通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 12月10日号

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 第十回NHK歳末 たすけあい運動と 福岡県薬協

 恒例により本年も第十回NHK歳末たすけあい運動がなされることになっているが、主な実施事項は健康相談、法律相談、前夜祭などである。福岡県に於ける期日会場は次の通りである。
 ▽十二月十三日=田川郡川崎町、川崎小学校講堂
 ▽十二月十四日=同郡大任町、大任公民舘
 ▽十二月十五日=同郡香春町、香春小学校講堂、幼稚園保育所

 健康相談業務分担
 ▽衛生相談=田川保健所
 ▽第一、第二内科、レントゲン科=簡易保険局
 ▽第三内科、小児科、外科皮膚科=日赤病院
 ▽投薬、環境衛生相談=薬剤師協会

 調剤及び投薬
 @日赤発行処方箋により投薬する。
 A投薬量は原則として三日分以内とする。

 環境衛生相談
 @保健所薬系技術者の協力を得て学校薬剤師が担当する
 A主要相談事項は一酸化炭素中毒、食品衛生(食品添加物、食品色素、食中毒等)及びねづみ駆除法
 調剤及び環境衛生相談奉仕人員(一箇所当り)
 @主任は田川薬協支部長
 A調剤員は会員薬剤師三〜四名(支部長委嘱)
 B環境衛生相談員(学校薬剤師)一〜二名

 経費(交通費、食糧費、現地調弁医薬品費等)は県薬剤師協会で負担する。なお本作業は薬剤師協会、薬剤師、医薬分業のPRをもかね行うものであり奉仕者は慎重正確に患者に対して懇切叮寧を旨とし薬剤師の社会的地位向上のため充分留意すべきである。

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 薬界◇◇隨談

 ▲科学技術庁が昨年六月行った世論調査が三日発表され「科学的な問題には興味がない」との回答が八割、科学技術の必要性を認めると云ふもの或はラジオの修理、食品の栄養価など日常生活に深い関係のあるものの能力は低いが一面回答者の八五%の家庭が救急薬品を常備しており、体温計や寒暖計の普及は八二%以上であり事業の知識はずばぬけて高いと云う面白い発表である。

 ▲病院ストは病こうもうに入った。職場大会、職場時間のスト、革新政党、労組等の応援で長びく様相である。日刊紙、週刊紙トップ記事で取りあげる、病院も近代経営が必要だが、医療費の改正へと愈々政治問題化して来た。

 ▲薬品部の開設を始めた主婦の店の近隣の薬局の一人が薬の売り出し、安値販売!!主婦の店と同値段で売り出しの新聞折込みビラの宣伝を始めて業者の話題になって来た。SMと組合は誓約書を手交している。指導要綱や行政措置でも個々の売価は自粛をきめられている。一業者の行動は組合員内部ばかりではない。一応自粛のSMがPR戦にまき込れたならば取りかへしのつかない事である。

 ▲山口県徳山防府山口の各市でのSMと業者の乱売対立やっと協定価に入ったとの事である。元来SMだけが一割から五分、薬業者より安くする事は腑におちない様な気がする。これは山口だけの問題でなく各地の実情がそうらしい。

 ▲日薬来年予算に商組の全国組織化促進で六千二百万円の予算をくんで推進する。

 ▲ソ連小児マヒ治療薬ガランタミン大量輸入に関し要望と促進の民衆運動が各地に起っている。ヒガン花から抽出したもの、ヒガン花の成分と構造式の研究では近藤博士や門下の学者で世界に先鞭をつけていたが、薬効との連絡が遅れていたものと同一だといわれている。(GT生)

九州薬事新報 昭和35年(1960) 12月20日号

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 薬界◇◇隨談

 ▲泣いても笑っても今年は過ぎ去って行く、ジングルベルのクリスマスは日本式の華やかに酔ぱらいの街と化し、ボーナス景気で暮れの街は騒しくなった。だが案外にもこの景気を受けないのが薬局である。

 ▲本年の薬業界を振りかへれば色々の想ひ出がある。先づ薬事法の改正と薬剤師法の通過である。薬業自体ではSMや生協で著しく流通が乱れた結果価格は乱売のドン底に陥され、開局薬剤師の生業と云ふものが混乱静かに考へるとこんな商売!!多角経営の名の下に雑貨屋化せられんとする事が果して常道かと思はれる。

 ▲SM管理薬剤師いよいよロボット化?医薬品部の仕入販売は経営者の辣腕に依ってタッチされずのつんぼ座敷に置かれ店に依っては一万円以下の低賃金に甘んじている処もある。良く応ずる薬剤師があると思はれる次第である、これも剤師の生産過剰によるものではあるまいか。

 ▲医薬品小売商業組合年内に十余府県の設置、全国普及迄まだまだの感があり日薬薬業経済安定機構がやっきとなっているが、全剤界開局者特に小零細企業の分野益々蔭が薄くなって来た。

 ▲日本PTAの機関紙で校剤設置促進の文部省体育局長の通牒を報道。

 ▲一円硬貨不足其の原価一円十三銭につく、拠出運動が起っている。この小銭薬局でも必要、社会保険調剤窓口一部徴収で入用である八円の調剤料ではミミチイ釣り銭がいる。

 ▲私立大学教職員のベースアップで授業料の値上げを来春より実行、私立薬大はどんな計画かしらん、だが現に年授業料は五万円である。(GT生)

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 待望の薬事審議会設置決定 十二月例会 福岡県薬業懇談会

 福岡県薬業懇談会十二月例会は十二日午後一時半から薬剤師会館で開催、出席者は、次の通り。
 メーカー側=武田薬品、塩野義製薬、三共、第一製薬の各支店長

 卸売側=鶴原、佐治、江口、波多江(代)、大黒、

 小売業側=古賀、白木、形井、吉柳、深田、工藤、

 県庁側=前川部長、尾形課長、佐々木補佐、尾崎補佐、大庭技師
 まえから衛生部長の挨拶後直に左記議題協議に移った。

 (1)協同組合等の行うマスコミ商品の共同購入に就て
 小売並に県庁側としては同時に多量仕入れすれば安くなり一軒より十軒を纏めた方が有利となる様思えるが如何のものか、これに対し卸業側では現在最低価格で卸売しているので共同購入でも安値にはならないであろう。又協同組合などでやれば小資本の組合員は得をするが、大資本の方は損をする結果になると思う。メーカー側としても共同購入は成り立たないと思うので賛成しかねるとの意見であった。結局今後なお継結研究と云うことになった。

 (2)メーカー、卸より見た小売薬業安定振興方策について
 業者は根本的には薬業の特殊性を自ら認めて行動し前進せねばならぬ。マスコミ商品の値下げは具体化していない。小売振興法としては現在の処名案はない様である。

 (3)農協に於る限定品目外医薬品の販売について
 粕屋地区の農協にはサルファ剤、抗生物質、ストマイ、注射用水まで販売している。当局の厳重な取締りを希望する。又卸業者に対しては限定品目以外の医薬品販売は厳に中止されたいとの要望があったが、県庁側から今後徹底的に指導する旨答えがあった。

 (4)その他=@病院に於ける斡旋販売A飯塚、八女のSM、福岡の主婦の店なに就いての報告がありB白木氏から薬事審議会の設置の要望があって衛生部長から「SM問題に対しては直に利用できないかも知れないが設置することにする」との発言があり、業界としては待望の答弁であり、本懇談会としては特報すべき決定事項であった。

 ▽特報
 県条令による薬事審議会又は薬事協議会を作ることを決定した。業界の事情に精通し考慮深き尾形薬務課長としては「時期尚早、期待薄」との理由で設置に難色を示したものの、衛生部長の裁断で設置を決定することに至ったわけである。なお設立後も薬業懇談会は存続させることを決定。懇談会を終え忘年会をかねて小宴が開かれた。

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 三師会の市国保 機関辭退報告を 福岡市薬協部会長会

 福岡市薬剤師協会では十二月七日午後二時から薬剤師会館で部会長会を開き会長から今日迄の三師会の行動経過、並に去月卅日終に、福岡市が明年一月一日から実施予定の国民健康保険に関し国保医療機関並に保険薬局の辞退届提出するに至った経緯について詳細報告があり了解を求めた。

 この辞退について医師会では個人病院診療所が一致団結して市から県に迄拡張の覚悟で行動しており歯科医師会でも同様である。吾々薬剤師会としても保険医なくては保険薬局はあり得ないと云う現実的立場に在るので医師会に対し協力態勢をとっているわけで、この点特に諒承を願いたいと会長は述べている。

 三師会の県への総辞退届提出については市当局も相等な衝激を受けた模様で、その後北岡市会議員等が三ヵ条の調停案を携えて調停に立ったが不成功に終った。三師会では近く再び決起大会を開催して市当局の反省を求めることになっているので開局薬剤師は多数出席し、事に当り発言権を強化して置く必要がある。

 各部会共年内に部会を開き今回の三師会の行動について会員の理解を得る様お願いする。なお国保療養取扱機関の指定を辞退しても法規上一ヵ月間の予猶があるので十二月一杯は従来通りであり、又本県に於ける特別国保による組合(医、歯、薬、警察、門司港湾)については従来通り取扱う様協定折衝中である旨報告があって部会長会を終了した。

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 薬界◇◇隨談

 ▲薬局で防虫剤としてナフタリンは今でも相当に売れているが、このナフタリンは塩化ビニールの原料である無水フタール酸の原料であり、国際的に不足、主産国の西独でも国力輸出の余力が著しく激減したといわれている。

 ▲西日本紙佐賀地方版に「大揺れするか、薬品販売界」の見出し大洋ストア薬品販売登録申請書を繞って二十四日に大洋側は至急に認可をと県当局に陳情、薬業界側は二十五日に「薬品販売の公共性」から囮商品として薬品を取扱してはならないとSM反対陳情を力強く推しすすめている事を大きく掲載している。

 ▲之れ亦二十四日の西日紙に薬学教育新設反対に九薬連の古賀治会長が乗り出したと報じている。

 ▲二十七日朝NHK@「私たちの言葉」「時代遅れ」の薬事法を改正せよと東京山内十造君の意見を放送されているのを寝そべって聴く。説く論旨我々の述べんと考へている処にそっくり一致した。論者は薬剤師東京薬政会長で筆者と永い交友を続けつい先日写真を送ったので礼状を受取ったばかりである。

 ▲社会保険の医療監査制度が事の他酷しく、東北地方でこれを苦にして医師が自殺した事件も出来た保険診療の指揮権を医師会が握る可きで小役人にこの権限をもたしてはいけないとの論が出来きた。悪質の水増しも有る。人間は神様ではない筈、健保制度の向上には未だ幾多残された問題がある。

 ▲小売商業調整特別措置法に基いて過当競争の恐れがある。金沢、河内、福岡の三市を加へる事を次官会議で諮り開議を経て指定する。これで三十二市となる。

 ▲日刊紙の報道で福岡市国保発足で其の運営中最終支払責任の点で決論がなく医歯薬の三志会が医療担当者たる事を辞退したと、円満なる解決を望んでやまない。

 ▲日薬構想では、薬事法改正推進運動の本部を中央に地方にも夫々推進の母体をつくると発表。(GT生)

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 明るい見透しとなった 福岡縣医薬品小売商業組合
 第一回 総代会並臨時総会

 福岡県医薬品小売商業組合は十二月一日附で認可になったので第一回総代会並に臨時(任意)総会を十二日午後二時半から福岡市消防会舘で開催した。開会に先だち一時間余に亘り次の講演があった。

 ▽講演=最近の新薬の話
 武田薬品学術課長 野本利彦氏

 講演は「七福神の健康診断」になぞらえて興味を与え聴講者に仲々の人気であった。加之、当日の参集者は認可後初の会合でもあり、会合そのものも既に八日理事会を開いて万端準備も完備していたので概して明るい和かな会合であった。総代一二二名中出席者三一名、委任状六〇名計九一名の出席であり、定刻先づ総代会を開き司会者に瀬尾専務理事を推し、須原常務理事の開会の辞、次に古賀理事長起って本組合も愈々認可となったので重要目標である調整規程の認可に進むため本日は特に調整規程案の審議に重点を置き行事をなすために開催することになったわけです。と挨拶し、次いで来賓尾形薬務課長、安部通産局員及び商工課鹿毛係長が次々に挨拶を述べ祝電披露があった。それより定宗氏を議長に推し直に議事に入った。

 (1)組合設立の認可報告
 古賀理事長は「昨年十二月十五日創立総会を開催して認可申請をなしたが種々の事情でその儘となり本年八月再起、それより瀬尾、白木、形井諸氏の努力により十二月一日で認可となった」旨報告、一同承認。

 (2)調整規程案審議及び承認の件
 瀬尾氏朗読、古賀氏説明次いで逐条審議に入った。総代会員は何れも現役業者であるので質問は現実的であり深刻でもあり真剣でもある。組合員としては員外者を組合員同様規制することが最大目的であり要望でもあるが、然し調整規程内容は組合員相互の申合せであるので、先づ組合員自らが守らなければならぬものであり、而る後、員外者に対する規制命令を二段階として作らねばならぬので、当日は第一段階として兎も角本調整規程案を承認しようとの空気が醸し出され異議なく原案通り承認することを決定した。

 (3)初年度事業計画案審議
 時間の関係上省略することになった。

 (4)創立費収支決算承認の件

 (5)初年度収支予算審議
 一括上程、審議の結果(4)については権藤監事から相違なき旨報告がありこれを承認、(5)については二、三質疑の後異議なく承認することになった。

 (6)理事及び総代補充選出決定の件
 古賀理事長から説明、総代八名を全地域より選出する様定款に挿入し議長指名で権藤、馬場両氏を開票立会人として投票の結果次記八名を総代に決定した。

 江頭初次、藤幸江、上田ヨシエ、綱島幸江、鶴田喜代次、長野義夫、山田ミノル、安武励
 専務理事補充は選考委員制により次の四名が決定した。
 国武、斉田、藤田、大隈

 これにて一応総代会を終え引続き任意総会を開会した理事長の挨拶に次ぎ本組合の今後の運営につき協議、組合員の意見発表などあって藤田理事の閉会の辞により全部終了した。

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 福岡勤務部会 十二月 例会開く

 福岡市薬協勤務部会では百一回の十二月例会を十二日午後二時半から薬剤師会舘で開催、約四〇名の出席で左記講演があった。

 ▽講演=薬物の神経支配及び小実験例について
 九大薬局注射薬室主任 河野義明氏