通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 7月10日号

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 福岡地区 調整規程 推進委員会

 福岡県医薬品小売商業組合福岡支部では第二回調整規程推進委員会を七月四日午后二時半から薬剤師会館で開会し規程推進上必要事項について協議した、当日の欠席部会(委員)は西住吉、春吉A、平尾、高宮の四部会であった。

 ▽調整規程内容の検討
 委員としては徹底的に検討体得し会員を指導せねばならぬ、質疑事項実施要領について研究した。

 ▽医薬品流通機構に就て
 流通機構の乱れを防止しなければならぬが、これがためには医薬品の流動状態などその実態調査が尤も必要であることを認めた。

 ▽組合交渉について
 先の卸団体との組合交渉での小売側の要望三項目に対する卸側の回答は十三日迄となっているが、その回答を得て今後の対策を再検討することを決めた。当日の会合は各委員が推進委員であることを再確認して今後対内に又対外に調整規程を活用、活躍させることに邁進することを自覚したわけである。白木理事長のSM対策の近況報告があって閉会。

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 薬界◇◇隨談

 ▲校剤必置の期間も切迫して来た、学校側でもまだまだ校剤の何んたる事かの認識に缺け甚だしきは薬品類の売り込みをやるのぢゃないかと懸念する者もあり、一方校剤にはなったが時間が惜しい商売的にはお皈りがないと云ふ考へを持った者が有りはしないか。

 ▲東京都健康保険組合は其組合員並其の家族を含めて三十二万名であり三〇〇万円の予算に二三%を補助して各種の医薬品を組合員に斡旋する計画を樹てているが、マスコミ保健剤や家庭薬は物に依ってはA価の半価以下のものも有るらしい。最も同組合が一号販売の登録をしているので問題はいろいろ地元業界とこんがらがって来ているとの事だ。吾々は他山の石として放任するものでない。吾身にかかって来るものである。

 ▲武田薬報の叢書十七号(肝臓病の話)「肝臓病について」「肝臓病と薬剤」「肝臓病に対する疑問」の三編で一流の医学大家の筆になっている。本書は小さいが開局者に取り重宝至極である。胡椒は小粒程辛い。

 ▲岸首相退陣の決意を発表自民党は跡目の問題いよいよ複雑、反主流の先鋭宇都宮徳馬代議士はミノフワーゲン製薬の社長であり有名な佐賀出身の陸軍大将故宇都宮宮太郎の御曹司である。

 ▲風呂代いよいよ価上げ同じ保健衛生に缺く事の出来ない薬品の値段益々降る。風呂屋は環境衛生法で保護され、薬の価は薬事法でも野放しされているのが現状。

 ▲新サルフア剤「シノミソ」塩野義製薬とロシュ社との技術提携で製造欧州へ一トンアメリカ向け二トンを輸出。(GT生)

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 第二薬局実態調査 厚生省中島技監 九州入り

 第二薬局問題は日薬並に剤界一般の問題であり又厚生省薬務局としても深い関心を持って調査検討しているが、同省保険局に於ても一応調査する必要ありとして同局医療課、技監中島良郎氏(薬系)が福岡(九州大学)熊本(熊本大学)鹿児島(鹿児島大学)に於ける第二薬局実態調査のため七月六日九州入りをなした。同日県保健課及び東福岡社保出張所員同道で九大の第二薬局及び大学前の篠崎、十字堂両薬局について詳細調査したが、福岡に一泊翌七日熊本へ向け出発した。

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 剤界一斉に愁眉を開く 薬剤師法・薬事法国会通過

 剤界待望の薬剤師法、薬事法の両案は吾等の異状国会に対する杞憂を打開して七月十五日午后八時五十五分衆議院本会議を通過した。

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 日本学校薬剤師会 九州・山口ブロック協議会
 永山副会長指導、熊本市に於て

 日本学校薬剤師会では学校薬剤師の必置制を促進するため全国学校薬剤師各ブロック協議会を七月四日の九州地区を皮切りに中国四国、近畿、中部北陸、関東甲信越、東北北海道の六地区に於て開催した。協議題と制しては@学校薬剤師必置の件A学校薬剤師講習会についてB日本薬剤師会役員選任等が協議されたが、九州地区協議会は次の通りであった。

 日本学校薬剤師会 九州地区協議会

 協議会は熊本市本庄町、熊本県薬剤師会館で七月四日午后二時から日本学校薬剤師会副会長永山芳男氏列席の上開催され出席者は
 福岡県=早川会長、友納副会長、江上緑(特別)
 佐賀県=久保会長、池田副会長
 長崎県=石崎(坂井会長代理)
 熊本県=戸田県薬会長、中溝副会長、長崎県校剤会長青木、熊本市校剤会長
 大分県=杉原県校剤会長
 宮崎県=児玉会長
 鹿児島県=白男川会長
 山口県=欠席
 以上十四名であった。

 ブロック代表として福岡県早川会長が挨拶、引続き司会し、次に永山本部副会長の挨拶、次いで全国的の校剤状況について説明があり、完全必置の期間も余す処僅か九ヵ月であるが、現在の儘の情況では最悪の場合保健法の改正も考えられ憂慮に耐えない。諸君に最後の努力をお願いしたいと述べ、それより座長に地元の長須会長を推し協議に入った。先づ各県の現況発表それに関連して各自の意見或は体験談等を聴取し今後の参考に資することになった。

 一)各県学校薬剤師の設置状況について
 熊本県戸田氏=現在熊本、八代、山鹿の三市のみの設置で他の九市他未設置である。県として卅六年度から完全実施の線に副ってあらゆる努力をする。

 本部永山氏=参考のため申述べるが、校剤の手当は文部省として医、歯と同様に年額七千円を見込んでいる。この手当は教育総予算に含めて一括交付されるので他に流用される惧れもある。今の内に設置の実績を作っておく必要が充分に考えられる。

 佐賀県久保氏=政治力不足のためか一般関係者の認識が足らず困っている。現在@佐賀市では校剤十人で二十八校を担当、A西松浦地区では三人で五校を担当、B多久地区では六人で十二校を担当、唐津、鳥栖両市は目下交渉中と云う現状である。

 本部永山氏=手当七千円の基準は児童数九百名で十八学級、月二回出勤とされている。参考迄に。

 宮崎県児玉氏=宮崎、延岡日南の三市のみに設置を見ている。なお無薬局村について伺いたい。

 本部永山氏=全国的に見て医師九〇%、歯医八〇%の現状であり校剤に於ても現段階では止むを得ないと思われる。

 長崎県石崎氏=長崎市は校剤廿四名で五十三校を担当、年手当二千円、佐世保市も設置されている。

 鹿児島県白男川氏=鹿児島市は校剤十人、一人で五〜六校を担当、出水市は今年四月から六名設置、近く川内、指宿、川辺、枕崎、鹿屋の各市及び日置地区に設置の予定である。なお保健優良校審査委員として校剤からも選任されているが、このことは校剤のPRには非常に有効である。

 大分県杉原氏=県立高校二十校に現在設置中である大分、別府両市には近く設置の予定である。

 佐賀県久保氏=検便について医師会との間に問題があるが、その処置についてお意見を。

 本部永山氏=寄生虫予防協会の会員となることである。新瀉県では県下全般がこの会員として検便に従事している。検査料六十八万円余をあげ会の重要財源となっている。各県とも校剤から寄生虫予防協会に役員を送ることである。

 なお同氏は検便の問題に関連して衛生技師法の最近の状勢について語り、高野会長の談話として近日中に同法の施行細則の中に薬剤師を入れる見込みである旨述べられた。

 大分県杉原氏=学校数に対して薬局が極めて少ない場合の措置について質問があった、これに対し。

 本部永山氏=勤務薬剤師の応援或は女子薬剤師の援助を求められたい。現在女子薬剤師で家庭にいる者が全国で約四千五百人余がありこれ等の協力を要請することである。

 佐賀県久保氏=検便の外対外的に校剤のPRになる仕事はどんなものか。

 本部永山氏=@飲料水A照度B便所の問題(屎尿処理)等は極めて簡単であり而も成果をあげ得ると思われる。

 福岡県早川、友納氏=早川氏から福岡県の校剤状況について詳細報告があり友納氏からは福岡市に於ける校剤設置迄の過去五ヵ年間の体験の説明があった。PTA組織を通じて受入側(学校)への浸透、政治力の養成、実績の蓄積等、又校剤師選定(推薦)についての実情、薬剤師協会と校剤とは表裏一体となって外部交渉に当るなど参考意見が発表された。

 (二)学校薬剤師必置実現に関する件
 日薬としては早急に文部省より各都道府県知事宛早急設置方の通牒を発送して貰うが、地方に於いても知事、議長、教育庁初め他の関係方面え請願書を発送する事、但し内容は此際複雑を避け成る丈簡単である事、次に講習会開催中を利用して関係方面えの陳情を行うこと、又学校、PTA等にPRすること等が挙げられた。

 (三)校剤講習会について
 時期は八月〜九月とし、講習会の性格は従来の研修会とはその趣きを異にし、必置のための講習会であるので会員自体の研修は勿論であるが、これから校剤になる者が主体で、これに保健関係の教育庁保健課長や指導主事学校々長や保健主事等をも出来るだけ出席して貰うこと、その他薬務行政の一環として薬務課長その他に出席して貰うことも望ましい。従って講師は学者より寧ろ経験者が望ましいのである。講習主催は県薬(教育庁との共催が望ましい)として日薬が後援する。会場はなるべく細分して多くの地区で開くことに留意する。経費は中央でも分担する(日本学校薬剤師会で二百万円余)そのためにも講習会の日時、場所(区域管下の市町村)、受講者の見込数などを決め、講師必要の場合は共にその旨中央に要請する様本部永山氏から話しがあった。

 ○役員選出の件
 九州地区学校薬剤師会連合会代表の本部副会長は全員賛成で早川政雄氏に理事は次の通り決定した。
 ▽理事=福岡県=友納、神谷、佐賀県=久保、長崎県=坂井、熊本県=長須、大分県=杉原、宮崎県=児玉、鹿児島県=白男川 今回委嘱の理事は校剤必置のため対外的にも権威を持たせたものである。以上で協議を終了、時に午后六時。

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 全日本薬業士連合会 全国大会並研修会 泉都別府に於て参会者千五百余名

 第十三回全日本薬業士連合会全国大会並学術研修会は七月七日八日の両日泉都別府市公民舘において厚相代理広瀬薬事課長、平瀬技官、大分県知事代理、九州各県薬務課長、瓜生田大分県薬剤師会長等多数の来賓を迎え華々しく開会された。

 会場入口には村上建設大臣、綾部、小松両代議士、木下県知事、小林県会議長、日本薬剤師協会、武田、久光、大正、臼杵他薬品メーカー、東京五日会吉村、鶴原外各県卸業有志寄贈の花輪や生花がずらりと飾られ、会場には定刻早くも全国より馳せ参じた、千五百余名の会員によって、埋め尽され立錐の余地がない程であった。

 十時半本部小木曽事務局長開会を宣し一同起立、国歌斎唱に引つづき別府市、観光協会、商工会議所より大会準備委員長高橋三郎氏に花輪の贈呈ありて万場の拍手暫し鳴りも止まず感激のひとときであった。次で高橋会長頬を紅潮させ、関係当局並地元役員、会員及び九州各県会員に対して深謝の意を表し経過報告を行った。即ち中央情勢の変転により再度日時を変更の己なきに立至ったいきさつや、薬事法の見通し困難のため或は東京にて総決起大会の必要が起る可能性のあった事等苦心の数々を報告して了解を求めた。

 次に近藤会長は、今后我々の組合活動の推進は国民皆保険の医療担当者の立場に立って、治療薬、予防薬等の取扱が出来るように、努力せねばならない。我々の業権が弱体化される事のないよう一層の団結を熱望すると結び、又中山会頭は会員の薬事知識の培養に務め、品性の陶治は勿論、社会的地位の確立を図ると共に国民の保健衛生に寄与せねばならぬ。仍て自らを反省し、和衷協同、本来の目的達成に邁進するようにと挨拶を述べた。

 次いで表彰状授与式に移り、ブロック推せん、中島氏外七名、都道府県推せん功労者、深田氏外十七名並表彰者小川氏外五十名、全国大会開催地表彰、大分県外十二府県に夫々中山会頭より贈った。終りに日本薬業新聞社の功労賞が市原取締役より、伊藤氏外四名に贈られた。引つづき厚相薬務局長代理広瀬薬事課長、大分県知事代理、小林県会議長、荒金別府市長、瓜生田日本薬剤師会長代理市原新聞社代表の祝辞、一万田留登氏外政財界代表四十数通の祝電の披露がありこれにて、一旦休憩、中食時を利用して市観光課のサービルによる別府踊、豊后追分、日向コツコツ節等をキレイ所が大熱演して旅情を慰めた。

 午后一時再開直ちに、研修会、先づ最近の薬務行政について広瀬薬事課長、医薬品の取扱について平瀬技官、肝臓疾患とその治療薬について、国立別府病院内科医長医博中根正勝氏、注目すべき最近の新薬について熊大教授田中義雄氏により夫々貴重な講演を聴いて、第一日は無事終了した。

 四時半より公民舘地階において、主催者側一五〇名に主賓を交へ、ビールパーティ開催、美枝のサービスに一同陶然として、五時半和気あい?裡に散会した。第二日は稀に見る好天に恵まれ、午前八時半より物産観光舘において、総務代議員会を開催し、午后の総会に提案する重要議事議案について、本部側と活?なる質疑応答、詳細に検討して、異議なく承認、組会準備が整った。午前十時からは、公民舘において、全薬連顧問医博辰濃尚次郎氏による、アミノ酸及び、その製剤についてと題する講演をもち、二日間に亘る研修会を終った。中食后一時より総会に移った。

 先づ会長、会頭の挨拶についで、議長に高橋会長を選出直ちに議事議案の審議に入る。@三十四年度事業並決算報告A三十五年度事業計画並予算案B定款一部改正C薬事法に関する件D各ブロック別提出議案処理の件E次期開催地の件F役員改選、以上の案件は何れも本部提案通り万場異議なく可決確定した。 次で意見発表に移り各ブロック別により当面する業界の在り方、薬事法の解釈、その他について建設的意見が多数あり、最后に左記宣言決議文の朗読、中山会頭の発声にて万才三唱、森野氏の閉会の辞で意議深き二日間の大会の幕を閉じた。

 〔宣言〕 全国薬業士の結集体である本会と会員が国民保健衛生に多大の貢献を果してきたことは自他共に認めるところである。我々の業種は国民大衆のもので、その社会的使命の重要性にかんがみ我々は保健文化の昂揚と福祉国家の完成に努力せんことを決意する。我々はこの目的達成のため友好諸団体と相たずさえ、直面する場面に断固たる決意と勇気をもって撃破し、国民保健の向上に寄与するためあらゆる困難を克服、もって本会設立の主旨を完徹せんとするものである。右宣言する。

 〔決議〕 我等は積極的に国民保健の増進に貢献すると共に、さらに組織の強化と団結を高めて、本会設立の主旨完徹に邁進するものである。右決議する。 昭和三十五年七月八日 全日本薬業士連合会 第十三回全国大会

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 薬界◇◇隨談

 ▲SM即ち日本セルフサービス協会の九州支部は六日三十四社が出席会同して薬品部の設置を強調し申請中又は、未設置店は登録申請を一斎に提出、其の県が登録認可を却下する時は知事相手に行政訴訟を起すと云ふ強い話合ひを行った模様。

 ▲この夏各地日本脳炎や小児マヒ流行し出す。小児マヒのワクチンは需要に未だ?応じきれないのが我国の現状。

 ▲佐賀県出身の厚生省薬務局の牛丸局長、製薬に就いては「医薬品は類似品的なものは作らず、各社が独創的なもので競合す可きだと思う。」「今後の薬局経営問題に就いては、現在の薬局は薬局らしい経営をしてはいない、処方箋に依る調剤の上に立つべきで、現在の医療制度の改善、処方箋調剤は医師からかち獲る方法よりも協調による自然廻りが好ましい」と記者団会見に述べている。吾々もそう在る事を期待する。

 ▲筆者過日東京で開かれた日本計量協会の総会に久方振りに出席した。席に会する者東京の高橋、加藤、武井の諸君、仝学の交り連中新瀉の佐藤、広島の後藤氏等他に薬剤師の顔が多く見えていた。同会の強化に体質改善と云ふ字句が出ていた。由来計量協会は学者もメーカーも販売業者も重要使用場、計量士をも殆んど網罹されているが、この部問をガッチリと組んで計量界向上と発展を目的とするのが体質改善である。

 ▲安保反対のデモ行進蜿蜒と続く時にはジクザク行進に入る。国会議事堂を取りまく全学連、労組、市民層田舎者の筆者には事稀らしくもあり又別の感情も起った。

 ▲思田明薬学長、熱海での出身者会合の後途に就かんとして玄関前の坂道石段より落ちて右脚骨折大久保病院に入院中を見舞う。至って元気食事も旺盛只々歩行が出来ざるだけ。

 ▲佐賀薬業小売商業組合六日設立総会を終る全役員も現に在る県薬協組の役員が其の儘選任誠に喜ばしい。

 ▲各地のデパートは年々売れ行きは延びるが薬局の売上げは年々後退している、王座を占めていたが、強壮剤や保健剤、強肝剤が一種の商品化して組合や生協、SMで取扱ひ価格の違いが消費者の花形になったからである。

 ▲年々日曜日は一般に売りあげが減退し出した新教育の子供は日曜は安息の日であり娯楽の日で買物の日ではない、従って悪病や怪我の手当薬以外は薬局の売りあげ減少する原因ではあるまいか。

 ▲文部省の研究奨励費が確定した一学徒の話し!佐賀県鳥栖高校の教諭小林肇氏の鳥栖売薬史の研究に決定。同氏は鳥栖市の出身で田代地方の売薬史の研究を数年前より着手の若い教諭で、弟誠君はサロンパス東京支店勤務の薬剤師である。

 ▲十日夜十一時半NHK@今日の教養は熊大薬学部長加来天民博士の「九州の夏と薬草」観賞用、栽培、野草の特に竜胆。芍薬。壮丹。桔梗。朝顔。センブリ他について其の花の色の成分、薬用部の成分、薬効について素人にも判り易く話を進めた良い話であった。

 ▲宇部市の或る開業医が生後四ヵ月の赤チャンにクロマイ五〇M錠三個を飲ませた処錠剤がノドに詰まり其の医師を業務上過失致死の疑ひで取調べていると、日刊紙は報じている。四ヵ月では錠剤を飲み込めるかが問題である。

 ▲緑の血とか神秘の霊薬といわれる葉緑素を世界の学者は合成せんと長年深究していた七月一日西独化学工業協会は、西ドイツの二人の科学者が合成に成功したと発表、一方数時間後にアメリカ、ハーバード大学が、R・B・ウッドウォード博士が既に葉緑素の合成に成功していると負けずに発表、西独の学者は一九三〇年ノーベル賞を受けたハンス・フィシャー博士である。何れにしても貧血治療脱臭作用、細胞の成長促進、内臓機能の強化、食欲増進等幾多の薬効がある。日本での葉緑素の研究も相当以上に進んでこの材料には桑を主食の蚕のフンが使われている。(GT生)

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 薬界短信

 ◆福岡県薬業懇談会七月例会=七月廿二日午后一時半から県薬剤師会舘で開催左記事項につき協議する。
 @SMの登録陳情について
 A医薬品の小売適正利潤について
 B薬事法その後の経過
 Cその他

 ◆尾形、尾崎旧新課長の歓送迎会=福岡県薬務尾形前課長、同尾崎新課長両氏に対する、福岡県薬業会主催の歓送歓迎会は七月廿三日午后五時から福岡市柳橋通り三光園で開催される。出席希望者は至急市内御供所町二九薬剤師会舘内福岡県薬業会に申込まれたい。

 ◆福岡市薬協勤務部会七月例会=廿四日志賀島の海浜の家(東京荘経営)で開催午前九時渡船場集合、一日の清遊、催し物はソフトボール、麻雀、囲碁、魚釣り海水浴等

 ◆福岡県薬協第七二回支部長会=七月廿六日午后一時半から薬剤師会舘で開会左記議題につき協議
 @九州山口薬学大会準備について
 A会員委員会について
 B学校薬剤師普及講習会開催について
 C社会保険調剤について
 Dその他

 ◆福薬国保第七回理事会並監事会=七月廿三日監事会は午前十一時から、理事会は午后一時半薬剤師会舘で開会左記事項を協議
 @第六回通常組合会開催について
 A昭和卅四年度歳入歳出決算について
 B健康優良家庭表彰に就て
 Cその他

 ◆福薬国保第六回組合会開催=七月廿六日午后三時から薬剤師会舘で開催左記議案につき審議
 @組合事業実施概要報告の件
 A昭和卅四年組合歳入歳出追加更生予算理事専決処分の件
 B卅四年度一般会計組合歳入歳出決算認定の件
 C卅四年度一般会計監査報告の件
 D組合役員改選の件
 E組合の組合会議長副議長改選の件

 ◆武田薬品の学術講演と映画会=七月六日午后一時から佐賀市の商工会舘で開催された。
 ▽講演
 (一)店頭に於ける診断と治療に就いて九大医学部講師、井村棲梧氏
 (二)最近の新薬に就いて=武田薬品東京支社学術課長、大鈴寿男氏
 ▽映画=神経疾患の検査と診断

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 挟子

 ▼開店休業みたいな国会なのでどうなる事かと思っていた薬事法と薬剤師法の二法案が所謂ドサクサマギレに通過してしまった。内容は狂喜する程のものではないが、剤界は安堵の形…だ。

 ▼新らしい牛丸薬務局長が「医薬品は余りにも類似品が多過ぎると思う。これでは共倒れになること必至で各メーカー共独創的な医薬品を製造すべきで、他メーカーの真似をしてほしくない」と言われたそうだが、誰れもが思っている尤もなことである。然しメーカーは決して共倒れはしない。益々繁昌で増資はする。配当はふえる。ボーナスを見ても社員はほほ笑む実情だ唯困りぬいているのは小売薬局薬店だけである。

 ▼牛丸局長は、こうも言われたそうだ、医薬分業制を推進して行きたい。医師が団結して処方箋を出さない様にしている処もあるらしいと聞く、医師が処方箋を出せる様な行政をとれば解決することと思うと、洵にその通りである。是非突進して貰いたいものだ、医師も薬剤師も双手を挙げて待っているだろう。

 ▼東京都健康保険組合の医薬品配布問題と大阪の阪大第二薬局開設問題(まだ開設迄にはなっていないが)が新たな剤界の問題である。何れも現在斗争中である、東京剤界では自分の見方であると思っていた都庁の薬務部、課が敵側であるので吃驚、大阪では第二薬局開設を双肩に担うて剤界と争っているのが阪大薬局長で、同氏は、同大の教授でもあり、而も府薬協病疹支部長の地位にある人である処にこの斗争の険悪くさがある。

 ▼阪大病院が院外に出す処方箋は約二百枚でこの値、月額五百万円といわれている。これが第二薬局に行けばその開局者即ち経営者である恵済団をそれだけふくらますだけであることが地元薬局のシャクの種子であるわけである。薬局長は処方箋の一部は必ず一般薬局に流れるといってるが、協会側は僅かばかりの院外処方箋を扱うため薬局長がいう。処方薬一六〇品目の医薬品を完全に揃えることは不可能に近く、その結果処方箋を拒否せねばならぬ事態でもあると言っている。これは実際問題としてはうなづける。

 ▼阪大の青木薬局長は、現在任意分業制ではあるが、分業の意味で処方箋全部を一般薬局に流すことが本筋であるぐらいの事は百も承知の事と思うが、青木氏は消極面では病院の一薬局長であること、積極面では、経営者である恵済団の評議員であることが、同氏を第二薬局開設に踏み切らした理由であろうが、洵に気の毒なことであると共に、一面では街の薬局の大部分が調剤能力に於て、備品や調剤経験に対して一抹の不安があるものと思われる。この点学識ある薬系の人として無理からぬことと思われる。遅々として進まぬ分業制を待つ剤界の悲哀とも見るべきであろう。

 ▼第二薬局問題で青木薬局長と剤師団の阻止委員との話合いの席上青木氏は「陳情書が仲井府薬会長の名で出されているが、代議員、支部長合同会議に於ける第二薬局阻止の決定は府薬会員全体の総意であるといえるかどうか」との発言は良識ある人の言としては余りにもおかしい。敵意を含んだ感情的なものにも思える様だ。これに似たことが府薬の代議員の一人(警察病院薬局長)にもあった様だ。代議員、支部長会議で阻止委員に推選された一代議員がその委員を断って曰く「阻止委員会は府薬の総意とは思われないから、大阪府開局者有志としてほしい」と申出たことである。常識ある言葉とは考えられない。府薬会長(阻止委員長)が「代議員、支部長は会員を代表するものであり。これ等の人が決議した限り総意とみるべきである」と言っていることは当然のことである。

 ▼問題の東京都健保組合の薬品給付が注文制となっているのは一寸おかしい。処が一号薬店の登録をしているそうだが店舗は持たないそうだ。店舗なしで一号薬店の登録を認めた都庁が又々おかしいことになる。

 ▼都健保組合の薬品斡旋販売は全国的な注視を浴びているが、関係者のその解決妥協案として「給付は予防薬に限ることにしては如何」との線を打ち出そうとしているそうだが、さて、どこ迄を予防薬とするかで議論百出「クシャミが出れば何…といった様な宣伝をしている風邪薬は治療薬じゃない、予防薬だと…言ったお役人があったそうだ、小売薬局薬剤師これを聞いて…馬鹿馬鹿しい…

 ▼東京薬科大学教授三雲さんは剤界でも知られている古い人であるが、今回医学博士の称号を得られる事になったそうだ。めでたいことである。近来薬学士や薬剤師の医学博士になられる人が非常に多い様だ。なぜ薬学博士にならないのだろうか、それは学問の内容が違うのだと言えばそれ迄、何だかわけがありそうだ。

 ▼国会解散に伴う衆議院選挙に大阪剤界から府薬副会長の粟村ハツ氏が立候補の意思を表明しているが、同府薬会長の仲井信夫氏(府会議員)も自民堂公認が得らるれば立候補するとの意志表明をしたとのこと、正副会長の出馬では大阪剤界も仲々夏いことであろう。

九州薬事新報 昭和35年(1960) 7月20日号

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 九州山口薬剤師協会主催 九州山口薬業代表者会議
 スーパーマーケット対策協議

 九州薬剤師協会(会長瓜生田定氏)主催の九州山口各県の医薬品卸業者と小売業者の合同幹部会がSM対策協議の目的で七月十六日午后一時半から福岡市浜小路大黒南海堂会議室で開催された、出席者は

 ▽小売業者側
 福岡県=五郎丸、四島、須原、深田
 佐賀県=江口、島、木元
 長崎県=草津、原口
 熊本県=戸田、椿、坂梨
 大分県=瓜生田、高橋
 宮崎県=宗、村社
 鹿児島県=某
 山口県=樋口

 ▽卸売業者側
 富田(熊本)大黒(福岡)平田(大分)堀部(大分の吉村代理)
 の廿二名であった。

 先づ瓜生田会長は「本日の会合は業界混乱に対し如何に対処するか、殊にSM対策は全九州の総力を結集して商組と共に対応したい」と挨拶し、直に左記議題につき協議検討した。

 ▽SM対策に関する件
 先づ各県から次の様なSM状況報告があった。

 大分県=近時日田市にSM薬品部ができ混乱を来したので福岡方式を教わりたいと思っている。

 長崎県=長崎、諫早、島原の各市は現在SMで混乱を来たしている。佐世保市では一薬剤師がSMを経営しており、近く別に二ヵ所出現する見込。

 福岡県=最初福岡市ではSM十一ヵ所に対し、対策委員会を作り色々工作したが次々と申請されて来たので薬務課の協力を得て行政面では阻止を試みたが終に県薬事協議会が出来、この協議会の決議に沿った県当局の方針により現在かろうじて混乱をまぬがれている。

 熊本県=既に生協時代から混乱している。県協議会もあるが未だ効果を挙げていない。

 山口県=SM問題では相等業界は苦心し一時薬務課長を弾劾したことさえある。現在ではSMとも協調して小康を保っている。

 佐賀県=今日迄全県下に亘り相等混乱を来したため漸く本月六日商組創立総会迄に推進した。

 宮崎県=八市の内四市にSM数ヵ所宛持っている。商組と県協議会で今後の対策を講じつつある。

 鹿児島県=現在まだSMはなく県当局も許可しない方針をとっている。

 この時四島氏は本日の会を反映させて薬務当局も思想的に九州山口が一丸となって頂く様相談したい。明后十八日富田氏(卸会長)を同道瓜生田(会長)高橋(薬業士会長)両氏が県衛生部長に面会し吾等の意のある処を訴え薬務当局の団結を要請したいと発言。一同賛成してこれを決定した。それより各自の意見発表があったが、九州には小売連合会があるので今後これを主体とし薬剤師会は側面より推進協力することを決定なお九州薬業懇談会を作ることになりその企画は瓜生田会長一任となった。九州各県に於ける商組の現状は福岡、宮崎が実施し、鹿児島、山口が既に認可を得、佐賀は創立総会を終え長崎は発起人会を催した、熊本、大分は未設置である。以上にて代表者会を終了。六時散会した。

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 福岡県薬協 夏季移動相談 調剤所開設

 第八回NHK夏季移動相談は全国八ヵ所、高知、和歌山、岐阜、福岡、広島、宮城、北海道、茨城の一道七県に於て、七月十六日〜八月廿八日迄の間に開かれるが福岡県では黒木町で七月卅、卅一日に開かれることに決定している。福岡県薬剤師協会では左記の様な「調剤所開設実施要領」を作成して関係会員に配布した。

 ◆調剤所開設 実施要領

 一、趣旨(畧)
 二、主催 厚生省、郵政省、日赤、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師協会、福岡県、黒木町、NHK
 後援 大蔵省、法務省、外務省、日本弁護士会、福岡地方連絡部、福岡県農業協同組会、九州電力、福岡県ラジオテレビ電機組合、電気工業会、福岡県貯蓄推進委員会、福岡県教育委員会、八女郡町村長会、八女市、筑後市
 三、開催期日、場所
 七月卅日(土)卅一日(日)の二日間
 福岡県八女郡黒木町黒木小学校、黒木高等学校

 四、実施内容
 健康相談▽法律相談▽農林相談▽納税相談▽貯蓄相談▽青少年教育相談▽受信機相談▽自衛隊相談▽電気相談▽展示会▽公衆衛生相談▽生活相談▽福祉相談▽家庭看護の指導▽家計簿の指導▽時局講演会▽農事講演会▽知事をかこむ座談会▽婦人番組▽こども番組▽ラジオ体操▽美容体操▽映画会▽演芸番組

 五、健康相談内容( )内担当機関
 内科(簡易保険▼国立病院)▼外科(日赤)▼小児科(日赤)▼皮膚咽喉科(日赤)▼耳鼻咽喉科(福岡県医師会)▼眼科(福岡県医師会)▼産婦人科(福岡県医師会)▼一般健康相談(国立病院)▼レントゲン(簡易保険)▼歯科(福岡県歯科医師会)▼薬局(福岡県薬剤師協会)▼環境衛生相談(福岡県薬剤師協会)

 「摘要」
 (1)簡易保険は薬剤師所要資材携行投薬を行う
 (2)その他の医師は処方箋を発行す
 (3)薬局は処方箋による調剤投薬
 (4)環境衛生相談は飲料水試験、鼠族、蚊、はえの駆除、農薬の危害防止など

 六、携行資材(畧)

 七、奉仕人員
 @調剤所長=八女支部長
 A調剤員=会員(薬剤師)四〜五名
 B環境衛生相談=会員(薬剤師)二名
 ABは支部長より委嘱

 八、調剤所開設位置
 黒木小学校講堂

 九、経費
 所要資材整備費、奉仕者の車馬賃、食事費、交通費は県薬の負担とする

 十、報告
 支部長は作業終了後文書を以て左の事項について協会長に報告すると共に残余資材を返納すること(左記事項畧)

 十一、参考事項
 @AB畧
 C作業中は白衣着用のこと
 D畧
 E本作業は医薬分業のPRも兼ね行うものであるから奉仕者は患者に対しては懇切叮寧、各医療担当者と連?を密にし薬剤師の社会的地位向上のため十分留意されたい。

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 小児科学会の話題 G・L・L 粉乳について

 統制解除後逸早くビタミン入りドライミルクを発売、次いで昭和二十九年にはベータ、ドライミルクを発売し、夫々ビタミン増強、乳糖入り粉乳の先鞭をつけた森永乳業では今回森永Gドライミルクを発売した。

 これが小児科学会で話題になっているというG・L・L粉乳である。国内は勿論欧米にもまだない世界で初めての育児粉乳であるといわれている。

 人工母乳研究の権威、小山武夫博士(文部省乳児栄養研究班委員長)の創案されたもので乳糖分解物‐G・L・L(ガラクトーズ・ラクチュローズ・ラクトーズ)が配合されて超高温瞬間殺菌(摂氏一三〇度二秒間)の処理を施してあるのが大きな特長である。

 その主なねらいの一つは母乳栄養児の腸内に純粋培養したように多発するビヒヅス菌(乳酸菌の一種)を人工栄養児の腸内にも増殖させ、病源菌に対する拮抗作用、整腸作用、栄養素の吸収をはかった点、一つは蛋白質を変性させ牛乳蛋白質を母乳蛋白質の消化吸収性に劣らないものにした点である。

 その外脂肪のミネラルの母乳化、ビタミンD、ビタミンB6の増強をはかってある。乳児の便は腸内を映す鏡であるといわれているが、本品の使用により母乳栄養児の便に非常に近づく長崎大学小児科和泉教授の実験によれば本品で飼育されたマウスの体力は対照群に比して著しく強じんであったという非常に興味深いデータが出ており、乳児の場合も当然同様体力強じんが期待されると考えられる。

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 二十社会との懇談 九州薬業卸連合会大会 二十社本支店より五〇名参加

 九州薬業卸連合会では大会開会と共にメーカー二十社との懇談会を催すことを主なる目的として七月十五日午后一時半から福岡市天神町、富士銀行支店ホールで大会並に懇談会を開催した。出席者全九州から卸売業者七八名、メーカー二十社本支店(支店は福岡、各支店長)から責任関係者五〇名であった。

 定刻先づ大黒社長から開会の挨拶に引続き次の様な経過報告があった。二十社会が昨秋から色々研究された結果流通秩序改善実施要綱が去る二月全国ブロック代表から発表され本会からは鶴原(門司)吉村(大分)の両氏が出席、三月十日評議員会を開いて両氏より要綱について聴取し、二十社会の趣旨に賛成協力することになった、本日は全員出席の上で更に二十社会から直接に実施要綱について承ることになった本問題は吾々卸業者並業界にとって非常な重要なもので特に本日二十社会との懇談会を企画したわけである。

 次に富田会長は起って「本日は全会出席の大会であり二十社会の実施要綱に協力することを前提として二十社会の直接責任者と共に一同篤と懇談したいとお思います」と挨拶、次いで来賓前川福岡県衛生部長の挨拶、次に二十社会を代表して武田薬品常務木村富次郎氏から次の様な挨拶があった。

 九州卸業者全員と吾々メーカー代表とが一堂に会したことは始めてのことである。乱売の原因は多種多様であり吾々メーカーとしても反省すべき点があり、今日迄種々研究して来た結果、愈々去る三月十日から要綱を実施したわけである、今後三者が協力せねばその目的を達することは洵に困難である皆さんは丁度三者の中間にあるのでメーカーに協力すると共に小売業者に徹底する様PRして貰いたい。

 次に日本薬業卸連合会長松田金之助氏は、「吾々卸業者はメーカーに協力すると共に小売業界が如何に困乱してもその防波堤とならねばならぬと感じている」と述べ、次いで表彰式に移り九州卸連前会長梁井益蔵氏に対し感謝状並に記念品を富田現会長より贈呈し、梁井氏からは感謝の辞が述べられた。

 これにて休態、午后二時半再開の上二十社会との懇談に入った。富田会長を議長に推し各県卸代表者と二十社メーカーとの間に活発な質疑応答が繰り返えされ、要綱実施について忌憚なき意見の交換があり、結局今後卸業者はどの様な歩みをするかについて話はしぼられ一同会得するに至った模様である。

 一応懇談会を終えて再び大会に移り、吉松氏(熊本)が左記大会決議文を朗読し満場拍手裡にこれを承認、次いで波多江氏の閉会の挨拶によって五時半盛会裡に大会の幕を閉じた。

 ◆決議

 医薬品の流通秩序改善に関する二十社会提唱は、業界の安定と進歩には契緊の要素である、その要綱の実践如何は我が薬業界の現在及び将来の死命を決するものと考えられる、依って吾等は二十社提唱に対し之を合面的に支持し業界会般に浸透する様促進協力する事を決議する。
 昭和卅五年七月十五日 九州薬業卸連合会

九州薬事新報 昭和35年(1960) 7月30日号

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 本年度福岡の薬と健康展協議会 委員十名決定

 福岡市薬系団体、官公庁等による本年度の「薬と健康展」に関する協議会が七月六日午后一時半から薬剤師会舘で開催され、出席者は
 九大薬局=松村、鹿川、磯田
 県薬務課=尾崎、大庭、田中
 市役所=宇野、中島、田中
 県薬協=四島、権藤
 市薬協=鶴田、三津家
 薬業士会=吉松、林田
 の十四名であり直に次の議題につき協議した。

 (1)薬と健康展実施の可否について
 各自意見を開陳したが、結局本年度も開催することを決定した。

 (2)実施する場合はその企画について
 場所は例年の通り大丸に交渉すること、期日は今秋十月福岡市に開催される九州薬学大会と同時期に開くことが尤も有効的であり、この点考慮すること、展覧会に於ける主なる行事目標次の様なものとする。
 @検尿
 A血圧測定
 B潜血反応
 C薬草料理(料理法の実演)
 D癌の薬
 E糖尿病の薬
 F死亡率による薬の紹介
 G薬草展示
 H血液検査
 I無胃酸の測定

 その他従来の「薬と健康展」と云う名称の代りに「長生きと若返りとの薬まつり」「医薬と人間ドック」など新味のある一寸変った名称にしてはとの意見も出たが、兎も角今後の実施企画については一切を委員会に一任することに決し委員十名を次の通り選任した。

 大庭(県薬務課)宇野、田中(市役所)権藤(県薬)鶴田、荒巻、馬場(市薬)礒田(九大)吉松、林田(薬業士会)

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 福岡県薬剤師協会 第一回合同委員会開会
 諮問事項並各常置委員会委員決定

 福岡県薬剤師協会では会長から先に委嘱した六種常置委員第一回合同委員会を七月九日午后一時半から県薬剤師会舘で開催し、会長より各委員会に対し左記事項について諮問することになった。出席者は委員十九名、役員五郎丸、四島の正副会長外理事五名であった。

 諮問事項

 ▽薬局委員会
 (1)薬業経済安定向上のための具体策
 (2)医薬分業制度普及推進策
  @処方箋獲得方策
  A処方調剤受入態勢整備
 (3)新薬事法、薬剤師法運用に関する希望意見
 (4)九州薬学大会開局部会対策

 ▽薬制委員会
 (1)薬事法、薬剤師法案成立促進方策並に再改正意見
 (2)同右普及徹底策
 (3)医薬分業制度普及推進策
 (4)その他薬事法規に関する研究及び改善策

 ▽調剤技術委員会
 (1)調剤技術向上に関する研究
 (2)九州薬学大会薬剤部会対策

 ▽薬学委員会
 (1)薬学に関する職能技能向上についての研究
 (2)九州薬学大会薬学部会対策

 ▽広報・出版委員会
 (1)薬剤師、薬局、協会のP・R・策
(2)九州薬学大会広報、宣伝出版に関する対策

 ▽会員委員会
 (1)会員倫理向上対策
 (2)未加入会費獲得方策
 (3)会費早期完納推進策
 (4)会費再検討の件

 先ず会長挨拶に次いで、委員会に対する各委員の意見が述べられたが、薬局委員会に対する諮問(1)「薬業経済安定向上のための具体策」については「吾々の医薬品小売商業組合と別個の結論が出た場合などを考慮して始めより組合理事長を本委員会に委員を委嘱する必要はないか」との質問に対し執行部では(適当な人があれば委嘱して結構である。然し当分この儘進んで委員会で必要ありと認めた場合は適当な措置をとりたいと思う)との応答であった。それより各委員会担当の理事を決定し、委員会では互選により正副委員長を決定した。左記委員氏名中◎印は委員長、○印は副委員長である。なお正副委員長の印なき委員会は未決定である。

 委員会委員氏名

 ▽薬局委員会(並に保険)
 担当=三淵、佐野両理事◎藤田胖、勝目一郎、○早船助次郎、富永昇蔵、細井徹一、岸田清輝、門司平雄、馬場正守、柴田伊津郎、安部寿、神谷武信、芳野直行、田中保夫、高橋賢治郎、石松茂治、内藤正夫、中村里実、大坪慶次、○原田幾太郎、副島良次、側島希允

 ▽薬制委員会
 担当=早川理事
 馬場勘二、◎竹内克己、白木太四郎、○国武一人、木村基、形井洋、島健一郎、中村里実、山本一郎

 ▽広報・出版委員会
 担当=岡野、権藤両理事
 荒巻善之助、波多江嘉一郎、久保川憲彦、安部寿、南義雄、樋口昌徳

 ▽薬学委員会
 担当=塚元理事
 ◎塚本赳夫、渡辺敬、諌山哲夫、永田泰彦

 ▽調剤技術委員会
 担当=山本理事
 ◎松村久吉、福井正樹、諌山哲夫、三宅清彦、重住和雄、宮崎修一、中寺久喜穂、原正幸、南義雄、前野繁清、竹内克己、鹿川亘、林真一、松山勝喜、伊藤茂俊、野中好夫、有馬功

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 県卸業団体の回答 福岡県薬商組理事支部長会
 某メーカー広告入り訪問販売問題化

 福岡県医薬品小売商業組合第三回理事会並支部長会議が七月十四日午后二時から薬剤師会舘で開会された、出席者二十四名、左記議案につき協議した。

 一、各支部の商組活動の現況報告
 各支部長から詳細報告があり何れも大同小異であるが地区の事情によって注意すべき点もある。福岡に於てはSM対策は勿論現在では卸屋団体との交渉中である。大川支部は佐賀県よりの脅威にさらされている。同県の商組(設立準備中)活動を希望している。小倉支部では既に調整規程推進委員一二名を選任、活動態勢を整えている。本部よりの具体的活動方針の指示を待っている状態にある。直方支部では未加入者の加入促進に目下努力している。飯塚支部は直方と同様未加入者の加入誘引に勤めており業者の実態把握のため現在アンケートを実施している。八幡支部では卸売業者のデスク廻りは中止しているが二次店に切りかえて現在潜行している様であり、対処方策について考慮中である。大牟田支部では現在小松ストア問題があり対策を講じている。

 二、調整規程追加申請の件及び全国連合会結成促進について(理事長)
 調整規程追加申請については明後十六日大阪で開催される全国小売連合会に出席するので、その際大阪の調整規程実施状況を実地視察後、本県の追加申請を行いたい。又今後調整規程推進途上必らず事業活動の規制という事態が発生すると信ずるので、その際規制命令の効力がより一層の効果をあげるためには商業組合の全国連合会の組織が有力な作用を及ぼすので全国組織の結成をやりたい。幸い明後十六日大阪での全国小売連合会に於て、本県からこれに関し緊急動議を提出したいと述べ、全国商業組合連合会創立準備計画書並に定款案を提示したが一同の賛成を得た。

 三、事業活動規制命令につき解説
 宇山常務から中小企業団体法第五十六条、第五十七条について詳細説明があった、近く印刷物を配布する。

 四、第一回組合交渉に於ける卸業者の回答について(藤野専務理事)
 先に本商組から県卸連合会に対し三項の中止是正について団体申入れをなしその回答を求めていたが、本日の理事会開会前、午前中に回答がなされることに予定されていた処、昨日午后急に回答する旨卸側より連絡があったので不敢取在福理事で次の様な回答を聴取した。

 ▽回答内容
 (1)文書回答をすべきだが、字句の解釈につき誤解を生じる場合もあるので口頭で解答した。
 (2)小売側の要請事項三項目については全国的な問題であるので、福岡県だけが割り切った踏み切りは困難である。
 (3)趣旨には原則として賛成であり趣旨に副うよう努力したいが、仲々早急打開は困難である。

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 薬剤師法案・薬事法案 七月十五日原案通り成立 明年二月一日施行の予定

 薬剤師法、薬事法両案が薬事審議会、社会保障制度審議会等の審議を経て参院先議で国会に上程されたのが去る四月廿七日であり社労委で六回に亘り審議され五月十七日に薬剤師にとっては尤も重要と思われる十二項目の付帯決議を付けて全会一致で可決し、六月廿日には自民党が他の重要法案と共に参院本会議を一挙に通過せしめ、直に参議院に送付した。

 衆議院では七月十二日漸く社労委が開かれ両案は自民党単独で可決し、十五日夜の本会議に於て他の重要法案と共に通過、会期終了三時間前に原案通り成立したわけである、これにより卅日以内の八月十四日迄に公布、又六ヵ月以内の明年二月迄に施行されることになる。

 厚生省としては施行前に関係政令、省令、告示等を制定せねばならぬので遅くとも本年中には成案を得る見込みであり、施行は二月一日が予定されている。

 薬務局長はこれについて公布後施行迄の間、六ヵ月間の前半を政令その他の作成にあて、後半は関係者えの周知徹底をはかる時間にした又薬剤師、薬事両法の付帯決議は十分尊重してその精神を汲みとりたいと思っていると語り、高野日薬会長は「両法律には十二項に亘る重要なる付帯決議があるので、これが行政上に生されているか否かを注視し、出来るだけ早い機会に薬事法を一層完全なものに改正したいものと思っている」と含蓄のある意見が述べられている。

 兎も角混沌たる国会に於ける両法案が殆んど廃案となるものと見放なされていたのに意外にも国会最終日の夜一気に通過したことは自民党単独によるとはいえ洵に剤界にとって目出度いことであった。

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 薬界短信

 ◆福岡県薬業士会総会=七月廿六日午前十時半から福岡市、町村会舘ホールで開会した。(詳細次号)

 ◆売薬史研究に文部省補助=佐賀県鳥栖高校教諭は十年前から仝地主産の家庭薬の起源に就いて研究、旧藩時代の対馬との交流をつきとめ毎夏対馬や四国にも、脚をのばして宗藩の古文書其他に就いて研究しているのを高く評価されて、鳥栖売薬史の研究で今回文部省より研究補助費を交付される事になった。氏は日大文学部出の少壮学者である。

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 薬界◇◇隨談

 ▲参議院は通過したが国会ストップの政情混頓で一時危しまれていた薬事法、薬剤師法の二法案中に非の自民党だけの社労委を二十分そこ?で可決し十五日の衆院本会議で重要法案として一気に通過した事は誠に喜びにたえない。

 ▲筆者は地元選出で社労委の理事である大坪代議士に四日親しく会って上提を懇願した。先きに江口会長(佐賀)鬼頭(同)君も特に上京懇談されている。兎も角政変で非常にあやしんでいた矢先で、ホットした。

 ▲本年度朝日科学奨励金は二百十五件の内から厳選の結果受贈者五団を決定発表したが其の中の「赤外線吸収スペクトルの臨麻医学への応用に関する研究」で奨励金一〇〇万円を受ける人千早呉郎氏は昭和二十七年の東大薬学科(生化学)卒で大学院で天然物有機化学とX線結晶学を専攻三十一年より東大病院中央検査主任技術員の徳学者である。

 ▲今回の政変内閣の棚ボタではないが実力を買はれて厚生大臣になったのが大阪選出の中山マサ子代議士である。かつては厚生省の政務次官を立派にやり遂げた経験で高度の社会保障政策を念願しているといわれる。夫君は薬業士会々頭の中山福蔵氏(前参議弁護士)である。日本では女帝はあったが女性の大臣はなかった初の女大臣医療や薬務、厚生行政に頑張って貰いたいアクセサリー閣療であってはならない。

 ▲各医大病院の第二薬局開局の是非論頗る昂まる。

 ▲ベルツ水で名を識られる明治初期の日本医学界の貢献者であるドイツ人ベルツ博士(一八四九‐一九一三年)の手紙がこの程長崎県北松浦郡の某家で発見された。当時親しくした軍医総監の橋本綱常に宛て、時の外相陸奥宗光の病状と処方を知らせたドイツ文だとの事でどうして保存されているか首をかしげているとの事だが、医学史なり薬学史なりに貴重なものである。

 ▲日本に女の大臣、三日後にセイロンには女の首相出現、日本には女性の薬博や大病院の女性薬局長は到って少ない。薬大在学者の半数が婦人何れ出現の日も近い。

 ▲明治薬大山梨長野の県境南アルプス連山の高峯ハツ岳の中腹広大な面積の地を得て夏季学生修練道場に当てる計画を昨秋発表。

 ▲ミーちゃん、ハーちゃんが毎号待ち切れる芸能雑誌「平凡」九月=号島田一男の「朝刊太郎事件メモ=飾り窓を狙え」の内容は麻薬や覚醒剤が取締り厳しくこの密売者のヤクザが眼につけたのが新鎮痛剤……ジフエニルジメチルアミノエタン…スメルR一般入手出来ないので薬局子弟に眼をつけ一味に引き入れ店頭より持ち出させ、次々と悪の華に集まり、悪魔の淵にたゝき込み少しでも反省の色を出せばジャックナイフで突きさし衷心に呵責を感じて女薬剤師を刺殺し遂に一味の巣屈に一網打網となる事件記者の手記風の映画物である。(GT生)

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 第一製薬 新癌治療剤 マーフィリン新発売

 第一製薬では左記癌化学療法剤「マーフィリン」を七月十一日愈々新発売した、本品は四〇〇例以上の臨床実験が行われてその優秀性が認められ、白血球の減少などの副作用がないのが大きな特徴とされている。

 ▽品名=マーフィリン
 ▽成分=水銀ヘマトポルフィリンジナトリウムで水銀の含有量は二四%である。
 ▽性状=黒褐色の粉末で水に易溶、有機溶媒に不溶である、光に鋭敏である。
▽作用=@種々の悪性腫瘍のスクリーニングテストで癌発育抑制作用が確認されている。A悪性腫瘍の放出する有毒物質の作用を消退させる。B生体の新陳代謝を促進し、生体の抵抗力を強める。C構成分のヘマトポルフィリン、水銀単独でも制癌作用がある。D癌組織に比較的多く集まる。EX線にも鋭敏で、併用で一層効果を高める。

 ▽特徴=@長期に亘って投与できるため徹底した治療を行い得る。A従来の癌化学療法の欠点である白血球の減少がなく、その他の副作用もないため完全に使用できる。B悪性腫瘍の発育を抑制すると共に生体の新陳代謝を促進させ、生体に抵抗力をつける。CX線との併用で効果を高める。

 ▽用法・用量=通常成人一回量二五rを日本薬局方注射用蒸留水二〇ccに溶解し、隔日又は毎日一回静注する、年令に応じて適宜増減してよい、二〇回注射後、週二回に減じ維持量として週一回長期間に亘って使用する。単独使用の外放射線、外科手術と併用することもできる。

 ▽副作用=@マーフィリン単独使用では白血球の減少はおこさない。A水銀化合物であるが諸臓器に障害を与えず、機能低下の場合は寧ろ改善される場合もある。B上記使用量では副作用は殆んどないが、稀に色素沈着、皮膚炎、食慾不振、全身倦怠、下痢、歯齦炎、口内炎、発熱などをおこすことがあるが、治療を中止する様な重篤な症状はない。

 ▽効能=癌腫(胃癌、大・小腸癌、肺腎癌、肝臓癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌子宮癌、卵巣癌、皮膚癌脳腫瘍、縦隔洞腫瘍、膀胱腫瘍等)、肉腫(細網肉腫、リンパ肉腫など)悪性絨毛上皮腫、ゼミノーム及びその他の悪性腫瘍の自覚的及び他覚的症状の緩解。

 ▽注意=光線に鋭敏なので遮光して貯える、治療中は患者は直射日光、紫外線に注意する。
▽包装・価格=二五r×五A(二〇cc局方注射用蒸留水五管付)二、五〇〇円(卸価格二、〇〇〇円)