通 史 昭和41年(1966) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和41年(1966) 9月10日号

 九大病院薬剤部長 堀内正義博士 渡欧のため出発

 九州大学付属病院薬剤部長堀岡正義薬博は、九月七日より二十四日迄スペインのマドリッドにおいて開催される第21回国際薬学連合(FIP)総会に日本薬学会代表として出席されることになっていたが、八月三十一日羽田空港より北極廻りで出発のため、三十日午後一時二十分発福岡板付空港より羽田向出発された。

 当日は残暑も酷しい中を福博在住はもちろん、その他より、多数の見送りで板付空港は時ならぬ混雑を示したが、病薬、薬学薬剤師会、製薬及び卸業界などより約百五十名、盛大な見送りの中に元気に旅立たれた。その後同氏より次の様な第一信の礼状がとどいた。

 「出発に際しましては福岡県業界の皆様に一方ならず御世話になり厚く御礼申し上げます。予定通り8月31日午後10時30分羽田発、アンカレッジを経て、コペンハーゲンに安着しました。途中16時間の間に、食事が三度、日の出が二度と面くらうことが多く、ただ今小熄のコペンハーゲン空港では家具の国らしく、おちついた調度に感心しています。FIPでは与えられた使命を果すべくがんばるつもりです。」

九州薬事新報 昭和41年(1966) 9月20日号

 福岡県薬剤師会 理事・支部連絡協議会 分業と中央情勢報告

 福岡県薬剤師会では九月十五日十一時より理事会を二時より支部連絡協議会を県薬会館で開会した。当日の理事会は外遊中の堀岡副会長を除き全役員出席、支部連絡協議会は二十四部中八支部欠席であった。

 先づ四島会長は「欠席支部では今日迄本会の決定事項其の他不徹底の面が多いので、今後は欠席支部の無いことを勿論望むが、欠席支部があった場合本会を再開するわけにも行かぬのでこれを如何にするかを、議事に入る前に決めたい」と述べ、話合いの結果、欠席支部の属するブロック内の中心支部長が責任を以って協議、決定事項などを徹底させることを決め、それより議事に入った。

 ▽中央情勢報告
 会長より次の様な報告があった。分業問題については、現在全国的に抽象的には盛り上りをみせている。全国で約一万五千の保険薬局中、一応保険調剤を取扱っているのが五千である。これを一万にし、次に約二万の薬局全部に増加することが理想であるとしている。去月十三日の日薬理事会でも非常な関心を示し、そのため国会などでも問題にされつつあるが、中央が如何にあっても末端の医師、薬剤師がこれに協議することが最後の目標であり結実であるので、只手をこまぬいていては実現しない。先づその第一歩をふみ出すことである。本県薬としては分業の基本線を、
 @薬局をもつ病院からの処方せん獲得は第二とする。
 A一般開業医院、診療所からの処方せんを積極的に自力で獲得する。
 B調剤センター、調剤薬局などは一応否定することとし各自が手近な医院から先づ開始することが早道と考える。又販売の面で遅れをとった者は調剤の面でも亦遅れをとることを恐れる。今日より積極性を持って突進してもらいたい。

 次に学薬問題では日本学薬会より日薬へ、職種部会として認めるよう希望しているが検討の結果、現在の学薬を職種とみるのはおかしいとの一部の意見も出て結論は出なかった。

 適配条例については日病薬より緩和方の要望が出されているが、条例が出来る以前も百米で指導されていたものを唯、法文化しただけであり、必要とあれば特例も設けられており運用の面で適正を図かればよいと思われるが、今後病薬と共に具体的に再検討しようと云うことになり保留となった。

 次に42年度予算について、現在の事業程度でも一千万は不足するため会費値上げの意見も出たが何れにしても実質上の値上げは必至でないかと思う。

 ▽九州山口薬学大会
 十月十三日より三日間佐賀市に於いて行われるが福岡県としては二百五十名位は参加すべきとの予定であるので、今月末迄に各支部毎に参加数を報告されたい。

 ▽薬学講習会
 本県に於ては11月7日福岡市で、同14日小倉区で開催されるが、今年は県衛生部との共催、会員外にも案内を出すこととする。なお、これに関連して本県薬では薬剤師の地位向上の一環事として薬理学についての講習会を10月22日開催することになる。

 ▽理事欠員の補充
 地元福岡支部長波多江嘉一郎氏を決定した。

 ▽グループ保険について
 八月末締切った加入申込者については、保険料を会で立替え契約したので九月一日より効力発生したが、予想の数にはまだはるかに達しないので今月末迄に支部長を通じ申込まれたい。健康であれば家族、従業員も加入が出来る。配当金は薬剤師会でなく個人に戻される。

 ▽本会共済費支給の対象について
 支給の対象について種々問題発生が考えられるので基本的方針を明文化することに決定。其の他、薬と健康の週間会報発行、勤務薬剤師の給与改善運動と費用補充、名簿作成、学校保健について薬局の許可更新などがなされ六時閉会した。

 福岡地区安定協 九月例会 充実した話し合い

 福岡地区安定協九月例会は十日午後二時より、県薬会館に於て開会、当日は製企会側六社の他、久光製薬わかもと製薬の二社も出席、卸側議長となって直に左記協議に入った。

 (一)外売の価格維持について協議したが、一口に「外売」と云っても、その実態は@サービスで配達する。A注文を取りに行くB商品を持って販売に行くなどの形態があるが、Bはほんとうの外売で薬事法でも禁止されている。@は問題でないが、Aが所謂訪問販売であり@との区別が仲々難しいのである。

 訪問販売は禁止すべきであるが、実際には仲々困難なので、或る程度は止むを得ないと思われるが、再販品並に指導価格品目などの価格は是非守るよう指導すべきである。大体、地区に於て外売を主とする店舗は業界内で判明しているので、卸小売共にそれを監視することが必要である。又メーカーの無理な押込みが、外売を招く結果になる虞れも考えられるので自粛されるよう要望された。

 (二)再販契約について所謂行儀の悪い業者をアウトサイダーとして置くことの可否につき検討した結果、最近、再販品の横流れも現れて来たことでもあり、再販と取引はこれを別個に考え再販契約を結んだ上で指導すべきであると云う事になった。

 三)各地区情況報告に移りメーカー側より試売の結果が報告されたが、現在、大体に於て地区では小康を保っている様である。

 (四)先月も問題になった家庭薬、指導品目などの零マージンのものについては、スーパーサンテ、わかもとなど価格を引上げて守れるようになった例もあり、或る程度価格が守られるようになれば次の段階として売る意欲の持てる価格に引上げるよう努力されたいと、小売側より強く要望した。 次に最近各地区ともチラシ問題が非常に減ったことにより小康が保たれていると思われるので、今後共量販店などとの話合を続けることが望ましいと、卸側より発言があった。次回定例日は祭日に当るので、十月六日二時より同所に於て開催することを決めて散会した。

 =豆知識(九)馬場正守

 ▼繊維の鑑別法
 街の人から良く訪ねられるが今回は簡単な方法について述べる。繊維には近時合成繊維も含めて数多く生産されているが、そのうちの主なものに木綿、麻、スフ、人絹、アセテート、絹、毛、ナイロン、アミラン等がある。

 一、燃え方
 繊維の一本を布からほぐして取り、ライター、マッチ等でその先端に火をつけその燃え方を観察する。木綿、麻=黒く焦げて早くポッと燃え、灰色の灰を残す。まるで紙がもえるようである。スフ、人絹=木綿、麻よりももっと早く燃える。アセテート人絹=火をつけると縮れて燃え、酢酸臭を発する。絹、毛=縮れて燃え、一種独特の爪や髪を焼く臭で灰は黒く塊まりができる。指先でたやすく、つぶれる。合成繊維=ゆっくりと先端から融けるように燃える燃えた後、褐色の玉をなし、その玉が冷えると硬くて指でつぶせない。

 二、薬品による鑑別
 @濃硫酸‐冷たい濃硫酸を加えて溶けるのは木綿、スフ、人絹で溶けないのは麻と絹、毛。熱い濃硫酸に溶けるのは絹で、溶けないのは毛。
 A5%苛性ソーダ溶けるのに絹、毛。溶けないのは木綿、麻、スフ、人絹。
 B3%酢酸鉛と5%苛性ソーダ液を混ぜ、加熱すると毛だけが黒くなる。
 C氷酢酸‐溶けるものはナイロン、アミラン、アセテート。
 Dアセトン‐溶けるものはアセテート。

 福岡の薬と健康展 打合せ会 10月20日〜22日

 本年度の薬と健康の週間は十月十六日(日)から十月二十二日(土)までと中央でも決定しているが、福岡市薬剤師会では、その打合せのため九月八日、十二日の二回に亘り、県、市、保健所メーカー、卸、学薬、女子薬などの代表とともに週間行事について協議し次のような事項を決定した。

 ▽週間行事の一環として例年通り「薬と健康展」を実施する。
 期間 十月二十日、二十一日、二十二日 場所 福岡県貿易会館(福岡県庁内)
 行事は同会場が広いため次のようなことを行なうことを決め、細部については実際に会場を見た上、協議することになった。
 ▽メーカー各社の薬の展示
 ▽パネルの展示
 ▽映画上映
 ▽血液型判定
 ▽血圧測定
 ▽薬の相談
 ▽景品贈呈

九州薬事新報 昭和41年(1966) 9月30日号

 福岡市薬剤師会 理事・部会長会議 薬と健康展、分業対策など

 福岡市薬剤師会は九月二十四日一時より県薬会館において部会長会を開会した。当日は去る十五日開会された県薬支部連絡協議会が主として行われ、その他薬と健康展、分業推進、催眠薬問題などにつき協議した。

 先づ波多江会長はあいさつに引続き、支部連絡協議会報告を詳細に行い、なお会員の要望に答えて協議会報告は今回より簡単な文書にまとめ市薬会報とすると報告した。

 次に来る十月二十日より市薬において開催する薬と健康展については、医薬品の展示、映画会、血液検査及び献血、血圧測定、薬の相談、スピード籤などを行うが、これについては会員の担当割当てを行うので、その協力方を要望した。

 次に医薬分業推進については県薬の方針に従い普通的発達が好ましいので、会員先づ各自が近くの医院、診療所より暖交獲得することが先決で、早く踏切った者ほど有利と思われる。また備蓄薬品については県薬で調査の結果、中心部の各地区から処方せんの集まる所は別として、大体百種類位の備蓄で間に合うことが多く、問題は各自が努力するか否かにかかっている。全国的統計を見ても処方せんを出し得る医院、診療所四万五千、これに対し薬局は二万であるので、一薬局が二診療所と一歯科医の処方せんがとれる筈で、これを基本として進みたい。

 またこれに関連して知識向上のために県薬主催で薬理学講座も開講され、また病薬主催の分子薬理学講習会も毎月一回開かれており、また各種大会に出席して見聞を広めることも必要で、各自は知識を高め、大衆に向っては薬と健康展などを通じPRしなければならない。

 次に、催眠薬について相変わらず乱用事故が発生しているが、吾々各自、自粛しているにも拘らず、たちの悪い業者は後を絶たない。医薬品は販売の面においても特殊性があるので、吾々業者の手で既に今日は摘発すべき時期ではないかなどが慎重に検討され、五時散会した。

 挟子

 ▼本年の「薬と健康の週間は十月中旬に行われるが恒例により福岡県に於ても県下の薬事功労者の表彰が週間行事の一環として行われることになろうが、仄聞する処によると今年は薬剤師の薬事功労者としては北九州地区の梶原正造、筑豊地区の吉柳富雄、筑後地区の岡野幸一郎、早川政雄の四氏又はその内三氏があげられるのではないかといわれている「四氏共開局者であり剤界の元老であり多年業界のため又役員そして業界団体に尽くされた人である。早川氏は学校薬剤師として特に永年の業績が認められたものと思われる。

 ▼催眠薬乱用禍は相変わらず後を絶たないそうだが、正しく販売しても、使う段階を誤れば乱用になる。だが警察によばれる業者は大体悪質の者らしく、業界で自粛しているなど知らなかったと云うか、薬は乱売で儲からないが催眠薬は儲かるから売らずにいられないなどと云うのと二通りあるという。仲々考えさせられる言葉だが、県薬でもここらで、対外的にも薬禍対策連盟とか、薬業者献血同盟とかを結成し大いに「薬剤師ここに在り」とPRもし、内部の組織強化に役立てたらとのこと。薬剤師は余りにも今日までおとなし過ぎたか、無気力だか又組織に弱いか、ここらで大いに発奮して貰いたいものである。

 ▼ 日薬の医薬分業実施対策本部第二回合同会議が去月12日東京で開催されたが同会議出席の某特別調査会委員の報告によると、会議に於ける某県薬の報告の内に「県医師会と下記の様な協定」を4月1日より実施した旨のことがある。
 @開業医師は備蓄なき医薬品の処方せんは発行すること。
 A患者の申出であれば処方せんを発行すること。
 B医・薬・協調の上に処方せん発行の有利性を患者に啓蒙すること。
 と云うのがあるが、@については処方中の医薬品が備蓄されていようと、されていまいと、当然処方箋は発行すべきで剤界や薬業界の憲法とも見るべき薬事法や一連の法規に厳として規定されている(除外例はあるが原則として)この協定を裏返しにすれば医師の調剤を正しい事として又当然の事として薬剤師会はこれを承認していることになっている。Aの協定についても@と同じことが言える。この考え方は全く憐むべきことで、乞食根性をそのまま露呈している様だ。違反として採り上げ自己の権利を主張すべきである。若しそれができないなら黙してひかえているがよい。公会の席では口にすべきではない筈だ。Bの協定についてはまあまあ結構なことである。法治国でありながら公然と堂々と違反が行われているに拘わらず知らぬ顔の監督官庁の存在することは剤界にとっては耐えられない侮辱であるべきだが、剤界のこれに対する表情は左程にも見えない処に最底の姿がある様だ。今回の医薬両団体が分業に関する、処方箋発行について内容は兎も角として公式に話し合い協定したことは全国でもあり所謂第一号であろう。

 医師の処方箋を偽造して薬局から睡眠薬を買いあさっている事件が東京で見つかった。こんな型は今迄殆ど耳にしたことがなかったが、仲々巧妙なやり方である。医薬分業の一つの盲点ともなる虞れがある。分業運動の機運の盛り上っている折から剤界では特に考慮すべきことである。分業反対の好餌ともなり兼ねないと思われるから。

 ▼先に発表された日薬の40年度決算書によると40年度末現在の未納会費は総額三百八十四万三千六百七十二円となっている様だ。其内訳は-▽長崎県百五十九万一千六百七十六円▽島根県八十六万四千四百六十六円▽岩手県五十一万三千二百円▽宮城県二十六万円▽山形県二十三万九千三百三十円▽秋田県十五万五千円▽石川県十二万円▽岐阜県十万円-となっているが、然し回収不能というわけではなく、何年計画かで納入することになっているらしい。各県薬の幹部は兎も角、一般ひら会員の一人としてはこんな数字を見るのは初めてで吃驚したことである。何んだか割り切れない様な感じがする。