通 史 昭和36年(1961) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和36年(1961) 7月10日号

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 薬界◇◇随談

 ▲サロンパス台湾で地元出資と久光兄弟の半分出資で現地生産月額一千万円、これは台湾政府が昨年から薬品の輸入を禁止し其の間闇品が横行するので合併製産にふみきった。

 ▲青葉薫る北海道いよ?日本薬学大会開かる、来年からは年次大会は数年おきに開かれ、各分科会の大会が日本の何処かで開かれるので綜合の薬学大会は最后でいわば記念の大会でも有り有意義でもある。大陸気分の若葉の北海道大会は到る処で人を待っている。

 ▲中央医療協、医療担当者、医歯薬の三団体缺席の儘開会、政府は一点公約の一円五十銭値上げと往診入院歯科ホテンの値上げも考へる。保険者側難色をあらわす。少々の値上は成す可きである。だが県当局が正式決定迄値上げする可きでないと医師会に警告している処もある。

 ▲日本医師会七月一日より一点単価十一円五十銭の計算で窓口徴収にふみきる。厚生省は決定せざる内に値上げされては困るとふくれる。

 ▲厚生省京都など乱売の劇しつ関係五府県の薬務主管課長会議を開く。協議は流通問題である。

 ▲映画館がテレビに喰われ休廃館も出来て来た。ぼつぼつこの映画館がスーパーに転向して来る事は厳に警戒を要する可きではないか。

 ▲薬品の乱売禍は日本の隅み?まで伝波した。全国小売薬協が大同団結化を呼びかけている。スーパーの囮販売、薬業々者間の対立乱売、卸店の小売や事業所廉価納入販売で小売業者への圧迫と小売業者への圧迫と小売業の売上げ激減等々数へれば限りがない。

 ▲北海道での薬学大会の日薬総会で剤会功労者として表彰される武井勇君と筆者は同期生であり、仝君は在学中も優秀性で茨城県の出身?卒業以後永く交際を続け年一回以上は会い語っている。仝君私法人公法人に続いて現在の東京府薬出の代議員であり府薬の役員として三十余年其の切績は大きい。筆者と共に母校の助手を同年代につとめた。若い時は男振りも良かったんだが仝君のづうづう弁には弱ったものだ。(GT生)

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 福岡県薬業懇談会 七月例会 県薬事審議会規則について

 福岡県薬業懇談会七月例会が十二日午後一時半から薬剤師会館で開会され出席者は次の通り
 メーカー側=三共、塩野義製薬、第一製薬
 卸業者側=大黒、鶴原、波多江
 小売業者側=白木、須原、四島、藤野、深田、形井、吉柳
 県庁側=佐々木薬務課長補佐、大庭技師
 尾崎課長は課長会議のため当日欠席、佐々木補佐挨拶に引続き左記(一)(二)の事項について詳細な説明をなした。

 (一)福岡県薬事審議会に就て
 新法第四条に明文化された地方薬事審議会は既に五県に設置されている。条例による付属機関であるため県当局としてはこれ等の機関は減す傾向にある今日新たに設置することには消極的であったが、衛生部としては新法の行政上よりよき行政を期するため、又九州の雄県である福岡県が他県に魁けてその範を示さねばならない意の下にその設置を実現せしめたわけである。福岡県条例第三十九条によって「福岡県薬事審議会」が出来上ったのである。佐々木補佐のこれに就ての説明によれば、その内容の概略は次の様なものである。

 目的
 第一条 附属機関の設置に関する(S二十八年福岡県条例第三十九条)第三条の規定に基づき、福岡県薬事審議会の位置、所掌事務、組織、委員、その他の構成員及び運営等に関して必要な事項を定める目的。

 位置
 第二条 福岡県衛生部薬務課内に置く所掌事務第三条知事の諮問に応じて次の各号にかかげたる項について調査審議する。
 @薬事従事者の研修その他資質の向上に関すること
 A薬事衛生思想の普及向上に関すること
 B医薬品等の取扱いの適正に関すること
 C医薬品の広告の適正に関すること
 D農薬等毒物又は劇物による危害の防止に関すること
 E医薬品等の生産振興助成に関すること
 F医薬品等の流通に関すること
 Gその他の薬事に関すること

 組織
 第四条 審議会は委員十五人以内で組織する。

 委員
 第五条 委員は次の各号にかかげる者のうちから知事が任命する。
 @学識経験を有する者
 A薬事に関する業務に従事する者
 B関係行政機関の職員
 前項第一号及び第二号に掲げる者である委員の任期は二年とする、再任はさまたげないことになる。

 会長
 第六条 審議会に会長を置く
 2、会長は委員が互選する
 3、会長は会務を総理し、審議会を代表する
 4、会長に事故があるときはあらかじめ委員のうちから互選された者がその職務を行う

 会議
 第七条 審議会の会議は会長が招集する。
 2、会議は委員の過半数が出席しなければ議事を開き議決を行うことができない。
 3、会議の議事は出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは会長の決するところによる。

 幹事
 第八条 審議会に幹事を置く。
 2、幹事は県の職員のうちから知事が任命する。
 3、幹事は審議会の所常事務について委員を補佐する。

 庶務
 第九条 審議会の庶務は薬務課で処理する。

 補則
 第十条 この規則に求めるもののほか審議会の運営に関し必要なる項は会長が定める。

 附則
 この規則は公布の日から施行する。
 以上が佐々木氏の審議会に関する説明の骨子であったが、これとは別に委員として業界の噂さにのぼっているのは

 @学識経験者=五名の内一名は公益代表者となる模様であり、大学教授二名(薬学関係で塚元九大薬学科主任教授、経済関係で岡橋保氏)県会議員古賀治氏、中小企業関係で原田平五郎氏。

 A薬事関係薬務従事者=七名の内県薬協会長五郎丸勝氏、県薬業士会長深田徳治郎氏、県製薬協会長高杉義照氏、県医薬品卸業協会長大黒清太郎氏、県医薬品小売商業組合理事長白木太四郎氏、県薬業協同組合連合会長、筑紫二十日会代表。

 B関係行政機関職員=県衛生部長、県商工水産部長、福岡通商産業局商工部長であり、外に幹事は薬務課長、県商工水産部商工第一課長が想像されている。

 (二)薬局、一般販売業及び薬種商販売業の許可基準内規について
 大阪府では既に許可基準内規を公表し実施しているが、その内容特に矩離制限など相等剤界でも論議され批評されている。行政上内規の必要は各府県共認めている処であろうが、福岡県に於でも必要を認め具体的内容につき即ち店舗の面積販売品目、医薬品売場並に医薬品以外の物品売場面積或はその関係など、その他について検討中の模様である。殊に矩離制限の可否など特に慎重調査検討中と云われている。

 これに対し小売側の有力な希望意見としては「若し矩離制限が実際面に於て不合理となり実施不可能とすれば、矩離にこだわらず抽象的に制限をうたう必要があり、薬局薬店の新規開設は医薬品の特殊性に鑑みて容易に許可されるべきのものでないと云う印象を、強く与える様内規作成に当って善処されたい」と云うことである。薬局薬店の向え三軒両隣りに新たに薬局薬店が開設されたとすればいきおい競争乱売を惹起することは火を見るより明かであるからである。

 (三)県内薬業界現況に就て
 形井氏から小倉に於ける東映問題について説明があり、白木氏から福岡地区に於ける小売三団体の中合せによるメーカー、卸業者に対しての要望事項の説明があり、引続き商組現況について報告があった。

 (四)その他
 近く福岡県薬事審議会が発足すれば従来の県薬事協議会は自然解消となるが、本懇談会は存続することとなろう。然し県薬事審議会との関係上若し関連性を持たするとなれば構成メンバーの異動或はその機能について相等考慮する必要を生ずるのではないか、次回懇談会迄に充分研究の上各自意見を発表されたいと佐々木補佐は要望した。以上にて懇談会を終了散会した午後五時。

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 福岡県業界が待ちに待った 薬事審議会規則公布

 福岡県条例第三十九号の附属機関の設置に関する条例の一
部を改正する条例が七月一日付で公布され、愈々県薬事審議会が設置されることになった。審議会の規則の全文は次の通りである。  福岡県規則第  号
 福岡県薬事審議会規則

 (趣旨)
 第一条 この規則は、附属機関の設置に関する条例(昭和二十八年福岡県条例第三十九号)第三条の規定に基づき福岡県薬事審議会(以下「審議会」という。)の位置、所掌事務、組織、委員、その他構成員、及び運営等に関して必要な事項を定めるものとする。

 (位置)
 第二条 審議会は、福岡県衛生部薬務課内に置く。(所掌事務)
 第三条 審議会は、知事の諮問に応じて、次の各号に掲げる事項を調査審議し、意見を答申するものとする。
 一、薬事従事者の研修その他資質の向上に関すること
 二、薬事衛生思想の普及向上に関すること
 三、医薬品等の取り扱いの適正に関すること
 四、医薬品の広告の適正に関すること
 五、農薬等毒物又は劇薬による危害の防止に関すること
 六、医薬品等の生産振興助成に関すること
 七、医薬品等の流通に関すること
 八、その他薬事に関すること

 (組織)
 第四条 審議会は、委員十五人で組織する。

 (委員)
 第五条 審議会の委員は、次の各号に掲げる者のうちから知事が任命し又は委嘱する。
 一、学識経験者 五人
 二、薬事に関する業務に従事する者 七人
 三、関係行政機関の職員 三人
 2.前項第一号及び第二号に掲げる委員の任期は二年とする。ただし、再任を妨げない。
 3.補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする
 4.知事は委員が心身に故障があるため、職務の遂行ができないとき、または委員たるに適しない非行があるとみとめられるときは、前二項の規定にかかわらず当該委員を解任し又は委嘱することができる。

 (会長)
 第六条 審議会に会長を置く。
 2会長は、委員が互選する。
 3会長は、会務を総理し審議会を代表する。
 4会長に事故があるときは、あらかじめ委員のうちから互選された者が、その職務を代行する。

 (会議)
第七条 審議会の会議(以下「会議」という。)は会長が招集し、会長が議長となる。
 2会議は、委員の過半数が出席しなければ議事を開き議決を行うことができない。
 3会議の議事は、出席した委員の過半数で決し可否同数のときは議長の決するところによる。

 (幹事)
 第八条 審議会に幹事を置く。
 2幹事は、県の職員のうちから知事が任命する。
 3幹事は、会長の命を受け審議会の所掌事務について委員を補佐する。

 (庶務)
 第九条 審議会の庶務は、福岡県衛生部薬務課で処理する。

 補則)
 第十条 この規則に定めるもののほか審議会の運営に関し必要な事項は、審議会の議を経て会長が定める。

 附則
 この規則は、公布の日から施行する。

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 福岡県薬剤師協会 第八一回支部長会 開会

 福岡県薬剤師協会では第八十一回支部長会を七月十日午後一時から薬剤師会館で開会、欠席支部は筑紫、三井、八女、築上の四支部で出席率は良好であった。五郎丸会長の挨拶後直に次記の通り議事に入った。

 (1)中央情勢並に九州山口各県薬協会長会議報告(四島副会長)
 中央剤界並に業界の現況についてその概要を述べ、次いで去る五月廿一日別府に於て開催した九州山口各県薬協会長会議の決議事項について@九州各県薬務課長会議に要請した事項は全部解決したわけではないが、意のある所を能く了解して貰った。A九州薬学大会に関しては今後各県各自々県の事(出席、旅館などその他)については自ら纏めることとなった。B校剤師の問題については今一応日薬本部に照会善処することになった。Cなお本会長会議の経費については大会負担金の内から計上することになった。

 (2)薬事審議会設置促進状況について(四島氏)
 新薬事法公布後本県衛生部長並に薬務課長など、新法実施となれば本県に於ては速かに審議会設置を企画すると約束されていたが、四月県会には種々の事情で提出できなかったので、六月県会に当って県当局一層の努力によって提出通過を見るに至った。設置規則については茲二、三日中に県執行部から提案近く決定する見透しである、愈々これが発足すれば所謂福岡県方式など正式に成立する様な形となる見込みでもあり、業界にとっては一歩前進と云うことになる。

 (3)委員会打会報告並に委員会編成及び諮問事項について(四島氏)
 先の代議員会で、本会の運営、事業の推進は各委員会独得の活発な運営を活用すべきであるとの要望に基き、各委員会幹部による打合会を去月十日開催、その討議、決定内容について詳細な説明報告があった。(別掲)

 4)未納会費の状況について各種未収会費一覧表について工藤氏から説明があった。一覧表によれば@過年度協会費計四二、〇〇〇円A過年度特別会費計一四六、九〇〇円B計量協会費計八七、〇〇〇円であるが、計量協会費につては未だ一回の入金もない支部が七支部(粕屋、筑紫、柳川、大川、若松、戸畑、小倉、門司)ある様である。

 (5)県薬会報発行について
 工藤氏からその内容について説明があった。

 (6)日薬会員名簿と第七改正日本薬局方配布について
 名簿は有料配布、薬局方もでき次第申込者に配布することになる。

 (7)顕微鏡、調剤録、業務日誌について
 顕微鏡は日薬の斡旋でオリンパス一割五分引きとなったので、県薬で代金取纏めて日薬に申込み現品は各注文者に直送される。なお福岡市の井本医療器に直接相談されてもよい。調剤録業務日誌については日薬案が厚生当局及び全国薬務課長会議で了承を得た形式。その成品見本が近く送って来ることになっているのでその結果により本協会は決定することにする。

 (8)八幡市立病院々外処方箋発行に就て
 現在全国的にみて院外処方箋の激減する傾向に在るが独り八幡に於ては市立病院々外処方箋が非常に増加している事情について長野氏から詳細説明があった。(本紙第四五四号紙記事参照)なお若松に於ける処方箋事情について古賀氏より説明があった。

 (9)保険業務について
 @保険調剤録と分割調剤について説明A保険講習会開催に関するアンケートに関しては対象を役員、支部長として総数四四枚、回答数二七枚で六一・三%の回答率となる。「講習会は必要か」に対して「必要だ」が絶対多数、「講習会の開催は」に対して「地区毎に」が絶対多数、「講習課目は」に対し「請求事務」がこれ亦絶対多数「講師は」に対しては「支払基金係員」が大多数、「開催時期は」に対して「十月」が多数、「講習時間は」に対し「三時間」がこれ又多数であった、B生活保護法に関しては「昭和卅一年六月一日県薬会報」に詳細説明があるので参照されたい。C結核予防法による調剤については昭和卅二年六月の日薬パンフレットを参照されたい。D調剤報酬と所得税との関係については法人と個人とでは大なる相違があるので目下日薬で当局と折衝中である旨、以上親切に工藤理事から説明があった。

 (10)薬学講習会について
 ▽必須課目=?最近の抗生物質製剤、?第七改正薬局方に於ける試験、▽選択課目=?社会保険、?薬事薬業関係法規?新しい剤型とその取扱、?大気汚染、?その他、となっているが九州各県では例年通りに実施したいので、八月各県会長会議に於て決定することになっている旨報告。

 J新補充理事について 二名欠員の内一名は「久留米大薬局長林真一氏を決定、他一名未定。

 (12)理事会、支部長会開催時期について
 開催の場合は月の一〜五日理事会、五〜十日支部長会とする。

 (13)薬剤師憲章配布について支部長は新入会者などに残余のものを配布されたい。

 (14)支部表彰内規改正に就て内規について一部会員の希望もあるので支部長で希望意見があるならば希望案を年末迄に提出されたい。

 (15)その他
 パラミン等要指示薬外乱用される薬品については昨年六月の会報を参照して善処されたい以上にて支部長会を終了。

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 福岡県病薬 本年度総会

 福岡県病院薬剤師協会では第六回総会を左記により開催することになった、東大教授野上寿薬博の講演を聴くことになっている。

 ▽日時=八月五日(土)午後二時から
 ▽会場=市内須崎裏町農協会館
 ▽総会=庶務、会計報告、予算書類等は印刷当日配布する
 ▽講演=欧米の病院薬局について−東大教授兼薬局長薬学博士野上寿氏
 ▽懇談会=六時終了予定

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 挾子

 ▼医療費値上げ問題が日本医師会と厚生省との間で激しく論議される様になり社会問題化して以来、国民の一人として色々と思ってはいたが、一向まとまらなかった事を、左記七月廿二日付朝日新聞の「天声人語」を読んだ時、グングン引出して貰った様な感じ。兼ね兼ねこの「天声人語」は敬意を以て毎日たのしく読んでいたものであり、今日は腹の中がスーとした思い。医師会も武見会長も再読三読よくよく反省すべきである。もう一度国民のすべても政府は勿論のことこれを味読して対処すべきである。七月廿二日付朝日新聞の「天声人語」をこの「挾子」の欄をかつて転載しました。(鉄棒子)

 「天声人語」

 日本医師会・歯科医師会が八月一日から保険医を総辞退すると声明したが、まさか本気ではあるまい。内閣改造で厚生大臣や自民党三役が変わったのを機会に威力偵察をかけたものだろう。

 ▽辞退届がアッサリ受理されることはないとタカをくくってのことではないか。もし本当に受理されたら、「天下の名医・国手」は別として普通の開業医は「めしの食い上げ」になってしまうからだ。

 ▽切り札をあまり早く出すのは下手なトランプだ。保険医総辞退は日本の健康保険制度を根本からゆるがすもので、それこそ最後の切り札だ。それを使ったら、もうあと切り札はない。これは、「伝家の宝刀」として抜かないところに無言の味がある。

 ▽開業医の窓口に「保険診療はしない。診療報酬は医師会できめた基準で現金でいただくなどの予告掲示をするという。つまり「自由診療」でどんな高い薬でも使うが、窓口で現金を支払いなさい。そして負担の配分は患者と保険団体で勝手にやりなさい。というわけだ。

 ▽個々の医師が自分の信念と計算で保険医をやめるのは自由だ。武見さんも保険医はやっていない。が、右へならえで全国一せいに総辞退というのは、医師会も軍隊か労組のようでおかしい。そんな指令に従わぬ良識ある医師も少なくあるまい。

 ▽医師会として、わが国の社会保障制度の大きな柱である健保を土台からひっくり返そうと本気で考えているのだとしたら、ゆゆしいことだ。それは国民を「敵」に回すことにもなり、戦術としても賢明でない。

 ▽民主社会では何事も国民を味方にし、世論の支持がなければ、うまくいくものでない。一時は政党幹部を抱きこんだり、政府をおどすことができても、あまり高姿勢の横車は国民の反感をますばかりになろう。

 ▽健保制度にいろいろの欠陥や不合理のあることは国民も知っている。が、その是正は中央医療協議会などに委員を出して堂々とやってもらいたい。国民は医師をいのちの綱とも頼み尊敬もしているし、医学・医術の進歩する条件をも望んでいる。が「医は戦術」の面が露骨に出すぎて、たびたびおどかされるのでは、国民こそいい迷惑である。

 ▼福岡県の学校薬剤師設置率が七月一日現在で六八、三%だそうだ、県校剤会長初め本部地方関係幹部のご努力に感謝したい。薬剤師の真の姿は完全分業にならない限り校剤師である。これに引かえ県で二十市の内某一市には全々校剤師の設置がない様である。淋しいことだ。

 ▼国保組合員で二年以上も保険料を滞納し、脱退もせず、シャシャとして知らぬ顔している人物がままあるらしい。福薬国保組合にもそんなのが二、三人あるらしい噂さをきく。その内に何とか形がつくだろうがはづべきことだ。

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 ◇人生の理想◇ 横倉廉吉

 国際間の対立から延いては、国内の社会闘争、個人間の競争等々、全く世の中がヒステリーに陥って終ったかの如き観がある。悪いのは相手ばかりで、誰あってじぶんが悪るかったと思ふ物もゐない有様である。妥協と闘争の混織で、色々方法論的な行方を変へて見たところで、最後に自身の立場を温存して行く限りは、闘争の再現は免れぬ。現在の凡ての方面の行き方は窮極まで詮じ詰めて行けば、果しない闘争を聨続して居るのである。

 国際間の問題では、国際連盟といふものがあり、我が国の労働運動には、労働調停委員といふものがあって、一応、対立を解きほぐす役割を果して呉れるとはいえ、これとても、真の解決を齎すものとは誰しも認めてをらぬであらう。それは恰も昔譚の三人の修行者の如き考へ方を出でぬからである。昔、三人の修行者が相諮って、無言の行やらうといふので、山寺に入って、座禅をした。その一人がクスッと笑った。次の一人が「無言の行といふのに、何故、笑ったか」といった。残りの一人が「黙って居るのは、自分一人だ」といって、結局三人共、無言の行を破って終ったといふのである。

 対立の焦点になって居る諸問題に就いての、今日の互の談判折衝は不必要とはいはぬ。否、大いに必要である。然しそれよりも更に更に必要な大問題は各自の闘争の根源を自覚することである。換言すると、真実の境地を體解し、おのが闘争心の根元を自覚することによって、始めて真の平和の境地も現はれよう。自己経営の安定も期せられやう。

 知足安分の一面がありてこそ、真の確乎不抜の積極性も出て来やう。それなくては飢えた狼が、肉を求めて走るが如きものである。筆者と同年の縁者があった。家督の財産を争ふこと真に十年を閲した。終に相手と折半といふことになって、半分を襲いだ。半分といへども、普通人が食はずに働いても一生出来る筈もない巨万の富である。彼は、筆者が茲に述べたやうな心境を味はってゐたならば、更により以上の社会的活動をして、人も我も父祖の恵沢を蒙って居ったであろうが、人柄がやさしくても心は飢えたる狼であったのである。相場に手を出して、襲いで三年経たずして全く失って終った。

 また、中学時代の英語の本に狼が血を吸ふと、益々激しく人を襲ふ話を読んだことがある。我々もそれである。心、自己の闘争心を推破するに非れば、財が積れば、益々欲心に燃え、親子、兄弟までも苦しめて、果しないこと世上多い事実である。

 理にかなへば、闘うもよからう。闘うなら、宮本武蔵のやうに、真剣勝負たるべしである。然し宮本武蔵の剣の達人は、心底の脱却から出たもので、衆を頼んで目を相手にばかり向けて居るやうな、空虚なものではない。一生の間、相手ばかり睨みつけて、過ごしたところで、闘争が激しくなるばかり、昭和三六年を転期として、心の平衡をとりもどす機運になって欲しいものと思ふ。(遺稿)

九州薬事新報 昭和36年(1961) 7月20日号

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 福岡県医薬品小売商業組合 第十四回理事会並支部長会
 県薬事審議会規則について

 福岡県医薬品小売商業組合では第十四回理事会並に支部長会を七月十四日薬剤師会館で開催した。

 理事会
 午前十一時開会、白木理事長外理事八名出席先に若松市の田中薬店が行った広告行為が調整規程第八条違反の疑を生じ、監査員これを監査し、その結果の監査報告に基き当日の理事会でこれに対する過怠金の審議をなしたが、田中氏はその事実を認め、今後一斉過ちなき様充分注意する旨を述べ理事並に出席関係者の大多数は田中氏の態度に好意を持ち、慎重審議の結果は「過怠金の額並に徴収方法」を理事長一任と決定した当日は若松の商組関係者の柴田、古賀、近藤、松島、若林の五氏が理事会に出席参加した。

 支部長会
 午後一時から支部長会開会、なお欠席支部は筑紫、八女、浮羽、三井、甘木、山田、京都、築上の七支部であった。白木理事長挨拶後直に左記の事項について報告並協議に入った。

 一)九州山口ブロック会議報告、員外規制問題
 ブロック会議は各県代表約三十名参加して、去月十九日福岡で開催されたが、その内容について白木理事長から報告があり引続き員外規制問題について説明があった、この程夕刊フクニチの某記事に「規制命令は出せぬ、乱売は止まぬだろう」と云う様な表現のものがあって業界にも疑惑を与えた様であり、これは立場の異なる公取方面の見解の一部の様であったが、これに迷うことはないと思う、規制命令を出すには政令を改正する面倒はあるが、決して不可能なことでは絶対になく吾々は解決に充分の見透しがあり自信を持っている。今後一層の努力を以てその促進を図らねばならぬと思う。

 二)全国商組連合会役員会報告(白木氏)
 全国商組連の役員会が去月廿九日十時から神戸市の兵庫県薬商組事務所で開催された、商組連の認可は八月初旬の予定であったが、東京都の商組結成が意外に遅れ、これがため都商組などの加盟なき全国連は常識的にも如何なものかと云う事になり今日迄認可の運びとならなかったが、都の商組も七月三日結成されたので九月頃には認可になるものと思われる。なお本連合会の運営上会費の必要おを生じたので参加各府県から徴収することになったが、福岡県からは総代五名、一名につき一ヵ月二〇〇円、総合計一二、〇〇〇円を納入することになった。

 (三)地方薬事審議会成立報告
 遅れて出席した県薬務課佐々木補佐から福岡県薬事審議会成立の経緯、規則の内容及び内容及び薬局薬店許可基準内規などについて詳細説明があり(本紙別掲福岡県薬業懇談会記事参照)質疑応答、よく了解することができた。

 四)各支部状況報告
 小倉の東映問題(株式会社小倉東映会館)について説明があり、直方支部からは宮田センター薬品部の状況の報告があり、又福岡支部では市内薬局密集地区に乱売店進出の二件について現状報告があった。

 五)会費について
 会費納入事情は余り成績良好でないので支部長の一層の協力をお願いしたい。

 六)その他
 福岡県薬業組合連合会は県内に協組並商組普及のため形を潜めているが、法的委員その他の事情により必要な場合が生ずるので復活して貰いたいと古賀、白木両氏から要請があり、支部長会では異議なくこれを承認した。以上にて支部長会を終了。

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 福岡市薬剤師協会 役員会 国保運営委員会 合同会議

 福岡市薬剤師協会では役員会と市国保運営委員会の合同会議を七月十一日薬剤師会館で開催した。十二半開会、先づ会長挨拶

 出席者が勘ないために前にも役員会が流会となった事もあり本日も出席が良好とはいい難いが、役員委員中には役員としての意欲のない人もある様に思えるので・・・・・・と瞭りさせたいとの意思表示があったが、各人各様の事情もあり又部会長から無理に推薦されたと云う様な事も一概にないとも言えぬとの理由で黒白を瞭りさせることに反対する二、三の意見もあったので、会長は挨拶に引続き

 国保運営委員会は二年目に入ったが、諮問だけに止まらず今後は種々調査など実際面にもタッチして貰いたいと思っている。最初大きな予算を伴っていたので少数の若い執行部の独創よりも年輩会員の違った面からの考えを充分加味したいと思って委員会は作ったものであり、今後も一層この点を考慮に入れて、活躍して貰たいと思う。当分現状の儘で前進したい。と述べ、左記の議題につ協議に入った。

 <協会運営の強化に就て>

 この程市薬協、地区薬協組及び県薬商総福岡支部の三団体幹部有志談合の結果部会長並に部会員を殆んど同じうする三団体であるので「部会長会」開催その他について次の様な申合をなしたのでその内容の概略を茲で説明することになった。

 (一)部会長について
 @主催は前記三団体とし、合同で実施すること
 A開催日=毎月十六日(休日祭日の場合翌日)
 B開催時刻=協会関係‐午前十一時より午後二時迄役員会開催の場合は午前十時とする。組合関係は午後二時以降
 C案内状発送=議題については毎月十日迄に夫々事務所迄連絡の上速やかに案内状発送のこと
 D旅費日当の支給に就て
 出席役員及び部会長に次の通り支給すること
 名香、南大橋、高宮、平尾の五部会及び筑紫、糸島、粕屋、宗像の四支部−三〇〇円
 其他の部会−二〇〇円

 二)慰労金(記念品)の贈呈に就て
 部会長に対し年二回贈呈するものとし、金額は凡ね〇〇〇円とし、これが経費負担割合は夫々等分すること。以上の件日当並に慰労金など今日の世情に鑑み無給奉仕は当を得たものとは云えないので談合の上決めたものであり、この会でもこれを承認して貰いたいと会長の要望があった。

 部会長会は三団体合同で開催するが、各部会はその直後必ず開催することを決めた。又会員とアウトサイダーとは能限り区別する様(多数の声)取計らうこと。メーカーの説明会についても同様取扱う様心掛けること、然しこれ等は会員諸士のバックアップが是非必要である。来る十七日部会長会を開会するので多数の意見をきいて決定したい。その結果は出来得るだけ未加入者を勧誘して三団体に入会させることになると思う。なお季節の手帳も頒与は会員に限定することとする。

 △協調融資の再検討に就て
 融資については今後一層会員のために便宜を計りたい、現在会員はA会員二二六名、B会員は二三名、計二四九名である、既に二回に亘って融資したが、今後は融資を、最高一口五万円四口迄を期間二カ年とする。保証人については銀行が認める人なら会員でなくともこれを認めることとする。勿論保険薬局優先ではあるが、その他の会員にも融資することにする。

 △保険請求業務専従者の雇傭に就て
 請求金額は一月四三万円、二月四四万円、三月四七万円、四月三二万円、五月三四万円、平均月二九万円となる。会員中には処方調剤して請求しない(金額少ないため又請求が面倒なため)人もあり、又非常識な請求をなす人などあるので、請求業務専従者を雇傭したいと思う。請求額の二%を手数料として徴収することにすれば給料に当てることができる。実際問題としては素人でない会員のアルバイトとして成立するものと思う。現在保険薬局中毎月一万円以上のもの二軒、何れの月か一万円以上となるもの十七軒を数えるが、大体これ等の薬局からは二%徴収の内諾を得ている様な次第である。

 △福岡市国保の現況に就て
 別刷市国保運営協議会報告資料について会長より説明、三師の請求金額は薬局を一として歯医一〇〇、医五〇〇の率を現わしている。この際薬局として対策を研究しなければならぬ。その一つとして保健剤の処方発行(市の予算は有福)など採り上ぐべきで各団体えの交渉員を決定し運営委員の応援の下に活躍すべきである。これはアウトサイダーの規制にもなると思われる。その他市立病院院外処方箋発行等については八幡薬協に倣って研究したい。

 △その他
 @各部会で歯医との懇談会開催については出席会員に対して経費補助をなすこととし現在既に部会の約半数は懇談会を実施した。
 A国保運営委員会の荒巻委員長は家事の都合で辞意を表明しているので小須賀氏を委員長に推薦することを決定した。以上に役員会、運営委員会合同会議を終了した。

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 九州医薬品卸業連合会 本年度 定時総会 開会 新会長に大黒清太郎氏

 九州医薬品卸業連合会では本年度提示総会を六月廿一日福岡市に於て開催、新役員選挙の結果は次の通り決定した。

 ▽会長=大黒清太郎
 ▽副会長=鶴原六郎、吉村益次
 ▽常任理事=波多江賢次、富田浩三、吉村公秀
 ▽会計理事=若狭範輔
 ▽理事=水田思朗、力武綱市、吉井宗之助、平田穣太郎、梁井恭三、堺久
 ▽監事=坂田家蔵、島正与
 尚卅六年度事業計画として次の通り決定し、その実現に懸命の努力を尽すことになった。

 ▽事業計画

 一、卸薬業健全経営の確立
 (1)過当競争防止のため卸価格の設立と遵守方法の研究と実施
 (2)大口納入と一般卸売価格の調整
 (3)過当、競争防止のためアウトサイダー対策に就て
 (4)共同購入要請に対する方策

 二、実務委員会及実務担当者会の運用強化
 (1)医家向(入札、開業医も含む)商品の価格調整
 (2)医家向並小売向懇談会(小委員会)の設立

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 日薬のキモイリ 薬事法による薬局整備融資

 日本薬剤師協会では新法に伴う薬局整備資金融資に関し考慮した結果、第一、大和、協和、東海、神戸、三井、北拓の七銀行と左記の覚書を交換し、全国会員に呼びかけて、薬事法の許可基準に適合するよう薬局の改造又は当面の運転資金に活用することを要望している。

 ▼覚書

 日薬会員に対する貸付金の取扱いに関して日薬と銀行との間に左の覚書を定める。
 ▽融資対象=日薬会員たる薬局開設者
 ▽金額=三十万円以内
 ▽利率=日歩二銭六厘以下
 ▽使途=整備及び運転資金
 ▽期限=三ヵ年以内
 ▽返済条件=半年据置以後二カ年半割賦返済
 ▽保証=信用保証協会の保証
 ▽推薦状=各都道府県薬協会長の推薦状添付
 ▽申込み受付期限=卅六年九月卅一日迄
 申込は本店又は支店に申込むことになっている。

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 福岡県校剤師設置現況 七月一日現在

 学校薬剤師の必置制が去る四月一日から実施されたが福岡県学校薬剤師が県下校剤師の設置状況を調査した結果は、七月一日現在で次の通りであった。

 総学校数  七〇四
 校剤師数  四五一
 設置率   六八、三%
 市部、町村部に区分すれば

 ▽市部
 総学校数  四八九
 校剤師数  三三一
 設置率   九四、八%
 ▽町村部
 総学校数  二一五
 校剤師数  一二〇
 設置率   四一、八%
 校剤師の報酬額についてみると

 ▽市部(報酬最高額)
 一校当り  七、〇〇〇円
 一人当り  九、六九二円
 ▽町村部(同)
 一校当り  六、八〇〇円
 一人当り 一五、〇〇〇円
 福岡県設置率は市部に於ては非常に良好であるが、町村部では不良である。県全体から見て全国平均と云う処であろう。

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 本年の薬と健康展 開催打合せ会

 本年の「薬と健康展」に関し七月十八日十一時から薬剤師会館で打合せ会が開催された、出席者は 市薬剤師協会側=馬場正守、鶴田久雄、古賀隆

 市薬業士側=種兼筆、市役所側に=田中長雄、堀内保健所側=宮原体助(福岡)山下栄一郎(博多)石井正一(南)の諸氏であった。

 本年は大丸百貨店以外に会場を求めねばならぬので、会場、行事相互関係を考慮して決定する必要があり、当日は主役たる宇野福岡保健所長の出席がなかったので、種々出席者間に意見の発表はあったが、結論を得ず八月三日再度の打合せ研究会を開催することを決めて散会した。

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 福岡県薬剤師協会 各種委員会打合会 委員会編成会長諮問事項決定

 福岡県薬剤師協会では本年度代議員会で、本会の運営事業の推進は本会所属の各委員会独自の活発な運営を活用すべきであるとの要望に基き、各委員会幹部による打合会を去月十日開さいし委員会の編成並に委員会に対する会長諮問事項、及び委員会の運営その他について協議検討の結果、主要決定事項は次の通りである。

 主要決定事項
 一、細則による委員会はそのまま存続し、本年度は薬局、調剤技術広報出版の三委員会に特に重点を置き運営する。
 二、薬局委員会には社会保険、医薬分業、保険調剤に関する事項も含めること。
 三、広告出版委員会は季節の手帳編輯を主とすること。
 四、調剤技術委員会は九大松村教授に一任すること。
 五、前三委員会の委員の編成、人選は地区より少数精鋭主義により県薬理事会にて選任すること。
 六、県薬会長は委員会に対し恒常的なものと、緊急なものとに分ち諮問すること。
 七、委員決定後の第一回委員会は会長召集し委員長を互選決定の上は第二回より委員長は県薬担当理事と協議、臨時召集し、積極的活動を図るものとする。
 八、薬局、調剤技術委員会は夫々少数の委員を出し小委員会を設け共通事項につき協議することができる。今後共同でやることが相当あると思われる。
 九、委員会諮問だけでなく執行部の運営にも協力するよう努力する。

 委員会に対する会長諮問事項

 ▼薬局委員会
 ▽恒常事項
 @社会保険分業推進具体策
 A薬業経済安定方策
 B新薬事二法の適正実施活用方策
 C第七改正日本薬局方普及策

 ▽緊急事項
 @保険調剤に関する講習会開さいについて
 A薬局製剤、包装資材の活用と整理
 B薬局製造業品目改正に対する対策

 ▼広報・出版委員会
 ▽恒常事項
 @季節の手帳の編纂
 A県薬会報の改善策

 ▽緊急事項
 @季節の手帳購入会員倍増策(現在三万部)
 委員会編成表

 ▼薬局委員会
 担当理事 三淵学  柴田伊津郎−福岡、竹内克己−福岡、内藤正夫−久留米、中村里美−大ム田、高橋賢次郎−若松、芳野直行−戸畑、安部寿−八幡、藤井寺男−小倉、側島希允−田川

 ▼広報・出版委員会
 担当理事 岡野幸一郎 権藤徹
 藤田胖、網島幸枝、馬場正守、柴田伊津郎、久保川憲彦、長野博暢、杉本好子、上田ヨシエ、荒巻善之助、森山富江

 伊万里山下新太郎氏より食品協会の手で会員並に家族を対象に斡旋販売をなし或は地区により計画されているのでその対策並に警戒の必要がある。

 E県植物防疫協会加入について
 以上協議終了後直ちに「総代懇談会」を開催し、理事会可決並報告の諸事項を徳永専務より報告した後商組運営についての懇談を続けた。

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 随筆 うしのちち=T・K=

 おばあさんのミルクは鑵入で、お嬢さんのミルクは瓶入、お肉と云えば牛肉のことであるが、ずっと前には単に「ぎゅう」、馬肉は「ば」と云っていた。うしを食べるとか、うまを食べるとかでは、どうも生きているままを引っつかまえて八裂きにして食う様に取れるので「ぎゅう」と云ったのか或は最初ぎゅう肉となったのが明治のいつ頃かに省畧して「ぎゅうと」なったのかその辺のことは分らない。

 鯨肉は大正になる前まで「くじらを食べる」と云う風であったが、くじらを食べると云っても「うし」を食べるという様な残酷感はない。

 そこで牛乳であるが、これはどうであったろう。確かな事は厚生省関係の書類をずっとさかのぼって調べたら出て来るかも知れないが、何でも六〇年位前では「うしのちち」といって居たらしい。昭和になって何年か経った頃北海道え行ったとき小樽の駅に程遠からぬ後援を散歩した。林から出た取付きの家の腰に「うしのちち取次所」と書いた小さな看板がある。勿論この頃は一般に牛乳(ぎゅうにゅう)としかいわないので北海道では今でも「うしのちち」といって居るのかと珍しく思ったことがある。と、すると矢張り前には、うしのちちであったらしい。

 底の広くなった、コニカ−ルビーカーの様な形で十リットル位入る真ちゅう鑵。上についたつるを持ってハッピ姿?の人が片手に下げて小走りに来る。家の前で鑵を下ろして蓋を取る。中には直すぐな細い柄の先に小さな鑵づめの蓋を取った様なものがついた物が入っている。これは枡で、傾かぬ様に静かに柄を持ち上げて枡一ぱいの牛乳を家から持って出た容器にあけて呉れる。枡を返し、蓋をして次の家え行く、と云う調子。

 一方受ける方は土鍋とかそんなような物を持って出た。その牛乳は消毒してあったかも知れないがどうも生乳だったらしい。そのまま飲まずに一度火にかけた。煮立つまでが通り越してかなり永く沸かしている事もある。現在のように低温滅菌でないと蛋白が変質するとかビタミンが減るとか云われるのと比べると無茶な次第である。

 煮立っている中に白い皮膜が出来る。お箸の先でつまみ上げて「これは滋養になるぞ」と子供に食べさせたりしたものだ。子供と云えば一時小児牛乳なるものがあった。生の草を飼料に使わず搾ったものらしい。尤も一般に市販されてなかったが小児科の入院患者に与えられていた。検乳をして、出て来る脂肪が無色なので、普通牛乳とすぐ区別出来た。

 牛乳、とはいえぬかも知れないが大正の初めヨーグルトが一寸流行した。メチニコフ博士の長寿説によったもので何でもブルガリヤ人はこれを飲むから長命するってこと。牛乳に乳酸菌(ブルガリヤ菌)を発育させたもので、三共会社では牛乳に加える種の菌と、調整器を発売したりした。牛乳に菌を入れた容器と、温湯を入れた壺を並べて箱に入れて置くと出来た。酸っぱい絹こし豆腐の様に固まったのを飲むといったらよいか、食べるといったらよいかした。

 この頃のヨーグルトとか云う物の様にうまくて飲みやすいものでなかった。むかしの衛生試験法の本に脂肪の警察的検査法として一番に書いてあった。あのマルシャン法にも最近では試験法から削除されてしまった。はじめに牛乳に加えるアルカリの同じく三滴を落とすに正確な滴瓶を使うなら兎に角、どんな容器からでもお構いなしに落とすのでは脂肪の出様がちがうばかりでなく振り工合によっても多少の差を生ずる。私の始めて検乳をやった頃は専らこの仕方。どう云うものか脂肪を出すことが下手で、そのままでは脂肪の含量不足で不適となるので、もっとあり相なもの、とやり直すと尚更少なく出たりして困ったものだ。

 マルシャンと云えば、元私が大学病院に勤めて居たはじめの頃、それは、かれこれ四十年も前の古いことであるが、入院患者に分配する牛乳は鑵のまま納入者が持って来る。その元容器の品を薬局で検査し適合ときまってから瓶に小分け消毒し納入するのであったがその検査は薬局の宿直員がすることになっていた。

 試験をお願いします。といって牛乳屋に起される、薄暗くって比重計の目盛なんかロクに見えない。マルシャンの乳脂計をさし込むお湯を円筒に入れて来てあるが、それが馬鹿に暑い。うっかり其のまま乳脂計をつっ込みでもしたらエーテルが沸騰して栓を吹き飛ばし切角やった事もおじゃんになるというもの。今でも覚えているがそれを持って来る吉崎という若い男、暑い方が脂肪の出がよい。と云って依然暑いのを入れて来た。或は宿直の先生によっては起しに来ても急に起きてやらない。その中にお湯が冷める、入れ変えるのが面倒だからそれであつ過ぎるのを入れて置いたのかも知れない。

 検乳の瓶の底から覗き上げると黄色い様な物があったりした、牛の糞が入っている不適だ、と牛乳屋さんを狼狽させたこともあった。不適と云えば何かの都合で折尾附近から牛乳を(生で)運んで来ていた事があった。今ならばトラックか何かで急送するからそんなことは無かろうが、早いは汽車丈けの頃、小分けして消毒すると時々固まって不適になったり、又あまり遠方からでは無いが脂肪の含量は良いが比重不足のが度々あったりした。

 そんなことは試験者とし相遇する割合単純なことであるが、いつか本紙に記いたことがあると思うがずっと前にある所の牛乳の細菌数があまりにも飛び離れて多いので依頼先え左様伝えたところ会社の人が連立って見えた。その中の一人が大要、牛乳の中には乳酸菌がいる。でいくらか細菌がいるのは当然で、むしろ居る方がいいのである。と云う様な釈明。この迷説明に恐れ入ったことである。

 この牛乳は臭い。と病院の事務室の或るおエライ方が時々云って来られた。何をボンヤリ試験しているのだ。腐っているじゃないか。と云われるとする。改めて鮮度とかの検査をしても、あの人、この人に嗅いでもらっても別に異状がない。臭覚の余程発達した方であったと見えて、おえら方であった丈けにその度に複雑な思いをするのであった。

 叱られたと云えばこんなことがあった。ゲルベルの乳脂計にお目にかかったのは大正に入って間もなくであった、ブチロメーターも、遠心機もゲルベル社製、所謂舶来品であった。納入手続の関係か試験室に取付けずに局員室に近い室に仮置してあった。診らしいものは誰れでも診らしい。そこを通る誰れかれが遠心機を廻わす。独乙の器械はいいナ廻っていても廻っとらんと同じいいとか、これあ面白かと云っては廻して行く、次に通るのが廻わす。

 かくして日が経つ中に次第に雑音を出す様になって来たがまだ無頓着で廻わす。遂に上の方が動かなくなってしまった。歯車とそれを受ける廻転軸のねじ形の溝が摩滅してしまったのである。無理もない誰も一度も油をささずに廻していたのだ。結局試験室に取付ける前に使えなく修理に出さねばならなくなったので局長さんにどえらく叱られた。

 二代目のゲルベルの遠心機も一寸困らされたことがある。ブチロメーターを遠心機に入れてうっかり急に力を入れて廻わすと破裂音がして遠心機の蓋のすき間から硫酸の茶色になったのが吹き出す。何日かする中又同様のことが起る。原因は誰れかが適心機を分解し組立てる時金具の取り付けを誤った為と分ったのがこうも国産のブローチメーターのか弱い為も原因に加わっていたらしい。

 別に崇拝する訳でも何でも無いが本元のゲルベル社のブチロメーターは左記のフクラミがゆっくり大きく、目盛りのある管部も肉厚で頑丈、目盛りも読み易いし、硫酸と混ぜる時もよく混じる。が国産のブチロメーターの中にはどうも戴きかねるのがある。ふくらみが小さくてか細い、今では国産危機は立派なものが出来るのに乳脂計は何故あんなお座なりの申訳的につくった様な貧弱なものしかつくらないのか、もっと何とかならぬものか。(牛津製薬技術顧問)

九州薬事新報 昭和36年(1961) 7月30日号

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 薬界◇◇随談

 ▲NHK@佐賀放送=朝の訪問=鳥栖商工会議所会頭中富正義氏(サロンパス社長)の訪問対談=台湾工場の問題、台湾での製品広告さては地元鳥栖の工場用地の諸問題に触れて幅の広い話題であった。

 ▲東大病院薬局長野上寿薬博著の「百万人の家庭薬」と云ふ書が隆鳳堂から出版されたこの本には「本棚のなかの薬局」と云ふのがあって家庭常備薬、赤ちゃんの薬其他生活に必要ないっさいの案内を集められ、薬の歴史から説き薬の取扱ひの注意の諸点を述べてあると、筆者も早速書店に購入を申込んでおいた。

 ▲佐賀県医薬品小売商業組合の調整規程は昨年から提出されていたが六月十五日付で正式に認可された新薬事法が実施されての薬業組合としての仝規程の認可は第一号だと聴いている。免も角芽出たいものだ、幹部の労苦に感謝する次第である、次は規制命令発動の段階に入る、前号でも述べた通り喜ぶには早い、組合員個々の業者肚がまへをしっかりとして自分一人が良い児になる了見で有ってはならない、特に正札励行、組合規約其他の規約を忠実に厳守せねばならぬ。

 ▲この頃のニュースは小児マヒ対策、英、加ソ連の生ワクチン緊急輸入、さては社会保険中央医療協議会の医療費改訂、三師会不参加、自民党との公約実行促進のために医師会の総辞退諸説等々、次に米価の買上げ価格の値上げがバナナのたたき売りよろしく其の都度の値上げ、何んだかこの頃の政治と生活が全く判らなくなって来た。

 ▲東京小売商組結成、永い間の陣痛、やっと出来あがった事は喜ばしい。

 ▲古井厚相は八日医療費値上げを官報号外で告示した。日医日歯、日薬の三団体十一日夕から医師会会館で合同会議を開き厚相告示の取消しを要求其の理由は@告示が新点数表による患者負担を告示前にさかのぼって認めていない。A経済変動だけで学術否定をしている。B中央社保医療協議会の改組を自ら放棄した厚相が官製案を答申させ世間をあざむく政治謀略をやった云々日薬はいろいろ実力行使も考慮している。事を大衆は心配している。

 ▲中央教育審議会の「大学の目的と性格に関する特別委員会」其の結論を打ち出した。六年の現医大関係の他に五年制も認め、大学院大学は綜合大学を原則とし、高度の職業人をつくる修士課程、高度研究人をつくる博士課程に触れ、博士論文の審査方法も検討を要すと結んでいる。

 ▲コタミノンと云う強肝剤を其県厚生部の外郭団体である食品何んとか云ふ会で、末端迄動かして三割引きに斡旋販売せんとする、或は実行している地区があるので薬事法違反でないかと組合の役員会で問題化して来た。三割引で販売、中間に亦手数が取られて行く仕組なら始から三割引いた値段をつける事が大切である。消費者は三割引と云ふのが又魅力である。(GT生)

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 小倉薬局 九大東南亜留学生一行招待

 小倉薬品株式会社(本社小倉市馬借町)社長吉村重喜氏は終戦後既に五回に亘って東南アジア諸国に出張して現地の医療事情の視察と共にその改善、市場開拓などに努めているが、今回九州大学、医、薬、工、農各部に留学中の東南アジア諸国の留学生十六名を(引卒者九大学生課長補佐冷川軍次郎氏)本月一、二の二日間招待して激励した。

 第一日は小倉薬品本社、東洋陶器小倉工場を視察し、引続き山口県湯本温泉に足をのばして一泊、翌二日は名勝秋芳洞を探勝して帰福した。当日の参加学生は中国八名、インドネシア四名セイロン、パキスタン、マラヤ各一名であった。

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 挟子

 ▼厚生省薬務局内に設置されている「医薬品流通問題研究会」も三月以降お役人だけで研究されている。メーカー、卸、小売の代表から意見をも聴いているが、業界の常識ともなっている生産過剰が乱売の真因だとのツブヤキも。メーカー側からは必ずしもそうでないと云う意見が出ている。流通機構が混乱していることは事実だがこれは小売業者自体にも確かに大いな責任があると見られている。兎も角小売業の窮乏を救うべき対策を考えねばならぬだろう。

 その一策として当局に処方箋調剤の増進が考えられていると云われているが、そんな事は当然であり薬剤師業に於て完全分業ができていない事が薬局窮乏の真因である。然しこれも薬剤師全体に大いな責任があることは確かである。当局が今更そんなことを言うのはおかしいが然しおかしくとも事実分業になっていないのだから、その点よろしくお願いしたいものだ。

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 福岡県薬業士会 定期総会開会 会員二百余名出席

 福岡県薬業士会では定期総会を七月廿一日午前十一時から県医師会館で開催、出席会員二百余名、なお来賓として前川衛生部長(知事代理)須原県薬協専務理事(県薬会長代理)古賀九州山口薬業連合会長、白木県薬商組理事長、川口、土居外五氏の県議会議員、大分の高橋九州ブロック薬業士連合会長など多数の名士来臨、華かな総会であった。

 定刻井上副会長司会者となって開会、会長の挨拶後、多年同会顧問として会務にタッチして居られた座親義郎氏に深田会長から感謝状記念品が贈呈され、それより当日の議事に移った。司会者指名により松尾副会長議長として席に着き、出席者多数、総会成立の旨を宣し直に左記議案につき審議に入った。

 一、昭和卅五年度事業報告
 一、全国大会報告
 一、昭和卅五年度決算報告認定の件
 一、同年度会計監査報告
 一、昭和卅六年度事業計画決定の件
 一、同年度予算決定の件

 以上各担当者から報告或は議案の説明があり、二、三質疑応答の後一同異議なくこれを承認し又は決定した。議事終って県薬務課の佐々木補佐から約四十分に亘る「薬店許可内規」などについての講演聴取し、それにより来賓の祝辞に移った。

 県衛生部長を始め各来賓の祝辞が述られ次に二、三会員の意見発表があって閉会、四時半、引続き同会場に於て催されたビールパーティーに猛暑の中に真面目な議会を終えた会員一同は漸く寛ぎ、洵に楽しきパーティーであった。

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 薬界◇◇随談

 ▲保険総辞退の指令は大きい社会問題となっている。医師会の窓口徴収保険医療は法規違反だと厚生省はボヤくがさっぱり判らん。法治国の在り方遵法精神はたして何れが勝つか。

 ▲医師会は厚生省の告示を取消せと言ひ、自民党との公約実施を訴へ内閣改造で厚相も変る。一体どう取扱ふかが問題である。

 ▲薬剤師会三師会の名の元に値上げでは一致行動を取る。だが値下げは一二・五%の九円也、初めからが安かった。総ゆる技術料の料金と比較して全く安いものだ。

 ▲三師会としての一致行動がマイナスになる事を心配して憂慮の剤界人もいる。

 ▲濫売の原因にチェーン品取扱が挙げられ、或る処で薬業組合が反省と協力を求めている処があると噂されている。メーカー品やマスコミ品を安く売って客を釣りチェーン品や推奨品と云ふ名のものを其の社の標準価以上に売りつけてチャッカリしている事情があるとの事だ。

 ▲最近の某メーカーのPR紙に(販売の近代化)に…一昔前の観念をガンコに守り続けている経営者が未だにいる様です、云々。薬局の在り方特に古い連中の技術と薬の権威と云ふ考はどうかしらんと云ふ風に受け取られる感じがする。

 ▲本年の九州の梅雨はあがった、各地の豪雨正式には「三十六年梅雨前線豪雨」と云ふ。だがこの頃の九州は小児マヒが蔓延して児を持つ親は兢々としている。

 ▲所得倍増で何んでも値上げ会費なんかも郵送料の関係で右へならへだ。筆者の属している明薬会や東大薬方会も本年から会費五〇〇円に値上げされた。

 ▲車窓より見た「日本の植物」著者は千葉薬専出で白十字会村山療養所薬局勤務の薬剤師で北は北海道から南は鹿児島の指宿線まで鈍行車に乗って丹念に写真に取っている。著者は植物学に造詣が深かく(薬局)に毎号「車窓の薬用植物」を投稿している。価格一八〇円手頃の趣味の本である。

 ▲商店街の開店時間は地区に依っても異なるが、多くは夜九時閉店を決議している。品を例外とする処もあるが、物品販売業化した薬局薬店も他の商店と等しく九時の閉店が好ましい現在の薬業は修養も休息も出来兼ねいらいらしているだけである。

 ▲最近各地のSM薬品部の仕入源は地元の卸屋でなく隣近県の卸業者から盛んに流通している。考え様では業団体の話合や動向がSMに筒ぬけにされている事もあるらしい。卸屋と称する事業体もメ−カ-と云う圧力者の前にくるくる廻りをさせられている気がする。

 ▲本稿を借りて暑中御伺を致します。=夕涼みよくぞ男に生れけり。(古川柳より)最近は男より女がヌードと称し薄着で往来を闊歩している。(GT生)

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 平均一二・五%増加の 調剤報酬算定表告示 医療費改定に関する日薬通知

 厚生省は七月八日医療費値上げに伴う新点数を告示したが、その結果調剤報酬は現行よりも平均一二・五%の引上げとなっており、尚今回の改訂調剤報酬は日薬が中央社会保険医療協議会に提出した要望事項が殆んど全面的に採り入れられたものだと云われている。この程その関係内容について日薬から全国都道府県薬協に通知した。その全文次の通り。

 医療費改定に関する件

 厚生省は七月八日、中央社会保険医療協議会の答申に基づいて、医療費改定に関する告示を行った。この内保険調剤に係る調剤報酬算定表は別紙の通り改定されたので通知する。貴協会に於て適宜の方法で会員薬局に周知されるようお願いする。尚参考までに今回の医療費改定に際しての日薬の方針並に改定医療費支払方式の概要を摘記すれば次の通りである。

 (一)今回の医療費改定に関して、去る4月三師会協調の線を打ち出して以来、日薬は医療費改定問題に関しても両医師会と協調の方針採ってきた。現に今回の厚生省の告示に関しても、三師会は再三合同理事会を開催協議し、近く本問題に関する三師会共通の結論を見出すべく努力している。然し一方に於て日薬は、必要に応じて独自の行動も採って来た。例えば、日薬が当初中央医療協議会に委員を送る方針であった(これは結局送らなかった)こと或は次記(二)の要望を厚生大臣及び中央社会医療協議会々長に対して行った如きがそれである。

 (二)日薬の要望事項
 @新たに処方箋料を改定すること
 A調剤料を単価値上げに伴って増額すること
 B調剤報酬算定方式を簡素化合理化すること
 (注)前記三項目の内ABが今回実現したわけである。

 (三)今回の医療費改定の骨子一〇%分について薬剤、材料費を据置き、他の部分を単価で引上げるとすれば、その限度額は一円三十一銭二厘であるが、医療協の答申に従い、その内一円二十銭を単価の改定に振り向けることとした。残余の十一銭二厘は往診料、入院料等の値上げに振り向けた。
 A往診料、基本入院料及び基準看護加算を夫々約一八%、歯科補てつ科中有床義歯を約五%引上げた。  B各点数につき、全て一・一二を乗じた引上げを行ったわけであるが、端数は別に定める端数整理基準により整理を行った。
 C改定は七月一日に溯って適用される。従って保険者が支払う額は七月分全体について今回改定された処によることとなる然し告示以前に行われた診療にかかる窓口徴収額の値上げ部分については患者は支払いの義務はないものである。
 D保険調剤にかかる調剤報酬算定表については、総額で約一二五%の引上げとなるように措置した即ち内服薬の調剤料を一円引上げ、請求及び計算上の事務簡素化を図るため、外用薬についての剤種毎の所定調剤単位を整理統一し、又薬剤料も一〇円きざみでの平均薬価で算定することとしたのが主要改正点である。

 追伸
 尚今回の調剤報酬算定表の改定に伴う請求明細書等の記載の簡素化については日薬から当局に申入れを行っているので、近く保険局通牒の改正により実現される見込みである。

 別紙第六
 調剤報酬算定表
 (昭和卅六年七月八日改定)
 (昭和卅六年七月一日適用)

 通則
 1投薬の費用は、第一節及び二節の各区分の所定金額を合算した額により算定する。
 2第一節の各区分の所定単位を超えて調剤したばあいの調剤料は、当該所定単位又はその端数を増す毎に同節の各区分の所定金額を加算する。

 第一節 調剤料
 区分
 内用薬(一剤一日分につき)九円
 屯服薬(一剤三回分まで)九円
 その他(一剤につき)一八円
 (注)@麻薬又は毒薬を調剤した場合は、各区分の所定金額に一調剤につき一一円を加算する。
 A午后一一時から午前六時迄の間に於て調剤をした場合、各区分の所定金額の一〇〇分の一〇〇に相当する額を加算する。
 B浸煎薬、点眼薬、坐薬及浣腸薬を自家製剤のうえ調剤した場合は、各区分の所定金額に一調剤につき一〇円を加算する。

 第二節 薬剤料
 区分
 一〇円使用薬剤料
 @使用薬剤の購入価格が調剤料の所定単位につき一〇円以下の場合 五円
 A使用薬剤の購入価格が調剤料の所定単位につき一〇円を越える場合の加算 一〇円又はその端数を増す毎に一〇円

 調剤報酬算定の説明

 (1)調剤料
 @内服薬(従来、水、散、丸、錠、孔、カプセル、浸煎剤と区別されていたのが、一括に内服薬となった)
 一剤一日分 九円(現行八円)
 A頓服薬
 一剤三回分迄 九円(現行一〇円)
 但し例えば 四回分から六回分迄 九円×二=一八円、七回分から九回分迄 九円×三=二七円
 Bその他(従来 液、巴布、膏、点眼、点鼻、散布、塗布、坐薬、浣腸と区別されていたのが一括され、幾グラム、幾cc調剤しても)一調剤につき 一八円
 但し浸煎薬、点眼薬、坐薬、浣腸薬を調剤した場合(既製品でなく)は一調剤に一〇円を加算する
 例えば、自家で点眼薬を調剤した場合 薬品代+一八円+一〇円=薬品代+二八円
 C麻薬毒薬を調剤した場合内、外用とも幾日分であっても、一剤につき一一円を加算する。
 例えば、内服薬三日分で麻、毒薬が入っている場合 薬品代+(九円×三)+一一円=薬品代+三八円
 D深夜調剤(午后一一時から翌午前六時迄)調剤料は倍額
 但し、毒、麻薬の加算一一円は倍にはならない。

 (2)使用薬剤料
 従来とこの点が非常に変った
 一剤一日分の使用薬品代(屯服は三回分の、又外用薬は一調剤分の薬品代)が一銭から一〇円迄の場合は五円
 一〇円一銭から二〇円迄の場合は一五円
 二〇円一銭から三〇円迄の場合は二五円
 以上この例にならうとして計算する

 例1
 レスタミン 〇・一g 一〇、三〇円
 ピラビタール 一・五g 一三、五〇円
 重ソー 三・〇g 〇、三〇円
 ロートエキス 〇・〇六g 〇、二四円
 ノルモザン 一・〇g 〇、七〇円
 カフェイン 〇・三g 一、六二円
 計二六、六六円
 与七日分
 「二五円(薬価)×七日+九円(調剤料)×七日=二三八円」

 例2
 沈降硫黄 〇・八g 〇、三〇円
 ウンデシレン酸 〇・五g 一三、〇〇円
 ウンデシレン亜鉛 二・〇g 二〇、六〇円
 親水軟膏 一〇・〇g 八、〇〇円
 計金四一、九〇円
 「四五円(薬価)+一八円(調剤料)=六三円」

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 分割調剤と調剤録 保険局、取扱いを改正

 厚生省保険局では薬剤師法の施行に伴い、このほど保険薬局の分割調剤および調剤録の取扱い方をつぎのとおり改正した。

 一、分割調剤について
 保険薬局における分割調剤は同一保険局において処方せんを初回調剤の際から保管して行なう場合に限られていたが、二以上の保険薬局に於て分割調剤することがみとめられること。

 二、調剤録について
 保険薬局において作成する保険調剤録は、つぎに該当する事項を記入すること。なおこの調剤録は、調剤済みとなった処方せんに調剤録と同様の事項を記入したものをもってかえることができること。
 @薬剤師法施行規則第十六条に規定する事項
 A患者の被保険者証記号番号、保険者名、生年月日および被保険者被扶養者の別
 B当該薬局で調剤した薬剤について処方せんに記載してある用量、既調剤料量及び使用期間
 C当該薬局で調剤した薬剤について薬剤価格、調剤手数料、請求金額および患者負担金額

 参考
 薬剤師法施行規則第十六条薬剤師法第二十八条第二項の規定により調剤録に記入しなければならない事項は次のとおりとする。
 一、患者の氏名及び年令
 二、薬名及び分量
 三、調剤年月日
 四、調剤量
 五、調剤した薬剤師の氏名
 六、処方せんの発行年月日
 七、処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の氏名
 八、前号の者の住所又は勤務する病院若しくは診療所若しくは家畜診療施設の名称及び所在地
 九、前条第二号(処方せんに記載された医薬品を変更した場合の変更内容)第三号(処方せん内容の疑わしい点を確かめた場合の回答)に掲げる事項

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 福岡市三団体部会長会市薬協・地区協組・商組福岡支部

 福岡市三団体の部会長会を七月十七日午前十一時半から薬剤師会館で開会し、左記事項につき報告協議した。

 ▽市薬協の分

 (一)県薬協支部長会報告
 去る十日開会された支部長会内容について詳細権藤会長から報告(本紙前号支部長会記事参照)。

 二)季節の手帳委員会の県薬移管について
 発行して既に三年、市から県全般に拡張したので県薬に移管することになった。現在約三万部発行している然しこれに対する経費の面に於て多額の赤字であり限度に来ている、今後の増刊対策について検討中であると権藤会長から説明。

 (三)本年の薬と健康展に就て
 例年大丸デパートで開催したが本年は困難な事情があり会場変更の止むなきにある、明日各団体と協議する事とになっている。

 四)管理薬剤師の実態調査
 薬剤師の地位向上のため名義貸しなど絶対に禁止しなければならぬ。就職当時の契約と現実の相違、勤務の実状等に特に留意して調査すること。部会長の協力が是非必要である。

 五)市国保運営委員会決定事項の件
 協調融資は既に二回実施したが申込は少なく、会員保証人二名など条件がむずかしいためであろう。今総わくを広げ一口五万円、最高四口迄期間を二年に延し、保証人は会員でなくとも銀行で適当と認めた者で差支なきこととする。保険薬局が優先するが会員ならよい。申込みは一応月末迄とする。

 (六)協会運営の活溌化に対する三団体の申合せ事項
 会長は、三団体の会員並に組合員と未加入者との待遇差を瞭きりさせるため、メーカーの説明会など発起者となる場合は三団体共同とすること。及び案内先などの制限その他についてメーカーに要望したいがと説明、その交渉については会長一任と決定した。全会員の協力なくしては、結果は有名無実となるので部会長はこの点万全を尽して協力して貰いたいと会長は要望した。

 (七)会費完納について

 (八)過年度未収会費について
 本年度の分は八月十五日迄に完納して貰いたい。二〇%のリベートを得ることができる。過年度の未収会費についてはいま一層の努力を願いたい。

 (九)その他
 @調剤請求事務専従者雇傭に関するアンケート中間情勢は三〇人の中賛成二六人、反対四人となっている。
 A未加入者名簿と実際とを照合調査の上訂正して七月末迄に提出して貰いたい。勿論支店は別個の会員として取り扱って貰いたい。

 ▽地区協・商組の分

 (一)員外規制命令書申請作成の件
 白木理事長から説明、現在具体的準備を山口、福岡、佐賀の三県を一ブロックとして進めている。

 (二)福岡県薬事審議会規則公布について
 その経緯について白木理事長から説明があった。

 (三)県薬商組の歩みに就て
 @全国薬商組連合会役員会が去月末神戸で開催された。現在十三府県が加入しているが、東京都も本月三日創立総会で成立したので加入の上愈々近く認可になるものと思う。
 A本県の調整規定の継続は六月一日付で認可となった。
 B日薬の経済安定機構の件については本県の同意書は四〇〇程度提出されている。
   C組合会費の件については、商・協組未加入者で会費を納めている者については速かに報告して貰いたい。それより各部会の現況報告があって本会は午後六時閉会となった。