通 史 昭和39年(1964) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和39年(1964) 11月10日号

 第33回九州・山口薬学大会 女子薬剤師部会 出席会員一二〇余名

 第33回九州山口薬学大会(別府市に開催)第一日10月14日午后五時から観光会館会場で女子薬部会が開会された、出席会員約一二〇名、来賓として高野日薬会長、沖日本薬政会長、瓜生田九州山口薬剤師会長、大分県薬務温泉課長ほか、ゲストの久保関東逓信病院薬局長、郷司大分日赤病院薬局長、清水大分県立病院薬局長が来賓席に着いた。

 先づ後藤大分県女子薬副会長の開会の辞に始まり清水地元会長の歓迎挨拶、次に弥吉九州ブロツク長(熊本県女薬会長)は、昨年度の西部連女薬総会、本年度九州山口ブロツク女子部会各担当の地元に対して謝辞を述べ、引続き、女子部会予ねての懸案である高野後援会の件で提案、満場の賛成を得て可決し、各県薬の高野後援会と表裏一体となって、本後援会の成果を如実に示すことを期し、具体的対策はブロツク長に一任することになった。

 次いで来賓挨拶に移り、高野日薬会長は「大会本会議にも部会同様女子会員が多数参加の上、時局の認識を一層深め、明年の改選に当たっては十分の援助をいただきたい」と要望があり、沖、瓜生田両薬政会首脳部よりも、現在置かれた経済的、政治的地位とその向上について懇切な説明と、努力の要請があつたが、一同は心に緊迫感を深くするに至った。続いて山田課長からは、同夫人が女子薬会員であるだけに身内同様な歓迎挨拶がなされて心温まる思いがあり、満場の拍手に送られて来賓一同は退場された。それより次記研究発表に移った。

 ▽女子薬剤師の勤務問題について 田中由紀子氏
 同氏(熊本県)は最近の女子薬の勤務斡旋に際して得た体験を述べ、その就職門戸の狭さ、殊に日本に於ける再就職の道の難しさついて述べられ、これに対してゲスト久保薬局長は、私は管理職(薬局長)と教育職(薬大講師)の立場から、公共企業体としては@雇用条件、A労働条件、共に男女差は全くなく、女子、当直も国家公務員は人事院規則で難かしいが、公共企業体では差支えない、その他の病院、診療所でも男女の別なく労働基準監督署の許可を得れば深夜業も差支えないので、男女の差は何ら問題ではない、唯女子が女子であると云う立場に甘えると困るので、一方雇う方でも種々の問題がある。

 次に郷司薬局長も公共企業体管理職としての立場から、初任給、昇給、賞与等での男女の差は全然ない、職制上の扱かいについても同様である、只女の人は同じ職場で、お互に、又実際に同性と仲よくできるか、女性としての特性が時に、マイナス面に働くことは否定できず、現に女性の職場として最古の歴史をもつ小学校の教師の例をみても、と種々の実例をあげ、上司も女子の能力をあげる様努めると共に、女子も亦お互によく協力して行かねばならぬと力説し、最後に清水薬局長は全く違った立場から、今迄女子は採用していなかった。その理由は@労働、A日宿直、B自主性の問題、C家庭の問題、D女性のあつかいにくさ、E社会的常識上、の六観点からである。と六観点について一々詳しくその体験からくる女子薬への危惧が述べられ、然しながら最近のアポ供給面での男女比の変化から、現在は女子薬を二名採用して実際面でも認識を新たにさせられ又今の二先生のお話しで、法令上からも開眼される処があったので、今後は女子薬自身の自覚協力の上に更にその真価を追求して再認識して行きたい。との述懐もあつた。時間不足のため質疑応答を止め次の発表に移った。

 ▽農村における健康児童の血液所見 大分県立病院病理検査部、増田孝江氏
 同部勤務の研究発表グループが昭和38年3月迄の16カ月間、農村児童に連結してリジニン添加の食物による補強実験を行ない外的、内的変化を一カ月毎に測定した、発育増強についてその結果を発表したものであり、洵に真摯な研究で聴講者一同に深い感銘を与えた。

 それより本会の緊急動議として「本日の大会本会議に於て多年薬学、薬業に尽した功労者に感謝状或は表彰状が贈られたが、その対象者に今後女子薬よりの推薦者も入れたい」との提案があり、これについて弥吉ブロツク会長から説明があって満場一致で可決、その取扱いについては一切をブロツク会長に一任することになった。

 この間、時間不足のため会員一同は前記講述を聞きながら用意された卓上のビール、ジユースに喉をうるおし、相互交友を温め、定食に食欲を満たしての研鑚兼懇親会をくりひろげ、予定の演芸を観る頃には何時もながらの女子薬特有の会場の賑わいに秋の夜長も早く更けゆく感が深かつた。さて吉光副会長の閉会の辞で散会、各校別の同窓会や旧友との散策など、夜の巷にと三々伍々に消えて行った。

 九州地区病院 薬剤師協会総会

 九州地区病院療養所薬剤師協会では、別府市に於て開催の第33回九州山口薬学大会第一日10月14日午後3時半から同市北浜不二家で総会を開会し、38年度会務並に会計報告、39年度事業計画等について協議のあと役員改選の結果左記の通り決定した。

 ▽会長=山田武(国立療養所福岡東病院薬剤科長)
 ▽副会長=野中好夫(国立別府病院薬剤科長)筧捷三(国立嬉野病院薬剤科長)
 ▽理事=相島徹(国立福岡南病院薬剤科長)奥平昌一(国立佐賀療養所薬剤科長)深堀富栄(国立大村病院薬剤科長)前野繁清(国立熊本病院薬剤科長)三木正彦(国立鹿児島病院薬剤科長)秋吉正信(国立都城病院薬剤科長)林正義(国立療養所石垣原病院薬剤科長)
 ▽監事=南義雄(国立宮崎療養所薬剤科長)福島明治(国立療養所屋形原病院薬剤科長)
 ▽顧問=清水貞知(国立福岡中央病院薬剤科長)

 福岡県学薬会長 友納英一氏 表彰さる

 日本学校薬剤師会は去月27日の審査委員会で39年度の日本学校薬剤師会受賞者四名、一団体を決定したが、11月7日金沢市都ホテルに於て開催された全国学校薬剤師大会の授賞式に於て表彰並に記念品及び副賞として河合亀太郎賞が授与された。福岡県学校薬剤師会長友納英一氏も受賞者の一人である。

 なお、同日より同市に於て開催された全国学校保健大会に於て鹿児島県学校薬剤師会長白男川政次郎、山口県学校薬剤師会長樋口彰一の両氏は多年の学校保健功績者として文部大臣よりの表彰を受けた。

九州薬事新報 昭和39年(1964) 11月20日号

 福岡県病薬会学術研修会 参加者一五〇余名

 福岡県病院薬剤師会では三共福岡支店後援のもとに11月7日1時より第一銀行ビル三鷹ホールで左記講演会を開催した。

 先づ堀岡会長は、保険薬価の問題は近来吾々も関心が深いことでもあり、厚相の言明もあり近く薬価基準の大改正が予定されていると聞くので、丁度良いタイミングでもあるのでこの様な講演会を開催し吾々自身の知識を深めるために役立てたい。と挨拶し、次の公園に移った。

 ▽最近の新薬について、三共株式会社学術部長付 佐藤武雄氏
 酵素製剤、ビタミンB12及び経口避妊薬などにつき学術的な講演がなされた。

 ▽薬価基準について、厚生省保険局医療課 課長補佐 中島良郎氏
 現在国民総医療費が非常に延びているが、医療そのものの延びよりもそれに含まれている薬剤費の延び率の方が遙かに高い、因って赤字の原因は薬剤費が増加している事であるともいえる。又医療費の30%を占めている薬価をメーカーの自由にまかせていいか、又半面、メーカーも企業であること、或は病院と薬店との薬価の差、等々複雑な問題を含んでいるので、薬価基準は改正さるべきであり、来年改正の予定である。これは薬剤師にとつて重大な関心事であろうと思われる。と述べられ、それより薬価基準の沿革、その意義及び法的根拠、適用範囲、その作成法、等について詳細な説明があり、その他参考資料として医療組織、保険の種別内容、医療費の推移、等々についても説明があつた。

 ▽実験薬理学総論、東大教授、東大病院薬剤部長 高木敬次郎氏
 薬物の効力試験には生物試験と臨床試験に分かれるが、生物試験について述べてみたい、生物殊に動物(人間以外の)を使って薬物の効力、毒性、副作用を検討する。この生物試験は多数の物質から有望なものを選び出すスクリーニング試験と、選抜された物質の薬理学的性質を調べる一般薬理試験があると述べ、これ等の試験について詳細な説明があり、引続き実験映画の映写によって重ねて興味ある詳細な説明があって講演を終了した。それより和やかなパーテイが催されたが、当日は一五〇余名の出席者があり盛大且つ有意義な会合であつた。

 福岡市の薬と健康展と環境衛生調査

 薬と健康の週間行事である福岡市開催の「薬と健康展」について最後の打合せを11月10日開催の福岡市薬理事部会長会で協議の結果次記の日程で実施することを決定した。

 ▽11月22日(日)午後1時 新天会館に集合(理事、部会長必ず出席のこと)

 ▽11月23日(月)午前10時 新天会館集合
 箱崎、馬出、千代、吉塚、堅粕(午前10時〜2時)
 博多、浜、東住吉、西住吉、春吉A、同B(午後2時〜6時)

 ▽11月24日(火)午前10時 新天会館集合
 大名、簀子、当仁、草ケ江、西新、姪浜(午前10時〜2時)
 平尾、高宮、野間、大橋南(午後2時〜6時)

 ▽薬の相談員
 23日=佐々木、篠崎、荒巻
 24日=上田、杉本、原口(午前10時〜2時)

 ▽大城、古賀隆(午後2時〜6時)

 ▽環境調査(11月23日、小雨決行)
 @西新交叉点=(午前10時 福岡薬局に集合)江頭、野口、富永昇、藤田、糸岐、榊
 A天神町交叉店=(正午、新天会館に集合)中野、高倉博、小野、鶴田、杉本
 B簑島通り=(午後4時、アサヒ堂支店に集合)平島、細井、白水保、堀江、原口


九州薬事新報 昭和39年(1964) 11月30日号

 福岡市(薬)の薬と健康の週間行事 効果大いにあがる

 福岡市薬剤師会では今年度の「薬と健康の週間」行事は主として福岡市に於て行うことになっていたので、市薬では23・24日の二日間市内新天町商店街新天会館に於て行つたが(本紙前々号週間行事記事参照)栄養相談並に薬の相談、薬の展示、画版展示及び映画等、休日と好天に恵まれて出足よく約一、五〇〇名が入場し、両相談所も応対に大わらわで相当の成果を挙げることができた。尚一方、環境調査(騒音、塵埃、炭酸ガス)は市内新天町、西新町、簑島の繁華街三カ所に於て担当会員の手によって行われた。

 福岡の薬祖神祭 住吉宮紅葉の森に

 紅葉色あせんとする晩秋十一月廿二日の薬祖神の日、福岡薬業界では恒例により筑紫二十日会主催の薬祖神祭が、すがすがしく天高き朝十時半から福岡市住吉神社境内の紅葉の森、薬祖神少彦名神社に於て厳かな祭典が執行された、約四〇名の薬系参詣者は神前に起って低頭、さらさらと二、三落葉の音に和して宮司の祝詞の声は静かに流れ、神楽の響きは樹間に漲って森の静寂を破り、巫女による浦安の舞は優雅に淋しく、一同は泌々と古代を偲びて身にしみるものが感ぜられた。そして国松武田支店長が主催者側を代表して次いで来賓尾崎県衛生部長代理、塚元九大薬学部長、松村福大薬学部長、薬系各団体代表者が次々と玉串を奉納、一同参拝、次いて神前に神酒神菓によって業界の繁栄を祈って祭典を終えて散会、めいめい神虎の笹を担いで三々五々帰路についた。

 福岡県薬業安定協議会 11月例会 稀に見る熱意ある会合

 福岡県安定協議会11月定例会は25日一時から県薬会館でメーカー側第一製薬委員を議長として開催された。

 先づ白木委員から中央安定協報告があり、次いで小売側より四ブロツク別に次の様な状況報告があった。

 北九州地区=何回試売しても同じ店が違反している。小倉では東映がビラ(十万五千枚)を配布した。九友会も今朝又配布した。この時臨席の大庭補佐から「九友会に対して商組、卸、メーカーのとった今日迄の態度、手段など報告されたい。自ら解決せんとする意志こそ尤も大事なことであり、三カ月も前から話し合われている筈である。これ等の件は故意に安定を乱そうとするものであると疑われても弁解の余地はないものと思われる。安定を乱す者にはメーカーが一回でもリベートをピシャリと止めれば相当の成果があがると思われる」との発言もあつた。

 筑豊地区=田川のヤスダ薬局の宣伝問題に関しては改悛の意志は見受けられない、飯塚では飯塚橋、新天の両薬局の引続く安売のため次第に周辺に蔓延しつつある、これは一年間辛棒したが成果があがらないためである。茲に至つても尚好ましくない店をこの儘放置されるなら善良な店を救助するために、如何に大量でも試売した品目を全部当該メーカーに買い上げて貰いたいとの強い要望もあつた。

 筑後地区=乱売店は相変わらずで、本日久留米より電話で「C社の品が乱れがはげしいので注意されたい」との報告があつた。去る15日の地区安定協では今後毎月卸、メーカーの対策を具体的に各社毎に報告してもらうことになった。

 福岡地区=バーゲン、西新中央薬品がビラを配布した、又四、五カ月以前から試買により何回も違反事実があげられた者について卸、メーカーの効果ある何等かの具体的処置を待っているが、然し今日迄何等の報告もない、この時以上の状況について大庭補佐は、東映のビラの如き、前月の例会で、九友会のビラが連鎖反応を起す事を怖れると指摘したはづだ。と発言した。

 この重視さるべき問題は幸いに明日小倉に於て九州ブロツク安定協が開催されるので、その開会前に三者(小売、卸、メーカー)と九友会幹部との懇談会を催すことに決定した。

 なお、小売側からは乱売店が一、二店の時に悪芽を摘んでいたらこんなに多くならなかつたであろうし、各メーカーの報しよう金も安定協発足当時の約束通りに実行されているとは思われぬ節もあるが、その実体を報告してもらいたい。又発足して一年、好ましくない店も漸く煮つまって来たにも拘らず、何等効果ある処置ができない様であれば最早安定協も開く必要はないのではないか。との発言さえあったが、卸、メーカー側からは、決して放棄しているわけではなく、唯目に見える成果があがっていないとはいえ、各社共努力している旨が述べられた。愈々卸、メーカーの今後の在方が注目されるに至った。

 なお次回開会は12月21日に決定し、当日の四時間に亘る熱心な且つ積極的而も深刻な程の懇談はめづらしく各階共相当考える処があつたものと思われる。それより最後に商組側から「今後メーカーの制度品取扱いについては、組合員に恩典を与える意味で、未加入者の取扱いをことわって貰いたい」との要望があり、商組の在方につき色々と意見が述べられた。