通 史 昭和36年(1961) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和36年(1961) 11月10日号

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 福岡県薬剤師協会 第三回薬局委員会 薬局薬店許可規準内規案検討

 福岡県薬剤師協会では薬局薬店等の構造設備規準などの重要問題協議のため第三回薬局委員会を十月卅日午後一時半から県薬剤師会館で開会した。当日は商業組合からも代表者が出席して共々協議検討した。出席者は協会側安部委員長、四島副会長外委員並に理事、商組側から白木理事長、藤野専務外理事、計約二十名であった。

 ▽議題−薬局等構造設備規準について、その他
 定刻委員長の挨拶に次いで四島副会長は、本日の議題は協会、商組一体となって研究すべき問題である。新薬事法関連法規によって薬局薬店の構造設備が大体に於て規定されているも、なお詳細に亘っては県の内規が必要であると思われる。県当局としても薬事審議会構成については既に公表していることであり第一回審議会が近く開かれるものと思わねばならぬ。審議会に県内規について諮問があると仮想してみるに、余りにも小さい而も繁雑な問題であるので、大ざっぱな話しになる可能性が充分考えられる。従って吾々当面者であり専門家である者によって検討するより外ないと思う。その準備として本日の委員会で充分に而も具体的に協議検討して貰いたいのである。と述べ、

 引続き白木理事長から許可基準内規案について詳細な説明があった。次に四島氏は「参院社労委での決議」に関する厚相の通牒もあるので、社労委決議の真意を行政面に生かす様努力せねばならぬが、それには社労委決議の四、五項が主として考えられるので、特にこれについて検討して貰いたいと要望した。四、五項は参考迄に挙げれば次の様なものである。

 ▽四項=新薬事法審議に際して当委員会は全会一致を以てする付帯決議を行ない、その第一に、政府は速かに医薬品の乱売阻止の対策を講ずべきであることを要請しておいたが、今回の視察に於ても、乱売が依然として各所で行われている事実をみたことは、極めて遺憾である。このことは単に大阪市内に止まらず、東京都を初め各地方でも同様の事態にあることを指摘する。

 ▽五項=右付帯決議の他の項に、薬局等の開設に当り適正配置を考慮すべきことを要請したが、大阪府が内規を以て百メートルの距離制限を設けたことは、当委員会の決議にそう施策と考える。他の都道府県に於てもこの種の方針を以て薬局等の開設許可を吟味することが当委員会の決議の主旨にそうものと考える。当日の委員会では慎重、充分に具体的構造設備について協議検討して委員会を閉じた。

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 核爆発放射性降下物に就て 厚生省外留意事項発表

 最近のソ連の核実験が再び保健上大きな問題となってきたので、一時たちぎえの形になっていた学校薬剤師の放射性降下物の研究が再びなされることになった。去月廿七日核爆発実験に伴う放射性降下物に対する留意事項が、厚生省、科学技術庁及び気象庁から共同発表があった。これは薬剤師の研究参考資料となるものと思われるが、発表された注意事項の内容は次の様なものである。

 放射性降下物=フォールアウト=に対する注意事項の概要

 核爆発により生じた核分裂生成物は、フォールアウトとして、我々の生活環境に影響を与える。もし、フォールアウトが空気中に浮遊していたり、地表に蓄積されると、人体が外部から放射線を浴びることになる。これは外部照射というものである。外部照射のうちで特に注意しなければならないのは、直接フォールアウトが身体の皮膚表面に附着した場合である。

 フォールアウトが地上に落ちてくれば、飲料水に混ったり、徐々に野菜等を汚染する。これ等のフォールアウトは直接、または間接に、人間の口等を通じて身体内に入り、一部の核種は、身体の各臓器に沈着して、そこで放射線を出す。このような放射線の照射を、内部照射という。フォールアウトによる内部照射のうちで、特に注意しなければならないのは、フォールアウトを含んだ天水を飲用する場合や、フォールアウトで汚染された食物を摂取する場合等である。

 @フォールアウトが直接皮膚についたり、また雨や雷に混って皮膚面を汚染した場合、人体はこれから放射線を受けることになる。ところで、皮膚の表面についたフォールアウトは、比較的簡単に洗い落すことが出来る。従って、入浴により、身体を清潔にすることが望ましい。

 A今迄の観測では、フォールアウトを含んだ雨は、降り始めに放射能が強くあらわれる。従って、天水飲用者は、とくに降り始めの雨水を用いないことが大切である。

 B雨水に、強いフォールアウトがある場合にはこの雨水を砂(三〇糎以上の層で細かい粒度のものがよい)や、活性炭の層を通すと、フォールアウトの大部分は、砂の層や・炭層で捕獲されてしまうので、出来るだけ天水は濾過して使用することが望ましい。

 C蓋のない井戸の水や、河川水を飲用水として使用する場合は、天水ほどではないにしても、フォールアウトが直接混入するから、井戸は蓋をしてフォールアウトの混入を防止し、河川水は濾過して飲用に供することが望ましい。

 D蓋のある井戸の水や、湧水を飲料とする場合には特別の措置をして飲用する必要は、まずない。水道水についても同様である。

 Eフォールアウトで直接汚染された葉菜類(キャベツ、白菜等)は、主として表面だけ汚染されているから、水洗いにより取り去ることが出来る。畠からとった野菜は、流水中で洗うことが望ましい(中性洗剤で洗えば、一層よくとれる)

 F果物等も、葉菜類に準じた処置をとることが望ましい。

 G根菜類(大根、人参等)では、主として根からフォールアウトの特定の核種、例えばストロンチーム90が入りこむことはあるが、葉菜類のように、直接汚染されることはない。

 H穀類については、本年産のものは実験後であり、また収穫期後であるため今次の一連の核爆発による影響は少ないと思われる。茶についても、今年産のものについては、影響は少ないと思われる。

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 福岡県薬商組 過怠金再審査委会 東映問題で理事会

 福岡県医薬品小売商業組合では理事会の決定により篠原安己氏(小倉中央薬品)に対し過怠金支払通知(十一月五日迄に)をなしたが、同氏より不服の申出があったので十月廿八日午後一時から県薬剤師会館で再審査委員会を開き、篠原氏を招いてその不服の弁明を聴取した。その弁明は条理不明で何等処分について有利に転回させるものはなかった模様である。引続き同処で理事会を開会し小倉東映会館問題について協議、現状分析の上適当な対策を検討して散会した。

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 九州医療品卸商連合会 第八回 定時総会開会 役員改選、鴻江新氏会長に

 九州医療品卸商連合会第八回定時総会が十月十三日午後三時から鹿児島県指宿観光ホテルで開会され、出席会員は十四社中十一社の代表者(三社欠席)であった。議事中役員改選の結果は次の通り新役員を決定した。

 ▽会長=鴻江医療器メA鴻江新
 ▽副会長=イズミ商店、大木茂
 ▽専務理事=栄ホープ福岡支店、永田利雄
 ▽理事=不二屋商店、大平晋▽加賀医薬品小倉支店、川西茂喜

 その他次の諸事項をも協議決定した。
 一、十一月東京に於て開会の全国医療品連合会総会に会長の出席を異議なく承認
 一、「医療品販売増進」応募規定に協力方承認
 一、第三回野球大会決算報告異議なく承認
 一、次期開催地は来春四月十日頃福岡県原鶴温泉に決定

 当日議事終了五時から来賓として招いた宇都宮製作ヰ齧ア、大阪医療品卸商組合副組合長大平太一郎氏の二時間に亘る業界時事問題についての講演があり一同は熱心に聴講した。翌十四日は全員観光、バスにて開聞岳及び池田湖を経て鹿児島市の名所史蹟を廻り午後三時盛会裡に解散し自由行動となった。なお、当日は大阪の藤本医療器の竹田氏、山口医療器の佐々木氏、宇都宮製作の戸田氏ら九州関係の主要担当者も参加した。

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 薬剤師生活 五十年の回顧(8) 礒田秀雄

 ◆分業運動は九州から発唱

 ▽…アメリカの薬剤師使節団が退日にあたって占領軍司令部に提出した勧告に日本に於て医薬分業制度の実施が急務であることを記載していることに日薬は狂喜し早速勧告書を印刷して関係方面に配布したが昭和二十四年十一月之れが解説のため全国の薬剤師協会長会議が東京に招集せられた。

 ▽…私は日薬の理事であるためその前日の理事会に出席し会長会議の日程を承知したが会長会議は諸般の会務報告ののち末高早大教授の講演をききアメリカ使節団の勧告書の解説があって閉会する予定であることが判ったので同夜同宿の九州各県代表と対策を協議して会長会議に臨んだのであった。

 ▽…会長会議は予定の通り先づ会務報告があって末高早大教授の分業に関する講演があってから勧告書の解説に入らんとしたので私は「勧告書の内容は既に配布された印刷物で承知しているので解説を聴く必要はない。それより勧告に従つて医薬分業制度をかちとるために一大猛運動を開始することが急務であろう」と述べ、続いて熊本、鹿児島、大分、長崎、佐賀各県代表も次々に起って日薬の決起を促しもし我が主張が容れられなければ日薬形成の要を認めぬので全九州の薬剤師協会は日薬を脱退するとまで力説した。

 ▽…列席の全国各県会長もこの九州の一致した提議には一驚したが、それでは資金はどうなるかが問題となり特費の取次ぎで捻出するかなどと愛知県代表の発言もあったがとりあえず会員一名一千円也を拠出することに議纏りそれから日薬代表のサムス準将訪問が開始され分業運動が開始されたのであった。

 このことは当時の出席代表者が現在の協会長ではないのでこの間の事情を知る人も極めて尠なくなっているので、私は「分業法の獲得は九州各県代表によって発唱された」ことを特記しておいてこれを後代に伝えたいと思ふ。

 ▽…医薬分業法獲得までには幾多の紆余曲折を経最後には例外規定八項目が設けられて今日でも分業の実績は挙っていないが、とにかく医薬分業制は実施され若干ながら処方箋も出廻わり薬剤師が医療担当者に加わっていることは医薬分業を獲得したためであって、例外八項目の改正削除と分業完全実施の闘いは次代の薬剤師諸君の奮起と努力に俟ちたいと思ふ。

 ▽…分業法獲得までにはその後野沢清人代議士の発唱で医薬分業期成同盟が結成され資金募集も幾度びか行われたが、全国各県代表を集めての会議では毎回私は議長に推され、私の提案で募集資金の決定等が行われ、日薬首脳部は表面にはあまり出なかった。私も分業運動中には滞京一ヶ月にも及んだことがあり、医薬分業の獲得を私の宿命と考へていた私だけに、分業運動には全力を傾注したがそれだけに数々の思い出が多いがそれらは又稿を改めて述べてみたい。

 ◆分業運動にハンスト決定

 ▽…医薬分業法は昭和三十年から実施となったが一時法案の運命が危うくなったことがある。昭和二十九年の通常国会のときであったと記憶するが、全九州ではハンストを決行する準備を進め悲壮な決意を抱いて代表多数が上京し東京の旅館に三十余名が同宿していた。

 ▽…ハンスト決行の前日に至り国会の有力方面から「期待に背かぬように対処するからハンストは取止めて貰いたい」と日薬へ連絡があり、日薬では谷岡、横井両理事らが旅館に来てハンスト中止方を要望したがハンスト隊−福岡県の八幡会員が多数で各県からは両三名宛で全員三十余名であった−このハンスト決行の決意は固く容易に之れを中止させることができない。横井理事は遂に一同の悲壮な決意に打たれて落涙滂沱男泣きに泣き出してしまった。

 ▽…ドド私からハンスト中止を懇請してハンスト決行は中止したが、薬剤師の悲運多難な運命の開拓の為めには人に知られない数々の悲壮なエピソードが伏在していることを次代の方々に知っておいて戴きたいと思っている。

 ◆分業討論会で医師会を紛碎

 ▽…医薬分業問題が国会で論議されている頃だから昭和二十六年頃と思ふが、佐田福岡市医師会会長から分業問題の討論会を催したいと申込まれたことがある。

 ▽…私は理事の須原勇助君を帯同して会場に出席してみると、医師会では夕刊フクニチの記者をつれてきており討論の論旨は同紙に掲載するのだと云ふことであった。

 ▽…私は「医薬分業制度は明治の初年、日本の医師が医と薬とは分業でなければならないと唱えて薬剤師の養成を始めたものであること」から説き起し、医薬の分離によって正しい医療が行われ医療費の増嵩を紡ぎ得て患者は幸福になることなどを諄々と説き、佐田市医師会長や井上副会長の発言に対しては完膚なきまで反駁を加えたのに対し肝心の夕刊フクニチ記者がスッカリ共鳴する始末に討論会は私の独演で終了した。

 ▽…これは後日聞いた話だが、該の夕刊フクニチ記者が「あれではとんとお話にならぬ」と云って討論記事の掲載は中止となった由、又之れを聞いた県医師会では「相手が悪い。礒田では討論は敗けるよ」と市医師会幹部を冷評し間もなく佐田会長らの退任となった。

 ▽…私が九大薬学科で講師に任命されて「薬局経営論」を講義していたとき、学生に薬剤師の使命を認識させるために医薬分業論をも講義していたので分業論なら多少自信を有していた頃でもあったからだったと思っている。

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 小倉東映会館薬品部開設と参議院社労委問答 小柳委員と牛丸薬務局長

 小倉の東映会館は工事も順調に進み愈々近々に開館の運びとなる模様であるが、同館の医薬品部設置については福岡県薬業界もこれを重大視、佐世保東映の前例もあるので、その阻止の目的で今日迄業界一丸となって日薬並に厚省相当局などに陳情し、善処方を要請していたが、その結果は見透しの善悪を判じ兼ねる状態にある様である。何れか近く具体的に判明することとなる。

 この時に当り、今日迄の経緯と実状を知るため去る十月四日参議院社労委に於て、小柳委員と牛丸薬務局長(政府委員)との間に交わされた質問応答の会議録の一部を茲に記録することとした。会議録は次の通りである。

 小柳勇君 大臣に対する一般質問は後日いたしますが、部分的な問題で緊急でありますので一問だけいたしておきたいと思います。先般、社会労働委員会の調査の時に大阪における薬の乱売の問題を調査して報告を受けました。其の後、聞く所によりますと、又九州の方で薬の乱売が行はれておる様であります。具体的には、佐世保市で乱売がなされておる−今年夏ごろに小倉でも又、大阪の業者が進出致しまして、スーパーマーケットで薬の乱売をすると云う様な話を福岡県薬剤師会から陳情を受けました。先般の社会労働委員会の当局の説明では、此れを徹底的に取り締る。国の法律で取り締まれない面は県知事の条例などによって取り締まると云う様な話があったのでありますが、其の後この問題についてどの様な措置をなされておるか、先ず、其の点をお聞きいたしまして答弁によって関連質問いたしたいと思います。

 政府委員(牛丸義留君)先般の休会中の当委員会の席上で私から御報告申し上げましたと思いますが、当時の決議の趣旨は、各府県−大阪府はもちろんのこと各府県にも其の趣旨をよく説明して、いかんのない様な通達を出したことはもちろんでございますが、ただいま御質問の中にございました佐世保並に福岡、小倉の乱売も、佐世保市に東映の−いわゆる東映の会社のものじゃございませんが、東映と名をつけた、いわば名店街式のものがございまして、そこに医薬品が販売されてる。値引きをして販売をしておる。乱売ということははたしてどうかと思いますけれども要するに一般以上の値引きをして売っておると云う事であります。

 それから小倉の東映の会館というのは、此れは映画会社である東映が資本を出しまして小倉市の目抜きのところに映画館をかねた百貨店ではございませんけれども、諸種の販売品を販売をする会館が現在建っているわけでございまして、そこに医薬品の販売の許可が出ると云うふうなことが、関係の地元の業界から私の方に報告が来ております。それで第一の佐世保の問題は、此れはもうすでに二、三年前に設立されたものでございまして、まあ乱売の程度と云うものには問題がございますが、私どもも長崎県を通じてその指導については連絡をしておるわけでございまして、第二の小倉の問題は、まだそういう動きがあると云うことで、福岡の県庁の方に正式に薬局開設の許可の申請はきてないわけでございます。しかし、経営者が非常に大資本でございますし、それから、それに医薬品を取り扱うものが大阪でとかくうわさのあった業者が其れに関連をするということでございますので、地元の小倉市の薬剤師協会、あるいは県の薬剤師協会の方々から私どもの方に前もって連絡がございまして、できればそういう医薬品の販売を東映会館からないよにしてくれないかという陳情がございました。

 それで私も、問題は一小倉の問題ではございませんし、全国的に、大資本のそういう経営による中小の小売商としての薬局というものが経営の圧迫をみると云うことは最近の現象として特に目立って参りましたので、東映本社がそういうものを全国的にもし計画でもしておるならば、此れは全国的な問題ということも考えましたので、東映本社の担当の重役とお会いいたしまして、其の辺の事情を聴取したわけでございます。しかし、其の結果におきまして、全国的にそういう計画をもっているわけじゃない。たまたま小倉市にそういう場所があって、そして映画館を作る、映画館を作るについては、それに付随して販売店を設けていきたい。で、それは東京あたりでやっておりますいわゆる名店街方式でやっていくということで、医薬品の販売を特に主としているわけじゃない。

 それから地元のほうで社長としてはいる人がおられるのでございますが、経営はむしろ東映本社のほうが経営の実権を持っているわけでございますので、私どもの趣旨をよく了解いたしまして、たとえ薬局を開設するにしても厚生省の方針なり、あるいは地元の業界の意に反するような、あるいは業界の個々の薬局の圧迫になる様なことはしたくないというようなことでまあ別れたわけでございます。その後、地元の業界の幹部の方々からの報告を受けた今日までの経過でございますが、すでにほかの販売店等については準備も整っているわけでございますが、薬局についてはまだ準備をしていないようでございまして、積極的に薬局を開設したいと云う意思は今日ないと云うふうに私共は聞いております。

 しかし、最終的な決定は今月の十日ごろまでに決定をしていきたいということでございまして、もう一週間ぐらいあるわけでございますが、今日の段階でまだ手続をどうするというような具体的な動きもございませんし、それからそれ以前の準備的な動きもないようでございますので、私どもは希望的な観測かもしれませんが、私どもの申し上げた趣旨なり、あるいは地元のそういう非常に強い要望にこたえてくれる公算が相当高いのじゃないかというふうに小倉の問題は考えているわけでございます。

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 薬剤師生活 五十年の回顧(9) 礒田秀雄

 ◆福岡県の薬剤師会館実現

 ▽…福岡県薬剤師協会が発足すると共に先づ必要を感じたものは会議ができる事務所薬剤師会館の建設であった。会員から多額の寄付でも集められればこれも容易だが毎年多額の会費を徴収しその外に分業運動資金の徴収が幾回もあるので会員の寄付を期待することは不可能事である。

 ▽…そこで私は福岡県医薬品会社の建物の一部借用を企図したが仲々承知して呉れない。それを強引にそして必要あるときは一ヶ月前に予告さるれば明渡すと云う約束の下に強引にはいり込んだ。そして遂には建物を買収し建物もトタン屋根を瓦葺きに葺き替え改修を施して年一回の代議員会以外はすべての会議は事務所で用務が済ませる福岡県薬剤師会館を完成した。

 ▽…建物は木造であり、現在では環境もあまり宜ろしくないが都市計画によれば周囲の無断建築は一掃されるし既に道路用地は市で買上げているので都市計画の実現も茲数年のことであろう。代議員会のときでもかなりの反対があったが私は強引に計画を進めた。会員からは一名壱百円の拠出しか仰いでいない。

 ▽…全国を見渡してみると県薬の事務所誰方と云うのが多い、単独の事務所を持っているのは東京、大阪位いではあるまいか。尠くも単独の薬剤師会館を持ち事務所を設けているのは福岡県位であとはあっても何々県薬業会館であろう。貧弱ではあろうが別に寄付も仰がずに会館を建設し得たのは愉快である。

 ▽…会員の懐工合がよくなり役員諸君の努力と相俟って立派な会館が実現する日を待つものであるが現在ではまァこれで我慢するより外はあるまいと思っている。

 ◆九大薬学科実現の思ひ出

 ▽…終戦後長崎の薬学専門部の復興を九大に薬学科を設けてこれと合流せんとの運動が起り、委員が設けられて九大の薬学科設置運動が開始されていた。私はその委員でもないので詳細なことは知らないが、その後長崎の薬学専門部は学制の改革に伴って長崎大学薬学部として長崎市に設置されることとなったが九大薬学科設置の希望は依然として続きそれから後私もその委員に加えられた。

 ▽…問題は予算の獲得であるがその用務で加藤藤次郎、美余川貞両君と私と三名が背水の陣をひく思ひで上京したのは昭和二十三年の夏であった。弁当持参で列車に乗り込んだが一食分は車中で腐敗した程だった。

 ▽…いろいろと走り廻って努力したが終戦後とて新規事業の予算獲得は容易でない。見込がないので汽車の切符も購めて諦めて退京する予定であったが、最後まで努力を傾けているうち若干の見込もあるようになり急行券をフイにすること二たび、当時の大蔵省の水田次官(現大蔵大臣)が骨折ってあげましょうとのお話。請求予算に大鉈を振ふ大蔵省が努力しようと云ふのだから話はトントン拍子に進み必要方面を馳けずり廻って遂に昭和二十四年度予算に全国唯一つの新規事業として九大薬学科の予算を獲得し塚本赴夫博士を主班に置いて九大薬学科は実現したのであった。

 ▽…予算獲得の最後の運動のときは加藤藤次郎君と私と二人で息も詰まるような画策と努力を傾注したが、九大薬学科実現に驚いたのは全国の薬学関係者で後年刈米達夫博士から私に「九大薬学科の実現は七不思議の一つだ、一体どうしたんです」と?色々問われたが私は唯笑って答えなかった。どうも大阪大学薬学科の新設予算を九州と書き換えたのではあるまいかと今では思っている。

 ▽…その後九大に抗酸菌研究所(現在の結核研究所)新設のため予算獲得に協力してくれとの戸田医学部長の依頼で九大薬学科予算獲得のときと同様の方法で戸田博士と馳けずり廻ったがこれも予算獲得に成功したことを記憶している。

 ◆厚生省の薬事審議委員を任命さる

 ▽…新薬事法によって厚生省に薬事審議会が設置されその委員中に薬局開設薬剤師から二名が任命されることになって、その委員に私が任命されたのが昭和二十六年五月であった。任期は二年であったがその間二回程会議に出席、最後は昭和二十八年の六月であったが、招集の電報は受取ったものの全九州の集中豪雨で関門トンネルは浸水して不通、博多港から下関駅へ連絡船が出ることになったというような状態であったため欠席し、この面では貢献することができなかったが民主的な運営ということで開局薬剤師から二名を委員に任命、そしてその委員に遠隔の九州から私が選ばれたことは感無量だったことを記しておきたい。

 ◆覚醒剤を不売の決議

 ▽…終戦後ヒロポンの売行きは驚異すべきものあり、取扱商品の尠なくなった薬業者としては将に福の神到来の感があったが副作用があることが判明するに及んで脅威の薬品と化してきた。

 ▽…そこで昭和二十七年であったが福岡県薬剤師協会の主催で商工会議所楼上に「福岡県薬業者大会」を開いて「覚醒剤不売の決議」を行い各支部を督励してその実行を期したことがある。

 ▽…之れに対して或る卸業者は私に「売れるものを売らないなんては商売の真髄を知らぬ。」と面詰した。然し私は滔々と押し迫る副作用に喘いでる青少年の実態、そして付随して起っている青少年の不良化の状況はこの不売決議の信念を更らに強め不売決議をためらう支部に対しては支部総会を開かしめて臨席して決議を強行せしめたものであった。

 ▽…この不売決議についてはいろんな後日譚がある。大部分の薬業者が扱わぬようになったので一段と馬力をかけて集荷販売に従ったものもあったが、それらはその後取締の強化に伴い悉くヒロポンの中毒以上の悪夢を見たことは茲に述べる必要もあるまい。

 ▽…覚醒剤取締法律の制定に先達って福岡県薬がとった不売決議は、全国覚醒剤対策協議会長厚生大臣藤木謙三より福岡県薬剤師協会は覚醒剤対策運動功労者として全国に唯一の表彰をうくるの光栄を担うに至った。表彰状は福岡県薬剤師会館の会議室に掲揚されている。

九州薬事新報 昭和36年(1961) 11月20日号

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 薬剤師生活 五十年の回顧(10) 礒田秀雄

 ◆福岡県の公衆衛生大会企画

 ▽…福岡県内に衛生関係団体が十六ある。これを糾合して福岡県衛生団体協議会を作成しようと県医師会、県歯科医師会、県薬剤師協会が主軸となってその計画を進めたのは昭和二十六年頃であったらうが、そして事業として県民の公衆衛生思想の普及を掲げ当初二三年は公衆衛生思想向上普及のための学童の作文、ポスター図案、絵画等の懸賞募集等を行っていたが遂に「福岡県公衆衛生大会」を毎秋県下各地で開催することとなった。

 ▽…その会の会長は渡辺県医師協会長であったが、担当は理事の朔天民氏(二日市で婦人科開業の老大家並業界では須玖の肺炎の薬本舗主で著名)であったので、事務所である県医師会事務所に出浮いて協議をしていた。

 ▽…公衆衛生大会開催となると後援新聞社の交渉、会場の交渉、講演者の交渉、ポスターの作成、アトラクションの交渉、被表彰者の選抜等々朔氏と私と二人で約一ヶ月位その準備に没頭せねばならず、大会の前日からは県医師会の職員、県衛生部医務課の職員など大勢の援助応援を頼まねばならない。斯うして福岡の外久留米、八幡等に会場を設けて五六回も行事を挙行してきたが、先年の日本公衆衛生学会福岡開会を機会として財団法人福岡県公衆衛生協会に発展的解消し、事務は県衛生部に移って私共は現在その役員となっている。

 ▽…朔天民氏は温厚篤実そのものの様な人格者で全国学校医師の副会長、昨昭和三十五年秋には全国で始めての学校医として藍綬褒章を受章した人であるが、公衆衛生協議会で県医師会と緊密な交渉があったことは県薬剤師協会長であった私として種々な便宜と利益を得ることが多かった。医薬分業問題が国会で論議されている頃日本医師会は福岡市で分業反対の演説会を開催する様指令がきたのを大分市に持って行って之れを開いたことなども私に対する遠慮だと思っている。

 ▽…衛生団体として共通な面も多い団体は平素なるべく交渉を保って有好的立場においてゆくことも必要だと思う。

 ◆職業安定所の一日所長を勤める

 ▽…福岡公共職業安定所長からの委嘱で私が一日所長を勤めたのは昭和三十年十二月の或る日であった。朝登庁、所長や幹部諸氏と懇談のあと大きい菊花の徴章を胸に所員一同を集めて一日所長の訓辞である。

 ▽…私は職業安定所の事業が社会に重大な意義を持つ重要な仕事である旨を説いて自重加餐を求めたのち「だから諸君の待遇に就いては遺憾なきを期したいので待遇改善の要望もあらば一日所長が決裁するので遠慮なく今日中に申出でられたい」とユーモアを飛ばして所内巡視となった。

 ▽…求職申込の窓口の所へ廻ってくると…ヒデオと云う私の名が耳に入ったのでよく聴いてみると、福岡港町の漁船員西内英夫さんが例の李ラインで出漁中韓国巡視艦に拉致されて十ヵ月になるので、生活問題もあってその夫人イサ子さんが店員の求職を申込んでいるところがあった。

 ▽…そこで一日所長は知人の博多川端町の洋服店星野信夫氏に事情を話して女店員に採用して貰ったが、このことが夕刊フクニチ一面の日曜ストーリー欄に大きく報導されたことがある。

 ▽…イサ子さんは其後星野洋服店に勤務すること一年余、夫君の帰還と共に退職し夫婦同道して挨拶にきたが、薬剤師の職業安定所一日所長も全国にはあまり類例があるまいと苦笑している。

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 全県下薬業界待望の第一回福岡県薬事審議会
 構造設備規準内規・参院社労委決議

 福岡県薬事審議会第一回、初の会合が県下全薬業界の関心裡に十一月十日午后一時から天神町、クラブ九州に於て開会された。

 出席者は委員十五名の内
 前川藤造(県衛生部長)、本多俊夫(福岡通商産業局商工部長)、藤田穆(第一薬科大学々長)、岡橋保(九州大学経済学部教授)、古賀治(福岡県議会議員)、五郎丸勝(県薬剤師協会長)、白木太四郎(県医薬品小売商業組合理事長)、四島久(県薬業協同組合連合会顧問)、鶴原六郎(県医薬品卸組合連合会々長)、国松藤夫(武田薬品工業株式会社福岡支店長)、深田徳治郎(県薬業士会々長)、高杉義照(県製薬協会々長)の十二名、欠席者は、岩川勲(県商工水産部長)、原田平五郎(福岡商工会議所副会頭)、内野梅子(県婦人会長)の三名であった。

 定刻、尾崎幹事の開会の辞前川衛生部長の挨拶があって引続き尾崎幹事から各委員を紹介、それより条例規則について一通りの説明があった。次に互選により座長に前川衛生部長を推し、直に規則第六条第二項により会長を同条第四項による会長職務代理者を互選の結果、

 ▽会長 前川藤造
 ▽会長代理 藤田穆
 に決定した。次いで会長、会長代理両氏の挨拶後次の議題につき審議に入った。

 ▽第一号議案
 薬局及び医薬品販売業構造設備規準
 内規について
薬局及び医薬品販売業構造設備規準内規について意見を諮う。
 昭和卅六年十一月十日
 福岡県知事 鵜崎多一

 理由

 薬事法の規定に基く薬局等構造設備規則(昭和卅六年厚生省令一一号)の適正な運用を図るため、これが補足的指導内規について福岡県薬事審議会規則(昭和卅六年福岡県規則第七十二号)第三条の規定により意見を求めるものである。

 別刷(本紙別掲)の「薬局及び医薬品販売業構造設備整備基準内規案」について審議した。内規が必要であるか否かについては「必要である」と云うことになり、逐条審議中、第一条第五項、第十四条イ、ロについて論議が見られたが、特に調剤室貫通路及隔壁の問題とこれに関連した意見が続出、これに対し都会と郡部を考慮に入るべきである、又余り窮屈であり厳格に過ぐれば自身を束縛するに至り、再び改正を迫まられることになる虞れがある、既設と新規との区別をも考慮すべきである。等々の意見がみられたが、慎重審議の結果は、早急に実態調査をなし再検討すること、外に、一般販売業と卸業者の試験室及び倉庫に関しては薬局に準じ充分調査の上次回の審議会に資料を提出することになり、何れも継続審議となった。

 ▽第二号議案
 参議院社労委員会の決議について
 スーパーマーケットにおける薬局並に医薬品販売業の適正化等に関する参議院社会労働委員会の決議について意見を諮う。
 昭和卅六年十一月十日
 福岡県知事 鵜崎多一

 理由

 参議院社会労働委員会において「スーパーマーケットにおける薬局並に医薬品販売業の適正化等に関する決議」が別紙のとおりなされ厚生省より通知をうけたが、取扱等について福岡県薬事審議会規則(福岡県規則第七十二号)第三条の規定により意見を求めるものである。

 決議(本紙別掲)の示すポイントは乱売防止にある。医薬品乱売対策としては流通機構の確立が基盤的対策ではあるが、早急に実現することは至難なことであり、先づ第一歩として、距離制限では充分とはいえないが、その方法を採るべきではないかとの意見が有力であった。又卸と小売りとの区分を充分研究することも必要であろう。結局は次回、県下現況の実体資料を提出し、それによりさらに研究を進め、次回え継続審議と云うことになった。

 ▽第三号議案
 薬事審議会運営規程案を別紙のとおり提出する。
 昭和卅六年十一月十日
 福岡県薬事審議会長

 理由

 本審議会の運営の円滑を図るため規程の制定が必要である、これが、この規程案を提出する理由である。時間を厳守すること、審議会開催の場合は前もって「議案と、その参考資料と、研究検討に要する充分な時間とを与えて貰いたい、などの意見が出され、慎重論議検討の上原案通り可決定した。以上にて審議を終え、閉会の辞により初の審議会を終了した。

 薬事審議会決定の福岡県薬事審議会運営規程

 第一回福岡県薬事審議会(十一月十日開会)に第三号議案として提出され、審議の結果、全会一致で可決々定した「福岡県薬事審議会運営規程」は次の通りである。

 福岡県薬事審議会運営規程

 (規程の運用)

 第一条 福岡県薬事審議会(以下「審議会」という)の運営については、福岡県薬事審議会規則(昭和三十六年福岡県規則第七十二号以下「規則」という)に定めるもののほかこの規程の定めるところによる。(会長等の選定)

 第二条 規則第六条に規定する会長の互選は委員の過半数が出席し無記名投票の方法で選定する。
 2、出席委員に異議がないときは指名推せんの方法によって選定することができる。
 3、会長の職務を代行する者の互選については第一項及び第二項の規定を準用する。

 (審議会の招集)

 第三条 会長が審議会を招集しようとするときは、あらかじめ日時、場所、及び審議事項その他必要な事項を委員に通知しなければならない。ただし緊急を要する場合においてはこの限りでない。

 (書面による審議)

 第四条 会長はやむを得ない理由により会議を開く暇がないと認めるとき又は書面による審議をもって足ると認めるときは、議案の概要を記載した書類を委員に廻付しその意見を徴し又は賛否を問いその結果をもって審議会の議決に代ることができる。

 (議事録の作成)

 第五条 会長は会議の概要を記録し会長及び感じが署名押印しなければならない。
 附則
 この規程は公布の日から施行する。

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 福岡県 薬局等構造設備規準内規案

 第一回福岡県薬事審議会(十一月十日開会)に第一号議案として提出され、審議の結果次回へ継続審議となった「薬局等構造設備規準内規案」は次の通りである。

 薬局及び医薬品 販売業構造設備 整備基準内規案

 薬局及び医薬品販売業の構造設備は、省令に定めるもののほかこの基準に定めるところによる。

 薬局

 第一条 薬事法第五条の許可を行う場合の基準は次のとおりとする。

 1、調剤室、試験室(以下「調剤室」という)と医薬品を通常陳列し又は交付する場所(以下「店舗」という)は原則として同一の階層とし隣接していること。
 2、調剤室及び店舗は常時居住する場所及び不潔な場所と壁、板張り、ガラス、又はこれらに準ずるもので明確に区別すること。(障子、フスマ、カーテン等は認めない)
 3、調剤室は他の場所と明確に区別し給排水設備を有すること。
 4、調剤室の区画の高さはおよそ二米以上とし少くとも床上約一米以上の部分は透明ガラス張りとすること。ただしその構造上止むを得ない場合は一面でもよいこと。(出入口には扉を設けること。)
 5、調剤室を常時貫通する通路に使用してはならないこと。
 6、尿その他の排せつ物、血液、飲食物等の試験、悪臭、悪ガス、粉塵等を発する試験を行う設備は調剤室外に設けること。
 7、調剤台、試験台ともおよそ奥行き五〇p、巾一五〇p、高さ八〇p程度の台を設けること。
 8、調剤台と試験台は約一m以上の隔壁を設けること。ただし五〇p以上の流しにより区別する場合はこの限りでない。
 9、調剤室は薬事以外の他の用務に使用してはならないこと。
 10、調剤室内にはかぎのかかる貯蔵棚(毒薬棚)を設けること。
 11、冷暗貯蔵のための設備は電気冷蔵庫、氷冷蔵庫又はこれらに準ずるものであること。
 12、店舗は、道路又は通路に面する一三・二u(四坪)以上の面積とし間口は二・七m(約九尺)以上とすること。
 13、販売品目
 販売する品目を次のとおり区分する。
 医薬品及びこれに準ずるもの
 医薬品、毒物劇物、医療用具
 関連物品
 医薬部外品、化粧品、化学工業薬品、乳製品、育児用品、度量衡
 その他の物品

 14、医薬品以外の物品の売場面積
 イ、医薬品以外の物品を販売しようとするときは一三・二u(四坪)面積の外に増坪すること。ただし店舗面積が一三・二u(四坪)のときは、そのうち、一六・五u(〇、五坪)の範囲内で医薬品以外の物品を陳列することができる。
 ロ、関連物品及びその他の物品売場面積が医薬品の売場面積と同等以上のとき、又はその他の物品が医薬品以外の売場の二割を超ゆるときは原則として医薬品売場との間にガラス、板張り、又はこれらに準ずるもので隔壁を天井まで設けること。ただし隔壁には保安上巾一m(三・三尺)以内の扉を設けることができる。

 一般販売業

 第二条 薬事法第二十六条の許可を行なう場合の基準は次のとおりとする。
 1、試験室の面積は三・三u(一坪)以上とすること。
 2、卸売業又はこれらに準ずる者は倉庫を設けること。
 3、前二号以外の事項については、調剤室を試験室と読みかえ、第一条1、2、3、4、5、7、9、10、11、12、13、14の各号を準用する。

 薬種商販売業

 第三条薬事法第二十八条の許可を行なう場合の基準は第一条、11、12、13、14の各号を準用する。

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 SMに於る薬局等適正化に関する参議院社労委の決議

 第一回福岡県薬事審議会(十一月十日開会)に第二号議案として提出され、審議の結果、次回へ継続審議となった「参議院社会労働委員会決議」(厚生省よりの通知)は次の通りである。

 薬収第五六五号
 昭和三六年八月二八日
 各都道府県知事(大阪府を除く)知事殿
 厚生省薬務局長

 スーパーマーケットにおける薬局並びに医薬品販売業の適正化等に関する衆議院社会労働委員会の決議について本年七月三一日参議院社会労働委員会において別添のとおり標記について決議がなされた旨参議院より通知があったので、参考までに送付する。

 スーパーマーケットにおける薬局並びに医薬販売業の適正化等に関する決議

 参議院社会労働委員会昭和卅六年七月卅一日、参議院社会労働委員会の派遣視察団は、その調査視察の中で特に大阪市内における薬局並びに一般医薬品販売業の在り方につき、次の如き事項を発見したので現場の写真を添附して実情を報告する。当委員会は、厚生大臣の速やかな善処方を要請する。

 1 スーパーマーケット内に開設せられている薬局が、正規の基準に合致する試験調剤の施設を何等もつことなくして、新薬事法実施直前、旧薬事法による開設登録を大阪府が認めたことは、極めて適切でない。

 2 スーパーマーケットで一般医薬品販売業を営むものであって、その一隅を薬品部として対面販売を行っているようであるが、医薬品の一部は他の雑貨類と同様にセルフサービスの対象となっており、また雑貨類と混然として陳列されてある事実を見た。更にある店舗では、医薬品を土間に置いてあった。これらのことは、医薬品の特殊性を無視するものであり、且つ適正ならざる在り方である。

 3 薬局に非ざる一般医薬品販売業であって「〇〇薬局」の看板を掲げてあった。これらは明らかに違法行為である。然るにこのことは「株式会社〇〇薬局」となる商号に由来するものであるとのことであったが、かかる商号が誤って登記せられた場合には、直ちにその商号変更の登記を命すべきであるに拘らず、これを認めた形になっていることは、当局自らが違法行為を認めていることになる。

 4 新薬事法審議に際して当委員会は全会一致をもってする附帯決議を行ない、その第一に政府は速やかに医薬品の乱売阻止の対策を講ずべきであることを要請しておいたが、今回の視察においても乱売が依然として各所で行われている事実を見たことは、極めて遺憾である。このことは、単に大阪市内に止まらず、東京都を初め各地方でも同様の事態にあることを指摘する。

 5 右の附帯決議の他の項に、薬局等の開設に当り適正配置を考慮すべきことを要請したが、大阪府が内規をもって百米の距離制限を設けたことは、当委員会の決議にそう施策と考える。他の都道府県においてもこの種の方針をもって薬局等の開設許可を吟味することが、当委員会の決議の主旨にそうものと考える。右決議する。

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 薬用化粧品は部外品に染毛剤も同様告示

 厚生省は染毛剤、コールドパーマネント・ウェーブ用剤及び薬用化粧品を医薬部外品に指定する旨十一月一日左記の通り告示した。

 厚生省告示第三七八号
 昭和三六年二月厚生省告示第一四号(薬事法第二条第二項の規定に基づき医薬部外品を指定する件)の一部をつぎのように改正する。 第二号をつぎのように改める。
 二、つぎに掲げる物であって、人体に対する作用が緩和なもの
 (1)染毛剤
 (2)パーマネント・ウェーブ用剤
 (3)法第二条第三項に規定する使用目的のほかに、にきび、肌荒れ、かぶれ、しもやけ等の防止または皮膚若しくは口腔の殺菌消毒に使用されることもあわせて目的とされている物(いわゆる薬用化粧品)
 (4)浴用剤

 この場合において、この改正により新たに医薬部外品に指定された物(以下「新指定物」という)に係る薬事法(昭和三五年法律第一四五号。以下「法」という)による医薬品若しくは化粧品の品目ごとの製造若しくは輸入の承認または医薬品若しくは化粧品の製造業若しくは輸入販売業の許可を昭和三六年一一月一日にうけている者は、それぞれ、法による医薬部外品の品目ごとの製造若しくは輸入の承認または医薬部外品の製造業若しくは輸入販売業の許可をうけたものとみなし、昭和三六年一一月一日現に新指定物に係る医薬品または化粧品の製造業または輸入販売業の許可をうけている者が製造し、または輸入した新指定物(昭和三六年一一月一日以後の製造または輸入に係るものを含む)であって、その者が製造業または輸入販売業の許可についての法による最初の更新の時までに販売し、または授与したものについては、その直接の容器または直接の被包に法第五〇条または第六一条に規定する事項が記載されている限り、法第五九条の規定を適用せず、同条の規定の適用を除外された新指定物(人体に対する作用が緩和なパーマネント・ウェーブ用剤を除く)は、その販売または授与については、医薬品とみなす。

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 福岡県薬商組 理事支部長会 二十日県下総決起大会開催を決定

 福岡県医薬品小売商業組合では定例の理事支部長会を十一月十六日午后二時から薬剤師会館で開会し次の議案につき処理した。

 議案

 ▽第一回薬事審議会並に薬局基準の諸問題について
 白木理事長、藤野専務から報告並に説明があった。店舗面積の四坪と云うのは法規によって規定されているので問題はないが医薬品以外の物品を販売するために増坪する場合が問題であり、これに関連して隔壁の問題が起り、審議会でもこの点が議論の中心となったが結論を得ず継続審議となった。都市部と郡部とは営業状態もおのずから異なるので内規にも幾分の区別をつくべきであるとの意見も出たが、兎も角も次回の審議会は一月に開会される予定であるので、それ迄に内規に対し希望のある人はその要望の点を書類を以て提出して貰いたい。

 ▽公取への不公正取引に関する陳情の件について
 大島理事から不公正取引とSMなどの廉乱売との関連性について説明、現在では不公正取引の虞れがあるので陳情すべきであり、最悪の場合は断乎起つべきである。それに対処して現在充分予備研究に没頭しているわけである。

 ▽過怠金再審査委員会に於ける見解について
 協議の結果は執行部一任となり未だ解決に至っていない旨説明があった。

 ▽小倉東映その後の情勢と陳情に伴う署名運動の件
 白木理事長から「廿日迄に各支部に於て全県下の薬業者の署名簿を五部づつ作成し、陳情の猛運動を展開したい」と発言があったが、これに対し丘野支部長は「署名陳情運動も結構であるが、最早今日では県下全会員を率いて知事を始め関係当局に一団となって陳情しては如何」との意見発表があり、協議の結果本月廿日全県下会員により総決起大会を開催の上引続き関係当局に陳情することを決定して当日の理事支部長会を終了した。翌十七日は福岡地区に於ける緊急部会長会を開会し廿日の総決起大会開催の具体的方法について協議した。

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 福岡県校剤会理事会 矢野氏を高校保健会理事に推薦

 福岡県学校薬剤師会は理事会を十一月廿四日午后二時から薬剤師会館で開会し左記により報告並協議決定した。理事十名出席、教育庁よりは山下氏列席。

 ▽報告事項
 (1)九州地区学校保健研究協議会出席報告(渋田氏)
 去る九月十六・七日熊本市に於て開催(白川中学)されたが、特に注意を引いたのは学校保健委員会の運営状況で、生徒を中心として学校保健所を作り生徒が所長として凡てを処理していることであった。
 (2)日本学校薬剤師大会並全国保健大会出席及び県文化キャラバンに参加報告友納副会長から詳細報告があった。
 (3)県学校保健大会及び九州山口薬学大会校剤部会出席報告(矢野理事)
 薬学大会校剤部会では@器具の整備と試験法の統一A九州地区での実務講習会開催を決めた。

 ▽議案
 (1)実務研修会開催の件
 卅七年度の見透しがついてから実務を主体として一月下旬〜二月上旬に直方、八女、柳川、大川、福島に於て開催することにする。
 (2)未設置地対策について
 担当校、手当などを当分度外視して設置に努力する
 (3)保管器具と使用について
 数に於て充分でないので合理的使用に注意すること
( 4)高校保健会理事推薦の件
 福岡市の矢野憲太郎氏(福岡女子高校担当)を推薦することに決定した。以上にて理事会を終了した。

九州薬事新報 昭和36年(1961) 11月30日号

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 処方箋料設定と分業 福岡県薬協メーカー社保懇談会

 福岡県薬剤師協会では今回の保険診療報酬計算法の改正特に処方箋料の設定につき、その他社保事務全般に亘っての懇談のため、筑紫二十日会メーカーの医家関係職員を招待して十一月十三日午后一時から県薬剤師会館で懇談会を催した。主催者側は役員並に薬局委員。メーカー側は、三共、科研、和光堂、エーザイ、興和、森下、藤沢、大塚、武田、中外、大日本、第一、田辺、山之内、鳥居、日本新薬、稲畑の十七社から医家関係の職員が出席した。

 先づ須原専務理事の挨拶があって、次に工藤理事は、今回の診療報酬計算法の改正と共に、特に処方箋料の設定により十一月一日からは処方箋料(五〇円)を医師に支払うことになり、処方箋は従来より幾分出易くなったものと思われ、医薬分業の実績に影響あるものと考えられる。吾々は従来機会ある毎に、例えば医薬分業法の公布時、新医療費体系の設定時等に当って分業の推進を図って来たが、今回の処方箋料設定委は吾等にとって逃すことのできない機会でもあると思うので、貴方のご協力をお願いする次第である。と述べ、それより保険医療の内容、調剤との関係、保険の歩み、現在の運営、その他保険業務の全般について詳細な説明がなされた。

 次に薬剤師業の実地研究家であり優秀な薬剤師である中村大牟田薬剤師協会長から社保と分業問題、社保とメーカーとの関係、その他関連する一般問題について、その蘊畜を傾けての説明があり非常に啓発する処があった。それより座長に安部薬局委員長を推し、四島県薬副会長の挨拶後、懇談に入った。その主たる問答は次の様なものであった(協は協会側、メはメーカー側)

 協、この様な会を持つことについてのご意見を…

 メ、この種の会合は有意義であると思う。吾々の勉強がまだ足りないので次回にはもう少し勉強して来たい、又会社の幹部にも内容を能く伝えてこの方面に詳しい人を出席させたい。

 協、第一線に活躍されるプロパーの方の出席を希望する。

 メ、処方箋を発行すれば医師はどんな利益があるか瞭きり判る様、セールスポイント如きものを作って貰いたい、又薬局の受入態勢についてのリストも欲しい、文書でなくともプロパーが行った時にで結構です。

 協、リストは協会として作成することは一寸むつかしい。医薬品の貯蔵整備と各薬局との関係についてはプロパーの方が薬局を訪問された時大体お判りのことと思う。調剤はあの薬局がよいと云うことはおのずからお判りのことだと思う。

 メ、各薬局は先づ各自近くの医師と人間的関係を深かくし、処方箋の発行を促進できるのではあるまいか。

 協、勿論やれる薬剤師は従来努力しているが、今回の処方箋料設定の機期に外部からのPRは非常に有効でありプラスである。

 メ、薬局の方で利益のない処方箋の場合に断わる様なことはないか。

 協、現在の開局薬剤師は全薬剤師のためにも又後進開局薬剤師のためにも、仮令一時損をしても分業のレールだけは確かりと敷かねばならぬと考えている。医師に利益を与え分業を推進すれば、従って処方箋も多くなって利益をあげることができる。速急にはできぬでも薬局序列を作って除々に推選して頂きたい。

 メ、吾々もできるだけ側面から協力しますが、薬局側に於ても医師と充分連絡をとり内部を整えられたい。吾々メーカーとしては薬価表に未収載であり而も高価薬である製品の新発売に非常な困難を感じ、これがメーカーとしての隘路でもある。

 協、吾々の悲願を能く理解して頂きたい。個々にお願いせねばならぬが、今後もこんな会合を隔月位に催したいと思っている。次回は経験談などお聞きしたいと存じます。

 大体以上にて懇談会を終え夕餐を共にして散会した。当日の会合は主客共に真面目に而も熱意を持った懇談会であった。一般開局薬剤師はメーカーの分業協力の意向が奈辺に在るか、本懇談会内容によって能く理解し、処方調剤に対する準備と薬局充実を一日も早く心掛くべき義務を感ずべきで、処方箋発行の医師、処方箋持参の患者の軽侮を受けない様に覚悟すべきであろう。

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 薬劑師数(昭和卅五年末) 六〇、二五七名 薬局総数二一、一一九

 厚生省衛生統計調査部の集計によると昨年末(卅五年十二月末)の薬剤師の総数その他職業等は左記の通りであり、前年末より相当増加している。特に女子薬剤師の増加が著しい様である。

 ▽薬剤師総数=六〇、二五七名 内男子三七、八六七名 女子二二、三九〇名、前年(卅四年)末より男子七〇九名、女子は一、一五九名増加しており女子の進出が顕著である。

 ▽薬剤師の職業
 @薬局開設者=一四、四八六名 内男子一〇、五三〇名 女子三、九五六名、前年より一三九名増加
 A薬局勤務者=八、八六二名 前年より二三七名増加
 B病院診療所勤務者=九、五七五名、前年より三三七名増加。
 C大学に於て教育又は研究に従事する者=一、一四九名、四二名増
 D衛生行政又は保健衛生業務に従事する者=二、九九九名八二名増
 E医薬品営業(製造、輸入販売)従事者=一一、二三二名六四六増
 F毒物・劇物営業(製造輸入販売)従事者=六二一名、一名増
 G一般化学工業従事者=一、四〇五名、一二六名増
 Hその他=九、九二八名二五八名増
 これによって見るに医薬品営業従事者の増加が一番多く、薬局開設者や同勤務者が非常に尠ない。

 ▽薬剤師数の増減
 @多数増加の都道府県=東京の四六九名、大阪の二一三名、兵庫の一三〇名、愛知の一二四名、神奈川の一二〇名、北海道の一〇六名、埼玉の一〇二名等
 A増減ない県=和歌山、岡山の二県
 B減少の県=鳥取は一〇名、鹿児島は一〇名、島根は七名、富山は五名、長崎は五名、滋賀は四名
 なお昨年末の都道府県別薬剤師数及び薬局管理薬剤師数(薬局数)は次の通りである。

 都道府県別薬剤師数(多数順)括弧内は薬局管理者数
 東京 一三、〇六三(三、八六六)
 大阪  五、七五二(二、一一八)
 愛知  三、九二七(一、五〇二)
 兵庫  三、三六九(一、〇四一)
 神奈川 二、六二二(  九五八)
 福岡  二、三二〇(  八七五)
 京都  二、一七二(  五九九)
 北海道 二、〇五二(  六六五)
 千葉  一、五七四(  五四一)
 静岡  一、四九五(  六二一)
 埼玉  一、二八三(  四六三)
 広島  一、一八五(  五一一)
 岐阜  一、一四〇(  四〇九)
 富山  一、〇九三(  一九〇)
 熊本    九一四(  三六四)
 三重    八五六(  三五五)
 山口    八二二(  三四八)
 長野    八一二(  三一七)
 宮城    八一〇(  二九一)
 岡山    七四三(  三三三)
 新潟    七二一(  二二〇)
 奈良    七一九(  一八九)
 茨城    六八四(  三〇一)
 長崎    六八四(  二九三)
 福島    六六一(  二三一)
 和歌山   六〇四(  二七六)
 群馬    六〇〇(  二四四)
 石川    五九七(  一九四)
 徳島    五五〇(  一九四)
 栃木    五三三(  二二四)
 香川    四九八(  二〇七)
 大分    四八四(  二二六)
 愛媛    四八〇(  一九九)
 岩手    四五八(   九九)
 滋賀    四五五(  一三八)
 佐賀    四二〇(  一九八)
 鹿児島   四〇七(  一九四)
 山形    三九一(  一三〇)
 福井    三六七(  一六五)
 青森    三四二(  一〇六)
 高知    三三八(  一六〇)
 秋田    三二〇(  一一八)
 宮崎    二七七(  一〇五)
 山梨    二六七(  一一三)
 島根    二五九(  一二六)
 鳥取    二三九(  一〇一)
 合計 六〇、二五七 二一、一一九

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 福岡県下薬業者 巍然として起つ 福岡県薬業総決起大会
 会する者八百名一団となって陳情

 檄!!

 組合員総蹶起のとき来る。今や小倉東映会館に大資本に依る薬品部が進出せんとしているとき吾々小売零細業者は之を黙然と傍観して組合員幹部諸士の労苦のみに頼って阻止出来得るや否愈々吾人の強固なる団結行動をなすべきときが到来したのである。薬務行政の確立を願い医療行政の一端を荷う我々の前途の暗雲を一掃し、口約束のみによる許可は絶対に許す勿れ。

 福岡県薬事審議会の早期開催を願いこの事を諮問せよ、大資本によるスーパー薬品部進出せし地区の諸例を見よ。決して大廉乱売地区の前テツを踏むな。甘言に乗じられ無為無策、出来てしまえばどうしようもないのが現状ではないか。時期を失し悔を千載に残すこと勿れ。敢えてここに総員総力を結集し、小倉東映会館薬品部開設絶対反対を叫ぼうではありませんか。

 ◆昭和卅六年十一月廿日福岡県薬業者総蹶起大会 福岡県下の薬業者終に起つ

 十一月廿日午前十一時福岡商工会議所階上大ホールに於て総決起大会が開かれ、地元は勿論県下各地からあらゆる乗物を利用し、貸切バスなどで福岡に乗り入れ、定刻十一時には約八百の業者が参集、流石の大ホールも立錐の余地なきに至った。

 会場正面には「医薬品の囮化を粉砕せよ」「大資本攻勢から零細小売業者を守れ」などの七、八種のスローガンは白竜の如く場内を睥睨している。

 定刻、須原氏司会し福田氏の開会の挨拶、来賓県会議員江口、中村、田中、向井坊、山下の五氏交々起って祝辞と激励の言葉を述べて挨拶、次いで白木県薬商組理事長は小倉東映問題について詳細な経過報告をなし、座長に古賀治氏を推して直に会員の意見発表に移った。

 五郎丸会長、四島副会長、深田県薬業士会長、形井理事、長野副会長、相次いで壇に起ち、東映問題を主軸とした医薬品部設置許可に対し、真向から反対意見が吐かれ異口同音に「吾等は法律によって、のがす処なく束縛されているが、法律によって護もられていはいない…」と叫び、吾々は一致団結、断乎として秩序を破壊するが如き許可を阻止せねばならぬ。と悲愴な絶叫は軈て意気軒昂、満堂を圧する思いがあった。茲に安部氏によって左記の宣言、決議文が朗読され満場破れんばかりの拍手の裡にこれを決定した。

 宣言

 乱立乱売にあえぐ県下小売業者は、過酷な不況克服のため、先に県医薬品の小売商業組合の設立認可を受け、自主的にこの解決に日夜努力しあるに、自己利益追求に倦くなき大資本業者による売名的乱売搾取を企図するスーパーマーケット類似業態の進出に対し、薬品の特殊性と、大衆の保険治療の完璧を期するため、県下薬業者一丸となって、断固粉砕排撃する事をここに誓う。
 右宣言する。
 昭和卅六年十一月廿日
 福岡県薬業者総蹶起大会

 決議

 我等県下薬業者の総力を結集して医薬品の特殊性を守るため、左記事項を強力に推進する事を決議す
 一、医薬品の乱売を防止せよ
 一、医薬品の囮化を粉砕せよ
 一、大資本攻勢から零細小売業者を守れ
 一、スーパーマーケット業態の薬品部進出に終止符を打て
 一、保険薬局の適正配置により国保の完璧を期せ
 一、保険治療の完璧のため医薬品の純度を守れ
 昭和卅六年十一月廿日
 福岡県薬業者総蹶起大会

 この時小倉の角田氏より「この盛大な意義ある決起大会をこの儘終らず、引続き全員一団となって行政関係方面にこの問題について陳情したし」との緊急動議が提案されたが、忽ち満場賛成、これを一気に決定し、吉柳氏の閉会の挨拶、岡野氏の音頭により万才三唱して一応閉会、それより直に八百の業者は一団となって県庁に向い、正副知事、総務、衛生両部長、県議会正副議長、及び社会、自民両室に一団は整然として陳情し、一同は大いに期する処があった。

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 福岡県薬剤師協会 理事・支部長合同会議
 東映問題、県下総決起大会開催決定

 福岡県薬剤師協会では第七〇回理事会、第八四回支部長会合同会議を十一月十八日午后二時から薬剤師会館で開会し左記により報告並に協議をなした。

 ▽議題

 (1)第一回福岡県薬事審議会報告(五郎丸会長)
 薬局及び医薬品販売業構造設備基準内規に関する第一議案については結論を得ず継続審議となったが、次回審議会に於て決定するものと思われるので、要望があればその希望の点を通知して貰いたい。次にSMの薬局並に医薬品販売業の適正化等に関する先の参院社労委の決議に関する第二議案については、その決議内容の要点が乱売防止、引いてはこれがための距離制限問題などについてであるが、当日は結論を得ず第一議案と共に次回へ継続審議となった。県側では既存の薬局薬店の密集状況を調査の上次回再び審議することになった。次に第三議案である。「薬事審議会運営規程案」は原案通り異議なく議決々定した。

 (2)九州山口薬学大会報告(長野副会長)
 既に会員は充分知っているので簡単に報告があった。

 3)薬学講習会報告(工藤理事)
 日薬より福岡には谷岡専務、小倉には滝川常務の両理事来県、経済問題の講演があった。二会場の総出席者は三六八名で開局者の半数にも達しなかったことは洵に遺憾なことであった。

 (4)福岡県文化キャラバンについての報告
 十一月四日京都郡犀川町で行われたが、田川、福岡の学校薬剤師十数名が応援に出張し、医師処方箋一〇六枚三三三剤の調剤をなし、一一八件の水質検査を実施した。医師会との融和薬剤師の地向上にも非常に役立ったと思われる。

 (5)NHK歳末たすけあい運動開催について
 十二月十八日久留米市に於て実施が決定しているが十六日に現地で折合せ会を開いて具体的な仕事を決定したい。主として調剤、なお環境衛生に関することも実施したいと思っている。

 (6)社会保険懇談会について
 十一月十三日福岡市所在のメーカー十八社の出席を得て「今回の処方箋料設定と医薬分業」について種々問題を検討、懇談をなし相互啓発する処があった。近く県薬協で保険薬局名簿を作成してメーカーに配布することになっている。

 (7)睡眠剤の取扱いについて
 睡眠薬の取締り並に取扱いについての県薬務課長からの通知について説明があった。既に社会問題化しているこの件については吾々会員は充分にその事情を承知しているので批判の的にならない様取扱いに注意して貰いたい。

 (8)麻薬小売業者の免許申請について
 県衛生部長の通達によると県下開局者の麻薬小売業者免許取得数が逐年減少を来している模様であるが、保険医療機関の一つである薬局は、麻薬処方箋調剤の準備の意味に於ても麻薬小売免許を取得しおく必要があると思われるので、この点開局者として充分留意して貰いたい。

 (9)薬価基準一部改正に就て
 日薬雑誌第十三巻第十一号に掲載されているので熟読能く研究して貰いたい。

 (10)計量協会について(吉柳支部長)
 薬剤師団は会費等果せられた義務に就ては責任を果す心算であるから、何等申請もせず無断販売者に対しては取締りを厳重にして貰いたいと当局に申込んである。各支部から要望があれば検定に巡回するので左様ご了承願いたい。

 (11)学校薬剤師設置の推進とベースアップについて(早川県校剤会長)
 七月の調査によると本県に於ける設置率は七二%であるが、県下二〇市では九〇%、郡部ではこれに反し実に四四%の低率である。その理由は財政的のもの二一%、薬剤師が不幸にして居ないもの二一%、人選中のもの六一%、日和見的のもの三九%、不明一二%となっている。財政的のものはさらに折衝を推進すれば設置の見込みは充分にある。薬剤師の無いもの及び人選中のものは能く話合えば解決すると思われる。日和見的のものは時日のたった今日では積極的に推進すれば目的を達し得るであろう。原因不明のものは?々折衝を重ねて努力することによって解決するものと考えられるので、恐らく努力次第では本県が一〇〇%に達することは左程困難事ではないと思われる。ベースアップについては好き例が八幡等にあるのでこれを参考に積極的に努力し一歩一歩前進したい。

 (12)時局対策(四島副会長)
 今日の中央情勢について見るに日薬に定款一部改正の問題がある。勤務薬剤師団に関するものが中心であるが、これは日薬の検討に一任することとなろう。経済面では全国協組連合会結成、商組連合会との関係など茲に面倒な問題もあろう。又日本薬業協会の進展は相等時間を要するものと思わねばならぬ。メーカーとの折衝など、解決は決して容易なものではないと覚悟せねばならぬ。次に小倉東映問題がある。吾々開局薬剤師には第一に処方箋調剤、第二に医薬品の販売の職業的使命がある。然るに第一の処方箋調剤の前提である医師の処方箋発行は、現在実に微々たるもので経済上幾何のタシにもならぬ。洵に遺憾千万な現実である。これがため吾々は全力をあげて第二の医薬品販売に依らなければならぬのである。従って、これによって生計をたてることになる。無計画な政府の、薬剤師養成、医薬品販売業の許可等々のため、薬局の医薬品適正販売さえ危うくなっている今日、売らん哉主義のSM東映に医薬品の販売を許すことは薬業界の混乱を来すことになる。新薬事法は吾々の期待を裏切って経済面には何等プラスにはならなかった。法文の不備を其儘行政面に反映させることは、悪徳業者程繁栄することになり、SMなどこれに拍車をかける結果となるので、吾々は徹底的に反対せざるを得ないのである。この意味に於て小倉一地区の問題でないので県薬、日薬、厚生省とこれを採上げて努力しているのである。

 次に白木県商組理事長は「一昨年から十七のSMの中事情止むを得ず四ヵ所に医薬品部が設置されたが、その他の十三ヵ所は阻止に成功した、今や小倉東映に反対する理由中特に千日(現金問屋)が直接営業に当ることに問題がある。佐世保の例がこの間の実情を能く現わしている。小倉の東映が成功すれば県下各地に同様のものが出現することは火を見るより明かであることを吾々は覚悟せねばならぬ。現に、最初の予想を裏切り島田社長の子息の名により申請がなされている模様である。吾々は一致団結これを阻止せねばならぬ。その第一段階として明後日二十日に薬業総決起大会を開き、引続き関係方面に陳情運動を展開することを茲に提案する」と述べ、満場一致これを採択、協議決定した。具体的方法としては二十日午前十一時から福岡商工会議所三階ホールで開会、各支部長は各地区会員を率いて来会し、閉会後知事を初め関係方面に総員一団となって陳情することを決定して当日の理事、支部長合同会議を終了した。