通 史 昭和43年(1968) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和43年(1968) 8月10日号

 福岡県薬(中央情勢報告) 理事会並支部連絡協議会

 福岡県薬剤師会は第一五〇回理事会並第一五一回支部連絡協議会を七月二十六日十一時から県薬会館で開会支部連絡協議会は午後一時から、工藤専務理事司会して左記により開会した。

 (1)中央情勢報告
 四島会長から、日薬は分業については強制、協調、暫定的など各角度から慎重に検討しており、又一物二名称問題、武見発言の反響、厚生省の考え方などについても詳細な報告があった。
 @勤務薬剤師の給与改訂
 去る六月十一日日薬会長は厚生大臣、自治大臣、人事院総裁に対して要望書を提出、七月十二日には厚生大臣より人事院総裁に要望書を提出した。日薬は、今回通らなくとも達成するまで要望は続ける覚悟である
 A要指示医薬品の取扱いについて
 主婦連の調査とその動向について説明があった。就ては要指示薬の洗い直しをせよとの声もあるが、厚生省は分業と関連して、これに対処すると思われる。東京都薬はこの問題に関して会員及び医、歯会に対しても要望書を交付し、これに付随して薬事制度に関する大要次のような意見書を日薬に提出している。
 イ、薬局の登録更新制をやめよ
 ロ、業務日誌を廃止せよ
 ハ、要指示医薬品を処方せんで調剤したときの譲渡帳簿記入をやめよ
 ニ、薬局の許可を受けた者は毒物、劇物販売業の登録を省略せよ
 ホ、署名捺印(買受書)を署名のみとせよ
 それ等について会長から詳細な説明があった。

 (2)社保業務について
 心配した満岡落選による歯・薬協調の後退は見られない。二月以降八回にわたり開会された歯・薬合同研修会について中村理事は、出席率は歯科医師は会員の50%以上に対し薬剤師は50%以下で残念であったが、一応布石は出来たので今後は各支部毎に努力すること、又このような会には保険薬剤師自身が出席するよう要望した。成作中であった分業PR薬袋は完成したので千枚八五〇円で希望者に分けることになった。

 (3)薬学大会準備について
 工藤専務から準備進行状況報告があった。
 大会協力費は八月中に納入すること、八月二日編集委員会を開きプログラムは八月中に印刷の予定、大会時の本県の表彰関係候補者については、理事会で検討した結果、表彰三名、感謝状三団体及び個人三名、名誉会員三名のすいせん者を内定した。

 ▽計量協会費
 四十三年度会費は一人当り三百円(従来二百円)に改め八月中に納入のこと

 ▽臨床薬理学講座について
 今日迄十回二十一講座を終了、あと一回を予定しているが、最近参加人員が減少したので十一回を以って一応終了したいと佐々木担当理事から発言があったが、協議の結果、ユニークな事業であるので、この際構想を新たにして継続することに決定した。今後各支部においても聴講を奨励すべきであるとの要請があった。

 ▽福岡県の調剤請求書の返戻は枚数にして二・九%、保険薬局数では三分の一が返戻を受けている(他県平均はコンマ以下である)各支部とも充分注意されたい、これに関連した実務研修会開催については福岡支部をテストケースとして直に実施を計画することとなった。

画像  調剤センターその他に就て 薬剤師を批判 武見日医会長記者会談

 七月二十日NHKのニュースは、厚生省の分業に対する考えを発表、二十四日には厚生大臣が記者会見して、医薬分業は既定の方針として推進することを明らかにし、これについて医師会がどう出るか注目されていたが、日本医師会は三十日理事会を開会、引続き武見会長は記者会見して次のような発言をした。薬剤師会に関係の深い事項の概要は左記のとおりである。(▽印が武見会長の発言)

 ▼医薬品の取扱い及び分業に関するもの

 ▽厚生省より未だ文書による回答はない。当局は分業に対しての熱意がないものと思う。現実の問題として調剤センターを早急に医師会の手で作る事に今日の理事会できめた。

 高野会長時代より調剤センターの設置を強く望んでいたが水野調剤薬局一軒のみであり調剤に対する地域的な熱意はうけとれない。薬剤師会のいう備蓄センターは我々は問題としない。備蓄センターは問屋を利用すればよいのである。調剤センターは技術と経済を公開する者である。医療問題議員懇談会での薬剤師会の代表二名は全く誠意なく分業に対する熱意なしと認めて、調剤センターの設置を理事会で決定した。

 薬剤師の道義の高揚を強く求める。分業は業を分けるだけでなく、責任を分ける事である。生命に対する責任を分ける事である。薬剤師会は分業態勢をいい、責任を分けるとは云っていない。医師会長として非常に不安を感じている。医師会が地域の調剤センターを作るのも止むを得ないと考える。

 ▼大衆薬の定義について

 ▽赤チンは大衆薬でいい、保健薬と大衆薬とは別と考える。学問の中で分れていないものが分けられている。保健薬は大衆薬とは認めない。厚生省の考えている要処方薬の概念は認めない。医師が処方に書くものはすべて医薬品である。

 ▼薬品の広告

 ▽日刊紙にのったのが全部大衆薬というのは承認できない。記事にしても専門的と大衆的のものと出ている。医薬品のみにそれを認めないのはおかしい。製薬連の出方を注目している。要指示薬の概念は抹消する。すべて処方せん薬とすべきである。

 調剤センターは医師会単位で出来る限りやる。すぐにでも着手する。医師会は分業に熱意をもってやっている。調剤センターは臨床検査センターより普及度は早いと思う。薬剤師会は反省も前進もなく現状に満足しているようだ。

 発売を許可されている大衆薬についても医師会として長期使用、適量使用して害あるものは勧告をする。薬務行政の混乱をこれ以上存置させない。

 質問=治療薬を広告した場合、購買欲を助長しないか
 ▽薬屋さんが道義によって売らなければ助長されない。だからモラルの高揚を望んでいる。

 質問=薬剤師会で熱心な県はどうするか
 ▽協力態勢をもっている所は協力する。日薬では武田会長と幹部は遊離している。熱意をもって分業にあたっているのは武田会長のみである。会員はぬるま湯につかっており、よっぽどもうかっているんだなと思われる。危機感というか、切迫感は全くみられない。

 質問=大衆薬とは何か
 ▽大衆薬とは薬理学が認めたものをいう。

 質問=全国的に調剤センターの完備はいつ頃か
 ▽日薬の出方を待ってはいますがね。

 ▼鈴木調査会について

 ▽社会保険、医療保険の話し合いで医療保障ではない、社会保険の段階で話しており医療保障でどうするという処までいってない。鈴木調査会は厚生省原案を否定しており、役人と離れた。自民党としてやってる熱意を認める。現在の保険の理解について意見の相違はない。速記録は後日公開する。学術専門団体と政党が話し合い、官僚政党から自民党として脱脚した。調査会は大きな処では意見を一致させよう。小さい点は問題にしないと了解している。健保50年の垢を落すことを調査会で行なう事にしている。皆には予測出来ない様な調査会の姿で、これが本当の姿だと思う。党も官僚追従をすて、選挙後官僚依存の姿をなくしている。短波の医学放送は28日で五千回を数えた民間のものでこの種のもののレコードであろう、台湾では再放送している。


画像  『医薬分業は五年で確立』これは何を意味するか NHKニュースで報道

 去る七月二十日午後九時半からNHK総合テレビ全国ニュースで「医薬分業は五年で確立」というタイトルのもとに報道があり、又その翌朝午前六時のNHKラジオ全国ニュースでも亦同様な事が報道されたが、剤界としては特に注目すべき報道であった。その内容は次の通りである。

 厚生省は所謂医薬分業制度を向う五年の内に確立するなど、薬の取扱いについての基本的な考方を近く明らかにする方針です。厚生省は乱れている薬の取扱いを正すため、去年九月に一連の基本方針を示しましたが、日本医師会などの反対によって、この一部は実施が見送られたままになっています。

 更に日本医師会はこれに関連して先月の初め薬務行政の基本問題について厚生省を批判した要望書を提出するなど、この処、薬の問題をめぐる論議が関係者の間で活発になっています。このため厚生省ではこれを機会に改めて薬の問題に亘る基本的な考え方をまとめることになり、出来れば今週中にもこの考え方を明らかにする方針です。この中で厚生省は先ず薬の取扱いを正しくするための根本的な問題として、向う五年間をめどに、所謂医薬分業を確立したいとしています。

 医薬分業は患者を診断した医師が治療薬の処方せんを出し、これによって薬局の薬剤師が調剤するという処方と調剤をそれぞれの専門にはっきり分けたしくみで、吾国でも、一応法律の上では昭和三十一年から実施されています。然し実際には医師が治療薬を処方せんなしで売るなど、事実上野放しの状態になっているため厚生省では先ずこれを最も基本問題としてとりあげ、出来る地域から実施して五年後にはこの制度を確立するという方針を示したものです。

 次に、医師が処方し使い方を指示する所謂治療薬と処方なしで一般に売られる大衆薬の区分をはっきりさせる方針で、この内治療薬については去年の基本方針通り一切の一般広告を禁止する外、この名前を、原則として化学名又は学術名に統一することも検討しています。

 一方大衆薬については、例えば、疲れや、肩こりに効くなど常識的な効能をもち、家庭で使っても害がないような保健剤であるという、一応の範囲を決め例えば、神経痛に効くという様に医師の指示が必要な病名をはっきり示すことに大衆薬の範囲を超えるものとして厳しく規制する考えです。

 又、既にある薬の成分を一部だけ改めて新らしい薬を造る、所謂配合剤についても、薬の乱造乱売につながるものとして規制していく方針です。そして厚生省としては、こうした方針に基いて、これ迄に造られた大衆薬は五年程度の見当で計画し直し、出来るだけ整備する一方新らしく造られる大衆薬については効能や使い方などを安全で分り易いものにし、家庭で使っても心配のない様な薬にする様指導していくことにしています。この様な厚生省の方針は今後製薬業界の間で活発な論議をよぶものとみられますが、中でもこれ迄厚生省を厳しく批判して来た日本医師会の出方が注目されます。



九州薬事新報 昭和43年(1968) 8月20日号

 医薬品とともに粉ミルクも 再販を自民党へ陳情 小売三団体

 去月二十三日自民党本部で同党再販問題と区別小委及び組織委同席のもとに小売薬業会代表(全商連=荒川理事長、沖副理事長、立木専務、隈理事、東薬連=筒井理事長、三浦副理事長、全薬協=事務局長兵庫県薬商組理事長)並に化粧品小売業界が再販について意見を述べた際、薬業界が簡単に趣旨を陳情して文書(後記陳情書)提出した。

 なお、陳情書は同二十三日厚生省日刊紙記者クラブに配布し、一方薬業記者クラブとは記者会見を行なって発表したものであり、陳情の際の再販存続の要請については、隈氏が代表意見をのべ、四つの理由を挙げて現状維持が消費者の利益である旨を強調し、質疑応答を行ったが、その要旨は次の通りである。

 (自民)くすりの消費者への利益還元が正しく行なわれていないという批判について……製薬企業の賃金ベースが高すぎはしないか、ストライキがないではないか、また株主配当が多すぎるのではないか、くすりの株主の高額所得者がめだっているではないか、小売業界はこれをどう思うか。

 (隈)賃金や配当について特に製薬企業がズバ抜けてよいということはない、一部の現象がめだつだけで全般的に特別にいいことはないと思う。消費者還元の実証は消費者価格の状況の推移で明らかだと思う。すなわち昭和30年の一般指数一〇〇、くすり同一〇〇とすれば昭和41年では一般指数一五五、くすり八二で、くすりは名目一八%、実質四五%の値下げだ。

 (自民)くすりの開発費は五年で大体償却できる筈と思う、償却したあとは原価が安くなるのだからその分は消費者にも還元すべきだが、そういう還元が行なわれていないのではないのか?

 (隈)くすりの開発費の償却後、これを消費者に還元せよという論理は正当だと思うが、薬業界ではその償却が過当競争の医家向けにのみ行なわれ、大衆薬市場には行なわれていない。遺憾なことだと思っている。

 (自民)あなたはくすりの乱売は大型店、スーパーへのメーカー、卸の差別対価が禍根であるといわれた。そのような差別対価のあること自体が現実における再販制度の崩壊をイミするのではないか

 (隈)差別対価は再販品の場合は裏ましなどもそうひどくないのが実態だ、くすりの事業部門調査では再販品の比重は昭和42年末で八一一億円、パーセントで二五・九である、差別対価のひどい現象は残りの七四・一の非再販部門ではなはだしい。そこで激烈な価格競争が現実に行なわれ、小売は疲弊しつつある。再販品を維持するのは差別対価をはびこらせないためにも必要だ。再販になれば差別対価はチェックしやすくまた行なわれにくくなる。

 陳情書

 「育児用乳製品(粉ミルク)の価格安定に関する意見とともに」

 粉ミルクは主として薬局薬店で取扱い、消費者である母親に対し必要な育児保健上の助言を添えつつ、薬剤師薬種商がこれを販売するのが建て前です。乳児にとって粉ミルクは主食糧であり、その栄養価値は一般の主食糧である米よりもさらに重要です。従って乳児用粉ミルクは全国到る処の販売店に広くかつ均等に備蓄され、つねに消費者の需要に応じ得るような態勢がとられなくてはなりません。

 しかるに近来、粉ミルクを顧客誘引のためのオトリ商品に仕立て、メーカー指示価格を大巾に割って乱売する商法が流行しつつあります。もともと粉ミルクの売買差益は標準一〇パーセント前後ですが、右のような乱売のため一般の薬局薬店はその零細なマージンをすら犠牲にして原価あるいは出血価格で売らねばならないような状況に追いこまれつつあります。

 このために乱売地域の薬局薬店では粉ミルクの取扱いを忌避する傾向すら生じています。マージンの極度に薄い、あるいはほとんど零にちかい粉ミルクを売ることは、税の査定に非常な不利益をうけ、薬局薬店の経営を苦しいものにする可能性がつよいからです。

 粉ミルク乱売の原因は、おおよそ次の二つに帰せられると思います。その一つはメーカーの販売政策の不当性であり、もう一つは一部乱売小売店の販売姿勢の問題です。

 メーカーについては
 (1)需要の計測を誤った過剰生産
 (2)過剰生産処分のための不当な景品(旅行)付販売政策などの強行
 (3)大量販売店に対する過剰優遇の差別対価政策
 が乱売誘発のポイントとして挙げられます。

 乱売小売店については
 (1)商標品のオトリ廉売による常套的顧客誘引政策
 (2)巧妙で極端なマージン配分政策による顧客欺まんの商法
 (3)一般あるいは零細小売店の利益収奪を目的とする弱肉強食政策の強行
 が指摘されると思います。

 以上乱売の原因はおおよそつきとめられてはいますが、これを適正に解決し、粉ミルクの乱売を終息させることは現実的には決して容易なことではありません。また一時的に乱売を沈静さえることは可能であるとしても、メーカーや乱売小売店の姿勢を根本的に正し得るとは考えられず、再び第二、第三の乱売が続発していつまでも絶えることがないことを憂慮されます。

 このようにして粉ミルクがオトリ商品となり終り、相当数の小売店で乱売されることが常態となるならば(その可能性は非常につよい)多くの薬局薬店等で粉ミルクの取扱いを忌避する傾向がつよまり、一般多数の消費者に対して大きな不利益や迷惑をかけるような事態が起り得ると考えられます。

 スーパーマーケットや大量販売店で粉ミルクが安売りされることは一見ただちに消費者の利益になるように思われますが、これはメーカー(あるいは卸)が極端で不当な差別優遇対価政策を行ない或いはメーカー自らが乱売していることが原因であり、このようなメーカーの不公正な取引方法は独占禁止法の運用によってすみやかに排除される必要があります。

 不当な差別対価政策さえなければ薬局薬店は多少のマージン薄(一〇パーセント程度)はしのび、大量販売店との或る程度不利な条件競争にも堪えてゆくことができるのです。そのような粉ミルク購入消費の環境をつくってやることが、消費者国民のために最も便益になり、かつ弊害がすくないものと信ぜられます。

 このような最も望ましい粉ミルク購入消費の環境をつくるためには、独占禁止法第二十四条の二に規定されてある再販制度を粉ミルクに活用することが、最善の方法であると考えられます。粉ミルクは右の法規定の条件に適合する商品であり、日常性をもちかつメーカー間で品質改良の競争が行なわれています。

 ですから粉ミルクを再販商品に指定することに独占禁止法上の疑義はあり得ません。しかし現在粉ミルクメーカーが行なっている指示価格制度は、市場の実勢から見て決して適正であるとは考えられません。この際粉ミルクの消費者価格をしさいに検討し、すくなくとも現在のメーカー指示価格よりも引きさげさせ、その価格をもって再販維持契約を認めるならば、消費者全体にとって大きな利益ともなり、また物価の引きさげに相当の効果をうむものと期待されます。

 右の実情及びわれわれの考察を十分慎重に検討され、なるべくすみやかに粉ミルクの再販制度が実施され、消費者国民の便益及び薬局薬店の職種的機能の保持が併せ得られるような環境づくりに御尽力賜わりますよう切に懇請申し上げる次第です。どうかなるべく早く粉ミルクを再販商品に指定されるような機運をつくって下さい。右陳情いたします。昭和四十三年七月二十三日

 武見発言に対し態度決定 福岡市薬部会長会

 福岡市薬剤師会は八月一日一時半から県薬会館で部会長会を開会、前日(7月31日)開会の日薬緊急理事会に出席した四島県薬会長から、その内容の報告があり、先の県薬支部連絡協議会報告は波多江会長から行われて協議に入った。

 ▽今年の「薬と健康展」は十月十六〜八の三日間、昨年同様県貿易会館で開催するので近く準備委員会を開催する。

 ▽日薬制定保険薬局標識については現在四三名の申込みがあり、前回の部会長会で要望があった標識使用に関する道路占用料金の件については市道路管理課と目下料金の減免について交渉中である旨報告があった。

 ▽中央情勢報告(四島県薬会長)

 医療に関する医薬分業は今では殆んど常識になっている。その中で表向きではないが、反対の気運にあり、立場にあるのが医師会とメーカー(卸も含め)であろう(消費の増大を願っているから)。

 分業については厚生省は五年を目標に日薬は三年で年度毎の計画を建てている、日薬としては小委員会であらゆる角度から研究をすすめているが、いよいよ厚生省まかせでなく吾々が政治的にも一丸とならねばならない段階が来た。

 七月二十日NHKニュースで厚生省の考え方を発表(本紙前号掲載)二十四日には厚生大臣も記者会見で、抜本改正、武見会長の要望などにつき考えを明らかにし、分業は規定の方針通り遂行すると発表した。これにつき医師会は三十日理事会開会後、記者会見、厚生省、薬剤師会に挑戦的とも見られる発言を行った(本紙前号掲載)。

 これについての見方、受取方はいろいろあろうが、医療の面に於ける独裁がうかがえる。その目的は、分業は単に技術の分離に終らせようとの医療独占であると考えておくべきである。いずれ論議され、一戦を交える時が来て最後には政治的解決になろうが、そのため日薬は八月二十七日臨時代議員会を招集する。今こそ吾々が起つべき秋と考える。

 又本県薬剤界においては、武見会長の今回の発言の機を逸せず、対外的には積極的に末端開業医に働きかけ、処方せんさえ出れば何時でも受入れ出来ることを啓蒙して今回の発言をそのキッカケにし、対内的には受入態勢の整備を急ぐよう一般会員の指導をおねがいする。又支部は各自今後の三師会でこの面の推進を一層強力にはかられたい。との要望であった。

九州薬事新報 昭和43年(1968) 8月30日号

 中央問題と九州・山口薬学大会
 福岡県薬緊急理事会と九州・山口各県代表者会

 高野前日薬会長剤界時局憂慮

 福岡県薬剤師会は第一五一回緊急理会並に九州山口薬剤師会代表者会を八月十七日午後一時から県薬会館に於て協議検討する内容が同一事項であるので合同で開会した。代表者は宮崎佐賀を除き各県から出席、理事会は殆んど全員が出席した開会先ず四島会長は、緊迫してきた中央情勢報告並に第36回九州山口薬学大会準備のため合同会議を開会した旨のあいさつ後、直ちに左記議事に入った。

 一、中央情勢報告

 (1)分業推進対策について

 (2)日薬臨時代議員会招集、四島会長から約一時間にわたって説明、次いで▽武見発言の処方権問題▽一物二名称問題▽医療問題議員懇談会▽自民党の鈴木調査会▽医師会の調剤センター問題などについて詳細な報告があり、爾来日薬は対内的には三年計画で倫理規定と受入整備をすすめ、消極的ではあったが今後は、今日迄極秘で計画していた事項を公表することになり、これに反対するものがあれば止むなく対決となろう。具体的には二十七日の日薬代議員会で検討されると思うが、吾々としては今回のチャンスで分業を勝ちとることが出来ねば未来永劫に出来ないと思う。

 (3)日薬D・E委員会
 同委の委員である福岡副会長から本年第一回委員会(八月十二日)の報告があった。 同委は「日薬医薬品安全性情報委員会」と名称を変更し、@第二回学術大会(於名古屋)A副作用調査実施の二点を中心に協議したがAについては全国を八ブロックに(宮城、東京、神奈川、愛知、新潟、京都、大阪、福岡)に分け協力薬局を選び開局者よりの副作用情報を収集することになり、次第に全薬局に及ぼすことになる。福岡県の協力薬局選定はD1委等で検討したい。この問題は今後分業と関連して大衆の支持を得るためにも積極的な推進を望む。

 (4)薬学講習会については日薬の基本線が決定して検討することになると工藤専務から協力を要望。

 二、薬学大会準備については
 @プログラム及び大会誌
 A資金、広告
 B会場準備、アルバイトの確保
 Cスローガン決定
 D表彰者の選定、その他についてそれぞれ担当者からの説明があった。

 当日は分業問題について質問、要望などが盛んに出され、特に高野会長時代、武見日医会長との間に相互了承の処方内容への批判と処方調剤への疑惑不信との交換禁止の約束を日医側より一方的に破棄されたことについて強硬な意見も発言された。

 なお、日薬は最近の諸情勢を時局重大とみて、八月二十七日には臨時代議員会を開会して今後の問題を検討することになっているが、福岡県薬ではこれに先きだち当日の緊急理事会並に九州山口薬剤師会代表者会議を開会したわけで、中央情勢並に時局緊急対策に関して一層の認識を深めたものである。

 又左記文書は、鹿児島に帰郷された高野前会長が剤界時局を憂れい、鹿児島県薬代表の黒岩副会長に託して当日の代表者会議に提出したものである。会としてはその厚意を感謝、味読し、直にコピーして出席者一同に配布した。全文次の通り。

 一、武見発言は日薬を無視してなされた、薬務行政に関することであり、日薬を無視して日医会長が発言することは由々しいことであって、今後に悪習慣を残す。且つ三師会協調の精神を破ることになる。

 二、武見発言の内容は、メーカー、販売、調剤について了解しがたき点があり、日薬、メーカー何れからも武見氏に訊したり、反論を発表したりしないことは、是認したと見られる惧れがある。

 三、医師会が薬剤師を雇って調剤センターを作ることは阻止できないが、再考を促す接衝をなすべきである。薬剤師会が日医の要請を容れて調剤センターを設けることは、分業の本質に反する。センター設置は、日医の薬局に対する拭うべからざる不信感から出ている。日薬がこれに応ずることはその不信感を裏書きすることになり、二万余の薬局を調剤機関とすることを否定することになる。処方せん交付の誘い水になるというようなことで、安易に考えるべきではない。

 四、処方権問題は、薬局製剤は勿論メーカーの製剤方式をも否定するとの印象を私は受けているが、各位の研究を乞いたい。

 五、要指示薬、保健薬の販売につき、日薬でなく日医が強い態度を示すことも不可解である。

 今秋の九州・山口薬学大会 薬剤部長協議会 報告・議案

 第36回九州・山口薬学大会(43年10月11〜12日、久留米市石橋文化センター)プログラム中、第1日目11日午前9時〜12時に開会される「薬剤部長協議会」の報告事項及び議案は次の通りである。

 ▽ 前年度議案の処理報告=国立大村病院・深堀富栄
 (1)所謂二つ折文献などの記載内容に次の事項などを追加するよう要望する件
 @所謂二つ折文献をA5版に統一し、薬品の現物と数値などを示すよう措置されたい。
 A文献能書などに配合禁忌、副作用、中毒量及びその措置方法など必要事項を記入されたい。
 (2)浄財などのシート包装につきメーカーに要望する件
 (3)病院におけるD1活動を業務基準に規定する件
 (4)医薬品情報センターの設置について
 (5)健康保険法の抜本改正に当り、甲表・乙表を一本化し、薬剤料、調剤料の統一をはかると共に、調剤料の他の診療報酬より分離するよう要望する件

 ▽調査事項報告
 (1)医薬品の消費実態調査=長崎大学病院 樋口武夫
 ▽宿題報告
 (1)錠剤崩壊試験の実態調査=九州大学病院 堀岡正義
 ▽議案
 (1)日本薬局方外医薬品に日局に定める崩壊試験法を適用するよう厚生省に要望する件=熊本大学病院林清五郎
 (2)注射薬の容器には個々に製造年月を明記するよう要望する件=山口大学病院 神代昭
 (3)錠剤などのシート包装につき再度メーカーに要望する件=国立福岡中央病院 清水貞知
 (4)衛生検査技師法改正につき要望する件
 (5)病院薬局の法制化を促進するよう当局に要望する件=国立大村病院 深堀富栄

 ▽講演
 『薬剤学と病院薬局』=東京大学薬学部永井恒司

 九州山口薬学大会 学校薬剤師部会

 第36回九州・山口薬学大会(今秋10月11〜12日、久留米市における)第一日目午前開会の「学校薬剤師部会」は次の通りである。

 ▽日時 10月11日午前9時〜12時
 ▽会場 石橋文化会館の間
 ▽研究発表(9時〜10時)座長古賀哲弥
 (1)プールの基礎的検査(第四報)=熊本県・藤本磯男
 (2)保健室備付医薬品調査と事後措置について=伊万里市・藤田謙吉
 (3)貯蔵容器による残留検査の消費について=長崎市・横田武
 (4)プールの消毒=宮崎県・陣内正美
 (5)長崎駅前の自動車による公害調査について=長崎県・野川フミ

 ▽シンポジウム(10時〜12時)座長早川政雄
 テーマ『教室の環境改善について』
 (1)じんあいと落下細菌=鹿児島県・黒岩将臣
 (2)照明環境の一考察=熊本県・福島道尋
 (3)黒板の管理=佐賀県・小笠原覚
 (4)感覚温度あるいは二酸化炭素=長崎県・坂井透
 (5)騒音環境について=宮崎県・岩井隆一

 九州山口薬学大会 開局「経済」部会

 第36回九州・山口薬学大会(今秋10月11〜12日、久留米市における)第二日目午後開会の「開局(経済)部会」次の通りである。

 ▽日時 10月12日午後13時〜17時
 ▽会場 石橋美術館
 ▽部会長(司会)鶴田喜代次

 ▽講演
 「医薬分業推進と薬局経済」(90分)=日本薬剤師会社会保険委員(東京都)芹沢恒夫

 ▽パネルディスカッション(120分、一題15分)
 テーマ「逼迫せる薬業界における薬局の生きる途」
 @小売薬業今後の展望=福岡市、大黒清太郎
 A欲ばり村物語=長崎市、隈治人
 B再販品についての考察=福岡市、荒巻善之助
 C新らしい薬局の経営、一つの方法論=福岡市、竹内克己
 D相談薬局のいき方=福岡市、久保川憲彦
 Eポランタリーチェーンの拡大=北九州市芳野直行
 Fレギュラーチェーンの構想=北九州市、衛藤嘉蔵
 G薬局の大型化について=福岡市、白木太四郎
 ▽質疑応答(30分)

 九州山口薬学大会 開局「保険」部会

 第36回九州・山口薬学大会(今秋10月11〜12日、久留米市における)第二日目午前開会の「開局(保険)部会」次の通りである。

 ▽日時 11月12日午前9時〜12時
 ▽会場 石橋美術館
 ▽部会長(司会)中村里実

 ▽講演
 「医療保険制度の抜本改正に対する医薬分業の進め方」=日本薬剤師会社会保険委員長(横浜市)加藤良一(60分)

 ▽研究発表
 (1)処方せん発行の具体的推進方策について=熊本県下田正(20分)
 (2)処方せん受入体制の整備について(倫理、施設、技術、医薬品、備蓄)=佐賀県徳永文平(20分)
 (3)保険調剤の経済性と対歯科医師会接触について(付、長野県上田区分業状況視察報告)=福岡県藤田胖(20分)
 ▽質疑応答(30分)

 全薬協明年の大会 福岡市で開催決定 六月三日〜五日

 全日本薬種商協会は去月二十四日東京で正副会長と常務理事合同会議を開き、付議事項についてそれぞれ協議決定したが、その内明年の第二二回全国大会は六月二日から五日迄四日間福岡県(福岡市民会館)に於て開催することを決定した。なお、同会の重要行事である「統一講習会」については執行部試案をもとに全国各ブロック会を開催して具体的検討を行うことを決定した。

 因に執行部の議案によれば九州ブロックは次の通りである。
 福岡、大分=九月十三〜十四日▽佐賀、長崎=十四〜十五日▽熊本、宮崎鹿児島=十五〜十六日

 第三十五回 薬剤師国試

 第三十五回薬剤師国家試験が十一月東京都大阪の両試験場で行われる。

 ▽試験期日=学説試験十一月九日、実地試験同十日
 ▽試験科目=学説試験「薬物学、衛生化学、公衆衛生学、薬剤学、薬事関係法規、日本薬局方」実地試験「薬剤学、日本薬局方」
 ▽出願期日=十月三日から同九日まで
 ▽提出場所=厚生省薬務局薬事課試験免許係(東京都千代田区霞ヶ関一丁目二番二号、郵便番号一〇〇)宛、なお郵送の場合は十月九日付の消印のあるものまで受け付ける。
▽合格者発表=官報に公告するほか合格者に対し合格証書を郵送する。

 薬学大会準備 福岡県学薬 常任理事会

 福岡県学校薬剤師会は八月十二日午前十一時から県薬会館で常任理事会を開会、@九州山口薬学大会学薬部会の研究発表についてA福岡県学校保健大会に関する件などについて協議した。当日は友納、古賀、河原畑正副会長を始め神谷、矢野、渋田、内田、馬場、原口の各理事並に早川前会長も出席した。

 開会まず友納会長から県学校保健会評議員会(6月28日)全国学校薬剤師講習会(7月2日〜4日)県学薬研修会(7月5日飯塚市、同10日八女市で)県学校保健研究集会(7月29日〜31日)九州学校保健大会(8月8日〜9日)出席報告があって議事に入った。

 第36回九州山口薬学大会学校薬剤師部会については研究発表並にシンポジウムを左記のとおり決定した。

 (1)研究発表 座長古賀哲弥
 @プールの基礎的検査(熊本県)A保健室備付医薬品調査と事後措置について(佐賀県)B残溜塩素と容器の関係(長崎県)Cプールの消毒(宮崎県)D同(北九州)E同(大牟田)F同(福岡)

 (2)シンポジウム
 テーマ「教室の環境改善について」
 @じんあいと落下細菌(鹿児島県)A照明環境について(熊本県)B黒板の管理(佐賀県)C二酸化炭素(長崎県)D騒音環境(宮崎県)その他▽豊前市において開催される県学校保健大会は十月中旬の予定であるが、確定はしていない▽於久留米市の薬学大会学薬部会の運営について▽学薬創立十五周年記念事業について▽県内各地区学校薬剤師の手当についてなど協議した。

 最近の医療費と 調剤報酬

 ▼総医療費(全国基金四月分)=七〇四億七三二五万円
 同(福岡基金五月分)=四九億〇三〇〇万円

 ▼調剤報酬(全国基金四月分)=二億四五三四万円
 同(福岡基金五月分)=九一二万円

 全国の総医療費の中に占める調剤報酬は〇・三四八%であり、福岡県は〇・一八七%である。全くコンマ以下とはこのことであり、福岡県は全国平均を大分下廻っている。

 九州地区学校保健 研究協議大会 8月8・9熊本で

 第19回九州地区学校保健研究協議大会は八月八日、九日の両日熊本市で開会、保険主事、養護教諭、学校薬剤師の代表者約一、四〇〇名が参集し、各県代表の研究発表及び十一班に分れ、班別研究その他特別講演等盛大に行われた。福岡県学校薬剤師会から友納会長他九名が第六班の班別研究会に参加した。

 宮崎県学薬横内歌子、熊本学薬南フミエ、同林ヨシエの三氏は環境衛生整備改善について、照度、感覚温度、細菌、二酸化炭素、騒音、及び塵埃ほか数件の詳細なデーターをもとに、多方面にわたる発表があり、終始活発な質疑応答、討議などが行われた。

 引続き最近剤界で注視されてきた衛生検査技師法改正をめぐっての左記講演二題を聴取し、衛生検査薬剤師の組織化などについて検討した。

 『衛生検査技師法の改正をめぐって』=済生会八幡病院検査科長平安義男氏
 『薬学士と臨床検査』=九大病院中央検査部長永井諄爾氏

 福岡地区安定協 八月例会

 福岡地区安定協議会は、市内数件のチラシ及び百ア本支店の金券添付などを重視して八月一日臨時安定協開会に引続き、八月十日の定例日は県薬会館で定刻に開会した。

 当日は臨時安定協後の報告があり、チラシ問題は大体解決したことが確認出来、百ア薬品も金券添付を中止したことが報告されたが、当日地元から盆前の九日〜十二日の間、又も再販品を含む医薬品を二割から四割程度の景品付売出しの広告を行った旨の報告に、各会ともこれを重視、直ちに厳重に申入れを行うこととなった。