通 史 昭和38年(1963) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和38年(1963) 12月10日号

九州山口薬学大会 決議十項目実現方要望

 去る十月十六日より三日間宮崎市にて開催した第32回九州山口薬学大会に於ての決議事項中、日薬の協力を求めている左記十項目の実現方について格別の尽力を請うため、去月末薬学大会実行委員長宗諦氏の名によって高野日薬会長に書類を以て要請し、尚来年度の大会に於ける日薬としての処理報告も併せて予かじめ要請した。

▽決議十項目
一、健康保険の調剤手数料引上げを日薬を通じ関係当局へ要望する
二、諸官庁勤務薬剤師の初任給引き上げを日薬を通じ関係当局へ要望する
三、医療金融公庫の薬局に対する融資金額の増額と借入手続の簡素化を日薬を通じ関係当局へ要望する
四、プールの濁度測定の恕限度を八度程度に引き下げを要望する
五、薬剤師会の法制化を要望する
六、医療法第十八条に規定する専属薬剤師を必置するよう関係当局に日薬を通じ要望する
七、食品添加物の製造販売は医薬品と同様の取扱いとするよう食品衛生法の改正を要望する
八、長崎大学並に熊本大学の薬学部に大学院設置の促進を要望する
九、市場安定要綱実施に伴う九州山口の指導価格一本化と家庭薬の指導価格設定を要望する
十、薬事法一部改正に基く薬局等の配置基準については豊富な経験年数を有する病院薬剤師に対し格別な配慮を要望する

昨年末の薬剤師数 総数六万二六四五 女子薬剤師著増

 厚生省ではこの程昭和三十七年末医療関係者数を纏めて発表した。それによると薬剤師の総数は、六二 六四五人で前年末に比べて一 〇一九人の増加となっており、其内女子薬剤師の増加が著しく九〇四人の大幅増であり、男子は僅かに一一五人増である。又薬剤師総数の男女内訳は約三対二となっている、外国人薬剤師は一二一人(男六〇人女六一人)である。

 全国で一番薬剤師の多い処は矢張り東京であり一三、五二四人、周辺の千葉、埼玉、神奈川を入れ、首都圏として見れば二万人近くが住居していることになり、全体の約三分の一の人数である。

▽業務別に、多数順では次の通りである
@薬局の開設者一三、一九五
A医薬品営業(製造、輸入、販売)従事者一一、六四六
B病院又は診療所の勤務者一〇、一三三
C薬局の勤務者一〇、〇六五
D衛生行政又は保健衛生業務の従事者三、〇〇八
EAF以外の化学工業の従事者一、三六一
F大学に於て教育又は研究に従事する者一、二三七
G毒劇物営業(製造、輸入、販売)従事者六三六
Hその他一一、三六四

 特に目立つことは薬局の開設者は前年末の一四、〇五六名から八六一減となっている点であり、東京の二七二減、神奈川の一一一減、大阪の七九減、その他であるが、多少でも増加した県は次の九県である。

 山形、栃木、群馬、和歌山、島根、山口、高知、大分、鹿児島。大体に於て都会地は開局者は減少し、そうでない処は現状維持又は増加している傾向にある。乱売の結果を裏書きしている様である。

日本薬学会九州支部 第35回例会 十二月十四日 長大薬学部

 日本薬学会九州支部では第35回例会を十二月十四日(土)午后一時から長崎大学薬学部に於て開会するが、演題は次の通りである。

▽演 題
(1)ジチオカーハメートとしてのジエチルアミンの比色定価について=(熊大薬学部)〇田中善正、野依早苗
(2)朝比奈 中山の所謂β−ケトステアリン酸エステルについて=(九大薬学科)川崎敏男、○岡部光
(3)フラン誘導体の合成化学的研究(第三五報)  2−Substited-4-(5-nitro-2-furyl)polyenylideneoxazolone-(5)=(九大薬学科)西海枝東雄、○植田清之助
(4)2-Methylhioalkyl S-MethylxantateのDithiolcarbonateへの熱転移反応=(九大薬学科)田口胤三 田畑耕一 金山久範、○森昌斗
(5)3 4-Dialkoxynitrodeuzeneの生体内脱アルキル化に就いて=(九大薬学科)○塚元久雄、吉村英敏、渡部烈、辻宏
(6)けしのバーナリゼインヨンが発育並に阿片含量と質に及ぼす影響について=(長大薬学部)大橋裕
(7)チオセミカルバゾン類の抗菌作用について=(長大薬学部)○谷山兵三 田中幸夫
(8)ビスフラボン類の薄層クロマトグラフィー=(長大薬学部)○河野信助、三浦博史、菊地英紀

 なお、次回36回例会(支部総会)は二月十五日(土)午后一時より九州大学薬学科に於て開催の予定である。
演題申込締切は昭和卅九年一月十三日(月)申込先は九州大学薬学科内九州支部例会係

      句日記より  山鹿 清水 鹿山

         山茶花の白さ崩るる時雨かな
         縁日向木の実と遊ぶ子等たのし
         花八ツ手白し寒さの追かくる
         炉に炭火もやして冬が来りけり
         冬めくや庭の鶲の影細る

吾々は正しい姿勢で正直者が馬鹿を見ないよう 三共 鈴木重臣

 九州に於ける市場安定対策要綱(小売向編)の実施は、先づ各県安定協議会の設置から始まったが、福岡県が全国のトップを切って設立され、現在では七県共確立された。次いで要綱の中心点として最も関心を持たれた指導価格の打出しは、指導価格の真義を理解する為に、いさゝか時間を要したが、メーカー、卸、小売各段階の熱意と努力の積み重ねに加えて、各県薬務課の強力な支援と積極的な指導により之亦福岡県を皮切りに実行され十二月上旬には全県下実施の運びとなった。

 安定要綱が医薬品業界全体の要綱であり、之によって医薬品の社会的信用を回復し、業界の真の安定を図ることが目的であることから云えば当然な事ではあるが、先づ実行段階に踏み込んだと云うことに大きな意義があり同慶の至りである。

 矢はまさに弦を放れた以上之を正しく金的に適中させなければならない。その為には今後吾々がどの様に対処しなければならないか。

 私は第一に小売も卸もメーカーも指導品目の価格維持について夫々が正しい姿勢で、責任をもって対処することにあると思ふ。口で云えば簡単であるが、スポーツのルールと違って商売のルールを責任をもって実行すると云うことは、企業の消長に関することであり而も極々にして正直者が馬鹿を見るの先例があるだけにむつかしいことである。ルールの侵害者が出た場合には正直を貫き通す為に、一時的の低調、多局的な停滞があっでも断乎是正に踏み切る決意がなければ責任ある対処は出来ない。その勇気を業界の一人一人が持つことが業界の安定につながると確信する。

 第二には自分だけが良ければよい。他人はどうなっても構わない。後は野となれ山となれ式の考え方は無しにしたい。世の中には平衡の原則が厳存していて決して一人だけが一社のみが良い子になる事はない。他よりも有利な販売条件を出して自分だけが売り上げを多くしようとしてもそれが通るのは僅かな期間であって必ず対抗者が現われる。

 その中にその又対抗者が現われて泥沼の乱売競争に陥り得をするのは誰でもないという事になってしまう事は全国に起きた実例である。自分の売るべき商品の価値を自分の手で下落きせているのであるから正に自分の首を自分で締めるとはこの事を云うのであろう。もうこゝら辺りで自分だけは正しい姿勢をとろう、そして業界全体の為を考え、業界の永遠性を守り抜く為に、たとえば他人が或は他社が身勝手な事をすれば恥かしくてその業界に居られないというふんいきの業界にすべきだと思う。その為には先づ自分を律する事にある。この事も私は勇気が要る事だと思う。

 何れにしても私は安定要綱実施に当って大切な事は自分の行為に責任をもって対処し、自らを厳しく律する事の大勇を持つ事だと思う。抽象的と思う人がいるかもしれないが人の行為を正しく導くものは法律でもなければ圧力でも権力でもない。矢張り抽象的ではあるが各自の社会道徳の昂場に根本があると思う。
   (三共福岡支店長)

福薬国保 国保事業改正案  組合員は是非研究すべきである

 福岡県薬剤師国保組合では国保法の一部改正、診療報酬計算法の改正及び社会情勢の変化等により給付面の向上と相俟って保険財政の拡大を余儀なくされる現況に鑑がみて福岡国保事業内容の改正を図りたいとの考えから去る十月、各役員並に組合会議員の意見を徴するため左記「国保事業改正案」を送付、意見を求めたが、これは組合会議員のみならず一般組合員にも濃厚な関係があるので、組合員として充分研究検討する必要がある。意見のある組合員はドシドシ本年度中に改正参考事項を提出することが最も有意義のことと思われるので「国保事業改正案」全文を茲に掲載することにした。

 国保事業改正案

一、組合員を除くその他の被保険者の一部負担の割合を五割から三割に引き下げる(七割給付実施)。
理由=国保法の一部改正により、昭和卅九年十月一日から七割給付が実施されることになり、市町村も同時に実施することになるので、組合の特性上、年度頭初より実施するものである。
二、組合員死亡の場合の葬祭費二、〇〇〇円を一〇、〇〇〇円に引き上げる。
理由=現在被保険者一律に二、〇〇〇円を給付しているが組合員をその他と区別し、一〇、〇〇〇円に引き上げるものである。
三、助産費二、〇〇〇円を三、〇〇〇円に引き上げる。
理由=現在育児手当を給付していない、この分を加味して三、〇〇〇円に引き上げるものである。
四、保険料の賦課額を次のとおり改める。
 組合員(月額)五〇〇円を七〇〇円に
 その他の被保険者(〃)一五〇円を二五〇円に
理由=前期一、二、三、の給付改善に伴う費用及び年々増高する医療給付費、費用として増額するものである。

昭和39年度歳入歳出見込額(昭和38年10月)

歳 出
(1)算出の基準
 イ 被保険者数 組合員480人 その他の被保険者数1,640人 計 2,120人
 ロ 給付率・組合員に対する給付率10割、その他の被保険者に対しては7割給付
 ハ 葬祭費 組合員 10、000円 その他 2、000円
 ニ 助産費 3,000円
 ホ 療養給付費 昭和38年4月より7月までの4月分の実績により年間見込額を算定
 ヘ 医療給付費の増加率 昭和38年度見込額の10%増
 ト 医療給付費国庫補助金 見込費用額の25%の90/100を見込む
 チ 事務費国庫負担金 昭和38年年度の予算額
 リ 保 険 料    月額組合 700円  その他 250円
(2)療養給付費見込額
 イ 費 用 額(昭和38年度の見込額×110/100)
  12 324 000円(4〜7月分X12/4)×110/100=13 556 400円  (A)
 ロ 保険者負担額
   組合員 1787 983円×12/4×110/100=5 901 000円     (B)
   その他〔(A)−(B)〕×7/10=5 358 780円        (C)
     計 (B) + (C)=11 259 780円             (D)
(3)療養諸費を除くその他の費用(昭和38年予算×110/100)
   3 034 800円×110/100=3 338 280円           (E)
(4)葬  祭  費
       組合員 10 000円×5 =50 000円
       その他  2 000円×10=20 000円
        計  70 000円                (F)
(5)助  産  費
       3 000円×25=75 000円             (G)
       合  計  (D+E+F+G)=14 743 060円

歳  入
(1)保  険  料
      組合員  700円×12× 480(人)=4 032 000円
      その他  250円×12×1 640(人)=4 920 000円
       計               8 952 000円  (A′)
(2)国庫支出金
   療養給付費補助金(Ax25/100×90/100)=3 050 000円
    事務費 負担金(昭和38年度予算額)= 580 000円
     計                3 630 000円   (B′)
(3)寄 附 金                30 000円   (C′)
(4)雑 収 入                40 000円   (D′)
(5〉繰 入 金(特別積立金)        1 375 000円   (E′)
(6)繰 越 金                716 060円   (F′)
  合  計(A′+B′+C′+D′十E′+F′)1 474 3060円

大牟田市薬剤師会 市薬系職員のため 待遇改善陳情

 大牟田市薬剤師余(会長中村里実氏)では同市薬系職員(会員)保健所七名、市内病院関係五名、計十二名のために 予て待遇改善についての陳情に関し準備中であったが、去月廿七日これを決行した。

陳情項目は
@ 初任給及び調整給について
A 前歴換算について
B 昇給基準もしくは渡りについて
C 薬局長を課長待遇としての取扱いについて
の四項目であるが、県内県外他十市についての調査資料を添えて四千字に及ぶ厖大な陳情書が提出され熱血溢れる陳情がなされた。

 当局もその熱意に動かされ空気は非常に良好であったが何分にも同市は現在六億の赤字を抱え財政上危機に在るとも見られるので至難な企画ではあるが、四項目の内尠なくとも二項目の実現を期して引き続き活躍中である。大牟田市の剤界が常に一致団結して分業、保険調剤、その他剤界のため生気溌刺たる活動をなしていることは一般の認めている処であり其目的達成が期待されている。

各市町村へ陳情 福岡県薬剤師会 県学校薬剤師会

 福岡県薬並県学薬では県下学薬師の手当問題について予て調査検討中であったが各市町村の予算編成期を控えて本月四日県下市町村長並に教育委員会宛次の様な陳情書を提出した。

▽陳情書

 御承知の如く学校薬剤師は学校保健法に基づき全国高・中・小に必置されており 同法第三条に於いては学校環境衛生の維持改善を主要目的としてその適切な実施が取り上げられ、この重要任務を学校薬剤師が担当していることは法文に明らかな所であります。

 従って学校薬剤師の任務は従来の医薬品 医療用具等の指導助言と言う事項に限局せず、大きく環境衛生全般に拡大された訳であります。

 又環境衛生は一面予防衛生とも言われ、身心共に健康な児童、生徒をつくり上げる為に学校環境衛生の重要性が大きく取り上げられたことは誠に慶ぶべきことと存じます。

 斯様な関係で学校薬剤師の手当も県立高校におきましては既に一二、〇〇〇円支給されており、又県下の小、中学校におきましても数市では更に之をオーハーしておりますが、未だその大部分が文部省の年間一校七、〇〇〇円規準を遥かに下廻っている実情でありまして、その不均衡につきましては誠に遺憾に存じますので、この際市町村に於かれましても次年度の予算に於て適当な手当増額措置を講ぜられますよう、会員の総意に依り茲に懇望致す次第であります。

福岡県 初の薬局等の許可審議 新薬事審議会委員

 福岡県の第三回薬事審議会が十二月三日開会されたが
議案は
第一号議案 薬局等の許可について
第二号議案 福岡県薬事審議会運営規程の一部改正について
であったが、第一議案の「薬局等の許可については」は薬局等の配置の基準を定める県条例実施後初めてのことであり、審議の結果左記三薬局及び一一般販売業が許可されることになった。

▼申請者=白木太四郎(福岡市因幡町三八竃局白十字代表取締役)
▽名称及び設置場所=薬局白十字博多駅支店(福岡市三社町、国鉄博多駅構内)
▽管理薬剤師=白木太一郎(福岡市因幡町三八)
▼申請者=千歳嘉子(福岡市三社町八五番街)
▽名称及び設置場所=千歳薬局(住所と同じ)
▽管理薬剤師=申請者自身
▼申請者=栗原孝子(直方市中泉字本畠田二八一〇)
▽名称及び設置場所=栗原薬局(住所に同じ)
▽管理薬剤師=申請者自身
▼申者請=斉藤敢(久留米市西町一二七八渇ヤ畑廉売ストア代表取締役) ▽名称及び設置場所=前同様 ▽管理薬剤師=古賀二郎(福岡市塩原向野本町一二七三)
尚、新薬事審議会委員は十五名、幹事三名であるが次の通りである
▽委員及び幹事氏名
(1)学識経験を有する者
 福岡大学教授−三苫夏堆▽同−松村久吉▽おたふくわだ株式会社々長−原田平五郎
(2)消費者
 福岡県議会議員−古賀治▽同−岡松正人▽福岡県婦人会長−内野梅子▽一名欠
(3)薬事に関する業務に従事する者
 福岡県薬事協会長−深田徳治郎▽福岡県医薬品小売商業組合理事長−白木太四郎▽福岡県医薬品協同組合連合会顧問−四島久▽福岡県医薬品卸組合連合会長−大黒清太郎▽筑紫二十日会−武田薬品福岡支店長−国松藤夫
(4)行政機関の職員
 福岡県衛生部長−千尾秀治▽福岡県商工水産部長−長谷川喜博▽福岡通産局商工部長−村松寿
▼幹 事
 福岡県衛生部次長‐本本士光▽福岡県衛生部薬務課長−尾崎松夫▽福岡県商工水産部商工課長−吉川正次
なお、審議会々長は互選の結果「原田平五郎氏」に決定した。

事業所の配置販売は認めず  薬務局の回答

 配置販売業の事業所、学校等の集団責任者に対しての販売に関し、先に群馬県から厚生省薬務局に照会があったが、これに対しこの程厚生省から回答がなされた。その照覆文次の通りである。

▼郡馬県からの照会
(1)配置販売業者が学校および事業所等の集団責任者に対して医薬品を配置し当該責任者は対象員(学校の場合は生徒、職員、事業所の場合は会社、工場等の従業員)が医薬品を必要のとき無料で使用させる。このような場合配置販売業者は前記集団に対して医薬品を配置販売して差し支えないか。
(2)当該学校、事業所または取扱い責任者の行為は薬事法に達反するか。
(3)配置販売業者の住所、氏名が記載されている配置箱に救急箱なる表示をして、ハサミ、ピンセット、ホータイ、清涼剤(医薬部外品)等の医薬品以外のものを医薬品と同一箱に収めて配置しても差し支えないか。

▼薬務局の回答
一、 (1)については配置販売業は個々の消費者に対する行商形態の販売業であるから、学校および事業所等は、配置販売業の配置対象とは認められない。
二、(2)は当該責任者の行為は薬事法第廿四条(註@違反となり得る場合がある)
三、(3)については「薬事法の施行について」(昭和三十六年二月八日、薬発第四四号)第六 三の(8)(註A)によられたい。

註@ 薬局開設者または医薬品の販売業の許可を受けたものでなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、または販売もしくは授与の目的で貯蔵し、もしくは陳列(配置することを含む)してはならない。
A 配置先に置く袋、箱等には医薬品を保健衛生上危険なものにするおそれがある物等を入れてはならず、またこれら袋、箱等には配置販売業者の住所および氏名を明記させるよう指導すること。

生協の定款と医薬品取扱い

 先の薬事法の一部改正によって消費生活協同組合の医薬品取扱いが厚生省社会局では問題となったため、薬務局と話合い、その結果、双方の間に了解点に達したが、それは@現在医薬品を取扱っている組合では定款に規定がない場合でも引き続き今後とも医薬品事業が行なえることA新たに医薬品を取扱う場合は定款に規定することを条件とする。等のことである。依て社会局ではこれについて先に各都道府県に通達したが其全文は左記の通りである。

(一)現在既に医薬品の供給事業を行なっている組合については、定款に於て具体的に医薬品の供給を規定していなくとも、現在行なっている医薬品の供給事業の取消し又は中止をさせられるようなことはないこと。
 また、かかる組合が新たに物資の供給所を設置しその供給所において医薬品の供給を行なう場合であっても、定款に於て医薬品の供給事業が明示されていないことのみを理由として当該供給所に於ける医薬品の供給事業を認められないことはないものであること。
 なお、かかる組合に対しては、将来定款の改正の機会に於て、定款上医薬品の供給事業を規定するよう指導されたいこと。

(二)、今後新たに医薬品の供給事業を行なおうとする組合については、その旨を定款に規定することを事業開始の条件とされるものであること。
 ただし、事業年度の途中で医薬品の供給事業を新たに開始するときであって、そのためにのみ定款改正の総(代)会を開催することが事実上困難な場合には、次の総(代)会に於て定款改正を議決することを条件とし、それまでの間は経過的な措置として定款に規定されていなくとも条例の定めるところにより、医薬品の供給事業を行なうことが認められるものであること。

      句 三 昧  筑前 徳島 山花

         闇汁にわがほりこみしものらしや
         闇汁の闇に慣れたるうすあかり
         闇汁の汁が万両酒万両
         闇汁に雪を払うて加はりし
         闇汁の闇にお手酌続けざま

      句 帳 よ り  合 屋 杉 峰

         朝寒や妻の句帖が食卓に
         木の葉髪気にする妻となりにけり
         起きねばと思ひつゝある蒲団かな
         風邪に臥す姉に妹のさからわず
         バス待つや冬田に向ひ尿る人

随想片々 【15】 磯 田 秀 雄 安易の途を撰んで将来を誤るな

 国民生活を豊にして福祉国家を建設することを理想とする我邦として健康保険制度は、福祉施設のうちでもその根幹をなすものであるが、現行の医療給付本人七割家族五割が本人全額、家族七割へと改められ充実してゆくことは茲数年を出でずして実現される見透しであるが、そうなれば薬局店頭では風邪薬一つも売れなくなる時代が来ることは必定であるから、薬剤師は社会保険制度のなかで生きてゆけるよう、換言すれば健康保険制度が如何に充実されようとも薬剤師が生きてゆけるようにするためには、完全な医薬分業制度をかちとることが絶対必要で、今はそれに向って努力することが何よりも急務であると思うが、近年の剤界の動向は寧ろ之れに反し、又は極めて冷淡であるとの印象をうけることは薬剤師の将来をあやまるものとして寔に憂慮に堪えない。

  〇    〇

 薬剤師界が毎年挙行している「薬と健康の週間」行事は、クスリの正しい使い方を周知せしめると共に医薬分業のPRを目的としたものであったはずであるが、近年は肝心の医薬分業のPRは全く放棄されている。

 最近の医師会の再診料設定の要求に対し、健保組合側は「日医が真に医学医術の進歩に即応した医療費体系を希求するなら明治以来の原始的な制度である薬物中心の医療制度を改め、先進国では早くから実施している医薬分業制度を実施すべきである」との声を挙げているが、日本薬剤師会ではこれを「かつて日薬が唱えた主張」と片付け、尚「分業が主張だけで達成できるかどうか問題である」と日本薬報紙上に報道して白眼視していることは、日薬が医薬分業の主張を放棄したものと断ぜざるを得ない。

   〇      〇

 毎年全国の薬剤師から多額の会費を徴収している日薬としては、事業計画を立てて何んらかの事業を遂行せねばならぬが、近年は完全医薬分業の実施の主張と努力とを放テキし、主たる事業を薬局の距離制限や薬剤師の員数問題等にスリ換え、提起して会員の注意と耳目とをそらしているが、薬局に於ける医薬品の取次販売行為は、健康保険制度の充実普及に伴ってさして将来性ある事業とは考えられないことは、既に皆保険突入以来薬局の売上げ減退と利潤低下とで痛々しいまでに経験済みではないか。

    〇      〇

 完全分業をかちとることは、至難の事業に属するため途を安易に撰び、剤界内の模様換えに終始しているのが日薬の現状であるが、これでは薬剤師界の将来を誤るものであることを強く指摘しておきたい。三師会の形成も結構であろうが、それが分業制度の推進に役立たぬものなら考え直すべきではあるまいか。重ねて云つておきたい。安易の途を撰んで将来を誤ることだけは心すべきであろう。

福薬国保 来年度は保険料値上げ止むを得ぬか 保険料滞納者発表

 福岡県薬国保組合理事会が十二月三日午后一時半から左記議題につき四島理事長を議長として協議した、当日の出席者は四島、須原正副理事長、工藤専務、友納、吉柳、野口、八谷、勝目の各理事であった。

一、国保事業(中間)報告
 別刷により詳細報告があった。本年は地域差撤廃などで給付費か増加したが、本年度はどうにか過せるのではないかと今の処考えている。然し不足の場合は予備費より、尚不足の場合は予算の更正を必要とする。
 現在(十一月卅日現在)保険料の滞納金額は合計五一〇、四五〇円となっているが、早急に徴収したいと思っている。正直者が馬鹿を見ない様に、正直者の犠牲に於て悪質者を温存する必要はないと思うので最悪の場合は差押えも考慮せねばならぬと思う。悪質者の内には現に給付を受けている者もある様な次第である。
 現在滞納者20名の内、昭和35、36、37と重なっている組合員に甘木の「祝十郎氏」と飯塚の「吉田義隆氏」があり、36、37と重なっている組合員に福岡の「花田一郎氏と富安猛夫氏」筑紫の「木村猷亮氏」がある。尚37年分未納者は十八名に及んでいる。
二、社会保険医療と国保事業について
 日本医師会は再診料10点の新設を実現せんと努力している。若し実現すれば医師、歯科医、甲乙表共又入院についても一〇〇円獲得と云うことになるので全体としては一、八〇〇億円の医療費の値上げと云うことになる。これは現在医療費の26%値上げと云うことになっている。国保組合と医師会とは反対の立場となり、三師会の関係から見れば国保と薬剤師会とも相反することになる。薬剤師会としては処方箋料値上げという便乗を実現することになるかも知れない。
三、国保給付及び保険料等の改正について
 本年度は、現在の儘で幸い歩まれたとしても社会情勢の変化と共に来年度は到底現状の儘、現在の保険料ではまかないきれない見込みであり、保険料の値上げは止むを得ないと思われる。
 葬祭費や助産費の値上げも止むを得ない事情にあり、又国保法の一部改正によって来年十月から家族も七割給付となるので、それも考慮に入れて吾々の国保組合の特性上からも 保険料の値上げを考える必要がある。現在の組合員月額五〇〇円を七〇〇円に、其他の者月額一五〇円を二五〇円に改正したいと思っている。これを基本として本年度中に吾々は充分研究検討すべきである。
四、其他=職員の年来手当につき協議、次いで友納氏から全国薬剤師国保組合協議会出席報告があって当日の理事会を終了した。

中央薬業安定協議会 事業所問題を重視

 中央薬業安定協議会の第七回目が去月十九日大阪薬業会館で開かれ、地方安定協の現況、指導価格の周知徹底状況、対SM問題の実情、事業所問題等について報告或は協議が行なわれた。

 協議事項の内当日最も注視されたのは事業所問題であったが、問題は複雑であり急速な解決は困難であるので結局特別委員会を設けて調査検討し早急に協議を進めて行くことになった。

 特別委員会メンバーはメーカー、卸、小売から各五、六名とし、人選については安定委員に限定せず事業所問題に精通せる者を選ぶことになった様である。

 その他地方安定協議会の性格については業界に混乱が起った場合其是正に所有努力をなすことが目的であり、業界安定について協議して行くと云う飽迄協議機関であることの再認識がなされた。

 又価格の表示については範囲を指導価格品とし、表示方法は価格をカードに記入して備品の近くに置くか商品自体に貼付する様、又SM対策としては大体全国的に商組に加入させることに努力することになった。なお、次回開催は十二月十九日東京に於て開くことになった。

日卸連常任理事会 事業所問題研究を 特別委設置

 日本卸連の常任理事会が、大阪での七回中央安定協開会の翌、去月廿日大阪薬業健保センターで全国各ブロックから三一名出席のもとで開かれ、市場安定要綱の実施に関し、及び「卸薬業」編集、名簿の作成などについて協議したが、その結果、前日の中央安定協の結論にそって、卸連でも事業所問題検討のため特別委員会を設け、各ブロックから次の通り選出することを決めた。

 北海道二、東北一、関東・甲信越一〜二、東京二、北陸一、東海二、大阪三、近畿二、中国二、四国一、九州二

 委員の人選についてはなるべく事業所問題に明るい者を選ぶことになった。なお次回の中央安定協(十二月十九日)迄に事業所問題に関する卸側の意見を充分検討することを決めた。

 「卸薬業」の編集については、十二月号を九州ブロック、一月号を大阪ブロックが取扱い担当することを決めた。医家向特売廃止問題についてはメーカー側の申込みに協力して行くことを申し合せた。

藤沢薬品 「キシロカイン」スプレー(8%)新発売

 藤沢薬品では今回定量噴霧式表面麻酔剤「キシロカイン」スプレー(8%)を去月廿六日新発売した。本剤は定評ある局所麻酔剤キシロカインを噴霧剤と共に定量噴霧容器に圧入した全く新らしいタイプの表面麻酔剤で、既に歯科用製剤としては一〇%のスプレーを昨州七年七月発売して好評を受けており、今回のものは主として耳鼻咽喉科領域の手術処置に必要な表面麻酔各科領域における内視鏡検査や全身麻酔などの表面麻酔の目的に使用するものである。使用法が簡単な上狭小な部位へも容易に直達させることができ、而も過量投与の恐れがなく安心して使用し得るなど多くの特長を持つ製品である。
包装価格は容量8%80g
B価二、三五〇円

サロンパス野球部 韓国で親善試合 秋季公式戦と読売旗、共に優勝

 去る十月卅一日韓国日刊スポーツ新聞社の招脾により日韓親善のため出発したサロンパス女子野球部(団長中富社長他一八名)はソウルを初め釜山、全州、光州、大邱、大田の主要都市で大学、高校、中学、体協、芸能人(何れも男性軍)らと親善試合を行ない(十八戦、十二勝六敗)其間最高会議公報部、孤児院、各大学等を訪問、官民こぞっての歓迎を受け、初期の目的を達成し十一月十九日無事羽田着帰国した。

 それより、韓国で親善試合したばかりの同野球部は引き続き十一月廿三日川崎市川崎球場で行なわれた女子野球読売旗争奪戦でリコー時計チームに七対一、白元チームに五対○で快勝、優勝した又女子野球秋季公式リーグ戦に於ても最終試合、対三共チームを二対○で降して優勝決定、一九六三年度女子野球公式戦は春秋共にサロンパスチームがぺナントを獲得した。

挾 子

▼去月末の厚生省主催の全国薬事監視員研修会で薬務局長の挨拶中「今後は医薬品自体の視監よりも販売面に於ける、流通面に於ける監視を重視すべきではあるまいか」との言葉があったと伝えられるが、若しそれが事実だとすれば少し行き過ぎではあるまいか
▼厚生省では政、省令等の改正によって今日迄最も困難視されていた「卸・小売」の区分を瞭かにするそうだ 洵に結構なことだ
▼衆院選挙でいつも淋しいのはアポ当選者のない事だ
今年も亦岩下さんは落ちた
夫に引かえ医師は十二名の当選者があった
▼先の宮崎での薬学大会の出席者について色々と分析統計が報ぜられているが、病院診療所勤務者が約50%を占めているのはわかるが開局者が27%とは一寸理解し難い、宮崎の観光は何度行っても同じだとの意味か

福岡の薬業忘年会 十二月二十日

 恒例により福岡薬業界では「薬業忘年会」を左記により開催する
▽日時 12月20日午后五時
▽会場 福岡市因幡町、平和楼
▽主催 県薬、県商組、筑紫二十日会、県卸連合会、県薬政会

お知らせ

 恒例の本社主催の「薬事年賀会」第十四回を明昭和三十九年の新春を迎え正月四日正午から市内下西町「第一銀行ビル七階、三鷹ホール」で開催致します、本会は年頭の相互廻礼に代えて薬字同冠者(官庁、大学、病院、薬局、メーカー、卸、小売、薬事団体、その他薬系の人々)が一堂に集り一本となって新年を寿ほくことが目的であるのでそのおつもりで、こ賛成のお方は左記に申込まれたい。
申込所 福岡市御供所町二九(薬剤師会館内)
九州薬事新報社 電話B五六八五 二一一二番
▽申込期日十二月二十一日(土)まで
 九州薬事新報杜


九州薬事新報 昭和38年(1963) 12月20日号 第552号

県より薬剤師会へ依頼 薬局等の新規開設許可申請の距離確認事務を

 福岡県では先の薬事法一部改正に伴い、去る十月十一日付で「薬局等の配置の基準を定める条例」及び「同施行細則」を公布施行したが、新規薬局等の開設許可申請がなされる場合、施行細則第三条第二項の距離を証する書類として測量図面を許可申請者に添付することになっているが、既設店舗との距離は申請者が最短間にあると思う一店舗を測量の対象とすればよいので、図面に記載してある既設店舗が最短間にあるものであるか否かを県当局としては確認する必要があり、其確認事務を県衛生部では、今回県薬剤師会に依頼することになった、其理由は薬剤師会が社団法人であり薬業界に於ける公的団体であるので、其事務処理に公正を期するものと認めたからである。

 距離の確認は薬剤師会各支部に於て行ない、確認の印は、支部長の私印でなく公印を押印することになっている、距離確認に当っては測量図面に記載してある既設薬局等よりも更に近い薬局等が存在しないかを調査すべきである

 新規許可申請者から測量図の確認の申出があった場合は支部長は其取扱いを慎重にし、言動に誤解、摩擦等を生ずることがない様最善の注意を払い直に事務処理を心掛けねばならぬ、県より信認された薬剤師会支部長はそれに応える様誠意を以て事に当らねばならぬ。

福岡県薬 理事会 新規開業距離確認事務と県薬支部長会

 福岡県薬剤師会では第93回理事会を12月9日午後二時から県薬会館で開催、18名中14名出席、先づ会長挨拶直に協議に入った。

▽議 題
(1)薬学講習会について
 工藤常務理事より説明、本年度の講習会は予想に反して出席率が悪く23%であった(昨年度は27%)科目については保険並に臨床医学関係が注目された、今後会員の集め方を考える必要がある。
(2)勤務薬剤師の地位向上について
 竹内理事説明、本年の人事院の勧告案は一四、七〇〇円を一六、五一五円に増額することになっている。
 病院勤務医は第一表が通用されているが薬剤師は第二表が適用きれている、薬剤師も医師間様第一表を通用する様各関係方面に運動中である、問題は大蔵省が当局であるので仲々むつかしいのである。現在の人事院の調査は病薬が基本となっており、メーカー勤務者は加味きれていないので人事院勧告案其ものが既に吾々としては不満足であり、メーカー勤務給与を基本中に組み入れるべきだと日薬と共に各方面に働きかけている状態である。

 次に中村理事の説明、大牟田薬剤師会では市薬系職員の待遇改善のため去月甘七日市関係当局に対し陳情した経過について述べ、次に早川理事から県下学校薬剤師の手当向上に関し各市町村当局に陳情した旨の報告があった。
 又県下業界には管理薬剤師を求むるものは多いがこれに応ずる、就職を希望する薬剤師は少ない、其理由は概して待遇が悪いから真面目な薬剤師はこれを希望しないからである、偶々これに応ずる不真面目な薬剤師は勤務状態が悪い。これは根本的に双方の考え方を是正して薬剤師会がこれを指導すべきである、慈に先づ管理薬剤師と被管理薬業々態と薬事法の精神とを照合の上、法規上でなく実質上適正な実態調査の必要がある。

(3)中央情勢報告(薬政会関係を含む)
(4)改正薬事法及び適正配置に関する県条例施行について

(3)(4)について四島氏から説明
 今回の衆院総選挙に於て高野参議(日薬会長)は自民党組織副委員長として連日連夜活動されたが、自民党の成績が予想より低くかったので、高野氏個人にとっても洵に遺憾な事であった。剤界としては広範囲に選挙応援をなし先づ先づ一応好結果であったと報告し得ることになった。
 地元剤界として今後県会との折衝も繁多となると思われるが、有利に進むものと思われる。
 県薬事審議会は本月三日開催、初めて新規開業四件を審議して許可することになった。本県の条例には経過措置がないため、従って保留五件がある。業者と話し合中であり円満解決を望みたい。
 今後新規開業に関する申請については、既設薬局薬店との距離に関し、最寄りの薬局薬店であるとの証明は、公正無私な公法人団体であるとの結論により、薬剤師会の各支部の支部長がなすことになり、支部長の公印を県薬で一括作成の上衛生部の元に登録することに決定した。
 既存一般販売業者は県条例の制限を受けることはないが、新規一般販売業は卸専業の一般販売業者でなく小売を加味した。小売業を小なりとも兼業するものは県条例の通用を受けなければならぬので、此点各支部長は責任上大いに留意せねばならぬ。最寄りの薬店として生協其他の事業所の医薬品取扱いについては、特に其実情を調査の上留意せねばならぬ。支部長は此責任を喜んで心に銘記すべきである。

 次に薬政会財政の中間報告があり、而して高野選挙については五〇万票獲得の構想について述べ、福岡県が後援会準本部として活躍するには従来通りの在り方では到底目的達成はできぬので、末開拓層を開拓せねばならぬ。地方議員の票を貰うことに努力せねばならぬとの発言があり注目を引いた。薬業士の票は今回の衆院選挙に落選した中山マサ氏の国会議員への意慾又は出方によって予想すべきであろう。其他数件の協議、報告があって当日の理事会を終了。

     句 三 昧  筑前 徳島 山花

     ○ 忘年や余興に長唄はさみたる
     ○ 十八番なる唄におどりに年忘れ
     ○ 雲仙の霧永を目ざす人ばかり
     ○ 舌をやく程の熱爛吹きしづめ
     ○ 原稿の口授にも慣れて年暮るる

     句日記より 山鹿 清永 鹿山

     ○(悼)水仙の香る仏と話けり
     ○ 寒風に吹き縮められ町続く
     ○ 飼ひ馴れし小狸化くること知らず
     ○ 冬の蝶庭の日黄に彩りぬ
     ○ 冬の蝿姉に替りし炊事番

対症薬学 =竹内克己

(10)感冒薬過敏症
 木枯と共に感冒薬めシーズンには入ったが、感冒薬による薬物アレルギーを起す人は案外に多事ものである。唇の周囲が赤くなったり、発疹が出来たりする特に皮膚の軟かい所に出来る。

 一般にアスピリン、アミノピリン、スルピリン等の配伍されたものによって起る事が多い。薬物アレルギーは一度かゝると仲々治らないもので、再び起らぬ様になる事は殆んどなく、一生ついて廻るやつかいなものである。

 従ってカゼグスリを買いに来たお客には一応薬物アレルギーの既応症について尋ねる事は対症薬学の常識なのである。

 市販のカゼグスリは殆んどこれ等の解熱鎮痛剤を含んでいる。特にピラゾロン系化合物を配伍されたものは注意しなければならない。

 薬物アレルギーの既応症のある人にはこれ等のものは遠慮して、フェナセチンやキニーネ等に代えねばならない。

 薬物アレルギー特に一般に言われるピリン疹の場合には、かゆみを伴う事が多く時として本病のカゼよりもこのアレルギーの方に患者の苦痛の重点が移る事がある。この様な時は抗アレルギー剤や副腎皮質ホルモン剤の内用はその回復を早めるのに有効である。

 皮膚発赤等でかゆみのある時は抗アレルギー軟膏や副腎皮質ホルモン軟膏等の外用は有効であり、症状の甚だしい時は鎮痛剤や鎮痛剤を必要とする事すらあり得る。

 薬物アレルギーの経験のある人は、そのクスリを飲んで間もなく以前起ったと同じ様な体の異和を感ずるのが普通である。患者は以前最も悪かつた状況を思い出して精神的な動揺を起すもので、病状の表現はオーバー気味になり、薬局に対する批判にも発展する可能性がある。

 カゼグスリとして市販されているものは、薬物アレルギーを起す可能性のあるものであるという原則に立って、店頭に於ける接客に対症薬学の活用を望みたいのである。

福岡県薬商組 理 事 会

 会費徴収で皮肉・・・
 福岡県医第品小売商組組合では、十二月九日年前十一時から県薬会館で左記により理事会を開催した。

(1)給代金について
 来る十六日臨時総代会を田辺製薬福岡支店五階会議室で開会するが
 @過怠金再審査委員の選出
 A事業執行規約の一部改正が、主たる目的であり、其他追加更正予算及び二、三の報告等である旨説明、了解を求めた。
 尚当日年前十一時から同所で理事支部長会を開催することになった

(2)新組合員加入促進の方法について
 県安定協議会でも問題となったが安定要綱の周知徹底、特に組合末加入者については非常に労力を要するので、未加入者の組合加入に努力せねばならぬ。県薬務課にも協力して貰うことになった。

(3)市場安定対策について 次の様な話しがあった
 @第七回中央安定協議会が去月十九日大阪で開かれた。九月廿日から指導価格の実働が発表されたが、現在では全国で四二府県に安定協が設置され、実施は福岡県が第一号であった。東京都などまだまだ未実施である。厚生省の要望もあり又消貿者の声もあって販売価格の表示を実施することになった。又事業所問題は仲々複雑で早急には結論が出ないので特別委員会によって検討し、次回、第八回中央安定協に提案して決定することになった。

 A全国商組連合会(理事会)については去九月廿日定款改正が認可となったが、今年未には商組未設置府県は五カ所位となる見込みである。福岡県は新要綱実施のため漸次安定に向つている様である。

 B第五回県安定協議会は去月廿五日開会した。商組では販売価格の表示についてはハガキ1/2大で現在準備を進めている。指事価格の定価表及び薬業署名簿も作成準備中である。尚来る二三日福岡ビル九階で第六回安定協を開催することになっている。

(4)会費徴収について
 会費納入については別刷によって説明があったが、現在僅かに10万の手許であり、組合活動にも支障を生ずる様な状態にある。これに対し「福岡、小倉…等、問題の多い処が入金成績が悪くて、問題のない処の会費で問題の処を賄っている様な状態にある事を能く考慮して貰いたい」との発言があった。

福岡市薬理事・部会長会

 福岡市薬剤師会では理事部会長会を本月十四日午后県薬会館で開会、出席良好。
▽今後新規申請の距離確認事務が県当局から県薬に依頼があったので(本紙別掲記事参照)実務は部会長が調査確認して証明することになる。慎重に処理されたい。

▽県薬事審議会が本月三日開会され初めて新規開業四件を審議、審議会々長に「原田平五郎氏」副会長に松村久吉、古賀治の両氏が決定した。

▽保険調剤請求事務については去る四日特別な講習をも再催したが、今後杜撰にならぬ様一層の注意が必要である。留意されたい。

 其他三師会貸付金問題、職員の年末手当、年末年始行事予定があった。

福岡県薬保険調剤   十一月分集計

 福岡県薬剤師会では保険薬局に於て取扱っている保険調剤の件数、処方箋枚数その他を毎月集計しているが本年十一月分は次の通りである。表中「その他」は支部名をあげていない宗像支部外十一支部の合計である。なお、最後に前月分の集計をあげているが、これは比較するに便利なためである。

福岡大学薬学部 部長改選 新部長に松村博士

 福岡大学薬学部では、同学部創設以来前九大薬学科主任教授の塚本赳夫博士が部長の職に就かれていたが、今回退かれ薬剤学教室担当教授の松村久吉博士が薬学部長に選任された。松村博士は前九州大学医学部薬剤部長兼同学部薬学科教授であった。

     旬 帳 よ り 合屋 杉峰

     ○ 夜学子のまだ幼現残りをり
     ○ 嘔吐の客看とる車掌に冬日射
     ○ 焼いもを懐にして話しをり
     ○ 風邪をひく少しの油断ありにけり
     ○ ボーナスを心待ちなる娘かな

≪コラム≫

∇薬剤師の員数決定には薬務局も日薬も苦心惨担している様だが、是非必要な事だ。単にSM牽制の為ではない。大型薬局薬店に店主唯一人のアポでは…

∇衆院選挙でいつも淋しいのはアポ当選者のない事だ。今年も亦岩下さんは落ちた。夫に引かえ医師は十二名の当選者があった。

∇愛知協組の共同仕入には県の融資資金が二千万円もあるのだが、低調なため県会方面で問題になっていると聞く。何処に盲点があるのか、組合幹部にか、組合員にか、それとも周囲の卸或はメーカーにか?

∇本年度の薬学講習会は福岡県に於ては、県薬本部も大いに期待をかけていたが、開けて見ると僅かに23%の出席率。昨年よりも4%尠なかつたのにはガツカリ。

大牟田薬剤師会  保険処方箋発行と医業経済  解説会開催

 福岡県薬大牟田支部(大牟田薬剤師会、会長支部長中村里美氏)では、同市主として開業医師(私的医療機関)の処方箋増発を期して、全開業医に「院内投薬と保険処方箋発行の経済的指数検討」の小冊子を先に配布したが、なお一層周知徹底せしめるため、「保険処方発行と医業経済解説会」を十二月八日午后一時から大牟田市労働会館講習室で、 中村里実支部長(県薬社保担当理事)を解説者として開催したが、参加者は医師約四〇名其他であり、会は熱心な、真面目な解説と聴講に終始した

 開業医に資料送付後、引き続き解説会開催後、従来処方箋未発行の開業医よりの処方発行反応を見るに至った模様である。何れ今後機会を得て全県下に同方式を普及、解説に努力したいと中村氏は張り切っている。

お知らせ

 恒例の本社主催の「薬事年賀会」第十四回を、明昭和三十九年の新春を迎え、正月四日正午から市内下西町「第一銀行ビル七階・三鷹ホール」で開催致します、本会は年頭の相互廻礼に代えて薬字同冠者(官庁、大学、病院薬局、メーカー、卸、小売、薬事団体、その他薬系の人々)が一堂に集り、一本となって新年を寿ほぐことが目的であるのでその事つもりで、ご賛成のお方は左記に申込まれたい。
 申込折 福岡市御供所町二九(薬剤師会館内)
 九州薬事新報社 電話B五六八五・二一一二番
 ▽申込期日十二月二十一日(土)まで
 九州薬事新報社