通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 11月10日号

画像
 学校薬剤師部会 小林日本校剤会副会長を迎え

 九州薬学大会の学校薬剤師部会は十月廿二日午前九時から第三会場(九大医学部生理医化学講堂)で開催、参加者約百五十名、来賓として日本学校薬剤師会副会長小林泰朔氏並に大阪学校薬剤師会正副会長細部新一郎、平川修一郎の両氏が列席した。

 定刻司会者友納氏の開会の辞に次いで早川部会長の挨拶、次に来賓小林氏起って、来年四月の必置制も一沫の不安があったが、皆様のご努力で漸次増加している。少くとも七〇%迄持って行きたいが予算などのために仲々思うにまかせぬが、陳情、請願、要望などにより大分成績を上げている。吾々としては待遇問題もあるが、あと五ヵ月に迫った現在では待遇よりも「必置」と云う気持ちで各県共努力して貰いたい。全国学校保健学会にも絶えず工作し、文部省からの協力要望もあるので学校環境衛生の基準も来年四月必置制実施迄には作成したいと思っている。との挨拶があった。それより本会議からの委嘱議案について審議し字句訂正の上これを承認、次いで左記研究発表に移った。

 ▽研究発表
 (1)学校環境基礎調査=福岡県八幡、重松勇
 詳細な調査報告があった。
 (2)大気中亜硫酸瓦斯の測定(第一報)=福岡県大牟田、古賀武、砥上守、外
 福岡県衛生部の指定で保健所と協力して一ヵ年間継続して検査したその成績の説明があった。
 (3)視力障害と教室環境=鹿児島市、吉水経久
 小中学校生について授業時の姿勢、教室の照度その他を調査した結論報告。
 (4)学校プール管理の改善について=熊本市福島道尋
 (5)照度測定について=山口県、北村時臣
 (6)学校薬剤師設置の促進について=宮崎県、児玉治兵衛
 学校並その関係者に校剤師の実際活動によりPRする、予算面では議員運動を推進する。以上にて一応研究発表を終え、来賓大阪市校剤会長細部新一郎氏の特別講演を聴くことになった。

 ▼プールの衛生管理と自動循環濾過装置について
 今日多く使用されているクロール消毒では持続性もなく色々と欠点があるので特殊濾過装置使用が常識となりつつあると説明があり、平川副平会長は模型濾過器について種々解明されプールの将来は必ず濾過器の設備を必要とすることの結論となると信ずると述べ、大いに啓蒙する処があった。これにて部会を終え会長の挨拶により閉会した。

画像
 今春開学した 第一薬科大学

 今春開学した福岡市に新設の第一薬科大学(学長、藤田穆氏)では去る十月廿三日同学で関係者多数を招き盛大な開学式を行い、翌廿四日は学生主体の開学祭が賑々しく開催された。

 同学の文部省設置認可は本年一月廿日であり、所在地は「福岡県福岡市高宮玉川町九三番地」校地二七、七五九坪、校舎は鉄筋コンクリート四階建本舘外一、七八六坪の堂々たるものである。

 責任者は理事長都築貞技氏(福岡第一高等学校長)で学長は藤田穆氏(薬学博士前熊本大学薬学部長)である薬学部薬学科の学生定員は三二〇名(男女)であり既に第一学生は四月十五日入学し、第一期の単位認定試験も終っている。

 学生は九州出身者が第一で中国四国がこれに次ぎ、兵庫、大阪、富山、静岡、東京、遠く北海道、沖縄からも入学している。

 施設々備については専問、一般を通じ講義室、実験実習室、研究室、標本室、天秤室顕微鏡室、滅菌室、電気室、暗室を始め、薬品倉庫、動物飼育室、工作室薬草園など宗成し、図書室書庫、閲覧室、その他必要な施設は殆んど完備され、学生のためには学生集会所学内食堂、医務室、購売部その他、近くには男子寮、女子寮も設けられている。

 同学は将来製薬、調剤、衛生の三科に分科の予定であり、卒業後の資格進路は薬学士、薬剤師国家試験資格認定、高等学校(二級)中学校(一級)理科、保健の教員免許及び厚生省衛生検査技師無試験資格検定を目標としている。

画像
 薬界◇◇隨談

 ▼国会解散、剤界から女二男一名が出馬栗村ハツ(大阪一区)=自民公認=開局日本女薬西部連合会長)岩下かね(三重二区=自民党籍証明=開局=県議二期)福井武雄(兵庫四区=明薬昭和に四年卒=前県薬代議員議長=現タクシー会社長)の自民二名民社一名である。由来剤界からは国会議員の議席は致って少ない昭和年間をひろって見ると財政通として識られた大口喜六(愛知)野沢清人(栃木)の両故人が東薬出、名古屋の故今堀辰三郎、先代故金岡又左ヱ門(富山)、故慶松勝左ヱ門(貴院、参院)田中耕(代議士=長野現県薬会長)小川友三(参議院)の両氏が明薬出、今泉政喜氏(佐賀)が長崎薬専出であって国政の為め活動せられた方々であった。現在は人も識る高野一夫(日薬会長‐東大出)が参議院で活躍、大正製薬の上原正吉氏が明薬に学んだ人であり衆議院は野沢氏逝去の後は一議席もない現在である。今回の選挙に吾々としては出馬の三人共善戦くつわを並べて見事当選剤界のため活躍して貰いたいと念願している。

 ▼十一月三日文化の日に栄元ある文化勲章受賞の一人大衆文学作家の吉川英治氏は苦斗力行の人である、奇しくも筆者が文書の整理をしていたら二十年前吉川氏より筆者宛へ寄せられた巻紙墨書自筆二品に及ぶ書翰が発見封筒にも芝公園(当時の住居)自宅にてと書いてある。本人の書に間違ではない貴重品として改めて保管したいと思っている。

 ▼九州大会盛況裡に終わるだから大会運営について反省する面もある。会員は切角大会に出席するとして家を出たからには、最後の議事特に宣言決議を力強く拍手し閉会の辞まで帰路を急がぬ様にして貰いたい。夫れが主催者側に対するエチケットでもある。万事締めくくりが大事であり大会の万歳迄は高らかに唱へて貰ひたいものだ。昔からシャンシャンの御手を拝借は全く良いものである。

 ▼二十二日午后四時四五分のKBC放送高野会長記者インタビューらの録音放送「社会保障の拡充は無医村無薬局町村の為めに薬局の適正配置を考ふべきである。それに関し違憲論を唱ふる者があるが自分は合憲であると思ふ」と例のさび声で近来益々練成された中堅政治家の貫録充分であると思はれた。

 ▼各薬大の同窓会に出席した者の寄合話でどうだ新旧老壮の会合でピント来なくなった。若い連中は御座敷宴会よりもキャバレーやバーが良いらしい。来年当りから四十才前後で組合けの同窓会を開くようにしたらどうか。老年組に愛校心と郷愁とでも云ふものが多いようだとの声もある。

 ▼大会で筆者の会たかった人は飯塚の徳島山花、八幡の荒木七郎其他数名の先輩であった。(GT生)

九州薬事新報 昭和35年(1960) 11月20日号

画像
 薬界◇◇隨談

 ▲日医の社保診療報酬値上げを丸呑みした候補者もあり、御先き棒かつぎの候補者もある事だろう。値上げも良い、だが、国民の血税を良く考へねばならん。

 ▲十二日開かれた佐賀市議会の全体協議会で本夏開かれた日本医師会代議員会で決議した社会保険診療報酬の一点単価が三〇%引き上げられるとすると、佐賀市の場合保険者が一千五百万円被保険者が二千四百六十万円の負担増となり、佐賀市保険財政を圧迫するとして単価引き上げ反対を打出し本会議に反対を緊急提案満場一致で採択した。この決議案は中山厚生大臣他関係者に直ちに送付する事になった。この様な反対の決議が県内市町村に波及すると噂されている。

 ▲二十二日KBC「テレビ結婚式=全国向けで、司会徳川無声ホステス阿里道子で登場する幸運の一組は山上晃一さんと野上啓子さんである。新婦の野上さんは荒尾市万田の野上和子開局薬剤師の妹さんで、荒尾高校出の才えん御姉さんの薬局で六年前から御手伝ひ、三池争議取材に来ていた日大芸術部写真学科出の共同テレビニュース社勤務の山上さんが薬を買いに来たのが機かけて爾来交際結婚ゴールインする事になり、挙式一際の費用二泊三日の新婚旅行費、電気洗たく機数々のプレゼントがあるとの事は御芽出度い話である。

 ▲熊本大学薬学部開設七十五周年式典挙行筆者にも案内があったので参列した。創学の功績者は故安香博士は三日に熊本県から近代文化功労者として表彰され、岡山県下の溝口家に嫁していられる故人末女の八弥子さんが遺族を代表して受領されたとの事だ。この蔭には同窓会の人々の顕彰努力の力がある。九州の一角に初め私学として、発足幾多の変遷今や国立大としての熊薬の薬学界、文化への貢献は輝しい校風と共に、日本音薬学界として其の功績は高く評価される事である。表彰式では三十一年の永勤の職員もあって如何に学校をもり立てているかが偲ばれ、祝賀のガーデンパーテーも学生と出身者来賓が一所にやった事も他校では見られないほほ笑ましい景であった。(GT生)

九州薬事新報 昭和35年(1960) 11月30日号

画像
 国保の実施で 打撃をうける薬局

 ◆…福岡市当局へ生活補助費を要求すべきではないか 福岡市に国民保険が実施されてから十月餘を経過したが一月から八月までの医療給付の状況を見ると左の如くで薬剤師の調剤報酬が顕微鏡的であることがわかる。

画像

 即ち右表の通り

  医師   三六八五八四千円
  歯科医師 七四四四二千円
  薬剤師    七四〇千円

 薬剤師の国保収入は医師取扱高の千分の二、歯科医師取扱高の百分の一に過ぎず市内三百の薬局に平均すると八ヶ月分で二千五百に過ぎない。而もその処方箋の殆んどが歯科医師との協定による抗生物質の処方であるため取扱高の殆んどが薬品原価である。

 即ち最も普通に処方されている歯科医師の処方箋の内容を検討してみると
 処方
 テトラサイクリン塩基
 二五〇mg 四カプセル
 右六時間毎に一個宛服用
 与二日分

 右の調剤報酬を計算するとテトラサイクリン一個の薬品価格壱百四円九十銭、四個で四百十九円六十銭、二日分で八百三十九円二十銭、調剤料二日分で十六円合計八百五十五円二十銭であるが投薬袋代三円を除くと調剤料は十三円、調剤報酬額の一分四厘が利益(調剤料)に過ぎない。この計算で推算すると薬剤師の八ヶ月分の調剤報酬額七十四万のうち薬品原価を控除すると一万円餘に過ぎず之の八分の一は壱千二百五十円、薬局数を三百とすると一薬局当り一ヶ月四十円の利益に過ぎない。

 一方国保の実旋により患者は悉く医師の門を叩くために、薬局店頭の顧客は激減し売上げは三割乃至四割の減少を見ているので、生産過剰の医薬品は事業所えの売込みや疑心暗鬼の乱売誘発を惹起し全市の薬局は愈よ追い詰められてきている。

 福岡市の鍼灸師会では鍼灸の国保採用を申請しているので近く之れが認められることになる模様であるが、佐世保、長崎の両市の国保では一日一回を限度として施術者に助成費として、鍼又は灸に対し五十円、鍼と灸とを行ふ者に七十五円を交付しているが一ヶ年で三百三十四万四千五百円に達している。が福岡市で実旋することになれば福岡市は人口が多いのでその三倍壱千万円に達する見込みである。が鍼灸師会ですと国保からの収入が壱千万円に達するのに医師担当者である薬剤師の取扱高は年間換算壱百万円、調剤手数料に至ってはその一分四厘即ち一万四千円にしか達しないとは餘りに悲惨ではないか。

 そこで私はこれらの数字を市薬剤師協会あたりで精査の上具体的な数字を挙げて『処方箋が発行されるようになるまでの間、開局薬剤師の生活補償費の請求を福岡市当局に要求す』べきことを提唱するものである。博多湾の埋立工事に対し湾内漁業組合は数億円の補償をうけているのに独り薬剤師のみが国保の実施によって生活の根拠を覆えされて之れを黙って看過する法はないと思ふが福岡市の薬剤師諸君の御意見や如何に、御所見を九州薬事新報社宛に寄せられんことを希望する。「福岡市一薬剤師」

画像
 福岡市校剤会 理事会 市諮問につき協議

 福岡市教育委員会からの諮問に答えるため市学校薬剤師会では十一月廿四日午后二時から薬剤師会舘で理事会を開会し左記事項につき協議決定した。

 (1)学校薬剤師の制度、業務報酬等について市教育委員会からの諮問に就て
 友納会長は「従来吾々は校剤師の設置そのものを第一義とし、その報酬については第二義的に考えていたが明年度からは必置制となるので、ここらで態度を瞭りさせ、報酬などについても主張すべきものは当然主張したい」と語り、諮問に対し各自の意見を述べ協議の結果左記の事項を決定した。
 @年間一校につき五回程度の出校との希望に対し理事会としては「一応環境調査実施後と云う条件の下に五回と云うこと」を承認決定した。
 A校剤選任は従来通り市薬剤師協会でする。
 B二校に校剤師一名配置し報酬五千円とする希望に対し理事会は「原則としては二校に一名でよいが場所によっては一校一名三校一名配置の場合もあり得るので報酬の単位を一校二千五百円とすることを決定した。
 C専門の保健委員会を必置し校剤師業務をおり込むことを決定した。

 (2)今年度残期間の行事予定について、本年中に箱崎中学(馬場氏)、高取小(藤田氏)、舞鶴中(高倉氏)、博多高(丸林氏)、那珂小(木村氏)の環境調査を実施し、その他は各学校の希望によって実施することを決定した。

 (3)明二十五日の千代小に於ける基地周辺の養護教諭の会合には児童保健剤に関して当理事会から出席決定。以上にて理事会終了。

画像
 薬界◇◇隨談

 ▲衆議院議員の総選挙は二十一日間死斗の幕は閉ざされ、期待の民社党は完敗し自民、社会が夫々延び保守党が今の日本の政情を認めている票数である。薬剤師会期待の大阪粟村君は予定の半分の三万五千、兵庫の福井君は三分の一の二万五千票台であったは残念至極である。新顔というものは余程条件が良くなければ一回で当選と云ふ事はむづかしいものである。次期に備へ今日から平常の工作を怠ってはならない。即ち地元会員は今日から政治力を培かわねばならない。

 ▲佐賀剤連日薬本部推薦候補者に不満、三池、舘林(何れも自民公認)を追加推薦する様交渉本部より夫々推薦の通知があって開票の結果は保利(自民)と共に両氏当選は全く芽出度い。県薬としては怪我の功名でもある。東京当りで地元の意見を聴取せず圧しつけがましくする事は将来注意せねばならぬと思ふ。

 ▲無賃ガールはもういやだと白衣の天使即ち看護婦さんが主導権で東京他各地で病院スト争議が始まり一種の社会問題である。病人や怪我の応急医療は好きでやるのではない。待遇改善の交渉は良いが実力行使は考へて貰いたいものだ。

 ▲政府でも甲乙二表の一本化診療報酬の一点単価をいくらか値上げを考へているらしいが三〇%はむづかしい模様だとの事。低実収の医師の生活が訴へられているが反面実質調査を拒否しているのはピンと来ないといわれている。

 ▲先日の西日本新聞村松梢風氏町の雑音「美人と蛇」は当時代議士の日向輝武夫人むき子さんの事から其の後の御主人林照寿氏の事をも少々語られていた。古い事ながら其の当時は林照寿氏は明薬の講師で筆者は無機化学を習っていた。在学中の出来ごとで日本一の美人を勝ちとった艶聞男として日刊紙をにぎあはしたトップ記事であった。先生は弁説もたつが筆もたち現に明治薬大の図書舘長で同窓会誌の編集主任で童謡も書き各地の校歌の作詩もやっている。筆者と今尚四十余年交誼を続け伜も何かと厄介になっている。

 ▲本夏創立総会を挙げた佐賀県医薬品小売商業組合いよいよ知事より認可さる。この上は調整規定の油をたらしてマシンの歯車を円滑にすべらせる事である。或る地区では訪問販売、デスク廻りの連中数名が加入してない模様だ。これ等の加入も近く解決する事を期待している。(GT生)