通 史 昭和36年(1961) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和36年(1961) 5月10日号

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 福岡県校剤会理事会(総会準備) 伝達講習会目次

 福岡県学校薬剤師会では卅六年度総会開催に備えて五月四日午后二時半から薬剤師会舘で理事会を開催山下県教育庁技師、早川、友納正副会長外理事十名が出席した。

 会長挨拶後引続き、校剤師の薬事法による知事の許可手続きについては、先に九州山口各県薬協代表者会でこれを採り上げ、厚生省並文部省に要望(手続省畧)善処することになった旨報告があった。それより左記事項につき協議した。

 ▽第八回定時総会開催について
 五月十九日十時半から薬剤師会舘で開催、当日の事務担当を決定した。
 (1)昭和卅五年度会務並に事業報告
 別刷により説明一同了承
 (2)同卅五年度決算認定の件
 事業費が校剤必置制となったため予算超過した旨説明があった、一同了承。
 (3)同卅六年度事業計画
 別刷により説明一同了承。
 (4)同卅六年度会費決定の件
 従来通り一名百円とする但し県立高校担当者に限り一校当り外に百円とすることを決定、一同了承。
 (5)同卅六年度収入支出予算決定の件
 二、三質疑後一同了承。

 ▽本年度各種大会
 @学校薬剤師指導者講習会、文部省主催六月、出席は八幡、大牟田、福岡と決定、A日本薬学大会校剤部会、北海道七月、B九州学校保健大会、熊本九月十四〜十六日C全国学校保健大会、青森十月五〜七日、全国学校薬剤師会総会、青森十月四日、D県学校保健大会、甘木又は山田十月、E九州薬学大会校剤部会、熊本十月、F県学校保健大会主催講習会、一月、研究発表担当は田川、遠賀、福岡、八幡と決定。なお校剤必置制を記念して篤志家の寄附があったので顕微鏡外水質検査器具等の購入を決定した。

 ▽伝達講習会
 県教育庁の主催で総会に引続き開催されるが、その講習課目並に講師は次の通りである。
 (1)学校保健の今後の課題について=県教育庁技師山下泰弘氏
 (2)日本学校安全会法について=前回、山下技師
 (3)細菌検査の実際について=久留米市校剤師橋本祐一氏
 (4)塵埃の測定について=福岡市校剤師高倉博氏
 (5)検知管による各種有毒ガス検査について=田川市校剤師側島希允氏
 (6)環境衛生検査器具の解説と実習=前同、側島氏

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 薬界◇◇隋談

 ▲アメリカのデービットのノベリ博士を指導者とするオークリッジ国立研究所達が「タンパク質の合成に成功」したと日刊紙が報じているノベリ博士は二十四日からワシントンで開かれた全米科学アカデミーの年次大会で詳細に報告せられた由である。

 ▲二十八日の名古屋市長選挙は五〇%以下の低調投票に終って翌二十九日開票の結果八年半ぶりに自民党推薦の候補者が当選し薬剤師で民社党推薦の横井亀吉氏奮戦空しく第三位で次点にさへ九万票を引き離され惜しい事であった。

 ▲日本で第三番目の官立大学の九州大学は明治三十六年京都帝国大学福岡医科大学として発足幾多の変遷を辿り今日堂々たる綜合大学として五十年に達し、西日本文化科学の殿堂として幾多の人才を輩出して地方の為めにつくしている。筆者が九大薬局研究がてら入って調剤手とし、次いで薬剤手の辞令を貰った。薬局長は酒井甲太郎先生で病没後江口先生が後を継れた、当時は現在の大学正門のつきあたりの木造建物が外来の綜合診療所で一番便利なつき当りが薬局で、局長室は二階にあって両先生から時々独乙語のテストがあり震ひがあった。仝建物は焼失後現在の様に各医局や薬局が分散した。当時お世話になった方は早船、栗原、古沢の諸先生で随分とご厄介になった。

 ▲武田薬工研究所の渡辺武薬学博士から仝氏著の「椿」と云ふ書籍の寄贈を受けた。氏は漢方殊に薬用植物の大家であり全国つばきに関し良く調査研究され各地の名木や種類分布や椿に関する書画等にわたって誌されている。良い本を貰った大事に保存したい。

 ▲四月一日第七局方が出た。薬学の進歩で相当改正され消除新載相当数にのぼっている。「局方」と云ふ書籍は相当高価である。もっと安く出版出来ないものかと思われる。

 ▲熊本の大先輩木岡義一君這月、ころんで骨折され爾来加療或は日奈久の入湯等最近快癒された事は喜ばしい事だ。

 ▲小児マヒ治療薬として渇望のソ連産「ガランタミン」輸入を認められると共に厚生省は仝剤を毒薬に指定した。

 ▲五月五日は「子供の日」であると共に吾々薬業者にとっては忘れる事の出来ない、聖徳太子四十才の時従来行はれた狩猟殺生をやめてこれに代るに「薬猟の法」を定められ山野に薬草を探求されたのが五月五日である。(GT生)

九州薬事新報 昭和36年(1961) 5月30日号

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 福岡市薬協 部会長・県薬代議員合同会議

 福岡市薬剤師協会では明十日の県薬剤師協会総会並に来る廿日開会の市薬剤師協会総会その他に備えて五月九日午后二時から薬剤師会舘で部会長及び県薬代議員の合同会議を開催した。

 先づ権藤会長挨拶「県代議員は殆んど出席されているが、部会長は四分の一僅かに五名の出席、三名の欠席理由の通知があったのみで、その他は何の連絡もない。洵に心淋しいことであり又遺憾なことである。薬剤師としての又会員としての自覚を俟つより外にない様である」と述べ、左記事項の協議に移った。

 (一)県代議員会について
 明十日開会の県代議員会は十六名の代議員が出席の予定である。年度の初めであるこの総会で代議員は新年度に於ける要望その他を積極的にご発言を願いたいと四島顧問から希望が述べられ、次に会長から県薬協会費千円値下げが一部会員から要請されていたが、先の県薬協理事会で前年通りに決定予算化されている旨報告、なお勤務部会員の会費値下げも亦同理事会で前年通りと決った事情について四島氏から説明があった。

 (二)市薬協総会について
 付議事項につき別刷により会長から説明があり、一同異議なく了承。

 (三)福岡市国保に関する件
 卅六年度(七月一日)より世帯主の総付は従来の五割から七割に増加された。新保険証も発行されるので同時にその他についても特に注意されたいと会長から説明があった。

 (四)その他
 @会費完納に対する県薬協よりの二〇%の褒賞金(八月廿日迄に完納)は仲々大きいもので市薬協運営資金として重要なものであるので、各部会では七月末迄に全部纏めて貰いたい。A最近主として青少年間にバラミンが悪用され社会問題ともなって来たが、直接関係のある吾々として充分に自粛する様心掛けたい。B新薬局方に関する講習会が六月六、七日の二日間九州大学医学部中央講堂で開催される、受講希望者は福岡県薬務課に申込むこと、受講料一千円である。以上にて合同会議を終了。

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 薬界◇◇隋談

 ▲美容院で使うコールドパーマ液の自然発火で徳山市の美容材料商の倉庫から二度も火事が出来たとの事だ。パーマ液は第一液がチオグリコール酸とアンモニアが主成分第二液は塩素酸カリとブローム酸カリを主成分とするものらしい。この一液がたまたま輸送中に破損したものが第二液用の粉末と化合し自然発火したものではないかと見られている。消防庁では準危険物に指定している。こんな貯蔵に注意を要する薬物こそ其の販売を薬剤師に限定す可きものである。

 ▲京都府立医大野瀬教授は生物学的B1合成に成功したと報ぜられている。

 ▲新派の大御所文化功労者芸術員会員の俳優で八十九才で先日死去した喜多村緑郎は東京日本橋の薬屋の息子で薬屋にならず新派俳優となり名をなし、名を残す。

 ▲佐世保の開局武富寛吉氏は先頃某製薬会社の招待で奥羽東北の旅を終へて静かなる信州松代の郷里の墳墓の地に眠られる。薬学の偉大なる先覚者明薬創立者恩田重信先生の墓前に参詣して多年の念願を果したとの便りに接した。今どきの若い者には出来ない事である。良い語り草、筆者も多年想いつつも出来ない全く武富君は善行をされたものと感心している。

 ▲七月の北海道で開かれる日薬総会、薬学大会に佐賀県女薬部員から今の処五名が参加する。往復ともに空路との事だ。全くデラックスである。男性のピイピイしている開局者より遥かに勇気と向上心と金があるらしいのは羨望の限りである。(GT生)

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 福岡市薬剤師協会 第一六回 定時総会 恒例により四氏の還暦祝典挙行

 福岡市薬剤師協会では第十六回定時総会を五月廿日午后三時から市内社家町櫛田会舘で開会、古賀理事司会して権藤会長の挨拶、次に来賓四島県薬副会長、尾崎県薬務課長の祝辞があって議事に移り、司会者指名で友納氏が議長席に着き、会員三一五名中一七〇名(内委任状一二〇名)出席、総会成立の旨を宣し議事録署名人に岸田、三井所の両氏を指名して直に左記議事に入った。

 ▽報告事項
 (一)昭和卅五年度会務並事業報告
 鶴田理事説明、一同了承
 (二)第一五回福岡県薬剤師協会代議員会出席報告
 報告に先だち代議員会状況の撮影があり次いで鶴田理事から報告、一同了承

 ▽議案
 (一)昭和卅五年度歳入歳出決算認定の件(一般会計特別会計)
 一般会計を馬場、荒巻両理事が別刷により説明、馬場勘二氏から二、三質問があって会長これに答え、一同承認
 (二)昭和卅六年度事業計画決定の件
 馬場理事別刷により説明波多江、馬場勘二の両氏から質問があり会長これに答え、一同異議なく原案通り決定
 (三)昭和卅六年度会費決定の件
 (四)同年度歳入歳出予算決定の件
 (三)(四)一括上程、馬場理事別刷により説明、未納会費が相当額あるが、執行部はその対策を講じて貰いたいと馬場勘二氏から要望があり、会長これに答え、なお会長は「予算に組んでいない事業費(商組、勤務部などえの協力)については予備費を流用したい」旨を一同に諮ったが異議なく一同はこれを承認。次いで(三)(四)についても原案通りこれを決定した、会費は前年通りとなったわけである。次に白木県薬商組理事長から商組の現況について演述があり竹内理事の閉会の時により一応終了。それより恒例によって会員中次の
 松村久吉 松村定雄
 大黒清太郎 岸田清輝
 四氏の還暦(明治卅四年生)を祝って先づ櫛田神社神前に祭典の儀が行われ、次いで四氏に記念品を贈呈、引続き会場に於て式典祝賀の宴が開催され同時に会員一同の和かな懇親会が催された。