通 史 昭和43年(1968) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和43年(1968) 4月10日号

 福岡県薬剤師会 第23回通常代議員会
 役員改選・四島、長野、岡野、堀岡正副会長三選

 社団法人福岡県薬剤師会は三月二十七日十時、福岡市第一銀行ビル三鷹ホールで第23回通常代議員会を開き、四十三年度事業計画および予算案を審議、会長など役員並に県薬選出日薬代議員の選挙を行い、正副会長の三選を決め、新年度事業計画および予算案は執行部原案通り決定した。

 同代議員会は、定刻十時、代議員七七名中六四名、その他役員、一般会員など約一一〇名出席、工藤専務理事の司会により開会、先ず四島会長は、会長演述で、薬剤師が長年にわたり希望していた医薬分業はここ数年来急速に好転し政府、保険者、ジャーナリズムも医と薬の分離を望んでいる。かかる社会環境下で、日薬は分業推進を最重点事業として推進している。

 昨年は医薬品製造承認の基本方針、医療保険抜本改正試案等が打出されたが、四三年四四年はこれらが肉付けされる重大な時期であり、尚薬局経済の安定、再販対策等経済上の重要事項もかかえている。われわれは前向きの姿勢をもって、この重大な時局に対処しなければならない。会員各位の熱烈なご支援をお願いする。と述べ、来賓の祝辞に移った。

 福岡県知事の祝辞は下野衛生部長が代読、県歯科医師会は讃井副会長が、「医療界問題解決のため協調を更に深め、政治力を発揚して目的達成のため努力したい」と述べ、武田日薬会長、森田県会議長、清沢県医師会長などの祝電披露があった。それより須原議長により物故会員に黙祷を捧げ、直ちに議事に入った。

 ▼報告事項  (1)報告第一号 昭和四十二年度会務並びに事業報告
 ▽一般会務 恒常的事業及び重点事業の総括報告は工藤専務理事▽分業実施対策▽薬業経済向上対策▽薬事制度改善対策についてはそれぞれ担当理事から詳細な報告があったが、会員数は前年対比一三〇名増で、これは、日薬の会員増の12%をしめており、その大きな原因は県庁薬剤師の集団加入である。その他臨床薬理学講座、歯薬合同研修課部分的ではあるが医師会との分業関係記事交換、DI活動などこれまでにない画期的な事業も報告された。次に助成団体である県病院薬剤師会は堀岡会長、県学校薬剤師会は友納会長、県女子薬剤師会は森山副会長、県薬剤師国民健康保険組合は工藤常務理事より会務の概況報告があり、種々質問があって異議なく承認された。
 (2)報告第二号 第23回臨時及び第24回通常日薬代議員会報告
 福井、鶴田両日薬代議員から報告があり二、三質疑応答があって承認。
 (3)報告第三号 昭和四十二年度歳入歳出中間報告
 鶴原会計理事病気欠席のため佐治理事から詳細な説明があって異議なく承認。

 ▼決議事項
 (1)議案第一号 昭和四十一年度歳入歳出決算認定の件
 佐治理事の説明、三宅監事からは会計監査報告があって、歳入合計額一〇、二三七、〇二四歳出合計八、九二八、三五三次年度へ繰越金一、三〇八、六七一の決算を承認決定した。
 (2)議案第二号 昭和四十三年度事業計画決定の件
 長野副会長から「本件は@医薬分業の推進A薬剤師職能と薬業経済B会の組織と活動の強化C九州山口薬学活動の強化C九州山口薬学大会開催等の強力な推進であるが、完全分業を達成実現するためにあらゆる面からこれに傾投し、又九州山口薬学大会は分業PRの大きなチャンスでもあり、県薬会員、全員総力をあげて推進すべきであり、そのために各会員から千円の協力費を拠出ねがいたい」と説明があって原案通り可決決定した。
 (3)議案第三号 昭和四十三年度会費決定の件
 (4)議案第四号 同年度歳入歳出予算決定の件
(3)(4)一括上提、安部、波多江両理事から説明、会費はA会費(薬局、一般販売業を 開設する者および上級勤務者)は年額七、五〇〇円B会費(勤務薬剤師およびこれに準ずる者)年額三、五〇〇円、以上前年通りC会費(医薬品製造業者および特志者)年額一五、〇〇〇円(前年一〇、〇〇〇円)
 予算は歳入歳出それぞれ一一、二七一、〇〇〇と原案通り可決決定したが、これに対しては代議員から真面目な質問が多く出された。

 ▼役員選挙(任期満了による)
 選考委員制を採択、委員は福岡四名、北九州四名、筑後三名、筑豊二名を選出した。十三名の選考委員によって四十五分に亘る慎重審議、選考の結果を議場に報告、一堂に諮って選考通り左記正副会長(三選)、監事及び日薬代議員を選出した。
 ▽会長 四島久
 ▽副会長 長野義夫、岡野辛一郎、堀岡正義
 ▽監事 三宅清彦、斉田和夫
 ▽日本薬剤師会代議員 長野義夫、工藤益夫、福井正樹、中村里実、吉柳富雄
 ▽同予備代議員
 1藤野義彦 2瀬尾義彦 3西元寺清継 4芳野直行 5杉本好子

 三選の四島会長は、この重大な時期を会員各位のご支援により精一杯の努力で乗り切る覚悟である、理事の指名については二週間以内に決定したいと述べ、予め承認を得た。以上で代議員会を終り、それより直ちに総会に移ったが本年の代議員会は例年になくおだやかな又スムースな雰囲気の裡に終了した。

 総会
 代議員会引続き、四時から同所において工藤専務理事の開会のあいさつによって、総会を開会、会長から代議員会における演述並に決定事項の報告はお聞き及びの通りであるので省略する旨の発言があり、次いで昭和四十一年度歳入歳出決算承認の件を異議なく承認直ちに支部表彰に移った。優良支部として左記五支部に対し表彰状並に記念品代が贈られた。

 一位 直方支部
 二位 久留米支部
 三位 福岡支部
 四位 八女支部
 五位 浮羽支部
 以上で総会を終り、引続き福岡県薬剤師政治連盟懇談会に移った。

 薬剤師政治連盟懇談会

 総会に引続き、同所において開会、会長は、昨年脱皮して政治連盟となり、一、二の府県をのぞき大体日薬会員即連盟会員となった。現在程客観状勢が分業必至の気運になったことはかつてなく、今秋の国会では医療保険制度抜本改正も論議されようが、これを吾々にとって有利にするには、政治家を如何に動かすかにかかっている。今夏の参院選は剤界には立候補者を持たないので、満岡候補(日本歯科医師会専務理事)を三師会代表として応援する。

 満岡氏が香川県に於て歯・薬協定処方を始めたことから、日歯、日薬の協定処方作成に発展したことはご承知の通りでその気になれば処方せんも現在の三倍〜五倍に増加する見込みである。本会は末端に至るまで、歯・薬の強調をはかり、積極的に自分自身の代表を推せんしたと考えてご協力願いたい。

 政治活動は常に中央で行われている。県連盟としては左記の評議員会で、予算等も決定したので、それによって強力に推進する。参議院選地方区の候補については検討の上近く推せん者を決定したい。と述べ、四時半代議員会他関連会議を全部終了、引続き同所において会員懇談会を催した。

 代議員会中の質疑応答から

 質問(芳野直行氏)
 市町村国保では保険料は大体五万円で頭打ちであるが福薬国保は人員割で家族の多い私など七万位になる。何とか対策はないか又改正するとしたらどのような改正か説明を

 応答(工藤専務理事)
 人員の少ない国保組合は医療費の変動に刺戟を受けやすく、市町村に比し国庫支出金も格差が大きく、一般会計からの繰入もなく、財政の大部分を保険料でまかなわねばならない。だが給付の面では市町村のオール七割に比し本人は十割、家族七割で優位にある。保険料を市町村同様所得割にすればそのための事務量又は算出所得の適正などむつかしい問題がある。新年度から市町村国保も保険料の引き上げ、頭打ちの引上げまたは撤廃されるのではないかと思われる。将来については根本的な考え方をする関頭が近く来ると思うが、組合員の希望によって考えたい。

 質疑(芳野直行氏)
 メーカーの分業を阻害する商行為とは何か。具体的に説明を

 応答(鶴田常務理事)
 宮崎、鹿児島、大分等において抗生物質を歯科医師会に一括納入して、増、リベートなどを付した件であるが、(実質的には処方せん発行を阻害する行為)これらについてはメーカー・卸の反省を求め改善に努力している。

 質疑(坂本訓啓氏)
 国民健康保険運営協議会、地区衛生組合等医療担当者として参加しているが、他地区ではどうか

 応答(中村理事)
 運営協議会は、国民健康保険法に基づき、各市町村は条例で構成を、規則で運営を定めているので現在各市町村とも一名ずつ参加している。その他公的組合、協議会、委員会には積極的に参加し協力することが望ましい。

 質疑(藤田胖氏)
 四十三年度の分業推進の具体的目標はどの程度か

 応答(中村、工藤理事)
 四十二年十一月分全国医療費中社保支払基金の支払い確定額は総計五九五億九千万、その内保険調剤分は二億二千万で全体の〇・三七%、福岡県では十二月分総計三七億四千九百万、調剤分は五百二万で全体の〇・一二九%である。全国平均に引上げるとしても三倍位が当面必要であろう。最近スーパー等が保険調剤に意欲的で、好ましくないPRを始めている。保険制度の中にかつての販売面での悪を持込まぬよう注意が必要である。

 質疑(山下泰弘氏)
 会員の業種区分はどうか

 応答(工藤専務理事)
 一月末現在の会員数一、四六二名中薬局開設者八四九、一般販売業一九三、薬種商二六、病薬一八〇、県庁九一、その他九六、賛助会員二六、名誉会員三

 質疑(渋田守夫氏)
 分業推進に関連して日商二万以下の薬局存続方策をどう考えるか

 応答(四島会長)
 よく受入態勢の整備というが、その前に消費者が患者として処方せんを持って来るような保険薬局としての品位を高め、信頼されるようレベルアップすることが先決であろう。調剤用備蓄医薬品センターについても検討している。

 福岡県関係当局の注意 薬局・薬店と計量法

 薬局薬店で販売している計量器については、計量法により規制されているが、この計量法が大幅に改正され、昨四十二年六月三十日から施行されたが、未だにその周知徹底が充分に行なわれず、各種の違反が時々見受けられるので、この程福岡県計量検定所から、先の法改正の要点について説明があったので、左記に掲載し、薬局薬店の計量器販売面での参考に供することとした。

 計量器の販売について

 一、はじめに
 適正な計量の実施を確保するために昭和26年に制定された計量法は近年の社会情勢にマッチしない面が沢山でてきたため
 (1)計量に関する法制の一元化をはかるために電気測定法を廃止して計量法に統合する
 (2)計量器及び計量事業に対する規制を緩和するとともに検定方法の合理化をはかる
 (3)消費者の保護に関する規制を整備し、強化拡充をはかる
 の三つの柱を中心に大幅な改正が行われて、昭和41年7月1日に公布になり、42年6月30日から施行されました。薬局薬店の皆さんは、この計量法の規制を受けて、体温計、ます類、ものさし、メージャー、はかりなどを販売する場合は県知事に登録をしなければならなかったのですが、今次の法律改正で登録の内容が若干変更になりましたので改正の要点について述べてみましょう。

 二、登録を受けて販売する計量器の種類
 次に掲げる計量器を販売しようとする者は、知事の登録を受けなければなりません。
 (1)ひょう量が一五〇s以下の手動はかりおよび指示はかりならびに用いる分銅およびおもり
 (2)ガラス製体温計
 (3)アネロイド型血圧計

 従ってこれらの計量器以外の長さ計(ものさし、巻尺メージャー)ます類、温度計(寒温計、地中温度計)湿度計、化学用体積計、時間計などやひょう量(はかり得る最大の量)が一五〇sをこえるはかりは、知事の登録を受けることなく誰が販売しても差し支えないことになりました。

 一五〇s以下の手動はかりおよび指示はかりは商店、事業場や農家では取引に使用するためのものであり、また一般の家庭で健康管理に使用するヘルスメーターや調理に使用するキチンスケールなどで、販売店の店頭で供給されることが多い一五〇s以下のはかりに限定し、またガラス製体温計およびアネロイド型血圧計は保健用あるいは一部診療用として国民一般に使用されているもので、使用段階において定期検査等のチェックを受けて不良器物が見出される手段が講じられていないため不良器物を排除する措置を講ずる必要があるため、上掲三器種に限って販売登録を必要とすることとなったわけでこの登録を受ける際には、これら販売する計量器の構造や公差などについて販売上必要な知識を有するか否かの試験を受けて合格しなければならないこととなりました。

 三、計量器を販売するときは計量器販売事業を行なおうとする者は「計量器販売事業登録申請書」を知事に提出し、販売上必要な知識を有するか否かの試験に合格し「販売事業登録証」の交付を受ければ、計量器を販売できることになりますが計量器を販売するうえに注意をしなければならない計量法上の規制を充分知って計量の安全を確保するようにつとめて下さい。
 (1)譲渡の制限
 ガラス製体温計とアネロイド型血圧計は、検定を受けて合格したもの(検定証印があるもの)でなければ、販売してはならないし、販売する目的で所持してはならない。
 (2)使用の制限
 取引証明に使用する計量器には検定証印が附されているが、検定の有効期間がある計量器では、その有効期間内にあるものでなければならないので販売をする際にはその計量器の使用目的を確認して、取引証明に使用される場合には、検定証印がある計量器を販売すること。

 四、販売事業の登録について
 (1)登録の区分
 販売登録の区分は、次の二区分に分けられていますので、販売する計量器の種類に応じて、それぞれの区分ごとに登録を受けなければなりません。
 〔1区分〕
 ひょう量が一五〇s以下の平動はかりおよび指示はかりならびにこれらに用いる分銅およびおもり
 〔2区分〕
 ガラス製温度計およびアネロイト型血圧計
 一つの区分の登録を受ければ、どの計量器でも販売できるというわけのものではありません。

 (2)登録の基準
 登録をする際には
 (イ)計量器の販売等の事業を行なうのに必要な店舗があること。
 (ロ)販売する計量器の構造および公差等について販売上必要な知識を有すること(前述)が必要条件となっています。計量器を販売する以上は当然店舗がなければなりませんが、一人の事業者でいくつもの販売店を持ち、或いは支店、出張所がある場合には、どの店舗で販売することは差支えありませんが、その場合にはそれらの支店・出張所等は全て届出なければなりません。若しも届け出を怠った場合には届出ていない店では販売をすることはできません。

 3)登録の有効期間
 登録は永久的なものではなく一定期間ごとに更新する制度となっており、登録の日から記算して満十年を経過すると、登録は効力を失うことになっているので、引続き事業を行なう場合は、再登録の手続きをして登録を更新しなければなりません。(登録期間満了の日の二月前までに再登録の手続きが必要です)

 (4)登録証は大切に保存して下さい。
 登録証は、事業を登録したことを証するものですから店内に見易い場所に額などに入れて掲示をして下さい。販売する店舗が二ヶ所以上ある場合には登録証の写を作ってそれぞれの店舗に掲示して下さい。

 (5)県外で販売を行なうときは
 登録を受けた県以外の件で店舗を設けないで販売をしようとするときは、あらかじめ「管轄区域外販売届」をその県の知事に提出して下さい。

 五、むすび
 はじめに申述べたとおり「計量法」は適正な計量の実施を確保するために設けられた法律でありこの法律の定めるところにより計量器の販売をしなければなりませんので皆さんの薬局、薬店で計量器を販売するときは、法律の精神に副って正しい計量器を、正しく販売して下さい。計量器を販売するにあたっていろいろと問題が起ったり、解らないことがあったら勝手に自己判断で処理することなく、県計量検定所や、最寄りの市町村役場でお尋ね下さい。

 薬局薬店に注意 要指示医薬品販売について 福岡当局の通知

 最近ぜんそく、神経痛に使用される医薬品「副じん皮質ホルモン剤」のズサンな使用から離脱困難や強い副作用に悩まされるケースが医療界で問題となっているがその一部が患者のナマかじりの医薬知識で直接薬局薬店などで買い求めているというふしもあるので、福岡県薬務当局では、この程薬局薬店では同剤等要指示医薬品の販売については特に慎重でありたいとの通知を県薬剤師会並に県薬事協会(薬種商)に発した全文左記の通りである。

 副腎皮質ホルモン等要指示医薬品の販売について

 標記については昭和41年12月5日付薬発第二〇三〇号を以て通知した処であるが、保健薬の氾濫と共に一般消費者の医薬品乱用による事故発生があり憂慮されていることは充分ご承知のことと思います。最近要指示医薬品である副腎皮質ホルモン製剤が医師の処方せんの交付又は指示によらず疾病者の求めに応じて販売されている向きがあり、喘息或はアレルギー性皮膚炎、神経痛等の患者が自己の判断により大量又は連続服用し副作用のため事故をおこしている事例があるので、これが取扱いについては薬事法第49条第一項及び第二項の規定を遵守し、口答指示による販売等不明確なものについては医師に対し確認をする等慎重に取り扱われるように貴会員各位に周知徹底されるようお願いします。なお、本剤は指定医薬品であるので、新薬種商は販売出来ないので申し添えます。

九州薬事新報 昭和43年(1968) 4月20日号

画像  日本薬剤師会第一回 学術大会に参加して 工藤益夫

 四月三日から三日間にわたり東京都で開かれた薬学会と分離後の第一回の自主学術大会は、連日の好天に恵まれ、会場の共立薬科大学、芝公会堂は超満員の盛況であった。桜やレンギョウが咲き誇る芝公園は薬剤師であふれ全国でなければ見られないほほえましい風景もあちこちに見うけられた。参加者は三千人を超え四千人近い人が集まり運営の衝にあたる人々は、うれしい悲鳴をあげていた。

 開局関係として社会保険分科会を中心に参加した。「医療と薬剤師」をテーマにシンポジウムを展開したが聴衆は堂にあふれ意見を述べる者、回答する者皆真剣そのもので全国の会員が分業達成をいかに熱望しているかが、ひしひしと感ぜられた。

 薬局・薬業経済合同分科会も、ハンデル・エバン副社長・武田日薬会長・吉田岐阜薬大教授の特別講演を中心に多面的に薬局のあり方が検討されていたがここも超満員であった。

 学校薬剤師関係の会場に入ろうとしたがここも立錐の余地なく断念しなければならなかった。昭和三十九年の東京大会時とは隔世の感があり、準備の方々の努力は勿論ながら全国の薬剤師が職能向上にめざめた結果だと感じ力強いものを覚えた。

 五日、東京プリンスホテルで開かれた日本薬剤師会七十五年記念式典は、まことに感激の極みであった。天皇陛下の行幸を仰ぎしかも、お言葉までいただいたことは全く薬剤師会設立以来の空前の快事であった。

 「日本薬剤師会が創立以来、国民の保健衛生の向上に多大の貢献をしてきたことは、わたくしの深く多とするところである。薬剤師は、国民の健康を保持増進する重要な使命をもつものであるから、今後も他の医療関係者と相携えて一層社会のため尽力するよう希望する」とのお言葉は涙なくては聞くことができなかった。

 薬剤師会の存在と薬剤師の職能が認められたお言葉を粒々辛苦薬剤師を今日あらしめた先覚者にもお聞かせしたい気にうたれた。これからのことについて他の医療関係者と相携えて社会のため尽力せよとのおおせでありますが、この席にいた厚生大臣・坂本薬務局長以下の為政者・武見医師会長・竹中日歯会長の医療関係者はいかに感じられたことだろうか。

 わたしたち薬剤師の職責はいよいよ重大さを増したものと感じ努力を続けねばならないと覚悟を新たにしたものである。この度の大会・式典は、感激の連続であった。それにつけても、今年は、九州山口薬学大会開催の当番県であることを思いその準備に万全を期したい。


 挾子

 ▼去る五日の日薬創立七十五年記念式典に列席した四島福岡県薬会長は、天皇陛下のご臨席を仰いでお言葉を拝聴して感じたことは、只ありがたいのことばにつきると前置きして、日本の象徴として陛下は絶対であると改めて感じた。自らを無にして只国家、国民の幸せを願っておられる陛下に接し、おそれおおいが自らを省みて、家長として亦会長として自分はそう出来るかどうか。只只反省するばかりであったと・・・

 又長野副会長は只涙が出てどうしようもなかったと、帰ってから、この喜びをわかちたいと誰彼となく会員を集めて、一夜大いに喜杯をあげられたとか・・・

 ▼職能団体の式典などへの陛下の行幸は空前のことである。日薬の武田会長の手腕もさることながら、抜本改正を控えての時期だけに、その意義は一層深いと思われる。願わくばこれを契機に薬剤師の乾坤一擲の奮気を期待すると同時に官民一体となってよりよい医療体制の確立がのぞましいと思う。

 福岡市薬剤師会 第23回定時総会 (附)還暦祝、市よりの表彰

 会員数四百十三名を抱えた福岡県薬支部中最大のものである福岡市薬剤師会は、第23回定時総会を四月二十四日二時から市内第一銀行ビル七階三鷹ホールにおいて、阿部市長外多数の来賓を招いて会員百余名出席のもとに開会、事業報告、県薬代議員会報告及び決算認定、新年度事業計画並に予算案など執行部原案通り承認、任期満了による役員改選は、会長並に副会長を再選、重任を決めた。

 議事に先立ち四島県薬会長は約三十分にわたって、詳細に中央情勢の報告をなし、「分業問題も今日迄は序文であったが今後いよいよ各論にはいるわけで、昨年来厚生省が打出している諸政策もすべて分業を建て前として医、薬の分離の面から出発している。吾々がこれらをどう受止めるか真剣に検討、研究して対策を考えねばならない、日薬も今後三年計画で分業完全実施を期し、先ず第一年の本年度は受入れ態勢の完備を目標に、薬剤師の信用回復のため倫理の高揚、備蓄薬品の整備を推進する。又来る参院選も医薬分業は、歯、薬協調からをモットーに満岡候補を、応援ではなく分業運動の、吾々の代表者の一人として本気で取組んで貰いたい」と述べ、又日薬制定保険薬局標識は遅くも六月には取付ける運びとなるが、薬剤師会が指定した保険薬局であると云う意味で、受入態勢の完備した店だけにしたいと考えていると語った。

 議事は先ず報告第一号昭和四十二年度会務並びに事業報告を藤田副会長説明、第二号第23回県薬代議員会報告を山下理事がなし、先れも承認、議案第一号同年度決算を磯田理事説明、大隈監事が監査報告をなして異議なく承認、第二号新年度事業計画案は県薬の事業計画を踏襲するが、分業実施対策の推進については、他支部に率先、保険薬剤師部会を設置して強力に推進するための具体策を示したが、原案通り異議なく決定した。

 次に第三号会費決定の件、第四号予算案については、会費は前年通りと決定、予算額五、八七九、七七七円については種々質問、要望があって可決決定した。要望の主旨は「学薬への補助金、役員手当など、実際に活動している面には予備費に余裕が認められるので、充分は出来なくとも増額すべきだ」というもので新役員により修正することになった。

 それより任期満了による役員改選に移り、工藤益夫氏を仮議長とし選考委員制により、会長一名、副会長五名、監事二名を選考の結果、正副会長並に監事は再選され、重任を決定した。尚勤務からの副会長一名並に監事一名は五月九日開会の勤務部会に於て決定の上報告することを満場一致承認した。
 ▽会長 波多江嘉一郎
 ▽副会長 斉田和夫、国武一人、藤田胖、西森基泰(勤務一名)
 ▽監事 大隈次郎、(勤務一名)

 それよりの重任の波多江会長のあいさつがあって支部表彰に移り、一位唐人部会、二位箱崎部会、三位春吉A部会外十九部会に記念品代が贈呈され、斉田副会長の閉会のあいさつによって総会を終了。引続き恒例の還暦祝に移り本年還暦を迎える左記七代にお祝の記念品が贈られた。

 波多江嘉一郎、国武一人、内田数彦、吉田長太郎、塚元久雄、大黒隆男、村上タカ子

 それより同所において懇親の宴が催されたが、本年は例年になく活発な意欲的な総会で、分業に対する熱意も高まりつつあるとの印象であった。尚同総会に先立ち、福岡市から左記本会員十五氏に対し市の衛生行政に協力した功績により、阿部市長から感謝状と記念品が贈呈された。

 真崎、塚田、坪根、高倉(等)、中野、山手、小須賀、富永(昇蔵)、重松、小松(至誠)、江頭、綱島、戸田(悌子)、原口、野口

 福岡県学校薬剤師会 第15回評議員会並総会 伝達講習会に百余名参加

 福岡県学校薬剤師会は第15回県学校薬剤師会評議員会を四月十九日十時から伝達講習会を一時から定時総会を四時半から田辺製薬福岡支店会議室で開会した。

 評議員会は馬場理事司会、河原畑理事の開会あいさつに次いで友納会長は「学校保健法が出来て十年、吾が学薬は呱々の声をあげて十五年目となった。昔ならば元服して一人前になったわけである」と会員の努力を謝し「今後も分業推進策として学業によるPRは誠に大切であり、吾々は薬剤師の尖兵となって今後も努力したい」と述べ、左記議事に入った。

 ▽報告一号 昭和四十二年度会務並に事業報告
 ▽議案一号 同年度収入支出決算認定の件
 ▽同二号 昭和四十三年度事業計画決定の件
 ▽同三号 同年度会費決定の件
 ▽同四号 創立十五周年記念式典開催の経費として特別会費徴収の件
 ▽同五号 昭和四三年度収入支出予算決定の件

 いづれも原案通り承認決定、引続き任期満了による役員改選に移り、仮議長に倉石氏を推し、各ブロックから一名宛の選考委員(杉本、平木、副島、末宗)により選考の結果、友納英一会長並に古賀哲哉副会長、吉柳富雄監事は留任、欠員の副会長一名は大牟田市の河原畑武雄氏と決定した。尚新理事は新執行部で近く決定することになったが、各ブロックから選出の評議員は、杉本好子氏の緊急動議を採択して「評議員数を決める方法は従来の担当校数でなく、学薬会員数にすること」とし、会則変更の文書については執行部に一任することとなった。尚議案四号の創立15周年記念式典開催は来年度行うこととし、そのための特別会費、四三年度一五〇円、四四年度一五〇円の徴収を承認した。

 又先進地区では近来、高度の指導が必要な面も出ているので、指導者講習会などの開催要望もあり、本会も着実に発展、薬剤師の一般へのPRに役立っていることが窺える。尚午後からの伝達講習会には約百名が出席して熱心に聴講し、引続く第15回定時総会では来賓として、県教育庁足達保健課長並に尾崎県薬務課長、四島県薬会長のあいさつがあり、それより午前中の評議員会の決議事項報告があって異議なくこれを承認した。

 ヨーロッパ 食べ歩き、遊びあるき 森山富江 その九 サ・セ・パリ!

 ロンドンを秋と云ふならばパリは五月か、パリには夢がある。五月の風のように甘くやわらかく語りかけるパリの街、若人は恋のアヴァンチュールを楽しみ、老人は遠き日の想ひの中に静かに憩ふ。パリの朝は素晴らしい!

 そこはかとなきエトランゼの哀愁を秘めたロンドンの夕暮れも心に残るひとつだが、豊かな緑の並木と綺麗に洗われた石畳の道がミズミズしい空気のなかで息づきはじめる朝のパリはそれに劣らず旅情を誘ふ。

 少し冷たい風にコートをはおってバスに乗る。オペラ座の前を通ってコンコルド広場へ、コンコルドとは和合の意とか、中央にそそり立つオペリスクは約三百年前ナポレオンがエジプトからうつしたと云ふ。ルクソール神殿大塔門前のオペリスクで一対となった其の左は今もエジプトの地にあるとか、其のオモテに刻まれた不可解な象形文字、全長二十五米天を摩す其の圧観はとてもカメラには、はいりきれない。かって革命の名のもとにギロチンがたけり狂った血の広場も今は平和そのもの、美しい噴水は心に安らぎをよぶ。

 コンコルド広場から遥か凱旋門まで、マロニエの並木も美しいシャンゼリゼの大通りが、まっすぐまっすぐのびる。テラスを出したカフェの色とりどりのテントが緑の間に見えかくれまさにパリの目抜通り!セーヌの流れを右に見乍らシャイヨー宮へ、大きく腕をひろげたようなシャイヨー宮と勇壮な階段状の大噴水!青い空と迸る水野向うに錆朱色のエッフェル塔が優美とも云える姿でのぞまれる。静と動の美の極致が此処にある。

 明治二十二年につくられたと云ふエッフェル塔!エレベーターは水圧式とか。やっと御維新をむかへた日本の裏側に、すでにこの様な偉大な文明があったとは、土の中に生れた日本の文化と石の上に育った彼等の文化と、其の底の深さを泌々と感じた一瞬だった。

 アンバリッドの金色のドームの下にはフランスをこよなく愛したナポレオンが今も静かに眠る。死後九十年を経てセント・ヘレナから懐かしのフランスへ帰ったこの英雄の葬列を人々はどんな想いで迎へたのだろうか、深いエンジ色の柩は栄光の生涯を語るにふさわしく静寂の中に沈思する。シテ島はフランスの中の島。そして妖しい中世の匂いをはなつノートルダム!

 数百年の時の流れがそのままこりかたまったような、何か魔物めいたゴシックの大寺院、カシモドとエスメラルダの幻想が、幻想でなく今も生きているような暗い螺旋のきざはし、禁じられた渕をのぞき見たような微かな戦慄がはしる。大きなステンドグラスの紫色は不思議な美しさで輝いていた。

 午後からモンマルトルの丘にのぼる。アゴヒゲを生やした芸術家達が思いおもいにキャンパスをひろげている。見物人の方が多く、期待していた芸術的ムードは何処へやら、しかし之もやはり芸術か? 美術の宝庫ルーブルは、セーヌの河岸にあり、ナポレオン三世によって完成された大宮殿は今はミロのヴィーナスやモナ・リザのやかた。しんとした館内で熱心に模写する若い画家の姿は、ナポレオン載冠式の大構図と共に強く印象に残った。

 パリはそれ自体がひとつの美術館であり、其処に住む住民の一人一人が美術館員であると云ふ。ッ事実彼等はその事に誇りと責任をもちパリの貴重な文化財を命がけで守り続けて来た。今、パリが二千年の歴史をそのまま良き時代のヨーロッパを其のたたずまいのなかに保っていることのかげに、フランスを愛し、パリを愛する彼等の心が生きていることを人々は痛いように感じるに違いない。

 今日一日、見たもの、聞いたもの、之を自分のものにするにはまだまだ長い時が要るだろう。軟らかいアミ焼きの肉と軽いフランスのビール、些か興奮気味の神経にそれは鎮静剤のようにしみわたる。夕食をすませてお上りさんの一行はムーランへ!

 今宵の観光は全員参加、何時もは眠たがる旦那様も勇躍と!ああ魅惑なるかな!パリ!パリの夜は九時頃からはじまる。統一された照明が、その魅力をよりひきたてているような夜の街!楽しげなカップルが手をくんでゆく。真白い毛皮のストールからのぞく腕に真珠色の長い手袋、七色の光りをはなつブレスレット、ピンク色の肌と湖のような瞳!誰かが囁く、サ・セ・パリ!(之がパリだ!)

 一杯のシャンペンよりも、その雰囲気に酔ってしまった三時間!ホテルに帰ったのは午前一時、ボン・ヌイ・・・、ためいきのようなガイドさんの"おやすみなさい"を背に、階段をのぼる。パリの二日目の朝、蚤の市を見るために私はクリニャン、クールまででかけた。大きな車でやって来た商人達が窓をあけてテントをはると車はもうお店になる。皮製のクッションを売る店で太っちょのおじちゃんとヤリトリしているうち、とうとう8ドルで買わされてしまう。臭い皮に閉口し乍らビニールに包み、とうとう日本まで大事にさげてきてしまった。