通 史 昭和35年(1960) 日薬−県薬−市薬
九州薬事新報 昭和35年(1960) 4月10日号

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 福岡県校剤会理事会(三月卅日)

 福岡県学校薬剤師会では三月卅日午后一時半から薬剤師会館で理事会を開会、左記議件につき協議した。

 1、学校保健技術者講習会出席報告
 先に東京に於て開講された第七回講習会に出席した。真崎理事から講義内容につき詳細報告があった。
 2、日本学校薬剤師会総会並校剤部会研究発表の件
 四月五日日本薬学大会に於て開催される総会には早川会長が出席し、なお研究発表は「大気中の亜硫酸ガスの測定、第一報」と題し同氏が発表することを決定した。
 3、第七回福岡県学校薬剤師会総会の件
 4、第七回伝達講習会開催の件
 県校剤会主催の総会は午前に、県教育庁主催の伝達講習会は午后に、期日は五月廿日頃を予定すること、県下未設置地区の各支部長に会員の講習会出席方を奨励する様依頼の案内状を発送することなど決定した。
 5、器具購入について
 本年度は河合製薬の申出もあり騒音計及び化学天秤を購入する様努力することを申合せた。
 6、昭和卅五年度予算に就て
 約廿九万円の予算について詳細説明があり一同了承

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 薬界◇◇隨談

 ▲雨か嵐か日本医師会の役員選挙は波瀾を予想されていたが絶対多数で武見会長が三選した。これで医師会の厚生省に対する高姿勢は二ヶ年続き医療行政は担当困難と噂されている。

 ▲スーパー薬品部が地元薬協組との協定書無視して三〜四割引とは「クスリ原価即売会」俄然(市民の人気を集める薬品部)と云う歌い文句の大宣伝を始める。迷惑するのは組合員ばかり、全く傍若無人、義憤を起す次第だが、組合が巻き込れ報復宣言をやったら全くのおしまい、狂人に刃物だ、薬務局通達を守るSMなら良いが罰則の傍わないものはなんにもならない。強いが勝ち、早いが勝ちでは仕方がない、薬業地に陥う。

 ▲日本薬学会盛んに終る幾多貴重な業績の報告、薬学の水準は世界的である感。

 ▲九薬連でも二十社案に反対、実行運動にいる。大いにやる可し。

 ▲或る会合で薬の小売はSM、事業所納入、生協や一般消費者から値引を迫られ利巾は殆んどなくなり一方卸は卸組で協定一定の線を崩さない決局小売より卸が利潤が多いじゃないかと。なる程考え様見様ともいえる。

 ▲各地区でメーカー卸値もA価も値下げ、ほんとうに流通している価格を正価にすべきだと東京、大阪、愛知、岐阜其他に要望の声挙がる九薬連でも立ち挙った。

 ▲薬大ブームで本年は東京理科大学と福岡大学、第一薬科大学の三つの薬育機関が出来たが次は青森と兵庫県に薬大新設の噂がある。

 ▲佐賀に面白いケースがある。SMの一角を借りて全品目の薬業を開始した薬剤師個人の店の名が、其のスーパーの名称と仝じものでSMの責任者が名称承認の証明書を県の届出に添付されている。個人の筈だか、SMの広告には薬品部となっている。何処迄が個人でどこ迄がSMか判断に迷う。

 ▲春は浮き浮き花見酒、だが街の薬局は全く元気がない。二日酔のグロンサンでもネストンでも職場で分け合った半値のものを服んでいる連中が多く、薬店には何のおこぼれも廻って来ない。(GT生)

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 挾子

 ▼福岡剤界の生きた宝としてそっと九大薬局研究室に明治四十四年以来五十年間薬学のためコツコツ試験管を振って貰っていた栗原武晃氏も、今回愈々四月を以て職を退かれることになった。洵に惜んでも惜しみきれないものがある。パンジーのボツボツ咲きて退職す。同氏が半世紀の栖を去り行く心境である。益々多幸ならんことを祈って止まない。因に栗原先生は玄洋工業KK(社長渡辺荒次郎氏)の懇望により同社顧問に就任される模様である。

 ▼四日間に亘った日本薬学大会も終了した。会場も今年は最高の十会場を使用し参加者も毎日五千人を超えたが但し会員は千五百人位だったそうだ。五千人以上収容のできる建物は東京、大阪、名古屋、北海道以外にないので今後は医師会などに傚って四年に一回位に開きその間では各部会を催すことにすることが幹部間に考慮されるに至った。薬学大会も曲角に来たわけである。従来は聴講に時間が重なり色々不便があったのでこれ等のことも解消されて洵に結構だと思われる。

 ▼薬学大会の女子薬部会は仲々の盛会だったらしい。聴講者満員の視線下に福岡の田中美代さんの「現行薬局制度と今後に於ける女子薬剤師のあり方」と云う堂々たる弁説は特に注意を引いたらしい。九州女子薬のために大いに気焔を吐いたわけである。

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 校剤師に公務災害保障法適用決定

 学校薬剤師は学校歯科医とともに公務災害保障法が適用されず医師との不平等に不服であったが、今国会で愈々適用が決定した。学校医公務災害保障法の一部改正案が衆議院文教委員会から提案され去十五日衆議院本会議で可決、廿二日には参議院本会議で可決成立した。これによって学校薬剤師及び歯科医は何れも学校医と同様死亡の場合は五十万円、過失の場合はその症状によって保障されることになった。同法案成立に永らく尽力して来た永山日本校剤会副会長は「この法の成立によって校剤師の増員計画には非常なプラスとなる。必置制を一年の向うに控えて洵に校剤のために喜こばしいことである」と言っている。

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 日本食品衛生学会、誕生す 会長に刈米薬博を

 従来食品衛生の分野は薬学、医学、農芸、水産、畜産等に分れて何等纏りがなかったので、これ等関係分野の総力を糾合して食品衛生の科学的向上普及と食品工業技術の進歩発展に寄与する目的で学会創立が刈米国立衛生試験所長を中心に企画され、その機構も漸く具体化するに至ったので各界に呼びかけ「日本食品衛生学会」創立総会を去廿三日東大医学部で開催した。

 会長に刈米達夫氏(国立衛生試験所長)副会長に聖成稔氏(厚生省環境衛生部長、医系代表)及び山田正一氏(国税庁醸造試験所長、農芸化学系代表)を選出し、外に理事、評議員、顧問、監事を決定又規約、予算、事業計画をも協議決定した。

 本学会の当面の事業としては学会誌の発行に重点を置き、外に講演会、研究発表を予定している。現在会員は七十余名、薬、医、農芸、水産、畜産関係の学者、メーカー(経営、研究部門)行政機関などで構成し、業界からは明菓、明乳、味の素、森永製菓、森永乳業、武田、三共、第一名糖、名糖産業、三栄化学、高砂香料、雪印乳業などが入会している。

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 福岡県薬業懇談会四月例会(十二日開会)

 福岡県薬業懇談会四月例会は十二日午后一時半から県薬剤師会館で開会、出席者は次の通り
 メーカー側=第一、三共、塩野義
 卸業者側=江口、和田(波多江代)坂本(鶴原代)
 小売業者側=古賀、白木、須原、工藤、形井、深田
 県庁側=尾形課長、佐々木補佐、尾崎技術補佐、大庭技師
 定刻尾崎補佐の開会の挨拶に次いで左記議題につき懇談した。

 一、流通秩序改善について
 流通秩序改善については先に二十社会で決定発表した要綱もその後色々と問題が起り具体的な方法は何等具現していないが、本日二十社会が催されているので何時から実施するのか、景品廃止など完全実施は五月からと思われるが、これ等のことも本日決定するものと思う、新A価も発表になるのではないかと思われるが、吾々も実際これ等について何も特に知らされていないので小売業者側の種々なご質問に対し適切なお答ができぬのは洵に残念であるとメーカー代表側では語っていた。

 二、商業組合調整規程について
 古賀氏から小売業者の過当競争を防止するため商業組合、調整規程などの認可を求め、調整規程では特に乱売源となる虞れある販売方法特に訪問販売や仕入数量等について規制したのであるが、訪問販売など特定の要請がない限りこれを認めないことになっている。これは小売の場合而も組合員間の問題であるが、員外小売或は卸、メーカーとは組合交渉ができることになっているのでこれを利用することによって協力を得目的を達成することができ得ると思考されると説明があった。

 卸業者代表の大黒氏は「去四日東京で卸業者の話合いがあり流通秩序改善には協力する様申合せた。事業所対策については現在九州地区が一番問題としているが他地区では既に事業所納入は卸業者の仕事であることが常識となっているので今更問題にすべきでないとの要求さえある位であるが、小売業者が事業所納入をなすことについて吾々卸業者は何等異議はない。

 処が事業所廻りは実際問題としては仲々?み悪いものであり話合もできないものでもある。実施面の実行委員会か何か造る必要があるのではないか」との意見が開陳されたが、小売側としては是非実行したいとの希望がありその具体策について今後研究することになった。

 大黒氏は又「長崎のSMは十ヵ所で現在一億円の取引をなしている模様だが、何処から薬品が納入されているか不明の実情に在る、薬品卸業者もSMには相等魅力を感じているので長崎の卸業者としてはその納入は最早時間の問題ではあるまいか」と語った。

 小売側では商業組合も活動期に入ったので今後はこれによって流通秩序改善を根本的に推進したいので卸、メーカー共に大いに協力して貰いたいと希望、又小売側は今後一層の団結の必要があり、これ無くしては空年仏に終ることを能く理解して倶々に協力して薬界のために努力せんことを誓って懇談会を終了した。

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 福岡地区薬協組・薬商組 各役員合同会議 調整規程研究と総代会開催準備

 福岡県医薬品小売商業組合調整規定も三月十五日附で愈々本月初め認可になったので規程内容、これに関連する種々の事項について研究する目的で福岡地区薬協組主催で、商業組合福岡地区総代、協組理事及び部会長、SM対策委員、乱研対策委員の合同会議を四月十三日午後一時半から県薬剤師会館で開催し左記事項につき協議検討した。出席者三十五名、定刻より一時間半遅れ午後三時藤田氏の開会の挨拶に次いで直に議事に移った。

 ▽SM対策経過報告 香椎、丸衆などスーパーマーケットに関するその後の経過について白木、藤野両氏から報告があり、次に対策費早急納入のため部会長の外に未完納部会には専任の推進委員をつくっては如何との問題が起り、一同これを承認、名香、馬出、千代吉塚、浜、岡、春吉B及び当仁、草ヶ江の各部会に一人宛選任することになった。

 ▽SM対策経過報告
 香椎、丸衆などスーパーマーケットに関するその後の経過について白木、藤野両氏から報告があり、次に対策費早急納入のため部会長の外に未完納部会には専任の推進委員をつくっては如何との問題が起り、一同これを承認、名香、馬出、千代吉塚、浜、岡、春吉B及び当仁、草ヶ江の各部会に一人宛選任することになった。

 ▽調整規程認可経過報告
 白木理事長から詳細報告があった。

 ▽調整規程説明、質疑応答

 ▽調整規程実施要領説明
 瀬尾専務理事から規程内容並に実施要領について説明がありそれより質疑応答に入った。訪問販売の禁止は本規程の最も重要な事項であるが、漸く実現したので先ず組合自身徹底的に実行したい。規程認可に関連して規定された報告及び届出事項は一ヵ月以内に履行したい。それに引続き来月総代会を開催しそれより各種団体交渉に進みたい。本県の調整規程認可は全国薬業界での第一号であるので模範的運営をなしたい。場合によっては特別委員会を作り組合員に周知徹底させたいと思っている。

 各員から色々と質問が出されたが、要するに誰れもが注目していることは訪問販売や店先販売などに於て卸売業者或は組合員外に対しても吾々組合員と同様に規制し得るやとの問題である。これに対し執行部では「組合が充分留意自粛して卸業者に対し準組合員の心算での協力を要望すれば協力を得るものと確信する。現に卸業界ではその機運に在ると思われる。又同様組合員外に対しても協力を求むれば他業種の状態から推考しても協力を得られると思う。若し協力を如何にしても得られぬ時は第二段階としての法による規制方法を考慮すべきであると考えている」との応答であった。

 調整規程第七条の一日十六時間以上営業してはならないと云う事項は実際問題としては不都合を生じはしないか、却って自縄自縛になる虞れがある(例えば新柳町地区などの如き)との質問が出たが、既に認可となった以上今直に変更もできぬので斯る地区には当分特例を認めたらと云うことに落着した様である。

 ▽第二年度役員候補及監査員候補内定の件
 五月十六日総代会を開会する予定であるが、今回は役員改選期であり、当日は時間の関係もあるので事前に、即ち本日は総代並に各役員も多数出席されているので役員候補を内定しては如何との意見に一同が認めこれ本合同会議終了後懇談協議の上決定することになった。

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 九州大学薬学科 塚本赳夫教授退官記念事業

 九大医学部薬学科主任教授の塚本赳夫博士は本年五月廿日で停年に達せられ退官されることになった模様で「塚本赳夫教授退官記念事業発起人一同(一二一名内一九名の実行委員)の名によって三月廿日付で各方面に次の様な趣意書(要旨)が発送された。

 塚本赳夫博士には来る昭和三十五年五月廿日をもちまして、九州大学教授を退官されることになりました。誠に惜しんでも余りあるものがあります。塚本赳夫博士は大正十一年東京帝国大学医学部薬学科を御卒業後、同学助手、帝国女子医学薬学専門学校教授、同薬学科長を歴任、昭和九年金沢医大附属医院薬局長兼薬学専門部教授となり、同十一年欧米各国に留学されました。昭和十四年台北帝国大学医学部附属医院薬局長兼同大学教授熱帯医学研修所々員として赴任され、終戦後は中華民国国立台湾大学医学院教授を勤めて居られましたが、昭和二十二年帰国され翌二十三年新瀉医科大学附属医院薬局長及び同大学教授に就任されました。

 昭和二十五年九州大学医学部に薬学科新設の議が起りますやその創立委員として尽力され、同年四月新薬学科の発足と共に教授として赴任生薬学植物化学講座を担当同時に薬学科主任教授として困難な社会情勢下にもかかわらずその創設と育成に全力を挙げて来られました創立満十周年を迎えます九大薬学科の今日あるは偏えに博士の御尽力の賜であります。

 また博士はその極めて該博な学識と円満なる人格、稀に見る活動力とにより薬局長、研究者又教育者として多方面に数々の業績をあげ尚九州大学評議員として同大学の運営に参劃、日本薬学会副会頭として学会の為に活躍され斯界に対する永年にわたる貢献は誠に大きいものと考えます。

 塚本赳夫博士は退官後、新設福岡大学薬学部々長として再びその創設に尽力されると承って居りますが、ここに在官中の数々の功績を讃え永年の御苦労を謝し併せて今後一層の御健斗御多幸を祈りたく、我々一同左記の如く記念事業を計画しこれに要する資金を募集することになりました。何卒右の趣旨に御賛同の上御協力賜ります様御願い申上げます。

 記

 一、記念事業
 1、肖像写真作製
 2、論文目録及び最終講義要旨作製
 3、記念品贈呈
 4、その他
 事業内容の詳細に関しましては実行委員に御一任願います。
 一、金額 一口五百円
 一、送金先
 福岡市堅粕九州大学医学部薬学科内塚本赳夫教授退官記念事業会宛
 一、送金方法 振替を御利用下さるよう願い上げます。
 振替口座福岡四〇九三番
 一、募集期限
 昭和三十五年四月三十日

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 薬界隨談

 ▲結核は若い者の病気とされていたが五日の厚生省の実態調査では最近は若い年令層よりだんだん高年層の罹患者が増して「成人病」の仲間入りをした。全国で要医療者三百四万人、要観察者百四十七万人計四百五十一万人の患者がいる。

 ▲厚生行政をゆさぼる医師会の政治力は大きい、医療審議会の委員を引き揚げた日本医師会、事々に厚生省と対立し続けて来た其の可否が日医の役員改選の対立候補となったが武見会長の三選で大勝した。五日朝NHK「朝の訪問」は武見太郎新会長を訪ねて、仝じく夜十一時「今日の問題」では「厚生省と医師会の対立についての解説を行い、「週間朝日」(四・一七、号)は「武見医師会長三選=厚生省との対立つづく」とニュースの眼」欄のトップ記事、週刊「コウロン」(四・一九)虚頭会談イモ医者時代は武見太郎日医会長と徳川無声氏の対談を掲げる一方日薬の役員改選の人物論を取扱れる様な圧力団体にしたいものだ。

 ▲薬事法の改正にあたり広告規制をこわがる新聞協会、民放連、広告主協会等の八団体が厚生省に医薬品の広告制限条項について要望書を提出抗菌性物質等要指示薬の乱れたる売り方について街の薬局を取締れなんかは筋違いの沙汰ではないか。日本医師会の要望は広告の野放しが中毒其の他の弊害の素因であると、筆者は医師会の説には賛成するが広告媒体業者の説には納得が出来ない。この際医師目的の医薬品の或種のものは素人筋PRの行為を制限する事が好ましいと思う。

 ▲佐賀県薬会員であり前年迄県薬代議員であった、大渡光雄氏医学博士の学位を獲得す九大へ提出の論文は工高校生(全日制定時制)の疲労に関する衛生学的研究と云う貴重なもので学校薬剤師の活動分野にも大きな指示を与えているものである。

 ▲現在国が定めた祝祭日は九つであるが自民党ではこの他婦人の日等毎月一回宛に当る祝祭日を十五回にした、其他に毎月の一日を国民の休みの日としたい構想である。喜ぶのは月給生活者であるが困るのは日給者と零組企業が反対だとの声があがっている。薬局薬店でも地域の組合で多くが月一回の休みを定めていても現在世智辛くなって全店しめの休業が励行されていない。薬業者は一層自民党考えの休日案に其の反対の尖端にたってはどうか、一部の階層にうける事間違いない。

 ▲寄病水俣病は魚介中に含まれる有機水銀に基因すると云う事が定説になっていたが、十二日開かれた水俣病総合調査研究連絡協議会で「水俣病の原因は工場廃水から生ずる有機水銀によるものではない。魚介内のタンパクが自己消化する際に生ずる毒で、毒キノコと同じ成分である」と東京工大清浦雷作教授が発表し厚生省食品調査会と水銀説を裏付ける熊大研究陣と直つ向うから対立し出した。

 ▲米国インディアナ大学、全米ガン協会、リリー研究所は十日の米ガン協会で爽竹桃科の「つるにち草」から抽出のアルカロイドが抗ガン作用が有る事を発表した。

 ▲佐賀の町の或るSMで「薬品原価即売会」と季節外れの換金を急ぐ子供服や既製品、雑貨並みの即売会と云う小折込みをやった、薬務局の通牒を灸をすえる事も必要であろう。闇夜と素人の宣伝ほどおそろしいものはない。(GT生)

九州薬事新報 昭和35年(1960) 4月20日号

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 社会保障制度審議会 薬事法改正案を審議

 社会保障制度審議会(会長大内兵衛氏)は去十五日東京の薬業永田町会舘で十四日付渡辺厚生大臣から諮問された「薬事法改正の是非」について審議した。高田薬務局長から薬剤師法及び薬事法の改正要綱について説明があり委員からは@広告の取締強化。A開局の許可制と診療所開設の届出制とのバランスについて厚生省当局の考え方を衝き、これに対し広告規制は漸進主義をとり薬局と診療所問題は別段バランスを欠くとは思わないと考えたが、委員からは広告規制は外国水準なみに一般新聞、放送、テレビは家庭薬のみとすべきであるとの意見が強く主張された。当日の審議としては厚生省から示された改正要綱はその儘これを認め答申することになったが、答申には広告その他を会全体の意見として添付することとして閉会した。添付意見要旨は次の通り。

 「意見要旨」

 両法案の改正趣旨は了とするが、広告規制に関し一般新聞などに見られる注射薬或は要指示医薬品の広告は外国の規制水準即ち家庭薬の範囲内に止めることが至当である。又薬局開設と診療所開設の際に於ける許可と届出のアンバランスは一考を要する問題と思う。なお薬事審議会のメンバーには消費者代表も加えるべきである。

 当日厚生省から示された薬剤師法案及び薬事法改正案要綱は次の通り

 薬剤師法案要綱

 一、薬剤師の任務
 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保することを、その任務とする

 二、薬剤師類似名称の使用制限
 薬剤師でないものは、薬剤師に類似する名称を使用してはならないこととする

 三、調剤された薬剤の表示
 薬剤師は、調剤した薬剤の容器又は被包に、患者の氏名、用法、用量その他所要の事項を記載しなければならないこととする

 四、調剤録
 薬局に調剤録を備え、薬剤師は調剤したときは、原則として調剤録に所定の事項を記入し、薬局開設者はその調剤録を三年間保存しなければならないこととする

 五、その他
 薬剤師の免許、試験、業務等に関する現行薬事法の内容を規定することとし、条文、体裁を整備する

 薬事法改正案要綱

 「医薬部外品に関する事項」

 一、口臭、体臭、あせも防止、脱毛防止、毛生え、除毛、鼠、蠅等の駆除又は防止等の効能があるとされている物のうち、薬理作用の緩和なもの、又はこれに準ずる物で、厚生大臣の指定するものを医薬部外品とした

 二、部外品の製造業者、輸入販売業者は厚生大臣の許可とし、販売は自由に行い得る

 「薬事審議会に関する事項」

 三、新たに地方薬事審議会を設ける

 「薬局に関する事項」

 四、薬局開設を、登録制から許可制にした
 五、許可基準を法定した
 六、薬局という名称の使用制限を規定した
 七、薬局管理に関する規定を整備した

 「医薬品等の製造等に関する事項」

 八、医薬品の製造業及び輸入販売業を登録制から許可制にした
 九、許可基準を法定した
 十、医薬品等の製造、輸入許可に際し、特に現品について審査を必要とする場合は、手数料を徴収する
 十一、特定成分含有化粧品の製造、輸入販売ついては、品目毎の許可を必要とする
 十二、部外品、医療器材(用具)化粧品の製造所には、責任技術者を設置することにした

 「医薬品等の販売に関する事項」

 十三、医薬品販売業を、登録制から許可制にした
 十四、医薬品販売業の種類毎に、許可基準、販売品目についての制限を法定した
 十五、すべての品目販売業者の店舗の管理を、薬局の場合と同様に整備した
 十六、指定医薬品以外の品目販売業者に『薬種商』という名称を付し、その許可は、店舗所在地の都道府県知事が、その行う試験に合格した日から、一年を経過していない者又はこれと同等以上の知識経験を有するものとして、厚生省令で定めるものに対して与えることとした
 十七、配置販売業者又は配置員が配置販売に従事するときは、あらかじめ、所定の事項を、業務に従事しようとする区域の都道府県知事に届出る規定を設けた
 十八、特定医療器材の販売業は、届出制にした

 「医薬品等の広告に関する事項」

 十九、特定の疾病用の医薬品又は医療器材の広告は方法、主な対象の制限について、必要な定めが出来るよう、規定した
 二十、許可前の広告禁止など、広告に関する規定を整備した

 「医薬品等の取扱に関する事項」

 二十一、一般医薬品についても、原則として封緘を施すことにした
 二十二、医薬品等の容器又は被包に、製造番号、有効成分の成分、分量を記載するなど、表示事項に関する規定を整備した
 二十三、特定化粧品は、容器又は被包に、特定の成分及びその分量を記載することとした

 「その他の事項」

 二十四、医薬品等の製造業者及び輸入販売業者の許可及び手数料の半額は、国庫の収入とし、その残額は都道府県の収入とすることとした
 二十五、輸出する医薬品等について、製造の許可、表示等に際して特例を設けた
 二十六、罰則について、量刑の巾を原則として、従来の『三年以下の懲役、三万円以下の罰金』を『三年、五万円』に、『一年以下の懲役、一万円以下の罰金』を『一年、三万円』に引上げた

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 日薬の分業推進策 第二薬局設置

 日本薬剤師協会では医薬分業制度推進の目的で大病院に院外処方箋を調剤するための「第二薬局」を設置する計画を進めていたが、設置については既に病院協会幹部との間に詳細に亘りスムースに交渉がなされており、近く全国地方協会にもこの旨を通知して全国的に第二薬局設置の一大運動を展開することになっている。

 日薬の計画している第二薬局は薬剤師だけによる「共同薬局」で、病院或は医師などの所謂ひもつきのものではない。この第二薬局は地区薬協の共同出資による調剤専門薬局であり病院の院外処方箋を誘出する意味で病院構外に設置することを原則とする。近くそのモデルケースとして東京につくられることになっている。第二薬局の出現は病院勤務薬剤師に複雑な感情を誘発させる虞れはあるが、既に信州大学附属病院及び九州大学病院にも設置されていることであり、病院としては薬局調剤能力を超過する過剰分だけを出せばよいのであり、勤務薬剤師の生活に影響はないものと日薬では見ている様である。

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 医療制度調査会が漸く発足 薬系委員ただ一人

 医療制度改善方策を審議する厚相の諮問機関である医療制度調査会は昨年四月設置されて以来満一年経過した去十二日委員十六名が発令された(二名未発令)が学識経験者のみで大凡の色分けは診療担当者とその他が約半数づつとなっている。第一回の会合は本月末の予定であるが、委員長の互選で会の運営方針が定められることとなる。会設置期間の明年三月末日迄には現在の医療制度について根本的に検討が加えられる。

 発足が満一年遅れたことは厚生省に対する医師会の反抗によるものと云われているが、開業医を主体とする医師会はそれ自体が自然営利に左右される立場に在るので厚生省の社会政策的施策にはここ又自然的抵抗を示すことになる虞れは充分考えられるので今後の成行きについては関心が持たれているようである。今回発会された委員は次の通りであるが薬系委員は不破氏唯一人である。

 阿部頼夫=全国セメント労組連委員長▼植村操=慶大教授▼大槻菊男=虎の門共済病院長▼勝沼晴雄=東大教授▼川島震一=川島胃腸病クリニック▼川西実三=神奈川県公安委員▼木村元一=一橋大教授▼久米定男=八幡製鉄所取締役▼園乾治=慶大教授▼高島克己=高島医院▼辻本春男=辻本歯科医院▼中村平蔵=日大教授▼不破竜登代=三楽病院薬局長▼前谷重夫=日本通運常務取締役▼山本力三=全国町村会会長▼与謝野光=東京歯科大講師

九州薬事新報 昭和35年(1960) 4月30日号

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 福岡県薬商組 幹部打合せ会 理事会総代会準備

 福岡県医薬品小売商業組合では近く理事会並に総代会など開会するに先ち本組合の幹部の事前打合せ会を四月十八日午后一時から県薬剤師会舘で開催した。出席者は、瀬尾、藤田、大隈、福田、形井、吉柳、鶴田、八谷、岡野の九名、外に県側から佐々木薬務課長補佐が列席した。瀬尾専務の挨拶後直に協議に入った。

 ▽昭和卅四年度(十二月一日より三月三十一日迄)決算並みに卅五年度予算について
吉田協会事務長から決算並に予算書について説明があり、組合員は一五〇円にすることを決めて一同了承。

 ▽第二年度事業計画要綱案について 瀬尾専務理事から実施予定の事業、方法、規模等、@調整に関する事業A組合交渉B調査研究C広告PRなどにつき説明があり、理事会は来る廿八日に、総代会はなるべく早く開会することを決めた。

 その他理事の割当てにつき意見の交換をなし、吉田氏を本組合の「参事」に推薦することを決め、専任事務員については執行部で運営面を考慮して適当な措置をとることとし、次いで調整規程の内容事項に関する質疑予想に対する応答について検討協議を重ねたが、結局関係官庁などの意見をも一応取纏めた上理事会で再検討して決定することになった。

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 論壇 経済革命の嵐の中に立つ者 経営の転換期が来た薬業者

 資本主義自由経済の下に於ける企業の強弱はそれぞれの企業の持つ経済力の大小に依る。云うなれば自由競争下の企業は必然的に力の経済に支配される。従って近年企業間の隔差が大きく殊に大企業と中小企業との間の差が益々拡りつつある事は経済は力也を実証している。

 飜って医薬品業界、殊に小売薬業界はこの二ヵ年の内に恐るべき混乱と破壊が相次ぎ、平和と安定への必死の努力が続けられているにもかかわらず現状は破局への断崖へと追い詰められつつある。小売薬業界に襲いかかったこの熾烈な嵐は中小企業にも入る事の出来ぬ小売薬業家、云いかえれば零細企業が生協、購買会、スーパーマーケット、百貨店等の大中の資本攻勢の前に敢えなくも吹き倒されようとしている社会現象に外ならない。

 弱小資本の小量高率主義が従来迄の小売業者の販売センスならば強力資本の大量廉売主義は生協、スーパーマーケット等の販売センスである。扨而、この勝負は近代資本主義のメカニズムの下に於ては戦わずしてすでに明かなのである。

 破局に瀕した業権を確保し、全国数十万の小売薬業家の生存を堵して、必死の努力が日に夜を次ぎ、夜に日を次いで行われつつある。中央に於ても地方に於ても血のにじむ苦闘がたえまなく続けられている。吾々は之等の努力に満腔の敬意と謝意を表わさねばならない。然し乍、全国の小売薬業家必死の努力にもかかわらず依然として現状は悪化の一路を辿りつつある。破局は時計の秒をきざむが如く、刻一刻吾々の眼前に大きくのしかかりつつある様に見える。最早この事態を救うべき何物をもないのか幾十万の悲願は水泡と化しさるか。断崖絶壁上に立つ業界は何に依って救われるのか。吾々はもう一度冷静に経済の減速を振り返って見よう。

 終戦と同時に地球上新しい革命の朝が明けた。原子力、オートメーション、極微科学そして第二次産業革命の朝暁である吾々の囲りには戦前は想像も出来なかった素晴しい環境が全く忽然として現われて来た。電子工学、合成科学、精密機械、高度燃料化学、自動車、各種合成繊維等々目を奪う躍進は、オートメ工程の進歩と共に絢爛豪華な製品が潮の如く市場へ産出されて来たのである。同時にラジオ、テレビ、新聞は之等製品の宣伝広告の為に驚くべき多量の伝達を行った。マスプロ、マスコミと云う新しい言葉が吾々の間にふんだんに使われる様になって来た。

 フォード自動車会社がマスプロ方式を打ち出しており、アメリカの生産会社に革期的転換と脱皮が起った。大量生産による大量廉売である。すべてが多量に生産され、多量に販売されてゆく。その為に各生産会社は多額の資金が必要となりその為に増資に次ぐ増資を重ねマスプロにかのう設備の強化と合理化とに力を注ぐ事になった。かくて同一業種の企業の中で大企業は益々強固になり中小の企業は大企業に吸収され又は傘下にはいり、そして無能の者は消えて行った。吾国に於てもこの数年間同様に幾多の変遷が行われ又現在行われつつある。

 試みに各業種の産業構成を見ても如何に大企業が強力化されつつあるかが判然とする。重鋼三社、重電三社、ビール三社等々超一流企業の内容は十年前とは想像も出来なかった。豊かな資産と設備、成長力を有するに至って居る。強大資本による企業の独占化、之は資本主義経済の下に於ける企業の合言葉である。之が今現に各業種にわたって行われつつある。

 医薬品業界も亦然り、各メーカーは資本主義経済の方式のままに企業の拡大利潤の増加を計る為。市場の開拓と独占化とに狂奔しつつある。その為に設備の拡充合理化を計り多量生産に依而コストの軽減を計り、マスコミに依而他品を圧倒し大量販売に依って市場を独占しようとしつつある。この様な大メーカー同志の戦の渦の中で既に中小企業は一歩又一歩と後退せざるを得ない。此処にも弱肉強食の経済の法則は冷酷に実証されて居るのである。

 オートメ方式によって多量に生産された商品は潮の如く市場へ出廻って来る。同様に競争相手の大メーカーも山の様な商品を積んで決戦をいどんで来る。勢い他社に打ち勝って販売してゆく為には少々の非難位は覚悟してマスコミ、マスセ−ルせねばならない。亦コストもより安くせねばならない。又、セールスマンは骨身を削ってマンモス生産に対応する販売をやってゆかねばならない。かくてマスコミ、マスプロ、マスセールの為にアメリカに於ても日本に於いても二十世紀の新らしい市場の衣替えと云う社会現象が生じて来た。弱少メーカー弱少販売業者の陶汰もこの様な市場システムの大転換によっておきて来た社会現象である。感覚の転換こそこの場合最も重要となる。混乱している現在の市場はセールスマンのなげきの場であるが、セールスマンの言葉を聞いてみよう。

 セールスマンは云う「今の薬局の経営者は薬局自体の姿が十年前、二十年前とは大変な違いがあるという事には殆んど関心がない。マスコミ時代はマスプロに乗ってマスセールしなければならないのにただ座って居て四割も儲けようとする小売屋さんの気持は薬は特異なものだから他の商品と違って三割、四割は当然儲けるべきだと云われるがメーカーに取っては、その薬がマスプロされマスコミされているのだから当然市場で大量販売されねばならない。その為には特異な存在価値等と云って威張ってもらえるとマスコミ商品として折角宣伝した甲斐がなくなってしまう。そういう小売屋さんの考え方は時代逆感覚ではなかろうか」

 上記は某薬業新聞に掲載された某製薬メーカーのセールスマスの告白であるがオートメーションに依而大量生産されマスコミされてマーケットに放出されて居る製品、殊に保健剤、大衆剤に至っても尚且つ特殊な感覚を以て販売してゆくと云う事が極めて逆時代的であるという事は残念乍ら吾々の旧来の道理的観念では理解する事は出来ないのである。而も保健剤、大衆剤に限らずオートメシステムは一般治療薬迄次々に大量生産に移しつつある。メーカーは当然或種の制限と非難を覚悟して敢然とマスコミのラインに乗せつつある。

 経済のメカニズムはすでにそれがオートメのラインに乗ったものを少々の障害でラインからはずす等という事は出来ないのである。経済のメカニズムの本質が力である限りメーカーも問屋も、そして小売業者も強大資本に依る合理化と組織化とによらざる限り、市場の安定はあり得なく、又、生協、スーパーマーケットを打ち倒す事は出来ない。

 第二次産業革命の時が来た以上、吾々は過去の古い観念と妄執とを振り捨て敢然と而も謙虚に時代に従うべきではなかろうか。新らしい資本主義の指示する所、原子力とオートメーションに依而もたらされた。マスプロ、マスコミ、マスセールのメカニズム、之は吾々のまわりを十重二十重に取りまきつつあるのである。吾々の社会生活はすでに全面的に之等と切り離して考える事は出来ない。驚くべき革命の時期に遭遇した吾々はかつてランカシャの機織達が遭遇したと同じ運命にあると云う事は云いすぎではない。

 歴史は繰り返すと云う。二十世紀後半の宇宙時代と共に訪れた祝福すべき人類の朝ぼらけを迎うるに当ってどうして吾々のみが背中を向けねばならないのか。二度と頑冥なるスコットランドの古き機織達と軌を一にすべきではない。成長し発展してゆく経済のメカニズムはオートメーションラインの上に古い観念も古い機構もそして徒弟制度も世襲制度も一切のかび臭い仁義や慣習も含めて全く新しい思想となり組織となって生れ変って来る。小売薬業者は此処に気持を新にして冷静に現状を把握し自己の持つ経済力の一切を挙げて新しい組織に参加する覚悟と準備を決めるべき時なのである。

 メーカーも問屋も漸く低迷の中よりアウリヘーヴングの道を発見しつつある。よく学びよく努力するものこそ報わるる。吹きすさぶ革命の嵐の中に立つ小売薬業者はいたずらに目先の事象のみにとらわれる事なくこの時代の経済の大変動に即応する最も基本的な経営観念の更新と思い切った転換、脱皮への覚悟こそ必要なのである。父祖以来の伝統とか地盤とかいう時代は過ぎ去った。市場そのものの大転換がおきている今日個人を廃業して組織に参加する一大決心、明治維新の藩籍奉還の大名の決意こそ業界百年の灯火を永続させる道であると信ずる。(唐津市、株式会社辻薬店社長)

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 挾子

 ▼薬事法並に薬剤師法案は参議院先議で四月廿五日から卅日迄の間に国会に提出される運びになっていると報道されている。両法案は今期国会で成立することは間違いないものと思われるが、法案の内容については種々不満の事項もあり寸たらずの感じもあるが、兎も角今となっては国会通過に努力するより外なく、まあまあ結構なことと云わねばなるまい。

 ▼医薬品の広告規制に関しては第三者の立場としていつも問題となる様である。今回の薬事法改正案審議に際しても社会保障制度審議会は当局提出の改正要綱はその儘認めたが、医薬品の広告については外国水準なみに規制せよとの要望を同審議会の名に於て答申に添付している。医師団の主張であったこの問題も今日では既に第三者的有識階級によって叫けばれる様になって来た。メーカーも当局も充分考慮すべき問題であろう。

 ▼大手メーカーは週一回位部会や実務担当者会議を開き小売側の要求である綜合ビタミン剤などのA価引下げにどう対処するかを話合っている模様であり、この問題も漸くヤマ場に近く、小売側の要求の線迄はむつかしいだろうが最早A価の改訂は必至と見られている。

 ▼東京の池袋乱売問題も両者の話合いが進み一応局面が開かれるのではないかと関係者を幾分安堵させたが、今度は地元薬局薬店が乱売に踏切ったそうだ。長らくの犠牲者であり又色々の理由もあろうが、茲に至っては何かを云わん…で商人アホも困ったものである。

 ▼福岡県の調整規程は三月十五日次いで大阪、兵庫が四月十一に認可になってと報ぜられているが、これ等調整規程中の原価、正礼販売、訪問販売などに対する公取委の見解は、原価とは実際の仕入価格であってメーカーの定めたB、C価ではないと云う、それは当然なことだ。正礼販売は地区協組に協定価格のない場合に個々の業者が自主的に価格を定めて正礼に表示して販売する行為である。協定価格の存在する場合は認められないと云う、これ又当然のことである。訪問販売は行商の一種であり医薬品については当然してはならないことだ。然し受注のため訪問するのは全くのサービスであって禁すべき性質のものではない。然るに公取委は祭じてよろしいと云う、理解に苦しむことで洵におかしなことである。

 ▼東京の本調布薬協組では乱売解決のため設けた「対抗乱売店」へメーカー直納を計画していたが、大手メーカー四社がこれに応じて呉れたので太刀打ちができると喜んでいる。メーカーよりの直納は全国でも初のケースであり薬協組でも一般組合員に直納品は配布しないそうである。メーカーも能く思い切ったものであり良し悪しに係わらず業界に一石を投じた形である。(鉄棒)