通 史 昭和41年(1966) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和41年(1966) 8月10日号

画像  物価問題懇談会提案と再販制度のゆくへ
 福岡県医薬品小売商業組合 理事長 鶴田喜代次
 

 流動する薬業界に於て再販売価格維持契約制度は薬業経済安定のための唯一の砦である。我々は今日迄多くの業界安定の基盤となるものをもぎとられて来たがこの孤塁だけは護りぬきたい。その再販に物価問題がからみ、きびしい批判の矢表に立たされ攻撃の矢が集中している。

 独禁法が再販契約を認める基本的理念はブランド商品が販売業者の不当な「オトリ廉売」に利用されメーカーのブランドの信用を低下させられることを防止しようというところにある。またこれがひいては乱売による品質の低下を避け消費者の利益にも通ずるという考え方である。この様にこの制度はもともとメーカー保護を目的としたものだが、其の恩恵は我々小売業者も又消売者も受けているはずである。

 乱売のゆきつく処、終着駅は品質の低下であり市場の混乱である。安かろう悪かろうでは、消費者の利益とは言い難い。この様にメーカーにも我々小売業者にも又消費者にも、よい制度が再検討されるようにしているのである。昨年十二月国民生活審議会は不当な再販売契約をきびしく排除せよといい、一月二十五日物価問題懇談会は審議の過程に於て、再販契約が消費者物価上昇の原因になってると公取委の取り締り強化を強く要請している。公取委もこの制度は自由競争を阻害し、ひいては物価値上りのかくれみのとして使われる傾向があるとして、再販契約そのものの再検討を表明している。

 1、新規の指定は手控える
 2、再販契約行為そのものの定義を明確化する(例へば推奨販売制もこれに含まれるかどうか)
 3、届出規則の再検討
 4、商品指定基準の明確化、現在自由競争をどうみるか、またシエアの判定基準も不明確である
 5、五品目の再検討
 6、再販類似行為の実態調査等をあげている

 六月二十一日物価問題懇談会は、家庭用品(医薬品、化粧品、洗剤石けん、プラスチツク容器)について提案の内容を発表し、同日衆議院の物価問題等に関する特別委員会は、全会一致をもつて択採承認され、明けて七月に入り臨時国会の参議院に於てもこれを支持する決議がなされており、閣議に於ても、各省共これを推進するむね決定したと日刊紙は報じている。

 物価問題懇談会提案の内容の中から再販に関するものだけ抜すいして見よう。概要は次の通りである。生産性が上昇してコストが下がっているのに、再販契約で消費者価格は釘つけにして居り、小売業者にはリベート等過大なサービスを提供し、又過剰な広告宣伝を行ない消費を助長させている。それに他の業種に比較して高い利益率をあげているのに、其の恩恵を消費者に分ち与えていない。だから次の事項について再検討する必要がある。

 1、再販行為の範囲の明確化
 2、コストマーヂン等の公表
 3、リベート等の禁止
 4、小売価格の表示
 5、再販価格に値幅を設けて其の範囲内での競争を認める
 6、生協等に対し取引制限を行う事を禁止せよ

 生産コストの公表を迫られリベートを禁止されて、はたしてメーカーがこの制度を利用しつづけるであろうか。有名無実となり、再販制度と云うアパートは空家となりはしないかと云う不安におそわれるのである。公取委は秋ごろまでに再販法と云う様な経済法の立法を考へている様であるが、それを裏書きする様に七月二十二日届出規則を改正し七月二十三日より施行する。併せて実態調査をすると発表した。

 日本経済新聞によれば次の通りである。再販制度は物価対策の見地から、物価問題懇談会や国会でその改善が要望されており、再販届け出規則の一部改正強化して監視を強めることにしたもの、おもな改正点は、

 1、これまで再販契約結成届だけでよかつたものを、届出に際しては契約実施メーカーの事業実績、契約実施商品の販売実績、価格、マージンリベートなども報告させる。

 2、再販契約の届出には関連契約も添付させ、抱き合せ販売等相手方を不当に拘束する条件を取り締まるなどで、公取委は同時に実態調査をすることになり、再販売契約実施業者の資本金、従業員数、過去十カ年の販売額のほか再販契約に関連する組織(△△会、□□チエインストアなど)の結成状況、契約品の価格体系などを調査することをねらったもので、調査時点は六月三十日現在、報告提出期日は八月三十一日となっている。我々はこの様な事態に対して徒手傍観し、成り行きにまかすのか或いは団結の力をもつてこれを迎へ討つのか、最後の砦危し、小売業者の奮起をお願いして筆をおく。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 8月20日号

 福岡市薬勤務部会 八月例会

 福岡市薬勤務部会では第一四七回例会を八月六日二時より武田薬品工業兜汢ェ支店会議に於て開会した。当日は連日の猛暑にもかかわらず約40名の出席があり時節柄左記のような映画、講演を視聴した。

 一、映画日本の祭
 二、精製水(特にイオン交換水)について 九大病院薬剤部 鶴岡道雄
 三、水中のPCPについて 福岡県衛生研究所 森彬
 四、消炎酵素剤の消化管内の吸収について 国立福岡中央病院 清水貞知

 福岡市薬 理事部会長会

 福岡市薬剤師会では去る二十八日二時より、県薬会館に於て理事、部会長合同会議を開会した。当日はこれ迄未決定になつていた副会長(一名)に国武一人氏が選任され次いで去月、二十二日開会された県薬支部連絡協議会の報告があつた、同会としては保険調剤受入態勢の整備を急がねばならないので、その具体的な方法などにつき検討したが、結論は次回に持越すことになった。

 福岡県薬業界に 薬親会誕生 勤務者を主として

 福岡県下薬業者(主として行政関係勤務者、県立病院勤務者、メーカー勤務者)は、従来時折り懇親の意味で不定期に会合を持つていたが、この程「薬親会」の名称のもとに一堂に会し、薬業者相互の親睦、及び薬業者に対する批判も酷しい現情勢下に、内部の団結を図ることを目的として発会する運びとなり、本月五日五時半より市内東中洲サツポロビヤホール特別室に於て、その結成式を行った。

 当日は行政関係勤務者は約25名、病院関係約15名、メーカー関係約40名の外、関連団体代表並びに薬学関係、及び県知事、国会、県議会議員など約20名の来賓の臨席を得て盛大に行われた。

 会議は先ず当日迄結成準備を担当した県薬務課の阿部氏より経過報告があり、次いで来賓のあいさつに引続き、会の結成を決定、名称を「薬親会」と命名、規約並に委員を選出決定し、今後の運営其の他具体的なことについては委員会に一任することを決めて八時散会したが、現在事業者に対する世論は必ずしも良好とは云い難い時期であるだけに、今後関係諸団体とも打って一丸となり大同団結することが期待されている。