通 史 昭和36年(1961) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和36年(1961) 1月1日号

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 昭和三十六年新年号 新法の精神を活かす年 高野一夫

 昭和三十六年の新春を迎え、全薬界の各位と共に御同慶にたえませぬ。昨年中は、その前年に引続き薬業経済の混乱是正のために、関係業界が真剣なる討議をもって、混乱の原因究明と、その適正化対策の発見に努力せられましたことに、心からの敬意を表します。この問題は、実に長年に亘る難問題であり、自由経済下において根本的解決は容易でないと思いますが、然し業界各部に秘そむ欠陥について、相互に反省し、相助け合う考えで行くならば、必ずや解決できる筈だと信じます。

 新薬事法と新薬剤師法の制定は、昨年の最も大きい課題でありましたが、関係各方面の協力によって、幸いに、その成立を見ましたことは欣びにたえませぬ。新薬剤師法によって身分の確立を見たのみでなく、これに対する国会の審議の結果として附滞決議をもって従来あいまいであった「薬事衛生」の意義が明確にされ、そして、薬剤師の任務が決定的に定めされたことは、薬剤師が公衆衛生的活動をなすことにともすれば誤った見解をもたれたことが一掃せられ、薬品に関する業務と共に、衛生化学的犯罪化学的業務は正に薬剤師の任務であると定められたものであって、薬剤師にまぎらわしい名称を使用してはいけないという規定と相俟って、新薬剤師法の特色というべきでありましょう。

 また国家試験において学説と実地とを同時に行うことにして、資格取得の時期を早めるようにしたことは、薬剤師としての就職に当り、給与規定の適用に関して従来よりも有利となる筈であります。また、薬剤師の調剤は薬局に限定せられるけれども病院、診療所及び家畜治療所に勤務する薬剤師が、そこの医師の処方せんによる調剤をなし得るものとした所以のものは、これら勤務薬剤師の立場を法的に認めた点において意義あるものといはなければなりませぬ。

 新薬事法のもつ意義は少くないと思います。登録制度の廃止と許可制度の新設、薬局の管理強化についての管理者と開設者の義務規定、管理者の変更命令、薬局の定義を新たにして店舗全体を薬局と称するという初めての解釈をとったこと、販売業の整備、地方薬事審議会の設置等は、その最も特色とする所でありましょう。然し、新薬事法は、これらの規定に最大の重点があるのではなくして、国会における本法審議に当り、経済活動を中核としての論議がなされ、薬事法そのものは経済立法ではないけれども、この薬事法によってなされる行政は、経済問題を考慮せずしてはなし得ないものであることが打ち出され、そのことが薬事法承認の附帯決議十項目の中に明確化されたことに、真の意義があることを忘れてはならぬと思います。

 即ち、乱売対策、商工組合の育成、小売商業調整特別措置法の活用、卸と小売の区分、類似製品の模倣防止、発明特許の審査促進など、薬事法には直接規定せられない問題を重要視しこれらの問題処理に当ることが則ち薬事法を最も適正に運営する所以であることを、強く要求した国会の態度は、今後とも変更されることなく、政府関係者のやり方を常に厳重に監視することになるのであります。 従って、薬事法で定められた地方薬事審議会の諮問事項も、単に薬事法関係のものに限らず、広く経済の安定、農薬等の対策も含められるものでありますからこの委員が地方庁と協力して、行政、経済各般の問題についてその適正健全なる在り方にもって行くよう努力せられんことを切望してやまない次第であります。

 本年の課題は、新薬事法の精神に基いて経済安定を急速に促進せしめること、学校薬剤師の必置に際会して滞りなく必置を計り、その任務を誤りなく遂行せしめること、皆保険の体制下における診療機関及び調剤機関の在り方に斬新なる施策を講ずること、勤務者の地位向上と待遇改善に成果をあげるようにすること等であります。

 その内、薬局を含む医療機関の対策には適正配置の問題が必然検討せられるものであって、私共が多年に亘り、医療機関の適正配置は決して憲法二二条に違反するものでないとの主張が勝つか敗れるか大凡の見当がつけられることになりましょう。

 薬学の進歩なくして薬業の発展は期し得られませぬ。学問の本質的進歩を期する上からして先きに東大が引続き京大が、薬学部の昇格を見ましたが、なお九大、北海道大なども、昇格の法律改正をしなければならぬと考えます。また、新制薬大の大学院設置も出来るだけ速かに解決しなければなりませぬ。学業界が一体協力、全ゆる諸問題に深い関心と目的達成えの努力を続けられて、本年が明るい三六年となるように祈ってやみませぬ。

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 はやり 塚元久雄

 新春を迎えて、今年は何が流行するだらうと興味を持ってゐる。フラフープ、ダッコちゃん、等々あんなにはやったものが今ではそんなものがあったのかと云ふ感じがする。こうしたはやりは私等日常生活の必需品にも現はれてゐる。衣類で云へば天然繊維から幾多の合成繊維と目まぐるしく変転して流行していくし、電化の進歩と共にテレビ、洗濯器、冷蔵庫所謂三種の神器、即席食品等々、がある是等必需品の流行は比較的長続きがする、こうして何れの方面でもすぐ消えてゆくはやりと比較的持続するはやりがある。

 振り返って薬でのはやりはどうだろう。長つづきするものは少く、数年で消えてゆくものが多い。このはやりは薬学の進歩によるものではあるが、完璧な薬がない事をも意味してゐる。薬品の悪用例へば自殺、他殺の面から見てもはやりはある。昭和の初期にはベロナール自殺が流行し、次いでカルモチン、アダリン等々自殺に悪用された催眼薬はその当時の自殺手段のはやりであった。

 そこで法医学裁判化学の立場から是等催眠薬を流行毒と云ってゐる。これに対し青酸塩は古くより現今に至る迄自殺他殺に使用されてゐる。恐らくその毒性の強さと短時間に死に至り、これ程目的を完全に達し得る毒物は見当らない為かも知れない。はやりすたりのない毒物であらうか?さて今年は各方面で何がはやるだろうか!!!、こんな事を考へながら新春のトソ気分を味ふのもあながち変人でもあるまい。(九大教授薬博)

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 何かが欠けてゐないか? 八幡市薬剤師協会 専務理事 神谷武信

 輝かしかるべき一九六〇年も暗雲たる内に明け暮れた薬業界に、わづかながらなぐさめとなり得たのは、薬事法の改正、薬剤師法の設置といふ隙間あかりであった。但し此の法律の運用にも私共は手をこまぬいて傍観する訳には行かない。残された記憶を熟読すれば高野会長孤軍奮斗の模様はよくうかがはれるけれども、果して今の薬業界の在り方で、私共の希望に近い様な姿で実施されるであらうか。考へて見るがよい。勤務薬剤師の地位の問題、日刊紙迄賑はす様になった薬業経済問題、薬学大学の設置問題、或は一部であった薬務課の廃止問題。程度の差こそあれ何れも薬剤師たるもの、死活に関する重要問題ばかりである。

 何人と雖も、此の世に生をうけたる者、己の幸福を希はぬ者はなからうし、憲法の定むる所であるが、数多い職業の中、奇しくも仝じ薬剤師として生き続けるものが、自己の身分の裏付けとなるべき両法に対し何の働きかけもなく無為に過すことはなからう。一口に薬剤師と云っても夫々性格も違うし又勤務個所はまちまちであらうが、局所的にこだわればそれ丈力は弱い。

 早い話が四年先には地元福岡を中心に一挙に薬剤師が氾濫しよう。その時の事が考へられてゐるであらうか?。薬学大学はもとより行政指導に当られる薬務課、アポ総結集すべき県協会、又先輩として迎へねばならぬ立場の勤務薬剤師、夫々の立場で今より薬剤師職能のPRに努めねばなるまい。現在の医薬学が治療面より予防面へと重点が移りつつある時、幸ひ今の大学では随分と此の方面に力を入れられていると聞くが、公衆衛生、労働衛生、又学校保健面で薬剤師の進出すべき分野が多分にある点を見逃すわけに行かぬ。

 一例ではあるが、昨夏全国的に組織ある某事務所から環境衛生調査の申出があり、全くよき機会であったにも拘らず、県が一しゆうなされたことなどかかる見地からすれば誠に残念であった。政治的に進出して地方自治体にその様なポストをこしらへる必要もあるが、又民間事業体として業者を育成する事も当然考へらるべきであると思ふ。

 開局会では、昔はよかったとよく聞かされる。何もせずに安閑として楽が出来た頃より培はれた無計画さと無気力さ。最高学府(?)を出たと云ふ悪い意見のインテリ意識。総べては悪いとは思わないが、周囲で起ってゐることに対し、側で見てゐて苛立たしくなるまでに無関心であるか、或は、無関心を装ってゐられるのか意欲と云うものが余りにもなさ過ぎる様な気がする。

 種々の会合で出席者の少い事、又遅刻者の多い事は何処も悩みの種らしいが所謂井底の蛙ではいけない。一定の場所許りに居ては頭の回転も一定してゐる。月に一度か二度かの会合に出れば何時も働かない脳の一部が働き、よき考へも出ようと云うもの。又遅刻に就いては昨夏本紙にて「いかれぽんち」ことZ・A氏の遅刻スタイルにて深くいましめてある。心すべきことにこそ、何れにせよ会合はそろそろ家庭生活からはみ出た年配の人々のためのものではない。血気旺んな志の大いに意見を出すべき所だと思ふ。そして定時に出席することこそ、お骨折り願う幹部に対する先づ第一のエチケットだと思う。

 所詮人のする事であると申せばそれ迄。何としても現状を一歩?進歩改善せしめるには、全薬剤師の反省と、県協会指導者の優れた統制とに待たねばならない。即ち人の和であります。あくまで冷徹な情勢判断のものになされた計画であり、その趣旨が傘下支部に徹底されるならば、必ずや全薬剤師は起ち上ることでせうし、何時かは附帯決議に表れてゐた法の精神が生きてくるものと信ずる。

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 初春のことば 田中美代

 むかしナイチンゲール嬢が、病人のため献身的奉仕をしたということについては、既におきき及びのことと思うが、このような犠牲的精神を今日の、ナイチンゲール嬢達にも期待しようとすることは、果たして無理なことであらうか。

 ともあれ昨年の秋、何時までも「無賃ゲール」なら低賃金では、も早や我慢できないと、立ち上った全国の看護婦さん達の、基本的人権と生活権確保のためのストライキはとうとう解決しないままに新らしい年をむかえることになった。そのよって来た原因が、どこにあるかということの詳細については、知るよしもない私ではあるが、封建的な病院内の事情は、折にふれ聞かされたこともありおぼろげながら想像することのできた私であった。

ところでそのような封建的な環境が、直接原因であるとは言えないにしても、今日お医者さんの師弟関係ほど、封建色の強い間柄はないらしい。勿論三尺さがって師の影を踏まずという美徳は、まことに結構ではあるが、その美徳が病院内において、他の労務者にまで押しつけられるのであったとしたら、どうか考えなほしてもらいたいものである。今日のところお医者さんであるかぎり、たとえこのような封建的なつたがりがあったとしても、一応基本的な人権とともに生活権がおびやかされる心配は決してないのであるから、我慢してもらってもよいとして、生活権までもおびやかされ勝ちな低賃金層のプレさん達の、悲壮な要求だけは一日も早く容れてやってほしいことを、年のはじめに先づ期待してやりたいものである。 

 然しながらこのストライキの犠牲が病人にしわよせされて来ることにでもなると、やりきれないが、きくところによるとどうやら、このしわよせは健保料金値上げの、雲行きとなりかねないようである。何れにしてもこの問題の結論は、新春とともに当事者よりむしろ、日本医師会と厚生省との間で、医療費の値上げということで解決されることではあらうが、ストライキ解決の日が、健保料金の値上がりの日となったとしたら、庶民にとっては余くたまったものではない。

 例によって例のとおり、月日の経つのは全く早やいものである。同じ言葉を毎年繰りかえして行くうちに人間の生命はすりへらされて行くものである。それにしてもあわただしく去って行った古年は、私にとってはこの上もない意義ぶかい年であった。九州薬学会、西部女子薬連総会の開催等々、女子薬会員の方々の総力をあげての活動とともに、男子会員の方々からの力強い御援助、わけても四島先生をはじめとして役員の方々の理解ある善意によって対外的にも県女子薬の面目を保たせて頂いた御厚情は、終生忘れ得ぬ思い出である。一方又不幸善戦空しく粟村女史が落選されたことは、痛痕のかぎりでもある。しかしながら何時の日にかは捲土重来目的達成の日もあることを思ひこの上ともなく女史のご活躍をお祈りしてやまない。女史にかわり本紙上をお借りしてみなさまにお礼申しあげたい。

 私達の長い間の懸案であった薬事法の改正と、薬剤師法が制定されたことは、たとえそれが私達が期待していた内容のものではなかったとしても、立案された人々の苦労に対して心から感謝申しあげるとともに、同慶にたえないところである。一つの法律の改廃ということのむづかしさは、想像以上のものがあらうとは思われるものの、私にとってみて実のところがっかりさせられたもので、かわりばえのしない改正であったようだ。しかしながら薬剤師という身分がはっきりと法律でもって、裏づけされたことは、ほんとうに結構なことといわねばならない。いろいろと言いたいこともあるけど、正月早々女だてらに生意気だなんて叱かられるかもわからないのでここらあたりでさがった方がよさそうである。

 去年も押しつまったころ山口県の徳山、防府、山口の各市で薬品の一斉値下げが行なわれたニュースを知った。ことの起りは販売合戦のあほりであって、スーパーマーケットの排戦が原因とのこと。昨年の五月頃薬局のスーパーマーケットとの間の、販売戦を見かねた県の薬務課が、仲に立ってあっせんした結果、一時的にも休戦協定が出来てはいたというものの、十月頃から又くすぶり出し、年末の一斉値下げという休戦協定になったというのが之の真相のようである。然しながらこの協定も、明けて今年の五月までとか。

 かつての日、山口県の関係者の間で危機突破大会まで開催して、商権擁護のため斗かわれた方々の、努力が空しかったことは、まことにお気の毒にたえないのであるが、この問題は対岸の火災視どころではない。こちらでも暮近くわざわざ県庁までお出でになった若松市の同性の方々苦衷。事情はお察しできることではあっても、現行薬事法の規定ではいかんともしがたいところである。今年も亦私達は、憲法で保償された営業権と薬事法との板挟みにあって苦しまねばならぬであらう。かずかずの問題が惹起されるであらうことも覚悟している。行政のあり方のむづかしさを痛感させられながら、私達公僕のつらさも亦ご諒承願いたく。年頭のごあいさつを申しあげる次第である。(福岡県技師)

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 年頭に直面する校剤必置制の問題
 福岡県学校薬剤師協会長 早川政雄

 △回顧
 想うに昭和三十五年度の焦点は只一筋に必置実現への受入態勢強化に注がれた。四月の東京に於ける日本学校薬剤師会総会に於いて、又十月平市における日本学校薬剤師会大会に尚九州山口薬学大会校剤部会に於ける各県提出「スローガン」に又之等に平行して関係方面への陳情要望請願と実に目まぐるしい程の忙しさであった。

 △移動講習会の効果
 日薬並に日本校剤の高度政策の一環として昨年は各地で「コキザミ」的ブロック講習会を開催し、校剤の育成と未設置地区の設置速進に努めたが、福岡県では一月未設置地区を六区に分けて第一回の移動講習会を行い、九月には更に「コキザミ」して教育委員会並に学校関係者をまじえて九ヶ所で第二回講習会を開催し只管設置速進に邁進した結果、今迄予算一点張りで設置をおくらせていた地区も漸次関心を高めて来た。最近ではあちこちから校剤の任務について問い合せが起って来た。之は一方では時の問題として解決が迫られて居る為め、其の対策に腰をあげざるを得なくなって来たのではないかと云う見方もあるが、何れにしても喜ばしい事である。併し未だ甘く見るのは危険で我々は残された三ヶ月に迫車をかけて、あくまで学校保健にうたはれた文部省の基本方針の貫徹に邁進しなければならない。

 △油断大敵
 稍もすると未設置地区に於いては、今尚設置速進の意味が十分のみこめないで四月一日には実現するものと安心した錯覚におぼれて実現に対する確固たる裏付けを軽視して居られる様な風評を耳にすることがあるが之は大きな誤りで、講習会によって得た知識を一日も早く学校保健の面に生かして所謂薬剤師の専門的技術の昂揚に努め社会の認識を昂め得るよう設置を急いで必置実現の要因に資することが急務であり、以て医薬分業時期延期の二の舞を踏まぬよう此の際一大奮起を要望して止まない。 「風吹けども動かず天辺の月」では困る。

 △公衆衛生への躍進
 日薬においては昨年からNHK夏季移動相談開設に従来の調剤処開設の外、環境衛生検査鼠族昆虫駆除対策農薬による被害防止等の実務並に指導部を加えたが福岡県では八月の酷暑時に八女郡黒木町会場に二日間県校剤多数協力した結果、之が非常な高評を得て十月には豊前市で行われた県主催の「文化キャラバン」に、又十二月には田川郡において三日間行われたNHK歳末助け合い運動に同様な奉仕が要望され公衆衛生への校剤の活動が目立ち医薬分業のPRと相待て校剤設置への足がかりにプラスしてきたことは幸いである。

 △最近の設置状況と見透し
 十一月廿五、六の両日大阪都島の大閣円で六大都市学校保健協議会が開かれた際第一日目の学校薬剤師部会で六大都市の設置状況が報告されたがそれによると平均して約九五%と云うことが明にされた。特に東京都、大阪市、京都市、名古屋市における高等学校百%、神戸の九五%は先ず優秀な存在であろう。併し全国平均は未だ未だ七〇%の目標額に遠く及ばず、殊に山間僻地の問題もあって最後まで設置のむつかしさは否めない。

 十月廿二日の九州山口薬学大会校剤部会での講習会後の各県の報告によれば、福岡県を初め九州、山口各県では今年度は百%の設置可能性が強くなっているが蓋を開けるまでは今後ともあらゆる対策を講じて強力に推進することが必要である。幸い昭和三十五年十一月十五日付を以て文部省杉江体育局長より新に各都道府県教育委員会教育長宛(学校薬剤師の設置について)猶予期間を待たず出来る限り設置するよう文書を以て通知せられて居るので、九州各県薬剤師協会に於いても今後の追込に十分此の事を生かして是非喜びの四月一日を迎えることが出来るよう只管念願して止まない。

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 山之内製薬の特賞軽自動車 博多の藤野薬局に

 山之内製薬の一姫二太郎三サンシーの合言葉で一層のお馴染の「サンシースキン躍進特売」は盛況裡に締切られ「謝恩サービス抽せん券」の抽せん会は去る十一月十一日大阪北浜清友クラブで薬局薬店及び業界紙の多数立合のもとに厳正に催されたが、全国で唯五本の特賞の一本が九州博多、吉塚妙見の藤野薬局に当せんの幸運が天下だった。

 薬局主藤野氏始め家族一同の悦びは何にたとえ様もない様である。それの連絡所である最も関係深き山之内福岡支店の悦びも亦同様であり、写真は景品「マツダR360クーペ」を前に藤野薬局一同の悦びの姿である。同薬局では一姫二太郎三サンシー合言葉と共に今後一層サンシースキンの拡売に努力したいと言っている。

九州薬事新報 昭和36年(1961) 1月10日号

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 福岡の年賀会 薬事同冠者の集い

 寒波に覆われた福岡は旧年末より引続き新春昭和卅六年の元旦、寒さは十五年ぶりと云われ粉雪を降らす空は暗く、然し恒例の福岡薬界の年賀会行事は先ず九州薬事新報社の主催で正午から福岡住吉神社境内薬祖神「少彦名神社」に於て執り行われた。寒さのためか例年より尠なき参詣者の内に吾薬界人の晴れやかな笑顔も見え「お目出たう」の声しきり、定刻正午社前に参集し、軈て宮司の祝詞の声は静かに流れ、各代表者の玉串奉供に引続き参列者一同は拍手礼拝、行事を終えて程近き祝賀会場向島の婦人会館に向った。

 会場の準備既になり一同着席、直に主催者の開会の挨拶があり本年の申込みは百八名の旨報告、次いで薬祖神に供えた神酒「王樹屠蘇冷酒」による乾杯、それより宴に移り温酒献酬、年頭互礼の祝杯は相互間に流れ?れて漸く微燻に身の温りを覚え談笑しきり、この時九薬社々友、俳壇、俳画画界の巨星、阿部王樹翁寄贈の同翁自筆の色紙並に同社特撰の紅色鮮かな張子の不倒温など抽せん配与、当せん者は満場拍手の裡に自己紹介に喜びの声を張りあげ、参加者一同の机上各人の前には「外柔内剛」を表現せる小型「オキアガリコブシ」と、本年は特に興を添えるための「コメット」がもれなく贈与され、それより又一しきり杯の流れは愈々早く宴酣わとなるにつれ、祝のコメットはパンパンと音高く堂をゆるがせ、端気は堂に満ち、茲に目出度く卅六年の年賀会の幕を閉じた。

 当日の参加者は百八名に及び、メーカー本支店、卸問屋、薬局、九州、第一、福岡各大学の薬学並に九大薬局、県市庁、国県市立病院薬局など、福岡に於ける薬字同冠者の主脳を殆んど網羅した観があり洵に華々しき薬界新春の第一歩であった。

九州薬事新報 昭和36年(1961) 1月20日号

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 福岡県校剤会 理事評議員合同協議

 福岡県学校薬剤師会では理事、評議員合同協議会を一月十三日午后二時から薬剤師会舘で開催、左記事項につき報告、協議をなした。

 ▽報告事項
 昨年十月柳川市に於ける県学校保健大会を始めとし全国校剤大会並学保大会(平市)、全国学校保健学会(九大)、県給食協議大会(小倉市)、八幡市学校保健大会等に於ける研究発表議案提出、内容状況などにつき出席報告があり、次いで校剤設置普及について必置を控えて、文部省体育局長の通牒を中心に種々速進運動展開の内容について詳細報告があった。

 ▽協議事項
 1、校剤設置に関し、校剤の職務説明については未設置地区の支部長からの連絡があれば本部より直接説得することを決め、又県立高校関係では予算要求の関係上県の財政課長に働きかけることを決定した。  2、器具購入については、本年は顕微鏡その他を講習後に購入することを決めた。  3、文部省主催指導者講習会は東京、大阪(一月廿六七日)で開催されるが本県からは協議の結果、高倉(福岡)橋本(久留米)側島(田川)の三氏の出席を決定した。講習科目は@学校保健の今後の課題A日本学校安全会法B検知器による各種瓦斯分析C細菌検査の実際D各種環境衛生検査器具の解説と実習、である。右協議会を終了、午后五時。

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 漢方営業の喜び 戸田秀実

 一、はじめに
 科学技術庁監修「二十一世紀への階段」第一部(四十年後の日本の科学技術)という本の中に「ストレスと漢方医学の再評価」と題して「漢方医学の考え方というのは非科学的なようにみえるために、ともすれば無視されがちだったが、セリエという医学者のストレス学説が発表されてから、再検討されるようになってきた。人間の体質を改善する上の新薬として、漢方は再評価されていいとする声が最近になってたかまってきているのだ。土の中から、これまで不治とされてきた病気にきく薬のとれる時代になってきているのだから、木の実や根からとれるという考えは、少しもおかしくはない。と書かれています。

 二、漢方の入口
 漢方はやりたいが仲々むつかしいという声を聞きますが、それは入門のしかたを誤った為めではないでしょうか?薬局の漢方、専門店の漢方、病院の漢方、専門医の漢方と其の目的によって自ら勉強の仕方も異ってよいと思われます。薬局の多角経営の一部としてやる漢方の程度でしたら、今では分り易い現代的に書かれた入門書もありますし、メーカーの作ったやさしいしかも充分活用の出来る小冊誌もあり、又研究会に出席して勉強も出来ます。初めから原典と取り組む必要はありません。むつかしい事は専門家にまかせることです。

 三、漢方は非科学的か
 よく漢方の事を知らぬ人は、薬剤師や医師ですら未だに迷信のように思っている人もありますが、はたして漢方はそんなものでしょうか。漢方薬の原料に使う生薬で成分や薬効の研究が進むにつれて、局方、準局、国薬に次第に多く取り入れられています。例えば甘草は以前は矯味薬、賦形薬、賦形薬位にしか考えられていませんでしたが、漢方では古より解毒薬、急迫緩解薬として使っていました。

 最近では其の裏付けとなる研究が次々に発表され、?抗ヒスタミン作用、?破傷風毒素の解毒。?ジフテリア毒素の解毒?硝酸ストリキニーネ及び抱水クロラールの解毒、?アルコール、四塩化炭素による肝臓障害に有効等、又ハイドロコーチゾンや、DOCA及びプロゲステロンの増強作用等ある事が証明されてきました。

 それで漢方の大家大塚敬節先生は、非科学ではなく未化学といってあります。漢方の興味深い点は千数百年も前からの経験が積み重なって理論が作られたところで、現代医学のように動物実験によったのではなく、直接個々の人体実験によったわけで、永い歴史と経験で濾過されて尚かつ遺された漢方薬の中には現代薬では治し得ようのないような味のある効果を持っています。

 四、漢方営業の喜び
 私は昭和三十一年より本読を始め三十二年より販売を始めましたが、広告を出したとたんに難病を持ち込まれ非常に困りましたが、又お蔭で大変勉強させられました。それは昇汞中毒の患者で、その父より国立病院に入院中で生命は取り止めたが入院して数ヶ月も治療を受けているが治らず衰弱して行くので、退院させて来るから是非貴局の漢方薬で治して頂きたいというのです。

 勿論一応ことわったのですが、患者の父の熱意に動かされて、遂に出来るだけやることになり一生懸命に少い蔵書を調べましたが、昇汞中毒など書いた書物はなく、幸いな事には漢方では体質と症状によって、病名の如何にかかわらず投薬治療が出来ますから、一番適した処方と思われるのを与えましたら、うまく適合して一日毎に快方に向い、僅か二十日分で全治元気になりました。患者は勿論家族より大変感謝されましたが、それ以上に私の方が嬉しく、益々漢方に興味を覚え熱心に勉強するようになりました。

 五、努力即営業成績
 私達開局者は薬大で勉強した色々な学科を引き続き研究しても、直接営業面にプラスになる事は少ないものです。ところが漢方は自分の努力が直ちに営業成績に反映してきます。

 六、おわりに
 幸い九州にも三十二年に漢方研究会ができ、会長の塚本赳夫先生のご指導の元、医師、薬剤師、薬種商他一緒に研究を続け、熱心な会員は相当に成績も上げています。困った患者を治して感謝されながら薬局が経営できており、私は遅ればさながら漢方を始めてよかったと思っています。(九州漢方研究会 常任幹事)

九州薬事新報 昭和36年(1961) 1月30日号

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 福岡地区薬業危機突破大会 福岡県方式の擁護斗争を決議す

 福岡地区薬業共同組合では新薬事法の施行が予定されている二月も目睫の間に迫まり、この機に於て、昨年来当局に対し、圧力と運動とを継続し来たSM薬品部設置申請に関し、丸衆スーパー、西部ストアと当局との間の成行きが福岡県方式を潰滅させる虞れあるものとして総決起し、一月廿三日午後二時過多オール組合員を総動員して櫛田会舘に「福岡地区薬業危機突破大会」を開催し、強固な総意と断固たる決意とを茲に昂揚せんと企てられたのである。

 先ず司会者藤野理事は「昨年来の問題であった丸衆、西部ストアは近日中に申請が受理される模様であると云う。吾々が了解している福岡県方式はこの二店に対してのみは摘要されないのであろうか、今日の大会記録は一言も漏さずその儘一丸となりこれに対し抗議すべきではないだろうか」と述べ、須原副理事長の開会の辞に次いて白木理事長から丸衆、西部ストア、二店について、又その対協組とに関する経過報告があった。

 昨年一月県薬事協議会第一回会合開催後、所謂福岡県方式なるものが作成され四月には各保健所に通達されたが、丸衆は昨年二月申請、引続き、殆んど県議である高丘、緒方、豊田、林と連続して、県当局との間に介在し斡旋運動を、今日迄継続している模様と云われ、又西部ストアは全国セルフサービス協会が昨年の二日市に於ける大会後県衛生部は勿論、全国的に厚生省、公取委、その他関係官庁当局に陳情し、内容を調査し、これによって福岡県方式を撃破し又自滅させることを目標に、一つのテストケースとして西部ストア問題を取扱っている模様であり、左様に伝えられている。

 斯る状態にある二店に対し県衛生薬務当局は如何にこれに討処し如何なる措置を新法施行を前にしてとらんとするか既に協組としては充分察知しているのである。SMが医薬品部を開設するのは時の流れであり、個々の薬局薬店も漸次体質改善すべきであるとの意見も一部には言われているが、国民皆保険の影響とSM等の廉売事一般浸透の結果は吾々薬業人の生活権が極端に脅やかされ閉店、倒産の悲惨事を見ることは火を見るより明かであり吾々は積極的に一層の団結が必要だと思う。それにつけても本日は「新法の許可制によって果して福岡県方式が堅持できるや否や」又「体質改善は個々に於てやるとはいえ組合無用論が果して成立するや否や」又は「三百の組合員の力を結集して断固阻止に邁進すべきか」を協議して頂きたいと思う。と述べ次いで司会者は満場に諮って四島氏を座長に推し協議に入った。

 先ず白木理事長は丸衆、西部ストアの申請内容、店舗の位置構造など具体的に図解説明し、次に四島氏は「福岡県方式作成以前からの申請であるとの単なる理由で而もあらゆる手段により当局に圧力と運動を続けて来た二店だけを別個に取扱うことは洵に了解に苦しむ処である。吾々はこの際自暴自棄を誡め合い一層の団結の下に自力による開拓精神を発揮すべきである。本日は如何に考え如何に行動すべきかを、深く検討したい」と述べた。

 それより各人からそれぞれ意見が開陳され@社会党系の圧力がかかっているならば吾々は自民党を利用してはどうかA県議会まで持って行くべきだB座り込み戦術などこの際必要ではないか、又一方にはC当局のとる措置も止むを得ないのではないか、等々、此処で座長は結論を出すため例外止むを得ぬ、徹底的に戦う、との二項に意見を纏め、満場に諮ってその決をとった結果は、二対一によって「徹底的に戦う」と云うことを決定した。

 決定した以上第一段階としてその戦術について考えねばならぬ。先ず須原氏から「県庁前に組合員全員或は交替で座り込みをなし、幹部が折衝する」ことを提唱しこれに賛成する者多数であったが結局は座り込み、デモ等は却って擢り変えられる惧れがあるので一転して「県議会工作と陳情」の方法を採ることに意見の一致を見た。

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 薬界◇◇隨談

 ▲日本医師会二十日に理事会を開き@一点単価の三円上げA甲乙二表の一本化B制限診療の撤廃C事務の簡素化の四項目の要求貫徹場合に依っては保険医の総辞退の実力行使も予想される。武見会長は二十一日早朝池田首相にも直接会見強く訴えている。二十一日は全国会長会議を開いて地方情勢を聴くと共に四項目貫徹方針の協議を重ね世論の反撃も加味して総辞退や地域住民へのPRと柔軟斗争を打ち出している。九州ブロックは十九日福岡で協議会を開いて日本医師会の態度を支援し政府の取った態度に不満を表し斗争についての話合いを行っている。日本歯科医師会も全面的に医師会と同調している。日本薬剤師協会はうん共すんともいっていない。

 ▲一年余に捗った東京池袋の三共対三協の薬の合戦は旧臘三十日に三協が三共に二千五百万円の補償金を払って解決した。薬業紙でも其の解決の事項について可否の論が相当に突き込まれている。其の地域の開局者も一担下げられた値段は急に上げられるものではない民衆が承知しない痛し痒しが末永く残って行く。

 ▲公務員ベースで私大の教職員の待遇改善で授業料値上げが大きく浮んで来た。一流私大で相当の値上げを発表しているが、未だ私立薬大はそんな動きはないようだ。旧臘から正月に入って私立薬大の学生募集が日刊紙に眼につくようになって来た。中には県立一校に私立数校の連盟広告が日刊紙の二段をかざっていた。

 ▲世は神武景気縄文景気本年はレージャー(余暇)時代となる軽電機の発達と景気で手がはぶけて従って、余暇が多くなる薬業では国保が普及発展するにつけ買い薬がだんだん減って来る。大都市の薬剤師界では売りあげ減少で吾々の生活に補償してくれと保険者である市へ要求を訴えている。薬屋位安全の商売はないと考えていたものが遷れば変る世の中である。(GT生)