通 史 昭和42年(1967) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和42年(1967) 5月10日号

画像  再販規制法の要綱発表 原則としては禁止 登録制で例外認可

 公正取引委員会が再販規制の強化案を単独立法としてその案を纏めていたが、去月十九日漸くその要網を纏め得たので、各関係省庁に提示、最終的には法制局で調整し五月中旬には国会提出する運びになることになっている。現在に至る迄の大体の経緯並に要網内容のあらましを本紙前号(四月三十日付第六七三号)に掲載しているので参照されたい。要網の全文は次の通りである。

 ◆再販売価格維持行為の規制に関する法律案要網

 第一 目的
 事業者がその生産し、又は販売する商品の再販売業者の販売する価格を決定しこれを維持する行為を規制することにより、再販売業者の公正かつ自由な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護するとともに国民経済の健全な発達を促進することを目的とするものとする。

 第二 定義
 この法律で「事業者」とは、商品の生産(著作物においては、発行。以下同じ。)又は販売を業とする者をいい、「再販売業者」とは、事業者の生産し、又は販売する商品を買い受けて、これを販売し、又はこれに加工して販売することを業とする者をいうものとする。

 第三 再販売価格維持行為の禁止
 一、事業者は、再販売業者を相手方として、次の各号に掲げる事項を条件として自己の生産しまたは販売する商品を取引してはならないものとする。
 @商品(これに加工する商品を含む。以下同じ。)を自己の指示する価格で販売しないこと。
 A自己の指示する価格を下る価格で販売する場合は不利な取扱いを受けること。
 B前二号に掲げる事項と同様の事項を条件として他の再販売業者と取引すること。
 C自己の指示する価格を下る価格で販売する他の再販売業者とは取引しないこと。
 D小売業者に販売する再販売業者に至るまでの各段階におけるすべての再販売業者が前各号に掲げる事項と同様の事項を条件として取引することにより、小売業者が商品を自己の指示する価格で販売するようにさせること。

 二、事業者は、再販売業者が前項に規定する条件に応じないことを理由として取引を拒否してはならないものとする。

 三、事業者は、自己の指示する価格を下る価格で販売した再販売業者に対し、商品の取引を停止し、又は不利な取扱いをしてはならないものとする。

 四、事業者は、直接の取引の相手方でない再販売業者に対し、第一項各号に掲げる事項を条件としなければ他の再販売業者から商品を買い受けることができないようにしてはならないものとする。

 五、事業者は、直接の取引の相手方でない再販売業者が自己の指示する価格を下る価格で販売した場合には他の再販売業者から商品を買い受けることができなくなるようにし、その商品を買取り、若しくは、金融等を供与することによりその商品の販売を妨害し、若しくは取りやめさせ、又は不利な取扱いをしてはならないものとする。

 六、事業者又は再販売業者は、他の事業者又は再販売業者に対し、前各項の禁止行為をすることを強制してはならないものとする。

 第四 適用除外

 一、第三の規定は、公正取引委員会が指定する商品であって、その品質が一様であることを容易に識別することができるものについての再販売価格維持契約であって、公正取引委員会の登録を受けているもの及び著作物についての再販売価格維持契約であって、第五第二項各号の要件を充たしているものについては、適用しないものとする。

 二、前項に規定する指定の要件は、次のとおりとする。
@当該商品の一般消費者に販売される価格について自由な競争が行なわれていること。

 三、第三の規定の適用を除外される契約の相手方には農業協同組合、消費生活協同組合等の団体を含まないものとし、これらの団体に対する再販売価格維持契約を締結しないことを理由とする取引拒絶等は、適用除外とならないものとする。

 第五 登録等

 一、公正取引委員会の登録を受けようとする事業者は公正取引委員会規則で定めるところにより、所要の事項を記載した登録申請者を公正取引委員会に提出するものとする。この場合において、公正取引委員会は、次項の登録要件を欠いている場合及び虚偽の記載等がある場合を除き、事業者の氏名または名称、契約対象の商品の名称及びその規格、再販売業者に販売する価格並に再販売価格及びこれを維持する方法を再販売価格維持契約登録簿に登録しこの登録簿を一般の閲覧に供するものとする。

 二、前項に規定する登録の要件は次のとおりとし、前項の規定により登録された契約が、これらの要件を欠くに至った場合は、公正取引委員会は、審決をもって当該登録を取り消すものとする。
 @当該契約の対象商品の生産者の意に反しないこと。
 A再販売価格を決定し、これを維持するため必要な程度をこえていないこと。
 B一般消費者の利益を不当に害しないこと。

 第六 再販売価格等の表示

 第三の規定の適用を除外される再販売維持契約を締結した事業者は、公正取引委員会規則で定めるところにより、契約に係る商品、またはその容器若しくは包装に契約に係る商品である旨及び小売価格を表示品ければならないものとする

 第七 私的独占禁止法との関係

 第三の規定に違反する行為については、私的独占の禁止法及び公正取引きの確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の不公正な取引方法とみなし、同法の手続規定により、これを排除するために必要な措置をとるものとする。

 第八 罰則

 第六の規定に違反する行為をした事業者は、万円以下の罰金に処するものとする。

 付則

 一、この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。
 二、私的独占禁止法第二十四条の二の規定による商品指定とみなす。
 三、私的独占禁止法第二十四条の二の規定により届け出た再販売価格維持契約はこの法律の施行の日から六月間を限り、この法律による登録を受けた契約とみなす。
 四、私的独占禁止の一部を改正し、第二十四条の二を次のように改める。
 第二十四条の二 除削

 福岡県薬当選議員

 今回行われた統一地方選挙の市町村議会議員選挙は去月二十八日行われ、福岡県薬業界では各地区毎に県議選に引続き、推せん候補者を決めて活動したが、薬剤師会々員の当選は次の三氏である。

 ▽加藤藤次郎(自民現)福岡市
 ▽久保田秀己(自民現)福岡市
 ▽深田徳治郎(無所属現)古賀町(福岡県薬事協会々長)

 開局者と剤界の昨今 神谷武信

 アンプル事件、薬への不信、業界唯一の代表の落選と連った業界の不祥に対し世の薬剤師は何故かく迄に無気力なのだろうか、大いに反省せねばならぬと思います。

 現行の薬局方は昭和三十七年に改正せられ、それ以前の旧方にあってはアミノピリンの極量が一回〇.三一日一.〇であったものが改正により一回〇.五一日一.五と引上げられている。この改正は昭和三十年来、医薬の権威者が三百回に及び討議の結果を薬事審議会での裁定を経て法律で公布せられたものだと序文に記されている。これの施行を機にメーカーは一日用量の増量を計り、それ効くやれ効くと大衆をあほり立てたもので、学識経験者も厚生当局もメーカーも黙してこの点に全々ふれていない点、未だに不思議なことです。

 その当時皆が認めた唯一の点はメーカーの宣伝が行き過ぎであったことのみでこれとて現在如何なものでしょうか?、素人が見ても薬の品位を傷づけると思われるようなあやしげな表現。メーカーには多数の薬剤師がいる筈だが、その人達は如何に考えているだろうか?。

 医術と算術、東大の宇宙開発等、技術者が経済ペースに必要以上の制約を受ける場合には必ずや世の批評を受けることでしょうし、薬剤師は学識経験者、行政職勤務者、開局者を問わず真剣に考えねばならぬ点だと思います。このような見方は次々と増加の一途をたどる薬剤師の職域を如何に獲得するかという大きな目標に連っていると思います。

 薬業界には不況の嵐が吹きまくっています。人のことなど構っておれないと機に乗じて活躍する人もありますが、大方の善良なる開局者は青息吐息です。剰へ勤務者からは距離制限に対する不満がぶちまけられています。但しよく考えてみますと投資に見合って開業出来る場所がそうあるでしょうか?、開局者として出来るだけの協力はなすべきです。薬剤師本人が薬局を開設されるのに反対するものはないと思います。現行法で可能な範囲で場所の紹介をすべきと思います。但し乍らこの開業の問題を少しでも緩和出来る方法は完全なる医薬分業を措いてないと思います。

 日薬が重点事業の第一に挙げているのは当然すぎることです。そして近い将来分業になるという前提のもとに今度こそは「薬剤師自らが開業した場合においてのみ保険薬局の指定が取れる」位の立法措置をとって欲しいと思います。私共は勤務であると開局であるとを問わず、これへの実現のため先ず大同団結すべきだと思います。

 かって薬務課廃止の反対運動をしたことを思い出します。薬剤師の職域確保には当然オールアポが手を握らなくてどうして成立ちましょう。「客観的状勢がよくなった」等他人まかせでなく日薬県薬の強力な指導を期して待つものです。

 一方薬業界の混乱は薬剤師不在でも街の薬局が成立ったという認識不足がもたらしたものとも考えられます。公衆の福祉、衛生に寄与するという薬剤師の職責から見ても、われわれは薬学を卒業、国家試験に合格した日からが実社会での勉強のスタートであり、一日として無易に過してはならぬと思います。日進月歩の医薬の発展に追い着くにはたゆまざる研鑚あってこそ社会の求めに応じられ、地域社会より信用せられるものと確信致します。幸、福岡県薬には臨床薬理学の講座ももたれていますし、特に開局薬剤師の多数の出席を熱望して止みません。

 豆知識(21)馬場正守

 薬の食べ合わせ

 薬を使用する目的は身体の疾病状態を癒やして、健康(体的に、心的に)にすることであるが、下手に使用すれば悪化させることもある。また二種以上の薬剤を使用する場合には、特に薬効的に注意を要する。例えば外傷に使用するに、マーキュロとヨードチンキ(ヨウ化水銀が生成して有害)ヨードチンキとペニシリン軟膏(ペニシリンがヨードで酸化され、分解される)オキシドールとペニシリン軟膏(ペニシリンが分解)がそれである。内服、注射剤にもその例があり、この場合は、拮抗物質と呼ばれ一種の配合禁忌である。

 サルファ剤―PABA
 コハク酸―マロン酸
 ニコチン酸―ピリジン3スルフォン酸
 パントテン酸―パントイルタウリン
 ベーターインドール酢酸―トリプトファン
 アルギナーゼーオルニチン或はリジン
 アドレナリンーエピネフリン
 カルボン酸基―スルフォン酸基
 イノシトールーヘキサクロロフエン
 サイアミンーピリサイアミン或はネオピリサイアミン
 ビオチンーデスチオビオンチン或はオキシビオチン
 メチオニンーエチオニン
 ビタミンK―ジヒドロキシステアリン酸
 ピリドキシンーデスオキシピリドキシン
 葉酸―メチル葉酸

 これらの拮抗物質を併用すれば、希望する薬効が得られない。その原因、理由はここでは割愛するが、このような食べ合せに、注意しよう。

 アルコール中毒者に使用するアンタブースやシアナマイド等も、アルコールとこれらの薬剤との食べ合せと理解出来よう。またアルコールといえば、バルビタール系の薬剤と共に普通量を併用すれば、非常に悪酔いし、激しい場合は致死するといわれている。近時問題となっていることに純白のパンを製造するために、安息香酸の過酸化物が使用されている。これは過酸化ベンゾイルが小麦粉に作用して漂白しているのであるが、この際小麦粉に含まれる各種のビタミンを酸化分解している事実である。美しい外観のパンよりも少々不恰好でも内容の豊かなパンを食べたいと思う。

九州薬事新報 昭和42年(1967)  5月20日号

 九州大学 薬学部新庁舎落成式並祝賀

 九州大学薬学部は昭和二十五年、医学部に薬学科として創設されて以来、同部機内片隅の老朽木造建物内で近代薬学が研究されていたが、昭和四十年十二月同構内東門側第一等地に在った第二外科の建物を解体しその跡に鉄筋コンクリート五階建(一部二階建)延面積八.〇三一平方メートルの堂々たる建物が今年三月に竣工したが、これを記念して五月十三日十一時から同新館に於てその落成式並に祝賀会が開催された。

 当日は施設業者、報導関係者、九州大学各学部並に、薬学関係、薬業界関係幹部及び十一、十二の両日福岡市で開会された全国公私立薬学部科長会議に出席した全国の薬学部科長など約三百名が出席して、新館五階の大講堂において落成式が開かれた。

 中村事務長司会し、先づ西海枝学部長、次いで九州大学遠城寺総長(代理)の挨拶、施設部長の工事報告があって来賓の祝辞に移り上尾京都大学薬学部長並に薬友会名誉会長、九大名誉教授戸田博士の祝辞があって式を終り、引続き屋上に席を移して祝賀の宴が催された。同新館の建物はもとより内部には近代的な設備が施され(本紙既報)特に化学の実験に必要な設備、動物飼育室などの完備、当日出席者の注目を集めた。

九州薬事新報 昭和42年(1967) 5月30日号

 福岡県医薬品小売商業組合 第11回通常総代会

 福岡県医薬品小売商業組合(理事長鶴田喜代次氏)では五月十九日午前十時半から田辺製薬福岡支店会議室で第11回通常総代会を開会した。

 当日の総代会は定刻よりやや遅れ、総代定数百三十名中約八十名(委任状四十六)出席して、西森専務理事の司会により、先ず鶴田理事長は、年一回の総代会であるので、今年は来賓も招待せず、皆さんのご意見ご批判を聞くために時間も充分用意した。当組合最大の目標は薬業経済の成長安定にあるが、これが如何に遠くけわしいものであったかを知らされた一年であった。

 再販制度や広告宣伝の問題など未解決のものも多数かかえている。われわれ小売業者は各方面と連繋をとりこれ等に対処して行きたい。と述べ、直に議長選出に移り、司会者一任の声で工藤氏を推して議事に入った。

 先ず報告事項として
 @事業報告は昨41年度から四ブロック毎に行なったので、一般的報告を鶴田理事長から、各ブロックについては各地区理事長からそれぞれ報告があったが、組織の強化のため各地区共脱退支部の復帰が特に報告され、外に飯塚橋の裁判について、五月十二日最終公判が終り三十日に判決があるとの報告があった。

 A組合員数報告では昭和三十三年設立当時一、〇一三名で、途中若干脱退支部が出たが、四十一年度にはその殆んどが復帰し、現在実数一、一五一名であるとの報告があり、@Aとも異議なく承認された。次に議案審議に移り
 (1)昭和四十一年度決算認定の件
 (2)昭和四十二年度事業計画決定の件
 (3)同年度賦課金決定の件
 (4)同年度収入支出予算承認の件
 (5)調整規程継続申請承認の件

 (1)決算については須原理事から説明、陣内氏から監査報告があって質疑に入ったが、前年度総代会決算時八二万円余の資産があったものが、本決算書によると八万余円の繰越金となっていることに対し説明を求め(園田氏)又約百万の予算額に対し、一六万余円の未収入金があるが、こんなことで運営が出来るか(安村氏)などの質問があり、繰越金の件については組合の存続上止むを得ず脱会支部の組合員の組合費徴集不能分が含まれていたもので、昨今の総代会の決定にもとづき六月書類を以って承認さた旨の応答があり、会費納入遅延については、脱退支部の組合復帰による時間的ずれであることが説明されて原案通り承認された。

 (2)本年度事業計画については鶴田理事長から、@地区ブロックの強化、A調整に関する事業(調整規程の継続申請)、B組合の共同事業の研究、C団体交渉、D近く法案通過予定の協業化組合の研究、などについて詳細に説明されたが、芳野氏から「医師における医療融資のように企業改善のための融資等、金融に関する項を加えられたい」との要望の結果、Eにその旨を加えることとして、可決決定した。

 (3)(4)は一括上堤、賦課金は前年通り福岡地区三〇万筑後地区二五万、北九州地区三〇万、筑豊地区一五万で、これに伴う予算は原案通り可決決定した。

 (5)調整規程継続申請については、本年度は全国商組連の綜合調整規程を参考にして変更の上(営業日数、営業時間、購売数量、届出報告等に関する制限は削除)継続申請したいと理事長から説明があって異議なく決定後、斉田副理事長の閉会の辞で一時半会を終了したが、例年になく平穏な総代会であった。実質的な活動が各ブロック毎に行なわれ、その連合会的性格となった県商組としては当然のことでもある。