通 史 昭和40年(1965) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和40年(1965) 5月10日号

 佐賀県川上峡で 九州山口各県薬会長会 日本薬学大会報告と高野選に就て

 九州山口各県薬会長会議を5月5日午後3時より大会次回開催地である佐賀県、川上峡龍登園に於て開催した、出席者は瓜生田(大分県)四島(福岡県)高取(長崎県)戸田(熊本県)池田(鹿児島県)木元、武田、久保、その他(佐賀県)の諸氏であった。

 先づ瓜生田九州山口薬剤師会長の挨拶があって四島福岡県薬会長は、去月福岡に於て開催された第20回日本薬学大会の経過報告をなし、その大会については薬剤師側として地元県薬だけでなく、九州山口各県薬が一体となってバツクアツプし、従来開局部会、女子薬部会共一日だけであったものを今回は二日間継続、参加会員も六五〇名を越え、又初めての試みであった開局第二部も二〇〇名を超える盛況さであった。

 大会誌も五〇〇部〜一、〇〇〇部の不足であつたと推定され、予想外の大成功であったと云われている。これ全く、薬剤師側としては九州山口各県薬のご協力が大なる陰の力となっていることを信ずるものである。と謝意を述べ、次いで大会(薬剤師側)の収支決算報告について一同異議なくこれを承認、次回の九州山口薬学大会開催地である佐賀県にこれを申送った。

 次に高野選について種々懇談し、引続き@保険請求、A歯科協定処方、Bノーシンの小売との再販契約等に関する各県の統一態度について話合った。

 なお、日薬主催の5月12日東京に於て開催の全国各県薬会長会議のあと、九州山口各県会長会を開いて当面の問題について尚一層の詳細協議をなすことを決めた。それより同所に於て懇談の会を催し高野選などの進捗情況について懇談した。

 福岡県薬でも四健保組調剤は 五月一日以降自由調剤と決定

 去月22日東京地方裁判所は安田、保土ヶ谷化学、全国食糧、三井の四健康保険組合より申立てていた緊急是正に関する厚相の職権告示無効について裁判確定迄の間、告示の効力を停止することを決定した。

 この決定については厚生省、支払側医療担当者側それぞれ異なった意見を持っているが、日本医師会は四組合に関する医療は保険医療として取扱いにくいので、自由診療として処理することに決定した。日本薬剤師会に於ても医師会の措置に同調することが適当と認めているので、県下に於ける該当者は僅少と思われるが、四組合に関する調剤を行ったときは自由調剤として五月一日以降当分の間全額徴収することとし、福岡県薬では各支部長に通報した。なお、調剤手数料は内用薬一日一剤分三〇円を基準とすべきである。

 化学関連六支部 合同福岡大会 7月17日九大工学部

 日本化学会九州支部、日本薬学会九州支部、有機合成化学協会九州山口支部、日本農芸化学会西日本支部、日本分析化学会九州支部、電気化学協会九州支部、共催の化学関連六支部合同福岡大会は7月17日(土)九大工学部防音講義室に於て開催される。

 講演申込締切は5月30日、申込先は九大工学部応用化学教室内「日本化学会九州支部事務局」、要旨締切は6月15日(必着のこと)尚要旨(五〇〇〜一、〇〇〇字)の作成要領は講演申込者に知らせる。

 大牟田薬剤師会 二つの会合 三井研究会 薬学集談会

 ▼大牟田市所在の三井三池鉱業所病院主催、山之内製薬福岡支店後援、大牟田市薬剤師会協賛の同病院所属の医師、薬剤師の研究会が4月22日同市築町富士ビルに於て開催された。出席者医師四二名・薬剤師一七名(同市薬会員)の五九名であり内容は次の通りである。

 @学術映画、分裂症に抗して(山之内製薬提供)
 A藤瀬三井病院長挨拶
 B中村薬剤師会長挨拶並に堀岡講師紹介
 C健康保険問題について=前三井三池健康保険組合副理事長田中寛吾氏
 D医薬を繞る諸問題(医薬品の副作用その他)=福岡県薬副会長、九大病院薬剤部長、薬学博士堀岡正義氏
 E堀岡博士の講演は約二時間に亘り医師薬剤師にとつて非常に有益なものであつたが、出席者も亦熱心に聴講した。

 ▼大牟田薬剤師会と同薬業組合との共催、第一製薬福岡支店の後援で「薬学集談会」を4月27日2時から延命会館で開催したが、開局薬剤師及び薬種商(12名)の約四〇名が出席して真面目な熱意ある集談会合であつた、その内容次の通り

 @学術映画、蛋白が足りない(第一製薬提供)  A中村薬剤師会長挨拶(特に時局対策並に業界現況解説について)
 Bアンプル薬禍の起源と今後の姿勢と対策について=西元寺薬業組合理事長
 Cマミアンの治療経験について=久留米大学木村内科西本講師
 終了後同所に於て和かな懇親会が催された。

 福岡県薬商組 理事支部長会 総代会開会準備

 福岡県医薬品小売商業組合では5月14日開会の総代会準備のため1日正午より県薬会館に於て理事会並に支部長会を開催した。

 先づ理事会を正午から開き新年度予算を編成するについて、脱退届を出している支部に対する措置を如何様に取扱うかについて協議したが、加入者が業者の三分の二に達しなくなれば商組の生命である調整事業の実施もできなくなるので、組合としては新年度も尚組合強化のためこの様な支部の説得に一層努力することを決めた。それより支部長会に移った。

 支部長会

 総代会開会準備として先づ39年度事業並に決算報告及び40年度事業計画並に予算案について検討し、次に白木理事長から飯塚橋薬局問題のその後の経過及び中央安定協についての報告がなされたあと、医薬品に関する特殊指定について種々検討々議した。

 これ等については各支部より活?な意見や質疑が出されたが、まだまだ色々と問題となる点はあるにせよ、大体に於て現段階の乱売防止よりも一歩前進する意味で、又医薬品を特別立法に持って行く一段階として推進する必要ありとの意見の一致を見た。

 これ等に関連して是非共経営の実態調査の必要があるので、既に実態調査表が福岡県には六〇部が日薬より送付し来ている(二〇分の一の割)ので、支部長に於て最も確実と思われる業者を選定して確実な記入をなす様協力を願いたい。勿論支部長自身も結構である。

九州薬事新報 昭和40年(1965) 5月20日号

 第20回福岡市薬定時総会 還暦会員神前式典挙行

 福岡市薬剤師会第20回定時総会が5月8日午後、市学薬総会に引続き三共福岡支店会議室で開会された。 白水理事司会して先づ内田副会長の開会の辞、友納会長の挨拶、来賓四島県薬会長並に尾崎県薬務課長、及び白木県薬商組理事長の祝辞があって、優良部会(春吉A、馬出、当仁、千代吉塚、浜、南、箱崎、西新、簣子)を表彰し、次いで議事に移った。

 友納会長会則によって議長席につき「会員数三三八名中五八名出席、委任状一二一計一七九名。依って本会は成立」した旨を宣し直に左記議事に入った。

 ▽報告事項
 報告第一号 昭和39年度会務並事業報告
 内田副会長説明、異議なく承認
 報告第二号 第19回福岡県薬剤師会代議員会報告
 竹内副会長報告、承認

 ▽議案
 議案第一号 昭和39年度歳入歳出決算認定の件
 副島理事説明、二、三質疑の後異議なく認定
 議案第二号 昭和40年度事業計画決定の件
 大隈副会長説明、異議なく原案通り決定
 議案第三号 昭和40年度会費決定の件
 議案第四号 昭和40年度歳入歳出予算決定の件

 三、四号一括上程、副島理事説明、「会費にABCDEの五種がある様だがこれを決定する基準があるか」との質問に対し、「理事部会長会で相談の上決定しており、特別な成文的な基準はない。依って特に不当だと考えられる向はその旨申出られたい」との答があった。これについて種々意見も出たが、結局A級の方の了承を得ればよい筈であるので、この点について善処することになり、二案共異議なく決定した。

 これにて議事を終えたが、その間に恒例の還暦祝の式を櫛田神社に於て行い、還暦に相当する左記五氏には会場に於て記念品が贈呈された。

 池永範義、竹内克己、馬場勘二、宇野益夫、菊池正義、小須賀正義
 友納会長の閉会の辞により五時総会を終了した。

 福岡市学薬会 第10回定時総会

 福岡市学校薬剤師会第10回定時総会は5月8日11時より三共福岡支店会議室で開会、矢野会長挨拶に次いで来賓県教育庁学校保健課江藤課長は、少くとも月二回位は登校して校内を一巡し児童との接触並びに校長、養護教諭との懇談の機会を持って頂きたい。手当の件については未だ意に満たない点があって申し訳ないと思っている。

 との謙虚な挨拶があり、次に友納県学薬会長は「文部省主催の九州、山口地区新基準の解説会は今秋熊本市で開催の予定。また九州山口学校保健研究協議大会は8月19日〜21の三日間福岡市市民会館で開催に決定しているので参加を望む」との挨拶があり、それより議事に移った。

 昭和39年度会務並に事業及び決算報告があって何れも承認、40年度事業計画案も異議なく決定し、40年度会費ついては種々意見も出たが、小中校一名につき三〇〇〇円、県立高校一校につき六〇〇〇円程度が妥当だと意見が多く、然し決定迄には至らなかった。

九州薬事新報 昭和40年(1965) 5月30日号

 高野一夫日薬会長を迎え 薬業界の当面せる諸問題について
 福岡県薬業大講演会開催

 福岡県薬業界ではアンプル薬禍問題以来昏迷を続けている業界に、活気と活力を取り戻すべく努力しているが、幸い現業界の表裏に最も精通されている、薬業政界代表者である高野一夫日薬会を迎え、今後業界の進むべき道、又心がまえなどについて新らしく聴講することになり、五月十五日午後五時から福岡市天神ビルホールに於て三百余名のメーカー、卸、小売三者よりの出席者を得て講演会が開催された。

 開会先づ業界を代表して四島県薬会長は「現在の業界は四面楚歌、激しい風当りの中に立っている、アンプル薬禍問題以来薬業界に対する不信が巷間色々と云われているが、吾々はこれに如何に対処したら良いか、その方面の第一にん者である高野日薬会長を迎える機会を得たので色々と伺がいたい。同氏は業界代表として只一人の国会議員で業界は同氏の政治力におんぶしている現状であり、昏迷状態を続けている業界の覚醒と発展を期するためには、業界打って一丸となり高野氏後援の実を挙げねばならない。

 若し仮りにも政治基盤を失う事があれば業界の今日迄の基礎は全て崩壊し十年以上の後退はまぬがれず、業界唯一の灯を消すことになろう」と挨拶し、左記高野氏の講演に移った。

 高野会長起って「業界の皆さんは内部的の事はご存じであるから、国会から眺めた薬業界について述べたい」と先づ挨拶し、次いで次の様な講演がなされた。

 従来ともすれば製薬、卸、小売三者の考え方がくい違っていたが、三者の内の一つに問題が起きても国会では薬業界の問題として扱かわれる。従来国会に於ては薬業に関する認識は非常にうすかったが、近来薬業に関する種々な法律改正、覚せい剤や睡眠薬の問題等により次第に認識は高まって来たが、昨年頃より頓に批判の対象にされる様になり、今日程睨まれたことはかつてない。

 衆参両院の社会労働委員会でも亦非常に批判されたが、覚醒剤、催眠薬遊びなどで男女非行青年が社会問題となって採り上げられた。睡眠薬など要指示薬となり而も医師の処方箋により販売される様法律改正をなすべきだとの決議もなされたが、或種のものに限り劇薬扱かいとする事にして医師の処方箋云々と云うことは中止した。若しこれをしなかったならば決議通り法は改正されたであろう。

 このことは去る23年法改正の時(薬系慶松局長の時)睡眠薬等は医師処方箋により販売と云うことになったが、日本の実情では(医薬兼業の日本では医師が薬を売ることになる)不適当だとの理由でサムス准将にお百度を踏んで説得し漸く医師の指示と云うことにした(電話などでもよいとの広範囲なもの)。かかる経緯もあって業者には重要な問題である。諸外国では全部医師の処方箋となっている。結局薬局だけしか売れないことである。

 又保険財政の赤字については赤字の原因が投薬と注射薬の消費量の激増のためであり、患者が希望するのか医師が使い過ぎるのか、これについて対策を考えない限り赤字は解消しない。これが対策として患者の一部負担となって現われたのである。恐らくこれが実現すれば薬の使用は三分の一に減るであろう。私は、これ全く角をためて牛を殺すことになり、保険の精神に逆行するものとして反対している。これは与党の責任に於てつぶす考えである。

 一部負担の問題は単に保険者と被保険者の問題だけではなくその影響する処は大で、メーカー、卸、小売に関係深き問題である。国会議員間に「薬を多くやり過ぎる」と同時に「薬は余りにも高か過ぎる」との批判もあったが、その時、某週間誌に某メーカー社長の言として「薬は儲って笑が止まらない」との記事が出たので、高野君の言うのとは全々違うではないかとせめられ全く信用失墜してしまった。

 軈てアンプルかぜ薬問題が起った。先にペニシリン禍問題が起った際には、社会的問題迄には発展しなかったが、今回だけこんなに迄問題にされたか、悪条件の積み重ね積み重ねの上に不幸にして突発したからである(略)。今度だけなぜ政治問題化したかを静かに考えねばならない。これについて、色々問題はあったが結局三者が進んで自粛したことは、自ら非常に損害を受けたとはいえ、結果的には非常に良かったと考える。

 厚生省が許可したのであるから其点強く押し通せば通せないことはなかったのであるが、薬は例え何万人が助かっても一人の事故死も許されないと云うことである。この問題では私は毎日国会でたたかれ非常に苦労したが、今度の問題は不当なる不信であると思っている(略)。

 先に或種の医薬品の一括購入問題が起ったが、これは予算の面で大蔵省がすすめているのである。然し現実の問題としては其処に非常な無駄がある。日本の業界ではメーカー、卸、小売の三者が存在する事は尤も適当である実情にあるから卸も、ぬけがけをせぬ様にと、私は考えている。

 メーカーが一つの優秀な製品に多額な研究費と努力を重ねてこれを製造してもその薬品をマネて容易に製造し而もその研究費に相当する巨額の経費を広告宣伝費に使用すればマネた方が販売の面で勝つに決っている。日本のパテントは製造過程に於てであるので、この様な道義上の不正事ができるのである。依つて薬事法の改正と同時に特許法も亦改正しなければならない。フランスなどは皆そうである。この事については各社それぞれ特色ある製品を持つことこそ最も良いことだと私は考えているが、これはメーカーの意見を聞いた上でやりたいと思っている。

 憲法違反と戦い一昨年漸く適正配置が実現したが、この立法の研究に関して私は医学博士号をとったために関係者は私の言に耳を傾けて呉れる様になったのである(略)。

 四年前に三師会は手を握り今は国会の斗争も三師の立場に於てやっている。この考方は私として間違っていなかったと考えている。今日の強い結びつきは今後必ずや薬業界にプラスになると考えている。三者にとつて決してマイナスとならないと確信している。それぞれの立場で能く考えて頂きたい。

 色々業界には問題が沢山あるが、薬業界程むつかしい業界は他にないと考える。誰がこんなむつかしい業界のために種々の問題と採り組んで呉れるであろうか。僅か薬学科を部に昇格させるのにも二年も三年もかかる様な実情の中で私は国会議員の立場からこれ等に採っ組んでいる。今後とも皆さんの絶大なご協力とご援助をお願いする。

 と結んで降壇、約一時間半余に亘ってこの高野氏の講演が終え、次に四島県薬会長は「高野会長の熱演の中に何が含まれているか吾々は深く深くこれを玩味せねばならぬ。高野氏は今後六年で薬業界の総仕上げをしたいと念願されている。吾々の手で吾々業界の政治力を、今回は決定的にしたい」と述べて七時感銘深き講演会は閉会となった。