通 史 昭和41年(1966) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和41年(1966) 7月10日号

画像  三年以内に完全分業 日薬分業対策本部初会合

 日本薬剤師会は去月十四、十五の二日間東京の薬業健保会館で「分業実施対策本部」の初会合を開き、三年計画で医業分業の完全実施と、その受入体制の整備を図る方針について協議し、分業実施に向って大きく第一歩を踏みだした。

 先づ十四日午前に対策本部員打合せ会議と、引続き調査会員全体会議を、午後は五調査部会を開き、翌十五日には全国地方会長連絡会と対策本部の合同会議を開き各県の分業実情報告が行われ、完全分業へ全国薬剤師が総力を結集することを決めた。

 尚会議に先立ち宮本本部長は、明治七年医制下達により分業が原則的に決まり、昭和卅一年に所謂分業法ができる迄原則的な点から現実の分業に持って行きたいと剤界は努力した。その結果、現在の様な分業が布かれているが、事実は内容が伴なっていないことはご承知の通りである。そのため剤界には分業に対してあきらめムードがある様に思われる。然し現在漸く医師の一部を始め特殊関係者は協調的に分業を進めようという空気になっている。

 分業対策本部はこの気運をのがすことなく、分業体制を整備するため設置されたものであり、日薬と表裏一体となって目的達成に邁進するものである。分業こそ薬剤師の存在を意義あるものにすると確信する。と挨拶した。

 地方会長と対策本部との合同会議では今年一ぱいを調査研究の期間とし、遅くとも三年以内に完全に近い分業を実現する様努力することを確認し、次のような決議文を採択し、地方に於ても中央の本部に呼応して分業推進のための機関を早急に設くべきであることをも確認した。

 【決議】 今や医療担当者たる医師、歯科医師、薬剤師、それぞれの職能に対する正しい評価が行なわるべき時点に達したと判断する。これは生命尊重を基調とする国民の福祉と結びつくものであり医療職能に対する正しい評価、これこそ医療制度改革の根本理念でなければならない。われわれは、この理念のもとに、医薬分業受入れ体制を可及的すみやかに整備し、各地方における実情を勘案してこれを実施する。

 分業対策本部 全国ブロツク推薦 副本部長・本部員 選任発表

 日薬の分業実施対策本部の正副本部長並に本部員及び特別調査会(一〜四部)会員は五月廿七日既に発表したが(本紙六月十日号参照)全国各ブロツクから推薦の副本部長並に本部員については去月十五日左記の諸氏を選任発表した。

 ▽北海道=副本部長矢野順三、本部員田所一栄
 ▽東北=副本部長鈴木利平、本部員加藤啓一
 ▽関東山梨=副本部長斉藤徳次郎、本部員田部井誠一
 ▽東海=副本部長沖勘六、本部員青木清臣
 ▽北陸信越=副本部長塩谷仁、本部員田中嘉太郎
 ▽近畿=副本部長村雲信夫、本部員中谷正行
 ▽大阪=未定
 ▽中国=副本部長安達貫一、本部員木村定晴
 ▽四国=副本部長浦崎誠磯、本部員植田香苗
 ▽九州=副本部長四島久、本部員未定

 福岡県薬 理事会

 福岡県薬剤師会では七月五日一時半より県薬会館に於て理事会を開催した。当日は中央情勢報告中特に分業実施対策について詳細な報告があり、本県としては中央の要請もあるので、次回支部長会(本月二二日開催予定)までに具体的にその案を作成することになり、次に本年度薬学講習会については日薬より一応の案が示されているが、九州ブロツクでは開催期日は大体十一月を予定し、八月二〇日開催予定の九州各県会長会に於て決定する。

 九州山口薬学大会(十月佐賀市に於て)については提案事項及び研究発表について、各委員会を早急に開き、検討した上七月中に提出されたい。未加入会員入会勧誘については、第一段階として一、六四一人に対し、支部を通じて勧誘したが、回答一二一名中二一名入会した。会費の再検討が必要である。その他種々報告があつた。

 薬価の是正 福岡地区小売組合他 卸、メーカー懇談会

 福岡地区薬業小売組合では再販品「サンテドウ」の契約違反につき去月二十日重大な決意を発表した(本紙前号記事参照)これについては卸、メーカーの措置により既に解決したが、一般家庭薬の乱れの是正について去月二十七日午前福岡地区卸組合の斡旋により、市内マルベニに於て小売組合及び地区の量販店との話合いを行った。価格のシーソーゲームにより現在一番乱れの酷いといわれている「スーパーサンテ」については特に当該メーカーの出席のもとに話合った。

 現在スーパーサンテは市内中心部でチラシが散布された関係でシーソーゲームとなり、卸業としては正常な価格で卸しているにも拘わらず小売店間の競争となりその値は全国で一番安いのではないかとさえ思われるので、この是正について話合いたい」と卸側より挨拶があり、それより各自それぞれ意見が述べられたが、先づ小売側から、現在家庭薬が、メーカーの対策不充分のため目玉商品とされ、その宣伝のためシーソーゲームを来し、スーパーサンテの如きは八十八円迄値下りしている。当然量販店としては、これに見合う仕入をしているものと組合側では思っていたが、調査の結果、事実は欠損となっていることが明らかとなった。この事は各自が好んでやっているとは思われないので、話合いの上或る程度は協調し、前向きの姿勢で進みたい。

 と述べ、次に量販店も一せいに価格を上げるのであれば異議はない。と云うことで、スーパーサンテに限っては直に店頭のビラ等一切これを廃し、廉売対象品からはづし、その後の取扱いはメーカー、卸の話合いによっての決定に従うことに意見の一致を見て解決に至った。

 尚引続き午後も同所に於て一般医薬品についても話合つたが、当日の出席者は次の諸氏であつた。
 組合側=四島、斉田、西森、須原、大隈、国武
 量販店=バーゲンセンター、白十字、大賀、丸栄、渕上、上野、白木屋(糸島薬局は欠席)
 卸側=若狭薬品、大黒南海堂、富田薬品、川口屋、鶴原薬品、高瀬薬品、九鉱薬品
 その他参天製薬、大庭県薬務課長補佐も出席した。

 一般医薬品の 価格是正など

 午前中のスーパーサンテ価格是正についての懇談会に引続き、午後は大黒社長を座長に推し、一般医薬品の価格是正について話合いを進めた。 先づ大黒座長は、価格の問題は仲々むつかしいが、それぞれの立場を守りながら全体的に話合いの場を持つことが大切であると思う、弱い立場にある卸側としても是非お願いしたい。

 と挨拶し、次に小売組合側から、福岡地区五百余名の小売業者の内、約七%位が近代企業は斯く在るべきとの観念から広告宣伝、廉売をしているが、これは大多数業者の犠牲の上に成立していると思われる。お互に薬業者である以上、最大公約数的なものが其処にあると思う。現在家庭薬が目玉商品としてシーソーゲームの対象となり、酷く価格が乱れているが、大方の店が原価を切っている現状は全く行過ぎであり、その原因はビラ合戦にあると思う。

 組合自体としても事態がこれ以上悪化すれば自滅するので、対決する外はないとの気運が生じている。近来社会的にも種々問題視されつつある薬業界に其ような事態が発生すれば自ら墓穴を堀ることになろう。この様な機会に医薬品を目玉商品とすることを自粛し、無益な競争を止め、大型店は小型店を、小型店は大型店を互に理解し、或程度の協調を図り、前向きの姿勢になって不幸な事態をさけたい。

 と述べ、次にオブサーバーとして臨席した大庭県薬務課長補佐(技師)は、安売りの広告はすべきでないと、三、四年以前から言って来たことであるが、「広告をせねば食えない」と言ったのは薬業者自身であつた。薬業界の真の在方を自らよく考えるべきである。あらゆる誹謗を受けるようなことをしているのは薬業者自身である。原価を切り欠損して迄販売して、薬店はサービスがよいと一般消費者に思わせねばならぬのであろうか。

 多量の催眠薬を不法販売し、警察の糾弾に会って「一般の薬は乱売で儲からぬが、催眠薬は儲かるから売らずには居られぬ」と取調べられる者は臆面もなく口を揃えて言っているが、斯る破廉恥な業者は薬局薬店など廃めてしまえと言いたくなる。社会一般人の薬屋に対する不信は大変なものであり催眠薬でなく強かん剤だと迄かげ口する者さえある。

 又ある千円の薬を半値で売っている薬屋があるが有効成分も半分か……と薬務課に電話をかけて来た人さえあつた。店頭には?旗の様な大きなビラを下げていたり、全く見苦しい限りである。お客は喜こぶより笑っているだろう。又商売気の強い店程、法規を無視している様に思える。薬店なら薬店らしく真面目にはされないものだろうかと強く反省をうながし、その他大体次の様な意見が出されたが、当日の結論としては「お互に話合いを行う時は気持ちよく集り、今迄背中合せだったものを前向きの姿勢とし、話合いの場を持つことが必要な場合はその旨を組合に申出る事とし、招集については今後小売組合が斡旋する」ことになった。

 主な意見は次の様なものであつた。
 ○価格の調整懇談会といったものを持ちたい、価格は何処の段階で妥協するか原価も仕入原価と販売原価(仕入原価プラス必要経費)とあるが、せめて販売原価は切らない様にしたい。
 ○組合の意見は吾々の思想とは根本的に違うので、何処迄話し合って行けるか…譲るべきものはゆずるし一面、指導されていることについては可及的努力するが、余り無理と思われる指導はしない様にして貰いたい。
 ○自由経済と云つても限界がある。アメリカでも行き過ぎのため中小企業が困り、其対策が現在講じられている。又西欧では三割位の利益であり、余裕の時間は大いに勉強して大衆のためにサービスすると云った考え方である。自由経済の行過ぎのため、中心部の店だけが残り、周辺での店が成り立たなくなれば、消費者はどうなるか、又経営困難になった業者はどんな形態になるか(催眠薬ばかり売る様に追い込まれることも考えられる)他の物品と違い、特殊性を持つ医薬品についてはそれ迄考える必要があろうと思う。等々であった。

 福岡支部薬業 部会長会 価格是正につき 徹底を期すため

 福岡地区薬業小売組合では地区卸組合の斡旋により去月廿七日マルベニに於て量販店と懇談し、医薬品の価格安定について話合ったが、組合内部にもその趣旨を徹底させるため七月四日午後二時より薬剤師会館に於て福岡支部々会長会を開催した。

 当日は部会長の出席もよく卸組合からも八社が出席し、先ず須原支部理事長から今日迄の経緯につきそれぞれ詳細な報告があり、引続き各部会より情況報告があった。

 其の報告により種々検討した結果、市内の約一四、五店の所謂行儀が悪いと考えられる方々に対しては、無駄な小売業者間の競争を止めるために量売店とも強調し、目玉商品の価格を元に戻すため現在努力をしているこの機に、組合としても纏まる態勢をとる必要があるので、これを理解し、協力を要望するよう、先ず第一段階として卸組合より関係個々についてその趣旨を徹底して貰うこととなり、必要とあれば組合としても懇談し、真に協力の出来ない方々に対しては次の段階の行動に出ることになるので其の節は各組合員の一層の協力を要望して、当日の部会長会を終了した。

 尚小売組合並に卸組合連名により次のような文書を組合員全部に配布することになった。

 ◇最近の福岡地区薬業界に於ける家庭薬の末端販売価格は全国にその例を見ない程の乱廉売の様相を呈している事は既に御承知の通りでありまして、此の儘推移しました場合最悪の事態に立至るものと思われます。特に参天製薬のスーパーサンテは先般来チラシ配布による価格の過当競争が日を追うに従い烈しくなり大衆の薬価に対する不信は益々増大している現状です

 去る六月二十七日福岡市卸協組の斡旋に依り福岡量販店各位等との懇談の結果、斯る行過ぎた「シーソーゲーム的」混乱状態から脱却するため、今後チラシに価格を記載しない事及び目玉□化商品として使わない事が了承されました。これを機に大衆に医薬品不信の念を招かせるような価格の値引競争を一擲して頂きたいと存じます。参天製薬鰍ノ於て今般最低販売希望価格を設定致されましたので何卒御理解を賜り御協力の程御願い申上げます。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 7月20日号

 医薬分業実施対策問題討議 薬局委員会社保委員会合同協議会

 福岡県薬剤師会では中央の医薬分業実施対策に呼応し、県薬としての対策を推進するため、七月十四日一時より県薬会館に於て薬局委員会と社会保険委員会との合同会議を開いて検討した。両委員会は今年度初の開催であるため、別個に開会、正副委員長を選定後、本年度の事業計画などにつき検討した上、両委員会合同して分業実施について協議した。

 先づ四島県薬会長は、本日は両委員会とも本年度初会合であり委員長など決定されたことと思うが、今後両委員会で特に検討して貰いたい事項についてお話したい。薬局、社保両委員会はもともと一本であつたが、国民皆保険となった際、保険調剤促進の意味で分離した。それは薬局即調剤と云うことが好ましいからであった。又薬局委員会の経営合理化の一環としての保険調剤でもあった。

 現在の薬局の形態は三つに分けられると思うが、@店舗面積も広く販売に積極的のものA薬局的良識もあり、販売面も積極的のものB薬局経営にあぐらをかいている所謂消極的な者、意欲のある人は販売面、技術の面、何れに力を入れようと心配はないが、Bの惰性で経営している薬局は先れ分業になっても立遅れる人である。

 日薬の分業に対する根本理念は、生命の尊重であり、国民福祉、社会公益に寄与することで、職能の尊重化と云うことでもあるので、医師、薬剤師間の了解のもとに理論的に分業達成が出来ても、末端薬局では自らの努力によらねばならぬので、そのためには、自ら向上して、社会一般に専門家として信頼され、又認められる努力をすることが急務である。薬局の合理化と同時に分業業務を如何に受入れるか、又薬局経営安定が軌道に乗るよう、両委員会で計画、施策まで検討して頂きたい。そして本会で出来得ることは早急に実行に移し、中央に対する要請などもどしどし地方の意見として提出されたい。と述べ、それより安部薬局担当理事を座長として協議に入った。

 先づ中村社保担当理事から第一回日薬分業実施対策本部会議出席の詳細な報告があり、今日迄の本県薬分業の対策が全国の各府県に対比して相当進出していることは瞭らかであるが、今後は県内のバラツキをなくし実動することが最も急務であることが述べられた。

 次に本県薬の「医薬分業実施対策要綱」により具体的に検討し、当面着手すべき事項として、@県薬務課との積極的協力体勢確立のための懇談会開催、A県保険課並に国保課、支払基金及び国保団体連合会との意志疎通、懇談会開催、B日薬本部の動向を判断の上、県医師会との懇談会開催については儀礼的には既に実施しているが、今後機会ある毎に積極的に推進すべきで各支部に於ても早急に実動班(説得班)を編成して活動を開始すべきであり、具体的には先づ、一薬局が医師の説得から始め、そこに生じた障害については、それぞれの機関に要望し、或はその対策を考慮するのが早道であろう。この場合あくまで正攻法でないと事故の基となり却って全般的には逆効果になる。又現に大牟田で実施している保険薬局の標示ポスター、分業PRの薬袋など一括県薬で作成するなど、来る二十二日の支部長会に諮ることを決めた。

 次に工藤専務理事より分業推進方策に対する参考資料として左記のようなことが述べられた。日薬の分業目標は全国の保険薬局の70%が、毎日40枚の処方せんを処理し月額10万円の利潤をあげることと云われている。又分業推進の方策としては次のようなものがある。

 (1)医療担当者との協調方式
 ▽山梨、長野方式(病院、診療所との個々の交渉によるもの)
 ▽新潟方式(病院の外来者には処方せんを発行させるもの)
 ▽広島方式(薬局に来た患者を症状に適応した病院医師等に紹介し、処方せんを発行せしめるもの)
 (2)調剤センター方式
 (3)希用医薬品備蓄センター方式
 (4)薬大方式(一定期間、薬大の教室に管理させ、学生教育の一助とするとともに分業のPRに資するもの)
 (5)外科、産婦人科等の特殊科との約束処方方式
 (6)病院協会方式(病院薬局と一般薬局とを同一に取扱うもの)

 次に其の他の事項
 ▽厚生省の保険薬局指導監査について
 八月‐山口県、九月‐佐賀県、熊本県、十一月‐福岡、長崎県で実施される。係官は厚生省医療課長補佐中島良郎氏、監査の方法は集合監査、受検薬局数は十店内外で該当薬局はその直前に県より指名、保険薬剤師が出席することになっている。尚当日選出した薬局、社保両委員会の正副委員長は次の通り、
 ▽薬局委員会
 委員長=神谷武信、副委員長=荒巻善之助
 ▽社会保険委員会
 委員長=西森基泰、副委員長=園田福一

 日本学校薬剤師会 臨時總会 会費割当決定

 日本学校薬剤師会(会長‐可児重一氏)は去月十六日神奈川県の薬業会館で臨時総会を開き、会則一部改正、本年度会費割当額、次年度研修会開催地決定の三件について主として協議した。

 ▽会則改正の件については問題の焦点が日薬と県薬との関係を会則中に如何に表現するかにあつたが文案は理事に一任し、又総会出席代表の数を五〇〇名迄各地区一名、五〇〇名を越える毎に一名を増員することになった。

 ▽会費割当については、先の富山に於ける総会で41年度予算は三五〇万円(内日薬補助一〇〇万円)と決定しており、二五〇万円の割当てであるが、各地区毎の学薬師の数とその報酬とを勘案して作成された原案を大体了承したが、不服の地区は更に理事と話合いの上調整することになった。然し予算総額に達する様考慮することに決った。

 ▽次期研修会開催地は愛知県名古屋市に略ぼ決定したが、出席の同県学薬会長も略ぼこれを承認することになった。

画像
 洋酒あれこれ 荒巻善之助

 「さけ」のことを少しばかり書いたら、いろいろな方から御批判をいただいた「なかなかおくわしいですな」というおほめのことばから、いささか動脈硬化じゃありませんかというシンラツなもの、たまにカクテルなどのむと、「へへ、今日はちつとばかり様子が違うようですな」などと冷やかされたりもする。

 日本酒礼賛などと柄にもないことを書いたのは、もともと「さけ」が好きなせいでもあるが、洋酒ブームに並行して「さけ」があまりにも大衆的になってしまって、日本の伝統的なさけの品質が失われていくことに対するいささかのレヂスタンスもあつた。然し洋酒の味が判らずに日本酒をほめたと思われるのもシヤクだから、今度は少しばかり洋酒ののみ方についてあれこれウンチクを傾けてみよう。

 バーで下手にカクテルなどを注文すると、目の玉の飛び出るほどボラれることがあるのは御存じの通り、そこで安全第一という考えで殺菌ビールのストレイトでいきましようということになるが、こういう飲み方はオサワリ専門で女の子のオシリなどなでながらアワよくばホテルへでもなどとよからぬ楽しみで酒の味など判らぬ人のすること、酒のみの飲み方ではない。

 酒を飲もうと思うならやはり一人で飲むに限る。それもカウンターでのむ。一人でカウンターでのんでみようと思うほどの人ならカクテルブツクに一通りは目を通すぐらいの予備知識はあってもよいと思うが、それもめんどうだという人のために、一つだけ秘伝を公開しておく。

 カクテルの代表はなんといつてもマテイニとマンハツタンだろう。この二つの代表的カクテルは、少くともカクテルパーテイーと銘うったパーテイーなら、必ずボーイが銀色の盆にのせてサービスするあのカクテルである。

 マテイニは数少い辛口のカクテルの一つであるがマテイニを作らせればバーテンの腕が判ると云われるくらい重要なものとされている。その処方は、ドライジン?、フレンチベルモツト?、という簡単なものだが、この組合せを客の好みをよくのみ込んで多少加減する。又辛口であるだけに味がデリケートになる、そういうことがむづかしいと言われる理由だろうと思う。

 こういうカクテルは飲む方も作る方もごまかしがきかない。そこで無難なのはジンビターズを注文することである。ジンビターズは最もシンプルでまたオリヂナルなカクテルと思われるもので、カクテルブツクによるとジン?、オレンヂビターズ四滴をシエークし、カクテルグラスに注いで供す、という記載がある。然し実際に注文すると、リキユールグラスにオレンヂビターズを二、三滴とり、横に倒してくるくる廻し乍ら器壁にまんべんなく附着させ、余分のものをすててその上にジンを注ぎ込むのが本式のようである。こういう簡単なものでもバーテンで作り方が違うから面白い。

 さて注文のものが出て来てもすぐには口をつけないこと。ポケツトの中にあらかじめ百円硬貨を十枚ばかり用意しておき、おもむろにカウンターの上に積み上げて「僕は前払いでないとゆっくり飲めないたちでね」などと都合よく値段をきいておく。それからジンなどあまり好きでなくても「暑いときはジンがいいね、むかしモロツコという映画でゲリークーパーがジンをのむとこがあったのを覚えているかい」などと洋酒歴の古いところもみせておく。

 なんでこんな小細工をするかというと、ジンを飲む客はウイスキーの客よりは好みがはっきりしていると思われる。それにマテイニならいざしらずジンビターズならばそうボルわけにはいかぬ。まして前払いならなおさらのこと。もし他日ボツクスで飲んだとき、うんと高かったらその差額はサービス料だと思えばよろしい。こういうことからその店の金の取り方の仕組みも判ろうというものだ。

 第二にバーテンの自尊心を満足させる。まちがつて懸賞もののはやりのカクテルなど注文すべきではない。バーテンが知っておればトーシロだなとナメられるし知らなければ自尊心を傷つける。必ずしもジンビターズでなくてもオーソドツクスでボラれそうにないものならばよろしい。

 ビールに水割り、オンザロツク、などの注文の中で、こういうもの注文されるのはノーシンやサロンパスのお客の中でたまに欧文処方が廻ってきたようなもので、あまりもうからなくてもきっと一生懸命やってくれる。まして百円硬貨を積み上げれば演出効果は満点。もしかしたら本物の通かも知れないぞと思わせたらしめたものだ。必ず一度で覚えていてくれる。私はこの手を使ってさるバーのチーフバーテンと称して一年間疑われなかったことがある。タクシーの運ちゃんには嫌われものの百円硬貨も使いようでは大いに役に立つというお話は、このへんでオシマイにしてもう少しマジメな話をすることにしよう。

 洋酒の楽しさはその味の深さ、即ち古酒のもつ魅力が本当のものであろう。小説などに出てくる本物の通は一口ブドー酒を含んで、「フムこれはブルゴーニユの何年物だ」などと産地と年代を云い当てる。こういう高価でぜいたくな趣味を解するには、よほど金持ちで又鋭い味覚の持主でなくてはとてもかなわない。

 そこで我々庶民の楽しみは一つの酒の味の深さよりもむしろ洋酒のバライアテイーの多様さということになろう。デパートの酒売場に行くと実に多種多様の酒ビンが並んでいて、あれこれ眺めていると、ほしいものばかりでつい時間が経つのも忘れてしまう。然し半面そういう多種類の酒があることからどれがどれか判らないというウイスキーの水割りしか飲まない人も出て来る。ところで洋酒は実は我々薬剤師と非常に縁の深いものだということをまづ知っておいていただきたい。事実ジンなどは十八世紀のヨーロツパの薬局では常備すべき薬品の一つであつたと考えられている。

 東洋の諺に、酒は百薬の長といわれるが、これは西洋でも同じらしい。ブランデーのことをオーヅヴィ(生命の水)というし、ウイスキーの語源はケルト語のウシユクベハ即ちwater of lifeのことだと云う。然しこの生命の水という意味は常用すると長生きするという意味ではなくて(それならほんとに嬉しいのだが)瀕死の病人に与えると頬が紅潮して生気をとりもどしたように見えることから出たことらしい。

 このようなアルコールの薬効から日局Vにはコニアクという名称でブランデーが収載されていたことは旧制の薬剤師なら知っているはずである。前述のジンは吐松(ねず、Jumper beries)をスピリツトで浸出して蒸溜したもので、オランダのライデン大学教授シリウスの創製によると伝えられている。どういう薬効があるのか知らないが「ねず」には利尿作用があると書いてあるからジンにも同様のはたらきがあるのかも知れない。

 然しなんといつても薬用酒の最たるものは僧院の秘法として長い間伝統を守り続けてきたリキユール類であろう。僧院の薬学は薬学史上でも一つのエポックを画しているが、その当時医療の主役を果したのが現在我々がカクテルに使用しているさまざまのリキユール類ではないかと思われる。そうしてみるとリキユール類の多様さも自づと理解されてくると思う。

 その中でもベネデイクテイン派の秘薬として知られるベネデイクテイン・ドム、或はシヤトリユーズなどが僧院のものとして特に有名であるが、これらの酒の処方は現在でも公開されていないそうである。この他アペリチーフとして食欲増進に用いるヴエルモツトはご存じに、がよもぎをブドー酒に浸出して作る。オレンジビダーズは苦味チンキで代用しも結構やれそうに思える。こういうふうに考えると何のことはない洋酒会とかに入ったつもりで覚えればしごく簡単に覚えられるしろものである。

 もし説明会ご希望の方があれば、それを飲ませていただくことを条件に参加されればよろしい。但し場所は中州大学研究室。時間はは午後九時開講。申し込みは65-1103、以上念のため。

 福岡県病院薬剤師会 本年度定時総会 役員改選・堀岡会長再任

 福岡県病院薬剤師会では定時総会を七月九日二時より田辺製薬福岡支店会議室に於て約百六十名の会員出席のもとに開会した。

 定刻開会、先ず瀬尾理事の開会のあいさつ、次いで堀岡会長は、過ぐる一年、薬剤師を取り巻く種々な問題が次々に起り、又批判もきびしかったが、日薬など指導部は大巾に入れ替えが行われて新しく出発することになり、開局偏重であつた日薬も機構が改革され、全薬剤師のための日薬として再出発しようとしている。現在吾々薬剤師の置かれている地位も決して満足すべきものではなく、又社会の目も吾々を正しく見ているとは云えない。本会としては地域社会における吾々の地位を確保するために、又医療担当者として努力をして来た。DI活動もその一環として推進、いまだ充分とは云えないが大概順調に進んでいる。今後も薬剤師の倫理を確立し、医療担当者としての地位確立をもはかりたいので、会員の一層の協力をお願いしたい。

 と挨拶し、次に本会副会長である竹内克己氏(前日赤病院薬局長)が日赤を退き、今回新たに事業を開始されたので、退任の挨拶があつたが、これに引続き堀岡会長より、同氏が本会創設当初より理事、副会長などを歴任、よく会長を補佐し、永年本会のために貢献されたことについて感謝の言葉が贈られた。 それより来賓あいさつとして県薬剤師会長代理、鶴原常務理事は「薬剤師会を新しい、力強い会にするために病薬の方々とも心を一つにして努力したい」と述べて祝辞とし、次いで議事に移った。先ず会則により会長を議長として議事に入り、

 ▼議事
 ▽報告事項
 (1)昭和40年度会務並に事業報告
 (2)第14回日本病院薬剤師会代議員会経過報告(於富山)
 (3)昭和40年度決算報告
 (4)昭和40年度決算監査報告について、会務は大橋理事より、日病薬については西理事、決算は中島理事から、監査については福井監事よりそれぞれ報告があって何れも異議なく承認。

 ▽審議事項
 (1)役員改選の件
 本件については会則により、会長、副会長及び監事理事をも選出することになっているが、時間的余裕がないので、例年通り会長並に監事二名のみを選出することになり、選考委員制により慎重選考された結果、会場に諮つて会長並に監事二名を留任と決定した。

 (2)昭和41年度事業計画案については@日薬職種部会講演会を、全九州を対象として本会の担当で開催することを、日薬と共に計画しているA特別講演会は来年二月を目標に開催BDIニユースの発行は六号迄既に発行したが、引続き今年は六回発行の予定C名簿作成は今年特に移動が多いので再度発行したいD会報発行については、今年是非実現したい旨大橋理事よりそれぞれ詳細な説明があり、満場異議なく決定した。

 (3)昭和41年度予算案については中島会計理事より説明、前年同様今年も会費は五百円に据置くが、明年は会費値上げか、事業縮少かの問題が起ると予想されるので、一年間各自検討されたい旨希望があつた会費については異議なく決定したが、日薬の会費増強策とも関連し、種々の質疑応答がなされたが、日薬、県薬、病薬等会費も重複し複雑なので、出来得るだけ簡素化し、会員の増強、会費なども含めて会員と共に研究し、日薬も県薬も吾々の魅力あるものにするよう努力したいと会長より発言があつた。

 引続き堀岡会長は留任のあいさつとして、日薬、県薬の刷新に伴い本会の在り方も考えたい又今年度の事業計画である職種部会講演会、特別講演、DIニユースなど立派なものに仕上げて行きたいので一段の努力をお願する。又今秋スペインで開催される国際薬学会議に私は出席し、日本の病院に於けるDI活動について若干発言することになっているが、既に発足活動している日本の事例として吾福岡県の現況を発表する積りである。会員の皆さんを代表して発言することで、日頃のご協力を茲に感謝致します。と述べ、田中理事の閉会の辞により総会を終了した。

 なお、選考委員及び選任会長、監事は次の通り
 ▽選考委員
 福島、坂井、白瀬、金枝(福岡)坂井、一田、池田(北九州)大神、栗谷秋山(筑豊)太田黒、高柴、山田(筑後)
 ▽会長=堀岡正義(九大薬剤部長)
 ▽監事=福井正樹(済生会病院薬局長)伊藤鉄郎(九州厚生年金病院薬局長)
 引続き特別講演に移り
 ▽医薬品の薬理学的評価法=九大薬学部教授、医博植木昭和氏
 約一時間スライドを使用した興味ある講演であつた。
 ▽医薬品の吸収と薬剤学的修飾=京都大学薬学部教授、医学部附属病院薬剤部長、薬博掛見喜一郎氏同氏永年の教授生活における最大のテーマによる講演を約一時間に亘って熱心聴講、一同は非常な感銘を受けた。それより同所に於てビールパーテイーによる和やかな懇親会が催された。

 日本医師会 臨時代議員会 診報適正化を決議

 日本医師会は第45回臨時代議員会を去月廿三日東京駿河台の医師会館で開会し、副会長の補欠選挙を行い其結果、日本医学会副会頭の熊谷洋氏を選出決定した。なお、先の中医協懇談会に於て要求提案した医療費一三・五%引上げについて、其内訳並にその根拠、保険請求事務の簡素化及び支払基金に対する延滞料請求、その他当面の時局問題について質疑討議を行い、現行診療報酬の適正化を要求する次の決議を行った。

 【決議】
 吾国における物価の高騰は恒常化し、人件費もこれに伴って上昇の一途をたどっている。現行診療報酬の適正化に先行しての物価、人件費の上昇に対応する緊急措置を、厚生大臣は速やかに講ずべきである。

 =豆知識(五) 馬場正守

 ▼どんな症状の時に糖尿病の疑いが持たれるか
 1最近やせて来た。
 2便所の臭気が甘ずっぱくなった。
 3喉が乾く。
 4小便の量が増加し、回数が増えた。
 5食べても、食べても、ひもじく感じる。
 6疲労しやすく、又精力が減退した。
 7身体がかゆい。
 8神経痛の様な症状がある。
 9おできが出来易い。
 10視力障害がある。
 以上の様な症状がある場合は検尿すべきである。

 ▼高血圧症の患者はどんな症状をもつているか
 この症状を脳神経、腎、心臓、その他の四症状に分けて見ると
 脳神経症状
 頭重感、眩まい、耳鳴、四肢シビレ感、不眠、視力減退、記憶減退の順であり、最初の頭重感は高血圧患者の半数以上にある。
 腎症状
 浮腫、夜間頻尿
 心症状
 心悸元進、前胸部圧迫感疼痛、呼吸困難、不整脈の順で発言する。
 その他
 全身倦怠感、肩凝り、便秘、無力感、下痢である。
 それでは高血圧症の原因であるが、色々の学説があるが本当のキメ手になるものは未だわからず、特に本態性高血圧症の場合、原因不明という言葉がぴったりする様です。学説については別の機会にゆずります。

 全国公私病院連盟 診療報酬緊急是正要求

 全国公私病院連盟(理事長荘寛氏)は去月十日鈴木厚相及び東畑中中医協会長宛に診療報酬緊急是正及び中医協委員に病院代表を任命されたいとの要望書を提出したが、その内容(概要)は次の通りである。

 ▽診療報酬緊急是正については昨年一月以来是正は行われていないが、その間人件費、物件費などが上昇し、これがため病院財政は悪化の一途を辿りこの儘放置すれば其機能は麻痺せざるを得ないと憂慮されているので、政府は直に緊急是正される様要望する。実施の要点は、先ず可及的速かに着手されたい。病院診療報酬の増加は甲表一五%、乙表九%引上げるべきであり、その内容は、入院料(基本料)三三%、外来基本料一九%、給食料一三%、手術料七二%、理学療法料六七%、とし薬価基準を引下げる場合はこれを他の診療報酬に振り替えること

 ▽中医協委員に病院代表任命要望の理由とする点は吾国七、〇〇〇有余の病院代表者の参加なくして診療報酬に関する協議が行われていることは、それ自体適正を欠くおそれありといわざるを得ない。故に吾吾はこれ迄幾度かに亘り病院代表を任命される様要望したが、未だに任命されず、誠に遺憾に耐えない、茲に重ねて要望する次第である。

 以上の様な内容の要望書を厚相及び中医協に提出していた全国公私病院連盟は本月十日東京神田の学士会館で「医療費緊急是正要求全国病院大会」を開催し、医療費の平均一四%引上げ要求を決議した、厚生省など関係方面に陳情する。

 本大会には全国より凡そ二百人の関係者が参集し、最近特に激しい物価、人件費の値上りに対応して是非共医療費の大幅な引上げが必要だとの結論が打出され、この際診療報酬体系の適正化とは別に、総医療費の平均一四%引上げという緊急是正が必要だとの決議となったものである。

 医療費引上げについては、先に日本医師会(会長‐武見太郎氏、主として開業医師の団体)は中医協に於て総医療費の平均一三・五%引上げ要求の線を打出しているが、この日の同連盟の決議はこの引上げ幅を更に〇・五%上回っている。今後の厚生省当局、中央医療協のこれに対する出方が注目される。

 JPM移動理事会 全国医薬品小売商業組合連合会 山口県、秋吉台に於て

 全国医薬品小売商業組合連合会(JPM)では六月二十八日山口県秋吉台、若竹荘で移動理事会を開催した。同連合会では地方業界の事情を能く知るため、又地方組合員にはJPM理事会の模様内情などを能く知って貰うため、移動理事会を企画していたものであり今回山口県を本年度最初の移動理事会とし、年度内にもう一回地方で開会する予定になっている模様である。

 開会JPM副会長森広弥太郎氏(地元山口県医薬品小売商業組合理事長)の司会により進め、先づ荒川理事長は、会務運営について執行部で勝手な思い過しもあるかと思われ、この点色々と地方組合員の話しも聞きたいと思つている。又本理事会でJPMの今後の方向を決めたい。と挨拶し、次いで左記議事に移った。

 本年度の事業運営については去る五月の総会での決定事項を再確認し、その後の物価問題懇談会の意見書内容問題や生協問題などの対薬業界の情勢変化に対応すべき措置を採り上げることになった。

 物価問題懇談会の意見書対策については、立木専務理事からその内容を、藤木理事から衆議院物価対策委員会の決議対策樹立要望のないようについてそれぞれ説明があり、これに対し種々な意見が出されたが、例えば一般物価問題の皺寄せが医薬品に集中している様で誠に心外である。或は流通面が問題の中心的な扱いを受けているが、寧ろ生産面を採上ぐべきではないか。物懇の意見については全商組連に於て根本的対策方針を決め、先づ厚生省とよく話し合うべきである。又薬業界内の事実や不満などを、余りにも外部にその儘出し過ぎるのではないか、業者自身反省すべきではないか等々である。意見の交換の結果は物懇意見書中の再販制度の原則的禁止、広告宣伝の自粛、禁止。

 品質の表示、消費者に対する実情の周知などの事項について討議検討したが、結局これ等については厚生省と話し合うことに決定した。なお、再販制度品対策については、ノルマの全廃、返品交換の自由、支払条件の弾力性、仕入注文単位の引下げの四点を挙げ、武田、田辺、三共の三社と接渉を持つことになり、然し差当り武田一社に絞って速急に接渉することになった。

 その他、宮城県商組の加入綜合調整規程の一部改正などを承認、兼ねて問題となっている清涼飲料「オロナミンC」については引続き交渉を継続し、善処を要求することになった。以上で協議を終え地元山口県商組との懇談会に移り次記三項が地元から全商連に対して要望があったのでこれに関し相互意見を交換した。

 @再販に対する全商組連の見解を成文化して今後進むべき道を明確にし、全国一本の姿で推進したい。
 AオロナミンCに対しては一時ボイコツトさえ辞せないとの意気を見せていたが、今後全小売業一致してこれに当りたい。

 親の遺言で ワツシヨイ ワツシヨイ 三汀

 夏も七月となれば櫛田神社の祗園山笠で博多の街は沸く。ワツシヨイ、ワツシヨイと掛け声も勇ましく山笠を担ぎ街を走る。その勢いのよさ、勇壮豪快さは正に日本一である。これはノボセ者が多勢集まらねば出来ないことで、一番のノボセ者は阿部源蔵福岡市長であろう。十二日の山笠見せには幾多市会議員を引き連れ、一番山笠に台上りして大いに見えを切る。

 我が福岡市の薬剤師会の中にもこのノボセ者はたしかに居る。ご老体の中村吾一先生を始め、塚田豊、三根孫一、須原勇助、内田数彦の諸先生方であり、毎年欠かさずよく見る顔である。老いて益々盛んな中村先生は矍鑠として又その台上りの姿は凛々しくあたりを圧するものがあり、立派なもので、青年薬剤師共の遠く及ばないところである。

 塚田、三根、須原の先生方は充実した、立派な身体で元気そのもの、薬剤師として店頭に置いておくのには惜しい位で、沖仲仕でもすれば余程ましではないかと思はれる。夏の初めに水ハッピ姿で、勢水をかぶりワツシヨイ、ワツシヨイと掛け声も勇ましく博多の街を駈け廻った後の一杯の神酒は五臓にしみ渡り、六腑潤し、誠に目出度くて健康上非常によろしいということで山笠行事に出ている内田先生は、自分では若い者に負けちゃいない積りで走っているが、脚がボトついており、体もボテついている。 この山笠は自分一人で動かしている様な気で一番棒を担いだ積りで一生懸命であるが、側から見れば、まるで山笠にしがみ着き、一番にぶら下がっている様である。又多勢の子供の中にまじり、勢水をかけられて喜々としてはしゃぐさまは誠に無邪気なものである。

 お元気ですなー、面白うござつしよう、と声をかけると、真面目な顔して、コラー親の遺言で山笠に出よるとバイ、親爺が死ぬとき枕元に呼んで、お前やちっと人の良かけん、うんと人中でもまれにゃいかん、というて死んだ。それでその遺言のごと、人中にもまれようと思うて、山笠に出よるとバイ、面白うして山笠に出よるとぢゃなかとバイ。終戦後は親の遺言ば守るというて、用も無いのに退庁頃の満員電車に乗って西新町まで行ったり、箱崎まで行ったりしたとバイ、人のこむ所にゃ必ず行って人中にもまれよるとタイ。

 物価の自由競争を必要とす 物価問題懇談会総会 経企庁長官に意見書提出

 医薬を初め化粧品、石?、洗剤等に指定されている再販制度などにつき消費者の立場から検討していた「物価問題懇談会(藤山経企庁長官の諮問機関で座長は中山伊知郎氏)」は去月二十一日総会を開き、価格安定と販売の改善策などにつき討議の結果@再販制度についての規制A広告宣伝について一層の自粛Bリベートの規制C商品の品質表示実行D消費者に対する実情の周知徹底、の五項目に亘って論断し、値下げ対策に関する意見書を纏めて藤山長官に提出した。

 今後再販制度の改正については公取委及び物価担当官会議の場に移されることになろう。懇談会の結論である意見書の内容は次の通りである。

 ▼物価問題懇談会は、家庭用品の価格形成の問題点を明らかにするため、医薬品、化粧品、石けん、洗剤およびプラスチツク容器について、その生産流通、消費の実態等について検討を行なった結果つぎのような問題があると考える。

 (1)これらの商品の価格は消費者物価の上昇のなかにあって必ずしも値上りはしていないが、これらの商品のうちには、技術の進歩または需要の増大に伴ない生産性が上昇していると認め得る商品もあると思われるので、その生産性上昇の成果が、自由競争によって価格の一層の引き上げをもたらし消費者の利益になるようにすることが、物価安定のために望ましいことと考える。なお、これらの業種のうちには、他業種に比しかなり高い利益率を持続している業種もみうけられるが、もしそれが価格面での競争が充分に行なわれていないことによるものとすれば問題であると考える。

 (2)これらの商品のうちには広告宣伝費が多額にのぼったり、実際的には必ずしも必要とは認められない包装によって販売競争をしたり、また、複雑、多岐な方法でのリベート取引面等での問題のあるものも少なからずみうけられる。このような慣行は、再販売価格維持制度等の影響もあって、消費者価格の面での競争が充分に行なわれず、価格競争以外の方法で販路を開拓しようとする場合を生ずることにもなって消費者の立場からは極めて問題がある。

 (3)今日のように、消費者の商品選択についてメーカー等業者の影響力が極めて大きな経済社会にあっては、消費者に商品についての適確な知識を普及させるための政府などの努力が必要である。

 ▼以上のような問題意識について、当物価問題懇談会は次の提案をする。

 (1)再販売価格維持制度について 再販売物価維持制度は@流通機構の合理化の利益を消費者に還元せずAメーカーの寡占化による価格硬直化がある場合には、それを小売段階の価格にまで反映させB最終消費者価格面での競争ではなくして、リベートその他小売業者に対する過大なサービス提供、過剰な広告宣伝を行なうことにより消費者の利益を害するばかりでなく、浪費の助長など様々の社会的な問題をひきおこす一因となっているなどの弊害をもたらしていることは否定できない。また、再販売価格維持契約が実施されてから値引きがなくなり実質的に値上げとなっている事例もみうけられる。したがって、少なくとも再販売価格維持制度を例外的に認めるにあたっては、消費者の利益が侵害されることのないよう、かつ、事業者が公正な競争を通じて発展することを妨げないよう充分配慮すべきであり、この観点からとくに次の点について検討する必用がある。

 @再販売価格維持行為の範囲を明確にすること。なお、脱法的な行為が行なわれないよう充分配慮すること。
 A再販売価格維持を例外的に認める商品については、その段階のコストマージンなどにつき事前に充分審査するとともに事後においてもこれらの事項につき、定期的に充分監査することとし、登録、閲覧など消費者その他の第三者が承知できる体制を整備すること。
 B再販売価格維持を例外的に認める商品についてはリベートを禁止すること。
 C上記の商品についてはその小売価格を必ず表示すること。
 Dボランタリーチエーン、スーパーマーケツトなどで合理化が進んでいる一定の販売形態のものについて、再販売価格に値巾を設け、その範囲内での競争を認めること。
 E消費生活協同組合などに対し、商品の提供拒否などの取引制限行為を行なうことを禁止すること。

 (2)広告宣伝について 「医薬品広告に関する自粛要綱」等業界自体の自粛基準の設定および強化ならびにその確実な実施が望まれる。さらに、不当景品類および不当表示防止法の運用については広告宣伝活動が多岐にわたっている現状にかんがみ、その対象を一層拡大し、かつ厳正に行なうよう努める必要がある。

 (3)リベートについて リベートは、これを一概に否定することには問題が残るが、もし消費者価格の面での競争が充分に行なわれないままシエア拡大競争にのみ用いられるとすれば、消費者の利益を害するものといわざるを得ない。したがつて、再販売価格維持契約を認める商品についてはリベートを禁止し、また行きすぎた招待施行等の支出については税制上の取り扱いを再検討することが必要である。なお、この点について不当景品類および不当表示防止法による規制の強化についても充分考慮すべきである。

 4)品質表示等について 現在すでに家庭用品品質表示法および薬事法により一部商品について品質の表示が義務づけられており、また、不当表示については不当景品類および不当表示防止法により規制されているが、今後その適用範囲の拡大および規制の強化を行なうとともに、とくに品質表示の方法等については所要の対策を検討することが必要である。なお、一般に小売販売価格の表示が必ずしも充分には行なわれていないので、その徹底を図るよう所要の措置を検討することも必用である。

 (5)消費者に対する実情の周知徹底 消費者に正確な商品知識を普及させるために商品テスト機構の整備等消費者に対する事実の周知徹底について行政上の措置を強化すべきである。

 福岡県薬 調剤技術委員会

 福岡県薬剤師会調剤技術委員会(委員長堀岡正義氏)は、七月九日県病院薬剤師会総会当日、午前田辺製薬福岡支店会議室で委員十七名出席のもとに開会された。午後に県病薬会総会を控えて、次のような事項について検討した。

 (一)本年度事業計画について
 @各種講習会の開催並に会報、名簿の作成
 ADI活動の拡大については開局会員にも拡大すること
 B日薬、県薬会員の増加策について

 (二)佐賀市に於て十月開催される九州山口薬学大会薬剤部長会議の提案事項について

 (三)其の他の報告があって委員会は終了したが、引続き午後の総会に於ける特別講演者である掛見喜一郎氏を囲んで懇談、中食を共にした。

 九大病院薬剤部長 堀岡正義薬博 近く渡欧

 九州大学付属病院薬剤部長堀岡正義薬博は九月十七日より二十四日迄スペインのマドリツドに於て開催される第21回国際薬学連合(FIP)総会に日本薬学会代表として出席されることになった。同氏は八月卅一日羽田空港より北極廻りで、ハンブルグ‐ストックホルム‐コペンハーゲン‐ベルリン‐チユーリツヒを経てマドリッドに至る予定であるが、同総会では「病院におけるDIセンターの発表」のテーマによるシンポジウムにおいて、各国よりの出席者により各国の実情を発表するものであるが、同氏はその中で一つのスピーカーを与えられ「九大病院及び福岡県内病院」の現在迄の実情(主としてDI活動)を発表される予定である。

 同会終了後はロンドン及びドイツの一、二の都市を経て帰国の予定であるが、欧洲では医薬品の副作用情報センターが発達しているので、主として大学病院などのDI活動など、各国の情勢を調査したい希望である。なお、同総会には他に武田日薬会長、不破龍登代氏並に国立衛生試験所からも数氏が出席することになっている。

 挾子

 ▼先に実施した県薬務当局の薬事監視の際、冷暗所に貯蔵する様局方に規定されている或医薬品が、他の貯蔵について制限のない医薬品と共に陳列貯蔵されていたそうで、監視員は指摘注意した処、営業者曰く「そんなことは知りませんでした」これには流石のお役人も目を丸くして驚ろいたそうだ、薬剤師にもせよ薬種商にもせよ薬局薬店の業者が、そんな状態では医薬品の権威も特殊性もあったものではない、一般大衆の医薬品に対する不安感は増す一方であろう。それこそ、そんな営業者は薬業界名誉のためにも、又公衆衛生の上からも廃業して貰いたいものだとの話しでもあった。

 ▼去月中旬に日薬の分業対策本部の初会合と一環して全国地方会長連絡会が開催され、各地方の分業情勢について色々と報告や意見が述べられた、対策本部関係会議で武田日薬会長は「分業は既に運動や宣伝の時期ではなく、受入れ体制整備の時期である」と、分業は如何にも目の前に来て居るかの様な挨拶であつたが、なる程二つの大きな落し穴を備えている法規分業は現に成立施行されており、対歯科医師界と全国で二、三県は分業らしい状態にあるが、然し量に於て完全分業とは程遠いものである。故に剤界の心ある者は(敢て心ある者と言いたい)大部分のアポが完全分業に無関心かアキラメの状態に陥いっていることを遺憾に思っている様だ。

 日薬会長の言葉は激励の辞としては結構だが、聞く吾々としてはじくじたるものがある。業界紙の報導によれば地方会長会に於ける会長の報告や意見は概して完全分業達成は難事であるとの声が高い様だ。中には日薬の計画である三年後の分業達成と云うのは泰山鳴動に終る公算が大きい。と云い、末端の医者は薬を手ばなそうとせず、メーカーが医家向け医薬品の過当競争をやっている間は特にそうである。との意見を述べた県もあり、又表面では武見医師会長が分業賛成をうたつているが、裏へまわると処方箋を出すなという指令が地方え出ているとの報告をなした県もあつた様だが、これは医薬提携に疑念をさしはさむものであり、三師会を批評的に見る言葉でもある。

 又薬局と薬店との区別をも知らず分業に対する大衆の認識の低さが話題となったらしいが、これは無理のないことで、外観薬局も薬店も変る点はなく、商品も、薬局、薬店主の接客、販売態度も殆んど変る処はないためであろう。以上は事実を事実として述べられたものであり又報道されたものであろうが、これは決して剤界を特に卑下したものではない。薬剤師はこの事実を能く玩味し、分業に向つての邁進、驀進進の警告、戒語として受取り分業に突進しなければなるまいと思う。成否を度外視して起つべき時であろう。

 ▼東京千代田区薬協組の一組合員が都知事に対し、中小企業等協同組合不服申出書をこの程提出したそうだ。その理由は東京都内に本支店を有している大手メーカーから事業遂行資金として相等多額の金を組合の正式領収書を発行して本年四月初めに受け取っているそうだ。処が、組合の会計に5月19日現在で入金になっておらず同金円金額は其理事が私有し、消費されているという事件のためである。何かの間違いであれば結構だが…薬組の構成員は殆んどがアポであろうが……。

 福岡県薬 支部連絡協議会 会員に徹底さす必要あり

 福岡県薬剤師会では七月二十二日午前に理事会を、午後一時より支部連絡協議会を県薬会館に於て開催した。支部連絡協議会は工藤専務理事の司会により開会、先づ四島会長は、中央では分業実施対策本部が既に発足し、本年中はその基礎研究をしながら、出来得る事から実施することになり、実行に入っている。本県薬としても中央に倣らい県内でやるべきことは着々と進めたい。各支部においても、会員が自分自身のために積極的に協力するよう所属会員の自覚を頷ながし、又現在、分業を放棄したとの誤解を受けるが如き在り方をしている会員もなくはないので、中央情勢なども能く認識した上、受入態勢について各会員の指導を努められたい。と挨拶があり協議に入った。

 (一)日薬の分業実施対策について

 (二)本会の分業実施対策について
 右二項目について中村理事より詳細な説明があり、本会の対策については、薬局、社保合同委員会に於て既に大要を検討したが、今後は特に薬局委で具体的に検討し決定することになり、社保委では保険につき指導することになるが、各支部は直ちに行動に移られたいと要望があつた。

 (三)昭和41年度薬学講習会
 工藤専務より説明、
 @開催期日は十一月二十一日より二十九日A課目については日本薬局方第二部(一時間)最新の新薬(一・五時間)最新の調剤(一・五時間)血液と輸血(一時間)薬事法(〇・五時間)妊婦と医薬(一時間)育児用強化食品(〇・五時間)計七時間B本年は県衛生部と共催とし、未加入会員の参加も部会、施設など通じて勧誘するC本県の会場は福岡、北九州の二ヵ所D参加費はテキスト代を含め千円(課目については各県毎に決定するが本県は全課目の予定である)

 (四)保険薬局、保険薬剤師指導講習会開催について
 県保険課の主催で県内四ヵ所で八月中に行われる予定であるが、必ず保険薬剤師自身が全員出席するよう指導すること(本人が会得していないと困る事態が発生しつつある)

 (五)厚生省の保険薬局指導監査について
 本県は十一月に行われることになっているが、今回は指導を主とした監査である。(本紙前号記事参照)

 (六)公務員薬剤師の待遇改善について
 五月十七日武田日薬会長より佐藤人事院総裁に次のような要望書が提出された。
 @薬剤師に適用する独自の俸給表を設定されたい。
 A薬剤師の給与は民間各種企業との均衡を考慮し、人事院細則91812第13条の適用除外を一括承認とし、あわせて在職者の俸給を調整是正されたい。
 B級別定数を増加されたい。

 又、七月十五日には鈴木厚生大臣より佐藤人事院総裁に「薬剤師は現在診療エツクス線技師、臨床検査技師栄養士などと同じ給与表となっているが、これと切離し、新たな給与表を設け、民間給与との均衡を図ること」を申入れた。

 (七)医師の乗り込まない船舶積込み要指示医薬品の取扱いについて
 七月一日より、医師の指示票にかえ、船長の証明書により交付しうる船員法施行規則の一部が改正された。(日薬雑誌六月号十九頁参照)

 (八)九州山口薬学大会提案事項及び研究発表について
 十月十三日〜十五日、佐賀市に於て開催されるが、研究発表を急いでいるので、各委員会共、分業も強く呼ばれている折でもあり、早急に提出されたい。提案事項については次回への宿題となった。

 (九)本会常置委員会の決定と活動について
 各委員会の担当理事より決定した委員長並に開会委員会の内容などの報告があつた。

 (十)未加入会員入会勧誘について
 アンケート、会誌、「入会のすすめ」など一、六三一名に発送したが、会のPRには効果があつたと思われる。アンケートの回答は一三〇名で八%の回収率、内二四名入会の意思表示があり、三名は既に入会、五名は努力すれば入会が想定される。又メーカー、薬務課その他の公務員などについては県薬執行部で努力中である。

 (十一)毒物劇物販売業の登録更新について
 本年は営業中の一部の人々である。

 十二)薬業経済について
 鶴田担当理事より「昨年暮頃より再販制度が批判の的となり、先の物価問題懇談会の意見書提出などにより現在公取も再検討している。吾々としては再販制度を存続する様検討しているが、公取の態度如何によってはメーカーが再販制度を中止するような事になりはしないかと実は心配している」との報告であつた。

 (十三)冷暗貯蔵医薬品の品目表について
 既月印刷物は各会員に送付したが、要指示医薬品については更に検討している。

 (十四)共済保険制度について
 会費負担軽減の一助のため、研究しているが、近くアンケートをとる事になるのでその節は協力されたい。

 (十五)名簿作成について
 二百部作成するが、各支部の会員移動を至急通知されたい。

 その他薬政会について
 日本薬政会は去る二月の評議員会に於て高野一夫氏を会長に推したが、同氏は情況判断の末、その後に於て十六名の副会長を選薦して会長を辞任されたままになっていたが、分業対策推進の際でもあり、薬政会が有名無実では困るとして、本月十二日幹事会合同会議が開かれ、本県の長野副会長が満場一致推されて会長代理に選任された、今後分業推進の政治工作や薬業経済の面で活動することになろうと報告された。

 次に福岡市に現われたいわゆる調剤専門薬局について会長より詳細な説明が行われ県薬としては反対の立場をとることを決め、当日の支部連絡協議会を終了したが、支部長の出席が珍らしく悪かったことは誠に遺憾であつた。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 7月30日号

 生きるということ 竹内克己

 昭和四十一年の後半には景気は好転するという宣伝も仲々その通りに進んでいない様で、来年も決して楽観要素はない様である。薬業界の不況ムードを世間の一般的不景気のせいとする考え方は少し甘すぎる様で、私は医薬品のほんとうの姿、あるべき姿、を大衆におしえてもらってあわてている様な状況だと考えている。

 薬をマスコミの力によって売る事その事は決して悪い事ではないが、正しい薬の本質を見失った宣伝は少くとも遠慮してほしいものである。

 私は病院生活から実業界に入って僅か三ヵ月、薬効を売らないで利益を売っている姿を現実にみて今更の様に驚いている。再販が公取の問題になったり、物価問題懇談会の答申となったりする今日、薬局薬剤師は今後十年先の見通しの下に自分の方向を決めてもよい時期が来ている様に思う。

 制度品が守られるという仮定の下に価格維持の「みりよく」に飛びついた小売業界も今やその圧力が如何にきびしいものであるかを知るに至った。日薬は三年後を目標に医薬分業完遂にその全能を傾注するという。この通りになった時はその受け入れをどの様にするのか、考えても汗が出る思いである。

 近代経営は収支の明確化から始まるし、資本利益率を最高に運営する事こそ企業経営の本質であるが、廻転率の極度に悪い調剤用稀用薬品をどの様な形で整備し、純良な薬品による調剤の出来る状態にするのか、それは結局同志としての手をつなぎ合った人達によるボランタリーチエーンの組織作りを完成するより方法がないと思う。而も特に重要な事は一時の感情やぎせい的精神でその世話を引き受ける人があったとしてもそれは決して長続きするものではないという事である。各地にある共同購入という形の集団がうまくゆかぬ理由はここにある。

 世の動きに敏感な大資本家が新らしいレギユラーチエーンを作り上げることはいと容易な事で、この様な事になれば個々バラバラの小売業界は「生きてゆくために」どの様な事になるのか、恐ろしい事の様に思われてならない。私は一生クスリと共に生きて来たし、それ以外に生きてゆく道も知らないだけに、クスリは薬剤師の手にと心から願っている。

 医薬分業が大衆のためになり、看護婦不足に悩む医師も出来る事なら処方箋を出したいと考えている今日、薬剤師はもう少し医薬分業に熱意を示してもよいように思う。そして又これは薬剤師の面子にかけてもやりとげねばならない事なのである。

 医薬分業が実施期に入った時、調剤センターを薬剤師会が作らねばならない様なブザマな事にならない様に‐私の願いである。政府がボランタリーチエーン育成に本腰を入れ始めたのは最近で、あらゆる業種がスーパー等の大型店に押しまくられる事を恐れての小企業育成策であるけれ共、私は薬局の場合そのままの姿で受け入れるのには幾多の問題がある様に思う。保険薬局はあくまで処方箋受け入れを中心としたボランタリーチエーンの組織でなければならない。

 医薬分業になった場合、家庭薬の売上げは今よりふえると私は思っている。然しあくまで薬剤師の経営する薬局は処方箋中心の経営に移行すべきである。それには稀用薬品の供給について源としてのボランタリーチエーンが是非共必要となり、更に重要な事は常に集って勉強する場を必要とするという事である。そうでなければとても医師の出す凡ての処方箋の内容を理解する事が出来ないであろう。然し如何なる場合でも支払に責任を持つ態度こそ凡ての大前提である。従って私は投下資本「ゼロ」の薬局企業の可能性について検討している、そしてその可能性を信ずるに至った。

 金のない薬剤師でも熱意のある方々と話し合って、はるかなる星をみつめつつ医薬分業大前進のカナメとしての保険薬局而もこれを投下資本なしにやつてみたいと思っている。私の考え方に少しでも同調出来る方々と話し合いたい。御連絡いただければと思う。薬剤師としての夢をもつて生きるために。「竹内克己(電○29三三一四番)」

 全国薬剤師会 事務長会議

 日本薬剤師会では恒例により全国薬剤師会事務長会議を去月廿一日箱根湯本、青風荘で開会した、出席者は全国より事務長又は代理者四二名出席(福岡県薬よりは吉田事務長出席)日薬役員は武田会長を始め副会長、常務理事、事務局長など七名が出席した。

 当日は日薬よりの課題及び都道府県からの提案議題(七県十二題)について熱心に討議され、日薬からもこれに対する意見の開陳、答弁説明などあって充実した会議であつた。

 日薬分業実施対策本部の実動力源 五部‐調査部会の陣容

 日本薬剤師会の分業実施対策本部(本部長‐宮道悦男氏)も去月初会合を開き愈々発足した。理想として三年後には完全分業に持って行きたい考えであるが、然しその第一歩として今年中は活動機構の中心となつている五種調査部会の調査研究を中心に分業活動を進めることになり、特に推進方策について研究するが、この五種の調査部会の陣容とその活動内容は次の様なものである。

 ▼第一部会
 分業理論構成を担当する部会であり、薬品の専門家として医薬品の管理、ドラツグインフオメーシヨンを含めた医療制度の合理化、医・薬学の進歩発展との関係等を骨子とした理論の確立をめざすべきである。
 ▽部会長=永瀬一郎、副部会長=飯島幸次、▽部会員=浜田直松、吉田俊、田中精二、宮沢耀子、森広吉、山鳥五郎
 ▽運営担当本部員=石井明藤本威徳、久保文苗、岩城謙太郎

 ▼第二部会
 薬剤師会内の体制整備を担当するもので、特に受入れ体制の万全を期するにある。その方式にも種々あるが、協調方式、センター方式、稀用薬品の備蓄センター方式、薬大方式、約束処方箋方式、病院協会方式など大体六方式がある様だが、現在の薬剤師会では「協調方式」を採っている。これ等方式その他について充分研究検討することになる。
 ▽部会長=荒川慶治郎、副部会長=山崎修、▽部会員=望月正作、松尾学、秋葉保次、太田当吾、田口英雄、久保敬次
 ▽運営担当本部員=木原芳男、山崎久利、平塚善太郎、鈴木誠太郎

 ▼第三部会
 医師会など医療担当者との交渉を担当するもので医師と薬剤師の技術分業は勿論のこと経済問題にも真剣に検討すべきであり、単に医師、薬剤師の利益配分という考え方は決して採るべきではない。
 ▽部会長=森弘太郎、副部会長=中野久寿雄、▽部会員=水野睦郎、今尾アツ子、山中正一、住山正木、枝沢幸三、渡辺徹太郎
 ▽運営担当本部員=三輪英嗣、山田益城、湯本芳雄、秋島ミヨ

 ▼第四部会
 政府、仕払い基金、仕払い者側への働きかけなど担当する部会であり、特に保険経済の観点から検討する必要がある。又労働者の治療日数などの短縮によって職場復帰を早めること、政府に対しては薬事、医療法規中の分業条項については積極的に実績をあげる様努力すべきである
。  ▽部会長=鋤柄正平、副部会長=加藤良一、▽部会員=芹沢恒夫、高橋俊行古川正、山崎友久、石井久雄、坂本浩一
 ▽運営担当本部員=岩崎利夫、久本近次、水戸三郎、大村行一

 ▼第五部会
 国民大衆へのPRを担当するもので、国民に医薬分業についての理解を深めて貰うこと、そのためには先ず真面目な薬剤師についての理解を深めて貰わなければならぬ。薬を正しく使うことによって健康を増進し、薬の乱用を防ぐためには薬剤師を利用すべきをPRし、従来の薬局に対する不信感を払拭すべきである。医薬品その物については病、医院よりも薬局の方が高きにあることを知って貰う様PRの必要がある。
 ▽部会長=大場正三、副部会長=庄司績、▽部会員=石坂哲夫、久保長男、山田順三、宮下博、平尾謙司、伊賀政春
 なお、この五調査部会は近く全体会議を中央に開き、研究目標について充分研究討議の上統一した方針を建てることになる。

 九大大学院薬学 研究科修士課程 学生募集

 昭和42年度九州大学大学院薬学研究科修士課程の学生を左記要項により募集することが発表された。 募集要項(大要)

 ▼出願資格=@大学を卒業した者又は昭和42年3月卒業見込みの者、A大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者
 ▼募集人員=薬学専攻十四名
 ▼募集専攻課程=薬学専攻‐専攻科目‐▽植物化学、生薬学▽衛生化学、裁判化学▽薬品製造工学▽薬化学▽薬品分析化学▽薬品製造化学▽薬剤学▽生理化学▽薬品物理化学▽薬品作用学▽植物薬品化学
 ▼入学願書受付期間=昭和41年9月1日から同月15日まで ▼入学試験及び健康診断
 @試験場=九州大学薬学部、A試験科目及び日時=薬学専門科目(10月3日午前)、外国語(同日午後)、口頭試問(10月4日午前)B健康診断=10月4日(午後)医学部放射線科教室
 ▼出願書類=入学願書(用紙交付)、検定料三千円
 ▼合格者発表=10月5日本人宛通知
 ▼注意=照会及び出願書類の請求は九州大学薬学部学生掛宛(郵送の場合は宛先明記郵券貼付封筒同封すること)

 福岡地区量販店と一連の 小売店と卸組との懇談

 福岡地区薬業界で先に卸組合の斡旋により、市内量販店並に小売組合幹部との間で家庭薬の価格維持について懇談し、基本的には了承を得たが(本紙前号記事参照)今日迄量販店に追従廉売を行っていた市内約十店の中型店についても量販店同様協力を得るため、地元卸組合は、十一日十一時よりマルベニに招いて新しく懇談した。

 先ず卸側より、卸自体の問題ではないが今日の状態は、スーパーサンテの乱れを頂点とし原価を切ったシーソーゲームは全く異状であり、このまま推移すれば最悪の事態になることは瞭らかであるので、それぞれ意見はあろうが、量販店も了承されているので、これに傚って自粛されるようお願いしたい。と当日の趣旨を説明するとともに要望した。

 これに対し各自、種々意見を出したが、スーパーサンテの一斉価格維持については了承し、ビラの問題については企業広告は勿論やるべきであるが、価格を入れることはシーソーゲームの原因となるので、一応自粛することを了承した。

 なお、メーカーの生産過剰を放任して、流通の面を規制するのが根本的に間違っている。家庭薬の価格が不安定なのは、主流商品が安定している証拠で、全体のバランスとしてはその方がいいのでないかなどの意見もあつたが、基本的には業界安定のため、量販店も協力されるならば吾々も自粛しようということになり、去月以来の一連の対策も効を奏したやに思われるが、組合員自体が抜けがけ的な行為を行わぬよう、卸としては小売組合に申入れたいと語り、約三時間に亘る懇談を終えた。

 福岡県薬 保険薬局関係 事項変更注意

 薬局開設など薬局登録関係事項については薬事法に基いて手続きをとれば良いのであるが、保険薬局の指定や保険薬剤師の登録など健保法関係事項については、関係者が稍々もすれば健保法に不徹底なため従来当惑、又損をされている業者もあるので、福岡県薬では更めて注意事項を全会員に知って貰う様切望している。

 注意事項次の通り

 (1)保険薬局指定事項の変更の場合
 @組織が個人から法人へ、法人から個人へ変更の場合
 A開設者変更の場合(開設者死亡その他)
 B保険薬局の所在地変更の場合(移転)
 以上の場合、従来の保険薬局は廃止となりますので新たに指定申請をされねばならぬ

 (2)保険薬剤師の登録に就て
 @死亡その他により管理薬剤師が変更し、後任管理薬剤師が保険薬剤師でない時は速かに保険薬剤師登録の手続きをとるべきであること
 【注意】
 @一般の開局者は、薬事法関係事項変更手続きのみで可なりと考えている向もあることを知って貰いたい。
 A健保法による保険薬局保険薬剤師の指定、登録だけでなく、生保法、結核予防法、その他一連の関係法も同様である
 B前記(1)(2)の場合、未手続のまま保険処方せん等を取扱い調剤することは違法であり、勿論調剤報酬の請求をなしても支払いはされぬ、ために当の薬局(薬剤師)は多大の損失を被るわけです
 C福岡県薬は会員のために保険薬局指定申請書、保険薬剤師の登録申請書はそれぞれ県薬に備付けてあるので該当者は申入れられたい、なお廃止届等の用紙も同様である。

 福岡地区安定協 七月例会

 福岡地区薬業安定協議会は七月例会を七日三時より県薬会館に於て製企会十一社卸八社、小売十二名の委員が出席して開会した。

 協議会は小売側の司会により進められ、先ず県安定協報告は小売側より、九州各地区情況については製企会側よりそれぞれ詳細に報告された。

 次に福岡地区現況につき、四島委員より、当日迄の一般医薬品について一連の価格対策の経過について詳細に報告された。

 会及び卸は各社毎に、再販品、指導価格品、その他の価格維持に対する現況報告があったが、囮商品価格のシーソーゲーム問題も、卸組合並にメーカーの努力により漸く好転、十一日には再び話合を行う予定であることが卸側より報告された。然しサロンパスの乱れが問題になり、又小売の外売による制度品の安値が、事業所、団地等で現れている模様である旨の話があったが、これ等についての指導も望ましいと小売側より要望があった。この件については次回までの宿題となって、当日の例会は終了した。