通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 8月10日号

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 福岡県薬業士会定期総会 正副会長外全役員留任決定

 福岡県薬業士会では本年度定期総会を七月廿六日午前十時半から福岡市町村会舘で開催、出席者百九十名定刻井上副会長の開会の辞に次いで深田会長の挨拶は、

 卅四年度は吾々にとって非常に多忙な年であった。多年待望の薬事法改正がなされ、従来二号業者と云われていた吾々は茲に薬種商として認められることになったのは一歩前進ではあるが、これで満足はできない、営業面での乱売については本県は大阪、東京などに比較しては穏かではあるが、潜在的乱売は随分行われているので業界は不安な状態に在ると云っても決して過言ではない。

 本県では厚生省通牒に基き昨年末薬事協議会が発足し今春第一回の協議会で「県民の保険衛生上SMの医薬品販売は適当でないので行政上善処せられたい」云々との意味の結論を表現し又吾々の協同組合SM対策としてもSMと争うことなく今日迄やって来たので今後も引続きこの状態に置きたいと思っている。池田内閣の成立で厚生大臣に我全国薬業士連合会顧問中山会頭夫人を迎えたことは吾々として明るい見透しがあると思う。

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 薬界◇◇隨談

 ▲最近のマスコミを賑かしているのに、小児マヒと日本脳炎がある。総評大会の来賓、ソ連製の小児マヒ特効薬十人分を携行寄贈。

 ▲日本PTA機関紙(七、一〇)論説=「地財法」に望む=文部省の重要な施策として養護教諭、薬剤師の学校配置に並んで学校医の待遇改善允実僻地への活用を実施するこれ等の経費は交付金で裏付けると明確に指摘してある。PTAとしても校剤設置を要望していると受取れる。だから地方剤師も校剤としての襟度と誇りをもってこの際邁進す可き秋である。

 ▲池田内閣減税よりも社会保障をと歌い出した。中山新厚生相命がけで社会保障を力強くやって貰いたい。

 ▲本秋十一月には解散選挙の気分多分に動き出す。既に剤界からは大阪より粟村女史出馬の噂しきり、筆者が二月東京でヒョッコリ会った節も同女史出馬の意志強し。大阪は日本開闢以来の女大臣を出した土地柄、全国剤界挙げて声援するが先ず以って地元大阪の剤界しっかり頼みまっせ。

 ▲「旬刊全貌」(七、一五号)特集=『白昼の恐怖全学連』なる記事は日刊は週刊誌にも余り出ない内容が豊富に掲っている。全学連の組織の加盟校には医科数校薬科(某私大)も一つ記載されている。これだけ共産党がいる!各大学細胞党員数には東京の某薬大にも六名いる事になっている。(GT生)

九州薬事新報 昭和35年(1960) 8月20日号

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 福岡県薬協 夏季移動相談 調剤所成績

 福岡県薬剤師協会では七月卅、卅一日の二日間八女郡黒木小学校に第八回NHK夏季移動相談のために調剤所を開設し健康相談並に調剤、水質検査などに従事したが概畧次の様な成績であった。

 ▽調剤=従事者延二二人、処方箋四三一枚、剤数八四五剤、主な病気は神経痛、胃腸病、皮膚病、回虫、高血圧、栄養不良、等、主な投薬薬品はアリナミン、セデス、ヂゲサン、アルミゲル、パンビタン、シノミン、スルハミン剤その他。

 ▽水質検査=延人員一〇名件数六四件であった。

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 薬界◇◇隨談

 ▲幹部の努力で平穏であった九州の首都福岡にもついにSM台風がついに襲来したと聴いた。其の被害の小なからん事を祈ると共に薬業者が一致して防禦される事を祈ってやまない。

 ▲薬局の新規開業が全国的に減り出し特に西日本では廃業が多くなった、三十四年差引き増は僅か一〇七軒で其の速度が著しく頭打ちになった。これは同業者が多く経営が困難になった事、生協購買会やSMの薬品部門の進出がめだって来た等が挙げられている。東京の増加が僅かに一九軒、大阪は七九、山口二八、京都二一軒が減っている。増減のないのが長野、奈良、山梨の三県何れも海のない県とは稀しい。

 ▲最近開局薬剤師の海外視察が多くなって来た、七月一日に小樽の岡島元治郎氏=北米シカゴ世界ライオンズ大会北海道代表者=京都の近藤良男。市川敏雄の両氏=モスコーで十五日から開かれた日本産業見本市経済使節団として=東京薬政会総務墨田区議の伊藤昌弘氏=日独青少年交歓で何れにしても見聞を広める事は良い事である。

 ▲持続性サルフワ剤露天のバナナたたき売り、よろしく待つ間に値下げ。又々再値上げいかに需要が増えて生産が上昇したので生産コストが安くつくとメーカーは言うかもしれん。だが消費者は値下げする位なら始めから何故価格を下げて広く販売する方法を念頭におかなかったとメーカーの横暴だとの意見も聴くごもっともの事だ。

 ▲脱脂綿製造は医薬品製造か繊維品製造かで税務関係の争いの審査請求を検討していた国税庁では長官の裁決で医薬品製造でなく繊維品製造と決定を下した。

 ▲一月遅れの八月初盆で筆者の身近で識処で剤界では松尾仁先生佐賀ウサイ円の野中万太郎氏がある。(GT生)

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 薬界短信

 ◆福岡県校剤会理事会=八月十八日午后一時半から薬剤師会館で開会、次の議案につき協議した。

 @講習会開催に伴う具体策について
 A福岡県文化キャラバン開催に関する件
 B全国学校保健大会(校剤大会)の件

九州薬事新報 昭和35年(1960) 8月30日号

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 福岡県校剤会 常任理事会開会 講習会日程決定

 福岡県学校薬剤師会では常任理事会を八月十八日午後二時半から薬剤師会館で開催、左記議題につき協議決定した。

 1、講習会開催に伴う具体策について
県下を左記の通り九地区に分け九月八日から一日宛開講、講習科目は四科目とし時間は十時〜四時迄、必須科目は「学校と校剤との連繋等について」その他の科目は@学校薬事衛生解説(医薬品関係、理科試薬管理等)A食品衛生についてB実習(飲料水検査、照度検査等)C便所環境調査について(吉村氏)であり、講師は校剤師が交替して受持ち、世話は各支部でなすことを決定した。講習日程は次の通り。

 ▽九月八日=柳川市(大川市、三潴郡、柳川市、三池郡、山門郡)
 ▽九日=八女市(八女郡、八女市、筑後市)
 ▽十日=田主丸町(甘木市、朝倉郡、三井郡、浮羽郡)
 ▽十二日=福間町(宗像郡、粕屋郡)
 ▽十三日=筑紫野町(筑紫郡、早良郡、糸島郡)
 ▽十四日=飯塚市(飯塚市、嘉穂郡、山田市)
 ▽十五日=直方市(直方市、鞍手郡)
 ▽十六日=田川市(田川市、田川郡)
 ▽十七日=豊前市(築上郡、行橋市、京都郡豊前市)

 2、福岡県文化キャラバン開催に関する件
 九月四日豊前市で開催されるが県校剤会は環境衛生部を担当する、友納、馬場、神谷、吉村、その他が受持つことになった。

 3、全国学校薬剤師大会の件
 全国学校保健大会が十月十五日から十七日迄福島県平市で開催されるので恒例によりその前日、十月十四日に全国学校薬剤師大会を平市第一小学校講堂で開催し、来年度よりの校剤必置制に対処して学校保健環境衛生並に学校安全、相互連絡を図ると共に当面の重要問題について協議するので本県校剤会としても代表を出席させることを決定した。

 4、九州山口薬学大会校剤部会開催について
 内容の充実を図り会員の努力を要請することを決定。

 5、その他=宮崎に於ける九州学校保健大会は八月廿四日から廿六日迄開催されるので本部から五名、支部から数名出席する事を決めた。なお来年度から必置制となるので本年の名簿作製は来年廻しとすることを決めた。以上にて理事会を終了。

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 福岡県薬剤師協会 第一回合同委員会開会
 諮問事項並各常置委員会委員決定

 福岡県薬剤師協会では会長から先に委嘱した六種常置委員第一回合同委員会を七月九日午后一時半から県薬剤師会舘で開催し、会長より各委員会に対し左記事項について諮問することになった。出席者は委員十九名、役員五郎丸、四島の正副会長外理事五名であった。

 諮問事項

 ▽薬局委員会
 (1)薬業経済安定向上のための具体策
 (2)医薬分業制度普及推進策
  @処方箋獲得方策
  A処方調剤受入態勢整備
 (3)新薬事法、薬剤師法運用に関する希望意見
 (4)九州薬学大会開局部会対策

 ▽薬制委員会
 (1)薬事法、薬剤師法案成立促進方策並に再改正意見
 (2)同右普及徹底策
 (3)医薬分業制度普及推進策
 (4)その他薬事法規に関する研究及び改善策

 ▽調剤技術委員会
 (1)調剤技術向上に関する研究
 (2)九州薬学大会薬剤部会対策

 ▽薬学委員会
 (1)薬学に関する職能技能向上についての研究
 (2)九州薬学大会薬学部会対策

 ▽広報・出版委員会
 (1)薬剤師、薬局、協会のP・R・策
(2)九州薬学大会広報、宣伝出版に関する対策

 ▽会員委員会
 (1)会員倫理向上対策
 (2)未加入会費獲得方策
 (3)会費早期完納推進策
 (4)会費再検討の件

 先ず会長挨拶に次いで、委員会に対する各委員の意見が述べられたが、薬局委員会に対する諮問(1)「薬業経済安定向上のための具体策」については「吾々の医薬品小売商業組合と別個の結論が出た場合などを考慮して始めより組合理事長を本委員会に委員を委嘱する必要はないか」との質問に対し執行部では(適当な人があれば委嘱して結構である。然し当分この儘進んで委員会で必要ありと認めた場合は適当な措置をとりたいと思う)との応答であった。それより各委員会担当の理事を決定し、委員会では互選により正副委員長を決定した。左記委員氏名中◎印は委員長、○印は副委員長である。なお正副委員長の印なき委員会は未決定である。

 委員会委員氏名

 ▽薬局委員会(並に保険)
 担当=三淵、佐野両理事◎藤田胖、勝目一郎、○早船助次郎、富永昇蔵、細井徹一、岸田清輝、門司平雄、馬場正守、柴田伊津郎、安部寿、神谷武信、芳野直行、田中保夫、高橋賢治郎、石松茂治、内藤正夫、中村里実、大坪慶次、○原田幾太郎、副島良次、側島希允

 ▽薬制委員会
 担当=早川理事
 馬場勘二、◎竹内克己、白木太四郎、○国武一人、木村基、形井洋、島健一郎、中村里実、山本一郎

 ▽広報・出版委員会
 担当=岡野、権藤両理事
 荒巻善之助、波多江嘉一郎、久保川憲彦、安部寿、南義雄、樋口昌徳

 ▽薬学委員会
 担当=塚元理事
 ◎塚本赳夫、渡辺敬、諌山哲夫、永田泰彦

 ▽調剤技術委員会
 担当=山本理事
 ◎松村久吉、福井正樹、諌山哲夫、三宅清彦、重住和雄、宮崎修一、中寺久喜穂、原正幸、南義雄、前野繁清、竹内克己、鹿川亘、林真一、松山勝喜、伊藤茂俊、野中好夫、有馬功

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 薬界隨談

 ▲新薬事法実施を前に東京では全品目販売申請多発の動きがあるとの事である。大資本を元に只商売になりさえしたら良いと云うのが本心ではなかろうか。薬と云うものは他の商品とは若干違うものと思わねばならない。マスコミの波に乗りすぎる医薬品はメーカーから言わしめれば製品と商品である。世は末法だと歎く老薬剤師もある。

 ▲西日本紙(八、二二日)『広告、宣伝に左右される生活』広告主から見れば消費者は王様である。戦後マスコミを利用した業者の販売戦術の結果だと王様も「めくらの王様」にならないようにと主婦連が日本生産性本部等の協力を得て広告に関する統計をまとめたものを発表したものである。年間千六十五億の広告費で年間の国民所得八兆四千億に対し一、三%でこの千六十五億の内薬品類が断然トップ。次が百貨店で日本人が欧米諸国に比し医薬の購買量が高いのも広告の影響が大きいといわれる。欧米では医薬品は其の性質上一般広告は厳重に制限されているのに、日本は野放しで全広告中に占める割合は二〇%以上、日本人一人当りの薬の消費量は年間六千円である=以上は西日本紙の要約である=薬局に取ってはマスコミは有難いものである。

 ▲東京都内に起った健保組合の医薬品販売行為は不可と厚生省は断を下し日薬では健保組合の医薬品斡旋行為は保険薬局を通じて行うようにすると協議している。九州でも炭坑の健保組合で夏季必需薬品全般を、斡旋販売を計画或は既に実施して問題を巻き起している。必ず敏腕で利口な地方卸屋が介在して其の奥の手を伝受さしてはいるまいか。(GT生)

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 塚元久雄薬博 国際薬学会議出席 廿六日羽田空港発

 九州大学医学部薬学科主任教授塚元久雄薬博は今般日本学術会議からの派遣によりデンマーク国コペンハーゲンに於て開催される国際薬学総会並に国際薬学会議に出席のため八月廿二日福岡をたち同廿六日羽田空港から出発された、同氏は国際会議終了後引続き欧州各国において薬学研究上の諸事項を連絡協議されることになっている、傍ら一般視察を終え十月下旬帰国の予定である。