通 史 昭和40年(1966) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和41年(1966) 1月1日号

 丙午の歳を迎えて 福岡県薬剤師会 会長 四島 久 謹賀新年

 昨年の参議院選挙の失敗の原因に就いては、色々と取り沙汰されて居るけれども煎じ詰めて行けば、日薬会員殊にその中核をなして居る開局薬剤師自体が、選挙そのものを余り甘く見過ぎて居たと云ふ事に最大の敗因があつたものだと思う。或いは左翼団体の積極的協力がなかつたからだ等の事を云ふ人も居るが、考えて見れば加勢を受ける者よりも加勢して呉れる者に対し余りに過大な期待を持つその事が、吾々が選挙の厳しさに対して認識不足であつた事を裏付けて居る。

 日薬執行部の老化により会員が遊離した結果だと云われるに至つては、最も会員自体の無気力さを自嘲して居る事になろう。十数年の永きに亘って執行部が居座って居れば、必然的に独善的になり安逸をむさぼる状態になり、所謂老化する事は当然であろう。斯くなる前に少くとも数年前、会員の下からの力を盛り上げて革新して行かねばならなったものである。それを着かず離れずの状態で、成り行きまかせにして居った結果が、今日を来たしたのである以上、日薬の老化の責任の大半以上は会員自身が負ふべきものであるにもかかわらず、執行部のみを此の様な状態になって始めて、急激に批判する事を以って能事足れりとする者は自からの責任を感じ乍らも他を批判する事によって、自己批判の逃げ口上をして居るものと考えられる。

 日薬会員であろうとなかろうと、全国の薬剤師で高野選挙に無関心であつた人々は相当数あったと思われるが、高野氏を落す事を望んでいた人は、極めて少数の取るに足らない数であったと思う。開票の結果を恐らく絶対大多数の薬剤師諸公は唖然として聞き、その瞬間仕舞った!と感じた事に間違いあるまい。色々と他を責める人々も自分自身が得票活動不充分であった事を、内心恥ぢ後悔して居るのが真実ではあるまいか。

 何れにしてもあの選挙の失敗は高野氏自身も日薬会員も全部が、反省するチヤンスになった事は云ふまでもない事である。高野氏自身も今後の落選によって、政治家としての在り方という面で、大変よい勉強が出来一歩前進する事が出来ると云って居られると共に、日薬そのものの人心を一新して、改革前進させねばならないとの考えから、昨夏の役員総退陣と相成ったものである。

 幸にして武田新会長の就任によって新しい方向に向うべき新執行部が出来、機構改革その他新しい空気がみなぎり、着々と前向きの姿勢がとられつつある事は心強い事である。日薬の姿を新執行部と全会員とが相協力して近代化すると共に、高野前会長の十数年に亘る政治生活により培かわれた政治手腕をフルに活用する事こそ、そして出来る丈け早い機会に政治家高野の現役復帰を計る事こそ、日薬会員であると未加入の会員であるを問わず、全国六万の薬剤師のために吾々が背負わねばならぬ使命であると思う。

 薬剤師会も薬業界も去年は苦悩の年であつた。殊に薬業界にあっては、社会的に政治的に批判の嵐の中に立たされ立ち往生の状態であった。今年になって果して此の嵐の中から脱却する事が出来るかどうか苦悩を解決出来るかどうか多事多難が予想される。

 薬事経済の安定問題は単なる価格維持と云ふ消極的な施策から進み出て、伸張を目標として色々と施策が進められて行くであろう。特殊指定の問題、一般メーカーの制度化再販契約の問題等、どれ一つを採り上げても並々なぬ問題である。全メーカーの制度品化か或ひは制度禍になるおそれも多分にある様な気がする。何れにしてもメーカー、卸、小売三階層の相互強調が前提でなければ成果はあがるまい。薬業界全体が横縦の線で本気に協力態勢をとらない以上、どうにもならない危機が到来する事を自覚する事が先決であろう。協調態勢が出来るまではまだまだ争ひは絶えない。その争ひも協調する一過程の争ひであって欲しい。争ひつ放しであってはならない。

 今年は丙午の歳である。桿馬の向ふ見ず的な独走は厳にいましめあわねばならない。丙午とは丙として動じない、確固たる信念と自信を持った力強い駒である。希望に自信を持ち断呼として貫き進む丙午に乗って薬業界の苦境から進み出すべき年であらねばならない。全薬業界の相互協調を新目標として駒を進めねばならないと思う。私も再度生年丙午の歳を迎えて感新たなものがある。

 素人筮竹 福岡大学 塚本赳夫

 筮竹(ぜいちく)をあやつるすべも知らず、算木(さんぎ)の置き方も知らないくせに、今年の運勢をうらなって見ても人は信用して呉れないとは思うが、今年はどうしても景気がよくなるような気がする。根拠はと聞かれれば――、私は只「午年」だからと答える。しかもあまり評判のよくない「ひのえうま」に当ると云うから尚更のことである。

 十二支の「うまどし」の中で十進法の甲乙丙丁と組合せて、その第一位にある甲(ひのえ)と付くのであるから一番元気のよい馬であるに相違ない。従ってどんなにはね上るかわからないと思う。馬だっていつもはねてばかり居るとは限らない。暇(ひま)な時には只立って尻尾(しつぽ)を振り廻して居るだけのこともある。子供の頃この尻尾で頬をなでられた事があった。京城のせまい横丁での出来事である。ずい分尻尾も長くしてあつたようだが、横丁も狭くて親父と並んで歩いて居た私はどうしてもその「しりっぽ」の勢力範囲外を歩るく余地はなかったらしい。

 われわれは悪い事に馬の尻の方から彼の横を通り抜ける事になったのであるが、馬は車からはずされて只つないであつた。私が通ろうとした時いきなり馬の尻尾が人の顔をたたくようになぜて行った。あまり突然の事で、びっくりもしたが大いに癪に障ったので私は何げなく馬の尻でもたたくつもりだったか、手を挙げかけた。丁度その瞬間に父の手がのびて私のうでを取るが早いか横に引きよせた。これと殆んど同時に馬は私を目がけて蹴り上げたが、その蹄(ひづめ)は空しく空を蹴ったに過ぎなかった。

 馬の顔の横を過ぎてから「何故(なぜ)お馬は尻尾を振るの?」「何故けるの?」「何故……?」とめづらしい事件にいくらか興奮して質問を連発したが、父はしばらくだまって歩いた後に「なぜ、なぜと聞くより前に、自分でよく考えて見なさい!」といくらかおこったような云い方で、ぽつりと云うた。

 この事がどうしてだか私には非常にこたえた。今まで何んでも聞けば教えて呉れたように思うのにどうして何の説明もして呉れないのか?と云う風に思えたがしばらくすると本気で自分で考え始めた。これが父が朝鮮に赴任して数年間会わずに居た後に兄と二人で京城を尋ねた時の事で、昔の云い方で、私はまだ尋常小学校の頃の或夏休みの事件である。

 それ以後馬を見て居ると尻に蠅がとまるとうるさがってその部分の皮膚だけピクピク動かすし、蠅があまりしつこくすると尻尾を振り廻す事もだんだんわかって来たし、馬のうしろと牛の首の方は通つては危険だと云う事も何時の間にかわかって来た。それどころか馬の中にも無闇とかみつく奴もあるから馬の顔のそばでもあまり安心して歩いてはいかんと云う事も今では承知している。然し、あの時父は何故あんなにタイミングよく私を馬のうしろからのけたのか」と考えて見ると、あらゆる動物が皆そうであるが力の入るモーシヨンを起す前には必ずその予備行動がある。飛びかかる前、走り出す前、蹴とばす前皆然り。武術の達人と云われる人たちは勿論の事、色々な運動、競技の名人と云われる人達もこんな点を早く悟った人は早く上達するものと考えられる。この時にも馬がうしろから来た人間をこわがって尻尾を振ったりした後で首を下げて蹴る構えを見せたのであろうと思う。

 私の景気論は大分無茶苦茶ではござりまするが、御商売をやる方々も武術や競技と同じでいざと云う時に「身がまえ」だけは出来て居ないとタイミングをはずす恐れがありはしないかと思うし又、何か起る前の敵の身構えを見ぬく力を養っておかねばならんと云う事を、「片輪者」にもならないでそだって来た事を父に感謝しながら思い出します。せいぜい交通事故などでけがなどをしては親にも相済まん事だと云う事がやっとわかり始めたような気がします。(福大教授・薬博)

 年頭に当り日本の薬業を顧みて 福岡県医薬品小売商業組合 理事長 白木太四郎

 新春を迎え益々御健祥あります事を心からお喜び申し上げます。本年の薬業界を考えますとき、一般の経済状況は、ここ二三年不況ムードが続くのではないかといわれております。本年の上半期に悪い決算が出やしないか、景気は後期にならないと、見通しがつかんともいわれております。

 政府では本年は景気が回復するといっています。確かに一部大企業はよくなるでしょうし、米価引上げによる農村購買力の増加に、財政支出の増加等で一時的に潤うことがあるでしょうが、小売店が好況に向うという事は仲々で、薬局薬店の不況は、これからが本格的と考えられます。

 医薬品の売上増は今後多くを期待できませんが、利益率はどうかというと、三六年は二二・五%、三三年二二・一%、三八年二〇・八%と漸減し、三九年四〇年と益々低下しています。日本の総ての企業が増収、減益ですから、薬局薬店も例外ではなかったのです。不景気を常と思い、インフレ高物価と戦い、零細企業没落の時期に負けない様、自力更生の決意を新にし、経費と生活費を引締め、医薬品の専門店に徹し、効く薬を客の信頼にこたえて行くことが必要と思われます。

 メーカーの売上競争は益々激化するでありましようし医師向け医薬品の、割増し競争は、小売向薬業安定の枠を外したら怒涛の如く激化し乱売戦は急速に進展するでしよう。それに対処する為の再販価格維持契約、特殊指定が必要ではないでしようか。系列化による再販契約は、各社それぞれ進展しておりますが、中小薬局の為にできるだけ取扱いが可能の様に、取引責任額支払い済度、返品交換、押込み過剰ストツクの問題等につき九州商組協議会として、これの緩和方につき各社に要望の交渉を重ねています。

 薬禍問題として、サリドマイド事件、それに昨年当初に発生したアンプル入り感冒薬事件を、社会大衆マスコミは非常に敏感に取扱っており、副作用中毒作用に恐れおののいて、薬と薬の取扱業者に対する不信感は激増している。メクリジン等抗ヒスタミン剤の妊婦への有害問題、催眠鎮静剤の弊害、世界保健機構(WHO)で発表されるピリン剤、解熱鎮痛剤抗生物質の副作用問題等々これを放置すれば、薬局の店頭販売は不可能になるが或は何らかの制限をうけざるを得なくなるのではないか。

 新薬の開発が激しく、種々の新薬が出ているけれども、一つの病気に対する治療効果、それが他の人体器官に及ぼす副作用はないということで出されているがこれが長期に使用されて各人体のそれぞれの器官に対しての影響という点についての研究の不行届きがこの様な醜態を起しているとも考えられる。即ち一つの治療薬としての要素は充分研究されて臨床例も充分であろうが、それの及ぼす人体の他の器官に対しての影響即ち臨床例がそれ程行き届いていないという事であって、今後は一つの薬品の開発が如何に数多い臨床実験をとらねばならないか、それのため莫大な研究費を注ぎこまねば、あらゆる場合の副作用を皆無にすることが困難であり、又一方ではそれの取扱面に於て、使用上に於ける注意事項を厳守させねばならないという事が必要であります。

 それの為には治療薬についての放送、宣伝(テレビラジオ)即ち薬医学的専門知識をもたない人が、唯売るということ、売上拡大のみを目的として企画されているその様な宣伝機関を、そのままう呑みで活用している製薬メーカーに、今社会で問題になっている、薬の乱用から来る、薬に対する不信感、ひいてはあらゆる薬品についても又それの取扱業者である薬局薬店に対する不信感を来しているのではないか。

 外国の製薬メーカーは、一つの新しい薬を開発するときは、五、〇〇〇の新薬を創造してその一つが初めて効果の点、副作用の点等あらゆる角度から万全として売り出されている。おそらく、日本の新薬開発でも、それだけの努力がなされて、新しい薬品として社会に売り出されているのでしようが、それが今後は更にあらゆる角度からの副作用防止という点で一層の臨床実験を要するであろうし、一つの新薬を開発する為には、莫大な研究費を要する事は当然であるし、医薬品については他の一般商品とは違つた、政府の行政指導或は特別の対策を必要とするのではないか。

 欧州各国では
 @各メーカーが他社の新開発の薬品については、すぐ模倣することをしない。新製品開発の困難を知つているので、お互に専売品として尊重しようというエチケツトを知っている。又それを守つている。もしメーカーの自主性で守られねば厚生省の医薬品の許可の時点で、模倣品については三年間許可をしないで、新薬開発のメーカーを保護する政策が必要ではないだろうか。
 A治療薬は、一般大衆に対しての宣伝は許されてなく、専門機関紙を通じての宣伝に限定されている、所謂医師、薬剤師の専門家を対象にしての宣伝しか許されてない。
 B医薬品の販売は、アスピリン剤、ビタミン剤、家庭薬の外は、医師の指示又は処方箋なしでは販売されていない。
 C完全医薬分業である。
 D薬局は許可制であり、適正配置である。

 ドイツのハンブルグ市で、百年前百軒の薬局薬店が乱立して、医薬品についての乱売が行われて、その為に種々の好ましからざる状態が出来たので、開業については許可制になった。この様にして欧州各国は、薬局の開設については許可制であり、人口五千人或は三千人に一軒とか、又ローマ市のように二五〇万人の人口で旧都市を五〇〇のゾーン(地域)に分割して一ゾーンに薬局一軒というように決めている所もある。このような医薬品販売についての、過去の歴史的経過を経て、医薬品についての特殊性を認め、以上のような法的対策がされている。
 E医薬品の公定価格制(健康保険制度で当然薬価基準が出来るし、これの利潤が二五〜三三%あり市販する場合もこの小売価格が守られている。)
 F薬剤師の地位
 薬に関しては医師といえども薬剤師や薬局に相談しているし、薬剤師はそれだけの専門的知識を十二分に身につけなければならない。薬に関してのあらゆる文献を揃え、臨床実験例も揃えているし、薬の相談に対しては、真に信頼される専門知識、技術をもつて応待している。

 日本の薬業界で、現在一番問題である乱売問題も、或は薬禍問題も欧州に於けるこのような制度が実施されれば、全ては解消するのではないか。薬のうち乱用して社会大衆に悪影響を及ぼすものは結局長い目で見て、薬局店頭ですすめるべきではないのであって、国民衛生福祉上、或は社会の秩序上、好ましくないということで販売面に於ての薬剤師の常識ルールを守らなければならないとすれば、そのような規制の中で成り立つ薬局の経営を政府としては考えなければ実効は上らないのであってその意味で前記の七項目は、時の問題はあるとしても、当然実施されなければならない、緊急問題である。

 完全医薬分業が成り立つ限りに於ては、薬局は必ず薬剤師会へ入会し保険薬局にならねば経営が成り立たない。保険調剤が売上の七〇%〜五〇%を占めれば、後の売上の三〇%〜五〇%の内に占められる医薬品販売のうち、公定価格制が決っておれば、それを故意に破らなければならないという人は、ごく少数にしかならない。

 イタリーでは公定価格を破った薬局は六ケ月の営業停止処分を受ける、或はドイツのように、薬剤師に非ざれば薬局を開局することを得ずという、米軍占領以前の法律になれば、専門的教養を受け医薬品の特殊性を認識していて、公定価格を破ろうという人が何人でるか、そのような事で欧州各国では医薬品は公定価格制が実施され、それを乱す一人の人もない現状である。

 日本の薬事行政を司どる政府機関に於て医薬品の特殊性として販売面その他に幾多の規制を要求し、その規制が完全に守られ、世に薬の弊害がなくなるよう、完全を期そうとするならば薬事制度において、欧州各国がとっている、強力な法的措置を取らなければ、完全を期し難いと考える。欧州の薬業事情の詳細については近日更に報告をしたいと考へています。

 福岡市薬剤師会 部会長会 表彰者祝賀会開催

 福岡市薬剤師会では旧臘15日2時より県薬会館に於て部会長会を開催した。先づ友納会長あいさつの後去る13日開催された福岡県薬支部連絡協議会の協議事項を詳細に報告し、歯・薬協定処方については、市薬剤師会側としては小委員会で研究を進めているが、大体八処方位にしぼりたい考えであり、この点を歯医との交渉に早く持って行きたいと考えているとの報告があつた。

 当日は殆んど全部会出席したが、会議終了後当所に於て今年、市薬会員中それぞれ表彰された四島県薬会長、友納市薬会長、馬場正守県学薬副会長の三氏の受賞を祝して、市薬より記念品を贈呈し、祝賀の小宴が催された。

 マラソンの教え 堀岡正義

 昨年十月の朝日国際マラソンは近年にない面白いレースであつた。平和台競技場をスタートして、国道三号線一路東へ、途中十四キロ地点の和白から海の中道へ入り、雁の巣折返しの四二・一九五キロのフルマラソンコースは例年好記録が出るので期待されている。今回は特にメルボルン大会の聖火走者であり、東京オリンピツクで活躍したクラークが出場するというので、いやが上にも前評判が高まっていた。

 東京オリンピツクで五千、一万、マラソンで活躍しながらも、わずかに一万の銅メダルに止まったクラークは、年が明けるや長期間のヨーロツパ遠征に出かけ、十六回走って、十五回世界記録を出すという、文字通り超人的な金字塔を打ち樹てた自信をひっ下げて来日したのである。クラークのスピードが勝を征するか。あるいは中尾、寺沢、広島らのペースを主体とする日本のマラソン陣の追い込みが成るかに衆目が注がれた。

 陽光が輝やき、十月にしては暑いくらいの二十度という条件下で、スタート。十キロ地点では、フオームも軽快に、クラークは二位以下に五〇〇米の差をつけてリードする。このまま行けば二時間十二、三分の快記録が期待されるハイペースである。折返し地点での差は六〇〇米、二十五キロでもほぼ同じ差を保つていたのが、急にピツチが落ちはじめ、三十一キロの香椎団地前では、日本選手団がクラークを視野の中に捉えうる三〇〇米までに迫った。こうなってはもう追う者の強み、広島、中尾らの一団は一歩一歩クラークに迫り、遂に貝塚団地前で指呼の間に近づく。九大北門前でクラークは力つきて棄権、以後は皆様もすでに御存知のように、両者のはげしいデツドヒートは競技場内にまで持ち込まれ、最後の百米の死斗の末、広島のマラソン初優勝となったのである。

 一番短い百米からマラソンに至るまで、"走る"ということには必ず力の配分が必要である。あのスタートからゴールまで、一気に走り抜けるような百メートルにもスタートダツシユ、中間疾走、そしてフイニツシユがある。競争の世界も、走る技術の進歩とともに、スピードで長い距離をカバーする方向に変ってきてはいるが、マラソンという長丁場では、やはりスピードだけで押し通すことが出来なかったということを丁度のレースは教えてくれたようだ。それにしても、はるかに先行した見えざる目標に対し、自己のペースを守って徐々に追い上げていった日本選手団のねばりは本当に見事といつてよい。

 わたしどもの福岡県病薬が県下の病診薬局を挙げてスタートした、DI活動も組織体制の整備、報告様式の制定、DI二ユースの発行などを始めて、すでに一年を経過した。スタートダツシユの時期が過ぎて、今年からはいよいよペースを守って進む中間疾走の時期に入ってきた。スタートダツシュを出しすぎて息切れするか、あるいはいよいよ快調なペースでこれからの長丁場を走り切るか、クラークで終るか、はたして広島たりうるか、今年はDI活動の今後の盛衰が定まる大事な年だと思われる。

 すでに県病薬の会員の熱意は、DI活動の記録用紙の送付枚数にあらわれて、近年いよいよ快調、C地区の基幹病院がその地域の中核となって、意欲的な活動を行っていることは感謝に堪えない。この分では、レース全体の成否をきめる本年のペースにも狂いはなかろうとの自信を固めつつあり、DIニユースも年四回から年六回へと増刊できそうである。

 筆者は、県下のDI活動の第一期の終了に、五ヶ年間が必要、またそれだけの歳月をかけなければ本当のことはできないと思っている。そのゴールのときに、果してわれわれは平和台のテープを切る者となりうるであろうか。それは一に会員各位のバックアップであり、さらにその根本は一人一人の病診薬剤師が医療人の一員として、薬物療法を通して患者の福祉に奉仕するという"使命感"の認識如何にあるといえよう。「DI活動において、数十人の薬剤師の活動は、数百万の患者の診療に当る数千人の医師の要望に応えることができる。」(D・E・フランキー)

 医師がベストの薬物療法を行なうに際し、今日ほど薬剤師がそのコンサルタントとして、重要視されている時代はかってなく、今後ますますそのウエイトが高まると考えられるとき、このフランキーの言葉ほどDI活動を行なう、われわれ病診薬剤師を勇気づけるものはないと思われる。(九州大学医学部病院薬剤部長、薬学博士)

 新春雑感 塚元久雄

 九大薬学部が誕生して既に一年八ヶ月を経た。現在薬学科と製薬科の二学科制になって始めての学生が二年生として八十名が昨年十月末に学部の方に進学してきた。講座も従来の七講座に加えて生理化学、薬品物理化学が増設され、本年には更に二講座、更に翌年には二講座と完成時には十三講座が予定されている。

 現在の老朽狭隘な校舎では教育、研究に支障をきたし、現在でも応急の処置をとらねばならず医学部並に本学事務当局の好意で、法医、細菌、衛生の建物の地下室に学生実習室を整備し増員された進学々生の実習に当っている。現状は幾多の不便があるが、文部省当局に学部設立以前より概算要求をしてた新建築の件が昨年許可を得て、本年より愈々五階建一四三〇坪の新営の運びとなり、我々一同喜びにたえぬものがある。

 新建築の場所は堅粕地区即ち現眼科、第二外科の移転にともない、その跡に建設される。去る十二月十一日眼科病室の移転跡にて薬学部新築地鎮祭が挙行された。総長、医学部長、医長を始め本部事務局、並びに薬学部職員参列の下に総長の鍬入れの儀が行はれ、愈々新築への実感を身におぼえた。現状に至る迄には幾多の苦労があり、さらに今後ともこの完成に至る迄には多くの困難が横たわっていることと思はれる。期待される新建築の完成迄は我々薬学部の教職員は一層の努力をすることは勿論のこと大方の皆様に御教導と御支援をお願いしつつ新春の辞と致す次第です。(九大薬学部長)

 潜在薬剤師 福岡大学薬学部長 松村久吉

 薬関係の新聞に厚生省発表の39年12月末現在の薬剤師数が載っている。又薬剤師講習会の節購入する薬剤師必携には逐年の薬剤師数が載っているが、それらをみると毎年の薬剤師数増加が国会試験合格者数より著しく少ない事に気がつく。

 ここ数年全国薬科大学を卒業する薬学士は三千数百名で、近く四千名に達するがこの中国家試験に合格するものは85%とみて三千名以上である。然るに必携によると薬剤師数の増加は多い年で千八百六十三名(35年)少い年は千十九名(37年)で著しく少い事に気がつく。従って残りの千数百名が国家試験に合格し乍ら、まだ登録をしない為薬剤師の資格をとらないままになっている。いわば潜在薬剤師とも言ふべきものであるこの数が実際どれ位あるか不明である。薬剤師登録数は39年12月末現在で六万六千六百名となっているからこれら潜在薬剤師が実際に登録をすると優に七万名を超え、七万数千名に達するものと思はれる。

 薬剤師は薬剤師法第九条により毎年12月末現在に於て氏名その他厚生省令で定める事項を翌年1月15日迄に居住地の都道府県知事を経由厚生大臣に届出る事に義務づけられている。これには罰則がある(薬剤師法第32条)未届の場合には一万円以下の科料に処せられる事になっている。先日この事につき県の尾崎薬務課長にたずねたら、福岡県下でこの罰則の適用をうけた事例はないとの事であった。他の都道府県も恐らく同様であろうから、この薬剤師数の延びの少ないのは死亡者もあろうがその大部分は新合格者の未登録と考へざるを得ない。国家試験に合格はしたが差当り薬剤師免許証を必要としないので登録をしなかった者が毎年千数百名以上いる事になる。

 薬剤師としての公務員に就職する場合は薬剤師免許証下附の年月から薬剤師の経験年数を計算し待遇が定まる。従って当分不要でも早く薬剤師免許証をとつておかないと非常に損をする場合がある。私は九大在職中就職のお世話をしたときままこのこのような事例に遭遇した。即ちそれ迄免許証を必要としない職場に居て、何等かの都合で離職し、薬剤師としての公務員に採用されても薬剤師免許証をとっていなかつた為、卒業年度に相応する薬剤師としての待遇が得られなかつた例である。

 免許証は薬剤師国家試験合格証があれば、何時でもとれるが、許可申請をしてから手許に免許証が届く迄に相当の日数を要し急の間に合はない。即ち居住地の保健所を通じ登録申請をするのであるが薬剤師法第四条の絶対的欠格条項は別としても第五条の相対的欠格条項等の調査に日数を要するのである。何れにせよこの潜在薬剤師とも称すべき人達(薬剤国家試験に合格し乍ら厚生省の薬剤師原簿に登録していない人)の実数を調べておく事は必要であると思ふ。

 次に先般行はれた参議院選挙に就て唯一の薬剤師代表である高野一夫君が落選した。誠に残念であり情ない事に思った。医師は勿論歯科医師、看護婦、助産婦等夫々の職域代表の立候補者は何れも当選し、医療関係候補者中独り薬剤師の代表が落選した。その原因は種々考えられようが薬剤師の団結心の乏しさも原因の一つであろう。薬剤師は以前から青白きインテリと言はれ、無気力であり団結心に欠けている。これは比較的容易に薬科大学に入学出来、卒業し、国会試験に合格し薬剤師になれば容易に職にありつける。そうして薬剤師会に入会しなくとも少しも痛痒を感んじなく、何んとかやつて行ける安易さが薬剤師を無気力にし団結心をなくさせている事は否めないと思ふ。

 又開局者や薬局管理薬剤師は不完全分業のため、処方箋が出廻らないので調剤が出来ないから止むなく薬種商との薬品類の販売競争に熱心でしかも一般に劣勢である。又病院診療所の薬剤師について言える事は多忙で研究の余暇も少なく折角希望をもって入つても病院、診療所の大きな組織の中での薬局業務に唯忙しく日を過す事になり自然と無気力になって了う。又一昨年から施行された開局の際の距離制限は何れ開局して老後の生活を計画していた多くの病院薬剤師にとり大打撃で又新卒業生にとつても深刻な問題となって来つつある。

 医薬分業の完全実施は当然望まなくてはならないが一方吾々は薬業そのものをスッキリした形にしなければならないと思ふ。それは距離制限とも関係する事でありどうしても早急に解決を要する問題だと思ふ。薬育機関のこのように発達した時代に今尚ほ薬種商が新規に許可される事である。全国で毎年どれ程許可されるか不明であるが福岡県の許可数から考へると五百名は下るまいと思ふ。しかも之等の人々は大低資金的にも恵まれ、又商売は上手である。無薬局町村で開業すれば意義もあるが多くは都市で距離制限問題を一層むつかしくしている。現在薬種商である人の己得権は認めて新規許可は廃止すべきであると思ふ。種々の事情のある事は承知しているが何れは解決すべき事で現在はもうその時期に来ているものと思ふ。(福岡大学教授、同大薬学部長、薬学博士)

 新年を迎えて 上田ヨシエ

 四十年の元旦は薬学大会開催準備のため、はりきって迎えた記憶がつい此頃のようによみがえるが、ここに新春を迎えて旧年を顧みれば誠にあわただしい毎日であった。せかせかして落着かないことが多くて、暇がないといいながらそれなりに精一杯、手一杯やっているんだと自分にいいきかせてみると本当に自分の出来ることなんて知れたものだとつくづく思わせられる。

 然しくぎりは有難い。新年を迎えるには心あらたに年を送り出さねばならない。大晦日は毎年繰返すともそのたび生きてる喜びをしみじみ味い感ずることが出来る。その晦日近い最後の定休日に机に向って肩の凝らない本を手にして時間をつぶしているうちふと非常に興味深い禅語の語録を見つけた。早速一、二、書いて新年の覚悟として皆様に贈りたいと思った。

 一、荊棘林中一条路(けいきよくりんちゆういちじようのみち)、八方ふさがりのなかに活路がある。四方悉くいばらでは怪我もする。少々の怪我などへつちやらだ。勇敢に人生街道を驀進する、生きる熱意に対して一つの活路がプレゼントされる。」と…

 一、脱下旧鞋著新鞋(きゆうあいを脱下してしんあいにつく)、脱皮する。新しい表皮は古い皮の下に準備されている。古い考え方を脱して新しい人生を生きねばならぬ。それの出来る人は大したものだ、現在の時点において歴史の要請にこたえるということ。それ以外に新しい生き方はない。

 以上の語録の意味を充分賞味してもらいたいもの、そして誕生したばかりの新薬剤師会の発足と運営に万全の努力と熱意を注がれている役員の方々と渾然一体となって会員一同四十一年は動き出したいものと思う。急角度に老化現象の追かけた自分の身にせめて次に生れ出る力強い女子薬剤師の会員達の活動に夢をたくしつつ新年の御挨拶を申し上げる次第である。(福岡県女子薬剤師会長)

 薬剤師の行くべき道 古賀哲弥

 光陰矢の如し。亦一年がたった。過ぎし昭和四十年を振返ってみると、かぜ薬アンプル禍問題に始まり特殊指定問題で年末を迎えた感がある。

 我々念願の薬剤師の地位向上は遅々として進まず、逆にアンプル禍による薬剤師の威信失墜、薬局の信用喪失と云う事態まで引起してしまった。そして一方、特殊指定賛成だの反対だのとメーカーやチエーンから引きずり廻される。全く我ながら情なくてしようがない。

 街の商人から脱却し、技術者として、薬剤師として我が道を歩めるように早くならないものだろうか。結局之は我々自身がその自覚を持ち、そして自らこの道を切開いて行くより他にないと思う。我々薬剤師なる職域は微力である。だからこそ更に格別の努力を積み重ねなければならないのではなかろうか。

 私はこのたび始めて全国学校保健大会に出席した。聖地伊勢の地に、北は北海道より南は鹿児島までの三千有余名の学校保健関係者が一堂に会して「近代生活を生きぬく子どものためにみんなで、それぞれの立場で、いかに学校保健に参加するか。」という一つの標題を中心として、熱心に研究討論がなされた。

 学校の校長あり、学校教員あり、学校医あり、学校薬剤師あり、PTA役員あり、教委職員あり、さまざまな職域よりの参集であるが、誰一人として自分の営利のために来ている人はいない。唯一すじに崇高な同一目的のために暇をつぶしお金を使って、津々浦々より集って来た人ばかりである。

 私は学校薬剤師なればこそこの意義ある会合に参加できたのであり、自分は薬剤師の資格があるのだ。学校保健のために薬剤師の技術が、如何に一翼をになっているかという事をつくづくと知らされた。第一日目午後より第二日目の午前午後にかけては、約五十の班に分れ別々のテーマにより研究を重ねた。

 特に私の感じたのは、学校保健に於ては、今後は環境衛生がいま一層大きな比重をしめつつあるという事である。即ち学校薬剤師の前途は光明に輝いているという事である。今更申すまでもなく、地域社会に於ては、医‐歯‐薬という順で私共薬剤師は下目に見られているが、一歩学校内にはいり学校保健の問題に携わる立場になってくると、校医も歯科校医も学校薬剤師も対等である。而もこの三者の中では学校薬剤師の活動の分野が将来一番開けているのである。

 前記保健大会で私の所属した分科会では、学校薬剤師の働きのお蔭で環境不良の学校校舎を、県費をかけて改築するまでになった、という感謝に溢るる学校側の発表もあっていた。福岡県では約一〇〇〇校の小中高校に対して現在六〇〇名程の学校薬剤師が夫々専従又は兼務の形に於て服務している。そして未だ学校薬剤師の設置されてない学校が一〇〇校近くあると聞く。薬剤師の名に生きる者は、老いも若きも進んで学校薬剤師になろうではないか。そして寸暇を見つけて学校に行き、将来の日本を背負って立つ児童生徒の保健衛生の為に奉仕しようではないか。そして引いては之が薬剤師地位向上のための最も近い道になると確信する。

 歯薬協定も漸く地方まで滲透し具体化して来た。日薬首脳部も入れ替り、分業推進に拍車をかける事になった。保険財政の行きづまりその他諸般の情勢から考えると、完全医薬分業到来は必至である。新しい年を迎え、私共は医療機関としての本来の姿に戻ろう。薬剤師の衿持を保ちなるべく早く物品販売業より脱皮しよう。そして側面的に、薬剤師職能のPRのために学校薬剤師として頑張ろう。私の常日頃考えている事の一端を述べ新年の挨拶と致したい。(開局薬剤師・県学薬副会長)

九州薬事新報 昭和41年(1966) 1月10日号

 前月に引続き 九州各県医薬品小売商業組合連絡協議会
 製企会七社と具体的懇談

 九州各県医薬品小売商業組合連絡協議会を去る11月27日開会に引続き旧臘18日午後2時より再び福岡県薬会館に於て開催した。当日は再販契約の内容などについて懇談するため、再販実施メーカーの出席をも求めたが、当日の出席は次の通りであつた。

 川内(佐賀県)隈(長崎県)椿、堀川(熊本県)益田(大分県)山村(鹿児島県)欠(宮崎)白木、岡野、吉柳、藤野、須原、四島、鶴田、山手(以上福岡県)

 メーカー側)武田薬品、三共、中外製薬、田辺製薬、第一製薬、藤沢薬品、塩野義製薬、

 開会先づ長崎県の隈氏を議長に推し、前回及び前々回の本会で決定し、其の後出されたメーカー各社(約30社)に対する再販実施要望書に対しては15社より回答があった旨の報告があった。次に当日の主要議題である再販契約の内容について、すでに実施にふみ切っている製企会側と懇談するに当り、その経緯について白木氏は、

 吾々小売業者は価格維持のために全製品の再販を希望するが、せめて主要マスコミ品だけでもと、その実施を要望して来たが、今日多くのメーカーが再販実施をされた事は誠に喜ばしい。がその内容については各社それぞれ異っている、出来るだけ多数の小売店と広く結んで貰い、小売店側の要望などにつき話合うために今日の催となった。

 と述べ次に四島氏は再販と制度化とは別個に考えたい。価格維持のためだけであれば再販で解決するのであるが、応々にして新しい製品を再販にし、これと抱合せて一緒に制度化される所に問題がある。現在までは制度化されたものの方が少なかったので、大した弊害はなかったが、医薬品の制度化が正常化され、それが行き過ぎると種々弊害が出て来る虞れがある。一般消費者から見た場合、社会問題となろうし、又保険の面から考えても、医家向けと小売向けとに対し同じ製品が使われていると云う事で、いずれ問題が起って来るであろう。又現在医家向けと小売向けの価格差は、薬剤師の最高目標である医薬分業を阻害する一つの原因となっている。メーカー間の過当競争より生れたこれ等一連の行為が、小売販売面にしわよせされその乱れに連がると思われる。

 価格安定問題は小売、卸メーカーの三者が協調し努力しなければ達成されない事であるが、切角再販実施に踏み切ったならば、前にも増し各々それぞれでなく三者共横縦のの線での協調をはかり、努力する事が必要であると痛切に感じる。今後この問題は要望から強制となり、更には報復となると思うので、三者協力の意味で今から慎重に考えて頂きたい。と述べ、引続き制度化の内容について検討したが、その主なものは次のようなものである。

 ▽間接値引をどう考えるかについては、サンプルなどの過剰サービス或は再販品を含めた売上金に対するリベートなど、既に現在現れているが、これ等については当然違反と認める事になる。

 ▽支払期間の延長については大体30日から65日の間であるが、小売側としては最短を二ヶ月位にして貰いたいと要望した。

 ▽責任販売額については(ノルマ)一社を除き基本的には決りは無いが、切なる願いと云った無形のものがあるので、リベートの点で余り格差があれば自然に能力以上に仕入れ、横流れ、引いては価格の乱れに連がるので、無理な押込みは決してしないよう要望した。

 ▽制度品の交換、返品については大体各社とも、仕入の自主制尊重、計画仕入の指導などの意味で、原則として認めぬ方針であるが、小売側としては柔軟な在り方を要望した。

 其の他制度のオープン化、14団体との契約拒否などについても話合ったが、結局当日の要望は文書を以て制度品を持つ各社にあらためて提出し、一月二十日迄に回答を求めることになった。

 次に九州ブロツク安定協議会に移り、白木氏より全国商連協議会報告、四島氏より全国商連の在り方などにつき意見が述べられ、五時過ぎ閉会となり同所に於て懇親の小宴が開かれた。

 尚当日決定したメーカーへの要望事項は次の通り。
 @独占禁止法による適用除外の14団体とは契約せぬこと。
 A納品より支払迄の期間を最低65日以上にすること。
 B責任契約販売量の廃止が望ましい。
 C毎月の責任販売量並びに取引契約にもられている事項中の取引量並にリベート換算の方式を最短、これを6ヶ月以上の通産取引高による契約とすること。
 D返品交換の自由を在庫修正の面からみとめよ。 E関連値引の問題について制度品が小売業者からの消費者へのリベート対象となっている事実があるのでこれを徹底的に是正する事を要望する。

 福岡県薬事審議会 任期満了で新委員決定更迭 ハトヤ薬局条件つきで答申

 昨年六月以降薬局薬店許可

 昨年度の福岡県薬事審議会は第一回は六月に、第二回を旧臘16日午後、福岡市金信連福岡支店会議室において、昨10月任期満了のため新たに知事より選定された左記新委員全員出席のもとに開催された。

 福岡県薬事審議会委員
(学識経験者)
 福大教授  三苫 夏雄
 同     松村 久吉
 福岡商工会議所会頭  原田平五郎
(消費者)
 県議会議員 森田 欽二
 同     吉村 義雄
 福岡県郡市婦人会連絡協議会々長  内野 梅子
 福岡県青少年補導協議会副会長   梅田 雅男
(薬事に関する業務に従事する者)
 県薬剤師会々長  四島  久
 県薬事協会々長  深田徳治郎
 県医薬品小売商業組合理事長 白木太四郎
 県医薬品卸組合連合代表   大黒清太郎
 筑紫二十日会・武田薬品福岡支店長 国松 藤夫
(行政機関の職員)
 県衛生部長 中川 正幸
 県商工水産部長 長谷川喜博
 福岡通商産業局商工部長 吉田 寛三
 ▽幹事 ‐県衛生部次長黒川敏和▽県商工水産部商工一課長諸岡秀輔▽県衛生部薬務課長尾崎松夫

 開会先づ全委員の紹介があり、互選の結果、会長に原田平五郎氏を、会長代理に松村久吉氏を決定した。 次いで審議に移り、当日問題になったのは福岡市飯倉に新設される「ハトヤ薬局」(申請者門司平雄)についてであるが、其の申請地は近く道路拡幅のため敷地の大部分が削られる予定となっているため、其場合第二の問題(適配除外)の起る可能性があり又予想されるので、これ等の点につき種々検討、実情を調査するため答申を保留し、23日調査結果に基き慎重審議の結果「道路拡幅後も移転することなく同所に於て営業する」との事を条件として許可すべきだとの答申が提出されることになった。

 尚16日の審議会で審議の結果許可答申の線を出したものは左記二件であつた。
 ▽ハトヤ薬局(福岡市飯倉大部田)申請者 門司平雄
 ▽椛蜷M薬局毎日店(北九州市小倉区紺屋町)申請者 椛蜷M薬局衛藤嘉蔵
 ▽オリオ薬局支店(北九州市八幡区折尾)申請者三淵正敏
 既に許可済の分(規定による報告)次の二十八件である。

 ▼薬局
 ▽つづき薬局(福岡市原)申請者 都築修三
 ▽ミナト薬品支店(大牟田市駛馬町)申請者 ミナト薬品叶シ元寺清継
 ▽奥村薬局支店(浮羽郡田主丸町大字田主丸西内畑)申請者 奥村秀子
 ▽加田薬局(筑紫郡大野町錦町三丁目)申請者 加田次夫
 ▽やかべ薬局支店(大牟田市倉永)申請者 矢ヶ部威
 ▽浦部薬局(北九州市八幡区大字穴生)浦部則光
 ▽吉塚薬局(北九州市戸畑区新池町四丁目)申請者 吉塚弘
 ▽ナカマ薬局支店(北九州市八幡区永犬丸字前原)申請者 柳沢タカノ
 ▽千早薬局(福岡市大字千早)申請者 内田末子
 ▽藤岡薬局(北九州市八幡区永犬丸宇前原)申請者 藤岡洋子
 ▽ふじの薬局支店(福岡市花野町加納ビル)申請者 藤野義彦

 ▼一般販売業
 ▽若久薬品店(福岡市若久)申請者 吉村薬局吉村善吉
 ▽双葉薬品(久留米市西町六軒屋)申請者 森恵美子
 ▽北九州薬品梶i福岡市比恵町)申請者 北九州薬品渇i田泰彦
 ▽倉田薬品(久留米市高良内町陸上自衛隊幹候学校内)申請者 倉田憲治
 ▽長崎薬品(北九州市八幡区折尾長崎中区)申請者 病院前薬局岩橋雅夫
 ▽山根薬品(中間市大字中間字笹尾)申請者山根アサコ
 ▽日炭商事株~ノ木マーケツト薬品部(遠賀郡水巻町大字古賀字黒石)申請者 日炭商事鰹H吉文男
 ▽伊勢六工業竃品部(福岡市大字立花寺)申請者 伊勢六工業活ノ勢田六郎
 ▽友田薬品(北九州市若松区外町二丁目)申請者 友田規矩男
 ▽くすりのスズキ(京都郡苅田町京町一丁目)申請者 鈴木通之
 ▽フカヤ薬店(福岡市大字田島)申請者 深堀嘉代子
 ▽仲上産業梶i福岡市三宅切通り)申請者 仲上産業樺上彦市
 ▽武末薬舗(福岡市大字下長尾)申請者 武末紀久子
 ▽飯野薬品(直方市大字頓野縄手下)申請者 飯野克子

 ▼薬種商
 ▽イダ薬店(福岡市大字名島船頭町)申請者 伊田文代
 ▽鈴木薬店(飯塚市幸袋日之出町)申請者 鈴木春枝
 ▽ブリジストンタイヤ御井町薬品部(久留米市御井町)申請者 江口忠一郎

 国立衛生試験所長更迭

 厚生省は旧臘十五日付で人事異動を発令したが、国立衛生試験所長刈米達夫氏は辞職、後任に石館守三氏が就任された。刈米博士は高齢のため(七十三才)退職されたのであるが、実に四十七年間の永き公務員生活で、その間京大教授を十六年間、その他は衛生試験所に勤務されたのであつた、後任の石館博士は六十四才東京生化学研究所長であり東大名誉教授である。

 福岡県薬業安定協 十二月例会

 福岡県薬業安定協議会は旧臘21日2時より県薬会館に於て年末のことでもあり、忘年会を兼ね開催された。当日は卸側大黒社長を議長に推し、午前同所において開かれた県薬商組理事会に出席した小売側組合員もオブザーバーとして出席した。

 去る18日九州ブロツク薬商組協議会において決定した制度品を持つメーカーに対して提出した要望書について白木氏よりその経緯が説明され、次に佐治九州薬品社長より飯塚橋問題から発生した公取の勧告については、12月3日付けを以って「本件の手続は、これを打ち切る」との(主文)通達が公取よりなされたので、同件は完全に終了した旨報告があり、引続き各地区の情況報告に移ったが、一部地区においては指導価格があってなきが如き状態であり、今後三者共これについては真劔に指導努力する事を申合せ、又家庭薬の乱れが各地に於て見られるので、新春早々県下小売、卸各代表と家庭薬メーカとの懇談会開催を決定し、引続き同所において和やかな忘年会が催された

 福岡の年賀会 薬業同冠者の互礼

 昭和四十一年の新春を迎え既に三ガ日は屠蘇に過ぎ正月四日福岡では恒例によって九州薬事新報社主催、各薬事団体協賛のもとに博多、第一銀行ビル七階三鷹ホールに於て正午から第十六回目の「薬事年賀会」が開催された。

 参加者二百五十余名、一同は既に準備された会場大ホールに入り、工藤県薬専務理事が司会して、先づ主催者安河内薬事新報社主幹の開会の挨拶に次いで、塚元九大薬学部長、国松武田福岡支店長、大黒南海堂社長、白木県商組理事長、深田県薬事協会長及び古賀県議会議員の祝辞挨拶があって一同乾杯、立食開宴となって温酒又ビールによって互礼の祝杯は流れ流れて、軈て薬事新報社同人、俳壇の巨星特に日本俳画界にその名も高い剤界出身者である阿部王樹翁寄贈の自画自賛の色紙十葉が、抽せんによって配与され、それより又一しきり宴酣なわとなって、時の過ぐるを忘れ、漸く万才三唱、茲に目出度く年賀会の幕を閉じた。当日の参加者は官庁、大学、病院、薬局、メーカー卸、小売、その他の薬系の諸士、県下に於ける薬事同冠者の主脳を殆んど網羅した観があり、洵に華々しい薬界新春の第一歩であった。

 藤沢薬品 非麻薬性鎮咳剤 ヘキサコール散 新発売

 藤沢薬品では強力非麻薬性鎮咳剤ヘキサコール散を旧臘新発売した、ヘキサコールは化学構造上からも全く麻薬とは無関係の合成鎮咳剤であり、嗜癖、禁断現象習慣性など、危険は全くない。従来の非麻薬性鎮咳剤に比して強力であり、特に上気道炎(感冒を含む)の様な乾性咳ソウには効果がある。又慢性気管支炎に伴う肺気腫、重症肺結核の咳ソウにもリン酸コデインと同程度の効果がある。副作用は殆んどなく、毒性は少なく幼児にも長期に使用ができる。適応症は諸疾患の鎮咳である。

 支部別保険調剤調査票 昭和40年11月分 福岡県薬剤師会

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九州薬事新報 昭和41年(1966) 1月20日号

 医家向け過当競争は完全医薬分業を阻害 福岡県薬はメーカー・卸に対し要望

 全国薬剤師八十年来の悲願である完全医薬分業制実施移行への状態は、今や国民階層の理解と認識とにより遅々であるが一歩一歩その気運が醸成されており、剤界としても充分なる研究、対策と、全般の受入態勢の整備、強化を急ぎつつあるが、自由主義経済、資本主義経済体制下とはいえ近時医薬品メーカー間の過当競争は目に余るものがあり、殊に医家向け薬価基準収載医療用医薬品について、割増し、添付等が30%〜50%、甚だしきは100%増等がなされている確証が挙げられ、又報道されつつある模様で、斯る状態は、こと国民の健康、生命に連なる医薬品、特に医師投薬の原材である薬価基準収載医薬品の納入が、現状の儘推移実施されるならば、国民各階層及び関係当局よりの指弾、批判、攻撃の激化は必至と思われ、製薬企業の危機を招来することなきやを、国民の医療に関与し、又薬事同臭の剤界としては憂慮に堪えない処であると共にこれが、剤界最大目標である完全医薬分業制推移前進に対して意外な障碍をもたらす素因となる惧れがあり、現に分業阻止の潜在力の一つと考え得ないこともないのである。

 大体医師向け医薬品納入の過当競争より来る、排除すべき点又弊害と理由は次の様なものであろう。
 @薬価基準収載医療用医薬品の極端なる割増し、添付等は薬価基準の有する性格、目的等に違背するものである。
 A国民皆保険制度下、前記の観点より、被保険者、患者たる国民を愚弄するものである。
 B国民の医療に専念すべき医師、歯科医師をして、その重要な使命遂行を阻止し、邪道に馳せしめ、医師、歯科医師の不幸はもとより国民全体の不幸である。
 C国の至高の方針たる医薬分業制推進の大きなブレーキとなり、剤界の最重要事業の推進、遂行を妨害するものである。
 D調剤及び医薬品の供給(販売、授与等)の専門職たる薬局(薬剤師)を無視したる行為であり、法制上も実際上も亦社会通念上も常軌を逸し、且つ薬業界現下の最重要課題たる薬業の安定に逆行する。

 以上の様な理由に依つて福岡県薬剤師会では思いを此処に致し各医薬品メーカー並に医薬品卸業者に対し旧臘八日付左記過当競争排除についての要望書を発送した。会員は勿論全国全薬剤師はこの件については能く能く深慮すべきことである。

 医師向け薬価基準収載医療用医薬品の納入過当競争排除について(要望)

 年末を控え、貴社愈々ご盛展のことと存じます。平素本会の運営につきましては格別のご配慮を戴き厚くお礼申上げます。ご承知の様に、政府の社会保障施策の拡充、国民の保健医療に対する認識の向上と保険者の保険財政健全化等により、医薬分業制は再認識される様になりました。

 国民総医療費の40%は、医薬品によるものといわれています。此時に当り、薬剤師(薬局)の在方は申すに及ばず、医薬品についての国民の関心は日一日と高まっています。全国薬剤師80年来の悲願である完全分業に突進する絶好期は、今を於てないのであります。

 本会は、医薬分業推進を最高点事業として全員一致対処致しており、其成果は逐次発揚されつつありますが、医家向け医薬品の納入過当競争のため医師に、投薬による不当利潤を与えるため投薬に熱中し、医療技術研修の意慾と時間を喪失させている。

 為政者には、この過当競争の現況により、医薬品実勢調査を行ない、薬価基準の引き下げを行なわせている。又国民には、医薬品製造、販売に当る者は勿論、医薬品に対する著じるしい不信感を抱かせている。

 薬局には、仕入価格が、薬価基準価格より遙かに高いものができたため、経済的問題より分業推進に大きな阻害となり、調剤意欲を減退させている。

 これ等のことは、国民医療、医薬分業制の将来、薬剤師・薬局の存在意義、薬局の経済等を誤まらしめるものでありますから、薬業界の将来のため是非、医家向け医薬品の不当な納入競争を停止されると共に、薬局に対しても、薬価基準の価格以下で仕入れ得る様格別のお計らいをお願い致します。

 薬局等の体温計販売手続等簡素化を計れ

 薬局並に医薬品販売業者の体温計販売の現状は体温計が他の医療用品や衛生材料及び医薬品と共に医療衛生上是非必要なものであり、従って薬局などと切り放つことのできないものであるので、手続きや経費などの点に於て面倒であり不経済であっても大衆の医療又保健衛生の上からも止むなく販売しなくてはならない事情にある。依って薬局等の手数と経費を軽減するために宮崎県薬剤師会では今期国会提出予定の計量法改正に関して、左記の様な依頼を日薬に発し、至急善処方を昨12月18日付書類で提出した。

 左記
 薬局、医薬品販売業者(以下薬局等という)の体温計販売は提出制として、手数と経費を軽減する様計量法第四十二条但書に次の事項を加えられたい。 「薬事法第五条、第六条ならびに第二十八条の規定により許可を受けた者が温度計を販売する場合はこの限りでない。」

 理由
 1 薬局等の体温計販売は其数量、金額が僅少で殆んど採算に合わぬが、大衆の健康と生命に直接関係がある営業である特種性より、顧客の便益のために販売しておるものである。これを一般の計量器販売業と同様に煩雑な登録、再登録の手続と手数料を要する法規は無理であり薬局等も採算と手続の二重負担で体温計販売をしない様になれば、顧客は不便であり、体温計の普及を阻害し、引いては健康、生命にも悪影響を及ぼすこととなる。
 2 薬局等は薬事法により一定の資格を要し、体温計販売に必要な能力は充分具えているから、登録による能力の認定は必要でない。これは政府の方針である行政簡素化の良い対策でもある。
 3 体温計は取引証明に使用するものでないから、他の計量器と区別した取扱いをしても何等支障がない。
 4 先の度量衝法では薬局の体温計販売は特別に届出制であったが、昭和26年6月現行計量法になった際、特別扱いを除かれたのは、戦後経済下、薬局等の特殊性が?めず、薬局等が法改正に無関心であったからである。現在の薬局等は其特殊性と採算負担について強い関心をもって、法改正を要望している。

 要指示医薬品 毒薬・劇薬 追加指定

 厚生省は旧臘23日次の二品目を新たに要指示医薬品に追加指定した。
 一、ヨウ化エコチオフエイトの外用剤
 二、臭化デメカリウムの外用剤
 尚、翌24日毒薬表改正により右二品目は新たに毒薬に指定され、同時に次の四品目が劇薬に追加された。
 一、金チオリンゴ酸塩類の製剤
 三、一‐(二‐ベンジルフエノキシ)‐二‐ピペリジノプロパンその塩類及びそれらの製剤、ただし一錠中二〇mg以下を含有するものを除く。
 四、臭化オキシピロニウム及びその製剤、ただし一錠中一mg以下を含有」するものを除く。

 日薬 第二回職種部会講習会 大阪で、2月25日・26日

 日薬の病院・診療所勤務者職種部会主催の第一回講習会は昨年東京に於て開催され、病診勤務者の外メーカーその他各方面から多数参加者があり大好評を博したが、今回左記要領により第二回講習会を大阪に於て開催することになった。全国の病診勤務者は勿論、開局者及びメーカー方面からの参加が希望されている。

 ▽参加申込方法=往復はがきで申込むこと(参加者多数の場合は抽せんの上参加票を送付する)
 ▽申込先=大阪市北区南扇町一二大阪府薬剤師会
 ▽申込期日=2月5日迄に必着のこと(予定数は二百名)
 ▽参加費=日薬会員五百円其他千円(当日会場受付で払込むこと)
 ▽日時・題目=41年2月25日〜26日(左記プログラム参照)
 ▽場所=大阪市東区道修町四ノ三、藤沢薬品工業株式会社大ホール

 講習会プログラム

 ▼第一日(2月25日)金
 ▽薬理学の立場から=京大教授高木博司(10時〜12時30分)
 ▽医薬品評価の考え方=千葉大教授宮木高明(13時〜14時30分)
 ▽医薬品評価の立場から=厚生省製薬課長豊田勤治(14時30分〜15時30分)
 ▽Placebo効果=阪大教授金子仁郎(15時30分〜16時30分)

 ▼第二日(2月26日)土
 ▽生化学の立場から=阪大教授蛋白研究所長鈴木友二(10時〜11時)
 ▽薬剤学の立場から=京大教授掛見喜一郎(11時〜12時)
 ▽医薬品開発=東京大学講師福地言一郎(13時〜14時30分)
 ▽臨床の立場から=阪大名誉教授刀根山病院長山口寿(14時30分〜16時30分)

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 福岡市薬・学薬会 関係当局へ手当問題陳情

 学校保健法が施行されて既に七年、その間36年に法の一部改正で学校薬剤師の必置が規定されたが、福岡市薬並に学薬会に於ても、其趣旨に副い学校環境衛生の向上に現在活躍している。然しその待遇手当が一般社会諸給与に比較して極めて低額であり、これが学校薬剤師の活動意欲を尠なからず鈍らせていることも事実であり、学校保健法制定の精神に悖る虞れも多分にあるので、手当については、地方交付税算定基礎額(40年度では一万円)に若干の加算が当然であるとの考えから(現在は三千六百五十円)この程友納市薬会長並に矢野市学薬会長の名によって関係当局に陳情書を提出することを決定し、友納、矢野、柴田、馬場、内田の学薬師、他に加藤、久保田の両市議と一団となって市長、助役、市議会議長、及び教育委員会管理部長を歴訪して強く陳情した。

 第30回 薬剤師国試 4月2・3日

 第30回薬剤師国家試験が左記により実施を決定した。
 ▽試験期日=4月2日(学説)、同3日(実施)
 ▽試験場=宮城、東京、石川、岐阜、京都、大阪、兵庫、福岡(八ヵ所)
 ▽試験科目=学説‐薬物学、衛生化学、公衆衛生学、薬剤学、薬事関係法現、日本薬局方、薬品分析学、物理化学(放射化学を含む)実施‐公衆衛生学、無機薬品製造化学
 ▽出願書類提出期間=2月21日から27日まで
 ▽願書提出先=厚生省薬務局薬事課試験免許係宛

 福岡地区安定協 一月例会 近く家庭薬メーカーと懇談

 福岡地区安定協議会は1月10日3時より県薬会館において製企会側を議長に開催されたが、当日は個々の問題よりも地区全体として今年はどう推進するかについて意見が交換された。

 先づ地区中心部(バーゲンを含む大型店の乱れ)等における大型店関係の対策を消極的に打出すべき時期ではないか、これについては各店が個々に企画する事は非常に危険でもあり効果もないと思われるので、然し組合一本でも亦無理であろうが、或る程度まとまって統制をとつてやるべきで、その場合組合は積極的に援助を惜しまないと云った在り方が最も好ましい又、価格維持に協力しないメーカー品、ドリンク剤などで協力しないメーカーのものは商品価値を無くするような徹底的な対策を考えなければならないなどの意見が出された。

 次に家庭薬の乱れについては、家庭薬メーカーとの懇談会を、県安定協としては別個に持つ事になっているが、本地区としては第一回を、乳製品も含め家庭薬価格維持のための懇談会を本月二十日後に開催することを決め、開催日決定については卸側に一任することになって閉会した。

 薬界短信

 ◆福岡県・地区商組と家庭メーカー七社(ロート、大学目薬、サロンパス、養命酒、わかもと、命の母、ノーシン)との懇談会=1月21日午後県薬会館で、現在混乱している価格の安定について懇談(詳細次号)

 ◆福岡県学薬会常任理事会=1月20日午前県薬会館で次の議題につき開会協議
 @伝達講習会開催の件
 A日本学薬会々費について

 ◆福岡市薬理事部会長会=1月17日午後県薬会館で「歯科協定処方について」其他を議題として開会した。

 うわさ 強い御仁 三汀

 さるお方よりもれ承れば本年は薬務課はとても張り切ってござるげな。昨年は、アンプル風薬のこと、催眠剤の事等いくら注意しても、てんで薬事法を無視したことをするので薬剤師は勿論のこと、薬局開設者も充分教育し、徹底するまで教育したい。二三日かかるので薬学講習会に便乗し、課長自ら陣頭指揮して若し欠席すれば、薬事監視員をして各薬局を巡視せしめて欠席の理由を正し始末書を取り、八月の暑い日に二、三日ムツツリ教育して再び薬事に関する違反がない様に、腹の底に徹するまで教育するそうな。

 何ばして、もらわっしゃったか解らんが、県知事から表彰状をもらわっしやった四島県薬会長も、薬務課には同調せにゃ、いきめーやと云いござったげな!。

 もろきものは、安ものの人形の首や手足と、内田さんの骨だといはれるが、此処に強い御仁がある。俺は隣組長がボイコットして何もしてくれなかったので、町費は勿論の事、市民税も払はない。国会議員がやっている事は何だ、議会の有り様は何だ、国税は払はない。部会長がボイコットして何もしてくれないので、薬剤師会費は払はない。金が無かのでもない。惜しいのでもない。会の有り方が悪い。なかなか強い御仁であるこれで世の中が渡れれば幸である。

九州薬事新報 昭和41年(1966) 1月30日号

 福岡県薬商組と家庭薬メーカー七社との 懇談会『大いに語る』

 さきの福岡県薬業安定協議会12月例会において最近の家庭薬価格の乱れに対処するため、県商組並に卸と家庭薬メーカーの懇談会を、県安定協とは別個に開催することを決定していたが、1月21日2時より県薬会館において次の出席者により開催した。

 メーカー側=荒川ノーシン、ロート製薬、参天製薬、久光製薬、養命酒、笹岡薬品、わかもと製薬
卸側=大黒、高瀬、若狭、鶴原  小売側=白木、須原、岡野、吉柳、深田、吉松、鶴田、大隈、山手、川島、松村、福間、谷口、近藤、貞宗、篠崎

 懇談会は先づ各氏の自己紹介に初り、白木県商組理事長を議長に推し、出席メーカーの自社製品に対する価格維持対策を聞いた後、これについて小売側より品目毎に各地の情況を報告し、卸の意見なども求め、メーカーに対して今後の在り方などにつき希望、要請など行った。

 メーカー側=荒川ノーシン、ロート製薬、参天製薬、久光製薬、養命酒、笹岡薬品、わかもと製薬
 卸側=大黒、高瀬、若狭、鶴原
 小売側=白木、須原、岡野、吉柳、深田、吉松、鶴田、大隈、山手、川島、松村、福間、谷口、近藤、貞宗、篠崎

 懇談会は先づ各氏の自己紹介に初り、白木県商組理事長を議長に推し、出席メーカーの自社製品に対する価格維持対策を聞いた後、これについて小売側より品目毎に各地の情況を報告し、卸の意見なども求め、メーカーに対して今後の在り方などにつき希望、要請など行った。

 その主たるものは
 荒川ノーシン
 新製品を再販にし、代理店も新たに決めたので、旧製品の品切れと同時に安定すると思う。違約店についてはその都度努力しているが、現在指導価格は守られている。 小売=大体守られているようだ。
 卸=旧製品在庫店は現在全体の20%位であろう。新製品については大体守られている。

 ロート製薬
 39年価格維持のためロート会を結成したが、昨年これが乱れたので卸屋と話合って努力し、現在では大体守られている。パンシロンについては守られない店へは何回も訪問しては相談した。Vロートの価格は七不思議と云われる程守られている。小売、卸共実際守られているとの報告があつた。

 参天製薬
 価格維持に取組んだが思うように行かず、昨年七月制度化してこれ等を宣伝し、益々のばすことにしている。スーパーサンテは守られないため現在サンテド・ウに力を注いでいる。
 小売=売れるスーパーサンテ、大学目薬の価格は全々乱れているが価格維持をやる気があるのかどうか、このままであれば制度品の価格維持も出来るかどうか疑わしい。と各地区代表よりそれぞれ報告された。
 卸=ダブルサービスした事からこの問題が起った。

 久光製薬
 37年より本格的に取組み努力の結果ようやく最近七掛の線は守られている。然し近畿地区が乱れているので再販に踏み切り、先れ全国的に再販実施したいと思っている。
 小売=再販するにしても、現在の小売販売価格七掛では小売の利益は二円である、一般常識から考えてもこのような価格体系では意味はない。その時は適当な利潤がある価格体系にされたい。
 卸=卸の段階でも最も価格の乱れる商品である。

 養命酒
 酒屋が60%薬屋が40%販売されている。酒屋では定価で販売されているが、薬屋の方は値くずれがひどくて苦慮している。どうしたらいいか皆さんにお聞きしたい位である。
 小売=最近品切れで困っている、何時もまじめな小売店が迷惑している。
 卸=昨年11月頃迄写真入りで派手に宣伝され、囮にされていたが、最近仕入自粛のため品薄となり、そのような事がなくなった。小売側には迷惑をかけたが、近くスッキリした形となし、品物も入荷する。まじめな者が迷惑するのは卸でも同じことである。

 わかもと製薬
 昨年7月新製品を出し、大型店、スーパー等とは再販を結んでいるが、北九州で昨年末乱れが出た色々と努力した結果漸く解決した。
 小売、卸共に価格は守られているとの報告。

 笹岡薬品 価格対策は立遅れた。全国で代理店は40軒、品物も少く、卸屋には迷惑をかけている現状である、メーカーが希望する卸価格が七二掛であるが、末端価格六五掛で売られているのがあるが、不思議でならない。近くロツト番号もつけ、対処することにしている。 卸=手形も短かく、品物も少く、代理店の数も少ない。乱れるのが不思議な位であるが守られていない。 小売=現在最大の囮商品として販売されているが、価格維持する意欲があるのか疑いたくなる、早急に対処されたい。

 などの意見であつたが、新薬メーカーの制度化の進展情況などから判断すれば、家庭薬メーカーはその商品としての力値はあるが、価格対策其の他組織の欠陥から此の儘推移すれば、増々囮商品として利用される可能性を含んでいる。今回の懇談会で家庭薬メーカーも大体自社製品に対する価格維持については相当努力していることが認められるが、現在の価格体系は卸小売共に利潤は皆無に等しいにも抱らず、現実に大型店の囮商品として乱売されている原因は大体卸の段階にあると考えられるので、今後この面でメーカーが自社製品に責任を持ち、非協力な卸屋を指導して貰うことが大切であると小売側より強い要望があつた

 尚この懇談会は価格が安定する迄、当分の間、県安定協開催当日午前、安定協とは別個にメーカーの出席を求めて、引続き毎月開催することを決めて懇談会を終了した。

 福岡県学薬界常任理事会 伝達講習会その他決定

 福岡県学校薬剤師会では常任理事会を1月20日午前11時から県会館で開会、出席者は友納、古賀の正副会長及び理事六名、他に県教育庁から出下技師が臨席。

 会長から先づ昨冬三重県に於て開催された日本学校薬剤師会総会並に日本学校保健大会について報告(特に総会に於ては会費の件について協議したが決定せず、翌日の代表者会で漸く決定した旨、又大会出席者は従来に比して非常に多数であり福岡県学薬からも四十数名が、参加したなど)があり、古賀副会長からも亦詳細な出席報告があって、当日の左記協議に移った。

 ▽伝達講習会開催の件
会場は県下三個所とし、@福岡(田辺製薬福岡支店講堂A久留米(保健所講堂)B北九州(地元で決定のこと)と決定した。
 日時は福岡2月14日久留米同月15日、北九州同月17日、何れも午前11時より開始し、講議終了後実習に移ることを決定した。

 ▽日本学校薬剤師会定款一部改正について
 古賀副会長説明、新たに監事二名が選任され、改正定款による運営は41年4月より始められ、それ迄は現役員のままで行くこと。

 ▽日本学校薬剤師会々費割当について
 割当の基礎は学薬の人数と手当とを勘案して算出されたもので、福岡県の割当は六万円となっている、この三分の一である二万円を3月末日迄に納入することになるが、割当額について本会としては承認し難く、四万円程度で、日本学薬会に申出ることを決定した。

 ▽検査器具の購入に就いて
 @濾紙塵埃計の吸引装置(約六万円)A簡易騒音計(約四万円)一台、Bまぶしさ測定器四台、以上を購入することに決定した。

 ▽その他=県公衆衛生大会開催が三月に予定されているので同大会に於ける被表彰者を地区毎に推せんのこと、現在北九州市から長野義夫氏が推せんされている旨報告があった。

 挾子

 ▼ 心窃かに心配していた事が事実として現われることになるらしい。医薬品ドリンク剤に課税することを自民党税制調査会で決めたそうだ。勿論条件付即ち容量50cc以上、二年間の猶予である。然し医薬品に物品税は全く今日迄の原則が破棄されたことになる。薬業界としては誠に重大な事と言わねばなるまい、今日迄に医薬品の無課税は一般に医薬品の特殊性が認められていたからである。

 ▼ よく考えてみれば医薬品であればピンからキリ迄特殊性があるとは思われない。薬業者が自己利益上からのみで、昔の売薬に当るものの大部分は一般物品と何等差別を強制しなければならぬ理由はみ当らない。現在の家庭薬や保健薬と言われているものの大半は昔の売薬や売薬部外品と変りはない様に思われる。事実メーカーのこれ等のものに対する広告宣伝や販売の姿勢から見ても左様に思える。し好飲料業者がこの点について反撥を覚えるのに無理はない様だ。医薬品メーカーは販売に関し姿勢を正すべきである。唯届一本で誰でも簡単に販売ができる売薬‐理在の家庭薬‐と医師が正に使用する医薬品とを昔の様に分離して法律で再び規定されることを惧れる。

 福岡県安定協 一月例会

 福岡県薬業安定協議会1月例会は25日1時半より小売側の議長で、県薬会館に於て開催された。白木中央安定協委員より先づ、前日東京において開かれた中央安定協並に中央情勢についての報告があり引続き藤野委員より、去る12月の医薬品小売商組九州各県連絡協議会に於て決定し、その名において発せられた再販実施メーカーに対する六項目の要望書について、九社より回答があったが、その内容について些細なことについてはとも角、大体に於て了承の旨がうかがわれるとの報告がなされた。

 次に左記各地区毎の情況報告に移った。

 福岡地区=本月10日の本地区安定協例会では、個々の具体的な問題よりも大綱的に今後の在り方などが検討されたと報告された。

 北九州地区=11日新年会を兼ね地区安定協が開催されたが、戸畑薬品のビラ、若松地区でのチオクタンWの乱れ、小倉における大型店のビラ、九友会のかなり刺激的なビラ等常習的なビラ配布に対し、地元組合員としても最早自粛出来ないとの気運にあると報告され、ビラ問題については種々意見が出されたが、常習的にビラを配布する人々と地元卸他関係卸店も含めて懇談会を持ち話合う必要があるとの意見が多数であった。又藤沢のチオクタンWの指導価格については藤沢薬品の出席を求めて話合いをした結果、九州と山口以東との指導価格の格差が原因であるので、指導価格を統一した上その価格維持に努力されるよう小売側より強く要望した。

 筑豊地区=大体変化ない。

 筑後地区=久留米の辻薬局が配布したビラ(正月三社詣り招待)について報告されたが、この問題は商組調整規程に違反すると思われるので、来る27日開催される県商組理事会で検討することとなり、大牟田の筒井薬局については卸屋より複雑な内容と地元組合の在り方などにつき報告並に要望があって、五時散会した。

 福岡市薬剤師会 理事部会長会 歯薬協定処方実施

 福岡市薬剤師会では理事、部会長会を1月17日2時より県薬会館で開催した。先で友納会長は、昨年来歯薬協定処方について、市薬側小委員会並に歯医側委員会などで、慎重に処方例を検討した結果、処方せん用紙を作成することになった経緯について説明し、今後部会毎に、歯医側との懇談について、次のような事を注意するよう要望した

 1、今回の処方例は、従来よりのものに種々のデーターなどを参考として歯、薬共同で作成したもので、市歯医会より各会員には通知が行われている筈で、今後は部会、或は個々に歯科医師と接渉されたい。
2、処方せん印刷代は保険対策費の残余を当てるので、会員には無料配布する。
3、部会において歯医側と懇談会など催す場合は、歯医一名につき千円を保険対策費より補助する。
4、諸般の情勢より、今後は保険調剤にウェートをかくべきであるので、出来るだけ保険薬局の指定を受け、受け入れ態勢を整備することとする。

 次に会費の件では、一部の過年度未収会費について種々意見が出されたが、その処置については決定を保留した。それより山手福岡地区安定協委員より、福岡市における業界情況などの報告があり、次いで四島県薬会長より其の後の中央情勢について聴取し、閉会となった。

 支部別保険調剤調査票 昭和40年12月分 福岡県薬剤師会

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