通 史 昭和41年(1966) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和41年(1966) 10月10日号

 全商連の移動理事会開催を 九州山口薬学大会時佐賀で

 全国医薬品小売商業組合連合会(JPM)は去月16日開会の近畿ブロック理事会において10月13日佐賀市市民会館で第3回移動理事会を開催することを決定した。同理事会は10月13〜15日三日間佐賀市民会館を中心に開かれる九州山口薬学大会の機会を利用したもので地元佐賀県薬の熱心な要望があったためでもあり、最初全商連は10月下旬に日本薬学大会が開催される仙台市において移動理事会をと考えていたもので、これを佐賀に変更したものである。

 移動理事会の議案としては@再販対策に関する件A家庭薬の価格対策に関する件の外、スーパーなどの値巾設定に対処するため医薬品の特殊性に関するPR文書作成の予定もあり、また大正製薬問題についてもその対策が検討されることになる予定である。同理事会は13日の午前10時〜午後3時までを理事会とし、引続き5時までを地元との協議会とする予定であり、薬学大会とは一応無関係にすることになっている。

 福岡県安定協 九月例会 家庭薬メーカー参加製企会側了承

 福岡県安定協議会は九月例会を二十六日一時半より県薬会館において開会した。当日は尾崎県薬務課長、大庭課長補佐両氏の出席を得て、製企会側議長となって進められたが、先づ尾崎課長は「薬業の安定こそ薬の発展に繋がる。最近は再販問題は本省会議の議題にも出るようになったので、吾々としても大いに勉強してそれに対処したい。また近く全国薬務主管課長会議も開かれることでもあり今日この協議会の模様など参考にしたい」とあいさつして協議に入った。

 先づ九月十日開かれた全国小売薬業団体連絡協議会正副議長において出された大正製薬に対する質問者(抗議文)について、四島氏より詳細な内容や情況が報告され、来る十月十三、十四の両日佐賀で開会される九州山口薬学大会の商組部会において「小売の適正マージン」などにつき組合として如何に対処すべきかが討議されるのではないかと期待していると述べられた。

 次に前回保留になっていた家庭薬メーカーの本会参加については、製企会側より「経費も負担して頂くようお願いして」了承した旨の報告があった。

 それより各地区の情況報告に移ったが、各地区共多少の問題はあるが大体において小康を保っている。然し、
 @一応再販を結んだが、これを勝手に破棄した上、物懇の答申を利用して消費者にアッピール(北九州)
 A再販品を卸屋従業員が生協に斡旋(筑後)B所謂行儀の悪い店の再販契約希望など、再販をめぐる種々な問題もあったので、これについて協議したが、先れにしても再販制度を堅持し権威あるものにするために三者それぞれの立場で力を入れることを再確認した。

 最後に当日出席の大庭課長補佐は「再販のアウトサイダーのあることから問題が起る場合が多い、メーカーとしてこの点を特に再考されたい。また最近婦人学級等で婦人に接する機会が多いが、薬局薬店に対する不信感が想像以上に強いのに驚く。価格問題から先づ姿勢を正さないとその不信感はぬぐい得ないと思う」と感想を述べ、課長は「色々と難関はあろうが、それを突破して県民の保健衛生に寄与して貰いたい」とのあいさつがあって会を閉じた。

 全国学薬大会 群馬県前橋市で 十一月十二日に

 第16回全国学校保健大会は十一月十二日から三日間群馬県前橋市及び高崎市において開催され「近代社会を明るくたくましく生きぬく強いからだと美しい心の育成を目ざして」を標題としている。同時に恒例によって第16回全国学校薬剤師大会も亦十二日午後前橋市の農業会館で開催される。研究協議題は「学校薬剤師の活動はどうすればよいか」であり、又演述は

 @持ち回り移動学薬理事会の効果=群馬-平木陽一
 A多数校担当の学薬として=新潟-近藤良一
B特別講演「群馬の地質とくに温泉と明石」=群馬大学学芸学部教授木崎喜雄
 などが予定されている。

 =豆知識(十二)馬場正守

 ▼ヘチマ水の処方
 中秋に入り、美容に熱心な家庭では、ヘチマの水を一升ビンに採っていることだと思います。このヘチマの水を使っての化粧水の処方とその解説をしておきます。
 ヘチマ水 九五・〇
 グリセリン 四・〇
 パラオキシ安息香酸エチル 〇・一
 ホウ砂 〇・五
 香料 適量

 ヘチマの茎から採った液は、中性で、ビタミンBCが含まれ植物のペクチン類による適度の粘性と滑らかさをもち、使用感のよいものです。これに皮膚に適当な保水性をもたせて荒れ肌を治すために、吸水性のあるグリセリンやプロピレングライコールを配合し、防腐剤として、パラオキシ安息香酸エチルを加えます。アルコールは使用感のためですから、好みによって加えますが、五%以下にして下さい。 またホウ砂五%添加はヘチマ水の滑らかさを増すと同時に角層を柔らげ、肌を滑らかにする効果があります。香料は水溶性のものが良く、ローズ油やレモン、ベルガモット油が良いと思います。この処方は荒肌に好適です。なお一般用には次の処方があります。

 ヘチマ水 九一・〇
 プロピレングライコール 五・〇
 ソルビン酸 〇・一
 アルコール 三・四
 香料 〇・五

 ▼酸性化粧水の処方は
 汗をかいた後や、肌を引きしめる目的で、良く使用される酸性化粧水の処方を書いておきます。これはある婦人雑誌に記載されていたのですが、近所の奥様方に好評です。
 クエン酸 一・〇
 硼酸 二・〇
 アルコール 一五・〇
 グリセリン 一〇・〇
 ローズ水 七二・〇

 福岡県本年1月〜6月迄の 催眠剤鎮痛剤などの少年服用事案
 薬局薬店への県の要望

 催眠剤を乱用する風潮が特に非行青少年の間に発生して社会問題化したのは昭和36年以降であるが、これに対し厚生省では36年10月薬務局長名により各都道府県知事に対し医薬品販売業者に対する指導、監督の強化について通牒し、更に同年11月には「催眠剤の乱用防止に関する対策要綱」を制定して各都道府県に対してこれを指示した、福岡県においてもこの要綱にのっとり、県内実情を充分考慮に入れて乱用防止対策を講じ、薬業者の催眠剤販売については特に指導監督を強化して今日に至っている。

 その間非行青少年の催眠薬遊びなど、乱用の高低はあったが、又薬局薬店の催眠薬販売に関する法規違反についても同様高低はあったが、最近違反件数も減少したかの感もあったとはいえ、業者の一部には殆んど法規を守らない者があり、青少年の催眠薬遊びも再流行の傾向も見られるので、この程福岡県では中川衛生部長の名により左記の様な催眠剤等の販売について、県薬剤師会並に県薬事協会宛通達があった、その全文左記の通りである。

 催眠剤等の販売について

 標記については、これ迄再三にわたり全員のご指導方をお願いしてきたところであり、薬事監視に際しては重点事項の一つとして、薬局等医薬品販売業者の指導取締を実施し、違反の向には相応の処置、処分を行なうは勿論、不特定多数者に対する無差別的形式販売行為等は厳重自戒を要望するとともに、未成年者に対する販売についても強く自粛を要望してきたところである。

 貴職のご協力も得て違反者の数は最近とみに減少してきた感があるが、なお一部において法規定の事項を遵守せず、また医薬品販売者としての節操を疑われるが如き面を見かけることは甚だ遺憾とするところである。

 因みに去る八月、県警察本部少年課でまとめた県内各警察署管内における催眠剤等の服用事案によれば、一時下火となっていた青少年のいわゆる催眠薬遊びが再流行している傾向がみうけられ、別表1の通り本年一月から六月までの間、警察で補導された青少年(十四〜十九才)だけで一二〇名に達し、その中、八三名が店舗で直接購入しており別表2のような服用後における非行事例が生じている。

 なお、この資料中、鎮痛剤による服用事案が四一件の多数を占めていることはこれらが普通薬であるため容易に購入可能なことが考えられるが、等閑視されない事項であり、国あるいは県において、何らかのこの種の弊害防止対策の必要性を感じさせる現状は遺憾に存ずるところである。

 諸事ご多端のおりながら以上現況ご賢察のうえ、催眠剤販売に際しては法規定の遵守は勿論、自己の使命を自覚し、これら医薬品の乱用による弊害を可及的未然に防止するよう、貴会員に周知徹底せしめられたく格段のご配慮方をお願いする。

画像

画像

 別表2

 一、博多署=内容
 (恐喝)‐成人と少年がナロンをのんで、タクシー代を踏み倒した事案。
 (概要)昭和41年4月2日午前1時頃大工見習A(18才)と成人二名は、それぞれA宅でナロン八錠をビールでのみ、ふらふらしながら福岡市赤坂門交叉点付近でタクシーに乗り、同日午前1時20分頃福岡市中洲のバーの近くまできたとき、運転手に「おろせ」といって車中でわめきちらし、更に短刀をつきつけて「車代は借りとくぜ」と脅迫し、運賃一〇〇円の支払いをまぬがれ財産上不法の利益を得たもの。

 二、若松署=内容
 (強姦)‐ナロンをのみ強姦した事案。
 (概要)無職少年(一六才)は自宅でナロン一〇錠をビールでのみ、昭和41年1月16日午後9時頃、自宅前を通行中の少女に短刀をつきつけて脅迫し、約三〇〇メートル離れた友人宅につれこみ強姦したもの。

 三、福岡署=内容
 (恐喝未遂)‐少女二名が通行中の少女四名から恐喝しようとした事案
 (概要)昭和41年2月28日午後2時20分頃福岡市天神一の県庁前道路上において、通行中の女子高校生四名に対し、「金を出せ」「出さないとひどいめにあわすぞ」といって脅迫している処を警ら中の警察官に発見されたもの。

 四、福岡署=内容
 (暴行)‐少年二名が、ハイミナールをのみけんかした事案。
 (概要)昭和41年6月1日午後1時30分頃、高校三年生(一八才)の少年二名はハイミナール八錠あてをビールでのみ、怠学し福岡市舞鶴公園内でお互いに口論し、「今日学校をさぼったのはお前のおかげだ」とののしりあいけんかとなり、相互に暴行を加えたもの。

 全国薬剤師国保組合連合会 代表者会議

 全国薬剤師国保組合連合会の四十一年度代表者会議が十月十二日千葉県銚子市犬吠崎のホテル「ニュー大信」で開催される。議題は@国庫補助金の増大についてA事務費の十割負担についてなどである。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 10月20日号

 黄金の稔りの秋、佐賀平野に 第34回九州・山口薬学大会
 会員八百余名参集、佐賀市に

 史上最高の豊作といわれる稔りの秋、九州の穀倉佐賀平野の中心地佐賀市において、すがすがしい秋晴れの十月十三、十四の両日第34回九州山口薬学大会が約八百名の会員参集のもとに華やかにしかも盛大に会場市民会館を中心に開会された。

 大会前日の「大会運営委員会」並に「薬剤部長協会、並に「薬剤部長協議会委員会」に引続き、第一、第二日の間、九部会、並に本会議及び分業十周年を記念して、分業の父といわれる羽藤吉郎先生顕彰会を、次の誕生の地において行ない、日薬の分業実施対策本部長宮道悦男氏の「アジアや薬学大会に参加して」、武田日薬会長渡欧のため代わって日薬顧問である高野一男前日薬会長の「剤界の諸問題」と題し、その直相はどうだったかと叙述、興味ある特別講演など多彩にくり広げられ、またこの大会とは別個にではあるが第一日の十三日十時より全国商組連絡協議会の移動理事会も同会場において開かれた。

 薬学並に薬剤師会の本会議は大会第一日の十三日午後一時及び十四日四時より菊香薫る市民会館大ホールにおいて「医薬分業の受入体制を確立せよ」「勤務薬剤師の権限の確立と待遇の改善を要求する」との懸垂二大スローガンのもとに、地元高取茂雄氏の司会によって開始された。

 地元県薬副会長木元氏による開会宣言、国歌斉唱、同副会長原氏の開会の辞に続き、瓜生田九州山口薬剤師会長並に藤田九州薬学会々頭の挨拶後、武田佐賀県薬会長は大会準備委員長としてその経過報告を行なって来賓の祝辞に移り、厚生大臣(代)県知事、県議会議長、市長、市議会議長、県医師会長並に歯科医師会長日薬よりは井手副会長(会長代理)長野日本薬政会長代理などのあいさつがあり厚生省牛丸次官など剤界各方面からの祝電披露の後、名誉会員推せん並に会員十一名に表彰状を、その他一社に感謝状を、何れも記念品と共にそれぞれ左記の通り贈呈された

 ▽名誉会員
 江口虎三郎
 ▽表彰状
 森広弥太郎(山口)古賀常吉、梶原正造(福岡)川内一男、徳永文平(佐賀)高取治輔(長崎)戸田助人(熊本)大神ハナコ(大分)故三浦久(宮崎)梁井益蔵、梅北雄造(鹿児島)
 ▽感謝状
九州薬事新報社

 二国際学会出席の 堀岡九大薬剤部長 学会並欧洲視察談

 九大病院薬剤部長堀岡正義氏は、スペインのマドリードにおいて九月十七日〜二十四日に開かれた第21回国際薬学会連合(FIP)総会並に第26回国際薬学会議に日本薬学会の代表として日本学術会議より派遣されて両会に出席したが、同氏はこの機会にヨーロッパ諸国(ハンブルク、ストックホルム、デンマーク、ベルリン、チューリッヒ、ロンドン、フランクフルト)などの都市を尋ね、病院薬局、中毒情報センター、医学薬学博物館など約二五個所を視察訪問し、十月五日南回りで羽田空港に帰着した。

 FIP総会には日本より武田日薬会長、不破日病薬会長、板井衛生試験所大阪支所長、滝浦阪大教授、石井輝次氏も参加し、大会は総会の他、部会に分れシンポジウムが行われたが▽医薬品と容器の交互作用▽フェノールの生合成▽病院におけるドラッグインフォメーションセンターの発展▽薬局と社会保証など有益なシンポジウムも多く、ドラッグインフォメーションの発展について、八人の講演者の一人に予定されていた堀岡氏は、日本におけるドラッグインフォメーション活動の現状及び体験として九大病院における医薬品集編集、県病薬DI組織活動状況など具体的な説明を行ったが、他かの発言者の内容が比較的抽象的であったため多くの人々に興味を以って迎えられた。

 特に同会に、日薬会長が出席したのは今回が初めての事でもあり、種々の部会に出席し活躍されたことは、八月の日本における「アジア薬学大会」開催などを通し、日本薬剤師の国際交流が盛んになった折でもあり、非常に有意義なことであった。

 尚堀岡氏は今回の渡欧について次のようなことを語った。大会期間中、種々のリクレーションが行われ、スペイン名物の闘牛、フラメンコ古都セゴビヤへの観光などを通し、各国薬剤師の親睦を十分果したことは非常に大きな収穫であった。

 又ヨーロッパ各国の病院薬局を見て感じた事は日本の病院とはシステムにおいて非常な違いがあり、外来患者の調剤は殆んどなく、薬局の主とした業務は、病棟への医薬品補給と注射剤を中心とした製剤、薬品試験の三つで、千ベット位の大病院でも薬剤師は少く、テクニシャンを大いに活用して仕事をしていることが伺われ、何処も日本と違って薬剤師不足の感を受けた。

 日本の六万五千の薬剤師数はアメリカに次ぐが、病院薬剤師はアメリカが七千で日本ははるかにアメリカを引き離している。ヨーロッパ各国の病院薬剤師は多い国で千名前後であり、日本は数の上で各国よりも多く、薬学の水準に於ても亦各国より高いにも拘らず、今日まで国際会議等においてイニシャチーブがとれなかったが、今回の日薬会長其の他の諸者出席が、指導的立場に進む契機になると見られるし、又是非そうしなければならないと考えている。

 華やかな 女子薬剤師部会

 大会中最も華やかな色彩をそえる女子薬部会は、十四日一時より市民会館第三会場において、中央より高野日薬顧問、井手日薬副会長、栗村女子薬剤師会西部連合会長を始め、瓜生田九州山口薬剤師会長、武田大会委員長など臨席のもとに約百五十名の会員参集して開会した。

 山中貞子氏の司会により先づ奥平勢子部会長のあいさつがあり、来賓の祝辞として井手、瓜生田、武田の三氏がそれぞれあいさつし、次に「女子薬剤師に望む」と題した第一薬科大学学長江口虎三郎氏の三十分に亘る講演があり、次いで今大会において初めて女子薬剤師の被表彰者となった大神ハナコ氏に対し、九州ブロック会長田中美代氏からお祝のことばが述べられた。

 それより当日特に出席の栗村日本女子薬西部連合会長より「日本女子薬剤師会の結成に至るまで」と題し十数年前、慶松氏の指導のもとに女子薬剤師会が、産声を上げるに至った当時の模様を興味深く披露され、今日では、東部と西部が統合されるまでに発展したと感激を新たにするに至ったいきさつが述べられた、所要時間一時間半の短かい会合ではあったが盛大にしかも華やかな会であった。

 福岡県学校薬剤師会 附市学校薬剤師会

 福岡県学校薬剤師会では十月七日一時半より県薬会館において理事会を開会した当日は友納会長、古賀副会長の外内田、河原畑、馬場、神谷、矢野、新保の各理事並に県教育庁より山下技師が出席した。友納会長の挨拶後左記事項につき協議決定した。

 ▽日本学校薬剤師会々費について
 去る六月の横浜における講習会時に、日本学薬41年度予算委ついて審議されたが、三五〇万円の予算中一〇〇万円は日薬よりの補助二五〇万円が会員負担と決った、これは会員一人当り約一六〇円位になるので本県では八万円負担となる旨会長より説明があった。

 ▽伝達講習会開催について講習会の伝達も含めて行なうことになり、左記日程を予定する。
 十一月二十四日(木)飯塚市
  〃 二十五日(金)柳川市
  〃 二十八日(月)福岡市

 ▽九州山口薬学大会並に福岡県学校保健大会(於八幡市)出席について
 大会の日程が重複するが、佐賀県薬は会員が少いので出来るだけ多数薬学大会に出席するよう友納会長より要望があった、なお県学校保健大会では長野、岡、の両氏が表彰されることになっている。
 薬と健康の週間行事について

 九州山口薬学大会 学校薬剤師部会

 学校薬剤師部会は第二日の十四日九時より市民会館第二会場において約百五十名の会員が参集して正午まで熱心に開会された。

 森本部会長が司会し、久保地元県学薬会長のあいさつに引続き左記九題の研究発表があり、特に学校環境衛生試験法に関する一試案と題する佐賀県学薬師熊谷実氏の、予算がなく手製のブリキの試験器具によって、種々必要な調査を現実に行なっている体験発表に至っては、一驚に値し、その努力や誠に賞賛に値すると聴講者一同に深い感銘を与えたなお本部会としては、福岡県、熊本県、佐賀県にあってはその業績もあがっているが、その他の県においては学校薬剤師の活動は今後に期待するほかないものと感じられた。

 研究発表課題は次の通りである。
 一、学校給食施設調査について=宮崎県学校薬剤師会 富永毅
 二、学校常備薬の管理状況について=宮崎県学校薬剤師会 陣内正美
 三、熱風乾燥消毒機の温度効果について=熊本県学校薬剤師会 松村清徳 熊本保健所 渡瀬次男
 四、学校飲料水の残留塩素測定について=長崎県学校薬剤師会 伊芸俊
 五、プール消素の基礎的調査(第二報)=熊本県菊地市学薬会 藤本磯男、元田靖、岩下直方、大塚義信、橋本堅
 六、次亜塩素酸カルシウム錠による学校プールの消毒について=北九州市立浜町小学校、学校薬剤師 古賀哲弥
 七、学校給食施設及び設備等の定期検査の実施について=福岡県学校薬剤師会○友納英一、内田数彦、柴田伊津郎、馬場正守、小須賀正義、小田浩平

九州薬事新報 昭和41年(1966) 10月30日号

 全国私立薬科大学学長会議 九州に於て

 全国私立薬科大学(部、科)長会議(既報)が十月十二、十三の両日に亘り、福岡大学薬学部の当番で、大分県九重町牧の戸、やまなみ荘(観光ホテル、福大経営)において開会され、左記議題について熱心に討議あるいは協議された。

 ▽協議事項
 一、薬学教育の施設拡充の方策として機器その他の施設の協同使用の可能性の有無について。
 二、薬剤師国家試験について。
 三、教授要目作成について速かな実現方法を協議したい。
 四、薬学教育における人間形成について。

 ▽承合事項
 (1)昭和42年度新入生に関し、学校納金、試験科目、試験期日など決定事項承りたし。
 (2)教務、学生、厚生等の部課制度(組織)について承りたし。
 (3)推薦入学について現況承りたい。
 (4)入学試験に際して色盲、色弱の取扱いについて承りたし。
 (5)医薬分業の強化に伴い私立薬科大学附属薬局の可能性について、特に宮道先生のご意見を承りたい。
 (6)学生部の補導委員会などをつくっておられるところは、その構成、活動分野を承りたい。
 (7)大学設置基準薬学部関係の改訂に伴う、分科実施の状況を承りたい。また前項の実施に伴い、国家試験科目との関係をどのように調整される構想であるか。
 (8)学年進級制度について。

 当日の出席者は次の二十三氏であった。
 東北薬大教授栗原勝三郎
 東邦大学学部長山下泰郎
 日本大理工学部薬学科長木村雄四郎
 東京理大薬学部長林平三郎
 東京薬大学長寺阪正信▽同大教授長瀬雄三
 共立薬大学長服部安蔵
 北里大薬学部長上田武雄
 星薬大学長緒方信助
 昭和薬大学長草味正夫
 明治薬大学長恩田経介▽同大学教務課長久保忠道
 名城大薬学部教授内藤多喜夫
 京都薬大学長代理木本正七郎
 近畿大薬学部長青山新次郎
 大阪薬大学長宮道悦男
 武庫川女子薬学部長池田鉄太郎
 神戸女子薬大学長金子太郎
 第一薬大教授松野俊雄
 福岡大薬学部長松村久吉▽同大教授塚本赳夫▽同永松淳雄▽同中島修
(昭和大薬学部-欠席)

 第一日の協議終了後午後六時から懇親会に移り同地に伝わる神楽を余興として鑑賞したが、素朴ながらも格調高いもので好評であった。

 翌十三日は快晴に恵まれ、先づ玄関前での記念撮影、それより貸切バスで西行し牧の戸峠登山口で一たん下車、三俣山始め紅葉し始めた東方の山々の景観を眺め次に瀬の本展望台でおりたち阿蘇の遠望、西方一帯の雄大な眺望を満喫し、次いでスカイガーデンで休憩、放し飼いの沢山の孔雀とたわむれ、また広い植物園を観賞した。それより折返し牧の戸、長者原を経てレークサイドホテルで昼食、湯布院、城島高原を経て別府駅について散会した。なお、明42年の当番校は武庫川女子大薬学部と決定した。

 会員の熱意あげた 臨床薬理学講座 福岡県薬主催

 福岡県薬剤師会では、予てより薬剤師の地位向上のためには先づ薬剤師自身薬の専門家として、日夜研鑽すべきであるとして臨床薬理学講座を開催することを計画していたが、その第一回講座を十月二十二日一時より福岡市内田辺製薬福岡支店会議室において開催した。

 当日は先づ四島県薬会長の開講のあいさつに引続き直に第一講座、第二講座(講座内容は本紙九月三十日号記事参照)が開かれ、約百八十名が受講したが、質疑応答なども盛んに行われ、早くもこの講座が成功であったことが窺われた。なお、県薬としてはこの講座を四十回位続ける計画であるので、そのプランを樹てるため、出席者の希望などのアンケートをとり、次回よりの開講を参考とすることにした。誠に時宜を得た企画であり会員のこの講座に対する熱意が早くも表れたようであった。

 県病、市勤部共催 特別講演会 外に本年度の益進?楽部に就て

 福岡県病院薬剤師会、福岡市勤務薬剤師会共催の特別講演会が左記により開催される。

 ▽日時 11月12日(土)午後二時より
 ▽会場 福岡市綱場町第一銀行ビル三鷹ホール
 ▽講演
 一、最近の酵素療法
 エーザイKK研究所々長
 薬学博士岡崎寛蔵氏
 二、FIP(国際薬学会連合)総会に出席して

 九大病院薬剤部長 薬学博士 堀岡正義氏講演終了後同所において懇親会が催される。

 九大病院薬局出身者による「益進?楽部」の本年度総会は来る11月27日(日)に開会(会場未定)することに決ったが、当日は総会後会長堀岡正義氏のFIP総会出席並に欧州視察についての話しがあり、次に、現在の九大病院薬局の建物は大正十四年に建築されたものであり、老朽のため別に新築されることになっているので、その構造設備など斬新なものが希望されており色々と?楽部員のこれに対する新構想や参考事項など聴きたいと堀岡部長は切望している。?楽員は年一回のこの楽しい総会にこぞって出席して貰いたいものである。

 九州山口薬学大会卸部会

 今大会に初めて登場した卸部会は、十四日九時より第五会場において日本医薬品卸業連合会長渡辺氏並に専務理事、他の出席を得、九州卸連合会会員約30名の出席のもとに開会された。

 佐賀県卸薬業八日会溝上会長並に九州卸連合会大黒会長の挨拶、次いで日本卸連合会渡辺会長の挨拶があり、それより日本卸連合会の常任理事会報告が同会専務理事によってなされ、溝上地元八日会長を議長に推して議事に入ったが、先づ各地区の情況報告を採り上げ、その報告は次の通りである。

 福岡、北九州地区=先れも業者の出入がはげしく、地区的にまとまっても解決しがたいため県一本の組合にしたいと提案されているが最終的にはまだ決定していない、再販価格は大体守られているが、大病院の購入価格がC価以下のものもあり、これが今後の問題点がある。

 筑後地区=北九州と同じく県一本になりたいと望んでおり、家庭薬価格は福岡地区と同一価格で進めている。

 筑豊地区=一時卸会員十六名であったが炭鉱の衰微と共に十社に減じた、安定要綱で決められた指導価も、今は守られなくなり苦慮している、薬価の過当競争も分業実施が推進されないのも薬剤師自身の主体性が、欠けているからと思う。

 宮崎県=県立病院の入札が問題になっている。

 熊本県=個人的な意見であるが、大病院、量販店など大体各県同様であろう、売る者、買う者は立場の違いで、感情の対立、又それに卸が巻き込まれる面もあり、決して良い情勢ではない、なんとかならないかといいたい実情である。

 鹿児島県=卸業者欠席のため山村県薬会長代って、卸も九州を全体的に考える必要があろう、病院の薬品購入指定権も今や薬剤師から事務官に移行しようとしている。このような面も卸部会として関心を充分に持つべきであろう。

 佐賀県=三者それぞれの立場で自主性の回復を図らねばならないと感じている、如何にしてこの難局を切抜けるか、ハッキリした問屋の対度を打出したいと思っている。

 大分県=五社委を作り話合いすることになった、大病院の価格は乱れている。開業医もリベート競争がはげしく、今日迄経験したこともない事態も発生しつつある、卸としての対度に確固たるものが出来ていない。

 長崎県=十六社で小売の安定に向って努力している。
 など報告され、卸業界にも嵐が吹きすさんでいることが窺がわれた。午後は会場を揚柳亭に移し非公開で討議することになった。

 福岡県薬時功労者 知事表彰式 県薬祝賀会

 本年度薬と健康の週間行事の一つである薬事功労者に対する福岡県知事よりの感謝状贈呈式は十月十八日午前十一時より県庁知事室において、衛生部並に功労者選考委員列席のもとに、左記七氏に対し、知事より感謝状並に記念品が贈呈された。

 ▽福田忠吾(八幡区)
 ▽吉柳富雄(宮田町)
 ▽岡野辛一郎(大川市)
 ▽早川政雄(大牟田市)
 ▽白木太四郎(福岡市)
 ▽田中長雄(福岡市)
 ▽服部忠次郎(川崎町)

 なお当日正午より福岡県薬剤師会では恒例の功労者に対する祝賀会を薬剤師会館において開催した。 当日は被表彰者七名、他に県薬務課、薬事協会及び主催者側四十名が出席、工藤専務理事の開会のあいさつに引続き、四島県薬会長のお祝のあいさつ並に県衛生部長に代って尾崎薬務課長の祝辞があり、受賞者を代表して早川政雄氏が御礼の詞を述べ、谷川薬務課長補佐の乾杯の音頭により祝宴に入り、懇談などの後二時散会した。

画像  福岡市の本年度 薬と健康の週間行事

 本年度の薬と健康の週間も十月十六日から二十二日迄各地で種々な行事が全国的にくり広げられ、今年は医薬分業完遂を目指して特に薬剤師のPRに一役かっていると思われるが、福岡市では恒例により、福岡県、市、市薬剤師会共催により市内県産業貿易会館三階において、二十日より三日間薬と健康展を開催し、多大の成果をおさめた。

 本年は会場も市街の中心地県庁前であったためもあり会場も広く立派で薬の展示も派手に行なわれ、連日女子薬剤師の奉仕による「血液型検査」保健所が担当した「血圧測定」など列をなしてその順番を待つ風景が見られた。因に同会場に入場した者は一七六五名血液検査を受けた者四一四名、血圧測定を受けた者四九七名、薬についての相談者は六〇名などであった。

 なお、最終日二十二日健康展終了後、六時より町村会館において、反省会が催され、関係者薬三十名が出席して次回にそなえ種々の反省が行なわれた。

 又、二十日には福岡地区における該当環境衛生の検査が、学校薬剤師諸士によって行なわれ、千代町交叉点高宮、西新の三個所において一酸化炭素、ぢんあい、交通量などが検査されたが千代町、高宮は一酸化炭素ぢんあいともに、非常に多く、西新は交通量の割には少ないことなどが反省会で詳細に報告された。

 なお、予てより計画されていた「薬業献血友の会」「薬禍防止連盟」何れも薬と健康の週間を期して結成され、献血については必要時には直ちに応じられる態勢をつくった。

 =豆知識(十三)馬場正守

 ▼ホーレン草の毒性
 ポパイの漫画で有名なホーレン草は血を増やす野菜として食卓をにぎあわしてきたが、最近になってホーレン草を幼児が食べた所メトヘモグロビン血症を起こし、一例が死亡したと報告された。この理由がその後の研究で次のようなことが判った。即ち新鮮なホーレン草には硝酸塩が多量に含まれているが、これがかりとられて二十四-四十八時間すると硝酸塩は減少して亜硝酸塩がふえることが判った。たまたまこの亜硝酸塩の多く含まれたホーレン草を与えた二ヶ月から十ヶ月の乳児ではメトヘモグロビン血症が現われ、チアノーゼ、嘔吐、下痢等を起こし重症な一例に死亡している。この場合、ホーレン草の他に食品を与えているが恐らくホーレン草の新鮮度が問題と思われる。

 ▼壁にかいたクレヨン
 子供が壁にかいたクレヨンの落書きはなかなかとれません。こんな時には揮発油を使うか、アンモニアとアルコールを半々にまぜてそれをさらに二倍の水で薄めた液を布につけて拭くと落ちます。どうしても取れないときは目のこまかい、サンドペーパーでこすります。

 ▼汗じみをなくすには
 (1)裏に当て布をして、水でしぼったタオルで良くふきます。
 (2)ふつうのコップ三杯の水にアンモニアを小さじ一杯いれ、これをタオルにふくませてかたくしぼり裏と表からキュッとはさんでおきます。
 (3)木綿、麻、混紡の白い布ではアンモニアを使はずに蓚酸を小サジ一杯、コップ二杯くらいの熱湯でとき、さめてからガーゼにふくませて軽くたたきます。このあときれいな水でふいておくことを忘れないように。

画像