通 史 昭和40年(1965) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和40年(1965) 6月10日号

 東京高裁決定で 医療費二本立混乱消減 全国食料など四健保組合も新点数で

 去る4月22日の東京地裁決定で、全国食料など四健保組合が先きに提訴した@中央医療協の答申がない神田厚相の職権告示は違法であるA支払い側が本訴で勝つてもそれ迄に新料金で払ってしまつた分を返して貰うことは実際上むつかしい…と云う四組合の主張を全国的に認め、従って四組合については5月1日から旧料金扱いとなったために医療費は新旧二本建となって種々混乱を来していたが、東京地裁決定に対し厚相が即時抗告をなし、これが東京高裁により5月31日認められ、その決定では前記@の職権告示の有効、無効についての判断は本訴に譲って触れずAについての四組合の主張を却下した。その結果四組合も新料金となり新旧の二本建医療費の変則状態は解消されたわけである。

 厚生省は高裁決定により
 @裁決定は消滅したものと見なす、従って5月1日から今迄旧料金で受診した四組合の患者は新料金との差額を払うべきだ。
 A療機関に対しては四組合の五月分医療費は全て新料金で支払基金に請求すべきである。
 B保険診療を拒否し全額現金で徴収したケース(厚生省調べで約三六〇件)は新料金による保険診療に直し、取り過ぎ分は患者に返すべきである、との処理方針で5月31日保険局長通達を各都道府県に送った。

 新厚生大臣に 鈴木善幸氏 新厚生事務事官 牛丸義留氏

 回の佐藤内閣改造で新厚生大臣に鈴木善幸氏が就任した。又その前日大山次官の後任として牛丸義留氏が厚生事務次官に就任した。鈴木厚相は厚生行政には全くの素人でありこれが却って混乱している今日の医療費問題など解決には都合がよいとして関係者には期待されている。又牛丸次官は佐賀県出身であるが、前薬務局長として敏腕を振った人で既に定評のある人である、薬務行政には特に理解の深い人である。

 大牟田・久留米 薬学集談会 並大牟田地区勤務 薬剤師会結成式

 予て計画中であつた「大牟田地区勤務薬剤師会」結成は発起人三井三池病院田中薬局長(大牟田薬剤師会副会長)同宮本副薬局長(同会理事)及び市保健所築地公衆衛生課長の三氏、その他有志の尽力により発会式を、同時に「薬学集談会」を5月16日(日)午前9時30分〜午後5時、大牟田市延命会館に於て田辺製薬福岡支店の後援で開催した、就ては筑後地区全勤務者(薬剤師会員外を含む)に対しても集談会出席方を案内したが三〇名の出席があり、地元大牟田地区の出席者三五名計六五名の出席者を得て左記により盛大に開会した。

 ▽研究発表
 (1)水道に厄介な生物=大牟田、三井三池病院(水質担当)島村昌明氏
 (2)薬品管理について=大牟田、三井三池病院局長田中新太郎氏
 (3)媒煙の話(公害)=大牟田、保健所公衆衛生課長築地提太氏
 (4)薬価の検討=久留米、久留米医大病院高島正親氏
 (5)注射薬の配合変化について=久留米、国立病院大森孝吉氏
 (6)自働分包機の比較及びエレクト糊剤=久留米、保険病院平川武彦氏

 ▽講演「社会保険の運営と機構について」=大牟田薬剤師会長中村里実氏

 ▽特別講演「病院薬局の合理化、能率化と機械化について」=九大病院薬剤部長(県薬副会長)堀岡正義氏

 ▽学術映画「蛋白質とアミノ酸」=田辺製薬提供
 なお、中村里実会長は講演時間の半分をさいて剤界の時局対策について述べた。

 福岡地区薬業協同組合 同医薬品小売商業組合 理事長に須原前理事長再任

 福岡地区薬業協同組合(並に同医薬品小売商業組合)第15回通常総会が5月28日午後県薬会館に於て開催された。

 大隈氏司会して開会、先づ須原理事長の挨拶に次いで来賓大庭県薬務課長補佐(課長代理)は、昨年度も安定協については懸命にやつたつもりだったが一向に成果はあがらず、そこに突如としてアンプル薬禍問題が起り厚生省ではそとにも出られない状態。その後アンプルかぜ薬は禁止となり、その他のかぜ薬も配合は安全第一主義となって昔の売薬位に落された。小売業としては薬禍問題後は医薬品の売れ行きは激減し薬業界は疲弊の容相を呈している様に感ずる。

 本市小売業者は二五〇以上あると思うが本日の僅かな出席は誠に心細い限りである。小売を助ける者は業者自身ではないだろうか。自分達の事として組合の強化を図るべきではないだろうか。考え様によればこの状態は何等団結の必要もなく至極小売業は安泰であるのかとも考えられる。茲に言いたいことを言って挨拶とします。

 と述べ、次に四島県薬会長起って、僅かに組合員の約一割の出席者かと思われるが、あとの九割は何を考えて居られるか、組合はあってもなくてもよい…そっぽを向いているのだとも考えざるを得ないが、然しないでよいと思っている人はそんなに沢山はない筈だとなれば、組合の在り方もその原因の一つかとも考えられる様だ。組合員が互に営業上歩調を合せることを考えず、手段を選ばず乱売をする。ビラを撒くと云うことは事実上組合などの恩典は受けていながら他に迷惑をかけている事であり、誠に卑劣きわまることであろう。

 アンプル薬禍以来業界の力は後退した様である、組合は能く反省して茲に力を結集する必要がある。個々の力は弱い。有名無実化している組合に活を入れ団結の雰囲気を作り、政治的にも力を結集して組合の強化を図るべきである。

 と激励の辞により挨拶となし、次いで白木県薬商組理事長は全国商組連の現況並に将来に於ける運用について述べられ、それより議長選出に移り、高倉等氏を推して議事に入った。

 議長は議事録署名人に馬場、柴田の両氏を指名し、報告事項として39年度会務並に事業報告、議案として39年度決算認定、40年度事業計画決定、40年度収支予算決定について審議、何れも異議なく原案通り可決した、次に役員選挙(任期満了)については選考委員制により左記理事一〇名、監事二名を選出した、なお、その後理事互選により正副理事長、会計、庶務係をも次の様に決定した。
 ▽理事長 須原勇助
 ▽副理事長 斉田和夫、吉松正記
 ▽理事 大隈次郎、戸田連城、篠崎正十郎(庶務)、山口芳包、山手陽一(会計)、高崎智臣、国武一人
 ▽監事 工藤益夫、高倉等
 それより会員の意見発表があって閉会となった。

 挾子

 ▼今回の内閣改造で国務大臣になった上原正吉と云う人は大正製薬の社長だそうな。常に商売は戦いだと称し「勝つことだけが善である」と言っているそうだ。これは一流日刊紙(六月三日付朝日夕刊)紙上の記事であるが、こんな人が大臣になって国民のためにプラスになるだろうか。而も薬業界にいわゆる定評のある製薬会社のワンマン社長だそうだ。こんな内閣を見るとイヤになる。

 ▼福岡地区薬商組総会の出席者が組合員の僅か約一割であつた由‐無論委任状は別にあっただろうが‐一体何処に原因があるのだろう、県、地区、商組の幹部は真剣に反省し真面目に考慮せねばならぬ問題であろう。

九州薬事新報 昭和40年(1965) 6月20日号

 新薬務局長に 坂本貞一郎氏 熊崎氏保険局長に

 鈴木新厚相は省内局長級の異動をなし6月8日付で、欠員だった社会保険庁長官に山本正慥氏(年金局長)を、保険局長に熊崎正夫氏(薬務局長)を、薬務局長に坂本貞一郎氏(社会保険庁医療保険部長)発令した。坂本氏は東大法科卒後厚生畑に育った人、鹿児島県出身、45才。

 八女薬協組 通常総会 理事長中村氏重任

 八女地区医薬品商業協同組合通常総会が5月28日八女酒販会館に於て開催され組合員四二名中三八名出席、江口守氏を議長に推し議事に入った。

 報告事項として39年度業務並に事業報告を中村理事長及び桑野専務理事から詳細な説明がなされ、次いで議案として39年度収支決算認定(堤理事説明)、41年度賦課金決定並に40年度収支予算案決定、40年度事業計画案(中村理事長は県薬商組及び薬業安定協に積極的に協力し、会員の資質の向上に努めると説明)について審議、異議なくこれを承認決定した。次いで役員改選に移り、現役員全部の重任を全員これを認めて決定し、理事互選によって理事長外を次の通り決定した。
 ▽理事長 中村若市
 ▽専務理事 桑野郁夫
 ▽理事 堤虎喜(会計)、渡辺弥清、安富助男、江口守
 ▽監事 宮原繁夫、坂本訓啓
 なお、同組合では来る参議院選に於ては日薬会長高野一夫氏を推薦(全国区)することを決めた。

 株式会社川口屋 新社屋竣工 落成記念式典

 福岡の医薬品問屋株式会社川口屋では昨年来「福岡市薬院原の町二三番地」に新社屋建設中であったが、この程竣工したので6月13日(日)午前9時半から新社屋で落成記念式典を挙行し引続き同所に於て披露パーテイーが開催される。

 なお、6月21日新社屋え移転営業開始される予定になっている、新社屋の電話番号は「代表○75四五六一・五八七三番」である。新社屋落成記念前夜祭として6月12日、大谷光紹東本願寺新御門跡の特別講演会が左記により催される。

 演題 日本短波放送連続講演に関連して
 日時 6月12日(土)午後6時より
 場所 天神ビル11階ホール

 福岡大学薬学部 薬剤師国試 合格率九七%

 去る四月一〜二日実施された第28回薬剤師国家試験合格者の発表がこの程行われたが、受験者数は三、四八三名で合格者は三、二五九名、合格率九三、五七%となり極めて高率であった。九州福岡の福岡大学薬学部では本年は第二回生九七名が受験して九四名が合格、合格率は全国平均率を上廻り九七%である。昨年に引続き好成績であったので関係者は非常に喜んでいる。

 なお、福大薬学部の卒業生中の就職希望者はそれぞれ就職先も既に決まり、又大学院進学希望者七名(九大三名、熊大二名、長大一名徳島大一名)もそれぞれ希望通りに合格した。

 支部別保険調剤調査票 昭和40年4月分 福岡県薬剤師会

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九州薬事新報 昭和40年(1965) 6月30日号

 福岡県薬事協会 本年度定期総会 出席者全員献血奉仕実行

 福岡県薬事協会では40年度定期総会を6月24日午前10時から福岡市、福岡商工会議所ホールに於て開催した。

 高島理事司会して開会、先づ深田会長は、本日は多数の出席を見て非常に力強く感じている。今年の事業の一つとして本日は計画通り出席全会員によって献血奉仕をなしたいと思っている。又業界諸事重大な折、高野日薬会長が出馬されているので、吾々の立場を充分考慮して直ちに充分な協力をお願い申したい。

 と挨拶、次いで来賓の祝辞に移り先づ県知事祝辞を尾崎県薬務課長が代読し、牛尾、三条の両県議会議員の祝辞、次に四島県薬会長は、従来薬剤師と薬種商間にはままトラブルもあつたが、これは相互の誤解に基くものが多かつた。大体販売の面に於ては99%迄同じであり、同じ小売の立場から利害得失も亦同じである。共々渾然一体となってやるべきだと私は既に10年以前から主張している。

 今日県薬の立場としても業界安定を重点事業の一つとしているが、幸い高野日薬会長が薬業界の代表として出馬されたので小売薬業者全体の問題として今迄の誤解を解き、これを機会に両者は今後一体となって力強く進みたいと思っている。高野氏を失うことは十年後退以上のものがある事は皆さんも充分ご承知のことであり、自分のこととして是非やつて頂きたい。今日医薬品業界は嵐の中に立つていると言つても過言ではない。世論にまけず吾々は一緒になって手を携さえて突進するには尤もよいチヤンスだと考えている。今後益々、共々に吾々の利益を守りぬくことに努力したい。

 と挨拶して祝辞にかえ、次に白木県薬商組理事長は「商組は現在適正配置と安定要綱とによって推進しているが、未だ充分でない。依って新たに特殊指定によって乱売の底辺を切ってすて様と研究している」と挨拶があり、次いで佐賀県の村井県薬業士会長の祝辞、祝電披露があつた。

 茲で臨席の県薬務課長補佐大庭技師から当日行われる「献血」に関し次の様な話しがあつた。本県では昨年中採血が二六、〇〇〇?であつたが、その給与は売血延9万人で一ヵ月に一回売れば八千人、二六トンの血液を八千人でまかなっていることになる。売血者の内半分しか合格者はない。副作用である肝炎などは売血は20%の発生率である。即ち売血は汚ないものとの折がみがついており、これに反し献血は確かなものとされている。

 吾々は進んで献血し一旦自分に必要な場合には優先的に献血の血を廻して貰うことができ、その意味に於ても自ら進んで献血すべきではあるまいか。先づ自分で献血奉仕し然る後、今後他人に献血の必要性について啓蒙して頂きたい。

 次いで深田会長は再び起って次の様な考えを述べた。献血については昨年佐賀県の薬業士団体に先鞭をつけられたが、本年は数倍の会員を擁する本会に於て本日これを実行することができたことは誠に悦こばしいことである。今日業界に於ては吾々が当面している問題は多々あるが、重要なものが茲に二つあ

 その一つはスーパーなどの乱売が吾々を圧迫するので、その対策として薬業安定協議会が中央、地方にでき種々努力を重ねた結果、今日略ぼ安定はしたが、先に尻ヶ崎問題が起って公取委に提訴され一時腰くだけの状態を来し、その対策として現在医薬品の特殊指定が研究されている。然し、自由経済中、商組調整規程や特殊指定などは半ば統制的なものであるので、慎重にじっくりと研究し、折衝しなければならぬと思っている。

 その二は薬事法の問題、適配で地域的問題は一応かたづいたが残った問題は、
 @継者の問題である。残念ながら私共薬種商販売業は資格ではない。それで店舗に二人以上の薬種商の存在を認めて貰いたいこと、
 A移転時の試験を撤廃して貰いたいこと、
 B年間に一回以上の定期的な試験をして貰いたいこと、

 現在これ等の推進は中央でやってはいる。薬種商が法的に資格であればこの三つの問題は自然解決であるが、資格化することは吾々の力が足りないので仲々実現しない。医薬分業でさえ七十余年かかり完全分業は未だしである。これ等のことは誠に困難事であるので差し当り当局の行政指導又は運営で(条例等)やつて頂く様努力を続けているのである。

 次に吉松副会長から本月八、九、十、の三日間札幌市に於て開催の40年度第18回全日本薬種商協会大会出席報告がなされ(本紙別掲記事参照)議事に移った。先づ議長選出では司会者一任となって松尾副会長が氏名され、松尾氏議長席につき、会員五二三名中三九五名が出席、議事録署名人に林田、縄田の両氏を指名して直ちに左記の議事に入った。

 ▽議案
 第一号 昭和39年度事業報告(会長説明)
 第二号 同年度決算報告
 第三号 監査報告(島添監事報告)
 第一〜三号議案何れも異議なく承認。
 第四号 昭和40年度事業計画案(中村理事説明)
 第五号 同年度予算案(陣内理事説明)
 四、五号議案審議の結果異議なく可決々定した。

 以上にて議事を終え講習会に移り、先づ映画NHK「献血」を一同観映して献血などについて一層思いを深くし決意を新たにした。それより左記大庭技師の「毒劇物取締法改正の要点」と題する講義を一同は熱心に聴講したが、大庭技師は引続き左記の通り業界の医薬品販売上の違反についての現況を語り大いに誠しむる処があった。

 麻薬取締の強化のため入手困難となり、且つ覚醒剤販売の禁止などのため暴力団の収入減を来したが、これ等暴力団などの収入源として中毒者を増加させることは最も必要なことであるので、次には睡眠薬遊びが流行することになった。

 警察の取締も自然これ等に向けられ、現在三日に一度位は薬局薬店に於て睡眠薬が不法に販売されている事実の報告が薬務課に来ている。睡眠薬遊びが如何なるものであるか、不法な販売がこれ等の非行を如何に助長するかについては百も承知の業者が、利益のためとはいえ敢て不法販売をなすことは吾々としては了解に苦しむところである。斯るやからは速かに廃業して頂きたいと思っている。

 薬業界は現在あらゆる面に於て黒星ばかり続けている様である。今後睡眠薬が又々問題にされる様なことがあれば、愈々業界を支持して呉れる人は皆無となることを覚悟せねばならぬと思う。と述べ講義を終えた。

 それより会員の意見発表があって何時もながら出席のよい盛大且つ真面目な本年度の総会を終了した。 なお当日は出席者の全部が数班にわかれ日赤福岡支部(病院)に於て医師の検診を受け「献血奉仕」を行ったことは人間愛の発露として大書すべき事柄であり、薬事協会の美挙と云うべきである。