通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 9月10日号

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 福岡県薬剤師協会理事会、支部長会合同会議
 高野日薬会長の特別講演に一同欣然

 福岡県薬剤師協会では理事会、支部長会合同会議を九月二日午前十一時から県薬剤師会館で開催、欠席支部は糸島、筑紫、粕屋、山田、三井の五支部であった。四島副会長の挨拶後左記事項につき協議した。

 ▽特別会費について
 四島氏から詳細説明があり高野一夫後援会のために卅五年度の特別会費を認めることに決定した。

 ▽福岡県文化キャラバン開催に関する件
九月四日に豊前市八屋中学校で開催されるが、健康相談に於て処方箋調剤を薬剤師協会が、水質検査を学校薬剤師会で担当することになっている、特に地元会員が援助することになった。

 ▽薬学講習会について
 十一月七日八日=九大薬学科講堂、十五日十六日=小倉市朝日新聞社講堂で開催される、地元は特に協力する(詳細別掲)

 ▽日薬共済部拡充月間について
 実施期間は九月一杯、本協会の加入者は会員の一〇%にも満たない、加入者が増加すれば従って保証も増額される、一般の火災保険よりも有利になっている、協力することになった。

 ▽性病予防週間について
 九月一日〜七日、各薬局はこれに協力する。

 ▽第二九回九州山口薬学大会準備について(開局部会準備について)
 開局部会はシンポジューム形式をとり各県に夫々異ったテーマで推薦を依頼し既に二、三決定している又県下には別に講演題を送り回答を待っている。支部長よりも助言して貰いたい。

 ▽その他=@支部の実態を知るため運営状況調査表に記入をお願いするA県の薬務行政協力のため既存業者も県薬商組と一体となり誓約書を一括提出して貰いたいB福岡市薬協を中心に本年は十月十八〜二十三日まで大丸デパートで「薬と健康展」を開催する、ご協力を願うC四島副会長からこの程福岡県のSMが県知事並に厚相に対し抗議した件(西日本、朝日両日刊紙に一部記載)につき説明があった。以上で一応終了午後四時半。

 ▽高野日薬会長の中央情勢報告
 新薬事法並に薬剤師法が衆参両院通過成立した経過情況について詳細な報告があり、その内容については地方薬事審議会に於て委員の資格で充分意見を述べ得ることになった点又販売業の規制などの点につき突込んだ説明があり、特に新薬事法は経済関係ぬきでは考えられぬことは新法が一八〇度の転換をなしたことで、尤も重大な意義を持つものである旨力説され、今後経済問題なしに薬事行政はあり得ないと極言されたことは尤も注意すべき点であった。

 なお新薬務局長並に各課長など薬事に関し非常に頭の切りかえがなされた様に思える。新法は来年二月一日施行の予定であるが、十月迄研究十一月には政省令公布、十二、一月は内容のPRと云うことになる。吾々は二、三年後には再度改正の上最善の法規となさねばならぬことを覚悟すべきであると、約一時間余に亘って説明且つ解説がなされた。講演終って同処に懇親会が催され質疑応答、一同は充分満足して和気藹々裡に閉会となった。

 

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 福岡市議補選に馬場勘二氏立候補

 ハコザキ薬局主薬剤師馬場勘二氏は現在民社党福岡市支部長であるが、今回同党公認候補として福岡市議会議員補欠選挙に立候補した。一人の市議会議員をも持たない福岡市剤界は、この際大いに応援すべきではあるまいか。

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 薬界隨談

 ▲大衆に親しまれる浪花節の枕言葉の「人生僅か五十年夢、幻の如くなり」は昔の事、厚生省統計調査部の発表に依れば日本人の平均寿命は男六五・二年、女六九・九年に延び出した。世界最高のノルウェーは男七一・一年、女は七四・七年に及ばない、世界文化の向上特に環境衛生家庭衛生特に保健教育や幾多の保健並予防剤の出現で寿命が延びて来た事であろう、ここ迄持って来た医薬学の進歩の恩恵を忘れてはならない。

 ▲去月改選の日本PTA協議会長に当選した松林弥助氏(静岡県PTA会長)は二十七才の時静岡の薬問屋に奉公戦後独立して松林薬品会社を創立した社長さんである。奮斗家十年後に東京で世界PTA大会を開きたい念願との事。

 ▲奇病水俣病の原因究明に取り組んでいる熊大医学部生化学教室の内田教授は原因物質と思われる毒物を結晶として抽出し化学構造の決定も出来ているとの事だが構造の発表は当分差控えているらしい。

 ▲白瀬中尉が南極探検をなしとげて五十年になる。これを記念して郵政省が十一月二十八日から記念切手を売り出す、この一行の中に佐賀出身で東薬出の薬剤師三井所清造氏が衛生部長として乗組んで活躍した事は剤界人として忘れてはならぬ、仝氏の長男清澄君は戦時中東京から佐賀に帰省し今は福岡市で開局してペンギン堂薬局として亡父の偉業を偲んでいられる。

 ▲中山厚相は一日「社会保健診療報酬点数表甲乙二表の一本化を実施するよう準備し、保険医療費の値上げと医療費の地域差撤廃を検討せよ」と事務当局に指示した。医師会は医療費三割値上げを打ち出している。医療制限の廃止、使用薬品の拡大、医師会の主張を丸のみすれば莫大な国家予算の増大となる。結局甲乙一本化も現行医療費の枠内操作に落ち着くのではないだろうか。ついでにキャラメル小箱分にも当たらぬ調剤料一剤八円は値上げしてもらいたいものだ。(GT生)

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 九州漢方研究会 二周年記念特別講演 九月十三、十四日

 九州漢方研究会は発足以来満二年を迎え二周年記念として講師に安西安周氏を招じて左記により「特別講演会」を開催することになった、同氏は正統漢方の逸材と云われている人である。

 ▽座談会=福岡市警固新町一五黒田荘、九月十三日午後六時から九時迄、会費百円、一般の参加歓迎
 ▽講演=九月十四日▼漢方概論(一〇〜一二時)▼浅田流秘伝公開(一三〜一六時)▼質疑応答(一六〜一七時)、会費八百円、プリント代百円。

九州薬事新報 昭和35年(1960) 8月20日号

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 薬界隨談

 ▲ジュネーブの国連欧州本部で開かれる第八回国連科学委員会の会議に日本代表として出席された放射線医学総合研究所長の塚本憲甫医博は福岡大薬学部長の塚本赳夫薬博令弟で学者一家として有名である。

 ▲SM薬品販売登録申請の問題で九州二県の知事相手に薬事法で違反として行政訴訟を起す?、と日刊紙は報じている。受けて立つ役人の土性骨次第だ。SMに薬品部の設置を望むのは消費者であるとの声を発つものもあるが果して消費者の声の何パーセントか疑しい。行政訴訟なんかびく?するものでない上審上審で結論が出るのは数年かかる。果してSMが受付不能の儘数年待つかが問題でもある。

 ▲九州薬学大会いよいよ近づく福岡は九州の中心である、薬学教育機関も三つあり、其の盛大を期待するが御祭り騒ぎや、出席者も観光視察と考え違いをしたりしてはいけない。其の発表や討議を薬学同冠者は夫々業務に活かす事を習得せねばならないと思われる。日程もぎり?組んであるらしい。各薬大の同窓会の開催は徹底しない弊があるので主催地でも迷惑ながら周知方心かけてほしい。古い出身者の中には新制大学になった母校の名前もしらない連中も時には有る事がある。

 ▲日本薬学大会は次年より三年置きに開催毎年各分科学会の大会を開く事になるらしい。お祭り気分になるより分科の各学会に主力をおく方が力が入って良いだろう。

 ▲日本薬学大会を始め各ブロック学会の開局部会は大いに成長した、既に保険部会、薬局経営部会と名乗っている。開局部門は経営なくして成り立たない。だが薬剤師は経営だけに走ってはならない気がする。そこには学術と云うおもりをつけねばならない。

 ▲九州大会で開局部門が始めて顔を出したのは二十五六年前開かれた佐賀の大会であったと思う。場所は県教育会館で出席者も至って少なく、論議されたのは賦形薬の着色剤と%。散剤液剤のプロントの標左記号であったと記憶する。(GT生)

九州薬事新報 昭和35年(1960) 8月30日号

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 千年の古都博多、福岡市で第二九回九州山口薬学大会
 薬学薬剤界から会する者千余名

 第二九回九州山口薬学大会が錦秋の十月廿日から四日間千年の古都博多、九州の雄都福岡市九州大学医学部を中心に開催され参加者千余名、全市薬一色に九州山口剤界の一大行事が繰り広げられた。

 初日廿日には大会運営委員会(約三十名)並に薬剤部長委員会が開かれ第二日廿一日午后に大会開会式、引続き本会議が翌廿二日と二回に亘って開会された。その他薬剤部長協議会、日本薬学会九州支部総会並に例会外六部会(薬剤学、開局保険薬剤師、学校薬剤師、薬務、保健所、女子薬)がそれぞれ特色を以て開会され、第四日廿三日は市内、郊外太宰府など観光、四日間の薬学大会は全会員の熱意により盛会裡にその幕を閉じた。なお大会行事の一環とも見るべき「若さと健康をまもる、くすりの科学展」が大丸デパートで開催されていた。

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 薬界隨談

 ▲物価が上るばかりに値下げの朗報!!二十二年間丸公で然も税務署の疵護を受けた酒類が丸公廃止で一本五円の値下げ、これも何れはマスコミの波にのり価格漸下の前提と見てよい。然し筆者は下戸問題にしていない。

 ▲缶詰めのレッテルと中味違いの次が七味唐辛子の中に「ケナガイエダニ」全国的混入を発見今更驚く、食品衛生の強化こそ吾々日常生活に取って最も重大な事である。

 ▲日薬連広告審議会実情に即する「広告自粛要綱改正案」を審議すマスコミの形態が変って民放とテレビに置く射倖心をそそる行き過ぎ懸賞や要指示薬やコマーシャルメッセージは特に注意して欲しいものだ。

 ▲東京銀座のど真ん中で乱売店?開設の報あり、保健と治療の薬品だけに眼の敵に何是狙われるか不思議な気がしてならない、薬九層倍の香具師のものとは絶対に違うものである。

 ▲或る地の薬関係の御偉方で進歩的のグループ、薬の宣伝自粛は官庁の行き過ぎ業権の侵害だと抗議する。理屈や理論には色々の角度から何んとか言い得る。

 ▲需要期を控えた感冒剤の特売価格や方法で各地にゴテついている。メーカーは薬局に売らしてやると云う心胸を先ず一鄭せぬばならない。

 ▲全薬連指定薬品の範囲を縮少せよ。次に国民皆保険となるので薬種商を「医療担当者」にせよは仝会薬事調査会での結論で厚生省に善処方を要望。開局薬剤師に処方箋すらすらすらと出廻らない時代においそれと動くか問題。日薬では皆保険に備えて処方箋多発や薬局製剤の適用等に強力に手を打たなければ万事に遅れを取る。

 ▲週刊朝日紙(一〇、二日)たちばなし=「医者の夜逃げ」お医者さんの開業も都市特に生活環境の良い山の手に集中する傾向だから一人当りの患者数も減りだした。板橋では夜逃げしたお医者さんもあった。そこで人ごとでは明日は吾が身が……と奥さん方がこの間タスキがけで「適正な実質的単価の値上げ」以下五項目に捗る陳情書をつきつけようと「東京都開業医主婦の会が結成され、大阪、京都にも結成の手を延ばしているとの事。開業医も楽でないと思われる」がもっと困っているのは、そうゆう勇敢な大衆運動も起し得ない街の零細な小売薬局である。所得税を納める階層からだつ落しているのも零細薬局である。一方問屋は大きく延びているのが薬屋の現況ではあるまいか不思議な話である。

 ▲最近流行し出した玩具?、アクセサリーに「だっ子ちゃん人形」が有る。価が安くどこにも御供するのがみそ。但しウインクしないにせ物が出廻りほん物は品薄す。手をあげたデパートは混雑で取扱中止とゆう流行児。(GT生)

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 挾子

 ▼日薬と日本校剤会では近く中央地方の環境衛生担当課に薬剤師を配置する様文部省に要望するそうだが時宣を得た措置である。洵に結構なことである。この種の働きかけは文部省に限らず関係各省に行うべきである。食品衛生も当然薬剤師が担当すべき性質のものであり地方庁に薬務課が出現する時に薬務食品課にしなかったことが抑々間違いなので、薬系の努力が足らなかったのである。明治以来戦前は薬品と飲食物関係の行政と技術は完全に薬系技術者が掌握していたのであるが、薬務課を独立させるために食品行政を棄てたのであろう、馬鹿げたことだ。

 ▼保険薬中の主要医薬品の薬価基準は原価計算方式を採用して適正な基準価格を制定すべきであるとの強い意見が大蔵省内に起っているが、これに対しメーカー側では製薬案内部の特殊業務に暗い者の考えであるとして絶対反対を叫んでいる。どんなことになるか。

 ▼兵庫県薬商組では全国初の調整現程違反者に対し十五万円の罰則適用をなしたそうだ。違反内容は新聞折込ビラやサンドイッチマン使用の宣伝広告だったそうで、違反者は既に三万円納付、残額は手形で月賦と云うことになっているそうだから関係のない吾々は一寸驚いた。

 ▼薬種商には販売品目に制限があるので卸売業は認むべきでないと云う意見があるが、尤もなことである。

 ▼大阪友の会は薬務当局の広告規制に対し猛烈な反対運動をしている。この程総評を通じて各消費者団体に配った「薬を安く売るため」の印刷物は各方面に大きな反響を呼んでいるそうだ。処がその友の会の正体が瞭りしないが開局薬剤師の一部団体であるらしい。趣旨は洵に結構なことではあるが、或は却って、真はがめつい連中の集まりかも知れぬとの観測もある様だ。

 ▼第二薬局問題は剤界にとって五月蠅い問題であるが大阪、京都も大体解決して現在小康を得たが、その源因が病院の調剤医薬品代予算の不足にあるのだから充分な予算さえとれば問題はないわけである。処が、耳よりの話しは文部省では明年度予算で考慮するとのことだから一応解決した様なものだが、果してとれるか予算なんて云うものは…。