通 史 昭和36年(1961) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和36年(1961) 3月10日号


 福岡県校剤会 常任理事会 一高校六千円決定

 福岡県学校薬剤師会では三月九日午後二時から薬剤師会館で常任理事会を開催、左記事項につき協議した。

 (一)県立高校々剤師師設置の決定について
 県下に一三一校(定時制をも含む)を有し一校につき六、〇〇〇円の県議予算が通過した旨報告があった。

 (二)本会の運営について
 校剤師設置も愈々必置制となるので県下各地区共校剤会(県支部)も必要となり、名目は学校薬剤師会であるが薬剤師のPRの面から見ても県薬剤師協会と異名同体となるべきであり、校剤師の支部も県薬協支部と同体とする必要があろう。新任校剤師の育成のためには各種大会に出席することともなり相等経費も蒿むものと思わねばならぬ。予算も従ってこれに応ずべきで新たに高校を受持つ校剤師は一定の収入もできたので会費百円を加算することとし、県薬協補助金も増加して貰う様措置すべきであることを決めた。新設置地区に対する講習その他の応援に心掛け、執務日誌などは県校剤会で統一することに決定した。

 (三)器具購入の件
 種々意見も出たが結局県本部に@水質検査(化学試験)器具二揃。A細菌検査器具二揃、B顕微鏡一台、を準備し各支部、新校剤会に優先的にこれを使用せしめ地方の井水、簡易水道水などを実地検査することに努めることを決めた。

 (四)総会と伝達講習会開催の件
 総会は新会員決定後五月初旬又は中旬に給食会館で午前に、午後は伝達講習会を開き、終了後懇親会を催すことを決定した。

 (五)日本薬学大会校剤会におけるシンポジウムと研究発表について
 シンポジウムは大会委員に委かせることとし、研究発表は大牟田校剤から「大気中の亜硫酸ガス検出法」第二報とする。

 (六)駆虫剤推選の件
 学校側の相談に応じ二品目位を推選することとし、斡旋はしないことが校剤師としてとるべき万策であろう、特に県校剤会としては決定しないことにする。以上にて五時終了した。

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 挾子

 ▼薬務局は先程或公会でSMの薬品部開設は構造設備基準上から抑制できると阻止方針を明かにした様であるが、仲々むつかしい問題である。果して薬務局に断乎として徹底せしむると云うだけの勇気があるかが問題であろう。弱気者のために大いに勇気を出して貰いたい、資本暴力のためにペシャンコにならない様に一つの特例もつくらぬ様。

 ▼薬務局長の通牒に薬事法第八条第三項に関し、管理薬剤師が、他の業務に従事する場合知事の許可の一例として非常勤の学校薬剤師を兼ねる場合が挙げられていることについて一部剤界に問題になっている様である。特に校剤が挙げてあるのは非好意ではないかとの解釈の様だ。薬局管理について新薬事法では「実地」と云う二字が新たに加えてある事を考えねばならぬ。好意を以て挙げたものと思う。

 ▼日薬では近く「保険薬剤師全国大会」を開催する模様であるが、これは皆保険に進展すると共に薬局運営が愈々悪化しつつあるからである。現在設置されている法律による医薬分業制度を合理化し、薬局は処方箋調剤だけで経営が成立する様、厚生省は厚生省としての措置をとるべきであるとの趣旨であろう。大体日薬の手遅れであり剤界の怠慢でもある。こんな事は皆保険制度が発表された時から考慮せねばならぬことである。後手後手は日薬、剤界の慢性症であろう。

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 六本松薬局 四島家のおめでた

 六本松薬局主四島久氏長男仁氏と藤島覚次郎氏三女照子さんとの婚約が、十字堂薬局主鶴正蔵氏夫妻の媒酌で芽出度く相整い二月十五日旧正月元日住吉宮に於て結婚式が行われた。式後同記念館で約百名の親戚知人を招き盛大なる披露の宴が催された。

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 高野日薬会長 薬学博士論文通過

 日本薬剤師協会長高野一夫氏(参議院議員)はかねて学位請求論文を東京大学に提出していたが、去る十日教授会を満場一致通過し近く薬学博士の称号を授けられることに決定した。

 主論文は「日本薬事法制の史的考察とその基本問題」と題するものであり、明治初年以来約百年に亘る間の薬事法制の制定構想、改正理由、今後如何なる方向に改正整備さるべきかを十六章に亘って論じたものである。

 特に薬剤師の専門職域に於ける活動が法律によって事実上阻害されて現在に至っている点を非常に重視したものでもある。高野氏は国会の方が多忙のため僅かにその余暇を見つけて長年月に亘り書き継けたものであり内容も充分とは思えないので恥かしいが努力が実ったことは洵にうれしいと思っていると語っている。

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 薬界短信

 ◆福岡市第一区校剤師研修会=二月十六日午後箱崎小学校作法室で開催、同校の照度、騒音調査を行ったが当日は一区の各小中学校の養護教諭全員参加し校剤師と懇談した。

 ◆日絆薬品工業株式会社社名変更=去月二六日の株主総会で新社名を「ニチバン株式会社」と変更した。

 ◆九州漢方第二二回研究会開会=二月十七日午前十時から県薬会館で左記により開催した。
 望診−戸田秀実氏▽舐診−小山茂満氏▽中国で現在使っている薬−塚本赳夫氏▽桂枝湯類−宜本康照氏▽治験剤−宮崎綾子氏▽質疑研究−森光三氏

 ◆福岡市校剤班長会=二月廿一日午後一時半から薬剤師会館で開催、左記協議
 @卅六年度担任校に就て
 A研究班の再編成に就て

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 福岡県薬剤師協会理事会 支部長会・連盟評議員会
 福薬国保理事会・組合会

 福岡県薬剤師協会では県薬剤師会館で三月四日午前第六三回理事会を、午後第七九回支部長会並に薬剤師連盟評議員会を開催、福岡県薬剤師国民健康保険組合でも同様午前に第一三回理事会を、午後第七回臨時組合会を開催した。

 ◆県薬協理事会

 五郎丸会長、四島、長野両副会長外理事役員十三名出席の下に正午開会、左記事項につき報告、協議した。

 ▼中央情勢報告

 (一)日薬代議員会について長野代議員報告、代議員会には野口、古賀両氏と共に出席した。予算から見て五つの重点的事業目標が新年度も継続される。特に関心を持ったのは医師会の医療費値上問題、将来の分業問題についての高野会長の発言であった。日医は日薬に一斎休業を希望して来たが、日薬では意味ないことであり他の健保関係六団体と同一主張をとって来た。

 一方厚生省対日医とを調和させることがこの際一番大切だとの考えで高野個人として大いに努力した。皆保険ともなり将来剤界の分業問題や経済安定では両医師会の協力が絶対必要であり将来完全分業についての吾等の主張は医系国会議員も了解して貰っていると思う。就てはこれ等に関し必要なことは処方箋料問題である。吾々は今後の医薬品は経済問題として取扱うべきであると思っている。次に野口代議員が会長発言について補足説明、その他日薬の事業計画、地方審議会、校剤必置、大阪のSM問題、武見日医会長の暴言問題などにつて報告があった。

 (二)日薬共済部総会について五郎丸会長から報告、問題となったのは卅五年度に於て運動月間迄実施したが会員は二名減の結果が現れた、その事由について協議健闘されたが結論を得なかった。

 (三)新薬事法施行について
 五郎丸会長説明、薬務局長の方針によって運用したい、SM問題など。

 (四)医療費値上げと医薬分業推進について
 野口理事説明、分業推進については日薬の方針に従って行動し、時期は甲乙一体化の時機を採るべきである。処方箋発行は水増問題を解消する最善の方策である点を関係者に強調すべきである。

五)経済安定協力機構の推進について
 五郎丸会長から去る二月廿一日東京で開催された幹部懇談会出席報告があった。

 (六)その他
 @医療費問題に関する日薬本部からの要望書については支部長の同意を得て会長、支部長名で各地区で関係筋へ提出することに決定した。
 A先の支部長会で要望の社会保険についてのブロック講習会開催は来年度の事業として実施することになった。
 B薬業経済安定の実態調査のため四島副会長を京阪神地方に出張させることを決定した。以上にて理事会を終え(午後二時)直に支部長会を開会した。

 ◆薬協支部長会

 欠席支部は筑紫、糸島、甘木、三井、築上、山田の六支部であった。会長挨拶後直に次の事項につき報告、協議した。

 ▼中央情勢報告

 (一)日薬代議員会について
 (二)日薬共済部総会について
 (三)新薬事法施行について
 (四)医療費値上げと医薬分業推進について
 (五)経済安定協力機構推進について

 以上五題は午前開会の理事会と同様であった。なお経済安定協力機構の現状は発起人全国で一六四六名であり、三月中旬迄に二万‐三万の同意書を集め、五月末発起人会開催、引続きメーカー卸業者と懇談の上九月頃運営できるよう進みたいとの希望であった。

 (六)その他
 @医療費問題(分業問題)日薬本部からの要望書に関しては理事会での決定が支部長会に諒承されたので、その決定通り実施することになった。
 A薬事法薬説明会については四島副会長から報告、通知総数は一九一〇であったが、その内講習欠席者が一五〇人であった。欠席者については近く一ヵ所に於て講習実施したい。
 B薬事法等施行についての次官及び薬務局長通牒については工藤理事から説明臨席していた県の大庭技師との間に質疑応答があった。業務日誌の見本作成について、薬局管理者薬剤師の校剤業務従事の許可問題、訪問販売問題、病院診療所の薬品監視実施問題、等について論議された。以上にて支部会を終了(午後四時)引続き連盟評議員会を開会した。

 ◆連名評議員会

 先の東京に於ける全剤連執行委員会並に評議員会出席報告があり、国民皆保険医療問題、薬局経済安定機構推進、衆院選挙について、高野後機会について、その他に関し説明があり、事業計画、決算報告があって終了、休憩後臨時福薬国保組合会を開会した。

 ◆臨時福薬国保組合会

 工藤理事の開会の辞に次いで四島理事長の挨拶、次に五郎丸県薬協会長の挨拶後角田議長席に着き、議事録署名人として権藤、馬場両氏を選任し、それより議事に移った。

 ▽報告=組合事業実施報告
 工藤理事説明、本年度は三〇%の実質的値上げになるのでないかと思っている。監査は今月中旬の予定、異議なく承認。

 ▽議案
 第一号=組合規約一部改正について(四島氏)
 第二号=組合職員等給与規定改正について(野口氏)
 第三号=組合役員費用弁償規程改正について(野口氏)
 第四号=組合会議員費用弁償規程について(安部氏)
 第五号=組合職員旅費規程について(安部氏)
 第六号=組合一般会計歳入歳出予算について(工藤氏)
 歳入歳出は七、六二五、八二九円であるが、今年七月一日からはご承知の通り全国的に医療費は一〇%以上値上げとなることを考慮に入れ保険給付最大限に考えて予算を組んだ、勿論本年も県薬協からの補助金は一〇万円として計上した、可決すれば一号と共に県知事の認可を受けねばならぬ。異議なく可決した。

 以上にて議事を終え、四島理事長は「本組合の財政状態はお聞きの通りであるので、給付五千円以上を受けた組合員はその二〇%の寄付を確実に納入して貰いたい。これについては支部長の絶大なご協力をお願いする。近日支部毎に未入寄付金に関する、関係氏名をお知せする」との発言があり又工藤理事は「両医師組合は保険料金を値上げしたが、本組合は今の処値上げしないことにしている。然し本年度中に卅四年度分の保険料を完納しない組合員は止むなく除名を考慮することを理事会で決めている」と述べ注意を引いた。以上にて当日の五種会合を全部終了した、四時四十分。

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 全国薬商組連創立総会開催 十三府県代表参加

 全国医薬品小売商業組合連合会創立総会は二月廿日大阪府薬会館で開かれ、議長に福岡の白木太四郎氏を推し定款審議、役員選挙などを行った。出席府県は大阪、京都、兵庫、和歌山、岐阜、広島、山口、福岡、佐賀、鳥取、三重、宮崎(委任状)、鹿児島(同)の十三府県であり、役員選挙の結果は左記の通り決定した。なお第五号議案で初回の役員任期は卅六年九月卅日迄と決定した。

 ▽理事長=白木一夫(兵庫)
 ▽副理事長=白木太四郎(福岡)青木清隆(岐阜)荒川慶次郎(大阪)
 ▽専務理事=立木正之(大阪)
 ▽常務理事=鬼頭四十一(兵庫)岩本輝男(和歌山)原田義人(京都)
 ▽監事=石川(和歌山)川崎(広島)
 ▽理事=岸本(兵庫)吉川(大阪)森(大阪)近田(京都)竹内(京都)山村(和歌山)和田(広島)常田(島根)森広(山口)藤野(福岡)木元(佐賀)福森(宮崎)山崎(鹿児島)
 因に愛知、新潟の二県は既に商組設立県であるが時期尚早の理由で未加入である。

九州薬事新報 昭和36年(1961) 3月20日号

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 東京薬政会 武見暴言で檄をとばす

 日本薬剤師協会では、去る二月廿二日のNTV座談会で武見日医会長が医薬分業を否定するかの様な発言を行ったことについては高野会長一人として静観していたため、東京都薬と同薬政会では二月廿八日付で日薬と全剤連会長宛正式に「武見発言糾弾の要望書を提出したが、なお東京薬政会では如何んとしても「武見暴言」黙し難く、遂に起って会長の名により全国各県薬協会長宛檄を飛ばした。全文左記の通りである、薬剤師よ能く翫味して慎重考慮せよ。この断腸の憤りを、東京薬政会は、全国薬剤師に訴える。

 日薬は緊急会長会議を召集し、武見に抗議せよ。しからずんばわれらは、各都道府県の有志と団結し、「武見糾弾」に起て上らんことを誓う。
 東京薬政会長 山内十造

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 挾子

 ▼参議院議員高野日薬会長は予て薬学博士の学位請求論文を東大に提出していたが近く教授会通過は確実と見られている。その主論文が「日本Bリース薬事法制の史的考察とその基本問題」と題するものだそうだが薬学系としてはめづらしいものでおそらく最初であろう。

 ▼去月の日薬代議員会での高野会長の答弁など、めづらしく高姿勢であったと伝えられているが、処方箋発行促進についての某代議員に対する答弁中、ほんの一例だが「薬局が一切の広告看板をはずし、医療機関としての姿を作ることだ」と云う一句もあったらしい。雙手を挙げて賛成する。兼々感じていた事だ、薬剤師にはその心かまえが最も必要だと思う。又日薬は強制分業の運動をやる意思があるかとの問に「完全分業は時期尚早だ」との意味の答えがあったらしい。都市ばかりに薬局が集り乱売にうき身をやつしている現状ては誰れも相手にしない。薬局の適正配置が先決であり実力を養うべきことだ。医師に比較すれば実力に於で恐らく二〇対一であろうこと。

九州薬事新報 昭和36年(1961) 3月30日号

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 挟子

 ▼今度の新法で既得権を持つ薬種商と新薬種商の二種類となるが、旧薬種商は全国に約一万五千余もあるそうだ、先程の全国薬務監視係長会議で地方側から同じ業種の中に二つのものが存在するため取締りが非常に困難であるとの理由で「薬種商の既得権を二年と定めたらどうだ」との質問的意見が出たそうだ。

 法文が「当分の間」となっているので、二年でも三年でもいいようなものだが既得権者としては死活問題とも考えているのだ。単に取締りが困難だからと云う理由でそんな事を云い出すお役人の常識を疑う。既に衆議院の予算委員会で薬種商の既得権についての質問に対し厚相は「当人が営業している間は認める位の考えでいる」と答え又薬務局長は「相当長期に亘って既得権を継続して行く考えだ」との答をしているのでこれで問題は解決している。又旧薬種商が法人の場合は既得権が永久的になると云う問題も起っている様だ。管理人さえ居ればその通りだ。法人の生命である定款が変更されない限り。