通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 10月10日号

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 福岡市保険薬局と固定資産税都市計画税輕減

 福岡市三師会では、市国保療養取扱機関に対しては固定資産税並に都計画税の軽減措置をとってもらうよう市当局に予てから申入れていたが、去月廿一日三師各別に最後の交渉をなし漸く相互了解の元に要綱が妥結したが、斯る事実は全国でも初めてのケースであり今後各地三師会にとって重大な意義があり参考となる事項である。軽減措置に関する取扱い要領は次の様なものである。

 ◆福岡市国民健康保険療養取扱機関に対する固定資産税並に都市計画税の軽減措置に関する取扱い要領

 一、軽減の対象となるもの
 国保療養取扱機関(国保患者の利用実績を有する者に限る)が所有し、且つ自ら直接調剤の用に供する家屋で、当該年度の賦課期日(一月一日)現在に於る使用の実態が次の部門に該当するもの。
 (イ)調剤室
 (ロ)薬品倉庫
 (ハ)薬品陳列場所
 (ニ)客溜(応接室、相談所等が特に設けられている場合はこれを含む)
 (ホ)自宅との共用部分

 二、軽減率 三割

 三、軽減額
 該当部分を有する棟にかかる税額相当額を該当面積であん分するものとする。

 四、その他
 1、本措置の適用は、昭和卅五年度課税分からとする。
2、本措置の適用を受けようとする者は納期限前三日迄にその旨を申請せねばならぬ。

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 薬界隨談

 ▲政府自民党いよいよ解散の肚をきめ十一月中旬総選挙を目標としている。剤界人で今の処出馬を予定されているものに大阪一区自民党公認の粟村ハツ子、三重二区の無所属岩下かね子。兵庫四区の民社党公認福井武雄の三薬剤師何れも開局者で然も新顔。夫れぞれ所属政党は違っても吾々剤界としては三名揃って当選させたいものである。

 ▲NHK@(九、二七夜一〇、一五分)時の動きで「片寄っている医者の分布図」確に都市に集中し公務員にはなり手がない。亦勉強機会も少ない医師の問題を各方面からついている。吾々剤界も都市に集中して乱売に巻込れつゝ生活している現況。其の放送を聴いて良識ある医師には肩を持ちたい気がする。

 ▲アメリカの某製薬会社が蛇除けの薬を発明売り出した。ヘビは臭をかぐと逃げ出し長期間触れると神経をおかされ死ぬそうだ。未だどんな成分から出来ているかは発表されていないと。古来九州地方では蛇除けには明礬末が使われているが薬効があるかは不明。本品が輸入されたら農村向けに一応は売れそうな気がする。

 ▲小児マヒワクチン輸入価格と売価が開きが有り高か過ぎる。業者や医者に暴利許すなと主婦連厚生省に「願くば国家が買取り、実費若くは無料で接種を」と要望している。

 ▲厚生省が昨年度医薬品の抜取り検査の結果を二十七日発表。サントニン製剤やクレゾール石齢液、ビタミンA製剤、マーキユロ液等について不合格品十六%も出たと日刊紙に大きく取り上げた。

 ▲唐津市外で二才の坊やカゼ薬極量の四倍を服んで死亡した。某有名薬だが母親の不注意で、一寸の間に一錠服みなさいが甘くて服みよく十八錠全部を服んでしまったのが患いの元である。消費者もこんな不幸の事件があるから薬は専門家に良く相談して購入し服用せねばならない。薬を商品扱にする事は大衆も篤と考えて貰わねばならん。(GT生)

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 福岡市薬協 部会長、国保委の合同会議

 福岡市薬剤師協会では部会長会、市国保運営委員会の合同会議を十月一日午后二時から県薬会館で開催、箱崎、東住吉、西住吉、簀子、西新、姪浜、平尾、大橋の八部会は欠席。先ず権藤会長は「部会長会と国保委員会は別個に開会すべきであるが、現在理事役員など大会準備に忙殺されているし、又重複した役員もあるので本日は合同会議とした」旨の挨拶があり、それより左記事項につき報告又協議に入った。

 ▽薬と健康展について
 或は今年が最後になるかもわからぬ。予算は一〜二割オーバーしたが止むを得ぬのでご諒承下さい。実施については別表業務割当通りに各人共是非出席して貰いたい。今年は同時に薬学大会もあるので大いにPRに務めて貰いたい。なお実施要領については岩永氏から詳細説明があった。

 ▽市国保運営について
 @去月廿一日三師会で各別に国保療養取扱機関に対する固定資産税並に都市計画税の軽減措置について市当局と交渉した結果約束が纏ったので利用して貰きたい。これに関連して実際の調剤件数調査の結果保険薬局一八一局中処方箋を受理したもの七六局で半数に満たないことは色々の支障を来すので今後部会内で相互融通されんことを希望する。減税は卅五年度分から実施され軽減率は三割の見込みである。
 A歯科医師の処方箋を一層簡単にしてほしいと歯医会から申入れがあったので各自研究検討して貰いたい。
 B協調融資については第一回融資申込処理八名あるので第二回目の融資希望者は申出て貰いたい。

 ▽その他
 @日薬共済部強化月間に関しては目標百名に対し現在卅名である、月間を十月一杯延期交渉を行いたいと思っている。
 A登録更新の時期となったが、例により会員外には用紙を提供しないことになっているので左様お含み置下さい。
 B健康週間のポスターは保険薬局専用のものと一般のものとがある。
 C薬学大会については地元であるので多数出席を希望する、尠なくとも半数の一五〇名は出席したい。その奨励として出席者には会員券の半額二五〇円を補助することを決定した。以上にて合同会議を終了。

九州薬事新報 昭和35年(1960) 10月20日号

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 第一薬科大学 開学式挙行 十月廿三日(日)

 今春九州福岡の地に時を同じくして二つの薬大が設置されたことは薬学同冠社会から注視されているが、一つは第一薬科大学(学長藤田穆学博)、一つは福岡大学薬学部(部長塚本赳夫薬博)の二つである。

 第一薬科大学(理事長都築貞枝氏)は本年一月廿日付文部大臣の設置を得、四月十五日第一回入学式を挙行してその後鋭意内容の充実に専念していたが、愈々開学式を左記により挙行することとなり関係諸賢招待のため案内状がこの程発送された。

 ▽日時 十月廿三日(日)
 ▽場所 同大学講堂及本館
 ▽行事 @受付開始(九時)A開式(一〇時)講堂でB閉式(一一時)C昼餐会(一一、三〇分)本館三階集会室でD記念品贈呈(十三時)本館一階受付所で(解散)E学内参観(随意)本館付属建物設備その他
 なお翌廿四日は学生主体の開学祭を行うことになっている。

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 薬界隨談

 ▲推定一万二千人の薬科大学生の中に秀才もおればどうにもならないボンクラもいる事であろう。「週間文春」〔一〇、一〇〕に依れば名古屋の私立薬大の三年生が何んの遺恨もなく唯ぷらぷらと青酸ソーダの毒性の人体実験をしたくて九月二十一日の夜乗合した白タクシーの運ちゃんの案内で乗り着けたバーでビールに青酸ソーダをまぜてマダムとお供の運ちゃんに飲ませた。効果はてき面、マダムも運ちゃんバッタリ倒れてケイレン、病院へ運んで手当が早く両名共に一命は取り止めた。かねては善良な学生だが、唯なんとなくやったと警察で自白。この男福井の薬屋の息子だが成績は最低、実家から青酸ソーダ五〇〇瓦を夏休み帰省の際持ち帰ったとの事。名古屋はパチンコ、ステッキガール、白タクの三名物、警察では暴力団等の背後関係を重大視していたが、単独犯而も単純な犯罪だ。以上は週間文春の要約だが、事少量で人命を損ずる猛毒性毒物を弄ぶべき事は薬学を志すものの慎むべき処である。

 ▲薬務局の通牒で各県薬務主管課では薬品の品位支持のために適切な行政指導や誓約に依って薬店特にSM薬品部では安価標示のはり札や新聞折込みは減った筈だと考えていたが、S市のOSMでは「何んでも揃い最も新しく、どこよりも安い」……薬品部。TSMでは一般特売折込の宣伝の中に「売出し期間中に限りグロンサンを大破格にて販売します」とある、これ等も価格こそ記載しないが行政指導の対照になる筈だ。

 ▲国際ガン学会議は東京で九日から世界の学者が集まって開かれたが、それに先き立って七日帝国ホテルで開かれた化学療法シンポジウムが行われ、十二の研究発表を行い日本側から左の国産の三種のガン新薬が紹介されたヘマトポルフィリン水銀(M、H)、マイトマシンC北里研究所泰博士が東京都内の土から分離した放線菌の一種)、クロモマイシン(大阪府豊中市の土から取れた放射菌のつくる新抗生物質)

 ▲中山厚相神戸で開かれた全国保健所長会議で来年から多発地の生後六ヶ月から一年六ヶ月の乳幼児に小児マヒの強制接種を実施、貧困家庭は無料、住民税の均等割の低額所得階層には四分の一の実施としたいと発表した。

 ▲八日夜NHK@夜一〇、四〇分「今日の終りに」の時間「一寸一言」に千葉大薬学部高木博士「素人が複雑な薬の仲に入り過ぎるは危険、薬は医者と薬剤師にお任せなさい」また医薬分業にも触れ薬剤師の職責を一層明にして素人の薬いじりは一寸と警告は名言であった。

 ▲数年前本欄で薬学出の変り者として大牟田市在の町田定明君を紹介した事がある。仝君八日東京朝日講堂で開かれた日本の最高水準の写真作家で組織する日本写真連盟の創立記念の集いで初めて九名が表彰され其の中の一人に選ばれた。仝君は明薬大正七年の卒業であり、筆者とも学生時代親交があり地方方言丸出しのばんからの男であった。

 ▲九州大会提出の議案は大きい重要問題を取りあげ、各県薬相互の承り事項や事務処置の如きものは取りあげない在り方が好ましいと思われる。

 ▲東京本郷のある書籍屋欧米の医学書多数を著者の許可を得ず写真版に依る複写の海賊版を出版。私腹を肥やし検挙された。

 ▲筆者の見通が間違ったものは一日より丸公癈止で安くなるものと思われた酒類が軒並に高くなり出した。

 ▲消費物資が何んでも昇り出した。だが街の薬局への買物はとても細くなった。今日も十円持ってパンビタンのバラを買いに来た。筆者は御断り申した。だが何処かの薬局では一錠でもバラ売りして有難うといっている処が有る気がする。(GT生)

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 挾子 

 ▼日本卸連では全国の卸協組に対し「小売側からの返品に対しては三%以上の手数料を徴収する」ことをこの程指示したそうだが、業界の話題になっている。卸側では小売側からの返品を防止しようとの手段に過ぎないと言っているが、小売側では「押込み販売をしながら返品に対し違約金的な手数料をとるとは何事か、全くナンセンスである」と言っている。この問題一寸クスグッタイ思いがする。

 ▼ポリオワクチンの輸入価五、六十円の物が医師渡価が四五〇円、薬九層倍、どんな理由があろうともこれを認めていることは当局の醜態だ。なぜ国家は国産品製造に補助して輸入品価格に歩調を合せないか……

 ▼日本卸業連では先に「返品は三%の手数料をとる」と云う通知を全国の卸協に流したが、今度は「今年中に全国の小売業者から取引契約書を取ると言っているそうだ。仲々の高姿勢だ。これは支払期間の短縮化と卸協会員外との取引禁止が目的らしい。見ようでは洵に最もな事であるが、商人としてはどんなものか?

 ▼大阪市保険薬剤師会は市会に対し国保施策について陳情をなしその中に「簡単な治療薬の給付についての措置を講じてほしい」との一項があるが、皆保険になっても早急に処方箋の発行は困難だとの理由で当該委員連これを採り上げる様努力すると約束したそうだ、一寸面白い問題だ。

九州薬事新報 昭和35年(1960) 8月30日号

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 日本女子薬剤師会 西部連合会第八回総会 意気大いにミる

 九州山口薬学大会が福岡市九大医学部で正に紅葉もえんとする十月廿日から四日間の開催を機会に、廿一日市内高宮、第一薬科大学に於て日本女子薬剤師会西部連合会第八回総会が開催された。

 出席会員二百五十余名、来賓として前川福岡県衛生部長、日本薬剤師協会長参議院議員高野一夫、全国薬剤師連盟会長沖勘六、九州薬剤師会長瓜生田定、顧問金子、磯田秀雄、福岡県薬協会長五郎丸勝、長崎県薬協会長草津俊夫の諸氏が列席した。

 上田氏(福岡県副会長)司会し、定刻田中氏(福岡県副会長)の開会の辞並に本会その后の経過報告があり、山田副会長会長に代って(粟村会長欠席)挨拶があり、来賓福岡県知事(代理前川衛生部長)、高野日薬会長、沖全剤連盟会長、瓜生田九州薬会長が相次いで祝辞を述べた。

 高野会長は祝辞に引続き新薬事法内容の重要点について諄々として解き、剤師として一同は大いに得る処があった。

 それより議事に入り先ず山田(福岡)鈴木(広島)斉藤(大阪)の三氏を議長団に推し、竹村幹事から会務並会計報告があって異議なくこれを承認。次期総会開催地を中国四国ブロックと決定した。次に一同は「九大医学部医博井村棲梧氏」の特別講演を聴講した。

 午后会員の声として
 ▽第二薬局について=京都府、木村千賀子
 ▽試験紙による稀有金属イオンの検出について=熊本県、田中由紀子 の意見と研究発表があり、直に分科会に移った。
 分科会として▽開局部会(担当古市‐香川、杉山‐福岡)▽勤務部会(担当江見‐大分、柿原‐福岡)▽自由部会(担当檜井‐広島、市丸‐福岡)の三部会が開かれ、終って沖永氏(大分)の閉会のことばで本総会を終了した。出席会員の一部は市内、郊外太宰府など見学、他は直に九大医学部中央講堂に於ける大会本会議に出席した。

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 福岡県 薬事功労者表彰式挙行

 福岡県では先に選考委員により決定した(既報)本年度薬事功労者村山英之、高杉義照、合志繁、伊藤善蔵の四氏に対する表彰式を十月廿四日午前十一時から県庁知事室で、前川衛生部長外薬務課員及び薬系各団体の代表者参列の下で、鵜崎知事から四氏に対し表彰状並に記念品が授与され、四氏を代表して村山氏御礼の詞を述べて式を終え、一同は県薬剤師会舘に席をかえ県薬協主催の祝賀会が開かれ、五郎丸会長の祝辞、高杉氏の答辞、和かな小宴が催された。