薬剤師会は一月二十二日開催の全体理事会並に翌二十三日開会の日本医薬分業実施推進同盟常任執行委員会の決定により日薬会長名を以て厚生大臣に左記分業推進についての要望書を一月二十五日提出した。

 医薬分業推進 について

 医療保険制度抜本改正に関する厚生省事務局試案の発表以来、本問題に関し、自由民主党医療基本問題調査会に於て鋭意審議が進められている処であります。国民医療の根本をなす医療制度の改善、近代化は刻下の急務であります。医療担当者がそれぞれ責任を分担し職能を発揮することが、国民医療の近代化のため必要とされております。

 然かる処、該調査会の検討項目として過般発表されましたものの一項目に、医薬分業があげられているのであります。該調査会の結論はまだ公表される運びとなっていませんが、その結論たる抜本改正原案には必ず医薬分業の推進が取り上げられているものと確信いたしているところであります。このような状況に御配慮を賜り、薬剤師職能にとって百年の懸案であります医薬分業を是非とも実現していただくよう要望いたします。

 医薬制度改善の中核を占める医薬分業の確立は、国民医療の改善、向上のため喫緊且つ肝要な事であります。この実現の前提要件として、必要な保険点数の是正を実施されることを要望いたします。勿論、医薬分業実施のための薬局の受入体制の整備は着々と実施いたし、いささかも渋滞を起さない措置をお約束申し上げます。

 医療担当者たる職能の試験による最高学府並に国家の試験による資格づけにかかわらず、薬剤師職能のみが本来の職能を発揮し得ない点を、とくに強調申上げます。

 大臣は、かねて、医薬分業につき御理解ある御意向をお示しになっております。この際、医療問題に関しては、多少の問題点があるやに思われますが、これを絶大の勇気を以て克服され、是非とも医薬分業実現を手はじめとした国民福祉百年の計樹立のため一層の御勇断を以て解決をおはかりいただきたく切に要望いたす次第であります。

 なお、前記要望書提出後、一月二十九日開催の厚生省に於ける『全国衛生主管部局長会議』に於て斉藤厚生大臣は医薬分業を推進するための実施体制の整備を図る意向を次のように説示した。

 薬務行政については、最近の情勢に鑑がみて今後更に医薬品の安全性対策の充実強化、製造承認制度の再検討、監視行政の強化、献血事業の推進等を行うと共に、懸案である医薬分業を推進するための実施体制の整備を図ってまいる所存であります。

 又、坂本薬務局長は医薬分業について次のように説示した。医薬分業については、ことさら申上げるまでもなく、昨年から全国的に各階層、各団体に於て積極的な分業推進の気運が出て来た。我々念願の分業に、厚生省としても、腹を決めて推進策をたてたい。現在、医療保険の抜本改正が問題になっているが、この中で医薬分業を大きく取り上げようということになっている。

 将しく好機到来である。この時期をとらえて、分業推進の諸施策と共に、啓蒙などに積極的に都道府県に於て推進されたい。この問題は簡単ではないが、全国的に盛り上っている時期に念願を達したい。関係団体に積極的に働きかけると共に、国民に分業の趣旨を徹底されたい。自民党の作業と併行して、厚生省としても原案を作っている。各都道府県に於ても自主的に乗りだしてほしい。

 日薬が衛生検査技師法改正につき 衆参両院へ請願書を

 厚生省は衛生検査技師法を改正し検査技師の業務制限を規定し、薬剤師を業務制限外にしようとしている。改正法案を今国会に提出することになっているが、日本薬剤師会としては薬剤師を業務制限外にすることは絶対反対であり一月十三日衆参両議院議長に対し請願書を提出した。その要旨は次の通りである。

 厚生省は衛生検査技師法の改正を図り今国会に上程することを目途に作業を進めているが、その草案の中で衛生検査業務を行うことができるものは医師、歯科医師、衛生検査技師となっており、従来認められていた薬剤師が全く除外されていると聞く。現在全国の衛生検査技師三万名のうち一万名を占める薬剤師は衛生検査の精密度の向上、検査方法の新規開発や簡易化、検査用試薬の調整、改良並に管理など衛生検査業務に従事している。

 これら薬剤師でなければできない問題に関して格段の貢献をしている薬剤師を除外することは、臨床検査上由々しき問題を惹起するおそれがある。全国薬科大学では薬学教育において衛生検査に必要な学科は総て採入れて教育しており、卒業者の多くを極めて有能な衛生検査技師として社会に送り出している全国薬科大学長会において、これに強く反対していることは当然である。

 かかるとき、現に医師の信頼に応えて検査業務の指導的実務に従事している薬剤師を除外する根拠は全く見当らないものであり、日本薬剤師会でもこれには絶対に反対する。

九州薬事新報 昭和44年(1969) 02月20日号

 時局重大なとき、会員の啓蒙と奮起を九州・四国・中国の三ブロック 各県薬剤師会々長会議

 九州・四国・中国各県薬剤師会会長会議は二月十三日一時から松山市萬翠荘において開催され、鳥取、島根、広島、山口、愛媛、徳島、香川、高知、佐賀、鹿児島、福岡の各県薬会長が出席(岡山、大分、宮崎、熊本、長崎五県は濃霧で連絡船欠航のため欠席)した。

 会議は先ず愛媛県日薬代議員の開会あいさつ、次いで斉藤同県薬会長は、私共薬剤師は現在最も大きな難問題をかかえ、全国的に分業同盟も結成され、更に厚相、薬務局長も分業に対して腰を据えて取組む旨の発言をしている。一方、日医は44年度の事業計画の中で医、薬の分離は行うが、医師会が中心となり調剤センターを、との案を日医代議員会に提案する旨の情報もある。又今国会答弁の中で佐藤総理は大衆薬のあり方に言及している。このような時にこの三ブロック会議が開催されることは誠に重要な意義があると思うとあいさつした。

 次いで久保田同県薬務課長は、私は薬務行政に当っている者として、現在程薬剤師職能にとってむつかしい局面に立ったことはないと思っているが、然し諸般の情勢は薬剤師職能にとり千載一遇の好機到来とも云える。本日のこの会議が薬剤師職能向上のため真摯な会議であり、その意義の確立と成功を祈って止まない。とあいさつ。

 次いで稗香川県薬会長を座長に推し、座長は「保険医療の抜本改正案は西村調査会長から根本政調会長の手もとに現在移されている、その内容は薬剤師に不利なものではないが政治情勢や政治力の関係から非常に微妙な情勢にあり、吾々としては油断なく最大の力の結集が必要な時だと考えられる」と述べ、引続き現状報告と討議に移った。

 現状報告は日薬の同盟速報第八号にも記載されている全国衛生主管部局長会議において厚生大臣は、医薬分業推進についての説示で(本紙前号記事参照)『懸案である医薬分業を推進するための実施体制の整備を図る』と述べ、また、同会議で坂元薬務局長も「我々念願の分業に、厚生省としても腹を決めて推進策をたて、医療保険の抜本改正の中で医薬分業を大きく取り上げようということになっている」と述べ、各県において分業推進の諸施策と共に啓蒙など積極的に推進するよう説示しているが、これ等を補足説明して日薬常務理事四島福岡県薬会長から次記本会開催の経緯と現況報告が行われた。

 分業問題やその他の重要問題について、中央でどのように動いているか、どのような対策が採られているかを広く伝えたいが、その報告や説明の中で文書で表わせない性質のもの或は秘密を要することもあり、又三ブロックとして如何に取り組んで行くか等の問題、又この会議を通して会員の末端までどのようにして情報、趣旨、目的などの浸透を図るか、更に全国代議員会並に会長会議が二月下旬に開会されるが、これに対して如何にのぞむか等検討するため本会開催の運びとなった。

 抜本改正案は、順調にその作業が進み、昨年十月中旬には発表されて、全国会に提案される予定であったが、内閣改造やその他の事情で提案の運びに至らず今日に及んでいる。武田日薬会長と西村調査会長とは緊密な連絡をとりつつ今日に至っているが、抜本改正案の作案者は斉藤邦吉代議士であって、その内容は医師会の意見が強く反映しているようにみられるが、厚生省関係者の意見も相当這入っていることは否めない事実のようである。その抜本改正案の大きな問題点は、医療保険制度の改編の中に医薬分業が如何に織込まれるかが吾々に最も関係深いことであるが、大略次の通りであろう。

 @分業は五年で完成する。
 A必要のある場合は調剤センターを作ることがある。
 B薬事制度の検討(大衆薬や要指示薬等の検討)
 C医療保険公営論があったが、これは反対が多く立消えとなるであろう。然し公営の調剤センターを作る案は残されていると思われる。これに対し日薬としては各都道府県薬剤師会会営薬局等は公営薬局であると解釈し、その方針を押し進める考えである。
 D更に国県立病院等の薬局を保険調剤薬局にすればこれも公営と考えられる。
 E然しこの公営薬局の場合、医師の監督下に置くということになれば、薬剤師の調剤権に重大な関係があるので薬剤師の主権を絶対確保しなければならない。
 F諸般の情況から判断するに自民党調査会と厚生省とは改正案に関しては表裏一体の情勢にあると考えられ、厚相も保険、薬務局長も分業について、今までに見なかった程の強い発言をしている(一月二十九日全国衛生主管部局長会議における厚相、局長談参照)  Gこのため厚生省は二月二十一日頃、薬務主管課長会議を開き、分業推進のための地方行政の在り方につき、具体的指示をなすであろうと思われる。
 H抜本改正案の国会提出は健康特例法の期限が八月で切れるので、現在の政治情勢とにらみ合せて(抜本改正のためには十数の関係法を改正せねばならない)どのように進展するか極めて微妙な情勢下にある。

 以上の中央情勢報告後、討議や解説が行われいずれも了承したが、その主な問題点は次の通りであった。
 @会員の中には現況把握に不充分な点が見られるので、日薬及び各県会長は、末端浸透の方策を考え、実施しなければならない。日薬で分業速報を全会員に流す案もあるが、経費の面と内容により文書に出来ないものもあるので、微妙な点については、各県薬会長が積極的その浸透を図る以外に方法はない。
 A今年の代議員会及び同盟執行委員会において、会費徴収の仕組みが変更になり、各県への歩戻し法を削除、各県割当制度とする案が出される模様である。
 B同盟予算の使途は大体、三分の一は政治対策費、三分の一は広報費、三分の一は内部対策費に使用される。
 C同盟会費は順調に送金されつつあるが、集金されたものはその都度中央に出来るだけ速かに送達されることが必要である。
 D分業に対する基本線の確立は最も大切なことであるが、中央において対国会、対政府、対大衆等への運動を徹底するために各分野に所要の専門委員及び係役員を配置する作業が進められている。
 E東京都における青年薬剤師会の行動も要指示薬問題から分業問題の本筋の運動展開に入って行くことになろう。

 なお、その他
 ▽一般大衆への啓蒙宣伝の重要性
 ▽その具体的推進策▽分業が吾々の要望する形で達成されるかどうか
 ▽公営問題をどう取り扱うか▽現在の一般開局薬剤師を分業路線に如何にしてスムースに乗せるか
 ▽調剤センターを現存の個人薬局を中心に考え、その受入れ態勢をどうするか▽それらの工作をどう進めるか
 ▽医師会営薬局の不合理性を大衆及び医師、薬剤師にどう理解させるか
 ▽薬事問題議員懇談会を作って対処する案があるが、高野前会長の政治力の活用と組織組立てをどうするか
 ▽メーカーの分業に対する消極性をどうするか▽薬価基準を実勢価格に併せ低下せしめる反面、医師の技術料其の他を値上げする方策の実行
 ▽大衆啓蒙の段階で発生するであろう医師会への影響は或る程度覚悟が必要であること
 ▽一般ジャーナリズムの活用等々、巾広く、深く、根強く運動を展開すべきであり、又千三百万人の健保会員を味方にする等も考える必要がある。

 なお、病院薬剤師の中には公営薬局論に賛成する会員があり、医師主体の公営センターに雇われても良いとの考えもあるが、これは医・薬分離ではあるも日薬が理論とする医業、薬業の分離ではないからこの点慎重に考えるべき問題である。

 又緊急是正案の中で調剤技術料を四〇円と六〇円に値上げする案を中医協で進めるが、これは最終的に吾々の望む調剤技術料ではないが、暫定的段階としてしばらく我慢しなければならないと考える。

 日薬代議員会及び会長会議に際し、国会陳情を行い、更に次期段階では請願書提出、大衆の署名運動等も展開される予定であるが、これに関連して大衆啓蒙運動の一案として山村鹿児島県薬会長から提出された左記文案を代議員会及び会長会議に意見として提案することを了承した。

 要指示薬問題については全国的に種々の意見が出されているが、具体的には薬剤師の良識を以って対処すべきであり、薬剤師自ら販売、伝票別保存、出納簿作成、別陳列等複雑、不必要な問題点は、現在日薬も是正に努力中であり、品目の洗直しについては厚生省と折衝を続け、厚生省も基本的に賛成している。

 次に薬剤師政治連盟は分業同盟と内部構成員は同一であるので分業同盟がある間は一般選挙問題のみ活動する。その他薬業経済問題についても▽組織の一本化▽再販問題▽景防法運用基準案などについて懇談、終始熱心な討議が行われ、時局柄非常に有意義な会議であった。

 左記 分業実現のための 私の一提言

 分業問題は、政治的努力も必要であるが、何よりも大事なことは国民大衆の支持理解を得ることが第一だと考える。国民大衆が分業を要求し、日本以外の先進国は全部分業制度になっているのに日本だけが何故分業でないのか、又なぜ分業に出来ないのか、分業とは何か、そして分業にすればどの様な利点があるのかを国民に知ってもらうことが非常に大切なことである。極めてこの運動方策は迂遠な方法の様であるが最も効果のある最強の方策ではないか。そしてその一番手近で徹底した方法として私は次のように提案する。

 先ず、日薬で分業理論、分業の利点、分業を阻害している日本の国情、諸外国の分業のあり方等を骨子とした小学四年生程度の文章で、国民誰でも理解し得る様な文章を作ってもらってそれを薬剤師会誌に発表してもらう。

 私共は、その文章を各薬局十万枚位を自費で印刷して店頭に来る客のすべてに包紙の中に美しくきれいに折込んで渡して行く。一年、二年、三年とこの運動を続ける。一人一人の薬剤師が「何故分業にしないのか」という国民の声を作り上げる運動を続ける。

 「大衆の支持」「大衆の声」「大衆の考え」には、旧体勢で権力的な医師会といえども対抗はできないだろう。又、これが浸潤徹底すれば政治家達も動かざるを得ないであろう。

 印刷費を会員負担にする案を日薬で印刷して配送することにすればより徹底させることができると思うが兎も角、分業は自ら国民のために斗い取らねばならないし、自分自ら築き上げねばならないのである。他力本願ではいけないし、取組み方は深く、強く、且地道でなければならない。政治家や医師会やその他の団体の鼻息をうかがったり、それにふりまわされたりする必要はないと考えるのである。

 分業は国民のためだと本当に信ずるならば、堂々と論陣を張り、実現のための具体的方策をドンドン進めるべきであると考えるのである。愛国の至情は戦争時のみ存在するものではないのである。そして、分業は、医師との真の協業の姿であり、人類愛に基盤を置くものであり、医師と薬剤師の米ビツ争いではないのである。全国会員のご賛同を得たい。

九州薬事新報 昭和44年(1969) 02月28日号

 県当局より麻薬に就て要望 福岡県薬 理事会並支部連絡協議会

 福岡県薬剤師会は理事会並に支部連絡協議会を二月十九日県薬会館で開会した。午前十一時から理事会を、午後は特に県庁より佐藤薬務課長並に大塚、緒方の両係長及び古賀県会議員が出席して支部連絡協議会が開会された。

 支部連絡協議会は工藤専務理事の司会で先ず四島会長のあいさつ後、佐藤薬務会長から@薬局は麻薬小売業の免許をとることA47方の製造許可を受け活用することB管理薬剤師(特に雇傭者)の管理姿勢を正すことなどについて要望があり、細部については大塚麻薬係長並に緒方生産指導係長から指導説明があった。これに対し工藤専務理事から県当局に対して薬事指導に際しての要望があった。

 次に古賀県議から業界安定のため、適配条例や育成指導費など県政の現況についての解説があり、薬剤師会内に公認薬剤師職業紹介所設置の必要性などの意見が述べられた。

 それより議事に入り先ず会長から中央情勢報告として
 @抜本改正案は近く西村調査会より鈴木調査会案に若干の修正を加えて発表され、これを厚生省が検討して国会に上程されることになる。
 A健保法臨時特例法の延期に関する法案が上程される。
 B抜本改正案中に分業問題がとり上げられることは間違いない。
 C日薬は健保連を通じ分業に関する大衆PRを行っている。
 D2月15日中医協が再開され医療費の改訂審議に入った。
 E日薬では処方せん発行を容易にするため診療技術料の改訂を要請している。
 F要指示薬取締りについては厚生省は全国の薬務主管課長会議を2月21日招集した際弾力ある取締りが指示される予定である。
 G大衆薬問題はその定義と範囲、広告等をめぐり本年業界の関心事となりつつある。
 H薬政連は分業同盟が存続する間は一般選挙にしぼって活動する。
 I九州四国中国会長会の記録及び中央から発送される同盟速報は今後全部九州薬事新報を活用、掲載することになった。

 以上の報告があり、引続き
▽委員会活動について
@社保、薬局合同委員会(1月21日)
AD1委員会(2月12日)
B公衆衛生委員会(2月13日)
につきそれぞれ担当理事から報告(別掲)

 ▽臨床薬理学講座についてはアンケートの結果が報告され、これを参考に検討した結果、続行すべきであると決定、なお細部については担当者が検討することとなった。

 ▽日薬代議員会その他
@3月24日=全体理事会、薬政連総務・評議員会
A同25〜26日=代議員会
B同27日=分業推進同盟、執行委員会、総会、地方連絡協議会

 ▽県薬代議員会開催
三月二十六日(三鷹ホール)開会予定。

 ▽福岡県公衆衛生、成人病予防大会(2月28日於農協会館)において知事賞を馬場正守氏、協会長賞を清長美濃輔氏が受賞する。薬剤師の多数出席を要請。

 ▽薬剤師政治連盟、分業推進同盟負担金は中央が急いでいるので早急に納入されたい。

 ▽グループ保険は大蔵省の指導により一月で一応契約が終り二月から新たになる。四人の死亡者があり二百万支払い、七十万程払い戻しがあるので近く委員会を開き検討の上、支部を通じて払い戻す。
加入者が千名位あると運営も楽になるので、支部において勧誘されたい。

 その他社保関連で中村理事から保険薬局の標識については現在一二六店が取りつけたのみであるので早急に申込むよう要望があった。又藤田社保委員長から福岡市の調剤請求が激減した実情の説明があり(本紙別掲)各支部とも注意するよう要請があった。そのほか福井理事からは日薬代議員会に対する要望などの発言があって五時連絡協議会を終了した。

 同盟速報第9号(全文転載)

昭和44年2月14日
日本医薬分業実施
推進同盟速報班
 (1)医薬分業に関する要望書を中医協会に提出
1月25日斉藤厚生大臣に対し、分業推進に関する要望書提出(速報第7号にてお知らせしました)に引続き2月12日付をもって分業の前提要件である診察料、調剤料等の点数改正を要望する趣旨の要望書を、日薬会長名で中医協東畑会長に提出しました。全文は次の通りであります。

要望書
昭和44年2月12日
中央社会保険医療協議会
会長 東畑精一殿
社団法人日本薬剤師会
会長 武田孝三郎

画像  医薬分業推進について

 医療保険制度抜本改正については、現下自由民主党医療基本問題調査会に於て医薬分業の実施が大きく取り上げられております。中央社会保険医療協議会に於て医薬分業が課題となっております。

 国民医療の根本をなす医療制度の改善、近代化は刻下の急務であります。医療担当者がそれぞれ責任を分担し、職能を発揮することが国民医療の近代化のため必要とされております。このような情勢にもとづき薬剤師職能にとって百年の懸案であります医薬分業を、是非とも実現していただくよう本会の総力をあげて努力いたしております。

 医薬分業実現のためにはその前提要件として所要の保険点数の是正が必要とされております。貴会長におかれましてはこの際是非とも次のことの実現をおはかりいただくよう要望いたします。

 @医師、歯科医師の技術を適正に評価する。殊に初診料、再診料及び処方せん料を改訂する。
 A薬剤師の調剤技術料を適正に評価する。甲表、乙表、保険薬局間の差を是正均一化する。基本調剤料、調剤技術料及び薬品試験料を設定する。

 (2)衆議院予算委員会で和田議員医薬分業について質問

 2月13日衆院予算委員会に於て民社党和田耕作議員は医療抜本対策法案の未提出について、斉藤厚生大臣に質問したが、その中で医薬分業についてその推進をはかる旨の応酬がありました。質問答弁の要約は次の通りであります。

 質=和田議員 医療保険制度の抜本改正を行なわず健保特例法の二年間延長に踏切ろうとしている。厚生大臣の見解を聞きたい。

 答=斉藤厚生大臣 抜本改正については、できるだけ早く結論を出し、国会審議をお願いしたいと思うが、内容が広範囲に及ぶため難航している。然し一般大衆の健康保持とも深い関係があるので、この機会を失せず最もよい制度を樹立するよう頑張りたい。この抜本対策については自民党で検討を進めているが、厚生省に於ても一昨年提示した試案以外にも多角的に検討しており、今国会の終り頃には基本案を示したい。

 質=和田議員 それは法案の形で提出するのか。

 答=斉藤厚生大臣 できるだけそうしたいと思うが法案の形では難しい。

 質=和田議員 政府でやる気があれば、できないことはない。基本構想を提出するというようなことではいつになるかわからない。政治責任をどのように感じているか。

 答=斉藤厚生大臣 責任は重いが、ことがことだけに時間を要し誠に申訳ないと思っている。

 質=和田議員 抜本策樹立は天下の声である。又抜本策の柱についての論点もはっきりしている。各種健康保険の統合、薬剤費の抑制、それに関連して医薬分業の実施、そのため医師の経済が成立たない場合の診療点数の是正、又医療体系の整備等の柱の頭だけでも出すよう考慮すべきではないか。

 答=斉藤厚生大臣 抜本改正には多くのいろいろの問題を含んでいる。医薬分業は以前からの問題であるが、薬業関係の中に於ても分業に備える気運が急速に高まって来た。現在薬業界で分業が円滑に受入れられる体制の整備をすすめている。厚生省でもそれを助長し指導している。抜本策と同時に実施できる体制を作りつつある。又診療報酬の適正化については、現在中医協に対し緊急是正と共に内容の改善を検討するよう諮問している。

 質=和田議員 分業については日本医師会も原則的には賛成しているし、既に十余年前に法的に実施されているのだから政府がやろうとすれば、できることである。推進を要望する。

 (3)園田前厚生大臣医薬分業について薬局当事者を激励

 園田前厚生大臣(現自民党国会対策委員長)は、1月24日、某メーカーの会合において挨拶し、医薬分業については大要次のように述べ、薬局当事者を激励されました。

 『分業も近づいているが決して手放しで薬局の望んでいる分業ができるわけではない。皆さん方は、自分たちに理想の分業はどういうものか一番知っておられることと思う。その実現のために、私も協力を致したいが、皆さん方も努力してほしい』

 (4)健康保険組合連合会が医薬分業チラシを作成配布健康保険組合連合会は、今般別紙添付のような、医薬分業推進のチラシを作成、全国健保組合を通じて会員に配布しました。

 『売薬医療』をやめて 医薬分業を断行しよう 健康保険組合連合会

 皆さんはこんな経験がないだろうか。

 カゼのようなちょっとした病気でお医者にかかったとき、まず注射、そしてセキ止め、下熱剤、はては抗生物質の類まで、どっさりと薬を頂戴して帰る……

 どっさり薬をもらえば、どれか一つぐらいは効くだろうと安心する反面、今は、保険証を持参しても、薬代には患者の一部負担がつくから、いくらかかるのだろうと、案外ビクビクしている人もいるかもしれない。日本の医療は薬に片寄っているといわれる。外国ではよほど重い病気でなければ注射をしてくれないし、きちんと診断が固まってからでなければ薬の処方箋を出してくれないといわれる。そこには、薬をあくまでも補助とみる診断本位の医療が行われている。ところが日本の医療は、皆さんが経験しているようにまるで薬の洪水の中で行われているようなものだ。疲れたといっては注射、調子が悪いといっては薬である。

 なぜ日本では、こういう薬に片寄った歪んだ医療が行なわれているのだろうか。私たちの頭に、注射をしてもらったり薬を出してもらわないと、お医者に診てもらったような気がしない。こんな考えが深くしみこんでいることが一つ。

 それから、薬を多く出せばそれだけお医者がもうかる仕組みになっている今の医療制度にも大きな原因がある。これを私たちは売薬医療と呼んでいる。文明の進んだ国のなかで、これほど薬に片寄った医療が行われているのは、日本だけだといってよいだろう。欧米諸国では、原則としてお医者は病気の診断、治療にあたり、薬の投与は薬局薬剤師がするものと、キチンと分けられている。

 では、現在のような売薬医療を診断本位の医療になおしていくにはどうしたらよいか。そのためにはまず、お医者の技術料を上げて、薬の利ザヤをあてにしなくてもすむようにしなければならない。そしてそれと同時に、医(診断、治療)と薬を分離し、薬の投与は薬局・薬剤師にまかせて、お医者にはもっぱら診断・治療に専念してもらうようにする。

 私たち健康保険組合が、いま問題になっている健康保険制度の抜本改正の中に、医薬分業をぜひ盛り込んでほしいと要望しているのは、日本の医療を今のような売薬医療から診断本位の医療に脱皮させたいと願っているからである。医薬分業は日本の医療を向上させよう。