通 史 昭和39年(1964) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和39年(1964) 12月10日号

 矢野・河野学薬師 表彰さる

 第12回福岡県公衆衛生大会が12月10日福岡市天神町、県農協会館で盛大に行なわれたが、本年度の薬系として福岡市学校薬剤師会長矢野憲太郎氏が知事賞を、大牟田市学校薬剤師河野広登氏が協会長賞を受賞、同会に於て表彰された。

 福岡の上野薬局 問題の成行き 業界は監視す

 福岡地区に於ける上野薬局(本店は竹下、支店は西新、高宮、井尻の三カ所)の本支店が一斉に約二百品目について売値を列記した(指導価格を下廻る品目もある)宣伝ビラを、当地各日刊紙に四回に亘って折込みをなした件が最近発生したので、地元福岡地区商組では時期的にも年末を控えての事とてこれを重視し、折角長崎の東映問題も一応解決した折から此様なケースが安定要綱実施中に見逃される様なことでもあれば、今日迄積重ねられたあらゆる努力で一応の安定を見ている業界が、一時に瓦解することを惧れ11月30日より連日商組部会長会を開き、上野氏と折衝している様であるが、その成行きが注目されている。

 最近各地で大型店の此の様なケースが発生している様であるが、要綱実施以来年余、漸く指導価格により一般消費者も、必ずしも大型店でなくとも価格が一定して来たことにより最寄りの薬局薬店で、安心して購入する様になって来たので、年末を控え多数の店員を抱えた大型店にあせりの色が漸く現われたと見るべきではないだろうか。其の後上野氏は非を認め自ら具体的に遺憾の意を表し解決した模様である。

九州薬事新報 昭和39年(1964) 12月20日号

 第2回 九州山口各県薬 実務者協議会 社保問題を主として

 九州山口各県第二回実務者協議会が12月12日午後一時から佐賀県薬事務所別室に於て開催され、出席者は次の通りである。

 福岡県=工藤専務理事、中村保険担当理事▽長崎県=酒井透▽熊本県=下田県薬副会長▽大分県=欠▽宮崎県=矢田部理事▽鹿児島県=池田保険担当理事▽山口県=大林事務長▽佐賀県=木元県薬副会長、川内県協・商組理事長外支部長など多数

 先づ木元副会長挨拶、大体今回は社会保険関係問題を主として協議する考えであったが、これに関連して色々問題が現われて来るので、次の様な議題によって進めることにした。

 一、社会保険業務に就て
 (1)講習会で各県を廻って感じたこと(中村福岡県薬社保担当理事)

 全般的に見て予期していたよりも遅れていると感じた、時間の許す限り各県の担当理事と懇談したが欠席の人もあり又担当される方がない処が多かった、早急に設定されたいと思った。県によって割合に進んでいる処とそうでない処とがある。従って指定(原爆指定等)の取り方等も進んでいない処が多い。

 処方箋の多いのも甲表(大病院)のが主であって、これは危険性が多く不安であり、今後乙表について開拓することを志して貰いたいと感じた。歯科の工作も未だ充分進んでいない処が多いので先づこれより始められたい。最初困難でも着手すれば何%かの成果は必ず現れるので、県薬も共々力を入れて開拓すべきである。

 社保担当理事等の設置なく請求などもバラバラに、個々に提出されている処もあるが、資料の面で困るので県薬で纏め、それぞれに仕分けして提出する様努力されたい。この事は保険事務としては尤も大事なことであり必要なことである。

 (2)佐賀県に於ける監督官庁の保険薬局指導監査状況について(同県池田担当理事)

 本年2月と10月の二回、指導監査があった。二月は二薬局でなされたが何等問題はなく、又10月は某医師の処方箋を取扱った三薬局が監査を受けた。県薬としては医師と薬局との繋がりの統計をとつており、処方箋が或特定の薬局にのみ行かぬ様、同時に全般的に散配される様指導している。処が、或二、三薬局に日雇労務者に関する処方箋が相当多数、又相当の金額に昇ったので今回の指導監査となつたものである。

 監査結果は大体に於て

 @ 特定医院と特定薬局の繋がること A 処方内容に予防的なものが多く又不明確と思われる処方箋についても其内容を糺すことなく安易に処方し、調剤していること B 医師が某事業所で纏めて処方箋を作成し、纏めて調剤を受けて配つた事実も発見され、不特定な多数な調剤行為を重視している C 処方箋所定記載事項の記載もれが多く、特に通用期間や半額負担などの記載に不備が多い事等であった。

 今回指導監査を受けた薬局は兼ねてから薬局業務に熱心な人達であり県薬としてもできるだけ斡旋の労をとった。幸い薬剤師でない薬務課長であつたので却って非常に力を入れ体当りして貰うことができた。今回のことは保険財政が苦しいために乱診乱用を監視することになった結果現われて来たのである。最終的には薬局の善意により単に指導と云うことを監査当局は強調するに至った。

 今回の指導監査利用で、処方調剤の実態調査から現れた結果は、特定医薬品配合処方以外は唯労苦が多くして利益が非常に少ない事が判明した。若し薬局が処方調剤によって独立しようとすれば、少なくとも調剤料五〇円獲得が絶対必要だと考えるべきである。又使用頻度の高き医薬品は五〇品目位であり其資金は最低十一万円位であることも判明した。医師の繋がりは徐々に進むべきで急激に進めることは却って非常な混乱を自ら招くことになる虞れが充分考えられる。

 (3)保険請求方式(明細書が基金に届く迄の過程)について各県の報告

 福岡県=各支部単位に纏めて県薬に届ける(不備のものは返戻訂正)県薬では保険者別に仕分けして統計をとり、基金に提出しているので、統計は完全にとることができる、支部では担当者が五、六名の会員と共に集計している。
 熊本県=現在では県内全部の集計はできていないが明年は一括したいと考えている。
 長崎県=未だ非常に低調で何も具体的にやっていない、調剤の多い薬局では監査されたこともある。
 鹿児島県=長崎同様低調である、去る七月頃一回監査が行われた。
 宮崎県=一般に低調であるので県薬で取扱い事務を代行して手数料を徴収しているので会は月五、六千円の収入がある。
 佐賀県=大体福岡県と同様であるが、県薬会費と関連して手数料を徴収している。初め川内氏が熱心に指導したが現在は池田氏がそれを担当している。
 山口県=基金では個々にとの希望であるので、県薬としては今後纏めて提出するよう働きかけたい。

 (4)保険薬局のPRに就て

 佐賀県で薬種商が処方箋を集め特定薬局で調剤していた問題が嘗てあったので注意して中止させたが、一般大衆の内には保険薬局と他の薬局薬店の区別を知らない人が非常に多い。今後このことについては何等かの対策を考える必要がある、処方箋を発行する医師は青壮年医師で患者の多い医院の医師に多い傾向がある。斯様な医師の存在地区の薬局は特に薬局の標識は勿論「健保、国保処方箋調剤薬局−保険薬剤師名」の看板が必要であるとの経験談が述べられた。分業に理解ある医、歯医には保険薬局名簿を送ることも必要であろう。

 (5)斯他=

 @現在問題となっている医療報酬緊急是正について工藤氏から説明
 薬局に関係深い基本調剤料五点に関しては調剤基本料の根本的改正と云うことになるので今回は見送りとなる公算が強い、現在の手数料の是正が殆んど決っている九・五%の値上では問題にならぬので、少なくとも20円にせねばならぬと思う。
 A歯科医師会との協定処方は既に決定しているので近く日薬で冊子に作成して配布する。
 B国保の審査委員(薬剤師の)は日薬の調査によれば17都道府県で27人が出ている、九州では長崎と大分だけである。福岡県では目下運動中であるが、各県共出したいものである。
 C九州、山口本年度の薬学講習会の各県の出席率は佐賀65%、熊本20%、大分80%、宮崎93%山口35%、福岡25%、長崎20%、鹿児島30%、であり大体低調となって来た。
 D保険調剤の課税については全国的な問題として日薬で採上げて貰いたい、福岡としては既に二回日薬に要望している。
 以上にて大体協議を終了したが、次回開催は明年二月長崎に於てなし、長崎県薬に一任することになった。なお、本年12月末各県会費の収納状況、過年度未収等の資料を次回に持ちよることになった。

 福岡県薬商組 理事支部長会 広告基準作成決定

 福岡県医薬品小売商業組合では12月7日1時より理事会並に支部長会を県薬会館で開催した。

 先づ田川地区で問題となっていた保田保一氏に関する経過並に解決した旨が田川支部長松村氏から報告され、引続き中央並に九州ブロツク安定協議会についての報告(本誌前号記事参照)次いで最近、広告チラシ問題が各地で起っているので、此際県商組として一応の広告基準を作成する必要があるのではないかと一同に諮ったが、全員これに賛成、これの作成については各ブロツクより二名宛の委員を選出することになった。

 次に各ブロツクの状況報告に移ったが、各地区夫々安定要綱実施に非協力な分子はいるも、当該地区安定協で早期解決を図っている。然し一、二未だに解決をみないものもあるが、最近安定協及び商組の活発な動きにより全体としては次第に安定の方向に向かつているとの報告があった。次に会費納入は組織の強化に繋がるので之を強調、其情況について山手会計理事より説明、協力要望があって支部長会を終了した。

 第108回 福岡県薬剤師会 支部連絡協議会 日薬全体理事会出席報告

 福岡県薬剤師会では県薬会館で12月8日午前理事会を午後1時半から第一〇八回支部連絡協議会を開会した。先づ本月死亡の角田小倉支部長、草野大牟田副支部長の瞑福を祈って黙祷を捧げ会長挨拶後左記の議事に入った。

 (1)中央情勢について
 11月27日開会の日薬全体理事会の議題を中心に四島会長から次の報告があつた。
 @日薬では40年度の経常費をカバーするため開局者は千円、勤務者は五百円の会費値上げを予定している、然し本県としては日薬会費が値上げになっても現在の儘据置きとする方針で行きたい。
 A医療補修緊急是正については、9.5%引上げを1月1日から実施することは殆ど確実であるが、薬価基準の改正と絡み、調剤手数料の問題は調剤基本料の根本改正と云うことになるので、今回は見送りとなる公算が強い。今後の運動は中央に一任するが、注視を要する。
 B歯科協定処方については、既に完成しているので近く冊子として歯、薬会員に配布する予定である。
 C社保調剤モデル地区については、大阪市福島区と滋賀県大津市の二地区を指定し、医、薬協力して凡ゆる場合を想定して推進することになった。
 D薬局方2部改正医薬品については、日薬の研究は終つたので、既に厚生省に答申書を提出している。
 Eその他、経済安定、アジア薬剤師連合会についての説明報告があった。

 (2)薬学講習会について
 本県本年度の出席率は25%であり昨年度より低下している。九州山口各県の状況は長崎、熊本を除いて本県を上廻っている、因つて出席率向上、期間、科目等について種々研究もしてみたが、
 @期間については一日がよい、二日なら春秋一日宛がよいとの答えが多く、
 A出席奨励のため行った事柄には、直方支部は一日について五〇〇円補助、而も前日電話で出席を勧告し、第一日の欠席者に対しては更に電話で注意、その結果実質一〇〇%出席となった。其他大牟田支部では一日五〇〇円補助、若松ではテキスト代一〇〇円補助などがある、本年度の様な出席率であれば今後薬剤師として如何にも権威のない事ではあるが、或は監督官庁の協力を得る様な在方も考えねばなるまいかとの意見さえも出た。

 (3)薬と健康の週間に就て
 福岡、北九州、直方、大牟田、久留米の各地区から夫々の行事、特に環境衛生試験の結果について報告があり、又週間行事の一環として本年度の薬事功労者の紹介もあった。

 (4)第20回日本薬学大会準備について
 全般及び日薬総会、開局部会について工藤専務より学薬部会については友納県学薬会長より報告があり、大会の出席開局者一、五〇〇名予定の内七五〇名は地元県出席予定として勧めねばならぬので、大会協賛費として(大会誌、バツヂ等の前納の意味で)一月末日迄に一名宛一、〇〇〇円を各地区に割当てただけ県薬に納入されたい。

 (5)社会保険について
 中村社保担当理事から今回九州各県薬学講習会の講師として各地を廻った際の所感について報告、又最近保険財政の赤字に関連して監督官庁の指導監査が屡々実施されているので、処方箋増発に熱心な余り行過ぎのない様充分注意されたい。ノルマルなるものは結構であるが、行過ぎは却って今後の増発を阻害する虞れが考えられその所感報告がなされた。

 (6)薬制委員会について
 竹内委員長から諮問の内中心議題となっている開局権問題について中間報告があり、明年二月の日薬代議員会前には大体の意見を纏めて「会としてどうあるべきか」との基本線を会長に答申するとの報告があった。

 (7)歳入歳出等会計中間報告
 鶴原会計理事から、現在約三分の二収納し各項の支出も亦予算の約三分の二で、収支状況は概ね良好であるとの報告があった。

 (8)薬局に於ける医薬品製造許可の更新手数料に就て薬事法一部改正により更新の際貼付した収入印紙を県の領収証紙と代えることになったので、取敢ず証紙代を県薬で立替え、収入印紙は県で換金の上戻ることになっている。

 (9)業務日誌配布について
 明年1月1日より新様式により確実に実施する様充分心掛けられたい。

 (10)其他
 @12月31日の薬業忘年会及び1月4日の薬業年賀会(九州薬事新報社主催)には勤めて出席されたい
 A県薬事務所は12月29日〜1月3日、休務
 B会務PRのため各方面に各支部経由で年賀状を出すこと
 以上にて協議会を終了した。

 北九州地区安定協 十二月例会

 北九州地区安定協議会12月例会が12月8日午後二時から八幡薬業会館に於て開会された。先づ去月25日開会の県安定協の報告、次の試買状況報告では、相変らず小倉に相当の乱れがあり、特に感冒薬については卸業者より指導価格が配布され、試買も予告されたにも拘わらず、スイス堂、東映、丸和等が下廻っていた事が報告された。次に地区全体の問題としては、九友会のビラの件が特に年末を控えてスーパー、大型店に対する連鎖反応の大きさから、これが自粛について強い要望があった。なお、次回開催は製企会側

 株式会社カイゲン 新トレードマーク

 株式会社カイゲンが本年新体制をととのえ、業界に目醒しき活躍をなしているが、同社の新トレード・マークが今回表記デザインに決定した。今後飛躍の旗印となることであろう。

 雪印乳業 陳列販売コンクール受賞者発表 最優秀賞四二店

 雪印乳業では、陳列することが拡売に繋がる意味に於て第一回陳列販売コンクールを去る三月に、第二回は「雪印ネオミルクPF・ネオミルクママ」陳列・サービスコンクールを九州一円の主要都市に於て同品登録店を対象に、39年10月15〜12月10日、開催したが、参加者は前回の二倍の三九〇店、而も各自のアイデイア(装飾用品は渡さず)によって行なわれたものであった。同社では12月11日午前福岡市、第一生命ビル地階に於て市内卸取扱店及び九州薬事新報社を招き、同社審査結果である最優秀賞四二店、優秀賞一三五店の受賞決定者の店名を発表した。

 ▼最優秀賞受賞者
 糸岐薬局、長野薬局、玉屋薬品部、丸栄薬品部、福岡薬局、大賀薬局、鈴木薬局、アサヒ堂薬局、平尾薬局、バーゲンセンター(以上福岡市)▽国分薬局、高良薬局(以上久留米市)▽重信博愛堂(大牟田市)▽大阪薬品、黒原薬局、正木薬局、古川健康堂、市民薬局、縄田薬品工業(以上北九州市)▽坂田三省堂薬店(築上郡椎田町)▽宮崎ドラツクストアー、雪沢薬局(以上長崎市)▽谷本薬局(佐世保市)▽幸盛堂薬局(諫早市)▽同仁堂、河津薬局、東雲薬局、竹下薬局(以上熊本市)▽富田薬局(八代市)▽平田薬局、ハタノ薬局(以上大分市)▽白十字薬局、和田薬局(以上別府市)▽川辺薬局(谷山市)▽尾立薬局、ユーマイ薬店、東京堂薬局、西日本薬業(以上鹿児島市)
 なお、最優秀賞は雪印バター二二五gを毎月四個を一年間贈与、優秀店は同様半年間となっている。

 城南薬局のおめでた

 福岡市城南薬局小田平氏の次男(星薬大出身薬剤師)晧平氏は、この程のぶ子嬢と華燭の典を挙げられたが、同氏は父を援けて家業を継ぐことになったので、福岡地区薬業界では恒例により新郎新婦の新らしい門出を祝福して12月15日夕べより博多パラダイスに於て祝賀の宴を催した。友納市薬会長は世話人代表として挨拶、次いで来賓谷川県薬務課補佐が力強い祝辞を述べられ、約七〇名の出席者は和気藹々裡に新夫妻の幸福を祈って祝杯をあげた。

 お知らせ

 恒例の本社主催の「薬事年賀会」第十五回を明、昭和四十年の新春を迎え正月四日正午から市内下西町「第一銀行ビル七階・三鷹ホール」で開催致します、本会は年頭の相互廻礼に代えて薬学同冠者(官庁、大学、病院、薬局、メーカー、卸、小売、薬事団体、その他薬系の人々)が一堂に集り一本となって新年を祝賀することが目的であるので、そのおつもりで、ご賛成のお方は左記に申込まれたい。
 申込所 福岡市御供所町二九(薬剤師会館内)九州薬事新報社
 電話B五六八五・二一一二
 ▽申込期日十二月十九日(土)まで

 薬界短信

 ◆九州漢方研究会=第61回を先により12月16日県薬会館で会開した。
 疾病に関する考え方の変遷W=戸田秀実氏
 ▽入門講座(続き)=山口広次氏
 ▽竜眼肉・萎殖について=塚本赳夫氏
 ▽抑肝散=宜本康照氏▽喘咳の処方U=森光三氏

 長野博暢氏逝去

 福岡市飛石町、長野薬局主長野博暢氏は病気療養中であつたが本月十日逝去、十二日正福寺に於て薬剤師会員、業界人多数参列のもとに盛大な葬儀が行なわれた。同氏は長大出身の薬剤師であるが、市薬理事として剤界に尽された人で、三十五才の若さで逝かれたことは特に剤界から惜まれている。