通 史 昭和43年(1968) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和43年(1968) 2月10日号

 福岡県薬 理事会並支部連絡協議会

 福岡県薬剤師会は理事会並に支部連絡協議会を二月一日十一時から県薬会館で開会、左記事項について協議、報告をなした。先ず四島会長は新年における決意を述べ、工藤専務理事司会して議事に入った。

 ▽中央情勢報告
 四島会長から日薬全体理事会及び常務理事会の主要案件について次のような報告があった。
 @分業推進方策
 医療制度合理化が目標であるが、その中に分業がもれれているわけで、厚生省としては本年度は初年度であるが日薬としては既に二年度になる。与論も相当高まってはきたが、吾々としては、処方せんを出す医師並に消費者の物心両面の信頼を得ることが先決で、開局者の分業に取組む熱意如何にかかっている。
 A抜本改正試案と分業
 B保険薬局の分業受入態勢
 C医薬用ドリンク剤の取扱いについて
 D昭和43年度日薬の方針
 事業はすべて分業達成につながる。会費は値上げしない。日薬政治連盟の会費は千円であるが、本年は特に年内中途の情勢変化によっては、特別会費として更に千円を別に賦課されるやもしれない。第一回日薬学術大会は壮大な計画で準備されている。
 E日薬代議員会及び関連諸会議は2月21日〜23日迄に開会される。
 F日薬学術大会、総会、75年式典は四月三日〜五日

 ▽社会保険業務について
 @一月一日から市町村その他、全国保の家族七割給付開始について使用用紙の説明があった(中村理事)。
 A一月十七日県歯、県薬懇談会を開き、分業推進協力を再確認したので、今後は市郡の会を通じて末端に浸透させる。
 B社保講習会(別掲)
 C浮羽地区の歯医抗生物質の一括購入について
 D分業対策について
 日薬制定「薬局標識」については、保険調剤意慾のない薬局の購入の是非など種々意見があるが、日薬代議員会の議を経て実施される予定である。

 次に、これに関連して分業促進について色々と意見が出されたが、その主なものは次の通り
 ○小売薬業の実態がいろいろあるため、歯医でさえ保険薬局の区別がわからぬ有様である。早急に是正する必要がある。
 ○医師の処方批判は厳に謹しまねばならばい。
 ○処方せん持参の患者に漢方薬や他の薬品を押し売りしないこと。
 ○保険薬局は保険医療機構としての品位を保持せねばならぬ。
 ○将来に対し「調剤センター」の研究を進める必要がある。
 ○メーカーの甚だしき「増」を根絶しなければならぬ。
 ○基準の引き下げは少くも年一回は行うべきである。
 ○保険使用薬の再検討が必要。

 ▽第23回代議員会
 開会は三月中旬の予定、事業計画は分業を中心として日薬の事業に即応し、会費は値上げしないが薬学大会協力費千円をお願いする予定である。

 ▽麻薬相談員の補充すいせん
 薬剤師の相談員が評判がよく、推せんの申入れに対して会は大森(門司)原田(飯塚)奥村(浮羽)早川(大牟田)の四氏を推している。

 ▽福岡県主催「保健所法施行30周年記念式典」公衆衛生大会においての受賞
 知事賞ー友納英一氏、須原勇助氏、中村吾一郎氏、吉柳富雄氏
 協会長賞ー福岡市薬剤師会、長尾直之氏

 甲表・乙表・保険薬局の投薬収入比と調剤料について(1)千早病院 中島政雄

 昭和四十二年十月薬事新報に発表した標記の演題を要約し、ここでは保険薬局の参考になればと発表させて戴きます。

 四十二年十月薬価改正が行われ基準薬価は実勢価格に近いものとなり、購入価格と基準薬価との差額が殆んどなくなるのではないかと思われる。現在(42年9月)の基準薬価の一〇・二%位の低下と聞いている。若し現在、二割の購入差があるとすれば、十月以降は一割の購入差しかなく、収入減となる。

 このように購入薬価と基準薬価が段々近くなってくると、薬局の収入(薬局で購入している病院)が皆無に近くなり、予算編成などに困ると思われる。では如何にして薬局で収入をあげるかということは言を待たないで明らかなことである。即ち「初診料、再診料より調剤料を分業せよ」と云うことである。

 調剤料については、京阪神地区病薬や日薬、日病薬でも既に研究されていると思うし、公私病院連盟等でも既に考慮されていると思う。調剤料に関する意見は種々読ませて戴いたが、実際的に計算したデーターの発表は見たことがない。病院においても調剤料を制定せねば薬剤師の技術が死ぬことになり、且つ医薬分業の重点である技術の尊重に反すると思われる。

 調剤料制定に当り私の発表が万分の一でも参考になれば幸で、各病院勤務薬剤師の院内統計分析に少しでも役に立ち、又保険薬局においては一枚の処方せんに何処方があるか、金額的にはどの位の基準薬価のものが処方されているか参考になれば幸と思う(医師によって処方内容は異なるけれども)。

 集計に当って麻薬処方、外用薬や頓服、特に外用薬の点数が繁雑なため、点数で計算したり、金額を基準にしたり、金額の計算に誤差を生じないように分類を別々にしたが、ここでは詳細な表を略してその結果による判断を記すことにする。42年10月の薬価大改正を見るに、甲表点数には変りないようであるが、乙表の点数には相当の変化があって収入増となるようである。

 3年初頭には点数改正もあるかに報じているので、この発表も無用の長物となるかもしれぬが、調剤料制定の参考になればと思っている。病院勤務薬剤師にとって医療費収入の上昇は喜ばしいことであるが、投薬収入のダウンとなったり、購入価格と基準薬価との差額のウマミがなくなったりすれば、技術料として調剤料の新設を望む以外にないわけである。

 保険薬局には幸にして、薬剤師の調剤技術料が認められているが、残念なことには適正とは云えない。43年には20円となり、この調査時より3円程度値上げされるが今後30円〜50円位には値上げされるべきであると考える。

 病院の収入は、診療科の構成、各科の患者数の比、患者層、処方内容等によって異なる。ここの採り上げた病院は入院病床公称七五床、外来患者一日平均三百名以上の病院で、入院は一二〇%の利用率である。薬品購入費は一月約五三〇万円位で調剤用薬品三七五万円、注射薬一二〇万円、その他三五万円位の割合で使用している。人員構成は医師一二名、薬剤師三名。薬剤助手二名、計総人員百名位である。内科、外科、小児科、婦人科、皮フ科、歯科、耳ビ科の七科、勿論検査科、放射線科があり、完全看護、基準寝具の病院である。

 入院患者は内科が断然多く処方発行数は内科70%、外科23%、小児科4%、婦人科3%となっている。 小児科は主として液剤が多く、二〜三日の投薬で、入院外来とも処方せん形成は件数、調剤数とも一件処方が多く、調剤数は二件処方が多い。

 厚生省発表の保険薬局の処方件数別の百分率は、一件処方75%、二件処方14%、三件処方11%となっているが、当院の百分率は一件処方50%、二件処方32%、三件処方13%、四件処方5%となっている。一件処方で25%の差があるのは診療所(主として歯科処方と思う)と病院の処方差ではないかと考えられる。(続く)

九州薬事新報 昭和43年(1968) 2月20日号

 甲表・乙表・保険薬局の投薬収入比と調剤料について(2)千早病院 中島政雄

 点数別、金額別計算表

 甲表は点数別、乙表、保険薬局は金額区分別に計算し各科別に剤数、基準薬価、請求金額とに別けて計算した。

 入院処方せんを甲表(A表)乙表(B表)に別けて、入院甲表点数別一覧表と入院乙表基準内単位別一覧表に区分した。

 区分法は異なっていても剤数、基準薬価合計は異なることなく、唯請求金額のみに差がある。剤数も、薬価も、金額も内科が一番多く87%占めている。

 C表は入院、保険薬局基礎円単位一覧表であって、剤数、基準薬価、請求金額とに分け、請求金額を区分して基礎薬価、調剤料と、その小計とに分けて調査した。保険薬局の調剤料は内服一剤17円、外用薬25円と制定してあり、基準薬価を基礎として10円以下は5円、20円以下は15円、30円以下は25円とその中心金額を取って請求薬価と定めてあり、請求方法も簡単である。

 各科別、各区分別、点数別、金額別に占拠比率を出してみると、どの科が良好な収入をあげているか明らかとなり面白いが占拠比率は後記することとして、ここでは甲表、乙表、保険薬局の一般的比較のみをして見よう。

 剤数では点数、基礎金額では60円超の処方が抜群に多く、全体の8割を占めている。従って基準薬価も請求金額も比例して多くなっている。

 基準薬価では甲表、乙表、保険薬価とも同じである。請求金額では甲表は基準薬価よりやや請求金額が多く乙表は二割五分位、保険薬局は二割位の利益をあげている。甲表は投薬では利潤が少ないことが明かであり、保険薬局、乙表の順に利潤をあげている。(D・E・F表参照)

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 単価表

 枚数、件数、剤数、基準薬価、請求金額、利益を枚、件、剤別の単価で調べた甲表、乙表、保険薬局の利益および単価比較で入院外来とに区分し、各単価を示している。外来の部でみると基準薬価一剤単位は甲、乙薬局とも同じであるが、請求金額は甲九五円二五銭、乙一二〇円三八銭、薬局一一一円三五銭で、利益一剤単価は甲一円七二銭、乙二六円八四銭、薬局一七円八二銭となっている。

 又調剤料とも言える利益単価は甲一円七二銭、乙二六円八四銭、薬局一七円八二銭となっていて、投薬収入は乙表が一番利潤がある。

 次に利益の百分率と倍数と占拠比率を調べると(表は省略)保険薬局では基準薬価の一八・二%の利益があり、請求金額の一五・四%の利益で、甲表利益に対して一〇・二八%倍の利益をあげているが、乙表利益を一とすれば〇・六九倍と少ない。乙表が基準薬価に対しても、請求金額に対しても一番多く利益率及び倍数も高くなっている。

 又占拠比率は剤数では六〇円超が半数以上を示し、基準薬価、請求金額となると六〇円超が断然高く、六〇円超の処分が多いことが明らかである。患者一部負担によってこれがいかに変化するか興味がある。即ち一部負担により件数に変化があるとすれば、薬剤師の人員に、また収入額の低下は病院の経営に変化をきたすとも考えられる六〇円以下の点数(金額)で利益をあげる。即ち薄利多売よりも大きな金額を動かして利潤をあげることが、病院運営上必要な気がする。

 又処方を三〇円以下、六〇円以下、六〇円超と三つに分けると、剤数では六〇円超が約60%、六〇円以下約20%、三〇円以下は約19%となっている。

 むすび

 以上述べたものは六日間の処方について調査し、一ケ月に換算したが、一ケ月の調剤料利益は甲表六八、八二一円、乙表一、〇一六、〇七八円、保険薬局七〇六、四一一円となり、甲表の利益では薬局長の給料にも不足する金額である。

 然らば病院薬局の調剤料をいくらにするかを検討する前に、甲表、乙表、保険薬局の調剤料がいくらになっているかを調べて見よう。病院薬局の場合種々雑多であるので外来処方について一剤利益単価を例にとれば甲表一円七二銭、乙表二六円八四銭、保険薬局一七円八二銭となっているのでこれを調剤料と見做すと、保険薬局は一剤調剤料内服薬一七円、外用薬二五円と制定されているので、内服薬一剤調剤料八二銭上廻っているが処方内容によっては一剤一七円以下の単価が出るものも出てくると思われる。

 病院薬局では診察料に含まれている調剤料を分離してみて何点にすれば良いか調剤料を仮定してみた。一ケ月に換算して三五、八三二剤調剤したとして調剤料を10円、20円、30円と仮定して計算し、前述の一ケ月換算の利益額と比較すると20円とすれば保険薬局に利益額と殆んど同様となり、35円とすれば乙表の利益額と同じ位になる。院外処方せん発行と同点50円とすれば一、五二〇、〇〇〇円と利益も多くなるが、外来処方せんを全部院外発行すれば五五、一〇〇円となり、運営資金にも足りない。病院職員、薬局員、治療収入における投薬の占める率など考慮した上で調剤料を考えねばならないだろう。

 入院患者収入を診療行為別にみると、入院料が最高、次に注射料収入、投薬収入の順になるが、投薬収入は全国平均29%である。外来の場合は投薬収入が断然多く全国平均33%位である。治療収入に対して調剤に使用する薬品の占める割合は各病院によって差があり画一にあてはめる訳には行かぬが、全国平均(本人)33%に近似した私の病院の三二・五%になる金額が幾円の調剤料にあてはまるかを調べてみた。

 年間とんとんの黒字病院として治療収入が月一、四〇〇万とすれば四五五万の投薬収入となり、基準薬価を差し引くと六三万円の調剤純利となる。これを剤数で除し調剤料を調べると一剤単価一七円五〇銭強となり保険薬局の調剤料と殆んど同額となる。

 治療収入に対する調剤薬品の占める率は各病院により異なり、投薬に重点をおく病院では一剤調剤料も高くなる。以上はソロバンと計算器ではじき出した社撰な計算で申訳ないと思うが、今後薬価基準の改正、資材高騰、職員のベースアップ等考慮すれば、甲表病院においても調剤料を設定せよとの結論になるわけである。(終)

 会則その他決定 九州山口各県 薬剤師代表者会議

 九州山口各県薬剤師代表者会議は二月十二日午後一時から、福岡県薬会館で開かれ、四島日薬常務理事の中央情勢報告並に九州山口薬剤師会のあり方、九州山口薬学大会についてなど協議検討し、昨年以来検討されていた九州山口薬剤師会並に同薬学大会などの性格が大体決定をみた。

 当日は瓜生田九州山口薬剤師会長を始め左記県薬会長が出席した。
 瓜生田(大分)武田、木元(佐賀)横田(長崎副会長)戸田助人(熊本)山村(鹿児島)長嶺(宮崎)渋谷(山口)四島、長野、岡野、堀岡、工藤、鶴原、鶴田、波多江、瀬尾、森山、鹿川、福井(以上福岡)

 定刻開会、工藤福岡県薬専務理事の開会あいさつに始り、地元四島県薬会長、次いで瓜生田会長のあいさつがあり、直ちに左記議事に入った。

 1 中央情勢報告
 四島日薬常務理事から左記五項目について詳細な報告があった。
 @分業推進対策について
 日薬の事業は総てを分業推進に帰しており、厚生省は分業推進のため医薬品を医療用と一般用に区分しようとしている。吾々は既に技術分業状態にある大病院ではなく、特に近隣の一般診療所の処方せん獲得に努力して分業達成に邁進せねばならない。
 A小売窓口一本化について
 日薬がこの問題については斡旋を打切っていたが、新年度には再び何等かの進展を見せるのではないかと考えられる。
 Bドリンク剤の課税問題について
 従来医薬品らしく取扱われていないところから出て来た問題であり、今回条件つきで非課税となったが、一部業界から医薬品からはずせとの意見が出ているようだ。
 C日薬代議員会その他の諸会議について
 日薬武田会長は分業に取組んだからには是非とも達成させたいとの決心であり再任の意志であると仄聞する。日薬会費は決算も黒字になったので値上げしない。
 D日本薬剤師政治連盟の今後について
 全国的に連盟には関心がうすい。会費は前年通り千円であるが、新年度の中途における抜本改正、その他の問題に関する政治工作のため後半にあらためて臨時特別会費が徴収される情勢にある。
 それより質問、意見などが活発に発言されたが、その主なものは次のようなものであった。
 ▽将来保険薬局は近隣診療所とタイアップして恰も専属薬局となるかの心組みで進むことも亦必要であろう。
 ▽大病院における医局と薬剤師との関係を街の診療所と薬局との関係と同様にすることが当面の措置として分業促進上望ましい。
 ▽病院薬剤部を薬事法上の薬局とすることについては更に研究をする必要がある。
 ▽日病薬の法人化に伴い、日病薬と日薬との関係、又各地区の末端の会における混乱等については充分検討の必要がある。
 ▽日病薬は分業達成、甲表における調剤料の新設、中医協における意見発表、給与の向上等のための法人化であり、見通しとしては事務局の強化、組織の強化等にとどまると思われる。
 ▽日薬と分離するような印象を与えぬよう注意することが肝要、病薬、開局両者の緊密な連繋がもっとも必要な時期である。
 ▽日病薬法人化とこれに伴う日薬の基本態度をきめて置くべきだ。
 ▽保険調剤報酬に対する課税問題を全国的な問題として採り上げるべきである。
 ▽日薬は速かに分業のビジョンを示せ。
 ▽日薬社保委員会では四月の学術大会でビジョンとその対策を究明することを決定している。

 2 九州山口薬剤師会々則案について会則案は各県の意見を集約して、福岡県薬でまとめたものであるが、工藤専務から、逐条説明があり、一部字句修正の上決定した。(本紙次号掲載)尚新会則に基づく代表者会議を来る三月中旬に開催することに決定、それまでに各県薬選出代表者を決定することを申し合せた。

 3 九州山口薬学会及び同会会報について 当日松村会頭は所用のため欠席、代って堀岡福岡県薬副会長より現状並に希望などが述べられ、左記のように決定した。
 @名称は九州山口薬学会と称し、従来通り存続させる。
 A会報は、翌年の大会時に大会誌と共に参加者に配布する。
 B会報の編集は、九大で担当する。編集に要する経費は考慮する。

 4 九州山口薬学大会準備について
 四島会長、岡野副会長より準備状況について報告並に各県の参加会員の動員強化を要請した。
 全商連九州山口小売薬業者大会開催について
 鶴田福岡県小売商組理事長より二月十八日行う同大会の概要について説明があり、特に各県からの多数参加を要望して、四時半散会した。

 日薬創立75年記念式典次第(予定)

 昭和43年4月5日午前8時30分開場、9時開式、0時30分終了
 開場=東京プリンスホテル

 ◇第一部(午前9時〜9時50分)
 @開会の辞A経過報告B表彰
 表彰の辞=歴代日薬会長(刈米達夫、緒方章、高野一夫の三氏)▽歴代代議員会議長(上田実=兵庫、高橋勘次=東京、堀内万吉=神奈川、武井勇=東京、田島章太郎=和歌山、藤本威徳=兵庫、長野義夫=福岡、坂口徳次郎=東京の八氏)
 ▽75年記念功労賞(約一〇〇名)▽75年記念賞(50年以上継続会員約二二〇名)75年記念特別賞(75年継続会員=進藤百蔵=島根県)▽記念品贈呈(地方会長、日薬代議員、その他)▽75年記念公募論文入選者謝辞(代表)。

 ◇第二部(午前10時〜10時20分)
 天皇陛下御臨席(予定)―(奏楽)
 @式辞A天皇陛下お言葉B奉答の辞
 天皇陛下御退席(奏楽)

 ◇第三部(午前10時30分〜午後0時30分)
 @祝辞=厚生大臣、日医会長、日歯医会長、日本薬学会々頭、外国関係団体メッセージ
 A記念講演=日医代表、日歯医代表、日本薬学会代表
 B閉会の辞
 (注=細部の点で多少変更あるかも知れない。)

 福薬国保組合理事会

 福岡県薬剤師国民健康保険組合は第39回理事会を二月九日一時半から県薬剤師会館で開会、国保事業の状況、昭和四十三年度保険財政などについて協議した。出席者は四島、岡野正副理事長、工藤常務理事及び勝目、松村理事、友納、吉柳両監事であった。

 1 昭和四十二年度事業状況について
 工藤常務理事から次のような説明があった。
 @被保険者数は昭和四十二年三月三十一日現在、組合員四六四名、その他一、三六八名計一、八三二名、同四十三年一月現在、組合員四六七名、その他一、三七一名計一、八三八名。
 A保険給付費の四十二年度と四十一年度の月額の比較は四十一年度を百とすれば四十二年度は件数一〇六・一、費用額一一四・一、保険者負担分一二八・二、保険者負担率一一一・二である。
 B保険料収納状況
 四十二年一期分九五・六%同二期分九三・五%、同三期分八五・七%、同四期分二三・四%
 C一般会計執行状況
 D保険給付費の状況

 2 昭和四十二年度一般会計予算補正について
 支出増加が見込まれるもの(総務費、保険給付費)に追加予算を計上せねばならぬが、その補正財源としては国庫支出金の増加分、決算剰余金の増加分、予備費より充用することとなった。

 3 昭和四十三年度予算について
 諸物価高騰、家族七割給付に伴う療養給付金の増加などのため運営が困難と思われるので、「お意見お伺い」(本紙別掲)の資料について検討の結果、一応給付率の改正は行わず、保険料を組合員は千円を一、三〇〇円に、その他は六〇〇円を七〇〇円に引上げ、若し年度中途において療養給付費に不足を生ずるときは更めてその時点において検討することとし、二月二十七日開会予定の組合会にはかることとなった。

 福岡県薬業史物語(三) 潔周生

 縄文時代彌生時代には邪馬台国が福岡県甘木市附近にあったらしいと云う事だけで未だ混屯とした時代であり、家族構成の出来た頃で「クスリ」らしきものも使用されていたと云う位である。北九州(銅剣、銅鉾)幾内(銅鐸)の二文化圏が成立した時代であった。

 此の北九州圏には筑紫郡の須玖T式、須玖U式が発見され彌生文化の後期には雑餉隈式の古墳が発見された。邪馬台国の女王卑彌呼によって帯方郡を経て魏に遣使して漸やく文化交流の古墳時代となって来た。

 そして阿知使主、王仁の渡来となって論語千字文等が伝来されて大陸文化(技術文化)が導入され、愈々文化方面が充実して来た。

 応神天皇から欽明天皇の時代に於ける仏教伝来と共に古墳時代から飛鳥時代になると遣隋使、遣唐使の往来が盛んになり、博多附近の海岸は船舶の往来が盛んであった。

 此の頃九州に太宰府政庁が置かれた。それで唐との貿易の交易所として福岡の現在の平和台の所に鴻臚館を設置され、此処で交易に当らせていた。その輸入商品として陶磁器に次いで薬種が記されているが、品種品名用途などは不明である。

 天平十二年(七四〇年)の頃には藤原広嗣の乱などあって太宰府政庁の権威は喪失していたし、この年には天然痘が大流行した。亦この年に吉備真備が外部に備えて怡土城を築き、天平十四年に筑紫鎮西府が置かれて再び太宰府が復活された。其頃太宰府には唐から仏教布教の為苦難しながら渡日し、鑑真和尚も此処に滞在していた。なお最澄は粕屋郡の独鈷寺に、空海は博多の東長寺に居て、仏教は西の玄関博多周辺に根を下ろし太宰府は栄えたのである。

 天徳四年(九六〇年)に唐に代って宋が中国全土を支配統一したので、日唐貿易も次第に日宋貿易となって博多の港を通じて行われ賑やかになった。宋船は荒津の港(今の福岡港)や今津、新宮等も賑やかになった。従って宗像神社や安楽寺、観世音寺などは領地を領有して宋と直接貿易を行い、その宋貿易の利潤は博多を通じて宮廷を潤ほしていた。

 其の頃は博多を中心に西は怡土志摩方面、東は宗像に至る間が宋船の出入が最も多く、博多には宋の商人も多く富み栄えて、博多には中国の商人が集って大唐街という中国人の町があった。中国史書の「武備志」に載っているのを見れば現在の西公園荒津山に近かい唐人町が其の名残りをとどめて、現在も一繁華街として現存している事によっても想像される。

 宋から輸入された綾綿等の高級織物は西陣織や博多織の元祖ともなったのであるが、これに附随して幾多の薬種も輸入され、シルクロードを通じて宋に入った物資中に白檀、丁字、麝香等の香料や藍などの染料等が輸入されていた。この頃は飛鳥時代より次第に奈良時代へと移って行くのである。(福岡市薬剤師会長)

 福薬国保組合 43年度対策

 医療費は年々自然増を続けているが、昨年十二月には点数表の改正が行われ、昭和43年度の療養給付費は42年度に比し大巾の伸長が予想される。その伸び率は常識的に考えて20%以上、少なくとも15%は下らないものと思われる。福薬国保では、これ等伸び率について財政的解決策を如何にすべきかについて組合員の意見が知りたいため、各個人の意見を求めることとなった模様である。解決の方策としては、

 1 保険料の値上げ
 負担能力に限度があることと、市町村の保険税との比較を考慮することが必要である。

 2 組合員の給付率の引下げ
 現在の10割給付を市町村と同じ様に7割とすること(9割又は8割などに引下げることは医療機関で請求上困難を来すので承認困難、引下げる場合は7割給付にするが適当である)。
 @組合員の給付率を改正するかどうかA組合員の給付率を改正せず、現状の組合員10割、その他7割で進む場合は保険料額をいくらにするが適当であるか、などがあるが、組合にとっても組合員各個人にとっても重大な問題であるので、この際忌憚のない意見を執行部にどしどしよせて頂きたいと思う。

 がんの薬学と医学 日薬病診薬部会主催 第七回講習会

 左記
 ▽日時 43年2月27、28の二日間
 ▽会場 大阪市東区道修町四丁目藤沢薬品工業株式会社大ホール
 ▽講習題目・講師及び時間

 ▽2月27日(火)10時〜12時=がんの免疫学的考察‐東大教授石橋幸雄▽13時〜15時=がんの本態、その病理と原因‐癌研究会癌研究所病理部長菅野晴夫▽15時〜17時=がんの化学療法の展望‐癌研究会癌研究所化学療法部長桜井欽夫

 ▽2月28日(水)10時〜12時=がんの疫学‐国立がんセンター研究所疫学部長平山雄▽13時〜15時‐がんの治療、手術を中心として‐日本大学医学部教授石山俊次▽15時〜17時=生化学的に見たがん、発がん、老化、制がん‐東大薬学部教授水野伝一

 なお、@申込方法は往復はがきに住所、氏名、所属(病診、会社名、開局等)を明記し、返信用に住所、氏名を明記の上申込むこと、許可した者には受講券を送付するA申込先は「大阪市北区南扇町12番地大阪府薬剤師会講習会係宛B申込締切は43年2月15日必着(先着一五〇名)C参加費は日薬会員一五〇〇円、非会員二五〇〇円(テキスト代を含む)

 福岡県薬 調剤技術委

 福岡県薬調剤技術委員会は県病薬並に市薬勤務部会役員会と合同で二月八日午後三時から、九大病院薬剤部において開会、次の議題について協議検討した。

 1 日病薬全国会長会議報告
 @日本短波放送「病院薬剤師の時間」の放送者、モニターについて
 A抜本改正に対する日病薬の考え方
 B甲表より調剤技術料分離の件
 C日病薬社団法人化の件
 D会費値上げについて

 2 九州山口薬学大会の件
 @会運営の変更について
 A特別講演並に薬剤部会講演について
 B薬剤部長会宿題報告について
 C九州薬学会会報について

 3 日薬病診職種部会講習会について(本紙別掲)

 4 特別講演会準備の件(本紙別掲)

 5 昭和四十三年度県病薬の運営について

 2月24日 福岡県病薬特別講演会

 福岡県病院薬剤師会、福岡市薬剤師会勤務部会(九大病院薬剤部内)共催の特別講演会が左記により開会される。

 ▽日時 2月24日午後二時
 ▽場所 福岡市綱場町第一銀行ビル七階三鷹ホール
 ▽講演会

 1 映画「生命の流れ」

 2 血管拡張剤について=第一製薬福岡支店学術科長横山家郎氏

 3 最近の日病薬の動き=日病薬副会長東京都病診薬会長東京医大病院薬剤部長山田益城氏
 講演終了後同所で懇親会開催、会費三〇〇円

 福岡市薬 部会長会

 福岡市薬剤師会は本年初の部会長会を二月七日一時から県薬会館で開会、支部連絡協議会その他分業推進などにつき重要な報告伝達等を行った。

 当日は十九部会が出席、波多江会長から去る一日開会された県薬支部連絡協議会(本紙前号記載)及び県歯科医師会と県薬剤師会とのトップ懇談会について報告があり、保険薬局の問題については藤田副会長から次記事項について詳細な報告があった。

 @先に開かれた市薬剤師会と支払基金福岡市健保請求書事前検査委員会中 に「調剤報酬請求書記載要領の説明会」について

 A福岡市歯薬協定繁用処方例集を新たに印刷、近く会員に配布する件

 B病院、診療所における窓口投薬繁用薬品のメーカー別調査の集計が近く完成するので、分業促進の研修課題として配布する件

 C分業促進の一環として処方せん用紙は歯薬協定処方せん及び一般開業医向け白紙処方用紙を作成(無償)したので医師との懇談に活用するよう要望の件

 次に当日特に出席の鶴田県商組理事長から二月十八日開催される九州ブロック薬業者大会(全商連主催)に多数出席、協力方の要望があり、引続き同所において年一回の懇親の小宴を開いた。

 ヨーロッパ食べ歩き、遊びあるき 森山富江 その五 ここにローマが!

 着いたダヴィンチ飛行場のデカイのにまず驚く。ウイーンから来ると暑さがひどい。飛行場から約一時間、処々残っている古い城壁、蔦をからませた看視塔も其のままに、今、私達はローマの市街に入る。ウイーンとちがって古びた巨きな汚い建物が最初に感じたローマだ。

 ローマの第一夜はホテル、クイリナーレ。古い宮殿の名をとったこのホテルは、由緒ありげなたたずまい。ロビーの壁いっぱいのコブラン織りはあせた色の中に当時の風俗を鮮やかにえがきだしてある。椅子やベッドも王朝風なムード。欧州のホテルは照明に螢光灯を決して使わない。円形階段のてすりの彫刻が仄あかりのシャンデリアに映えて、赤い絨氈を踏む、ちっこい日本人も此処ではレディー。

 冷房のない部屋は少し暑いが、まさかドアを明けっぱなすわけにもゆかず…。其の夜すさまじい雷鳴と稲妻で眠りをさまされたが、石の庭に雨がたたきつけられている。旅に出てはじめての雨、烈しい雨音の中でフッと日本を想う。

 翌日は忘れたような上天気で湿度も高い。ノースリーブで出かけたのに暑さに閉口、観光バスの止まるたびにアイスクリームの車をみつけてはしってゆく。イタリア語はチンプンカンプンだが大抵一〇〇円位で一つ買える。フタをあけるとチョコ、レモン、イチゴ、ヴァニラ、メロン!何と美しい色とりどりのクリーム、順々にひとつづつ賞味するか、相変らず喰気旺盛ネジネジのコーンを手にバスを降りたりのったり。

 こちらのアイスクリームは脂肪分が少く甘味もドギツクなくフンワリと爽やか。ヴァニラは素敵な香りで之が最高においしかった。珍しがってレモンのをもらったが一口たべてウヘーッ何とスッパイこと酢入りのクリームだ。

 ローマの古くて汚い町には落胆したがそれを償うに足るものは、長い歴史のあゆみを語る素晴らしい遺跡の数々とこのクリームのうまさだろう。巨大なコロッセオの薄暗い地下のアーチ、之をくぐってライオンが飛び出したのか、じめじめした洞窟のような石の部屋には此処に幽閉され神に祈ったであろう人々の怨嗟の声が湿ったその壁にしみついているようで、思わず胸に手をおく。バチカンの偉容と華麗は見ずしては語れぬ素晴らしさだった。

 中食はレストラン東京!!。待ちに待った日本食だ。欲求不満の胃は豚の如く貪ぼり喰らう。午後からはいよいよアッピア街道をカタコンベへ、其の昔戦車が走った勝利の道を今バスでゆく。迫害に耐え乍ら守りつづけたキリスト教徒らの秘められた墓所は、果てしなく広大な地下の静寂の中にあり冷々とした陰湿な土の迷路に彼等の嘆きと祈りの声をきくおもい、かすかな戦慄が背すじを走る。

 ローマの休日でとみに名をあげたスペイン階段で小休止、午後のひと時を憩う若者達、ギターをひく金髪の少年の瞳は無心に、旅情をさそう唄声が胸にしむ。ローマは些か観光ずれしていて人があふれ小さな車がゴチャゴチャ走り街は汚く昔日の征服者の面影は今はむなしい。

 遺跡をのぞいては心に残る何者もないが、トレビイの泉の清冽な水の青さに何か救われたおもいだった。 夕食はガーデンレストランフエテユテーネと云うキシメンのような平べったいスパゲッティが前菜代りで肉の料理、デザートのフルーツサラダを頂く頃噴水のあるこの庭にも漸く暮色が迫り蔦の葉かげのランプに灯がともされる。古きローマと新しきローマに疲れ果てた身内をワインが快よくしみとおってゆく。(続く)

 福岡地区安定協 二月例会

 福岡地区安定協議会は二月例会を十日の定例日に開会、当日採り上げられた問題は前月例会に引続き@二日市問題A福岡市内のチラシ問題Bミルクメーカーへの申入れに対するメーカー側の回答(サービス現品にはその旨を明記する)報告などであった。

九州薬事新報 昭和43年(1968) 2月29日号

画像  医薬全商連主催 九州山口ブロック薬業者大会
福岡市で、熱気溢れた参加者の姿勢

 全国医薬品小売商業組合連合会(理事長、荒川慶次郎氏)は、武田日薬会長が小売窓口一本化の斡旋を保留して以来その動静が注目されていたが、最近その動きも活発化し、一番遅れた業界と云われる小売薬業者の経営指導など行ないたいとして先づ全国で最初の薬業者大会を九州山口ブロックにおいて開催することとなり、二月十八日(日)午後一時から福岡市、田辺製薬福岡支店大会議室において盛大に開会した。

 尚二十六日には東京薬業者会館において午前中理事会を、午後は各県理事長会を開き、同会に東薬連の代表を招き、実質的小売窓口一本化を図ることになる模様である。九州山口ブロック薬業者大会は各県代表者及び、小売、卸、メーカー各階の参加があって、約二百名が出席、非常に盛大であった。

 大会は先づ地元福岡県商組鶴田理事長が開会のあいさつをなし「難問山積の本年こそは冬眠からさめ、これらに取り組みたい」と述べ、次に荒川理事長は「抜本改正、再販問題、医薬品製造承認問題等大きな問題が山積しているが、今年こそは吾々の力を結集して、体質改善を図り、要求すべきものはいさぎよく要求したい。

 たとへば先の全商連理事会に於て作成した厚生省並に公取委当局に陳情することを内定した「陳情書」は来る二十六日開会予定の全国各県薬商組理事長会に諮って直に実施したい。(その全文は左記の通り)。それには九州が先づ原動力となって貰いたい」と述べてあいさつ、次いで講演に移り流通学者として日本の権威である学習院大学経済学部助教授田島義博氏の「変貌する小売薬業者」と題する小売薬業者にとって有益な講演を約二時間に亘って一同聴取、次に、「再販問題の経過」についてと題し、三共株式会社関川左経氏より、再販制度が問題になった契機から現在迄の経緯、今後の見通しなど詳細に説明、現在公取委では規制方策について洗い直しをやっているが、いづれにしても何等かの形で規制を強化することだけはハッキリしている。

 この問題についてはメーカー側も陳情しているが、医薬品の特殊性をさけび、小売業者こそ真先に再販を推進しなければならない。今こそ全国的に、強力に一本にまとまるよう九州から先づ強力に決起推進されたいと、力強く述べられた。それより各県代表から活発な次のような意見発表があった。

 @凝装ドリンクは一般消費者を欺瞞する行為であるので、全国的問題として採りあげ、一見して清涼飲料水と文明するよう善処されるよう全商連を通じて当局へ要望(熊本県代表上野氏)

 A現在業界は不安定裡の安定を保っているが、ミルクのサンプル(一般商品と同じ)が産院で販売行為がなされている件についてもメーカー側へ善処方要望(同)

 次に鹿児島県代表からは、再販品の値引に関して、メーカーにより、努力態度に非常な差違が見られるので、再販推進のため再販メーカーの反省を要望したい。

 次に福岡の古賀治氏は、再販による業界の適正な利潤について
 「八百屋一割、家具四割」と云って、利潤は自然相応するもので、医薬品は病気しなければ買わず、品目も、回転の悪いものも常に全部揃えて置く必要があるので30%は当然要求されるべきである。又政治性からも再販制度は必要だと主張すべきで、すべてに統制を実施したソ連は50年にして行詰り、現在は資本主義政策をとり入れつつある。自由社会は統制を加えて人類すべてが生き得るようしなければならない。私は福祉主義であるが、政治は貧困で、学者はマージンがなくても高いと云う。社会主義社会は右により、自由社会は或る程度規制せねばならないと思う。

 次に長崎県代表の隈氏は
 再販の規則は非常に不条理で、党利党略、団体の利益追求の具に使われている。再販の推進は国民の利益であると私は確信している。医薬品はゴボーや大根と同様に扱かわれては困る。と声を大にした。

 次いで福岡の芳野氏は、乱売者は再販が「悪」だと消費者にアッピールする方法をお示し願いたい、と述べ、これにて一応意見の発表を終え、議事に移って本会の宣言文を岡野福岡県商副理事長が、決議文を由利山口県商副理事長がそれぞれ朗読、満場拍手を以てこれを採択、それより白木医薬全商連副理事長の閉会の辞によって六時、意気溢れる大会を終了した。

 尚引き続き別室において各県代表者会議を開催、昨年長崎で開会した九州山口薬学大会の開局部会において「九州山口ブロックとしては医薬全商連を小売の窓口と認める」との決議を再確認、来る二十六日東京において開会される全商連各県理事長会について種々打合せなどを行った。

 本大会の宣言、決議の全文は次の通り

 宣言

 われら小売業者は、国民傷病の治療、健康の維持増進という現実のわれわれの社会的使命及び医療機関としての職能を確保し、かつ自ら防衛するため、また同時に国民医療の合理化を促進するため、次の通り宣言する。

 一、政府及び国会は明治以来、薬局薬店が果して来た国民医療への功績を正当に評価し、その現実の社会的職能と業権とを尊重し、かつそれを国民のために育成助長しなければならない。

 一、医療制度の抜本改正、合理化のため速やかに「真の医薬分業」が実現するよう促進の策を講ずると共に、現在の小売薬業者を名実共に完全な国民医療機関の薬局として活用参加させるよう国家的に施策されなければならない。

 一、医薬品の現行再販売価格維持制度は、消費者の利益を守るためにぜひ必要なものであるから、政府及び国会は観念論的物価論にこだわらず、国民のためにこれを保持存続するよう正当に認識すべきである。

 右宣言する。

 決議文

 顧れば明治百年、わが国に近代的薬事制度が確立されて以来、薬局薬店が国民傷病の治療、健康の保持増進、公衆衛生の向上ならびに国の医療経済に寄与して来た功績は正しく評価されねばならない。然るに戦後国民医療の方式が急速に変貌し、医薬品の重要性が大いに高まって来たことに関連し、健康保険制度における医薬品の比重が経済的に論ぜられるに及び、その責任が巧妙にしかも不当に小売薬業に転嫁され、薬局薬店の業権縮小、経済圧迫の方向に意識的に誘導されつつあるかに見られることは、まことに奇怪に堪えない。われら薬業者はこのような不正な陰謀と圧力とを排除するため、いよいよ結束を固くし勇気をふるい総力を傾けて、薬業の正しい在り方を防衛し、確保するために行動すこるとを誓う。右決議する。

 陳情書

 物価の抑制は、いうまでもなく当面の最も重要な国家政策的課題のひとつであります。私たち全国四万の薬局薬店の経営者及びその家族も、ひたすら物価の上昇が抑えられ、生活が良くなることを望んでいます。全国の薬局薬店で購入される医薬品の総額は、小売総物資の消費額〔年間約十兆四千六百億円(通産省、昭和四十一年商業動態統計)〕の約二・五パーセント前後(年間約二千五百億円程度)に相当するものと思われますので、私たちとその家族は医薬品以外の九七・五パーセントを消費者家計に依存しているわけであります。

 また、総理府統計の昭和四十年度家計調査によれば、わが国の一世帯当り総消費支出は七十八万三千円に対し、診療費を除いた保健医療費(大衆医薬品の購入額)七千五百円で、全体の〇・九五パーセントに相当するに過ぎません。

 かりに、純粋の給与所得者を一〇〇パーセントの消費生活者と見做しても、それらの人たちと私たちの消費生活の内容には格別の開きはありません。しかも、全国の薬局薬店は平均的に見て、全国民の中位如何に位置する営業所得者であって、営業の格差から考えると大多数の者は決して富裕な生活に恵まれている階層ではありません。私たちにとっても、物価の上昇は大へん苦痛なことであり、その立場は一般に「消費者」の名で呼ばれている給与所得者の人たちと全く同等であり、私たちもまた紛れもないごく普通の消費者国民なのであります。

 近年の物価上昇などの推移についての信頼すべき公式諸統計によりますと、最近約十ヵ年の間に労働賃金は約二・四倍に、生産者米価は約一・八倍に、また総小売物価指数は一・五倍近くに上昇したとされています。ところが、私たち薬局薬店の取扱主商品である医薬品の消費者物価指数は、右とほぼ同じ期間におおむね二〇パーセントの下降を示しております。(例えば、風邪薬一四パーセント、外傷薬一六パーセント、栄養保健薬四〇パーセントなどいずれも最近十ヵ年の間にすべて値下がりしています。)

 佐藤総理大臣は「物価はもひとつの面において所得である。」と申されましたが、私たちの消費生活の九七・五パーセントを占める分野が十年間に約五〇パーセントの物価騰貴となっているのに拘らず、私たちの所得の源泉である医薬品価格が二〇パーセントも値下がりしているというこの事実は、薬局薬店の経営が今後とも決して楽観できないという不安を明らかに物語っております。

 私たちの消費における家計費の増大と、所得における取扱商品の値下がりという逆行現象は、薬局薬店の全体的貧困化、所得の低下を明らかに示しているものと思われます。この十年間大衆医薬品消費の相当な伸びが年々見られたため、私たちの営業は右の素因の顕在化を一応は抑えることができたのではないかと思われますが、ご承知のように、近年大衆むけ医薬品の需要は徐々に鈍化する傾向が出てきております。このような素因と傾向とを併せ見ますとき、薬局薬店等小売薬業の全般の経営と生活が、近い将来憂うべき状況に見舞われるのではないかという不安が予想されることは当然であり、すでに業界の一部には危機意識さえ兆しはじめているのであります。

 いま申し述べましたように、医薬品が、最近十年間の物価上昇に逆の寄与をしてきたことは事実であり、その医薬品に対して物価問題の責任を問うことは、全く筋が違うといわねばなりません。いかに物価抑制が国及び社会の重要な施策であるとはいえ、今まで他の物価の上昇過程に、逆に値下がりをしてきたということは、医薬品業界の消費者に対する良心と誠意を示すものであるといっても過言ではありません。

 自画自賛はもとより戒しむべきことではありますが、値下がりした私たち薬局薬店の大衆医薬品に対して世間の風当たりは余りにもつめたく、新聞やテレビや或いは世論と称する数々の言論や国会などにおける一部の容赦ない批判、非難、攻撃には、医薬品小売業界の良心や、誠意をほとんど認めていないかのような厳しさが感ぜられるのは、全く残念でなりません。

 私たちはそのようなきびしい「世論」の攻勢によって、値下がりした医薬品をさらに強制的に、圧力的に、コストダウンさせようとする政策が強行されることに対しては、強い恐怖心を抱かざるを得ません。もともと物価抑制の問題は国民全体、特に中位以下の比較的低所得者階層の消費生活を守るという民生安定の基本理念から発しているものであります。その点物価抑制の面のみに目を奪われ、その功を急ぐの余り、われわれ医薬品小売業界に不幸な犠牲を強いるようなことであってはなりません。

 日刊紙などの論調を見ますと、生産性の低い営業者の過剰保護政策が、物価問題進展の一つの障害になっているという主張がしばしば繰り返されていますが、私たち医薬品小売業界の平均的営業水準が現実に零細であって、生産性もそう高くないのでありますから、右のような零細業態を切捨てるという冷酷な発想は、医薬品業界の合理化に役立つよりはむしろ業界全般の動揺と混乱に影響しやすく、その結果が消費者国民にも不利益をもたらすようになるのではないかとも憂慮されるのであります。いわばそのような発想は非現実的な犠牲無視の非情な物価論であって、医薬品小売業界にとっては全般の存立が脅かされる恐れのあるものであり、強く反対せざるを得ないのであります。

 経済における独占禁止の政策は、いいかえれば、競争維持の政策であると理解しております。その立場に立てば、独占禁止法の例外的規定である再販売価格維持について、それが競争を抑制し、または、閉鎖する性質を持つという表面上の理由から、物価問題とも関連して「再販は流通経済上の悪」であるという烙印を押され、いわゆる「世論」の指弾をうけるにいたっているのであります。

 しかし、その再販悪一辺倒の論理のなかには、多分に観念論的な粗雑性も目立ちます。これら観念論者たちは「値段の下がるべきものが下がらない再販という価格拘束の行為は、消費者にとって不利益であるのか、或は利益であるのか」という巧妙な二者択一の質問を予め設定してかかるのが常であります。

 これは「黒は一体黒であるのか、白であるのか」というふうに問いかけるのに等しく、全く一方的で、強制的な設問なのであります。他の再販品目のことについては詳しく知りませんが、医薬品については再販をあまり採り入れてなかった時期と、多く採り入れた時期とには殆んど関係なく、事実、公式統計が示すような生産流通合理化による値下がり現象を示しております。それは他の一般消費者物価の年々の高騰に対し微力ではありますがブレーキをかける役割を果たし、その意味では国民の消費生活にそれなりの貢献をしてきたということになるのではありますまいか。

 そういう物価問題への「寄与」をわずかながらでも果してきた医薬品に対し、再販をもし採り入れていなかつたなら、さらに値下がりをした筈だときめてよいものでしようか。繰返しになりますが「物価」のもうひとつの顔は「所得」であります。「もつと値下がりをした筈だ」というような考え方は、現実を無視し、医薬品業界の所得を全く顧りみない偏狭な論理であるといわねばなりません。

 私たち医薬品小売業界はここにいたつて、現実的に再販は医薬品の実勢消費者価格を不当につり上げたり、また不当に硬直化したという事実は絶対になかつたし、将来もまたその可能性はないということを確信をもつて主張したいと思います。

 さらにまた、現在医薬品小売業界内部にある「一般物価の上昇と医薬品価格の下落」という物価動向の矛盾から不況素因が顕在化する傾向が見られます。それ故、医薬品のこれ以上の値下がりを強制するような政策、法的圧迫措置の強行がもし行なわれるようなことがあれば、それに対しては絶対反対の意思があることをあらかじめ明確に表明しておきたいと存じます。

 しかし、そうは申しましても、私たちは経済力の弱体な平均的に中位以下の営業所得者の温和な集団であるに過ぎません。小売業薬業界には別に小数ながらアウトサイダー的な存在として大資本スーパー、量販大型店など消費者の価格利益のみを誇張し、なかには医薬品販売の正道を没却するような奔放な動きも見られないではありません。

 これらの業態はすべて大金持でありますが、私たち業界の大勢主流にはあえて同調せず、チヤンスがあれば「弱肉強食」の理を地でゆこうとしている小数反対派であります。従つて、私たちはそういうアウトサイダーとは袂をわかち、ただひたすら客観的事実と現実的論理とを掲げることにより、情緒的な事実誤認あるいは偏見や既成概念による観念論等に抵抗し、その主張を正しく聞き入れていただくことによつて、関係各方面及び識者各位の理解と支持とを獲得し、それが政府及び国会の政策ならびに審議に公正に反映することを願うのみであります。

 さて再販売価格維持行為が合法的に認められるにいたつた当時、その認定の理由として主として次の四つの目標が了解されたといわれております。
 第一、おとり廉売を防ぎ、メーカーの商標権を擁護すること。
 第二、小売業者を乱売から保護すること。
 第三、消費者の利益及び立場を「守る」こと。
 第四、流通段階の合理化促進に役立てること。

 ところが昭和四十一年六月、当時の物価問題懇談会が物価抑制の施策と関連して、再販売価格維持行為を議題のひとつに採り上げ、それを批判的に政府に答申して以来、再販についての流通経済上の悪い効果の面が物価とからんでにわかに集中的に採りあげられるような風潮が生じてまいりました。その顕著な影響として再販売価格維持行為の規制に関する法律改正への動きが胎動するに及び、昨年の第五十五国会にはその提案がなされるという動きがあり、それは事情あつてついに見送られたまま今日に及んでいるのであります。

 医薬品小売業界(薬局薬店)におきましては昨年四月、右の規制に関する法律案の内容が公正取引委員会によって示されました際、

 (一)医薬品については特に現行法の範囲において再販価格維持行為を是非認めていただきたい。

 (二)医薬品のおとり廉売をもっと厳しく取締るようにしていただきたい。

 (三)医薬品の再販売価格維持行為をいまより厳しく規制すれば、消費者の見せかけの利益は一応守られるように見えるが、医薬品の性質や社会的な機能から見て消費者の実質の利益がかえって侵害される恐れが強いこと。

 (四)医薬品の再販売維持行為を今より厳しく規制した場合、医薬品の価格がかえって実質的に騰貴し、逆効果を招く可能性も少なくないこと。などの要望、意見等をとりまとめ、それに詳細な理由書を附して再三の陳情を行なった次第でありました。

 その後公正取引委員会におかれましては、北島委員長が辞任せられ、新たに山田委員長のご就任を見ましたし、本年に入って再販規制についての検討を改めて始められることになったとも聞き及びますので、医薬品小売業界としてその推移に深い関心を払いつつあるのであります。よってこれまでの医薬品小売業界の要望、意見を取りまとめ、特に医薬品販売についてはぜひ再販売価格維持行為を従来どおり認めていただきたいこと、また、再販売価格維持制度は、世論でいう流通経済の悪一辺倒論にもかかわらず、医薬品に限っては販売、購入、特に正しい使用に関連してむしろ消費者の利益を守るものであることについて充分なご理解をいただくように、ここに改めて陳情書を提出申しあげる次第であります。詳細については別記陳情理由書をご参照いただきたくお願い申しあげます。

 陳情理由書

 第一 大衆医薬品は主として国民の傷病を治療または予防する目的で日常使用されるものであり、その販売購入は国民の医療と健康保持に密接に関与し、重要な意味をもつものであるから、特にその「目的への適合」と「安全性の確認」が確実に行なわれるようにするため、再販売価格維持を規制することなく存続させていただきたい。

 (注‐1)
 最近の厚生省の国民健康調査の結果によると、国民一人は平均して一年間に、三四・四日間傷病の状態にある。これを治療する方法としては、医師、歯科医師等の医療機関によるもの約六一・七パーセント、薬局薬店から購入する医薬品によるもの約三三・二パーセント、その他五パーセントとなっている。この三三パーセントの傷病の直接治療とは別に、健康増進及び疾病予防のための大衆医薬品があり、薬局薬店への依存度は大きい。

 (注‐2)
 医薬品は薬事法に規定された「構造設備」を完備した上、法的に資格のある「管理者」(薬剤師など)によって供給されなければならない。再販売価格維持の流通経済上の効用の一つである最小限度の経営の安定がないとこれらの薬事法上の営業要件を確保することがむづかしくなる。薬局及び医薬品販売業は都道府県知事の許可が必要であり、「構造設備」については、例えば薬局では、一九・八平米以上の面積、六・六平米以上の調剤室、その他冷暗所、貯蔵施設、調剤及び薬品試験鑑定の設備ならびに器具、毒・劇薬物施設、麻薬庫など特別の投資を必要とし、その費用も軽少ではない。また医薬品の保管、授与、販売については専門の学識と技能とをもつ薬剤師(管理者)の「実施」の管理が必要である。この管理は専門職によって提供される薬事法上のサービスであって、消費者の実質の利益に直接むすびつくものである。このサービスはスーパーマーケツトのような経済的合理化によって生産性を高めることができないが、消費者にとつては何よりも重要なサービスなのである。

 (注‐3)
 右の薬事法の規定は医薬品の品質と安全性を確保することを目的としており、経済的な面での法的な保証の配慮は全くない。従って医薬品の乱売を防ぎ、再販売価格維持により適正なマージンを確保することによって、その費用に充当するよりほかに方法はない。

 (注‐4)
 薬事法は「医薬品の性状及び品質」についての基準を設定し、その品質性状基準を確保し、責任の所在を明らかにするため「表示」「広告」などについて必要な種々の規定及び規制を行なう。従って秩序ある流通経路を通じて販売を行なうことが不可欠の要件であり、その要件を充たすためには再販売価格維持の方法が最も適当であると思われる。

 (注‐5)
 薬局薬店は明治以来百年ちかくの伝統の流れのなかにあり、また現実に国民が利用している軽医療機関としての機能を充分に確保するため、必要な数多くの種類の医薬品を常に在庫し、都会でも僻地でもいつでも同じ価格で容易に供給できる態勢をもつことが必要である。このためにこの機能保持のコストが保障されていなければならない。

 また、たとえ零細ではあつても、国民消費者に必要な数の薬局薬店を全国に保持存続させ、売上回転率の大きいもののみでなく、回転率の小さな医薬品もなるべく幅広く常備させ、すべての傷病については安全にかつ廉価に治療する道をひらいておく必要がある。また医薬品の進歩発達に従い、積極的に国民の健康を守り、かつ増進することが消費者国民にとつては重要な利益である。

 もし医薬品において再販売価格維持をいまよりも厳しく規制されるようなことになれば薬局薬店は生業を維持するための個人的利益を求めることに追われ国民の傷病、健康保持に対する社会的責務の遂行が困難になり、消費者の利益が損なわれるような結果を招きやすい。医薬品販売における再販売価格維持に関連して、消費者の利益を考える場合は、価格競争による利益の質量と、医薬品の目的適合及び安全性確保についての利益の質量とをそれぞれ彼比較量して判断されるべきであると考える。

 第二 医薬品販売においては、現実に現行の再販売価格維持制度が消費者の価格的利益を害しているというより、かえって実質的には消費者の健康保持上の利益を守り、これを増進している面が大きのと考えられる。従って、医薬品の再販規制を考慮するに当つては観念的価格形成論や単なる物価への期待観測論に惑わされず、薬局薬店の社会的機能の面より重視されるよう要望いたしたい。

 (注‐6)
 医薬品の種類は非常に数多く、そのため消費者は一品、一品について充分な知識と判断を欠くのが実情である。また、たとえ頻用されていても「実質の鑑別」と「効用の判断」は正確にはむずかしいものである。薬局薬店は鑑別と判断とに正しい助言指導を行なうものであるから、医薬品の信用を確保し、国民が安心して適正に使用するためにも医薬品の再販売価格維持が必要なのである。

 (注‐7)
 医薬品の価値もまた品質と価格によって評価され得るものであるが、個々の場合の個々の消費者にとつては、何よりも「目的への適合」と「安全の確認」こそ最高の価値であり最良のサービスになるものと信じられる。この価値及びサービスという利益は再販売価格維持によって正しく保たれることができる。

 (注‐8)
 再販売価格維持については、売り手による過剰な推奨販売が行なわれ易く、押しつけ売りになりやすい弊害があるといわれるが、それは他の医薬品が利益ゼロのような形の乱売が行なわれているために起る弊害であって、再販制度の罪ではない。罪はおとり廉売の方にある。むしろ医薬品の再販は一物一価であるため、二つ以上の同種商品の品質、銘柄、価格の比較を容易にし、栄養保健剤などについてはかえつて消費者の自主的な選択を促す効用も実際にある。

 (注‐9)
 おとり廉売や採算無視の医薬品の安売りは、地域的にも、頻繁な価格の変動が恣意に、感情的に行なわれ、それが甚しければ市場は著しく混乱し、不透明になる。消費者はそのために困惑し、医薬品の目的適合や安全確認などの大切な要件が閑却されたり、不正な使用傾向を生じたり、しらずしらずのうちに乱用に陥ったりする。この現象は昭和三十四年から三十七年ぐらいにかけての業界の乱売の時期に業界自らが切実に体験したことであり、厚生省や各都道府県薬務当曲も再三このような傾向や現象に対し警告を行なっている。

 (注‐10)
 スーパーマーケツトや量販店の「セルフサービス的顧客回転率を意識した」医薬品の販売方法は、薬事法の精神からも問題があるし、また医薬品を軽々しく購入し、軽々しく適用するという医薬品の特性を無視するような悪い使用習慣を醸成しやすい。これは国民の保健衛生上留意せねばならない問題の一つである。薄利多売それ自体は非難すべきではないが、その弊害は薬局薬店の薬剤師、薬種商の職能から見て黙視できないものがある。薬事法の法益である「安全性の確保」と消費者の最大の実質利益ともいうべき「目的への適合」が軽視されるようなことがあってはならない。

 (注‐11)
 医薬品の消費者価格は安いほどよいわけではあろうが、消費者の大多数は「実質的に安い」ことを望んでおり、その要求のなかには薬剤師などの懇切な助言と適切な指導が含まれているものである。消費者は医薬品の乱売を望んでいるところか、乱売に対しては不信の念を抱くものである。

 (注‐12)
消費者は医薬品の乱売や安売りを必ずしも望んでいるものではない。消費者の大多数が最も望んでいることは、薬局薬店の適切な医薬品及び健康についての助言と指導である。医薬品の乱売が値引きがないということをもって、再販売価格維持行為を悪であると断定することはできない。

 (注‐13)
 特別な立場にある人、プロフエツシヨナルな消費者団体、その運動家などは別として一般の純粋な立場にある大多数の国民消費者は、医薬品の再販売価格維持制度については薬局薬店の助言や指導を求める点に利点を認め、メーカーによる価格決定の方式についても、統一価格に対する安心感の利点を認めている者がむしろ多い。そのような大声をあげない大多数の消費者の声こそ最も重視すべきである。

 第三、医薬品の再販売価格維持による販売の方法は下がるべき価格をも下げさせない作用をもつものでないことは、最近十年間の大衆医薬品の価格低下がよくこれを実証しているものと思う。もし、再販売価格維持を禁止したり、あるいは厳しく規制したらどうなるであろうか。医薬品小売業界では、消費者欺瞞の商法や一部薬局薬店の売らんかな商法によるあくどい宣伝が再現し、医薬品の不適合使用や過剰な乱用などの悪い結果をも生じ、非良心的な推奨販売がむしろ巧妙執拗化し、そうなつた場合の消費者自身の唯一の利益である価格の厳しい競争も漸次顧客誘引の単なる手段として使われるに過ぎず、優良な医薬品は目に見えて利益商品に駆逐されることになる。

 このことは、結局消費者の医薬品に関する支出負担を減少することにもならないであろう。この推察は単なる観念上の想像に基づくものではなく、小売業界にとつて記憶にまだ新しい、昭和三十四年から三十七年にかけての生まなましい体験に思いをいたした上での考察である。単に再販規制を免かれるためのデツチあげ理論ではないことに留意していただきたい。

 またこのような状況は良心的でまじめな薬業者を委縮沈滞させ、その逆の好ましからざる営利追求者の跳梁を招くことにもなる。医薬品の販売については学識、技能に加えて職能的な相当高い倫理が要求されるべきものであるから、もしこのような状況下で医薬品の悪質な商習慣が、長期慢性的に浸潤するとすれば、国民生活全般にとつても非常な悪影響を及ぼし、憂うべき結果をもたらすことになる。

 (注‐14)
消費者物価の上昇と独禁政策との関係については識者も指摘しているとおり、あくまでも間接的なものに過ぎないと判断される。小売段階でのおとり廉売や顧客誘引のため、巧妙で多様な価格構成(差益構成)の方式は、宣伝の力によって多くの消費者を現実には引きつけてはいるが、それが消費者物価を下げていると思うのは、情緒的ないし感覚的な受取り方に過ぎない。その証明は可能である。

 日本では昭和三十年代初期からスーパーマーケットが消費者市場に登場し、年を追うてその進出は華やかにかつ盛んになり、漸次スーパーマーケットの充足と大型化現象を招いた。スーパーマーケットは物価抑制の花形か尖兵のように誇張し、消費者大衆もまたその宣伝をうかうかと信じ、またいまも信じている人もあるが、そのようなスーパーマーケット時代の到来にもかかわらず消費者物価は年ごとに着実に高騰を続けてきた。そのことは物価の長期的、抜本的な抑制にはあまり効果がないということの有力な証明材料といえる。要するに日本のスーパーマーケットは繁栄し、発展したけれども、日本の消費者物価は現実において重大な、国家的、社会的問題となるほどに高騰してきたというのが誰しも否定できない事実なのである。

 (注‐15)
 再販売価格は一商品一価格であるため、同一商品間で価格の競争がなくなり、従って物価がつり上げられる恐れありとの論理から、再販売価格維持を厳しく規制せよという主張が生じてきているわけである。しかしわが国の医薬品製造業界のように上位企業への生産集中度のきわめて低い(上位十社の生産額独拠率四二・三パーセント)ところでは、同種同効品の新規競争参加が容易であって、そのため烈しい価格競争が起りやすく、また現実に行なわれており、一たん定めた競争品の消費者価格をつり上げることはむずかしい。

 実際にも重要な大衆医薬品や頻用されるものや同種同効品の間で消費者価格のつり上げられた例はいままでに殆んどない。その反対に値下がりしたものはきわめて多い。中には三三パーセントも値下がりしたものもある。そのことは、再販大衆医薬品の場合もおしなべて同じであって、そこでは品質(有効主成分の優劣の比較競争や処方の優劣の競争)が絶えず行なわれているといってよいと思う。小売業界から考えて見ても、総対的には将来も再販消費者価格の現状維持が精一杯のところであろうと思われる。

 (注‐16)
 薬局薬店の医薬品販売について一部には、例えば「くすりは女子店員がいて、客の求めに応じて渡せばそれですむ。いちいち格別な知識や技術は要らない。」という薬事法を否定するような見解が少なくない。これは大変危険な考え方であり医薬品乱売の弊害がいまなお延長していることを示す。スーパーマーケツトの医薬品商法を見れば右のような感じが起るのも無理はない。しかしこのような顧客誘引の単なる手段としての医薬品販売は本来ではなく、むしろ排斥し絶滅すべきものである。一部の歪められた特殊な現実を正当な事実と誤認し、その謝った認識を基として医薬品の再販売価格維持行為規制の口実とするのは間違つている。

 薬局薬店管理者の職能の社会的利用は、薬事法の規定を持つまでもなく、国民の保健衛生上重大な問題であり、識者もすべてこれを認めているところである、メーカーが広告宣伝しているというマスコミ現象を過大に評価することによって、薬局薬店の管理者の職能を否定することは大きなあやまちである。

 メーカーの広告宣伝がオールマイテイなのではない。一口に胃腸薬といつてもその適用や効果はまちまちであり治療や予防目的への適合はきびしく選択される必要がある場合が少なくない。消費者はメーカーの宣伝広告によってくすりの名と、おおよその適用と企業イメージとを知るにすぎない。実際に国民は薬剤師などの適切な助言指導を切実に求めるものであり、それを無視するのは医薬品業の真の実情を知らない者に限る。

 わが国では薬局薬店の指導と助言とにより明治以来百年のながきにわたつて無数の傷病が治療されてきた。この社会的機能はいまも失なわれていないし、将来も失なわれないであろう。そういう実績に目をふさぐことは許されない筈である。そういう正しい医薬品販売のあり方を望んでいるのが大多数の消費者なのである。これについて一部の認識不足や観念論が拡声的に主張されて、著しく実態をゆがめるような傾向があるのは甚だ遺憾である。また正しい医薬品販売のあり方を望む大多数の消費者は医薬品の価格が統一している方が安心するという。その現実の消費者の心意を尊重することも大切である。

 (注‐17)
 現在医薬品小売業界では、全体の約三〇%相当額を占める再販売価格維持商品のほかは、有名品、頻用品についてスーパーマーケツトなどの安売り競争に同調、追随する価格競争が激しく行なわれている。その医薬品の総差益率は平均的中型店において概ね二三%(各地税務署査定)となっており、リベートその他の雑収入を加えても二六%程度にしかならない。この差益率は昭和四十一年日本薬剤師会調査によるフランス薬局の粗利益三三、一%、イタリーの同じく二四、八%、ドイツの安い薬品四一、二%、高価薬二五%、ベルギーの約三〇%のいずれに較べても、低率であり、その点わが国の薬業者は決して恵まれているとはいえない。しかも、この高くない現実の生活維持にギリギリの差益率を、乱売の嵐の中で辛うじて支えているものが再販売価格維持医薬品なのである。

 わが国の小売業界では、昭和三十四年から三十七年くらいにかけて全国的に医薬品の乱売が行なわれ、保健衛生上種々の弊害を及ぼしたが、その競争の勢いはその後も再販品を除いては決して衰えてはおらず、むしろ激化しつつあるものと認められる。もし医薬品の再販を禁止したり、規制したりすれば、価格競争は当然野放し状態になり、薬局薬店の粗利益率はさらに必然的に低下する情勢を招くことは確実である。しかし、それによって医薬品の物価が下がることを期待するのは早計であり、かつ甘い観測であるといわねばならぬ。

 何故なら「小売業者の過当競争はそれが少々激しくても、小売業者は多種類の商品を販売しているから、一部の商品が売れなくなっても他の商品が売れなくなっても他の商品で埋めあわせることができ、また取扱商品を変えることも比較的容易である。だから遙かにその打撃は少なく、共倒れになる心配はない」(「消費者不在の過当競争」中央公論四二年冬季経営号参照)という考え方があるように医薬品小売業の場合現状でも低い差益率を生活を犠牲にしてまでこれ以下に低下させることはできないから、そこに当然二三%の差益率を維持しようとする反応が起る。

 もともと差益率を上げる方法は部外者が考えるように簡単ではなく、特に医薬品の場合は指名買いが約五〇%ちかくあって意の如くならない上、国民医療及び健康増進保持の最善をはかることが倫理的に要請されているため、良心的であり、かつ、学識の点でもすぐれている薬局薬店ほど差益率を上げる工夫は難しい。

 しかし、再販売価格維持が現状よりもつと厳しく規制されそのために乱売や安売りがひどくなれば、どうしても二三%程度の最小限の差益を確保するため卑しい商法が用いられるおそれもあり特に良心的ではないほど、学識的に程度の低い者ほど、薬局薬店の本来の姿をゆがめやすいという結果になる。そうなって営利目的に偏向する者が、品質が良く国民に推奨すべき医薬品を乱売のために取扱わず、また或は故意に推奨や適用をさけ身体への適合価値や、品質のより低いものでも利益のために押しつけ推奨するという傾向がつよまれば、不利益を蒙り、不当なしわ寄せをうけるのは消費者国民に外ならなくなる。

 学識が豊かで良心的な薬局薬店は利益低下に悩み、その社会的機能を弱め、生活に苦しみ正しい医薬品販売への意欲を失って委縮するばかりでなく、医薬品販売に悪い商習慣を浸潤させ、良質である医薬品が利益商品に駆逐され、国民医療の正しい姿を歪めることに何の社会的利益があるのであろうか。しかもその場合、最大の目標である医薬品消費者価格の低下も得られることはない。全く百害あって一益なきものになるしか考えられない。

 このように医薬品の再販売価格維持についてそれを規制して物価を下げようとする発想ないし意図は、現在決して豊かな暮しをしているとはいえない、一般の小売薬業者を犠牲にし、また、「搾取」することによって物価抑制の一助にしようとするもので、それ自体正当なものでないのみでなく、結果において医薬品の消費者価格を下げることにならず、かえつて業界を不必要に混乱させ、悪質な商行為を発生させ、消費者国民に不利益を与えるものであることを理解願いたい。このような誤った政策が排除されることを心から願わずにはいられない。

 (注‐18)
 医薬品の再販価格維持を禁止したり、いまよりも厳しく規制したりすれば、流通末端での大資本スーパーマーケツトによる医薬品のおとり廉売は、それだけに激しさを増すことは必至であろう。スーパーマーケツトでは、他の商品部門に顧客を誘引することが医薬品販売の第一の目的であるから、医薬品販売を主業または生業として国民の医療機関の役割を果たしている薬局薬店は、当然のように経営の窮地に追いこまれることは明らかである。

 このように再販売価格維持の規制ないし禁止は、大衆医薬品の取引秩序の混乱を招き、大資本スーパーマーケツトの利益を助長するのみであって、それ以外の生産、配給、販売の三部門の医薬品業者を傷つけ、さらにそれによつて消費者の利益をも必然的に浸してゆくことになるという不当性を否定することができない。

 第四、医薬品の再販売価格維持制度採用においては現在、製、配、販の流通機構をすっきりと一本化系列下し、従来非再販品の取引において見られた二次卸や中間卸などの不合理な段階を完全に排除した形で行なうことに成功した。これは一般にいわれている流通機構合理化の二つの型のうちの「縦の合理化」に該当するものである。医薬品販売の場合に限り、もうひとつの下からの合理化の型である末端大型化(スーパーマーケツト化がおとり廉売を常套手段とし商品回転率のよいものしか扱わないから、消費者の実質の利益(目的適合性、安全性)や医療機関としての小売薬業の保持に適当でない面が多いと思われるのでむしろ現段階で、一般薬局薬店の末端の経営合理化を促進する方がより望ましく、かつ、社会的な実益をもたらすものと思われる。

 このように医薬品の再販制度採用は一般にいわれるような「流通機構の阻害や非合理化」ではなくて、合理化実現に現実に役立ったもので、いまになって再販制度を厳しく規制することは、せっかくの医薬品業の流通合理化への前進に水をさす結果になるおそれがある。またこの流通合理化をさらに押しすすめて、流通末端である薬局等の経営合理化の作用を徐々に果たしてゆくものと考えられるので、この点でも医薬品業界にとつては再販売価格維持を規制しないようにする方がよいということを認識していただきたい。

 第五、終りに、再販売価格維持に伴なう弊害の排除については、別途に法律規制をしなければそれができないというようなものではないと考えられ、現行独占禁止法の運用によって解決され得るものであることについて考察していただきたい。

 また、現行独占禁止法「第二十四条の二」によつて認められている再販売価格維持の品目は、著作物、医薬品、化粧品など七品目にすぎず、厳しく限定されており、外国のそれに較べて取引上の拘束条件が著しく弱いものであり、この上さらに再犯の規制をする必要はないように考えられる。

 (注‐19)
 (1)わが国の法的再販売価格維持行為には、同じ再販を認めている欧米各国に見られるような「ノンサイナー・クローズ」制がない。つまり、再販売価格維持契約をしていない者に対してその再販品の廉売を停止することはできない。
 (2)消費生活協同組合等いわゆる十四団体に対しては再販売価格維持ができない。
 (3)再販契約の成立後(また契約の内容を変更したときも)、三十日以内に公正取引委員会に届出なければならない。
 (4)再販売価格維持の弊害については独占禁止法の他の条項に基づき規制または排除できるような規定がある。これ以上ことさらに法規制の必要は認められない。


画像  政府の了承を得て 再販規制単独立法見送る

 公正取引委員会の山田誠一委員長は二十二日再販売価格維持行為の規制強化法案を今国会に提出しないことと、公取委の再販行為の取締りについては、現行の独禁法の運用を強化し、再販指定品を厳しく絞って行くことについて政府の了承を得、一方同日午後には記者会見し「再販規制は独占禁止法の運用強化で十分だとの結論に達したので単独法の国会提出は見合せた。然し将来必要だと思われるときは再販規制強化法案を再び出すこともあり得る」と語った。

 公取委が同法等の単独立法を断念したのは、若し提出すれば業界の強力な抵抗で政治的に内容がゆがめられ、骨抜きになる虞れがあること、外に新法案には法制技術上の問題も残るなどの理由があり、取締りの目的達成には独禁法の解釈を厳しくすることによって十分規制はできるとの自信を得たからである。

 公取委としては単独法のかわりに独禁法の運用を厳しく、先づ、現在の再販指定品目(化粧品、医薬品、家庭用石けん、歯みがき、毛染め、海外旅行者用カメラの六業種)もでき得るだけ品目を減らし且つ指定をもはずすようにする方針であるものと思われる。山田委員長が表明した単独法案の見送りの経過と、今後の再販規制の強化についての方針は次の通りである。

 ▽元来再販行為は「おとり廉売」など不当な取引きから小売業者の利益を守るためのものであるが、現在実際には流通段階に於ける不当な価格拘束によって小売価格の硬直化をもたらし、消費者物価の底固めの原因となっている。依って公取委としては消費者保護のたてまえから再販規制を今後一層強化する方針である。

 ▽再販行為に関する従来の判決例や審査事件に鑑みて再販行為について慎重検討した結果、新たに再販規制の立法を行う必要性は認められず、寧ろ親法である独禁法の運用強化を計ることが最も有効であるとの結論を得た。

 ▽指定以来十数年もたっている指定商品を洗い直しこの制度が有効に利用されていない品目は大幅に削除することとする。

 ▽近い将来、単独立法の必要ありと判断すれば直に立法措置を採る。


 日本薬剤師会 第24回代議員会 武田会長重任

 日本薬剤師会第24回代議員会は二月の二十一、二十二日の両日、東京、薬業健保会館において代議員殆んど全員出席して開会、園田厚生大臣並に日本医師、歯科医師両会長の祝辞があり、分業一色に盛り上つた活発な代議員会であつた。また任期満了による役員改選では、予想通り、武田会長の重任となり、副会長は井出市蔵(再)、桜井喜一(再)、鈴木誠太郎(新)の三氏に決定した。

 第一日は岩崎理事司会、井出副会長開会のあいさつに次いで武田会長演述後、坂口議長により議事に入り、@昭和四十二年度会務ならびに事業報告及び四十一年度決算A四十三年度事業計画並に予算B定款、定款細則、代議員選挙規定の一部改正などそれぞれ説明があり、以上三議案は委員付託となり、それより総括的質問など活発に行われて厚生大臣に対する要望を左記決議として採択した。尚この間、決算の一部、三師会関係などについては一時記者会見をはづして秘密会が行われた。

 決議

 一、医薬分業の可及的早期実現を要望する。
 一方われわれとして薬局の受入れ体制の整備に努める。
 二、甲表病院、乙表病院及び保険薬局の技術料の均一化をはかられたい。
 三、薬剤師の調剤技術料の適正化をはかられたい。
 四、病院薬剤師の職能の向上をはかられたい。
 五、医薬品の製造承認等に関する基本方針は、医薬分業を基本理念とする点で賛成である。
 しかして、実際運用面においては医療制度の適正化と時を合せ薬剤師職能を尊重し、薬剤師業権を確保されんことを要望する。

 第二日は午前中に各委員会を開き、午後の本会議で前記決算(歳入額八八、〇一二、五一四円、歳出総額八二、六九一、三一一円、剰余金五、三二一、二〇三円)、事業計画((1)医薬分業の推進(2)薬剤師職能と薬業経済(3)会の組織と活動の強化)予算一〇二、三八四、五〇〇円を執行部原案通り可決々定、定款等一部改正の件については、その一部を差し代えて可決した。それより、役員選挙に移り前記会長、副会長並に監事を選考委員制により選出、本会議に諮ってこれを決定し、監事は老沼秀雄(東京)加西道雄(奈良)佐伯浩(長野)の三氏と決った。因に本年度代議員会は特に分業ムードに盛り上りを見せたが、三師各会長のあいさつについて考がうれば、三師会の協調は必ずしも好調であるとは感じられない面がうかがわれた。

 尚第一日に決議した厚生大臣に対する要望書事項は代表者(稗日薬理事、山村実治代議員)によって翌二十二日厚生省坂本薬務局長に手渡され、同文を中心に種々話し合つたが、山村代議員の報告によればその内容は左記の通りである。
 (○は薬剤師側発言、▽は局長回答)

 ○私ども日本薬剤師会は昨日から全国代議員が集まり、分業について種々討議を致しました結果、茲に決議文を持つて参りました。昨日は園田厚生大臣も代議員会にお出で下さいまして従前にない強い明確な形で医薬分業のことをハツキリ表明されましたが分業実現には多くの困難と課題がございますので何分共によろしくお願い致します。

 私ども薬剤師会としても受入体勢にただ今も努力をして参る考えでありますが分業は出来るだけ早期実施をして下さい。そしてその際技術料の適正化、甲表病院、乙表病院、保険薬局の技術料の均一化又調剤技術料の適正な決定を考えてほしいのですが

 ▽医薬分業の完成は診療報酬体系の整備に依って出来上ると存じます。ただ今言われましたように診療報酬体系には種々改善解決せねばならない点が多いと思います。決議文の要望はすべて良く分りますので、改善整備に努力して参ります。

 しかし分業実施に対する薬務行政関係者も薬剤師会もマンネリ化的考えの人があるのではないかと考えます。ただ今私は全国主管課長会議でも申してきましたが、薬務課も従来の考え方や消極的態度を捨てて、更に過去のシキタリにとらわれることなしに分業実施に前進すべきだと強く申して参りました。分業実施は薬剤師会だけがやるのだという考え方は捨てて各県薬剤師会と協力して薬務課の仕事にして考えるように申し伝えておきましたので、各県でも種々困難な事情もありましようし、又状況も各県異なつておりますが、大いに進めてほしいと思います。

 抜本対策の実現は分業に依って始めて完成すると申しておきました。又現在ほど、国会も各党も各団体も分業を希望している時はないと思いますのでこの時を生かしてほしいと存じます。タナボタ式考え方では駄目ですよ。

 次に三師会の提携ですがこれは非常に重要なことであります。武見日医会長の考え方も数年前からすると変って来て居ります。種々むづかしい面もありましようが、地方地方で矢張り下地をつくる努力の積上げも分業実施には大切なことだと思います。

 ○医薬品の製造承認に関する基本方針は分業を基本理念とする点で賛成であるが、分業の実現進度と符節を合せて進めて頂かないと困ると思いますが更に薬剤師職能と薬剤師の業権に充分配慮してほしいのですが。

 ▽製造承認の基本方針も分業前提として考えたものですし、基本方針は将来の目標を示したもので私ども行政庁もメーカーも卸も薬局もこれを目標に進もうではありませんか、と云うもので無理にこれを押しつけて薬剤師の困るようなことはしようとは考えておりませんので御諒解を頂きたいと思います。充分注意をして参りますことを約束致します。

 ○病院勤務薬剤師の職能向上につき特に御配慮をお願い致します。

 ▽病院勤務薬剤師の現在の職能について、又将来病院勤務薬剤師の職能の変化がどのようになるか現在私は詳しく知らない点がありますのでこれは勉強致したいし、御指導をお願い致したいと思います。医療公庫の研究対策活用も大切でしようね。

 挾子

 ▼日本医師会の満岡文太郎専務理事は同会政治連盟から参院選の単一候補者に推せんされ既に自民党の公認となつている。友好団体である日医日薬もすでに内諾、三師会の単一候補となる模様、恐らく当選確実とみてよかろう、これに引かえ薬剤師会は…

 新たな九州・山口薬剤師会会則

 福岡県薬剤師会館で二月十二日開会された「九州山口各県薬剤師代表者会議」に於て(本紙前号参照)従来の九州山口薬剤師会々則(昭和36年3月8日実施)を廃止し新たな「会則案について審議し、その結果左記新会則を43年3月1日から施行することになった。新会則の全文次の通り

 九州・山口薬剤師会会則 昭和42年2月12日

 (名称)
 第1条 この会は、九州、山口薬剤師会(以下「本会」という)と称する。

 (そしき)
 第2条 本会は、九州、山口各県薬剤師会(以下「各県薬」という)をもつて組織する。

 (事務所の所在地)
 第3条 本会は、事務所を会長所在地に置く。

 (目的及び事業)
 第4条 本会は、国民の厚生福祉の増進を図るため、各県薬自由な立場において連絡と協調を密にし、薬学及び薬業の発展向上に寄与することを目的とする。
 本会は、目的達成のため次の事業を行なう。
 一、各県薬代表者会議(以下「代表者会議」という)の開催
 二、薬学、薬業に関する大会、協議会、講演会講習会、連絡協議会の開催及び刊行物の発行
 三、薬剤師の職能向上に関する調査研究並びに施策
 四、その他必要と認める事項

 各県薬代表者)
 第5条 本会に、各県薬代表者(以下「代表者」という)を置く。
 二、代表者は、次の区分により各県薬から推せんされた者をあてる。
 福岡県四名、熊本県三名、鹿児島県二名、宮崎県二名、大分県二名、佐賀県二名、長崎県二名、山口県二名、計一九名
 三、各県薬において代表者を推せんするときは、一名を学術関係のうちから選ぶものとする。
 四、代表者の任期は、二年とする。代表者に欠員を生じたときは補欠する。補欠選任された代表者の任期は前任者の残任期間とする。

 (役員)
 第6条 本会に、次の役員を置く。
 会長 一名
 副会長 二名
 理事 若干名
 二、会長及び副会長は、代表者会議において各県薬会員中より選ぶ。
 三、副会長一名は、県薬会長のうちから、他の一名は、学術関係のうちから選ぶ。
 四、理事は、会長が各県薬会員のうちから指名する。
 五、役員の任期は、二年とする。役員に欠員を生じたときは、補欠選任を行なうものとする。補欠選任された役員の任期は前任者の残任期間とする。
 六、役員の任期満了の場合、新任者が就任するまで、前任者はその職務を行なうものとする。
 七、役員は、代表者と兼ねることはできない。

 (役員の職務)
 第7条 会長は、本会を代表し、会務を統理する。副会長は、会長を補佐し、会長事故あるときは、あらかじめ定めた順位に従いその業務を代行する。理事は、会長の命をうけ業務を処理する。

 会議)
 第8条 会議を分って、代表者会議、連絡協議会、役員会とする。

 (代表者会議)
 第9条 代表者会議は、役員と代表者をもつて組織する。
 二、代表おしゃ会議は、役員選挙、事業、予算、決算その他重要事項の審議を行なう。会議の議長は会長とする。
 三、代表者会議は、会長が必要に応じ招集し、構成員の半数以上が出席しなければ会議を開くことはできない。その議事は、出席者の過半数で決し可否同数のときは、議長の決するところによる。

 連絡協議会)
 第10条 会長は、業務推進のため、各県薬会長を招集し、会長が議長となる。
 二、役員会の議事は、構成員の半数以上が出席し、出席者の三分の二以上で決する。
 三、役員会は、代表者会議、連絡協議会の招集及び提出議案、九州・山口薬学大会、薬学講習会の開催並びに会務運営、事業執行に関する事項について審議する。

 (九州・山口薬学大会)
 第12条 本会は、九州・山口薬学会と共催し、九州・山口薬学大会(以下「薬学大会」という。)を次の順序により毎年一回開催する。
 福岡、熊本、鹿児島、宮崎、大分、山口、佐賀、長崎
 二、薬学大会の開催準備は開催地の県薬の担当とする。

 名誉会員)
 第13条 本会に名誉会員をおくことができる。名誉会員は、本会の事業推進に特に功労のあつたもののうちから代表者会議の議を経て薬学大会において推せんする。

 (感謝状)
 第14条 本会の会務推進に特に協力した団体、個人に対し、薬学大会において感謝状を贈呈することができる。

 (表彰)
 第15条 優良会員の表彰は代表者会議の議を経て、薬学大会において行なう。
 二、優良会員の選考基準は、別に定める優良会員表彰規定による。

 事業及び会計年度)
 第16条 本会の事業、会計の年度は、毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わる。

 (経費)
 第17条 本会の経費は、会費、特別会費、寄付金その他の収入をもつてあてる。
 二、会費の額及び徴収の期日は、代表者会議の議を経て決定する。

 会則の変更)
 第18条 この会則の変更は、代表者会議の議を経なければならない。

 (雑)
 第19条 この会則に定めない事項については、代表者会議の決定による。
 附則
 一、この会則は、昭和43年3月1日から施行する。
 二、この会則施行の際、現に会長、副会長であるものの任期は、昭和43年3月31日までとする。
 三、九州山口薬剤師会会則(昭和35年3月8日)は、廃止する。

 福岡県薬主催 第七回臨床薬理学講座終る

 福岡県薬剤師会主催で行っている臨床薬理学講座は今回第七回をむかえ二月十七日午後一時〜五時、福岡市第一銀行ビル七階三鷹ホールで開会、(今回は特に大日本製薬株式会社と共催)第九講座=向精神薬の使い方と注意、第十講座=消炎剤の使い方と注意、を熱心に聴講したが、出席者は六〇余名であった。最近この種の会に女子薬剤師の進出がめざましいようである。

 福岡県女子薬全体理事会

 福岡県女子薬剤師会は二月十九日(月)午後一時から県薬会館で、全体理事会を開会、二十名の役員が出席して、主として本年度の九州山口薬学大会準備について協議した。

 (1)九州山口薬学大会準備についてはその運営並にこれに伴う予算を検討、会場は大会会場とは別に久留米市翠光園に変更することに決定、外に各会員の担当部処なども」決定した。

 (2)次期役員選出については各理事の意見を徴し、種々打合せを行った。 次に四月東京で開会される。