通 史 昭和41年(1966) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和41年(1966) 2月10日号

 医薬品小売商組 九州ブロツク連絡協議会 再販問題の最近情勢について検討

 薬業界の困乱が一応落着くまでは当分の間毎月一回開催されることになっている医薬品小売商組九州ブロツク連絡協議会は1月29日午後2時より製企会七社の出席を得て福岡県薬会館において開催された。出席者は佐賀‐川内、古賀長崎‐隈、鹿児島‐山村、福岡‐白木、四島、岡野、吉柳、藤野、山手の諸氏で熊本、大分、宮崎は欠席であった。

 小売側山村氏を議長に、@中央情勢報告A福岡県におけるマスコミ家庭薬メーカーとの懇談会(既報)B制度品メーカーに対する要望に関する回答についてなどの報告があった。然し当日特に真剣に討議されたのは、最近、再販が色々と問題にされているが、小売業者が希望した再販実施も亦特殊指定同様少数一部の野望業者のために危機に立つのではないかと危惧されるところから、これが防衛且つ育成を、強力に又真剣に努力するよう中央安定協、全商連などえ強く要望することであり、左様決定し、隈氏を委員長として早急に要望書を作成することになった。当日の意見の主たるものは次のようなものであった。

 ○再販は管理価格ではないかと云うことで、公取委が問題にしないか、楽観を許さぬ。
 ○再販を吾々は希望して来たが、現在の在り方は、価格を吊り上げるためのものだと思われている。又メーカーの過当競争が再販をぶちこわす事になりはせぬかと危惧される。
 ○余りマージンが多きに過ぎると、これが取り上げられて改正されるおそれがある。
 ○再販の危機を何とか防衛する必要がある。
 ○一握りの中央の意向が吾々の考えだと思われるのは困る、せめて80%の声でなければならない。九州の意向を中央に反映させる方法を考えたい。
 ○再販、特殊指定、商組調整規程の三本建てで業界安定をはかるべきであると考えるが、一部野望を持つ人々の動きは一般メーカー品を乱すのが目的で、この際これを暴露すべきである。
 ○特殊指定でも現に、道理が引込み無理が通ったのは、それがよい教訓である。楽観的ではいけない。
 ○吾々としても余りマージンを望むと失敗する。今回の森永、明治の公取問題はマージンが少いのが強みで、吾々としてはそれを能く理解した上で、森永、明治に強力しなければならない(約10%位のマージンは当然の事でそれ以下になれば業者が売る意欲がなくなり、自然消費者が迷惑することになる、との消費者の立場から、公取委の行き過ぎを改めさせる事であるらしい)。
 ○中央安定協も全商連も、再販に対して楽観的過ぎはしないか、再販問題も今後安定協の大きな問題であるべきだ。
 ○再販反対者を黙らす必要がある。
 ○少数の横暴である第五列的行動を排除すべきだ。
 それより県商組から北九州市に於けるチラシ問題、それに関連した情勢について話しがあり、その解決についてメーカーのバツクアツプを要望して当日の協議を終え懇談会に移った。

 福岡県社保委員 支部社保担当理事 合同協議会

 福岡県薬剤師会では社会保険委員と支部社保担当理事合同協議会を1月26日午後1時半から県薬会館で開催出席者は委員並に支部社保担当理事合計十三名の他中村県理事で、出席率最も不良であった。

 片井委員長司会して次の議題につき協議決定した。

 1、歯科協定処方の支部毎の取扱いと爾後の方策について先づ各支部より現況報告があり、未制定支部は二月中に制定目途に努める、尚薬効別各項協定を採択すること。

 2、全般的(特に乙表医)分業推進について
 各支部共未だ具体化していない、歯科対策終了後着手することになった。

 3、保険調剤(医薬分業制)公衆向けPRについて
 分業PRと実用を兼ねた内用投薬袋を作成、一保険薬局等に百枚位無償配布PRすること。

 4、保険調剤実態調査に就て県薬役員、社保委員、支部長及び支部社保担当理事は保険調剤実態調査を早急に実施し爾後の施策とすること。

 5、福岡市及び北九州市に於ける講演会開催に就て九州歯科大学歯科薬物学教室吉村教授を講師として歯科薬物学、歯薬協定処方に就ての講演会を地元歯科医師会と両市薬剤師会支部共催で開くこと。

 6、薬価基準収載の各社制度品及び非採算性保険調剤医薬品に対する各メーカーに対する要望の件
 早急に要望書を作成提出することを決めた。

 7、社会保険に関する予算増額の件
 四十一年度予算編成に当つては社保対策費(広義の医薬分業対策費)の増額を図ること。

 福岡県薬商組 理事・支部長合同会議 対外部活動討議

 福岡県医薬品小売商業組合理事会、支部長会合同会議が1月27日2時より県薬会館において開催された。 先づ白木理事長より1月24日東京に於て開催された@中央安定協並に全商連理事会の報告があり、次にAマスコミ家庭薬メーカーとの懇談会内容報告に引続き、B制度品メーカーに対する六項目の要望に対する回答は、細部についてはメーカーにより違った面はあるが、大体要望に沿いたい。との回答であった旨報告があった。

 次に各地区情況報告では各地区共種々問題はあり、北九州の小倉区では昨年来指導価格の乱れなどで困っていたが、今月に入って各グループによるビラが配布され、組合員はこれにより大型店を刺激誘発することをおそれていたが、遂に東映が配布するに至ったので、昨26日組合では役員会を開いて討議した結果本日(27日)より指導価格の守られない六品目については自由各販売とする旨組合員宛通知したとの報告があった。

 これについて組合は北九州が乱れれば単に北九州のみでなく九州全土にその影響を及ぼすので、早急に卸、メーカーも含めて話合いの場を持つよう進めることになった。

 次に今後の県商組運営については@各地区により実情が違うので地区の問題は地区毎に対処し、県商はこれを全面的にバツクアツプする。A最近大病院の過剰投薬が目に余るものがあるので、個々にこれ等のデーターを集め、直接医家に対し、或は姿勢を正さぬメーカー、卸などに対し、戦を始めるべきであり、組合内部の調整と同時に、商組の行き方を外に向けるべきだとの意見が強く出された。次いで山手理事より会費納入情況報告が述べられ、浮羽、柳川、瀬高、大牟田、黒木、築上など、組合を脱退した支部、或は空中分解した支部などあるが、何等かの問題が発生すれば組合の必要を感じられると思う。組合活動の原動力たる会費納入に一層強力されたいとの要望があった。

 挾子

 ▼この程福岡県薬の社保委員と支部社保担当理事との合同協議会が開催されたが(本紙別掲)歯薬科協定処方集の実施及び医薬分業客観状勢の好転を迎えた重大時機にも拘わらず、欠席支部が24支部中15支部の多数に及んだ事は、分業認識とその熱意の不足、又会員に対する責任感の欠除は洵に遺憾極まりないと、真面目な人々は痛感している。

 ▼長野県で県保険課他関係団体が中心となって(但し薬剤師会は入つていない)昨夏「正しい保険診療の受け方」のPRのための標語が募集されたが、当せん標語中に「投薬は医師にまかせて正しく飲もう」と云うのがあった。その後病院、診療所、会社、事業所などに配布され待合室や食堂等々に掲示されたポスターにその当せん標語が載っている。これを見た薬剤師会は薬は医師から受けるのが正しいと暗示(或は明示)しているのは、分業を規定している法律を無視している官庁の態度は許せないと憤慨して県保険課に抗議し、近く厚生省にも同様申入れることになっているそうだ。最もな事である。

 ▼大体日薬否日本剤界が余りにもイクジがなさ過ぎる。特に患者が希望した場合と特殊の病患を除いては、分業を法律は瞭かに規定している。この点を剤界人はどう見ているのであろうか。なぜこれを実現しようとしないのであろうか。分業に対し余りにもダラシのない現実が、長野県の様な問題を起すのであり起きて来るのである。偶々こんな事が長野県に現われただけで日本全土、日本全社会の思潮がこうなっているのである。遅々として進まない薬局調剤はそれがためである。薬種商が薬を売つて食い、薬剤師が調剤によって食い、医師が診療によって食うことが正常な姿であるべきものが、現実は薬剤師も薬を売って食い、医師は調剤によって食い、診療によって病院が建つ。洵におかしな世の中である。

 ▼然しこれで一番の被害者は一般大衆である患者である。薬の知識に欠げているので此矛盾を何んとも感じていないからお目出たいものである。二番目の被害者は恐らく薬剤師であろう。然し身から出た錆ともいえよう。剤界は余りにも無関心であり無気力である。薬剤師は一番大事なものを忘れている。(鉄棒)

 福岡県薬務課 田中美代技師 企画主査に

 福岡県では二月一日付係長級の異動が発令されたが、薬務課技師田中美代氏は衛生部企画主査(係長待遇)に昇進された。

 田中氏は昭和十七年より薬務課に奉職されておりその功績は大きいが、女子薬剤師で役付になったのは初めてで、その第一号である。又氏は福岡県女子薬副会長であるが、女子薬創設当時から薬剤師会に協力し、これ亦功績は大きい。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 2月20日号

 医療の近代化と医薬分業 福岡県薬・薬局委員会 新委員長に神谷武信氏

 福岡県薬剤師会薬局委員会が2月11日1時半より県薬会館において開催された。出席者は竹内、神谷、側島、川浪、本間、県薬より安部担当理事、工藤専務、中村理事の諸氏であった。

 (1)委員長選任について
 会議は先づ、委員長柴田伊津郎氏辞任のため、当日新たに互選により神谷氏を委員長に決定した。

 (2)医薬品の制度化に就て
 種々の意見が出たが、制度化されることは基本的には反対である。然し現時点においてはそれも止むを得ないので、自己の営業状態に合せて、計画性を持つよう指導すべきであり、データーを出して一応の線を指示する必要があると思われるので、近くこれを作成、各地域においてこれを検討し決してメーカーに振り廻されないよう経営しなければならない。(例えば日商一万五千の店では一社、三万では二社、四万では三社程度の制度加入とする。それ以上の加入は在庫品が増加し経営困難となる)など。

 (3)社会保険対策について
 委員長は分業をも含め薬局の姿勢を正すこと(薬局の在り方)をどうするかを検討されたいと述べ、大体現在医療形態には矛盾が多いので、中央に於てこれに対する確固たる方針を建て、地方では受入態勢を整備する(備蓄薬の交換などの方法も考える)ということであるが、来る代議員会で中央の方針も瞭かになると思われるので、これに依って充分やることに決定した。この項討議中出された意見の主たるものは次のようなものであつた。

 ▽分業問題は今日迄協調ムードでやって来たが、武見発言などを考えた場合、今後協調の意があるかどうか疑わしい(これは全く高野落選によると思われる)現時点が、今後どう変わり行くか、掘り下げる時期であると考えるので、中央で充分検討して方針を建てて貰いたい。
 ▽医家に対するPRの方法として、看護婦対策より見た医薬分業(看護婦は今後益々雇用しにくくなるため、看護婦本来の姿にかえして、処方せんを発行する)を勧め、技術料の値上げについては医薬協同で行う。
 ▽分業になり十年経った今日、法規による「医師自らの調剤」を本格的に取り上げ検討していい時期ではないか。
 ▽医師自らの解釈を検討する必要はあろう。
 ▽日薬も分業十周年と云うことで、最重点事業「医療の近代化は如何にあるべきか」に対しては極力分業を推進することが絶対に好ましい。
 ▽現在の医療経営は薬に依存している。薬価基準はプラスマイナス零であるべきで、薬で儲からなくなれば無駄な投薬が無くなり、これによって浮いた金額を技術科に廻せばよい。これで医薬品の乱用も防げる。薬価基準収載医薬品にサービスなど行えば基準から削除する等の方策が実現すれば医療問題もスツキリすると考える。
 ▽医師側に於ても、分業であるべきだ。何時かは分業になる、と認識はしているが、現在のうま味が忘れられないのが現実であろう。
 ▽法律の改正はむつかしいが、医療は経済であるから厚生省で出来る。医師側に先づ技術料を与えれば分業は出来易くなるだろう。
 ▽メーカーが自分の企業を伸すため医家を甘かすのが大きな原因で、製薬企業の在り方に問題がある。
 ▽ヒートシール調剤の本質論から始めたいと思っている。メーカーペースでなく本来の姿に戻れと……。
 ▽今回の歯薬協定処方は従来よりは一歩進め、歯科的一般の処方誘発に意を用いたものと考えているが、各地区の協定処方にはその意味が生かされていないので、各地区共再検討して貰いたい。
 ▽受入態勢は現在のままでは保険薬局数が足りない更に、現に保険薬局でありながらその15%位は全く保険調剤をする意志がないと推定される。薬剤師側の倫理を昂揚する必要がある。
 ▽保険薬局で処方せんを選択し、面倒な調剤は拒否する者があるが、保険薬局はプライドを持たねばならない。現実の問題として希用薬品の備蓄には悩まされるが……
 ▽それについては地区毎に大きな病院と開局者との連繁をとり、希用薬品の交換ということを考える必要があろう。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 2月28日号

 福岡県薬理事会並 日薬代議員打合会 日本薬政会を政界に生かせ

 福岡県薬剤師会では2月16日1時半より県薬会館において、日薬代議員会に臨む態度決定と41年度県薬予算の基本的考え方などにつき理事会及び日薬代議員打合せ会を開催した。

 先づ四島会長は中央情勢報告として、日薬は20日より一連の会議が開かれるが、ご承知のように昨年9月臨時代議員会に於て役員改選が行われ、人心が一新した。未だ其緒に就いたばかりであるが、熱心に四つの特別委員会等で、日薬コースを決め、如何に進むべきかについて論議検討している。

 41年度の日薬事業計画は@医薬分業の促進(医療制度の合理化推進)A薬業経済の安定B勤務薬剤師の地位向上ならびに待遇改善Cアジア薬剤師大会の開催D日本薬剤師会館の建設E日薬共済部規定改定案、であるが、就中41年度の重点事業は分業の完全推進であり、職能推進特別委で検討されているが、その隘路や障碍排除などの方向にむかつている。

 今日迄の日薬活動は開局会員に濃厚かの様であり、それも行がかり上止むを得なかったが、今後は全薬剤師のためのもので、従来よりは一段高いものでなければならない。そこで会員増加策であるが、開局者は殆んど加入しているので、勤務会員を増加するほかない。又開局、勤務の比重も、平等で会費の面も勿論同率であるべきだが、今の段階では止むなく従来通りとなっているため非常に窮屈な予算となっている。

 会館建設について会長は、吾々会員だけでとの構想で進んでいる。薬業経済に関しては委員会で検討されているが、特殊指定問題は現状のまま暫らく据置く事に決定している。又共済部に魅力を持たせることは仲々むつかしいが、新しい方向にと考慮中であり、日薬としては、斯様な方向に進めていると云うことである。

 代議員会に臨むについては現会長をもう一期選任するかどうかが一番大きい問題である。と述べ、次に長野副会長より定款調査特別委の経過報告があり、引続き堀岡副会長は、日薬の定款調査特別委が吾々の関心の的であったが、吾々の気持で検討された事には満足している。然し今後日薬がそれをどう取扱うかを吾々としては見守っている。と述べ、なお第一回職種部会講習会は非常に好評であったが、第二回は近く大阪で開かれるので、開局薬剤師の参加をも希望すると述べた。

 次に福岡県薬の状況報告として@組織拡充整備に関する特別委員会について長野委員長から、A医薬品特殊指定に関する特別委員会については藤野理事からそれぞれ報告があり、B社会保険業務について中村担当理事から、先の糸島、筑紫両支部社保研修会は成功であり、保険調剤零支部がなくなることを期待している。又歯薬協定処方については各地区共歯医側との懇談の段階であり、保険薬局PRとしての薬袋(PR印刷のもの)は県薬で一括印刷が望ましいと報告。C薬局経済については安部担当理事から、2月11日開会の薬局委員会においては、業界の制度化も行き過ぎると弊害が出て来るので、会としては何等かこれに対して指導すべきではないかということであった。との報告に対し会長は、制度化に対する会としての対度はまだ決定すべきではないが、自主性を持ち、制度化に振り廻されぬよう注意するより外ない。私個人としては再販契約は賛成であるが制度化は反対であるとの発言があり、D医薬品のDI活動と調剤技術委員会について、堀岡副会長は、DI活動は開局者と一緒にやりたい。東京で二回講習会が開催されたが一般にも開放し出席者の半数はメーカーの人々であった。会員外が多数であり日薬で主催すべきであると思うと報告された。

 次に中央に対する要望事項として、会長並に工藤専務より
 @全国各地区の保険審議委員に薬剤師を入れること。
 A適配については兎角の批判もあるが、開局、勤務薬剤師にも大局的に有利である事が漸く理解される様になって来たが、その運営については巾を持たせることが必要であること。
 B高野前会長の政界復帰を希望すること。(この際薬政会々長に就任して貰うことが先づ復帰の早道だと考えられる)

 次いで本会の41年度会務運営の基本方針について会長並に専務は、代議員会は3月28日頃の予定。会費は値上げしない。薬政会は中央で活発になれば県薬政会も亦薬政会員として再認識するためにも別会費徴集が考えられる事業面は分業完遂が超重点事業となる。以上で理事会を終了し五時閉会となった。