通 史 昭和42年(1967) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和42年(1967) 12月10日号

 複雑な内容だが 福岡県薬・薬局委員会

 福岡県薬剤師会薬局委員会(委員長神谷武信氏)は本年度第一回委員会を十一月二十九日一時から県薬会館で開き、工藤専務理事、安部、中村薬局、社保両担当理事並に神谷、柴田、佐々木、芳野、荒巻、坂巻、藤田の各委員が出席した。薬局委員会としては、現在薬局の置かれている立場が医療保険制度抜本改正をめぐって非常にきびしく、この際薬剤師が自覚することなく、この機を袖手傍観するならば悔を後日に残すことになるので委員会は、四島会長並に工藤専務から中央情勢、特に抜本改正と医療用医薬品、小売の窓口一本化、分業対策などにつき詳細な説明を聴取して再認識の資料とし、本委員会と関連した社保委、DI委、薬理学講座などの報告もあって各自の意見が出され、当日は結論には至らなかったが、県薬の頭脳を集めたかの感ある委員会であった。

 先ず工藤専務は医療保険抜本改正の厚生省試案について説明、保険における医療費、特に政府管掌の赤字累積を何とかしなければならないため、三年前頃から試案らしきものをアドバルン的に出してきたが、去る七月公布した特例法は審議途中一部変更されて初期の目的を果すに至らず、又時限立法でもあるため、別に抜本改正試案として去る十七日発表されたが、大分後退した保険内容となり、今後各委員会などで更に審議されるので、どのような結果となるかは不明であるが、厚生省自体の考え方は出ていると、前置きして、保険制度、保険料並に給付などにつき詳細な説明があった。

 次に四島会長は、厚生省試案が出されるまでの経緯について詳細な中央情勢を説明したが、今回の試案は、牛丸試案として出来ていたもので、物と技術の分離→医薬の正常化→医薬品をめぐる姿勢の正常化ということから、医薬品を医療用と一般用に分離し、生産から取扱いまでを正常化することとしたもので、医療用医薬品の取扱いについてはあくまで行政指導であり、医薬品取扱業者への批判の打開策として打だされたものである。

 又試案では分業を表に打出したが、吾々が本来望んでいるものではなく保険赤字解消の面から打出されたものであるから、受入れの機能整備については、既存の保険薬局が受け持てるかどうか、開局者が如何に消費者から処方せんを取り付けるか、意欲的な努力が切望される。

 又ドリンク剤の課税については、これまた情勢はきびしく、取扱いの正常化に結びつけられており、時期が延期される程度であろうと考えられている。小売窓口の一本化(対外的代表機関)は、医薬全商連が名実共に充実していれば問題はないわけであるが、事実はそうでないため四回の委員会を持ち、一時最大公約数的思想をまとめたが、その後当分見送られることになった。

 それより中村社保担当理事から、社保委、社保アンケート結果などにつき詳細な報告があり、又薬局委員会に対し、今後分業対策の対内的対策、つまり薬剤師の倫理昂揚、DI活動、薬局形態の整備、薬剤師不在の解消など、本格的に取り組み、主体性を持った薬局のカンバン、服装など細い点まで指導するよう要望があり、次に柴田DI委員長からは、DIアンケートについての結果が報告され、同委も今後既に軌道に乗っている県病薬の協力を得て本格的な動きをなすべき段階であると述べられ、次に県薬事業として行っている臨床薬理学講座について担当の佐々木理事からは、激動する中では力の弱い者が常に振り落されるが、勤務、開局を問わず薬剤師としては専問的な能力が一番大切で、この専問的能力を表明するため、二年間の目標で始めた講座であるが、内容も全国に誇れるものであり、常に前進する意味では永久に続けるべきものである。

 これらで基礎を固めた上でDI活動をなさねば専問家として信頼されないしDIを基本としてスペシャリストとしての方向を決めるべきであると述べ、次に芳野、荒巻両委員からは、薬業人であると同時に経済人であるので、現実的な問題まで採り上げて取組む必要があると、それぞれ各観点から出発した意見が出され、結局結論には至らなかったが、非常に意欲的な委員会であった。次回は新年早々開会することとして六時閉会した。

 九大病院薬剤部 第18回益進?楽部総会

 益進?楽部(九大薬局出身者)では、第18回益進?楽部総会を十一月二十六日(日)午前十一時から、九大病院恵愛団二階ホールで、約六十名の会員が出席して開会した。

 総会は堀岡会長(九大薬剤部長)並に松村名誉会長(福大薬学部長)のあいさつについで、磯田九大副薬剤部長は当日配布された「九大薬報」第6号について紹介し、編集に際しての各位の厚意に対して感謝のことばが述べられた。それより明年総会(第19回総会)を昭和四十三年十二月十日(日)と決定し、尚当日は第二代薬局長江口作先生の十七回忌法要をも併せ行うことを申し合せた。

 次いで「最近の業界について」と題する国松武田薬品福岡支店長(筑紫二十日会常任幹事)の特別講演を聴講し、それより本年十月完工した薬剤部分室(薬品補給センター)及び綜合外来棟を見学、出席者全員の記念撮影の後懇親会に移り、和気あいあいに裡に昔を語り旧交を温め合った。

 なお、今回発刊された急だし薬報第6号はまだ余冊があるので、希望の方には、送料共三百円でおわけする。九大病院薬剤部内益進?楽部宛申込まれたい。

九州薬事新報 昭和42年(1967)  12月20日号

 認識不足の支部社保幹部 福岡県薬社保委員 支部社保担当理事

 福岡県薬剤師会社会保険委員会は十二月五日一時半から、福岡県薬会館で開会、県薬から工藤専務理事並に中村社保担当理事が出席、委員並に各支部社保担当者約三十名のうち出席者は九名であった。

 開会先ず西森委員長は「中央並に本県内情勢ともに分業の気運も漸次進み、受入側の遅れが危懽される昨今、本日の出席の悪さは非常に残念である」とあいさつ、引続き工藤専務は中央情勢特に分業をめぐる状況について詳細な説明を行い、分業に対する客観情勢は好転したが、受入側の物心両面での準備が必要であり、又今後調剤料の値上げ、調剤基本料の設定、甲表における調剤手数料などを打出すべきであると述べ、次に中村担当理事は、最近各方面、諸会合での発言に分業をうたっており、一連の動きを分析すれば、今直ちに努力して分業を獲得せねば、今後再びこのような好機は恐らく来ないであろうと強調した。それより次の協議事項に移った。

 1)改定歯科協定処方の推め方について
 福岡市薬では歯・薬両会が検討の上、「繁用処方例集」を作成し、各部会毎に歯薬懇談会を実施中であり、薬品の常備については目下卸屋と共に考究中である旨報告された。各支部においても新歯薬協定処方(日薬雑誌九月号の解説を利用)活用のための懇談会実施が要望された。

 (2)大衆(被保険者患者)向けPRについて
 福岡地区での左記に行った歯科医師会側から@保険薬局を他の薬局薬店とはっきり区別することA保険薬局の名簿の提供B保険薬局は出来るだけ生活保護法による指定を受けるようにとの強い要望があったので、これを周知させると同時に本委員会としては、日薬の標識作成の促進、県薬に保険薬局ポスター及びPR薬袋の作成を要望することとし、処方せんを薬種商店舗へあやまり持参した時の処置なども薬事協会と話合う必要があるとの意見も出された。

 (3)医薬協業の具体的推進について
 藤田氏から福岡地区における推進情況、特に三師会懇談会及び上田地区(長野県)の実情調査について詳細な報告があり、中村氏は宮方貞宝氏並に桑原廉靖氏(福岡市の開業医)との分業についての意見交換結果を報告、各方面の情勢は往年とは非常に変化好転し、個人的には医師側に積極的な人も可成り見受けられるので、今こそ薬剤師側が、積極的な働きかけを行うべきであると強く述べた。

 (4)社会保険ブロック別講習会開催について
 左記に行った社保アンケート実施の結果は、未だ低調な支部が多く、調剤報酬請求にさえ間違いが多い。このままでは薬剤師は医療担当者としては失格者であるので、既に去る十月実施した福岡地区を除き筑後、北九州、筑豊三ブロックで早急に講習会を開催(医師会説得方法の周知徹底をも含め)するよう要請があった。

 尚当日は委員、担当者とも非常に出席が悪く幹部の熱意に反し、今後の分業受入態勢にも(医師側に薬剤師を雇って分業する動きが見られる今日)分業の前途、出席者にはしみるように見えた。

 保険調剤請求書審査制決定 福岡市薬部会長会

 福岡市薬剤師会は部会長会を十二月十二日一時半から、県薬会館で開会、医薬品実態調査について県当局からの説明を受け、前日開会の県薬支部連絡協議会報告次いで分業対策並に保険業務については、四ブロックから二名宛計八名の委員を選出して毎月提出する保険調剤請求書審査を行うことになった。

 福岡地区安定協 十二月例会

 福岡地区安定協議会十二月例会は忘年会を兼ね、市内福寿飯店で三時から、メーカー側は、特に乳業四社も出席し卸側の当番によって開会した。

 当日は前回からの宿題はなく、各地区の状況報告で、白木屋のダイレクト、オロナインのサンプルを八百屋で渡している件、大賀薬局及び一丁目バーゲンのチラシ等が報告されたが、現在医薬品業界を取りまく酷しい情勢は、医薬品の生産から消費までの取扱者への批判から来たものであるから今後各階とも姿勢を正すことには充分努力することを申合せた。